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特許7121729多孔質体、該多孔質体の付加製造方法、並びに人を支持する及び/又は支えるための装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-09
(45)【発行日】2022-08-18
(54)【発明の名称】多孔質体、該多孔質体の付加製造方法、並びに人を支持する及び/又は支えるための装置
(51)【国際特許分類】
   A47C 27/00 20060101AFI20220810BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20220810BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20220810BHJP
   B68G 5/02 20060101ALI20220810BHJP
【FI】
A47C27/00 Z
B33Y80/00
B33Y10/00
B68G5/02
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019513775
(86)(22)【出願日】2017-09-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-11-28
(86)【国際出願番号】 EP2017072614
(87)【国際公開番号】W WO2018050558
(87)【国際公開日】2018-03-22
【審査請求日】2020-09-03
(31)【優先権主張番号】16188521.5
(32)【優先日】2016-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515266223
【氏名又は名称】コベストロ、ドイチュラント、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】COVESTRO DEUTSCHLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100151448
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 孝博
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100203035
【弁理士】
【氏名又は名称】五味渕 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】アクテン,ディルク
(72)【発明者】
【氏名】バスゲン,トマス
(72)【発明者】
【氏名】ダイクストラ,ディルク
(72)【発明者】
【氏名】ディジョルジオ,ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】ワグナー,ローランド
(72)【発明者】
【氏名】アクバシュ,レベント
(72)【発明者】
【氏名】ライヘルト,ペーター
(72)【発明者】
【氏名】ハッティグ,ユルゲン
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0273347(US,A1)
【文献】特開平06-340747(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0077010(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0119792(US,A1)
【文献】特公昭46-5662(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 1/00-31/12
B33Y 80/00
B33Y 10/00
B68G 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支柱(100)によって互いに接合された節点(200)の三次元ネットワークと、前記支柱(100)の間に存在する空隙体積(300)とを含む多孔質体(10、20)であって、
前記支柱(100)が、200μm以上50mm以下の平均長さを有し、
前記支柱(100)が、100μm以上5mm以下の平均厚さを有し、
