(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-09
(45)【発行日】2022-08-18
(54)【発明の名称】ヒト抗体、医薬組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
C07K 16/30 20060101AFI20220810BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220810BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220810BHJP
A61K 49/00 20060101ALI20220810BHJP
A61K 49/16 20060101ALI20220810BHJP
A61K 51/10 20060101ALI20220810BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220810BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20220810BHJP
A61K 47/16 20060101ALI20220810BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20220810BHJP
G01N 33/574 20060101ALI20220810BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20220810BHJP
【FI】
C07K16/30 ZNA
A61K39/395 N
A61K45/00
A61K49/00
A61K49/16
A61K51/10 200
A61P43/00 121
A61K47/68
A61K39/395 Y
A61K47/16
G01N33/53 S
G01N33/574 Z
C12N15/13
(21)【出願番号】P 2019504699
(86)(22)【出願日】2017-07-31
(86)【国際出願番号】 US2017044713
(87)【国際公開番号】W WO2018023121
(87)【国際公開日】2018-02-01
【審査請求日】2020-07-27
(32)【優先日】2016-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】516080655
【氏名又は名称】オービーアイ ファーマ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ユイ,チュヨン-ダー・トニー
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ウォーン・ウオン
(72)【発明者】
【氏名】リー,シュウ-ユイ
(72)【発明者】
【氏名】ライ,ジエン-シーン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,イー-ジュイ
【審査官】大久保 智之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0102151(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 16/00-46
C12N 15/00-90
A61K 39/00-44
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Globo-H、SSEA-3又はSSEA-4から選択されるGlobo系抗原を標的とすることが可能な抗体又はその抗原結合断片であって、
配列番号109、110及び111、並びに配列番号112、113及び114;
配列番号115、116及び117、並びに配列番号118、119及び120;
配列番号121、122及び123、並びに配列番号124、125及び126;
配列番号127、128及び129、並びに配列番号130、131及び132;
配列番号133、134及び135、並びに配列番号136、137及び138
;
配列番号151、152及び153、並びに配列番号154、155及び156
;
配列番号211、212及び213、並びに配列番号214、215及び216
;
配列番号223、224及び225、並びに配列番号226、227及び228;
配列番号229、230及び231、並びに配列番号232、233及び234;
配列番号235、236及び237、並びに配列番号238、239及び240
から選択されるアミノ酸配列を有する3つの重鎖CDR及び3つの軽鎖CDRを含む、抗体又はその抗原結合断片。
【請求項2】
Globo-H、SSEA-3又はSSEA-4から選択されるGlobo系抗原を標的とすることが可能な
、請求項1に記載の抗体又はその抗原結合断片であって
、
配列番号35及び36
、配列番号47及び48
、配列番号55及び56
、配列番号63及び64、配列番号67及び68、配列番号71及び72、配列番号75及び76
、配列番号95及び96、配列番号99及び100
、又は配列番号107及び108から選択されるアミノ酸配列に90%
超の同一性を有する、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域
を含む、抗体又はその抗原結合断片。
【請求項3】
SSEA-4が(Neu5Acα2→3Galβ1→3GalNAcβ1→3Galα1→4Galβ1→4Glcβ1)の構造を有し、SSEA-3が(2Galβ1→3GalNAcβ1→3Galα1→4Galβ1→4Glcβ1)の構造を有し、又はGloboHが(Fucα1→2Galβ1→3GalNAcβ1→3Galα1→4Galβ1→4Glc)の構造を有する、請求項1又は2に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項4】
前記抗体がヒトIgG又はIgM抗体である、請求項1~2のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項5】
前記抗体又はその抗原結合断片が、(a)全免疫グロブリン分子、(b)scFv、(c)Fab断片、(d)F(ab’)
2、又は(e)ジスルフィド結合型Fvから選択される、請求項1~2のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項6】
請求項1~2のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片と、少なくとも1種の薬学的に許容される担体を含有する医薬組成物。
【請求項7】
がん細胞の増殖の抑制において使用するための請求項6に記載の医薬組成物であって、患者に治療有効量で投与するための、医薬組成物。
【請求項8】
患者におけるがんの治療において使用するための請求項1~2のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片を含む組成物であって、当該抗体又はその抗原結合断片は当該患者に治療有効量で投与するためのものである、組成物。
【請求項9】
前記がんが肉腫、皮膚がん、白血病、リンパ腫、脳腫瘍、膠芽腫、肺がん、乳がん、口腔がん、頭頸部がん、上咽頭がん、食道がん、胃がん、肝臓がん、胆管がん、胆嚢がん、膀胱がん、膵臓がん、腸がん、大腸がん、腎臓がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、卵巣がん、精巣がん、頬粘膜がん、中咽頭がん、喉頭がん及び前立腺がんから構成される群から選択される、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
がんの存在の決定を必要とする患者におけるがんの存在を決定するのに使用するための請求項1~2のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片を含む組成物であって、前記決定が、
a.前記患者から得られた細胞又は試料に、マーカーパネルの発現を検出する1つ以上の抗体を添加する段階と;
b.前記1つ以上の抗体と前記細胞又は前記試料との結合を決定する段階と;
c.前記結合を正常コントロールと比較し、前記患者における前記がんの存在を決定する段階を含み、
前記マーカーがGlobo-H、SSEA-3又はSSEA-4から構成される、組成物。
【請求項11】
前記がんが肉腫、皮膚がん、白血病、リンパ腫、脳腫瘍、膠芽腫、肺がん、乳がん、口腔がん、頭頸部がん、上咽頭がん、食道がん、胃がん、肝臓がん、胆管がん、胆嚢がん、膀胱がん、膵臓がん、腸がん、大腸がん、腎臓がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、卵巣がん、精巣がん、頬粘膜がん、中咽頭がん、喉頭がん及び前立腺がんから構成される群から選択される、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記細胞ががん幹細胞であり、前記試料が血清、血液、血漿、細胞、細胞培地、唾液、尿、リンパ節液、腫瘍生検又は組織培養物から構成される、請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
患者のイメージングにおいて使用するための、イメージング剤と結合させた請求項1~2のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片を含む組成物であって、
前記イメージングが、イメージング剤と結合させた抗体又はその抗原結合断片を受けた患者における前記イメージング剤を検出する段階を含み、
前記イメージング剤がフルオロフォア、染料、MRI造影剤又は放射性核種であり、
前記使用が更にがん転移の検出方法として定義される、組成物。
【請求項14】
Globo-H、SSEA-3又はSSEA-4から選択されるGlobo系抗原と結合する抗体又は抗原結合断片に結合した薬物を含む抗体薬物複合体(ADC)であって、
前記抗体又は抗原結合断片は、
配列番号109、110並びに111、及び配列番号112、113並びに114;
配列番号115、116並びに117、及び配列番号118、119並びに120;
配列番号121、122並びに123、及び配列番号124、125並びに126;
配列番号127、128並びに129、及び配列番号130、131並びに132;
配列番号133、134並びに135、及び配列番号136、137並びに138;
配列番号151、152並びに153、及び配列番号154、155並びに156;
配列番号211、212並びに213、及び配列番号214、215並びに216;
配列番号223、224並びに225、及び配列番号226、227並びに228;
配列番号229、230並びに231、及び配列番号232、233並びに234;及び
配列番号235、236並びに237、及び配列番号238、239並びに240;
から選択される3つの重鎖CDR及び3つの軽鎖CDRを含み、
前記薬物をリンカーにより前記抗体又は前記抗原結合断片と共有結合させたものであり、
前記Globo系抗原がGlobo-H、SSEA-3又はSSEA-4を含み、
前記リンカーがp-ニトロフェニルリンカー、4-(4-N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボン酸ヒドラジド(MMCCH)リンカー、マレイミドカプロイル(MC)リンカー又はマレイミドメチルシクロヘキサン-1-カルボキシレート(MCC)リンカーを含む、ADC。
【請求項15】
請求項14に記載の抗体薬物複合体(ADC)であって、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域が、配列番号35及び36、配列番号47及び48、配列番号55及び56、配列番号63及び64、配列番号67及び68、配列番号71及び72、配列番号75及び76、配列番号95及び96、配列番号99及び100、又は配列番号107及び108から選択されるアミノ酸配列に90%超の同一性を有し、
前記薬物をリンカーにより前記抗体又は前記抗原結合断片と共有結合させたものであり、
前記薬物をリンカーにより前記抗体又は前記抗原結合断片と共有結合させたものであり、
前記Globo系抗原がGlobo-H、SSEA-3又はSSEA-4を含み、
前記リンカーがp-ニトロフェニルリンカー、4-(4-N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボン酸ヒドラジド(MMCCH)リンカー、マレイミドカプロイル(MC)リンカー又はマレイミドメチルシクロヘキサン-1-カルボキシレート(MCC)リンカーを含む、ADC。
【請求項16】
前記薬物が化合物、生物学的製剤又は増殖抑制剤である、請求項14又は15に記載のADC。
【請求項17】
前記増殖抑制剤がシクロホスファミド、オピエート、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)、エストロゲン阻害薬(タモキシフェン又はフェアストン)、アロマターゼ阻害薬(アリミデックス、アロマシン又はフェマーラ)、下垂体ダウンレギュレーター(ゾラデックス又はリュープロン)、ノルバデックス(タモキシフェン選択的エストロゲン受容体モジュレーター)、エビスタ(ラロキシフェン)、フェソロデックス(エストロゲン受容体ダウンレギュレーター)、抗凝固薬(レフルダン)、酵素(エリテック)、造血成長因子、抗悪性腫瘍薬(代謝拮抗薬、その地の細胞毒性薬、ビンカアルカロイド、エピポドフィロトキシン、アルキル化剤、タキサン類、抗腫瘍性抗生物質、カンプトテシン、ニトロソウレア)、HER1/EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(タルセバ)、VEGFタンパク質阻害薬(アバスチン)、HER-2/ErbB2阻害薬(タイベルブ/タイケルブ)、インターフェロン、インターロイキン、モノクローナル抗体、グルココルチコイド系ステロイド、エルロチニブ(タルセバ)、ドセタキセル(タキソテール)、ゲムシタビン(ジェムザール)、シスプラチン、カルボプラチン、パクリタキセル(タキソール)、トラスツズマブ(ハーセプチン)、テモゾロミド(テモダール)、タモキシフェン(ノルバデックス、イスツバール、バロデックス)、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、オキサリプラチン(エロキサチン)、ボルテゾミブ(ベルケイド)、スーテント(スニチニブ)、レトロゾール(フェマーラ)、イマチニブメシル酸塩(グリベック)、MEK阻害薬(エクセリクシス)、フルベストラント(フェソロデックス)、ロイコボリン(フォリン酸)、ラパマイシン(ラパミューン)、ラパチニブ(タイケルブ)、ロナファルニブ(サラサール)、ソラフェニブ(ネクサバール)、ゲフィチニブ(イレッサ)、イリノテカン(カンプトサル)、チピファルニブ(ザルネストラ)、アブラキサン(クレモホールフリー)、パクリタキセル、バンデタニブ(ザクティマ)、クロラムブシル、テムシロリムス(トーリセル)、パゾパニブ、カンホスファミド(テルサイタ)、チオテパ、シクロホスファミド(サイトキサン、ネオサール)、5-フルオロウラシル(5-FU)、ビノレルビン(ナベルビン)、ノバントロン、テニポシド、エダトレキサート、ダウノマイシン、アミノプテリン、カペシタビン(ゼローダ)、イバンドロネート、トポイソメラーゼ阻害薬RFS2000、α-ジフルオロメチルオルニチン(DMFO)、タモキシフェン(ノルバデックス)、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、オナプリストン、フェアストン(トレミフェンクエン酸塩)、4(5)-イミダゾール、アミノグルテチミド、メゲース(酢酸メゲストロール)、アロマシン(エキセメスタン)、ホルメスタン、ファドロゾール、RIVISOR(R)(ボロゾール)、フェマーラ(レトロゾール)、アリミデックス(アナストロゾール)、フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド、ゴセレリン、トロキサシタビン(α-1,3-ジオキソランヌクレオシドシトシンアナログ)、脂質キナーゼ阻害薬、オブリメルセン(ジェナセンス)、アンギオザイム、アロベクチン、ロイベクチン、バキシド、プロロイキン、ルートテカン、アバレリックス、ベバシズマブ(アバスチン)、アレムツズマブ(キャンパス)、ベバシズマブ(アバスチン)、セツキシマブ(アービタックス)、パニツムマブ(ベクティビックス)、リツキシマブ(リツキサン)、ペルツズマブ(オムニターグ)、トラスツズマブ(ハーセプチン)、トシツモマブ(ベキサール,Corixa社)、ゲムツズマブ又はオゾガマイシン(マイロターグ)から選択される、請求項16に記載のADC。
【請求項18】
患者におけるがんの治療において使用するための、請求項14又は15に記載の抗体薬物複合体(ADC)を含む組成物であって、当該ADCは当該患者に治療有効量で投与するためのものである、組成物。
【請求項19】
前記がんが肉腫、皮膚がん、白血病、リンパ腫、脳腫瘍、膠芽腫、肺がん、乳がん、口腔がん、頭頸部がん、上咽頭がん、食道がん、胃がん、肝臓がん、胆管がん、胆嚢がん、膀胱がん、膵臓がん、腸がん、大腸がん、腎臓がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、卵巣がん、精巣がん、頬粘膜がん、中咽頭がん、喉頭がん及び前立腺がんから構成される群から選択される、請求項18に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、糖抗原に対するヒト抗体及びその結合断片、このような抗体をコードする核酸、相補的核酸、ポリペプチド、ベクター、宿主細胞並びにその製造・使用方法に関し、前記抗体及び/又は結合断片を含有する医薬組成物をも含む。更に、がん細胞を抑制するために有効な量の抗体を対象に投与するための方法も、提供する。具体的には、発生段階特異的胎児性抗原3(SSEA-3)、発生段階特異的胎児性抗原4(SSEA-4)及びGloboHと結合する抗体、並びに関連する組成物及び使用方法を、本願に開示する。使用方法としては、限定されないが、がん治療及び診断が挙げられる。
【背景技術】
【0002】
ヒトB細胞の単離、培養及び拡大の最近の進歩に伴い、多数のヒト抗体の単離をがん診断及び治療に利用することが、可能になりつつある。数十年間の間に、ハイブリドーマ技術を使用して、マウスモノクローナル抗体が単離された。しかし、これらの抗体を治療に応用することは、抗マウス抗体と自己反応性との誘導により制限されていた。より最近では、ヒトから作製されたファージディスプレイライブラリーを用いて、目的の液性応答を示すモノクローナル抗体が単離されている(Mao S,et al.(1999)Proc Natl Acad Sci USA;96:6953-6958)。この技術により多数の有用な抗体が作製されているが、その利用可能性は、細菌細胞と真核細胞とで発現される抗体間の結合特性の相違により、制限されている。更に、ファージディスプレイは、同一のB細胞でインビボでは生じない重鎖と軽鎖との組み合わせを生じる場合がある。
【0003】
悪性腫瘍細胞では、多数の表面糖が発現される。例えば、糖抗原GloboH(Fucα1→2Galβ1→3GalNAcβ1→3Galα1→4Galβ1→4Glc)は、1984年に乳がんMCF-7細胞からセラミド関連糖脂質として最初に単離され、同定された(Bremer E G,et al.(1984)J Biol Chem 259:14773-14777)。乳がん細胞及び乳がん幹細胞でGloboH及び発生段階特異的胎児性抗原3(2Galβ1→3GalNAcβ1→3Galα1→4Galβ1→4Glcβ1)(SSEA-3、別称Gb5)が認められたことも、従来の研究により示されている(WW Chang et al.(2008)Proc Natl Acad Sci USA,105(33):11667-11672)。更に、SSEA-4(発生段階特異的胎児性抗原-4)(Neu5Acα2→3Galβ1→3GalNAcβ1→3Galα1→4Galβ1→4Glcβ1)は、ヒト多能性胚性幹細胞の細胞表面マーカーとして一般に使用されており、間葉系幹細胞を単離するため及び神経前駆細胞を集積させるために、使用されている(Kannagi R et al.(1983)EMBO J,2:2355-2361)。そこで、がん関連の及び/又はがん予測的なグリカンマーカーを同定し、広範ながんの診断及び治療用として、このマーカーに対するヒトモノクローナル抗体を開発することが、極めて重要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Mao S,et al.(1999)Proc Natl Acad Sci USA;96:6953-6958
【文献】Bremer E G,et al.(1984)J Biol Chem 259:14773-14777
【文献】WW Chang et al.(2008)Proc Natl Acad Sci USA,105(33):11667-11672
【文献】Kannagi R et al.(1983)EMBO J,2:2355-2361
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本開示は、Globo系抗原(GloboH、SSEA-3及びSSEA-4)が、広範ながんで異常に発現されるが正常細胞では発現されないという発見に基づく。要するに、がんに有効な治療及び/又は予防の必要性は未だに満たされていないが、Globo系抗原(GloboH、SSEA-3及びSSEA-4)に対するヒトモノクローナル抗体は、この必要性に対処することができる。Globo系抗原を発現するがん細胞としては、限定されないが、肉腫、皮膚がん、白血病、リンパ腫、脳腫瘍、肺がん、乳がん、口腔がん、食道がん、胃がん、肝臓がん、胆管がん、膵臓がん、結腸がん、腎臓がん、子宮頸がん、卵巣がん及び前立腺がんを挙げることができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1態様において、本開示はGlobo系抗原に特異的な抗体又はその結合断片に関する。
【0007】
抗Globo系抗原ヒトモノクローナル抗体を作製するためには、ワクチン接種した対象の末梢血からヒトB細胞を、単離し、ウェル当たり細胞1個の密度でプレートに播種し、培養し、分泌型IgGを産生させる。分泌されたIgGを、GloboH、SSEA-3又はSSEA-4との結合特異性について定量する。RT-PCRを使用して、陽性ウェルからIgVH、IgVκ又はIgVλをコードする遺伝子を回収し、抗GloboH、SSEA-3又はSSEA-4ヒトモノクローナル抗体作製用発現ベクターにクローニングする。1実施形態において、前記抗体の軽鎖は、κ型である。1実施形態において、前記抗体の軽鎖は、λ型である。
【0008】
1態様において、本開示は、本願に開示する夫々のCDR、及び本願に開示するアミノ酸配列に対する配列相同性が少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%であるアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域(VH)並びに/又は本願に開示する夫々のCDR、及び本願に開示するアミノ酸配列に対する配列相同性が少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%であるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域(VL)を夫々含む、抗体及び/又はその抗原結合断片を提供する。
【0009】
1態様において、本開示は、表1~28に開示するもの等の本願に開示する各クローン夫々の3個の重鎖CDR及び対応する3個の軽鎖CDRを含む、Globo系糖抗原を標的とすることが可能な抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0010】
別の態様において、本開示は、本願の表1~28に開示する各クローンの全長重鎖配列に対する一致度が少なくとも約80%であるアミノ酸配列を含み、更に前記対応するクローンの3個の対応する重鎖相補性決定領域(CDR)であるCDR1、CDR2及びCDR3配列を含む重鎖可変領域と、本願の表1~28に開示する前記クローンの全長軽鎖配列に対する一致度が少なくとも約80%であるアミノ酸配列を含み、更に前記対応するクローンの3個の対応する軽鎖相補性決定領域(CDR)であるCDR1、CDR2及びCDR3を含む軽鎖可変領域とを含む、抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0011】
例えば、本開示は、a.配列番号257、258及び259の3個の重鎖CDRもしくは保存的に改変されたアミノ酸置換;及び/又はb.配列番号260、261及び262の3個の軽鎖CDRもしくは保存的に改変されたアミノ酸置換を含む、Globo系糖抗原を標的とすることが可能な抗体又はその抗原結合断片を提供する。別の実施形態において、前記抗体又はその抗原結合断片は、配列番号3に対する一致度が少なくとも約80%であるアミノ酸配列を含み、更に3個の重鎖相補性決定領域(CDR)であるCDR1、CDR2及びCDR3(配列番号257、258、259)を含む軽鎖可変領域;並びに/又は配列番号4に対する一致度が少なくとも約80%であるアミノ酸配列を含み、更に3個の軽鎖相補性決定領域(CDR)であるCDR1、CDR2及びCDR3(配列番号260、261、262)を含む軽鎖可変領域を含む。表1~28に列挙するクローンの各々で、各クローンの夫々の全長重鎖及び軽鎖配列と、夫々の対応する重鎖及び軽鎖CDRについて同じことが言える。
【0012】
所定の実施形態において、前記抗体又はその抗原結合断片は(a)完全長免疫グロブリン分子、(b)scFv、(c)Fab断片、(d)F(ab’)2、又は(e)ジスルフィド結合型Fvから選択される。
【0013】
所定の実施形態において、前記抗体はIgG又はIgMである。
【0014】
1態様において、本開示は抗体又はその抗原結合断片と、少なくとも1種の薬学的に許容される担体を含有する医薬組成物を提供する。
【0015】
所定の実施形態において、前記医薬組成物は更に少なくとも1種の他の治療薬を含有する。
【0016】
1態様において、本開示は、がん細胞の増殖の抑制方法として、がん細胞の増殖の抑制を必要とする対象に有効量の代表的な医薬組成物を投与し、がん細胞の増殖を抑制及び/又は低減する方法を提供する。
【0017】
所定の実施形態において、本開示は、対象におけるがんの治療方法として、がんの治療を必要とする対象に有効量の本願に記載する代表的なヒト抗体を投与する方法を提供する。
【0018】
所定の実施形態において、前記がんは、肉腫、皮膚がん、白血病、リンパ腫、脳腫瘍、膠芽腫、肺がん、乳がん、口腔がん、頭頸部がん、上咽頭がん、食道がん、胃がん、肝臓がん、胆管がん、胆嚢がん、膀胱がん、膵臓がん、腸がん、大腸がん、腎臓がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、卵巣がん、精巣がん、頬粘膜がん、中咽頭がん、喉頭がん及び前立腺がんから構成される群から選択される。
【0019】
1態様において、本開示は、対象におけるがんのステージ判定方法として、
(a)前記対象から得られた細胞又は組織試料にGlobo系抗原の発現を検出する1種以上の抗体を添加する段階と;
(b)前記1種以上の抗体と前記細胞又は組織試料との結合を定量する段階と;
(c)前記結合を正常コントロールと比較し、前記対象における前記がんの有無を判定する段階と;
(d)対応する抗体結合を正常ベースライン指数と比較した相対レベルに基づいて疾病進行ステージを分類する段階と
を含む方法を提供する。
【0020】
1態様において、本開示は、がん細胞の増殖の抑制方法として、がん細胞の増殖の抑制を必要とする対象に、Globo系糖抗原を標的とする抗体又はその抗原結合断片を含有する有効量の医薬組成物を投与し、がん細胞の増殖を抑制する方法を提供する。1実施形態において、前記対象はヒトである。
【0021】
1態様において、本開示は、対象におけるがんの治療方法として、がんの治療を必要とする前記対象に有効量のGlobo系糖抗原を標的とする抗体又はその抗原結合断片を投与する方法を提供する。
【0022】
1実施形態において、前記がんは、肉腫、皮膚がん、白血病、リンパ腫、脳腫瘍、膠芽腫、肺がん、乳がん、口腔がん、頭頸部がん、上咽頭がん、食道がん、胃がん、肝臓がん、胆管がん、胆嚢がん、膀胱がん、膵臓がん、腸がん、大腸がん、腎臓がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、卵巣がん、精巣がん、頬粘膜がん、中咽頭がん、喉頭がん及び前立腺がんから構成される群から選択される。1実施形態において、前記対象はヒトである。
【0023】
1態様において、本開示は対象におけるがん診断方法として、
(a)前記対象から得られた細胞又は試料に、マーカーパネルの発現を検出する本願に開示する1つ以上の抗体又は結合断片を添加する段階と;
(b)前記1つ以上の抗体と前記細胞又は前記試料との結合をアッセイする段階と;
(c)前記結合を正常コントロールと比較し、前記対象における前記がんの有無を判定する段階とを含む方法を提供する。
【0024】
1実施形態において、前記マーカーは、Globo-H、SSEA-3又はSSEA-4から構成される。
【0025】
1実施形態において、前記がんは、肉腫、皮膚がん、白血病、リンパ腫、脳腫瘍、膠芽腫、肺がん、乳がん、口腔がん、頭頸部がん、上咽頭がん、食道がん、胃がん、肝臓がん、胆管がん、胆嚢がん、膀胱がん、膵臓がん、腸がん、大腸がん、腎臓がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、卵巣がん、精巣がん、頬粘膜がん、中咽頭がん、喉頭がん及び前立腺がんから構成される群から選択される。
【0026】
1実施形態において、前記細胞は、がん幹細胞である。
【0027】
別の実施形態において、前記試料は、血清、血液、血漿、細胞、細胞培地、唾液、尿、リンパ節液、腫瘍生検又は組織培養物から構成される。1実施形態において、前記対象はヒトである。
【0028】
1態様において、本開示は、対象のイメージング方法として、
(a)イメージング剤と結合させた有効量の本願に開示する抗体又はその抗原結合断片を投与する段階と;(b)前記対象における前記イメージング剤を検出する段階とを含む方法を提供する。
【0029】
1実施形態において、前記イメージング剤は、フルオロフォア、染料、MRI造影剤又は放射性核種である。
【0030】
1実施形態において、前記対象は、がんに罹患しており、前記方法は、更にがん転移の検出方法として定義される。1実施形態において、前記対象はヒトである。
【0031】
1態様において、本開示は、対象における抗体又は抗原結合断片の単離方法として、
(a)治療有効用量のGlobo系抗原ワクチンと薬学的に許容される担体を前記対象に投与する段階と:
(b)前記対象から試料を採取する段階と;
(c)前記試料からB細胞を単離する段階と;
(d)前記Globo系抗原と結合する前記B細胞を培養し、スクリーニングする段階と
を含む方法を提供する。
【0032】
1実施形態において、前記Globo系抗原は、Globo-H、SSEA-3又はSSEA-4を含む。1実施形態において、前記対象はヒトである。
【0033】
1実施形態において、前記試料は、血清、血液、血漿、細胞、細胞培地、リンパ節液、腫瘍生検又は組織培養物から構成される。
【0034】
1態様において、本開示は、Globo系抗原と結合する抗体又は抗原結合断片に薬物を結合させた抗体薬物複合体(ADC)を提供し、VHが配列番号3、配列番号7、配列番号11、配列番号15、配列番号19、配列番号23、配列番号27、配列番号31、配列番号35、配列番号39、配列番号43、配列番号47、配列番号51、配列番号55、配列番号59、配列番号63、配列番号67、配列番号71、配列番号75、配列番号79、配列番号83、配列番号87、配列番号91、配列番号95、配列番号99、配列番号103又は配列番号107から選択され、VLが配列番号4、配列番号8、配列番号12、配列番号16、配列番号20、配列番号24、配列番号28、配列番号32、配列番号36、配列番号40、配列番号44、配列番号48、配列番号52、配列番号56、配列番号60、配列番号64、配列番号68、配列番号72、配列番号76、配列番号80、配列番号84、配列番号88、配列番号92、配列番号96、配列番号100、配列番号104又は配列番号108から選択され、前記薬物をリンカーにより前記抗体又は前記抗原結合断片と共有結合させたものである。
【0035】
1実施形態において、前記Globo系抗原は、Globo-H、SSEA-3又はSSEA-4を含む。
【0036】
1実施形態において、前記リンカーは、p-ニトロフェニルリンカー、4-(4-N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボン酸ヒドラジド(MMCCH)リンカー、マレイミドカプロイル(MC)リンカー又はマレイミドメチルシクロヘキサン-1-カルボキシレート(MCC)リンカーを含む。1実施形態において、前記薬物は、化合物又は生物学的製剤である。1実施形態において、前記薬物は、増殖抑制剤である。
【0037】
1実施形態において、前記殖抑制剤は、シクロホスファミド、オピエート、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)、エストロゲン阻害薬(タモキシフェン又はフェアストン)、アロマターゼ阻害薬(アリミデックス、アロマシン又はフェマーラ)、下垂体ダウンレギュレーター(ゾラデックス又はリュープロン)、ノルバデックス(タモキシフェン選択的エストロゲン受容体モジュレーター)、エビスタ(ラロキシフェン)、フェソロデックス(エストロゲン受容体ダウンレギュレーター)、抗凝固薬(レフルダン)、酵素(エリテック)、造血成長因子、抗悪性腫瘍薬(代謝拮抗薬、その地の細胞毒性薬、ビンカアルカロイド、エピポドフィロトキシン、アルキル化剤、タキサン類、抗腫瘍性抗生物質、カンプトテシン、ニトロソウレア)、HER1/EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(タルセバ)、VEGFタンパク質阻害薬(アバスチン)、HER-2/ErbB2阻害薬(タイベルブ/タイケルブ)、インターフェロン、インターロイキン、モノクローナル抗体又はグルココルチコイド系ステロイドから選択される。
【0038】
1実施形態において、前記増殖抑制剤は、エルロチニブ(タルセバ)、ドセタキセル(タキソテール)、ゲムシタビン(ジェムザール)、シスプラチン、カルボプラチン、パクリタキセル(タキソール)、トラスツズマブ(ハーセプチン)、テモゾロミド(テモダール)、タモキシフェン(ノルバデックス、イスツバール、バロデックス)、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、オキサリプラチン(エロキサチン)、ボルテゾミブ(ベルケイド)、スーテント(スニチニブ)、レトロゾール(フェマーラ)、イマチニブメシル酸塩(グリベック)、MEK阻害薬(エクセリクシス)、フルベストラント(フェソロデックス)、ロイコボリン(フォリン酸)、ラパマイシン(ラパミューン)、ラパチニブ(タイケルブ)、ロナファルニブ(サラサール)、ソラフェニブ(ネクサバール)、ゲフィチニブ(イレッサ)、イリノテカン(カンプトサル)、チピファルニブ(ザルネストラ)、アブラキサン(クレモホールフリー)、パクリタキセル、バンデタニブ(ザクティマ)、クロラムブシル、テムシロリムス(トーリセル)、パゾパニブ、カンホスファミド(テルサイタ)、チオテパ、シクロホスファミド(サイトキサン、ネオサール)、5-フルオロウラシル(5-FU)、ビノレルビン(ナベルビン)、ノバントロン、テニポシド、エダトレキサート、ダウノマイシン、アミノプテリン、カペシタビン(ゼローダ)、イバンドロネート、トポイソメラーゼ阻害薬RFS2000、α-ジフルオロメチルオルニチン(DMFO)、タモキシフェン(ノルバデックス)、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、オナプリストン、フェアストン(トレミフェンクエン酸塩)、4(5)-イミダゾール、アミノグルテチミド、メゲース(酢酸メゲストロール)、アロマシン(エキセメスタン)、ホルメスタン、ファドロゾール、RIVISOR(R)(ボロゾール)、フェマーラ(レトロゾール)、アリミデックス(アナストロゾール)、フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド、ゴセレリン、トロキサシタビン(α-1,3-ジオキソランヌクレオシドシトシンアナログ)、脂質キナーゼ阻害薬、オブリメルセン(ジェナセンス)、アンギオザイム、アロベクチン、ロイベクチン、バキシド、プロロイキン、ルートテカン、アバレリックス、ベバシズマブ(アバスチン)、アレムツズマブ(キャンパス)、ベバシズマブ(アバスチン)、セツキシマブ(アービタックス)、パニツムマブ(ベクティビックス)、リツキシマブ(リツキサン)、ペルツズマブ(オムニターグ)、トラスツズマブ(ハーセプチン)、トシツモマブ(ベキサール,Corixa社)、ゲムツズマブ又はオゾガマイシン(マイロターグ)から選択される。