前記多孔質体が、少なくとも1つの空間方向において、10kPa以上100kPa以下の圧縮硬度(40%圧縮、DIN EN ISO 3386-1:2010-09)を有することを特徴とする、多孔質体(10、20)。
【請求項2】
前記多孔質体は、40%圧縮後の圧縮永久歪み(DIN ISO 815-1)が5%以下である、請求項1に記載の多孔質体(10、20)。
【請求項3】
前記多孔質体が、少なくとも1つの空間方向において、0.1以上1.5以下のtanδ値(20℃、DMA、DIN EN ISO 6721)を有する、及び/又は前記多孔質体が、少なくとも1つの空間方向において、-10℃以上40℃以下に最大tanδ値(DMA、DIN EN ISO 6721)を有する、請求項1又は2に記載の多孔質体(10、20)。
【請求項4】
選択された空間方向における前記多孔質体の圧縮硬度(40%圧縮、DIN EN ISO 3386-1:2010-09)が、前記選択された空間方向に対して直角の空間方向における前記多孔質体の圧縮硬度(40%圧縮、DIN EN ISO 3386-1:2010-09)と10%以上異なり、
及び/又は
選択した空間方向における前記多孔質体のtanδ値(20℃、DMA、DIN EN ISO 6721)が、前記選択された空間方向に対して直角の空間方向における前記多孔質体のtanδ値(20℃、DMA、DIN EN ISO 6721)と10%以上異なる、請求項1~3のいずれか一項に記載の多孔質体(10、20)。
【請求項5】
選択された空間方向における前記多孔質体の圧縮硬度(40%圧縮、DIN EN ISO 3386-1:2010-09)が、他の空間方向における前記多孔質体の圧縮硬度(40%圧縮、DIN EN ISO 3386-1:2010-09)と10%未満だけ異なり、
及び/又は選択された空間方向における前記多孔質体のtanδ値(20℃、DMA、DIN EN ISO 6721)が、他の空間方向における前記多孔質体のtanδ値(20℃、DMA、DIN EN ISO 6721)と10%未満だけ異なる、請求項1~3のいずれか一項に記載の多孔質体(10、20)。
【請求項6】
前記多孔質体が、以下の特性:
・ 0.1以上1.5以下のtanδ値(20℃、DMA、DIN EN ISO 6721)
・ -10℃以上40℃以下における最大tanδ値(DMA、DIN EN ISO 6721)
・ 1MPa以上800MPa以下の弾性率(DIN EN ISO 604:2003-12)
・ 40A以上70D以下のショア硬度(DIN ISO 7619-1:2012-02)
・ 220℃以下の融点(DIN EN ISO 11357-3:2013-04)
・ 40℃以下のガラス転移温度T(DMA、DIN EN ISO 6721)
のうちの1つ以上を有する材料から少なくとも部分的に形成される、請求項1~5のいずれか一項に記載の多孔質体(10、20)。
【請求項7】
前記空隙体積(300)が、前記多孔質体(10、20)の体積の50%以上99%以下を占める、請求項1~6のいずれか一項に記載の多孔質体(10、20)。
【請求項8】
前記節点(200)が、前記多孔質体(10、20)の体積の少なくとも一部に周期的に繰り返すように分布している、請求項1~7のいずれか一項に記載の多孔質体(10、20)。
【請求項9】
前記空隙体積(300)が、相互に貫通する第1のチャネル群(310)、第2のチャネル群(320)、及び第3のチャネル群(330)の形態で形成され、それぞれの各チャネル群内の多数の個々のチャネル(311、321、331)が、互いに平行に延び、前記第1のチャネル群(310)、前記第2のチャネル群(320)、及び前記第3のチャネル群(330)が、異なる空間方向に延在する、請求項1~8のいずれか一項に記載の多孔質体(10、20)。
【請求項10】
隣接する支柱(100)間の平均最小角度が、30°以上140°以下である、請求項1~9のいずれか一項に記載の多孔質体(10、20)。
【請求項11】
前記多孔質体(10、20)の第1の領域における前記節点(200)の空間密度が、前記多孔質体(10、20)の第2の領域における前記節点(200)の空間密度と異なる、請求項1~10のいずれか一項に記載の多孔質体(20)。
【請求項12】
前記多孔質体(10、20)の第1の領域における前記多孔質体(10、20)の材料が、前記多孔質体(10、20)の第2の領域における材料と異なる、請求項1~11のいずれか一項に記載の多孔質体(10、20)。
【請求項13】