【0039】
1態様において、本開示は、対象におけるがんの治療方法として、がんの治療を必要とする前記対象に有効量の本願に開示するADCを投与することを含む方法を提供する。
【0040】
1実施形態において、前記がんは、肉腫、皮膚がん、白血病、リンパ腫、脳腫瘍、膠芽腫、肺がん、乳がん、口腔がん、頭頸部がん、上咽頭がん、食道がん、胃がん、肝臓がん、胆管がん、胆嚢がん、膀胱がん、膵臓がん、腸がん、大腸がん、腎臓がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、卵巣がん、精巣がん、頬粘膜がん、中咽頭がん、喉頭がん及び前立腺がんから構成される群から選択される。1実施形態において、前記対象はヒトである。
【0041】
以下、本発明の1種以上の実施形態について詳細に説明する。数種の実施形態に関する以下の図面及び詳細な説明と特許請求の範囲から本発明の他の特徴又は利点も容易に理解されよう。
【0042】
以下の詳細な説明と共に添付図面を参照すると、本発明をより完全に理解できよう。図面に示す実施形態は、本発明を例示することのみを目的としており、本発明を図面の実施形態に制限するものと解釈すべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1A】抗体価測定ELISA法による種々のヒト抗体クローン間の結合効力特性決定を示す。コーティング用抗原として
図1AはGloboH-セラミドを使用し、
図1BはGloboH-脂質を使用している。
【
図1B】抗体価測定ELISA法による種々のヒト抗体クローン間の結合効力特性決定を示す。コーティング用抗原として
図1AはGloboH-セラミドを使用し、
図1BはGloboH-脂質を使用している。
【
図2A】抗体価測定ELISA法による種々のヒト抗体クローン間の結合効力特性決定を示す。コーティング用抗原として
図2AはSSEA-3-セラミドを使用し、
図2BはSSEA-3-脂質を使用している。
【
図2B】抗体価測定ELISA法による種々のヒト抗体クローン間の結合効力特性決定を示す。コーティング用抗原として
図2AはSSEA-3-セラミドを使用し、
図2BはSSEA-3-脂質を使用している。
【
図3A】抗体価測定ELISA法による種々のヒト抗体クローン間の結合効力特性決定を示す。コーティング用抗原として
図3AはSSEA-4-セラミドを使用し、
図3BはSSEA-4-脂質を使用している。
【
図3B】抗体価測定ELISA法による種々のヒト抗体クローン間の結合効力特性決定を示す。コーティング用抗原として
図3AはSSEA-4-セラミドを使用し、
図3BはSSEA-4-脂質を使用している。
【発明を実施するための形態】
【0044】
したがって、広範ながんの診断及び治療用マーカーに対する抗体法及び組成物を提供する。抗Globo系抗原ヒト抗体を開発し、本願に開示する。使用方法としては、限定されないが、がん治療及び診断が挙げられる。本願に記載する抗体は、Globo系抗原を発現する広範ながん細胞と結合することができるため、がん診断及び治療が容易になる。前記抗体が標的とすることができる細胞としては、皮膚、血液、リンパ節、脳、肺、乳房、口腔、食道、胃、肝臓、胆管、膵臓、結腸、腎臓、子宮頸部、卵巣、前立腺等におけるもの等の癌腫が挙げられる。
【0045】
定義
特に指定しない限り、本発明の実施には当業者の能力の範囲内に含まれる従来の分子生物学、微生物学、組換えDNA及び免疫学の技術を利用する。例えば、Molecular Cloning A Laboratory Manual,2nd Ed.,ed.by Sambrook,Fritsch and Maniatis(Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989);DNA Cloning,Volumes I and II(D.N.Glover ed.,1985);Culture Of Animal Cells(R.I.Freshney,Alan R.Liss,Inc.,1987);Immobilized Cells And Enzymes(IRL Press,1986);B.Perbal,A Practical Guide To Molecular Cloning(1984);学術論文 Methods In Enzymology(Academic Press,Inc.,N.Y.);Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells(J.H.Miller and M.P.Calos eds.,1987,Cold Spring Harbor Laboratory);Methods In Enzymology,Vols.154 and 155(Wu et al.eds.),Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology(Mayer and Walker,eds.,Academic Press,London,1987);Antibodies:A Laboratory Manual,by Harlow and Lane(Cold Spring Harbor Laboratory Press,1988);及びHandbook Of Experimental Immunology,Volumes I-IV(D.M.Weir and C.C.Blackwell,eds.,1986)参照。
【0046】
本願で使用する「グリカン」なる用語は、多糖又はオリゴ糖を意味する。グリカンは本願では糖タンパク質、糖脂質、糖ペプチド、グリコプロテオーム、ペプチドグリカン、リポ多糖又はプロテオグリカン等の複合糖質の糖部分の意味でも使用する。グリカンは、通常では単に複数の単糖がO-グリコシド結合により繋がったものである。例えば、セルロースは、D-グルコースがβ-1,4結合したグリカン(より厳密にはグルカン)であり、キチンは、N-アセチル-D-グルコサミンがβ-1,4結合したグリカンである。グリカンは、単糖残基のホモポリマーでもヘテロポリマーでもよく、直鎖状でも分岐状でもよい。グリカンは、糖タンパク質やプロテオグリカンのようにタンパク質と結合したものでもよい。グリカンは、一般に、細胞の外面に存在する。真核生物には、O-結合型グリカンとN-結合型グリカンとが非常に多く見られ、頻度は低いが、原核生物に存在している場合もある。シークオンではアスパラギンのR基窒素(N)にN-結合型グリカンが結合している。シークオンとは、Asn-X-Ser又はAsn-X-Thr配列であり、ここでXはプロリン以外の任意のアミノ酸である。
【0047】
本願で使用する「抗原」なる用語は、免疫応答を誘発することができる任意の物質として定義される。
【0048】
本願で使用する「免疫原性」なる用語は、免疫原、抗原又はワクチンが免疫応答を刺激する能力を意味する。
【0049】
本願で使用する「エピトープ」なる用語は、抗体又はT細胞受容体の抗原結合部位と接触する抗原分子の部分として定義される。
【0050】
本願で使用する「ワクチン」なる用語は、(死滅又は弱毒化させた)完全体の病原生物又はこのような生物の成分(例えばタンパク質、ペプチド又は多糖)から構成され、前記生物に起因する疾患に対する免疫を付与するために使用される、抗原を含有する製剤を意味する。ワクチン製剤は、天然でも合成でも組換えDNA技術により得られたものでもよい。
【0051】
本願で使用する「抗原特異的」なる用語は、特定の抗原又は前記抗原の断片の供給により、特異的な細胞増殖を生じる細胞集団の性質を意味する。
【0052】
本願で使用する「特異的結合」なる用語は、結合対(例えば抗体と抗原)の間の相互作用を意味する。種々の例において、特異的結合は約10-6モル/リットル、約10-7モル/リットル、又は約10-8モル/リットル又はそれ以下の親和性定数により表すことができる。
【0053】
本願で使用する「実質的に同様」、「実質的に同一」、「同等」又は「実質的に同等」なる用語は、2つの数値(例えば、ある分子に結び付けられる数値と参照/比較分子に結び付けられる数値)の差がこれらの数値(例えばKd値、抗ウイルス効果等)により表される生物学的特徴の文脈内で生物学的及び/又は統計的に殆ど又は全く有意でないと当業者に判断される程度までこれらの2つの数値が十分に高度に類似していることを意味する。前記2つの数値の差は、例えば参照/比較分子の数値に対して約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満、及び/又は約10%未満である。
【0054】
本願で使用する「実質的に低下」又は「実質的に相違」なる用語は、2つの数値(一般にはある分子に結び付けられる数値と参照/比較分子に結び付けられる数値)の差がこれらの数値(例えばKd値)により表される生物学的特徴の文脈内で統計的に有意であると当業者に判断される程度までこれらの2つの数値が十分に高度に相違していることを意味する。前記2つの数値の差は、例えば参照/比較分子の数値に対して約10%超、約20%超、約30%超、約40%超、及び/又は約50%超である。
【0055】
「結合親和性」とは、一般にある分子(例えば抗体)の単一結合部位とその結合パートナー(例えば抗原)との間の非共有的相互作用の総数の大きさを意味する。特に指定しない限り、本願で使用する「結合親和性」とは、結合対のメンバー(例えば抗体と抗原)間の1対1の相互作用を表す固有の結合親和性を意味する。分子XのそのパートナーYに対する親和性は、一般に解離定数(Kd)により表すことができる。親和性は、本願に記載する方法等の当分野で公知の一般的な方法により、測定することができる。低親和性抗体は、一般に抗原との結合が遅く、解離し易い傾向があり、高親和性抗体は、一般に抗原との結合がより迅速であり、長時間結合し続ける傾向がある。結合親和性の測定方法は、種々の方法が当分野で公知であり、いずれも本発明の目的に使用することができる。以下、特定の具体的な実施形態について説明する。
【0056】
本願で使用する「ベクター」なる用語は、これに連結させた別の核酸を輸送することが可能な核酸分子を意味するものである。1分類のベクターは「プラスミド」であり、これは他のDNAセグメントをライゲーションすることができる環状二本鎖DNAループを意味する。別の分類のベクターはファージベクターである。別の分類のベクターは、他のDNAセグメントをウイルスゲノムにライゲーションすることができるウイルスベクターである。ベクターによっては、これらを導入した宿主細胞中で自己複製することができる(例えば細菌複製起点をもつ細菌ベクターや哺乳動物エピソーマルベクター)。また、宿主に導入すると、宿主のゲノムに組込むことができ、宿主ゲノムと共に複製されるベクターもある(例えば哺乳動物非エピソーマルベクター)。更に、ベクターによっては、これらと機能的に連結させた遺伝子の発現を誘導することができる。このようなベクターを本願では「組換え発現ベクター」(又は簡単に「組換えベクター」)と呼ぶ。一般に、組換えDNA技術で有用な発現ベクターは、プラスミドの形態であることが多い。プラスミドは、最も広く使用されている形態のベクターであるので、本明細書では「プラスミド」と「ベクター」とを同義に使用する場合がある。
【0057】
「ポリヌクレオチド」又は「核酸」は、本願では同義に使用され、任意の長さのヌクレオチドポリマーを意味し、DNAとRNAを含む。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾型ヌクレオチドもしくは塩基、及び/又はそれらのアナログでもよいし、DNAもしくはRNAポリメラーゼ又は合成反応によりポリマーに取り込むことができる任意の基質でもよい。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチドとそのアナログ等の修飾型ヌクレオチドを含むものでもよい。ヌクレオチド構造を修飾する場合には、ポリマーのアセンブリの前に行ってもよいし、後に行ってもよい。ヌクレオチドの配列に、非ヌクレオチド成分を挿入してもよい。標識の結合などにより、合成後にポリヌクレオチドを更に修飾してもよい。他の型の修飾としては、例えば、天然に存在するヌクレオチドの1個以上をアナログで置換する「キャップ」置換、ヌクレオチド間修飾として、例えば非荷電結合(例えばメチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホロアミデート、カルバメート等)と荷電結合(例えばホスホロチオエート、ホスホロジチオエート等)とによる修飾、例えばタンパク質(例えばヌクレアーゼ、毒素、抗体、シグナルペプチド、ポリ-L-リジン等)等のペンダント部分を含む修飾、インターカレーター(例えばアクリジン、プソラレン等)による修飾、キレーター(例えば金属、放射性金属、ボロン、酸化性金属等)を含む修飾、アルキル化剤を含む修飾、修飾結合(例えばα-アノマー核酸等)による修飾、及び前記ポリヌクレオチドの未修飾形が挙げられる。更に、糖に通常存在する水酸基のいずれかを、例えばホスホン酸基、リン酸基で置換してもよいし、標準保護基により保護してもよいし、他のヌクレオチドと他の結合を形成するように活性化させてもよいし、固体又は半固体支持体に結合してもよい。5’及び3’末端OHをリン酸化することもできるし、アミン又は炭素原子数1~20の有機キャッピング基部分で置換することもできる。他の水酸基を標準保護基に誘導体化してもよい。ポリヌクレオチドは、更に、当分野で一般に公知の同様の形態のリボース糖又はデキシリボース糖を含むことができ、例えば2’-O-メチルリボース、2’-O-アリルリボース、2’-フルオロリボース又は2’-アジドリボース、炭環式糖アナログ、α-アノマー糖、エピマー糖(例えばアラビノース、キシロース又はリキソース)、ピラノース糖、フラノース糖、セドヘプツロース、非環状アナログ及び塩基性ヌクレオシドアナログ(例えばメチルリボシド)が挙げられる。1個以上のホスホジエステル結合を代替連結基で置換えてもよい。これらの代替連結基としては、限定されないが、リン酸基をP(O)S(「チオエート」)、P(S)S(「ジチオエート)、(O)NR2(「アミデート」)、P(O)R、P(O)OR’、CO又はCH2(「ホルムアセタール」)で置換えた実施形態が挙げられ、上記式中、R又はR’は各々独立してH又は任意にエーテル(-O-)結合を含む置換もしくは非置換のアルキル(1-20C)、アリール、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニルもしくはアラルキルである。ポリヌクレオチド中の全ての結合が同一である必要はない。以上の記載はRNA及びDNAを含めて本願に記載する全ポリヌクレオチドに適用される。
【0058】
本願で使用する「オリゴヌクレオチド」とは一般に、短いポリヌクレオチドで一般には一本鎖であり、一般には合成されたものを意味し、必ずしもそうでない場合もあるが、一般には約200ヌクレオチド長未満である。「オリゴヌクレオチド」及び「ポリヌクレオチド」なる用語は、相互に排他的ではない。ポリヌクレオチドに関する上記記載はオリゴヌクレオチドについても同様に完全に適用可能である。
【0059】
「抗体」(Ab)及び「免疫グロブリン」(Ig)とは、同一の構造特徴をもつ糖タンパク質である。抗体は特定の抗原に対して結合特異性を示すが、免疫グロブリンは抗体だけでなく、一般に抗原特異性をもたない他の抗体様分子も含む。後者の分類のポリペプチドは例えばリンパ系による産生レベルが低く、ミエローマによる産生レベルが高い。
【0060】
「抗体」及び「免疫グロブリン」なる用語は、広義には同義に使用され、モノクローナル抗体(例えば全長即ち無傷のモノクローナル抗体)、ポリクローナル抗体、一価抗体、多価抗体、多重特異性抗体(例えば、所望の生物学的活性を示すという条件で二重特異性抗体)を含み、更に(本願により詳細に記載するような)所定の抗体断片も含むことができる。抗体は、キメラ抗体、ヒト抗体及び/又は親和性成熟抗体とすることができる。
【0061】
抗体の「可変部」又は「可変領域」とは、前記抗体の重鎖又は軽鎖のアミノ末端領域を意味する。これらの領域は、一般に、抗体の最も可変性の高い部分であり、抗原結合部位を含む。
【0062】
「可変」なる用語は、可変領域の所定の部分が抗体間で配列に大きな相違があることを意味し、特定の各抗体のその特定の抗原に対する結合及び特異性に使用される。しかし、可変性は、抗体の可変領域全体に均等に分布しているわけではない。可変性は、軽鎖可変領域と重鎖可変領域との両方の相補性決定領域(CDR)又は超可変部と呼ばれる3個のセグメントに集中している。可変領域のうちで保存性の高い部分をフレームワーク(FR)と言う。天然重鎖及び軽鎖の可変領域は、各々4個のFR領域が3個のCDRにより連結され、ほぼβシート構造をとり、ループを形成して前記βシート構造を連結し、場合によってはその一部となる。各鎖のCDRは、FR領域を介して相互に非常に近接した状態に保持され、他方の鎖のCDRと共に抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,National Institute of Health,Bethesda,Md.(1991)参照)。定常領域は、抗体と抗原との結合に直接関与しないが、抗体依存性細胞障害への抗体の関与等の種々のエフェクター機能を示す。
【0063】
抗体のパパイン消化は、各々1つの抗原結合部位をもつ「Fab」断片と呼ばれる2個の同一の抗原結合断片と、残りの1個の「Fc」断片(その名は、容易に結晶化できる能力にちなむ)とを生じる。ペプシン処理は、2つの抗原結合部位をもちそしてなお抗原架橋能を維持するF(ab’)2断片を生じる。
【0064】
「Fv」は、完全な抗原認識・結合部位を含む最小の抗体断片である。二本鎖Fv種において、この領域は、1個の重鎖可変領域と1個の軽鎖可変領域とが緊密に非共有的に会合した二量体から構成される。一本鎖Fv種では、軽鎖及び重鎖が二本鎖Fv種と同様の「二量体」構造で会合できるように、1個の重鎖可変領域と1個の軽鎖可変領域とをフレキシブルペプチドリンカーにより共有的に連結させることができる。この構造では、各可変領域の3個のCDRが相互作用してVH-VL二量体の表面に抗原結合部位を形成する。合計で6個のCDRが、抗体に抗原結合特異性を付与する。しかし、可変領域1個(即ち抗原に特異的なCDR3個のみを含むFvの半分)でも、完全な結合部位に比較すると親和性は低いが、抗原認識・結合能がある。
【0065】
Fab断片は、更に、軽鎖の定常領域と、重鎖の第1の定常領域(CH1)とを含む。Fab’断片は、重鎖CH1領域のカルボキシ末端に抗体ヒンジ領域からの1個以上のシステインを含む数個の残基が付加されているという点が、Fab断片と相違する。定常領域のシステイン残基が遊離のチオール基をもつFab’を、本願ではFab’-SHと呼ぶ。F(ab’)2抗体断片は、ヒンジシステインを相互間に含むFab’断片の対として最初に作製された。抗体断片の他の化学的カップリングも知られている。
【0066】
全ての脊椎動物種に由来する抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」は、それらの定常領域のアミノ酸配列に基づいてカッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる2種類の明白に異なる型の一方に割り当てることができる。
【0067】
抗体(免疫グロブリン)は、それらの重鎖の定常領域のアミノ酸配列に応じて、種々のクラスに割り当てることができる。免疫グロブリンにはIgA、IgD、IgE、IgG及びIgMの5種類の主要なクラスがあり、これらのうちの数種は、更に、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2等のサブクラス(アイソタイプ)に分けることができる。これらの各クラスの免疫グロブリンに対応する重鎖定常領域は、夫々α、δ、ε、γ及びμと呼ばれる。種々のクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造及び三次元構造は周知であり、例えばAbbas et al.Cellular and Mol.Immunology,4th ed.(2000)に概説されている。抗体は、抗体と1種以上の他のタンパク質又はペプチドとの共有的又は非共有的会合により形成される大きな融合分子の一部でもよい。
【0068】
「全長抗体」、「無傷の抗体」及び「完全長抗体」なる用語は、本願で同義に使用され、以下に定義するような抗体断片ではなく、その実質的に無傷の形態の抗体を意味する。これらの用語は特に、重鎖にFc領域を含む抗体を意味する。
【0069】
「抗体断片」は、無傷の抗体の一部分のみを含み、この部分は、無傷の抗体に存在するときにこの部分に一般に結び付けられる機能の少なくとも1つ、大半又は全部を維持する。1実施形態において、抗体断片は、無傷の抗体の抗原結合部位を含み、従って、抗原結合能を維持する。別の実施形態において、抗体断片(例えばFc領域を含むもの)は、無傷の抗体に存在するときにFc領域に一般に結び付けられる生物学的機能(例えばFcRn結合、抗体半減期調節、ADCC機能及び補体結合)の少なくとも1つを維持する。1実施形態において、抗体断片は、無傷の抗体と実質的に同様のインビボ半減期をもつ一価抗体である。例えば、このような抗体断片は、前記断片にインビボ安定性を付与することが可能なFc配列と連結された抗原結合アームを含むことができる。
【0070】
本願で使用する「モノクローナル抗体」なる用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られた抗体を意味し、即ち前記集団を構成する個々の抗体は、場合により少量存在する可能性のある自然突然変異を除いて同一である。したがって、「モノクローナル」なる修飾語は、この抗体が別個の抗体の混合物ではないという特徴を示す。このようなモノクローナル抗体は、一般的に、標的と結合するポリペプチド配列を含む抗体を含み、標的と結合する前記ポリペプチド配列は、複数のポリペプチド配列から標的と結合する単一のポリペプチド配列を選択する方法により得られたものとする。例えば、選択方法は、ハイブリドーマクローン、ファージクローン又は組換えDNAクローンのプール等の複数のクローンから唯1個のクローンを選択する方法とすることができる。ポリクローナル抗体製剤は、一般的に、種々の決定基(エピトープ)に対する種々の抗体を含むが、これとは対照的に、モノクローナル抗体製剤の各モノクローナル抗体は抗原上の単一の決定基に対する抗体である。モノクローナル抗体製剤は、それらの特異性に加え、一般的に他の免疫グロブリンで汚染されていないという利点がある。「モノクローナル」なる修飾語は、この抗体が実質的に均一な抗体集団から得られたという特徴を示すものであり、この抗体が特定の方法により作製される必要があると解釈すべきではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は種々の技術により作製することができ、例えば、ハイブリドーマ法(例えば、Kohler et al.,Nature,256:495(1975);Harlow et al.,Antibodies:A Laboratory Manual,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,2nd ed.1988);Hammerling et al.,in:Monoclonal Antibodies and T-Cell hybridomas 563-681(Elsevier,N.Y.,1981))、組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号参照)、ファージディスプレイ技術(例えば、Clackson et al.,Nature,352:624-628(1991);Marks et al.,J.Mol.Biol.222:581-597(1992);Sidhu et al.,J.Mol.Biol.338(2):299-310(2004);Lee et al.,J.Mol.Biol.340(5):1073-1093(2004);Fellouse,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101(34):12467-12472(2004);及びLee et al.,J.Immunol.Methods 284(1-2):119-132(2004)参照)、及びヒト免疫グロブリン遺伝子座又はヒト免疫グロブリン配列をコードする遺伝子の一部又は全部をもつ動物でヒト又はヒト様抗体を作製する技術(例えば、WO98/24893;WO96/34096;WO96/33735;WO91/10741;Jakobovits et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:2551(1993);Jakobovits et al.,Nature 362:255-258(1993);Bruggemann et al.,Year in Immunol.7:33(1993);米国特許第5,545,807号、5,545,806号、5,569,825号、5,625,126号、5,633,425号、5,661,016号;Marks et al.,Bio.Technology 10:779-783(1992);Lonberg et al.,Nature 368:856-859(1994);Morrison,Nature 368:812-813(1994);Fishwild et al.,Nature Biotechnol.14:845-851(1996);Neuberger,Nature Biotechnol.14:826(1996)及びLonberg and Huszar,Intern.Rev.Immunol.13:65-93(1995)参照)が挙げられる。
【0071】
本願のモノクローナル抗体は、具体的に、重鎖及び/又は軽鎖の一部が特定の生物種に由来する抗体又は特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一又は相同であり、重鎖及び/又は軽鎖の残余が別の生物種に由来する抗体又は別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一もしくは相同である「キメラ」抗体を含み、そして、所望の生物学的活性を示す場合にのみ、このような抗体の断片を含む(米国特許第4,816,567号;及びMorrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851-6855(1984))。
【0072】
本発明の抗体は、更に、本発明の抗体から作製されたキメラ型モノクローナル抗体も含むことができる。
【0073】
抗体は全長でもよいし、抗原結合部分をもつ前記抗体の1断片(又は複数の断片)を含むものでもよく、限定されないが、Fab、F(ab’)2、Fab’、F(ab)’、Fv、一本鎖Fv(scFv)、二価scFv(bi-scFv)、三価scFv(tri-scFv)、Fd、dAb断片(例えばWard et al,Nature,341:544-546(1989))、CDR、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、一次抗体、一本鎖抗体分子、及び抗体断片から形成される多重特異性抗体が挙げられる。組換え法又は合成リンカーを使用して抗体断片を連結することにより作製された一本鎖抗体も本発明に含まれる。Bird et al.Science,1988,242:423-426.Huston et al,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1988,85:5879-5883。
【0074】
本発明の抗体又はその抗原結合部分は、単一特異性でもよいし、二重特異性でもよいし、多重特異性でもよい。
【0075】
IgG(例えばIgGl、IgG2、IgG3、IgG4)、IgM、IgA(IgAl、IgA2)、IgD又はIgEを含む全ての抗体アイソタイプが、本発明に含まれる(全てのクラス及びサブクラスが本発明に含まれる)。抗体又はその抗原結合部分は、哺乳動物(例えばマウス、ヒト)抗体又はその抗原結合部分とすることができる。抗体の軽鎖は、κ型でもλ型でもよい。
【0076】
したがって、本発明の抗がん性抗体は、重鎖又は軽鎖可変部と共に、本発明の抗体に組込むことができる非マウス由来、好ましくはヒト由来の重鎖もしくは軽鎖定常部、フレームワーク領域又はその任意の部分を含む。
【0077】
重鎖可変部及び軽鎖可変部が参照抗体により産生される抗体の重鎖可変部及び軽鎖可変部に対して少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約81%、少なくとも約82%、少なくとも約83%、少なくとも約84%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%超、少なくとも約88%超、少なくとも約89%超、少なくとも約90%超、少なくとも約91%超、少なくとも約92%超、少なくとも約93%超、少なくとも約94%超、少なくとも約95%超、少なくとも約96%超、少なくとも約97%超、少なくとも約98%超、少なくとも約99%超又は約100%相同であり且つ糖抗原(例えばGloboH、SSEA-3又はSSEA-4)と結合することができる抗体も含む。相同性は、アミノ酸又は塩基配列レベルで存在することができる。
【0078】
本願で使用する場合に、本発明のタンパク質の実質的に「相同性」及び/又は「相同配列」は、限定されないが、保存的アミノ酸置換、例えば抗体のVH、VL又はCDR領域に影響を与えない改変(例えば別のリンカー配列を使用したscFv抗体、タグ配列又は抗原の結合に寄与しない他の成分を付加した抗体)、あるいはある型もしくはフォーマットの抗体分子もしくは断片を別の型もしくはフォーマットの抗体分子もしくは断片に変換(例えばFabからscFv又はその逆に変換)又はある抗体分子から特定のクラスもしくはサブクラスの抗体分子に変換(例えばある抗体分子からIgG又はそのサブクラス、例えばIgG1もしくはIgG3に変換)するための改変を、含む。
【0079】
本願で使用する「保存的アミノ酸置換」とは、アミノ酸残基を側鎖が類似する別のアミノ酸残基で置換える置換である。側鎖が類似するアミノ酸残基のファミリーは、当分野で規定されており、塩基性側鎖(例えばリジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えばアスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えばグリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えばグリシン、システイン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β分岐側鎖(例えばスレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香族側鎖(例えばチロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が挙げられる。
【0080】
相同性は、任意の従来の方法により評価することができる。但し、配列間の相同性の程度を決定するには、配列の多重アラインメントを行うコンピュータプログラムが有用であり、例えばClustalW(Thompson et al.,1994)が挙げられる。必要に応じて、ClustalWアルゴリズムをBLOSUM62スコアリングマトリックス(Henikoff and Henikoff,1992)と共に使用することができ、ギャップオープニングペナルティを10とし、ギャップエクステンションペナルティを0.1とし、配列の一方の全長の少なくとも50%がアラインメントに含まれる配列間で最高順位のマッチを得る。配列を整列させるために使用することができる他の方法としては、Needleman and Wunsch(1970)のアラインメント法のSmith and Waterman(1981)による改訂版があり、2つの配列間で最高順位のマッチを得、これらの2つの配列間で一致するアミノ酸の数を求める。2つのアミノ酸配列間の一致度百分率を計算するための他の方法も一般に当業者に認められており、例えばCarillo and Lipton(1988)に記載されている方法や、Computational Molecular Biology,Lesk,e.d.Oxford University Press,New York,1988,Biocomputing:Informatics and Genomics Projectsに記載されている方法が挙げられる。
【0081】
一般に、このような計算にはコンピュータプログラムを利用することができる。この目的には、ALIGN(Myers and Miller,1988)、FASTA(Pearson and Lipman,1988;Pearson,1990)及びギャップ付きBLAST(Altschul et al.,1997)、BLASTP、BLASTN又はGCG(Devereux et al.,1984)のように、配列ペアを比較・整列させるプログラムも有用である。更に、欧州バイオインフォマティクス研究所(European Bioinformatics institute)のDaliサーバーはタンパク質配列の構造に基づくアラインメントを提供している(Holm,1993;1995;1998)。
【0082】
抗体又は抗原結合部分は、ペプチドでもよい。このようなペプチドとしては、生物学的活性(例えば糖抗原との結合)を示すペプチドの変異体、アナログ、オーソログ、ホモログ及び誘導体を挙げることができる。これらのペプチドは、アミノ酸の1種以上のアナログ(例えば非天然アミノ酸、非類縁生物系に天然でしか存在しないアミノ酸、哺乳動物系に由来する修飾アミノ酸等)、結合を置換したペプチド、及び当分野で公知の他の改変体を含むことができる。
【0083】
特定のアミノ酸が、置換、欠失又は付加された抗体又はその抗原結合部分も、本発明の範囲に含まれる。代表的な1実施形態において、これらの改変は、結合親和性等のペプチドの生物学的性質に実質的な影響を与えない。別の代表的な実施形態において、抗体は、抗原に対する抗体の結合親和性を改善する等の目的でフレームワーク領域にアミノ酸置換があってもよい。更に別の代表的な実施形態では、選択された少数のアクセプターフレームワーク残基を対応するドナーアミノ酸で置換えることができる。ドナーフレームワークは、成熟もしくは生殖細胞系列ヒト抗体フレームワーク配列又はコンセンサス配列とすることができる。表現型に影響を与えないサイレントアミノ酸置換の実施方法に関する手引きについては、Bowie et al.,Science,247:1306-1310(1990).Cunningham et al,Science,244:1081-1085(1989).Ausubel(ed.),Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley and Sons,Inc.(1994).T.Maniatis,E.F.Fritsch and J.Sambrook,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor laboratory,Cold Spring Harbor,N.Y.(1989).Pearson,Methods Mol.Biol.243:307-31(1994).Gonnet et al.,Science 256:1443-45(1992)参照。
【0084】