前記多孔質体(10、20)が、付加製造方法で製造されることを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の多孔質体(10、20)を製造する方法。
【請求項14】
請求項1~11のいずれか一項に記載の多孔質体(10、20)を備える、人を支持する及び/又は支えるための装置。
【請求項15】
前記多孔質体(10、20)の少なくとも一部に空気を通過させるためのベンチレータをさらに備える、請求項14に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支柱によって互いに接続された節点の三次元ネットワークと、支柱間に存在する空隙体積とを含む多孔質体に関し、支持要素又は支え要素の形態で使用することができる。本発明はまた、そのような多孔質体を製造する方法、並びに人を支持する及び/又は支えるための前記多孔質体を含む装置に関する。
【背景技術】
【0002】
問題のタイプの支持要素又は支え要素は、例えばマットレスの形態をとり得る。この種のマットレスは、典型的にはフォーム材料からなり、マットレスは、特に複数の重ね合わせたフォーム層からなり得る。そのようなマットレスの横たわる快適さを増加させるために、マットレスにおいていわゆるゾーニングに取り組むことが慣例である。この種のゾーニングは、マットレスのエリアにわたって分布した、異なる弾性特性、すなわち異なる降伏度を有するゾーンを形成する。これは、マットレスは、例えば背部領域とは違って、脚部領域では異なる降伏度を有するべきであるという事実を考慮に入れている。多層マットレスにおけるこの種のゾーニングの形成は、典型的には、振動ブレードを用いて中間マットレス層に局所的にキャビティを組み込むことによって達成される。この中間マットレス層の上側及び下側には、それぞれ完全に連続した上側及び下側マットレス層が適用される。
【0003】
DE 10 2015 100 816 B3は、マットレス、クッション、シート又はシートの一部によって形成された身体支持要素を製造するためのプロセスを開示しており、このプロセスは、人特有の三次元支持構造を形成する印刷データを定義するプロセス工程を含み、身体支持要素を製造することは、その印刷データを3Dプリンタによって使用する。印刷データを用いて、3Dプリンタによって異なるサイズ及び/又は異なる数のキャビティを形成することによって異なる弾性の領域を製造することが可能である。
【0004】
DE 10 2015 100 816 B3によるプロセスでは、身体支持要素の製造は、3Dプリンタを用いて実施される印刷プロセスにおいて結合剤と混合される弾性材料を使用して達成することができると述べられている。使用される弾性材料は、エラストマー材料、特にプラスチックであり得る。3Dプリンタは、噴霧手段を有してもよく、その場合、弾性材料は、第1の噴霧手段から噴霧され、結合剤は、第2の噴霧手段から噴霧される。弾性材料は、粉末形態であり得る。
【0005】
DE 10 2015 100 816 B3は、エラストマー材料が多孔質体を形成するかどうかに関しては何も述べていない。印刷データに応じた3Dプリンタによって、身体支持要素の異なる弾性の領域が、異なるサイズ及び/又は異なる数のキャビティを形成することによって生成されることが述べられている。マットレス3の弾性の三次元的変化を得るために、3Dプリンタにおけるマットレス内の特定の場所に制御された方法でキャビティを組み込むことが可能である。特定の場所における空隙体積は、第2の噴霧手段を介していかなる結合剤も噴霧しないことによって生成され、それにより、第1の噴霧手段を介して噴霧されたエラストマー材料は、そこで結合剤と結合して材料構造を形成することができない。あるいは、粉末状のエラストマー材料の無駄がないように、エラストマー材料を第1の噴霧手段を介して噴霧しないことも可能である。
【0006】
DE 10 2015 100 816 B3は、3Dプリンタで生成されたキャビティが、任意の所望の幾何学形状を有することができ、これらは、特にマットレスの材料構造によって四方を囲み得る介在物の形態をとり得ると述べている。加えて、キャビティは異なるサイズで生成できることが述べられており、特に、ここでは非常に小さいキャビティが生成されることも可能であり、これはマットレスの弾性特性における変化の特に高い空間分解能が達成されるべきであることを意味する。
【0007】