抗体又はその抗原結合部分は、誘導体化することもできるし、別の機能的分子に連結することもできる。例えば、(化学的カップリング、遺伝子融合、非共有的相互作用等により)抗体を別の抗体、検出可能な試薬、細胞毒性薬、薬剤、別の分子との会合に介在することができるタンパク質もしくはペプチド(例えばストレプトアビジンコア領域又はポリヒスチジンタグ)、アミノ酸リンカー、シグナル配列、免疫原性キャリア、又はタンパク質精製に有用なリガンド(例えばグルタチオン-S-トランスフェラーゼ、ヒスチジンタグ及びブドウ球菌属プロテインA)等の1個以上の他の分子種と機能的に連結することができる。ある種の誘導体化タンパク質は、(同一種又は別種の)2個以上のタンパク質を架橋することにより生成される。適切な架橋剤としては、適切なスペーサーにより分離された2個の別個の反応性基をもつヘテロ二官能性のもの(例えばm-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル)又はホモ二官能性のもの(例えばスベリン酸ジスクシンイミジル)が挙げられる。このようなリンカーは、Pierce Chemical Company,Rockford,111から入手可能である。タンパク質を誘導体化(又は標識)することができる有用な検出可能な試薬としては、蛍光化合物、種々の酵素、補欠分子族、発光物質、生物発光物質及び放射性物質が挙げられる。検出可能な蛍光試薬の非限定的な例としては、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン及びフィコエリスリンが挙げられる。タンパク質又は抗体を、アルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、アセチルコリンエステラーゼ、グルコースオキシダーゼ等の検出可能な酵素で誘導体化することもできる。タンパク質を補欠分子族(例えばストレプトアビジン/ビオチンやアビジン/ビオチン)で誘導体化することもできる。
【0085】
本発明の抗体又はその抗原結合部分の、機能的に活性な変異体をコードする核酸も、本発明に含まれる。これらの核酸分子は、中ストリンジェンシー、高ストリンジェンシー又は超高ストリンジェンシー条件下で、本発明の抗体又はその抗原結合部分のいずれかをコードする核酸とハイブリダイズすることができる。ハイブリダイゼーション反応を実施するための手引きについては、本願に援用するCurrent Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,N.Y.6.3.1-6.3.6,1989参照。本願で言及する特定のハイブリダイゼーション条件は、以下の通りである。1)中ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件:約45℃にて6×SSCで処理後、60℃にて0.2×SSC,0.1%SDSで1回以上洗浄;2)高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件:約45℃にて6×SSCで処理後、65℃にて0.2×SSC,0.1%SDSで1回以上洗浄;及び3)超高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件:65℃にて0.5Mリン酸ナトリウム,7%SDSで処理後、65℃にて0.2×SSC,1%SDSで1回以上洗浄。
【0086】
適切な発現系で発現させることができる発現ベクターに、本発明の抗体又はその抗原結合部分をコードする核酸を導入した後、発現された抗体又はその抗原結合部分を単離又は精製してもよい。任意に、本発明の抗体又はその抗原結合部分をコードする核酸を、無細胞翻訳系で翻訳させることができる。米国特許第4,816,567号.Queen et al,Proc Natl Acad Sci USA,86:10029-10033(1989)。
【0087】
所望の抗体の軽鎖及び重鎖(又はその部分)をコードするDNAで形質転換した宿主細胞により、本発明の抗体又はその抗原結合部分を産生させることができる。標準技術を使用してこれらの培養上清及び/又は細胞から、抗体を単離・精製することができる。例えば、抗体の軽鎖、重鎖又はその両方をコードするDNAで、宿主細胞を形質転換すればよい。組換えDNA技術を使用し、結合に不要な軽鎖と重鎖(例えば定常部)の一方又は両方をコードするDNAの一部又は全部を除去してもよい。
【0088】
本願で使用する「実質的に精製された」又は「実質的に単離された」とは、その天然状態で通常これと会合している実質的に全ての他の分子から分離された状態にある分子(例えば化合物)を意味する。実質的に精製された分子は、製剤中に存在する主要な分子種であることが好ましい。特に、実質的に精製された分子は、天然混合物中に存在する他の分子(溶媒を除く)の除去率を60%超とすることができ、75%超が好ましく、又は85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、97.5%、98%、98.5%、99%又は99.5%超あるいは上記の任意の2個の百分率値の間の任意の範囲とすることができる。
【0089】
本発明の核酸は、原核細胞と真核細胞を含む種々の適切な細胞で発現させることができ、例えば細菌細胞(例えば大腸菌)、酵母細胞、植物細胞、昆虫細胞及び哺乳動物細胞が挙げられる。多数の哺乳動物細胞株が当分野で公知であり、アメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection,ATCC)から入手可能な不死化細胞株が挙げられる。細胞の非限定的な例としては、哺乳動物由来又は哺乳動物様特徴の全ての細胞株が挙げられ、限定されないが、サル腎臓細胞(COS、例えばCOS-1、COS-7)、HEK293、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、例えばBHK21)、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、NSO、PerC6、BSC-1、ヒト肝細胞がん細胞(例えばHepG2)、SP2/0、HeLa、Madin-Darbyウシ腎臓細胞(MDBK)、ミエローマ細胞及びリンパ腫細胞の親細胞、誘導体及び/又は人工変異体が挙げられる。人工変異体としては、例えばグリカンプロファイル改変誘導体及び/又は部位特異的組込み部位誘導体が挙げられる。
【0090】
本発明は、更に、本願に記載する核酸を導入した細胞を提供する。前記細胞は、ハイブリドーマ又はトランスフェクタントとすることができる。
【0091】
あるいは、当分野で周知の固相法により、本発明の抗体又はその抗原結合部分を合成することもできる。Solid Phase Peptide Synthesis:A Practical Approach by E.Atherton and R.C.Sheppard,published by IRL at Oxford University Press(1989).Methods in Molecular Biology,Vol.35:Peptide Synthesis Protocols(ed.M.W.Pennington and B.M.Dunn),chapter 7.Solid Phase Peptide Synthesis,2nd Ed.,Pierce Chemical Co.,Rockford,IL(1984).G.Barany and R.B.Merrifield,The Peptides:Analysis,Synthesis,Biology,editors E.Gross and J.Meienhofer,Vol.1 and Vol.2,Academic Press,New York,(1980),pp.3-254.M.Bodansky,Principles of Peptide Synthesis,Springer-Verlag,Berlin(1984)。
【0092】
本願で使用する場合に、「超可変部」、「HVR」又は「HV」なる用語は、抗体可変領域のうちで配列が超可変である領域及び/又は構造的に明確なループを形成する領域を意味する。一般に、抗体は、VHに3個(H1,H2,H3)とVLに3個(L1,L2,L3)との6個の超可変部を含む。超可変部については、多数の定義が使用されており、これらは本願において組み込まれる。Kabatによる相補性決定領域(CDR)は配列可変性に基づき、最も広く使用されている(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991))。一方、Chothiaは、構造ループの位置に着目している(Chothia and Lesk J.Mol.Biol.196:901-917(1987))。
【0093】
「フレームワーク」又は「FW」残基とは、本願に定義するような超可変部残基以外の可変領域残基である。
【0094】
「Kabatによる可変領域残基ナンバリング」又は「Kabatによるアミノ酸位置ナンバリング」なる用語及びその活用形はKabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991)において抗体編纂データの重鎖可変領域又は軽鎖可変領域に使用されているナンバリングシステムを意味する。このナンバリングシステムを使用すると、実際の一次アミノ酸配列は、可変領域のFR又はHVRの短縮又は挿入に対応してアミノ酸が増減している場合がある。例えば、重鎖可変領域はH2の残基52の後に1アミノ酸(Kabatによる残基52a)が挿入され、重鎖FR残基82の後に複数の残基(例えばKabatによる残基82a、82b及び82c等)が挿入されている場合がある。任意の抗体についてKabatによる残基ナンバリングを決定するにはこの抗体の配列の相同領域で「標準」Kabatによりナンバリングした配列と整列させればよい。
【0095】
「一本鎖Fv」ないし「scFv」抗体断片は抗体のVH領域とVL領域とを含み、これらの領域が1本のポリペプチド鎖に存在する。一般に、scFvポリペプチドは、更に、scFvが抗原結合に望ましい構造を形成できるように、VH領域とVL領域の間にポリペプチドリンカーを含む。scFvについては、Pluckthun,in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,Springer-Verlag,New York,pp.269-315(1994)参照。
【0096】
「ダイアボディ」なる用語は、2つの抗原結合部位をもつ小さい抗体断片を意味し、前記断片は、同一のポリペプチド鎖で重鎖可変領域(VH)が軽鎖可変領域(VL)と連結している(VH-VL)。短か過ぎて同一鎖上の2つの領域を対合させることができないリンカーを使用することにより、これらの領域は、別の鎖の相補的領域と対合し、2つの抗原結合部位を形成する。ダイアボディは、例えば、EP404,097;WO93/1161;及びHollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444-6448(1993)により詳細に記載されている。
【0097】
「ヒト抗体」とは、ヒトにより産生される抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列をもつ抗体及び/又は本願に開示するヒト抗体作製技術のいずれかを使用して作製された抗体である。
【0098】
「親和性成熟」抗体とは、その1個以上のHVRの1カ所以上の改変により、このような改変のない親抗体に比較して抗原に対する抗体の親和性が改善された抗体である。1実施形態において、親和性成熟抗体は、標的抗原に対する親和性がナノモル又はピコモルレベルである。親和性成熟抗体は、当分野で公知の方法により作製される。Marks et al.Bio/Technology 10:779-783(1992)はVH領域とVL領域のシャフリングによる親和性成熟について記載している。Barbas et al.Proc Nat.Acad.Sci.USA 91:3809-3813(1994);Schier et al.Gene 169:147-155(1995);Yelton et al.J.Immunol.155:1994-2004(1995);Jackson et al.,J.Immunol.154(7):3310-9(1995);及びHawkins et al,J.Mol.Biol.226:889-896(1992)には、CDR及び/又はフレームワーク残基のランダム突然変異誘発が記載されている。
【0099】
「ブロッキング」抗体又は「アンタゴニスト」抗体とは、この抗体が結合する抗原の生物学的活性を阻害又は低下させる抗体である。所定のブロッキング抗体又はアンタゴニスト抗体は、前記抗原の生物学的活性を実質的又は完全に阻害する。
【0100】
本願で使用する「アゴニスト抗体」とは、目的のポリペプチドの機能的活性の少なくとも1種と似ている抗体である。
【0101】
「疾患」とは、本発明の抗体の投与により効果のある任意の病態である。これは該当疾患の素因を哺乳動物に与える病態を含めて慢性及び急性疾患ないし疾病を含む。本願で治療する疾患の非限定的な例としては、がんが挙げられる。
【0102】
「細胞増殖性疾患」及び「増殖性疾患」なる用語は、何らかの程度の異常な細胞増殖を伴う疾患を意味する。1実施形態において、細胞増殖性疾患はがんである。
【0103】
本願で使用する「腫瘍」とは、悪性であるか良性であるかを問わずに全ての新生細胞成長及び増殖と、全ての前がん及びがん細胞及び組織とを意味する。本願で言及する場合に「がん」、「がん性」、「細胞増殖性疾患」、「増殖性疾患」及び「腫瘍」なる用語は、相互に排他的ではない。
【0104】
「がん」及び「がん性」なる用語は、無制御な細胞成長/増殖を一般に特徴とする哺乳動物における生理的状態を意味する。がんの例としては、限定されないが、癌腫、リンパ腫(例えばホジキンリンパ腫及び非ホジキンリンパ腫)、芽細胞腫、肉腫及び白血病が挙げられる。このようながんのより具体的な例としては、扁平上皮がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、肺腺がん、肺扁平上皮がん、腹膜がん、肝細胞がん、胃腸がん、膵臓がん、膠芽腫、子宮頸がん、卵巣がん、肝臓がん、膀胱がん、ヘパトーマ、乳がん、結腸がん、大腸がん、子宮内膜がん又は子宮がん、唾液腺がん、腎臓がん、肝臓がん、前立腺がん、外陰がん、甲状腺がん、肝臓がん、白血病及び他のリンパ増殖性疾患並びに種々の型の頭頸部がんが挙げられる。
【0105】
本願で使用する「治療」とは、治療対象である個体又は細胞の自然過程を変えようとする臨床介入を意味し、予防目的又は臨床病理経過中に実施することができる。「治療用」又は「治療する」とは、本願では、疾患、前記疾患の症状、前記疾患に続発する疾病状態、又は前記疾患の素因を治癒、軽減、緩和、修復、予防又は改善する目的で治療用組成物を対象に投与することを意味する。望ましい治療効果としては、疾病の発生又は再発の予防、症状の軽減、疾病の直接又は間接的な病理的帰結の低減、炎症及び/又は組織/臓器損傷の予防又は低減、疾病進行速度の低減、疾病状態の改善又は一時的緩和、並びに寛解又は予後改善が挙げられる。ある種の実施形態において、本発明の抗体は、疾病ないし疾患の発症を遅らせるために使用される。
【0106】
「個体」又は「対象」とは、脊椎動物である。所定の実施形態において、前記脊椎動物は、哺乳動物である。哺乳動物としては、限定されないが、家畜(例えばウシ)、競技動物、ペット類(例えばネコ、イヌ及びウマ)、霊長類、マウス及びラットが挙げられる。所定の実施形態において、前記脊椎動物は、ヒトである。
【0107】
治療対象の「哺乳動物」とは、哺乳類に分類される任意動物を意味し、ヒト、家畜、動物園動物、競技動物又はペット用動物(例えばイヌ、ウマ、ネコ、ウシ等)が挙げられる。所定の実施形態において、前記哺乳動物は、ヒトである。
【0108】
「有効量」とは、必要な投与量及び期間で所望の治療又は予防結果を達成するために有効な量を意味する。
【0109】
本発明の物質/分子の「治療有効量」は、個体の疾病状態、年齢、性別及び体重等の因子、及び前記物質/分子が個体に所望の応答を誘発する能力に応じて変動し得る。治療有効量は、治療に有益な作用が前記物質/分子の毒性又は有害作用を上回る量でもある。「予防有効量」とは、必要な投与量及び期間で所望の予防結果を達成するために有効な量を意味する。必ずしもそうでない場合もあるが、一般的に、疾病以前又は初期段階の対象には予防用量を使用するので、予防有効量は治療有効量よりも少なくなる。
【0110】
Globo系抗原を標的とする抗体
本開示の1態様は、Globo系抗原(GloboH、SSEA-3、SSEA-4)を標的とする新規抗体に関する。
【0111】
Globo系抗原(SSEA-4、GloboH又はSSEA-3)を発現するがんとしては、限定されないが、肉腫、皮膚がん、白血病、リンパ腫、脳腫瘍、肺がん、乳がん、口腔がん、食道がん、胃がん、肝臓がん、胆管がん、膵臓がん、結腸がん、腎臓がん、子宮頸がん、卵巣がん及び前立腺がんが挙げられる。
【0112】
「SSEA-4部分」とは、本願ではSSEA-4又はその断片もしくはアナログであるグリカン(即ち糖部分を含む分子)として定義される。SSEA-4は六糖エピトープ(Neu5Acα2→3Galβ1→3GalNAcβ1→3Galα1→4Galβ1→4Glcβ1)と、任意に非糖部分を含むグリカンである。その断片は、前記六糖エピトープの断片と、該当する場合には非糖部分を含むグリカンである。
【0113】
「GloboH部分」とは、本願ではGloboH又はその断片もしくはアナログであるグリカン(即ち糖部分を含む分子)として定義される。GloboHは六糖ピトープ(Fucα1→2Galβ1→3GalNAcβ1→3Galα1→4Galβ1→4Glc)と、任意に非糖部分を含むグリカンである。その断片は、前記六糖エピトープの断片と、該当する場合には非糖部分を含むグリカンである。
【0114】
「SSEA-3部分」とは、本願ではSSEA-3又はその断片もしくはアナログであるグリカン(即ち糖部分を含む分子)として定義される。SSEA-3は五糖エピトープ(Galβ1→3GalNAcβ1→3Galα1→4Galβ1→4Glcβ1)と、任意に非糖部分を含むグリカンである。その断片は、前記六糖エピトープの断片と、該当する場合には非糖部分を含むグリカンである。
【0115】
代表例とそのアミノ酸及び核酸構造/配列を以下に示す。
【0116】
【0117】
【0118】
【0119】
【0120】
【0121】
【0122】
【0123】
【0124】
【0125】
【0126】
【0127】
【0128】
【0129】
【0130】
【0131】
【0132】
【0133】
【0134】
【0135】
【0136】
【0137】
【0138】
【0139】
【0140】
【0141】
【0142】
【0143】
【0144】
本開示の1態様は、SSEA-4に特異的な新規抗体に関する。前記抗SSEA-4抗体はNeu5Acα2→3Galβ1→3GalNAcβ1→3Galα1→4Galβ1→4Glcβ1と結合する。
【0145】
本開示の1態様は、SSEA-3に特異的な新規抗体に関する。前記抗SSEA-3抗体は2Galβ1→3GalNAcβ1→3Galα1→4Galβ1→4Glcβ1と結合する。
【0146】
本開示の1態様は、GloboHに特異的な新規抗体に関する。前記抗GloboH抗体はFucα1→2Galβ1→3GalNAcβ1→3Galα1→4Galβ1→4Glcと結合する。
【0147】
本願に記載する抗体は、いずれも全長抗体又はその抗原結合断片とすることができる。例えば、前記抗原結合断片は、Fab断片、F(ab’)2断片又は一本鎖Fv断片である。例えば、前記抗原結合断片は、Fab断片、F(ab’)2断片又は一本鎖Fv断片である。例えば、前記抗体は、ヒト抗体、キメラ抗体又は一本鎖抗体である。
【0148】
本願に記載する抗体は、いずれも以下の1種以上の特徴をもつ:(a)組換え抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト抗体、抗体断片、二重特異性抗体、単一特異的抗体、一価抗体、IgG1抗体、IgG2抗体、又は抗体の誘導体である;(b)ヒト、マウスもしくはキメラ抗体、抗原結合断片又は抗体の誘導体である;(c)一本鎖抗体断片、マルチボディ、Fab断片並びに/又はIgG、IgM、IgA、IgE、IgDアイソタイプ及び/もしくはそのサブクラスの免疫グロブリンである;(d)以下の特徴の1種以上をもつ:(i)がん細胞のADCC及び/又はCDCに介在する;(ii)がん細胞のアポトーシスを誘導及び/又は促進する;(iii)がん細胞の標的細胞の増殖を抑制する;(iv)がん細胞の食作用を誘導及び/又は促進する;及び/又は(v)細胞毒性薬の放出を誘導及び/又は促進する;(e)腫瘍特異的糖抗原である腫瘍関連糖抗原と特異的に結合する;(f)非がん細胞、非腫瘍細胞、良性がん細胞及び/又は良性腫瘍細胞で発現される抗原とは結合しない;及び/又は(g)がん幹細胞と正常がん細胞で発現される腫瘍関連糖抗原と特異的に結合する。
【0149】
前記抗体とそれらの夫々の抗原との結合は、特異的であることが好ましい。「特異的」なる用語は、一般に、結合対の一方のメンバーがその特異的結合パートナー以外の分子との間に有意な結合を示さず、例えば本願に具体的に記載する分子以外の分子との交差反応性が約30%未満、好ましくは20%、10%又は1%未満である情況を表すために使用される。
【0150】
宿主動物の免疫とハイブリドーマ技術
1実施形態において、本発明は、糖抗原(例えばGloboH)と特異的に結合する抗体を発現するハイブリドーマの作製方法を提供する。前記方法は、糖抗原(例えばGloboH)を含有する組成物を動物に免疫する工程と;前記動物から脾細胞を摘出する工程と;前記脾細胞からハイブリドーマを産生させる工程と;GloboHと特異的に結合する抗体を産生するハイブリドーマを選択する工程とを含む。Kohler and Milstein,Nature,256:495,1975.Harlow,E.and Lane,D.Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1988。
【0151】
1実施形態では、糖抗原を使用してマウスに皮下免疫する。追加免疫を1回以上行ってもよいし、行わなくてもよい。例えばELISA(酵素免疫測定法)又はフローサイトメトリーにより血漿中の抗体の力価をモニターすることができる。十分な抗糖抗原抗体力価を示すマウスを融合に使用する。屠殺と脾臓摘出の3日前にマウスに抗原を追加免疫してもよいし、しなくてもよい。マウス脾細胞を摘出し、PEGによりマウスミエローマ細胞株と融合する。得られたハイブリドーマを次に抗原特異的抗体の産生についてスクリーニングする。細胞をプレートに播種した後、選択培地でインキュベートする。次に個々のウェルからの上清をELISAによりヒト抗糖抗原モノクローナル抗体についてスクリーニングする。抗体を分泌するハイブリドーマをプレートに再播種し、再びスクリーニングし、依然として抗糖抗原抗体に陽性であるならば、制限希釈法によりサブクローニングすることができる。
【0152】
代表的な抗Globo系抗原ポリクローナル抗体は、免疫後に血清中の所望の抗体の増加が検出された哺乳動物から採血し、任意の従来方法により血液から血清を分離することにより作製することができる。ポリクローナル抗体としては、前記ポリクローナル抗体を含む血清が挙げられ、前記ポリクローナル抗体を含む断片を前記血清から単離してもよい。
【0153】
ポリクローナル抗体は、一般に、該当する抗原及びアジュバントを宿主動物(例えば、ウサギ、マウス、ウマ又はヤギ)に複数回皮下(sc)又は腹腔内(ip)注射することにより産生される。二官能性又は誘導体化試薬(例えばマレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基を介する結合)、N-ヒドロキシスクシンイミド(リジン残基を介する)、グルタルアルデヒド、無水コハク酸、SOCl2等)を使用し、免疫しようとする生物種において免疫原性であるタンパク質(例えばキーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリン又は大豆トリプシンインヒビター)に該当抗原を結合させると有用な場合がある。
【0154】
所望の抗体を産生させるには任意の哺乳動物に抗原を免疫すればよい。一般に、ネズミ目、ウサギ目又は霊長目の動物を使用することができる。ネズミ目の動物としては、例えばマウス、ラット及びハムスターが挙げられる。ウサギ目の動物としては、例えばウサギが挙げられる。霊長目の動物としては、例えばカニクイザル(Macaca fascicularis)、アカゲザル、ヒヒ及びチンパンジー等の狭鼻下目(Catarrhini)のサル(旧世界ザル)が挙げられる。
【0155】
動物に抗原を免疫する方法は、当分野で公知である。抗原の腹腔内注射又は皮下注射が哺乳動物の標準的な免疫方法である。より具体的には、抗原を、適当な量のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、生理食塩水等で希釈・懸濁すればよい。必要に応じて、抗原懸濁液を適当な量の完全フロイントアジュバント等の標準アジュバントと混合してエマルションとした後に哺乳類動物に投与してもよい。ペプチド又はコンジュゲート1mg又は1μg(夫々ウサギ又はマウスの場合)を、3倍容量のフロイント不完全アジュバントと配合することにより、抗原、免疫原性コンジュゲート又は誘導体を動物に免疫する。
【0156】
抗原を適当な量の不完全フロイントアジュバントと混合して4~21日おきに数回投与することにより、力価が安定するまで動物に追加免疫することができる。当初の量の1/5~1/10のペプチド又はコンジュゲートを完全フロイントアジュバントと混合して複数部位に皮下注射することにより、動物に追加免疫する。7~14日後に動物から採血し、血清の抗体力価を定量する。適当なキャリアを、免疫に使用してもよい。上記のように免疫後、所望の抗体の量の増加について血清を標準方法により試験する。同一抗原のコンジュゲートを動物に追加免疫することが好ましいが、別のタンパク質とコンジュゲートさせてもよいし、及び/又は別の架橋剤によりコンジュゲートさせてもよい。組換え細胞培養でタンパク質融合体としてコンジュゲートを作製することもできる。また、免疫応答を増強するためにミョウバン等の凝集剤を使用すると適切である。
【0157】
実施形態によっては、従来のハイブリドーマ技術により抗体を作製することができる。Kohler et al.,Nature,256:495(1975)。ハイブリドーマ法では、マウス又は他の適当な宿主動物(例えばハムスターやウサギ)に上記のように免疫し、免疫に使用したタンパク質と特異的に結合することができる抗体を産生するリンパ球又は産生することが可能なリンパ球を誘導する。あるいは、リンパ球にインビトロで免疫してもよい。
【0158】
モノクローナル抗体を作製するためには、抗原を免疫した哺乳動物から免疫細胞を採取し、上記のように血清中の所望の抗体の濃度上昇について検査し、細胞融合に供する。細胞融合に使用する免疫細胞は、脾臓から得ることが好ましい。上記免疫細胞と融合するのに好ましい他の親細胞としては、例えば哺乳動物のミエローマ細胞が挙げられ、薬物による融合細胞の選択性を獲得したミエローマ細胞がより好ましい。
【0159】
好ましいミエローマ細胞は、効率的に融合する細胞であり、選択された抗体産生細胞による抗体産生を安定した高レベルに維持し、HAT培地等の培地に対して感受性である。これらのうちで好ましいミエローマ細胞株は、米国カリフォルニア州サンディエゴに所在のソーク研究所細胞分譲センター(Salk Institute Cell Distribution Center)から入手可能なMOPC-21及びMPC-11マウス腫瘍や、米国メリーランド州ロックビルに所在のアメリカンタイプカルチャーコレクションから入手可能なSP-2細胞に由来するもの等のマウスミエローマ株である。ヒトミエローマ細胞株とマウス-ヒトヘテロミエローマ細胞株も、ヒトモノクローナル抗体の作製用として記載されている(Kozbor,J.Immunol.,133:3001(1984);Brodeur et al.,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,pp.51-63(Marcel Dekker,Inc.,New York,1987))。
【0160】
上記免疫細胞及びミエローマ細胞を公知方法、例えばMilsteinらの方法(Galfre et al.,Methods Enzymol.73:3-46,1981)に従って融合することができる。ポリエチレングリコール等の適切な融合剤を使用して、リンパ球をミエローマ細胞と融合してハイブリドーマ細胞を形成する(Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,pp.59-103(Academic Press,1986))。細胞融合により得られたハイブリドーマを、HAT培地(ヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジンを加えた培地)等の標準選択培地で培養することにより、選択することができる。所望のハイブリドーマ(非融合細胞)以外の全ての他の細胞を死滅させるために、十分な期間である数日間から数週間にわたってHAT培地で細胞培養を続けるのが、一般的である。その後、標準制限希釈法を実施し、所望の抗体を産生するハイブリドーマ細胞をスクリーニングし、クローニングする。
【0161】
適切な培地は、融合前の親ミエローマ細胞の増殖又は生存を阻害する1種以上の物質を添加することが好ましく、このような培地に上記のように作製されたハイブリドーマ細胞を播種し、増殖させる。例えば、親ミエローマ細胞が酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT又はHPRT)を欠損している場合には、HGPRT欠損細胞の増殖を防ぐ物質であるヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジン(HAT培地)をハイブリドーマ用培地に添加するのが一般的である。
【0162】
ハイブリドーマ細胞が増殖している培地について、抗原に対するモノクローナル抗体の産生量を定量する。ハイブリドーマ細胞により産生されるモノクローナル抗体の結合特異性を免疫沈降法又はインビトロ結合アッセイにより測定することが好ましい。酵素免疫測定法(ELISA)、酵素イムノアッセイ(EIA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)及び/又は免疫蛍光法における吸光度の測定を使用し、本発明の抗体の抗原結合活性を測定することができる。ELISAでは、本発明の抗体をプレートに固相化し、本発明のタンパク質をプレートに加えた後、抗体産生細胞の培養上清又は精製抗体等の所望の抗体を含む試料を加える。その後、一次抗体を認識する二次抗体をアルカリホスファターゼ等の酵素で標識して加え、プレートをインキュベートする。次に、洗浄後、p-ニトロフェニルリン酸等の酵素基質をプレートに加え、吸光度を測定し、試料の抗原結合活性を評価する。この方法では、C末端断片又はN末端断片等のタンパク質の断片を使用することができる。
【0163】
上記方法を含む従来方法のいずれかを適用し、本願に記載するエピトープと結合する抗体を産生するハイブリドーマ細胞を同定し、その後の特性測定用に選択することができる。
【0164】
所望の特異性、親和性及び/又は活性の抗体を産生するハイブリドーマ細胞を同定後、クローンを制限希釈法によりサブクローニングし、標準方法により増殖させればよい(Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,pp.59-103(Academic Press,1986))。この目的に適切な培地としては、例えばD-MEM又はRPMI-1640培地が挙げられる。サブクローンにより分泌されたモノクローナル抗体を例えばProtein A-Sepharose、ヒポキサンチンクロマトグラフィー、ゲル電気泳動法、透析法、又はアフィニティークロマトグラフィー等の従来の免疫グロブリン精製法により培地、腹水又は血清から分離すると適切である。
【0165】
更に、ハイブリドーマ細胞を動物体内で腹水腫瘍としてインビボ増殖させてもよい。例えば、得られたハイブリドーマをその後、マウスの腹腔に移植し、腹水を採取する。
【0166】
得られたモノクローナル抗体は、例えば硫安沈殿法、プロテインAもしくはプロテインGカラム、DEAEイオン交換クロマトグラフィー又は本発明のタンパク質を固定化したアフィニティーカラムにより精製することができる。本発明の抗体は、本発明のタンパク質の精製及び検出用に使用できるだけでなく、本発明のタンパク質のアゴニスト及びアンタゴニストの候補としても使用できる。更に、この抗体を本発明のタンパク質に関連する疾病の抗体治療に適用することもできる。
【0167】
活性アッセイ
本発明の抗体は、当分野で公知の種々のアッセイにより、その物理/化学的性質と生物学的機能について特性測定することができる。
【0168】
本開示の抗体又はその抗原結合断片、変異体もしくは誘導体を、抗原に対するその結合親和性により説明又は明記することもできる。糖抗原に対する抗体の親和性は、任意の適切な方法を使用して実験的に測定することができる(例えば、Berzofsky et al,“Antibody-Antigen Interactions,”In Fundamental Immunology,Paul,W.E.,Ed.,Raven Press:New York,N.Y.(1984);Kuby,Janis Immunology,W.H.Freeman and Company:New York,N.Y.(1992);及び本願に記載する方法参照)。特定の抗体-糖抗原相互作用の親和性測定値は、測定条件(例えば塩濃度、pH)の変化により変動し得る。したがって、親和性や他の抗原結合パラメーター(例えばKD、Ka、Ka)の測定は、抗体及び抗原の標準溶液と標準緩衝液を使用して実施することが好ましい。
【0169】
本発明の抗体又はその抗原結合部分は、インビトロ及びインビボでの治療、予防及び/又は診断に有用である。例えば、がんを治療、抑制、再発予防及び/又は診断するために、これらの抗体を例えばインビトロ又はエクスビボで培養細胞に投与することもできるし、例えばインビボで対象に投与することもできる。
【0170】
限定されないが、N-末端シーケンシング、アミノ酸解析、非変性サイズ排除高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、質量分析、イオン交換クロマトグラフィー及びパパイン消化等の一連のアッセイにより、精製抗体を更に特性測定することができる。
【0171】
必要に応じて、抗体をその生物学的活性について分析する。実施形態によっては、本発明の抗体を抗原結合活性について試験する。本願で使用することができる当分野で公知の抗原結合アッセイとしては、限定されないが、ウェスタンブロット法、ラジオイムノアッセイ、ELISA(酵素免疫測定法)、「サンドイッチ」イムノアッセイ、免疫沈降アッセイ、蛍光イムノアッセイ、化学発光イムノアッセイ、ナノ粒子イムノアッセイ、アプタマーイムノアッセイ及びプロテインAイムノアッセイ等の技術を使用するあらゆる直接又は競合結合アッセイが挙げられる。
【0172】
用途
本発明の抗体は、例えばインビトロ、エクスビボ及びインビボ治療法で使用することができる。本発明の抗体は、インビトロ、エクスビボ及び/又はインビボで特定の抗原活性を部分的又は完全に阻害するために、アンタゴニストとして使用することができる。更に、本発明の抗体の少なくとも一部は、他の生物種に由来する抗原活性を中和することができる。したがって、本発明の抗体は、例えば抗原を含む細胞培養液や、本発明の抗体と交差反応する抗原をもつヒト対象又は他の哺乳動物対象(例えばチンパンジー、ヒヒ、マーモセット、カニクイザル及びアカゲザル、ブタ又はマウス)において、特定の抗原活性を阻害するために使用することができる。1実施形態では、抗原活性を阻害するように抗体を抗原と接触させることにより、抗原活性を阻害するために本発明の抗体を使用することができる。1実施形態において、前記抗原はヒトタンパク質分子である。
【0173】
「投与する」とは、本願では、本発明の治療用組成物を患者に提供することを意味する。限定するものではないが、例を挙げると、静脈内(i.v.)注射、皮下(s.c.)注射、皮内(i.d.)注射、腹腔内(i.p.)注射又は筋肉内(i.m.)注射により組成物投与(例えば注射)を実施することができる。1種以上のこのような経路を、利用することができる。例えばボーラス注射又は長時間の緩徐式灌流により、腸管外投与を行うことができる。上記の代わりに又は上記と併用して、経口経路又は経鼻経路により投与してもよい。更に、ボーラスの外科的注入又は医療装置の留置により投与してもよい。
【0174】
1実施形態では、抗原活性が有害に作用する疾患に罹患している対象において抗原を阻害するための方法で本発明の抗体を使用することができ、前記方法は、前記対象における抗原活性を阻害するように、前記対象に本発明の抗体を投与することを含む。1実施形態において、前記抗原は、ヒトタンパク質分子であり、前記対象はヒト対象である。あるいは、前記対象は、本発明の抗体が結合する抗原を発現する哺乳動物とすることができる。更に、前記対象は、(例えば抗原の投与又は抗原トランスジーンの発現により)前記抗原を導入された哺乳動物とすることができる。本発明の抗体は、治療目的でヒト対象に投与することができる。また、獣医学的目的又はヒト疾病の動物モデルとして、前記抗体と交差反応する抗原を発現する非ヒト哺乳動物(例えば霊長類、ブタ又はマウス)に本発明の抗体を投与することもできる。後者の場合、このような動物モデルは、本発明の抗体の治療効力の評価(例えば投与量と投与クールの試験)に有用であると思われる。本発明の抗体は、Globo系抗原(GloboH、SSEA-3、SSEA-4)の異常な発現及び/又は活性を伴う疾病、疾患又は病態を治療、抑制、進行遅延、再発予防/遅延、改善、又は予防するために使用することができ、このような疾患としては、限定されないが、がん、筋疾患、ユビキチン経路関連遺伝病、免疫/炎症性疾患、神経疾患、及び他のユビキチン経路関連疾患が挙げられる。