伝統的に、軟質ポリウレタンフォームは、マットレス、クッションなどを製造するために大量に使用されており、これは多数の特許及び非特許公報に記載されている。これとは対照的に、付加方法により製造されたフォームとして特徴付けることができる材料に関する報告は、あまり一般的ではない。
【0008】
Maiti,A.らによる刊行物「3D printed cellular solid outperforms traditional stochastic foam in long-term mechanical response」、Sci.Rep.6,24871;doi:10.1038/srep 24871(2016)には、直接インク書き込み方法によって製造されるポリジメチルシロキサンエラストマー(PDMS)から形成された材料が記載されている。この材料は、各層が直径250μmの等間隔のPDMSシリンダーからなるように層ごとに積み上げられた。
【0009】
国際公開第2012/028747号は、付加層構築方法によって構築材料から三次元物体を製造するためのプロセスであって、構築材料の材料特性及び製造しようとする物体の定義された特性から出発して、格子構造を含む物体の内部構造が計算され、この内部構造を有する三次元物体が、定義された特性を有するように、付加層構築方法によって製造されるプロセスに関する。
【0010】
身体支持要素、例えばマットレス又はクッションにおける快適さの知覚に関する重要な基準は、要素の材料が要素を通る空気と周囲の空気との交換を可能にする程度である。この空気の交換がなければ、発汗の増加をもたらす熱が人体から除去されることも、人体からの発汗又は洗浄プロセスからの湿った空気が運び去られることも不可能であろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】DE 10 2015 100 816 B3
【文献】国際公開第2012/028747号
【非特許文献】
【0012】
【文献】3D printed cellular solid outperforms traditional stochastic foam in long-term mechanical response、Sci.Rep.6,24871;doi:10.1038/srep 24871(2016)
【発明の概要】
【0013】
本発明によって対処される問題は、従来技術の少なくとも1つの欠点を少なくとも部分的に克服することである。本発明によって対処されるさらなる問題は、(発汗体に最大限の快適さを提供するために)空気の最適な交換を可能にする、発汗体の荷重受けに好適な多孔質体を提供することである。本発明によって対処されるさらなる問題は、使用者にとっての快適さのその認識に関して、従来のマットレス又はクッションに匹敵する多孔質体を提供することである。本発明によって対処される追加の問題は、非常に費用効率が高い、及び/又は個別化された、及び/又は資源を節約する方法で多孔質体を製造することができるようにすることであった。
【0014】
本発明によれば、これらの問題のうちの少なくとも1つは、請求項1の特徴を有する多孔質体によって解決される。そのような多孔質体の製造方法は、請求項13に提供されている。そのような多孔質体を含む人を支持する及び/又は支えるための装置が請求項14に提供されている。有利な発展は、従属請求項に明記されている。文脈から反対が明らかでない限り、それらは、所望のように組み合わせることができる。
【0015】
本発明による多孔質体は、支柱(ストラットstrut)によって互いに接合された節(ノードnode)点の三次元ネットワークと、支柱間に存在する空隙体積とを含む。支柱は、200μm以上50mm以下の平均長さを有する。支柱はまた、100μm以上5mm以下の平均厚さを有する。多孔質体は、少なくとも1つの空間方向において10kPa以上100kPa以下の圧縮硬度(40%圧縮、DIN EN ISO 3386-1:2010-09)を有する。
【0016】
本発明による多孔質体は、従来のマットレス又はクッションの利点と、その多孔質構造から生じる通気性を兼ね備え、従来のフォームでは達成できない。
【0017】
本発明による多孔質体は、その構造の垂直構築において外部支持要素なしで付加製造方法において製造することができる。
【0018】
支柱は、200μm以上50mm以下、好ましくは500μm以上10mm以下、より好ましくは750μm以上5mm以下の平均長さを有する。支柱はまた、100μm以上5mm以下、好ましくは500μm以上2.5mm以下、より好ましくは750μm以上1mm以下の平均厚さを有する。厚さが個々の支柱の過程で変化する場合、それはおそらく構築目的のためにかなり意図的である可能性があり得、最初に個々の支柱の平均厚さが決定され、次いでこの値が支柱全体の平均厚さの計算に使用される。