【0175】
所定の実施形態では、本発明の抗体を細胞毒性薬と結合させたイムノコンジュゲートを患者に投与する。実施形態によっては、Globo系抗原と会合する1種以上のタンパク質をその細胞表面に発現する細胞に、細胞毒性薬と結合させたイムノコンジュゲート及び/又は抗原を取り込ませることにより、前記イムノコンジュゲートがこれと会合する標的細胞を死滅させる治療効力を増強させる。1実施形態において、前記細胞毒性薬は、前記標的細胞内の核酸を標的とするか又は阻害する。このような細胞毒性薬の例としては、本願に記載する化学療法薬(例えばメイタンシノイド又はカリケアマイシン)、放射性同位体、又はリボヌクレアーゼもしくはDNAエンドヌクレアーゼが挙げられる。
【0176】
本発明の抗体は、治療に単独で使用することもできるし、他の組成物と併用することもできる。例えば、本発明の抗体は、別の抗体及び/又はアジュバント/治療薬(例えばステロイド類)と併用投与することができる。例えば、本発明の抗体は、例えばがん、筋疾患、ユビキチン経路関連遺伝病、免疫/炎症性疾患、神経疾患、及び他のユビキチン経路関連疾患等の本願に記載する疾病のいずれかの治療における治療スキームで抗炎症薬及び/又は殺菌剤と併用することができる。上記のような併用療法としては、同時投与(2剤以上を同一又は別個の製剤として投与)及び別々の投与が挙げられ、後者の場合には、1種以上の補助治療の適用前及び/又は適用後に本発明の抗体の投与を行うことができる。
【0177】
本発明の抗体(及び補助治療薬)は任意の適切な手段により投与することができ、腸管外投与、皮下投与、腹腔内投与、肺内投与及び鼻腔内投与が挙げられ、更に局所治療が必要な場合には、病変内投与も挙げられる。腸管外輸液としては、筋肉内投与、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与又は皮下投与が挙げられる。更に、特に抗体の用量を漸減させながらパルス輸液により抗体を投与すると適切である。投与は任意の適切な経路により行うことができ、投与が短期であるか長期であるかにもよるが、例えば静脈内注射や皮下注射等の注射により投与することができる。
【0178】
治療用途
本願には治療方法として、このような治療を必要とする対象に本願に記載する1種以上の抗体を含有する治療有効量の組成物を投与することを含む方法も記載する。
【0179】
ある種の実施形態において、前記治療を必要とする対象(例えばヒト患者)は、がんに罹患していると診断されているか、がんの疑いがあると診断されているか、又はがんの危険があると診断されている。がんの例としては、限定されないが、肉腫、皮膚がん、白血病、リンパ腫、脳腫瘍、肺がん、乳がん、口腔がん、食道がん、胃がん、肝臓がん、胆管がん、膵臓がん、結腸がん、腎臓がん、子宮頸がん、卵巣がん及び前立腺がんが挙げられる。ある種の実施形態において、前記がんは肉腫、皮膚がん、白血病、リンパ腫、脳腫瘍、肺がん、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、結腸がん又は膵臓がんである。ある種の好ましい実施形態において、前記がんは脳腫瘍又は多形性膠芽腫(GBM)である。
【0180】
好ましい実施形態において、前記抗体は、Globo系抗原を発現するがん細胞を標的とすることができる。ある種の実施形態において、前記抗体は、がん細胞上のGlobo系抗原を標的とすることができる。ある種の実施形態において、前記抗体は、がんにおけるGlobo系抗原を標的とすることができる。
【0181】
前記治療の結果として、腫瘍サイズの縮小、悪性細胞の除去、転移の予防、再発の予防、播種性がんの抑制もしくは死滅、生存期間の延長及び/又は腫瘍がん進行までの期間の延長が得られる。
【0182】
ある種の実施形態において、前記治療は、更に前記抗体の前記投与前、投与中又は投与後に前記対象に別の療法を適用することを含む。ある種の実施形態において、前記別の療法は、化学療法薬による治療である。ある種の実施形態において、前記別の療法は、放射線療法である。
【0183】
本発明の方法は、初期ステージの腫瘍を治療及び予防するのに特に有利であり、その結果、より高いステージに進行するのを予防し、進行がんに関連する罹病率と死亡率が低下する。本発明の方法は、腫瘍の再発又は腫瘍(例えば原発腫瘍の除去後に存続する休眠腫瘍)の再増殖を予防したり、腫瘍の発生を抑制又は予防するのにも有利である。
【0184】
ある種の実施形態において、本願に開示する方法は、例えばがんがGloboH、SSEA-3及び/又はSSEA-4発現の亢進を特徴とする場合に、がんの治療又は予防に有用である。ある種の実施形態において、前記がんは、がん幹細胞を含む。ある種の実施形態において、前記がんは、前がん及び/又は悪性がん及び/又は治療抵抗性のがんである。ある種の実施形態において、前記がんは脳腫瘍である。
【0185】
本願に記載する方法により治療する対象は哺乳動物、より好ましくはヒトとすることができる。哺乳動物としては、限定されないが、家畜、競技動物、ペット類、霊長類、ウマ、イヌ、ネコ、マウス及びラットが挙げられる。治療を必要とするヒト対象は、がんに罹患しているか、がんの危険があるか、又はがんの疑いのあるヒト患者とすることができ、がんとしては、限定されないが、肉腫、皮膚がん、白血病、リンパ腫、脳腫瘍、肺がん、乳がん、口腔がん、食道がん、胃がん、肝臓がん、胆管がん、膵臓がん、結腸がん、腎臓がん、子宮頸がん、卵巣がん及び前立腺がんが挙げられる。がんに罹患している対象は、定期健康診断により同定することができる。
【0186】
本願で使用する「有効量」とは、単独使用又は1種以上の他の活性剤と併用した場合に対象に治療効果を付与するために必要な各活性剤の量を意味する。有効量は当業者に認識されている通り、治療する特定の病態、前記病態の重度、個々の患者のパラメーター(年齢、健康状態、体格、性別及び体重)、治療期間、(併用する場合には)併用療法の種類、具体的な投与経路等の医療従事者の知識と専門技能の範囲内に含まれる因子により異なる。これらの因子は当業者に周知であり、単なる日常的な実験により対処することができる。一般には、個々の成分又はその組み合わせの最大用量、即ち妥当な医療的判断による安全な最高用量を使用することが好ましい。但し、当業者に自明のことながら、医学的理由、心理的理由又は実質的にあらゆる他の理由から患者はより低用量又は耐えられる用量を要求する場合がある。
【0187】
本願で使用する「治療」なる用語は、がん、がんの症状又はがんの素因を回復、治癒、軽減、緩和、変化、修復、改善、好転又は改変させることを目的として、がん、がんの症状又はがんの素因をもつ対象に1種以上の活性剤を含有する組成物を適用又は投与することを意味する。
【0188】
がんの「発症」又は「進行」とは、がんの初期発現及び/又はその後の進行を意味する。がんの発症は当分野で周知の標準臨床技術を使用して検出可能であり、評価することができる。一方、発症は検出不能な可能性のある進行も意味する。本開示の目的では、発症又は進行とは症状の生物学的な経過を意味する。「発症」はがんの発生、再発及び兆候を含む。本願で使用する場合に、がんの「兆候」又は「発生」とは、初期兆候及び/又は再発を含む。
【0189】
前記医薬組成物を前記対象に投与するには、治療しようとする疾患の種類又は疾患の部位に応じて医療分野における通常の知識をもつ者に公知の従来の方法を使用することができる。前記組成物は、他の従来の経路により投与することもでき、例えば経口、腸管外、吸入スプレー、局所、経直腸、経鼻、経口腔粘膜、経膣、又は埋め込み型リザーバーにより投与することもできる。本願で使用する「腸管外」なる用語は皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、動脈内、滑液包内、胸骨内、髄腔内、病変内及び頭蓋内注射又は輸液技術を含む。更に、1カ月、3カ月又は6カ月持続性のデポ注射用材料又は生分解性材料及び方法の使用等のデポ注射投与経路により対象に投与することもできる。
【0190】
注射用組成物は、植物油、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、乳酸エチル、炭酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、エタノール及びポリオール類(グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール等)等の種々の担体を含有することができる。静注には、水溶性抗体を点滴法により投与することができ、前記抗体と生理的に許容される溶剤を含有する医薬組成物を輸液する。生理的に許容される溶剤としては、例えば5%ブドウ糖液、0.9%生理食塩水、リンゲル液又は他の適切な溶剤が挙げられる。筋肉内製剤(例えば適切な可溶性塩形態の前記抗体の滅菌製剤)は注射用水、0.9%生理食塩水又は5%ブドウ糖液等の医薬溶剤に溶解させて投与することができる。
【0191】
代表的な治療用組成物(本願では医薬組成物とも言う)は、一般に、薬学的に許容される担体を含有する。本願で使用する「薬学的に許容される担体」なる用語は、医薬品投与に適合可能な溶媒、分散媒、コーティング剤、抗細菌剤及び抗真菌剤、等張化剤並びに吸収遅延剤等を含む。補助活性化合物を組成物に配合することもできる。医薬組成物はその目的とする投与経路に適合可能となるように製剤化される。投与経路の例としては腸管外投与が挙げられ、例えば静脈内、皮内、皮下、筋肉内、動脈内、経口(例えば吸入)、経皮(局所)、経粘膜及び経直腸投与が挙げられる。腸管外、皮内又は皮下投与用の溶液剤又は懸濁剤は以下の成分、即ち滅菌希釈剤(例えば注射用水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、トリス緩衝生理食塩水、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール又は他の合成溶媒)、抗菌剤(例えばベンジルアルコールやメチルパラベン)、酸化防止剤(例えばアスコルビン酸や亜硫酸水素ナトリウム)、キレート剤(例えばエチレンジアミン四酢酸)、緩衝剤(例えば酢酸塩、クエン酸塩又はリン酸塩)及び浸透圧調節剤(例えば塩化ナトリウムやブドウ糖)を含有することができる。pH値は酸又は塩基(例えば塩酸又は水酸化ナトリウム)で調節することができる。腸管外製剤はガラス又はプラスチック製のアンプル、使い捨てシリンジ又はマルチドーズバイアルに封入することができる。
【0192】
注射用に適した代表的な医薬組成物としては、滅菌水溶液(水溶性の場合)又は分散液と、滅菌注射溶液又は分散液の用時調製用滅菌粉末が挙げられる。静脈内投与用に適した担体としては、生理食塩水、静菌水、Cremophor EL(R)(BASF,Parsippany,N.J.)又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が挙げられる。いずれの場合も、組成物は滅菌されている必要があり、シリンジで容易に吸引・吐出可能な程度まで流動性でなければならない。組成物は製造・保存条件下で安定でなければならず、細菌や真菌等の微生物の汚染作用に対して保護する必要がある。担体は例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール及び液体ポリエチレングリコール等)及びその適切な混合物を含有する溶媒又は分散媒とすることができる。例えば、レシチン等のコーティング剤の使用、分散液の場合には必要な粒径の維持、及び界面活性剤の使用により適正な流動性を維持することができる。種々の抗細菌剤及び抗真菌剤(例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサール等)により微生物の作用を防ぐことができる。多くの場合には、例えば糖類、多価アルコール類(例えばマンニトール、ソルビトール)又は塩化ナトリウム等の等張化剤を組成物に加えることが好ましい。吸収を遅らせる物質(例えばモノステアリン酸アルミニウムやゼラチン)を組成物に加えることにより、注射用組成物の持続吸収が可能になる。
【0193】
代表的な滅菌注射溶液は必要量の活性化合物を上記成分の1種又は組み合わせと共に適切な溶媒に加えた後、必要に応じて濾過滅菌することにより製造することができる。一般に、分散液は塩基性分散媒と上記に挙げたもの等の必要な他の成分を含有する滅菌基剤に活性化合物を加えることにより製造される。滅菌注射溶液調製用滅菌粉末の場合には、製造方法としては真空乾燥法と凍結乾燥法が挙げられ、活性成分と他の所望の成分の溶液を予め滅菌濾過してからその粉末を得る。
【0194】
代表的な経口組成物は、一般に不活性賦形剤又は食用担体を含有する。経口治療投与の目的では、活性化合物を賦形剤に配合し、錠剤、トローチ剤又はカプセル剤(例えばゼラチンカプセル剤)の形態で使用することができる。マウスウォッシュ用液体担体を使用して経口組成物を製造することもできる。薬学的に適合可能な結合剤又は補剤を組成物の一部として含有することができる。錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチ剤等は以下の成分、即ち結合剤(例えば微結晶セルロース、トラガカントガム又はゼラチン)、賦形剤(例えばデンプンや乳糖)、崩壊剤(例えばアルギン酸、Primogel又はコーンスターチ)、滑沢剤(例えばステアリン酸マグネシウムやSterotex)、流動促進剤(例えばコロイド状二酸化ケイ素)、甘味剤(例えばスクロースやサッカリン)もしくは着香剤(例えばペパーミント、サリチル酸メチル又はオレンジフレーバー)、又は同種の化合物のいずれかを含有することができる。
【0195】
更に、経口投与用として、本発明の代表的な製剤は、例えば結合剤(例えばα化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン又はヒドロキシプロピルメチルセルロース)、増量剤(例えば乳糖、微結晶セルロース又はリン酸水素カルシウム)、滑沢剤(例えばステアリン酸マグネシウム、タルク又はシリカ)、崩壊剤(例えばジャガイモデンプン又はデンプングリコール酸ナトリウム)、又は湿潤剤(例えばラウリル硫酸ナトリウム)等の薬学的に許容される賦形剤と共に、従来手段により製造された錠剤又はカプセル剤の形態をとることができる。錠剤は、当分野で周知の方法によりコーティングすることができる。例えば、ポリグリコール酸/乳酸(PGLA)から製造したマイクロスフェア又はマイクロカプセルに、本発明の組成物を導入することもできる(米国特許第5,814,344号、5,100,669号及び4,849,222号;PCT公開番号WO95/11010及びWO93/07861参照)。経口投与用液体製剤は、例えば溶液剤、シロップ剤、乳剤又は懸濁剤の形態をとることもできるし、使用前に水又は他の適切な溶剤で戻す乾燥製剤とすることもできる。このような液体製剤は、懸濁化剤(例えばソルビトールシロップ、セルロース誘導体又は水素化食用油脂)、乳化剤(例えばレシチンやアラビアガム)、非水性溶剤(例えばアーモンド油、油性エステル、エチルアルコール又は分留植物油)、及び保存剤(例えばp-ヒドロキシ安息香酸メチル、p-ヒドロキシ安息香酸プロピル又はソルビン酸)等の薬学的に許容される添加剤と共に従来の手段により製造することができる。前記製剤は更に必要に応じて緩衝塩類、着香剤、着色剤及び甘味剤を含有することができる。経口投与用製剤は活性化合物を制御下に放出するように適切に製剤化することができる。
【0196】
吸入による投与又は経鼻投与用では、代表的な化合物/製剤は適切な噴射剤(例えば二酸化炭素等のガス)を加えた加圧容器もしくはディスペンサー又はネブライザーからエアゾールスプレーとして送達することができる。
【0197】
経粘膜又は経皮により全身投与することもできる。経粘膜又は経皮投与用には、バリアを透過するのに適した透過剤を製剤で使用する。このような透過剤は一般に当分野で公知であり、例えば経粘膜投与用では、デタージェント、胆汁酸塩及びフシジン酸誘導体が挙げられる。経粘膜投与は経鼻スプレー又は坐剤の使用により行うことができる。経皮投与用には、活性化合物を当分野で一般に知られているような軟膏、サルブ、ジェル又はクリーム状に製剤化する。(例えばカカオ脂や他のグリセリド等の従来の坐剤基剤と共に)坐剤又は直腸送達用貯留浣腸剤の形態で化合物を製造することもできる。
【0198】
実施情況に応じて、インプラント及びマイクロカプセル送達システムを含む制御放出製剤のように、化合物が体内から迅速に排出されないように保護する担体を使用して、活性化合物を製造する。エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル及びポリ乳酸等の、生分解性で生体適合性のポリマーを使用することができる。このような製剤の製造方法は、当業者に容易に理解されよう。市販の材料も、利用できる。(細胞特異的抗原に対するモノクローナル抗体に感染させた細胞を標的とするリポソームを含む)リポソーム懸濁液も、薬学的に許容される担体として使用することができる。これらは例えば本願に援用する米国特許第4,522,811号に記載されているような当業者に公知の方法に従って製造することができる。
【0199】
投与し易くすると共に投与量を均一にするために、経口又は非経口組成物を用量単位形態に製剤化すると有利である。本願で使用する用量単位形態とは、治療しようとする対象に単位用量として投与するのに適した物理的に別個の単位を意味し、必要な医薬担体と共に所望の治療効果を生じるように計算された所定量の活性化合物を各単位に含む。
【0200】
本発明の医薬製剤は、腸管外送達することができ、即ち、静脈内(i.v.)、皮下(s.c.)、腹腔内(i.p.)、筋肉内(i.m.)、真皮下(s.d.)もしくは皮内(i.d.)投与、例えばボーラス注射による直接注射、連続輸液、又は(例えば裸のDNA又はRNA等のベクターワクチンを対象に投与するための)遺伝子銃により送達することができる。注射用製剤は、例えばアンプル又はマルチドース容器に保存剤と共に収容した単位剤形とすることができる。組成物は油性又は水性基剤に配合した賦形剤、懸濁剤、溶液剤又は乳剤等の形態をとることができ、懸濁化剤、安定剤及び/又は分散剤等の製剤助剤を添加することができる。あるいは、活性成分は使用前に適切な溶剤(例えば滅菌パイロジェンフリー水)で戻す粉末形態とすることもできる。