【0019】
具体例は、4mm以上5mm以下の支柱の平均長さ及び800μm以上900μm以下の支柱の平均厚さを有する本発明による多孔質体である。
【0020】
本明細書では単に本体とも称される、本発明による多孔質体は、支持要素及び/又は支え要素としてのその最終用途に従って圧縮することができる。少なくとも1つの空間方向において、本体は、10kPa以上100kPa以下、好ましくは20kPa以上70kPa以下、より好ましくは30kPa以上40kPa以下の圧縮硬度(40%圧縮、DIN EN ISO 3386-1:2010-09)を有する。
【0021】
本発明による多孔質体内の節点の平均空間密度は、例えば、5節点/cm以上200節点/cm以下、好ましくは10節点/cm以上100節点/cm以下、より好ましくは30節点/cm以上60節点/cm以下であり得る。
【0022】
本発明による多孔質体に好適な材料は、特にポリウレタンエラストマーのようなエラストマーである。エラストマーは、熱硬化性若しくは熱可塑性材料又はそれらの混合物として構成することができるのが一般的である。本発明による多孔質体において、1kg/l以上の密度で、40ショアA以上98ショアA以下、好ましくは60ショアA以上95ショアA以下のショアA硬度(DIN ISO 7619-1)を有する材料を使用することが好ましい。熱可塑性ポリウレタンエラストマーが好ましい。
【0023】
多孔質体の好ましい実施形態において、多孔質体は、5%以下、好ましくは3%以下、より好ましくは1%以下の40%圧縮後の圧縮永久歪み(DIN ISO 815-1)を有する。
【0024】
支持要素及び/又は支え要素として使用する際の快適性をさらに増加させるために、本発明による多孔質体は、粘弾特性も有し得る。好ましい実施形態において、多孔質体は、少なくとも1つの空間方向において、-10℃以上40℃以下、好ましくは10℃以上35℃以下、より好ましくは18℃以上30℃以下に、最大tanδ値(DMA、DIN EN ISO 6721)を有する。好ましくは、多孔質体は、少なくとも1つの空間方向において、0.1以上1.5以下、好ましくは0.2以上1.2以上、より好ましくは0.3以上1.1以下の本体のtanδ値(20℃、DMA、DIN EN ISO 6721)を有する。
【0025】
多孔質体のさらに好ましい実施形態において、選択された空間方向における本体の圧縮硬度(40%圧縮、DIN EN ISO 3386-1:2010-09)は、選択された空間方向に対して直角の空間方向における本体の圧縮硬度(40%圧縮、DIN EN ISO 3386-1:2010-09)と10%以上、好ましくは15%以上200%以下、より好ましくは20%以上100%以下だけ異なる。
【0026】
好ましくは、選択された空間方向における多孔質体のtanδ値(20℃、DMA、DIN EN ISO 6721)は、選択された空間方向に対して直角の空間方向における本体のtanδ値(20℃、DMA、DIN EN ISO 6721)と10%以上、又は好ましくは15%以上200%以下、より好ましくは20%以上100%以下だけ異なる。
【0027】
これらの機械的特性に関してこのような異方性特性を有する本発明による多孔質体は、付加製造によって適切に製造される。このようにして、例えば本体の異方性特性を調整するために、制御された方法で個々の支柱の長さ及び厚さを規定することが可能である。
【0028】
さらに好ましい実施形態において、選択された空間方向における本体の圧縮硬度(40%圧縮、DIN EN ISO 3386-1:2010-09)は、他の空間方向における本体の圧縮硬度(40%圧縮、DIN EN ISO 3386-1:2010-09)と10%未満、好ましくは5%以下、より好ましくは2%以下だけ異なる。
【0029】
追加的に又は代替的に、好ましくは選択された空間方向における本体のtanδ値(20℃、DMA、DIN EN ISO 6721)は、他の空間方向のうちの1つにおける本体のtanδ値(20℃、DMA、DIN EN ISO 6721)と10%未満、好ましくは5%以下、より好ましくは2%以下だけ異なる。
【0030】
異なる空間方向における本体のtanδ値の差が小さいほど、これらの機械的特性に関してその特性はより等方性である。
【0031】
さらなる好ましい実施形態において、本体は、少なくとも部分的に以下の特性のうちの1つ以上を有する材料から形成される。
【0032】
・ 0.1以上1.5以下、好ましくは0.2以上1.2以上、より好ましくは0.3以上1.1以下のtanδ値(20℃、DMA、DIN EN ISO 6721)
・ -10℃以上40℃以下、好ましくは10℃以上35℃以下、より好ましくは18℃以上30℃以下における最大tanδ値(DMA、DIN EN ISO 6721)
・ 1MPa以上800MPa以下、好ましくは5MPa以上400MPa以下、より好ましくは10MPa以上200MPa以下の弾性率(DIN EN ISO 604:2003-12)
・ 40A以上70D以下、好ましくは50ショアA以上98ショアA以下、より好ましくは60ショアA以上95ショアA以下のショア硬度(DIN ISO 7619-1:2012-02)
・ 220℃以下、好ましくは30℃以上210℃以下、より好ましくは40℃以上200℃以下の融点(DIN EN ISO 11357-3:2013-04)
・ 40℃以下、好ましくは-10℃以上40℃以下、より好ましくは10℃以上35℃以下のガラス転移温度T(DMA、DIN EN ISO 6721)
上記に概説した実施形態に加えて、本体自体の特性ではなく本体材料の特性がこのように導入される。具体的には、本発明による本体の利点は、少なくとも1つの基材から構成される、例えば本体構造の、本体構築の変化が異なる機械的特性を有する本体を与えることができることである。これにより、製造者のロジスティクス及び在庫が簡単になる。他方、異なる材料を本体構築の調整によって加工して、匹敵する機械的特性を有する本体を得ることができ、これは製造者のための出発材料の調達においてより大きな柔軟性を意味し得る。
【0033】
さらなる好ましい実施形態において、空隙体積は、本体の体積の50%以上99%以下、好ましくは55%以上95%以下、より好ましくは60%以上90%以下を占める。本体の出発材料の密度及び本体自体の密度の知識を用いて、このパラメータは、容易に決定することができる。好ましくは、空隙体積は、本体の体積の65%以上85%以下を占める。
【0034】
さらなる好ましい実施形態において、節点は、本体の体積の少なくとも一部に周期的に繰り返すように分布している。節点が体積内で周期的に繰り返すように分布している場合、この状況は、結晶学によって説明することができる。節点は、14個のブラベ格子:単純立方体(sc)、体心立方体(bcc)、面心立方体(fcc)、単純正方晶、体心正方晶、単純斜方晶、底辺中心斜方晶、体心斜方晶、面心斜方晶、単純六方晶、菱面体晶、単純単斜晶、底心単斜晶、及び三斜晶に従って配置され得る。好ましいのは立方格子sc、fcc、及びbccである。
【0035】
本発明による多孔質体の構築はまた、少なくとも空間内に節点を規則的に配置する場合には、元は固体の本体を通る中空チャネルの貫通の結果として説明し得る。したがって、さらなる実施形態において、空隙体積は、相互に貫通する第1、第2、及び第3のチャネル群の形態で形成され、ここで、それぞれ各チャンネル群内の多数の個々のチャネルは、互いに平行に延び、第1のチャネル群、第2のチャネル群、及び第3のチャネル群は、異なる空間方向に延在する。
【0036】
本発明による多孔質体をクッション、マットレスなどとして使用するためには、それが異なる機械的特性の領域、特に異なる圧縮硬度及び場合によっては異なるtanδ値を有する領域を有すると有利であり得る。したがって、肩エリアの領域内のマットレスは、その人が依然として脊柱に対して全体的にまっすぐに横たわるために、自分の側に横たわっている人がその人の体の残りの部分より低く沈むことを可能にするように構成され得る。本体がワンピースマットレスの形態をとる場合、機械的特性の変化は、以下に記載される実施形態の一方又は両方によって特に達成することができる。これに関して、ワンピースマットレス、ワンピースクッションなどを与えるためのモジュール構築を達成することが可能である。
【0037】