【0201】
投与量:このような治療用組成物の毒性と治療効力は、例えばLD50(集団の50%までの致死用量)及びED50(集団の50%における治療有効用量)を決定するための標準医薬手順により細胞培養又は実験動物で判定することができる。毒性作用と治療効果との用量比が治療指数であり、LD50/ED50比として表すことができる。高い治療指数を示す治療用組成物が、好ましい。毒性副作用を示す化合物を使用することもできるが、未感染細胞の潜在的損傷を最小限にして副作用を減らすように、このような化合物を患部に標的化する送達システムをデザインするように注意する必要がある。
【0202】
ヒト用の投与量範囲を決定するには、細胞培養アッセイ及び動物試験から得られたデータを使用することができる。このような化合物の投与量は、毒性を殆ど又は全く伴わずにED50を含む循環濃度範囲内にあることが好ましい。投与量は、利用する剤形と利用する投与経路に応じてこの範囲内で変えることができる。本開示の方法で使用する全ての化合物について、治療有効用量は、先ず細胞培養アッセイから推定することができる。細胞培養で求めたIC50(即ち症状の50%抑制を達成する試験化合物の濃度)を含む循環血漿濃度範囲となるように、動物モデルで用量を決定することができる。ヒトで有用な用量をより正確に決定するために、このような情報を使用することができる。血漿中濃度は例えば高性能液体クロマトグラフィーにより測定することができる。
【0203】
ある種の実施形態において、治療用組成物の治療有効量(即ち有効投与量)は、約0.001μg/kg~約250g/kg、0.01μg/kg~10g/kg、又は0.1μg/kg~l.0g/kg、あるいは患者体重1キログラム当たり約又は少なくとも0.001gもしくはμg、0.002gもしくはμg、0.003gもしくはμg、0.004gもしくはμg、0.005gもしくはμg、0.006gもしくはμg、0.007gもしくはμg、0.008gもしくはμg、0.009gもしくはμg、0.01gもしくはμg、0.02gもしくはμg、0.03gもしくはμg、0.04gもしくはμg、0.05gもしくはμg、0.06gもしくはμg、0.07gもしくはμg、0.08gもしくはμg、0.09gもしくはμg、0.1gもしくはμg、0.2gもしくはμg、0.3gもしくはμg、0.4gもしくはμg、0.5gもしくはμg、0.6gもしくはμg、0.7gもしくはμg、0.8gもしくはμg、0.9gもしくはμg、1gもしくはμg、2gもしくはμg、3gもしくはμg、4gもしくはμg、5gもしくはμg、6gもしくはμg、7gもしくはμg、8gもしくはμg、9gもしくはμg、10gもしくはμg、11gもしくはμg、12gもしくはμg、13gもしくはμg、14gもしくはμg、15gもしくはμg、16gもしくはμg、17gもしくはμg、18gもしくはμg、19gもしくはμg、20gもしくはμg、21gもしくはμg、22gもしくはμg、23gもしくはμg、24gもしくはμg、25gもしくはμg、26gもしくはμg、27gもしくはμg、28gもしくはμg、29gもしくはμg、30gもしくはμg、31gもしくはμg、32gもしくはμg、33gもしくはμg、34gもしくはμg、35gもしくはμg、36gもしくはμg、37gもしくはμg、38gもしくはμg、39gもしくはμg、40gもしくはμg、41gもしくはμg、42gもしくはμg、43gもしくはμg、45gもしくはμg、46gもしくはμg、47gもしくはμg、48gもしくはμg、49gもしくはμg、50gもしくはμg、51gもしくはμg、52gもしくはμg、53gもしくはμg、54gもしくはμg、55gもしくはμg、56gもしくはμg、57gもしくはμg、58gもしくはμg、59gもしくはμg、60gもしくはμg、61gもしくはμg、62gもしくはμg、63gもしくはμg、64gもしくはμg、65gもしくはμg、66gもしくはμg、67gもしくはμg、68gもしくはμg、69gもしくはμg、70gもしくはμg、71gもしくはμg、72gもしくはμg、73gもしくはμg、74gもしくはμg、75gもしくはμg、76gもしくはμg、77gもしくはμg、78gもしくはμg、79gもしくはμg、80gもしくはμg、81gもしくはμg、82gもしくはμg、83gもしくはμg、84gもしくはμg、85gもしくはμg、86gもしくはμg、87gもしくはμg、88gもしくはμg、89gもしくはμg、90gもしくはμg、91gもしくはμg、92gもしくはμg、93gもしくはμg、94gもしくはμg、95gもしくはμg、96gもしくはμg、97gもしくはμg、98gもしくはμg、99gもしくはμg、100gもしくはμg、125gもしくはμg、150gもしくはμg、175gもしくはμg、200gもしくはμg、225gもしくはμg、又は250gもしくはμg、あるいは上記数値のいずれかの間の任意の範囲、あるいは過度の実験を実施することなしに当業者に容易に認識・理解されるような他の範囲とすることができる。当業者に自明の通り、対象を有効に治療するために必要な投与量及びタイミングは、所定の因子の影響を受ける場合があり、このような因子としては、限定されないが、疾病又は疾患の重度、治療歴、対象の一般健康状態又は年齢及び他の併存症が挙げられる。
【0204】
他の実施形態において、前記治療用組成物におけるGlobo系部分の治療有効量(即ち有効投与量)は、約0.001μg/kg~約250g/kg、0.01μg/kg~10g/kg、又は0.1μg/kg~l.0g/kg、あるいは患者体重1キログラム当たり約又は少なくとも0.001gもしくはμg、0.002gもしくはμg、0.003gもしくはμg、0.004gもしくはμg、0.005gもしくはμg、0.006gもしくはμg、0.007gもしくはμg、0.008gもしくはμg、0.009gもしくはμg、0.01gもしくはμg、0.02gもしくはμg、0.03gもしくはμg、0.04gもしくはμg、0.05gもしくはμg、0.06gもしくはμg、0.07gもしくはμg、0.08gもしくはμg、0.09gもしくはμg、0.1gもしくはμg、0.2gもしくはμg、0.3gもしくはμg、0.4gもしくはμg、0.5gもしくはμg、0.6gもしくはμg、0.7gもしくはμg、0.8gもしくはμg、0.9gもしくはμg、1gもしくはμg、2gもしくはμg、3gもしくはμg、4gもしくはμg、5gもしくはμg、6gもしくはμg、7gもしくはμg、8gもしくはμg、9gもしくはμg、10gもしくはμg、11gもしくはμg、12gもしくはμg、13gもしくはμg、14gもしくはμg、15gもしくはμg、16gもしくはμg、17gもしくはμg、18gもしくはμg、19gもしくはμg、20gもしくはμg、21gもしくはμg、22gもしくはμg、23gもしくはμg、24gもしくはμg、25gもしくはμg、26gもしくはμg、27gもしくはμg、28gもしくはμg、29gもしくはμg、30gもしくはμg、31gもしくはμg、32gもしくはμg、33gもしくはμg、34gもしくはμg、35gもしくはμg、36gもしくはμg、37gもしくはμg、38gもしくはμg、39gもしくはμg、40gもしくはμg、41gもしくはμg、42gもしくはμg、43gもしくはμg、45gもしくはμg、46gもしくはμg、47gもしくはμg、48gもしくはμg、49gもしくはμg、50gもしくはμg、51gもしくはμg、52gもしくはμg、53gもしくはμg、54gもしくはμg、55gもしくはμg、56gもしくはμg、57gもしくはμg、58gもしくはμg、59gもしくはμg、60gもしくはμg、61gもしくはμg、62gもしくはμg、63gもしくはμg、64gもしくはμg、65gもしくはμg、66gもしくはμg、67gもしくはμg、68gもしくはμg、69gもしくはμg、70gもしくはμg、71gもしくはμg、72gもしくはμg、73gもしくはμg、74gもしくはμg、75gもしくはμg、76gもしくはμg、77gもしくはμg、78gもしくはμg、79gもしくはμg、80gもしくはμg、81gもしくはμg、82gもしくはμg、83gもしくはμg、84gもしくはμg、85gもしくはμg、86gもしくはμg、87gもしくはμg、88gもしくはμg、89gもしくはμg、90gもしくはμg、91gもしくはμg、92gもしくはμg、93gもしくはμg、94gもしくはμg、95gもしくはμg、96gもしくはμg、97gもしくはμg、98gもしくはμg、99gもしくはμg、100gもしくはμg、125gもしくはμg、150gもしくはμg、175gもしくはμg、200gもしくはμg、225gもしくはμg、又は250gもしくはμg、あるいは本願に記載する数値のいずれかの間の任意の範囲、あるいは過度の実験を実施することなしに当業者に容易に認識・理解されるような他の範囲とすることができる。当業者に自明の通り、対象を有効に治療するために必要な投与量とタイミングは、所定の因子の影響を受ける場合があり、このような因子としては、限定されないが、疾病又は疾患の重度、治療歴、対象の一般健康状態又は年齢及び他の併存症が挙げられる。1実施形態において、前記ワクチンを加えた薬学的に許容される担体の免疫学的有効量は、約0.05μg、0.1μg、0.15μg、0.2μg、0.25μg、0.3μg、0.35μg、0.4μg、0.45μg、0.5μg、0.55μg、0.6μg、0.65μg、0.7μg、0.75μg、0.8μg、0.85μg、0.9μg、0.95μg、1.0μg、1.25μg、1.5μg、1.75μg、2.0μg、2.25μg、2.5μg、2.75μg、3.0μg、3.25μg、3.5μg、3.75μg、4.0μg、4.25μg、4.5μg、4.75μg~約5.0μg、又は本願に記載する数値のいずれかの間の任意の範囲である。
【0205】
ある種の実施形態では、無増悪生存期間又は全生存期間をコントロールプラセボ(例えばリン酸緩衝生理食塩水プラセボ)よりも平均して約又は少なくとも1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日、22日、23日、24日、25日、26日、27日、28日、29日、30日、31日、32日、33日、34日、35日、36日、37日、38日、39日、40日、41日、42日、43日、44日、45日、46日、47日、48日、49日、50日、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間、13週間、14週間、15週間、16週間、17週間、18週間、19週間、20週間、21週間、22週間、23週間、24週間、25週間、26週間、27週間、28週間、29週間、30週間、31週間、32週間、33週間、34週間、35週間、36週間、37週間、38週間、39週間、40週間、41週間、42週間、43週間、44週間、45週間、46週間、47週間、48週間、49週間、50週間、1カ月、2カ月、3カ月、4カ月、5カ月、6カ月、7カ月、8カ月、9カ月、10カ月、11カ月、12カ月、13カ月、14カ月、15カ月、16カ月、17カ月、18カ月、19カ月、20カ月、21カ月、22カ月、23カ月、24カ月、25カ月、26カ月、27カ月、28カ月、29カ月、30カ月、31カ月、32カ月、33カ月、34カ月、35カ月、36カ月、37カ月、38カ月、39カ月、40カ月、41カ月、42カ月、43カ月、44カ月、45カ月、46カ月、47カ月、48カ月、49カ月、50カ月、1年、2年、3年、4年、5年、6年、7年、8年、9年、10年、11年、12年、13年、14年、15年、16年、17年、18年、19年、20年、21年、22年、23年、24年、25年、26年、27年、28年、29年、30年、31年、32年、33年、34年、35年、36年、37年、38年、39年、40年、41年、42年、43年、44年、45年、46年、47年、48年、49年又は50年延長する方法で、投与を必要とする対象(例えば乳がん等のがんに罹患している対象)に本発明の治療用組成物を投与する。
【0206】
これ以上詳細に記載しなくても、当業者は、以上の記載に基づいて本発明を最大限に利用できると考えられる。したがって、以下の具体的な実施形態は、単に例証であり、本開示のその他の部分を如何なる点でも制限するものではないと解釈すべきである。本願に引用する全ての刊行物は、本願に記載する目的又は保護対象に関して援用する。
【実施例】
【0207】
[実施例1]臨床試料採取
抗Globo系抗原ヒトモノクローナル抗体を作製するために、ワクチン接種した患者の末梢血からB細胞を単離した。再発卵巣がんの患者にGloboH-KLHワクチン(OBI-822/OBI-821)を投与後、下記分析操作用に血液試料を採取した。
【0208】
[実施例2]ヒト単一B細胞選別及び培養
ヒト末梢血からIgD-IgM-IgA-メモリーB細胞を新たに単離し、蛍光活性化セルソーターを使用して384ウェル組織培養プレートにウェル当たり細胞1個の密度で播種した。選別したB細胞を刺激してIgGを分泌させ、数日間インキュベートした。インキュベーション後に、B細胞溶解液と培養上清を別々に採取した。
【0209】
[実施例3]抗体遺伝子の増幅
GloboH、SSEA-3又はSSEA-4と結合するクローンを得るには、RT-PCRを使用してIgVH、IgVκ又はIgVλをコードする遺伝子をB細胞溶解液から回収し、IgG発現ベクターにクローニングする。哺乳動物細胞のトランスフェクションにより組換え抗体を発現させ、結合特異性を確かめるため又は他の機能アッセイを実施するために使用する。
【0210】
[実施例4]GloboH、SSEA-3及びSSEA-4結合アッセイ
抗Globo系抗原ヒト抗体についてスクリーニングするために、ELISAを使用して分泌型IgGを含む培養上清をGloboH、SSEA-3又はSSEA-4との結合特異性について定量した。
【0211】
1.試薬/緩衝液調製
A.GloboH-セラミド、GloboH-脂質、SSEA-3-セラミド、SSEA-3-脂質、SSEA-4-セラミド及びSSEA-4-脂質粉末をエタノールに溶解し、-20℃で保存した。抗原20μgをエタノール5mLに加え、静かに混合した。
B.コーティング抗原50μL(ウェル当たり抗原0.2μg)を各ウェルに加える。室温で一晩被覆、標識及びインキュベートする。
C.ウェル当たり100μLのブロッキングバッファー(Sigma,カタログ番号B6429)を各ウェルに加え、室温で30分間インキュベートする。
【0212】
2.抗原をコーティングしたプレートへの培養上清の添加
A.ブロッキング操作後、PBST洗浄バッファー200μLで3回洗浄する。
B.抗原をコーティング/ブロッキングしたプレートの対応するウェルに希釈済みの全試験試料50μLを移す。
C.プレートを室温で1時間インキュベートする。
D.インキュベーション後、PBST洗浄バッファー200μLで3回洗浄する。
【0213】
3.抗原をコーティングしたプレートへの二次抗体の添加
A.二次抗体25μLをブロッキングバッファー4975μLにピペットで添加し、静かに混合する。(IgG抗体検出用ヤギ抗ヒトIgG-AP)
B.二次抗体溶液50μLを加え、室温で45分間インキュベートする。
C.インキュベーション後、洗浄バッファー200μLで4回洗浄する。
D.基質溶液(Sigma,カタログ番号P7998)100μLを加え、37℃で20分間インキュベートする。
E.停止溶液(Sigma,カタログ番号A5852)50μLを加えることにより反応を停止し、よく混合した後、ELISAプレートリーダーで405nmの吸光度を読み取る。
【0214】
4.データ解析
A.読み取り値がカットオフ値を上回るウェルを潜在的なGlobo系抗原結合クローンとみなす。
B.カットオフ値=X+0.1(Xは陰性コントロールの平均OD値である)。
C.コントロールを、試験試料と同様に処理した。但し、陽性コントロールは、陽性Abであることが分かっているものを一次Abとする(抗GloboH、抗SSEA-3、抗SSEA-4抗体を加え、陰性コントロールには一次抗体としてIgGを加えない)。
D.GraphPad Prism5ソフトウェアを使用してマン・ホイットニーの検定によりデータを解析した。
【0215】
5.結果
図1から明らかなように、20-2D、31-2C及び4-22Oは、GloboHに対する結合親和性が良好であった。
図2から明らかなように、20-2D、31-2C及びF-8CはSSEA-3に対する結合親和性が良好であった。同様に、
図3から明らかなように、20-2D、31-2C及びF-8CはSSEA-4に対する結合親和性が良好であった。更に、Globo系抗原(GloboH、SSEA-3及びSSEA-4)を脂質と結合させたコンジュゲートの全体としての結合親和性はセラミドとのコンジュゲートよりも高かった。以下の表はGlobo系抗原(GloboH、SSEA-3及びSSEA-4)と結合するヒト抗体クローンのKd値を示した。
【0216】
【0217】
【0218】
【0219】
特に明記しない限り、本願で使用する全ての科学技術用語と全ての頭字語は、本発明の技術分野における通常の知識をもつ者に一般に理解されている通りの意味とする。本発明を実施するためには、本願に記載するものと同様又は同等のあらゆる組成物、方法、キット及び情報通信手段を使用することができるが、好ましい組成物、方法、キット及び情報通信手段は、本願に記載するものである。
【0220】
本願に引用する全ての参考文献は、法律が許す範囲で最大限まで本願に援用する。これらの参考文献の解説は、それらの著者によりなされた主張を要約する目的に過ぎない。如何なる参考文献(又は如何なる参考文献の一部)も関連する先行技術であると認めるものではない。出願人は引用する全ての参考文献の正確さと妥当性について異議を申し立てる権利を留保する。
【0221】
【0222】
[配列表]
本願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出された配列表を含み、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。2019年1月28日に作成された上記ASCIIコピーはG3004-00802_SL.txtと命名され、サイズは137,284バイトである。
【配列表】