多孔質体のさらなる好ましい実施形態において、多孔質体内の隣接する支柱間の平均最小角度は、30°以上140°以下、好ましくは45°以上120°以下、より好ましくは0°以上100°以下である。この角度は、応力を受けない状態の本体で常に確認される。隣接する支柱は、共通の節点を有する支柱である。2つの隣接する支柱間の最小角度は、問題の支柱と異なる角度を形成する複数の隣接する支柱を有する支柱を考慮すると、これらの角度のうち最小の角度が選択されるように理解するべきである。この一例は、化学言語で表現された八面体配位を有する節点である。6つの支柱がこの節点から出ており、反対側の支柱は、互いに180°の角度を形成し、平面内で直接隣接する支柱は、互いに90°の角度を形成する。この例では、隣接する支柱間の最小角度は、90°である。
【0038】
多孔質体のさらなる好ましい実施形態において、本体の第1の領域内の節点の空間密度は、本体の第2の領域内の節点の空間密度とは異なる。幾何学的な観点から、節点の中心は、ここで考慮されている。本体の第1の領域における節点の空間密度は、例えば、5節点/cm以上200節点/cm以下、好ましくは10節点/cm以上100節点/cm以下、より好ましくは3節点/cm以上60節点/cm以下であり得る。本体の第2の領域内の節点の空間密度は、第1の領域内の密度とは異なるという条件で、例えば、5節点/cm以上200節点/cm以下、好ましくは10節点/cm以上100節点/cm以下、より好ましくは、3節点/cm以上60節点/cm以下であり得る。
【0039】
本体の第1の領域内の節点の空間密度が、本体の第2の領域の節点の空間密度の1.1倍以上10倍以下、好ましくは1.5倍以上7倍以下、より好ましくは2倍以上5倍以下であるという点で空間密度の差を表すことも可能である。
【0040】
具体例は、39節点/cm以上41節点/cm以下の第1の領域における節点の密度、及び19節点/cm以上21節点/cm以下の第2の領域における節点の密度を有する本発明による多孔質体である。
【0041】
多孔質体のさらなる好ましい実施形態において、本体の第1の領域における本体の材料は、本体の第2の領域における材料とは異なる。対応して異なる機械的特性を有する異なる材料は、好ましくは本発明による本体を製造するために2つ以上の材料のためのプリントヘッドを用いた溶融積層プロセスにおいて使用することができる。有用な材料は、1つの物質クラスからの2つの異なる材料、例えば異なる弾性率を有する2つの熱可塑性ポリウレタンエラストマー、又は異なる物質クラスからの2つの材料のいずれかである。この例は、熱可塑性エラストマー(TPE)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド(PA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、シクロオレフィンコポリエステル(COC)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルアミドケトン(PEAK)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリイミド(PI)、ポリプロピレン(PP)若しくはポリエチレン(PE)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)、ポリ乳酸(PLA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリアクリレート、又はセルロイドの群からの2つのメンバーである。
【0042】
本発明はさらに、本体が付加製造方法(additive manufacturing method)で製造される、本発明による多孔質体の製造方法に関する。付加製造方法により、例えばマットレスとして考えられている本発明による多孔質体の減衰特性の個別調整が可能である。ここで「個別化」とは、個々の部品だけでなく、支持要素又は支え要素の緩衝特性を所望に応じて異なる点で、及びプロセスの一部として調整することも可能であることを意味する。したがって、例えば、解剖学的要件又はニーズに従って顧客用にマットレスを個別に作ることが可能である。例えば、マットレス上に横たわっているときに最適な圧力分布を達成するために、まずセンサ表面上の本体の圧力プロファイルを記録し、そのようにして得られたデータをマットレスの個別化のために使用することが可能である。次いで、データは、それ自体既知の方法で付加製造方法に送られる。
【0043】
このプロセスは、例えば、溶融積層(融解フィラメント製造、FFF、又は融解堆積モデリング、FDM)、インクジェット印刷、フォトポリマー噴射、ステレオリソグラフィ、選択的レーザー焼結、デジタル光処理型付加製造システム、連続式液体界面製造、選択的レーザー溶融、結合剤噴射型付加製造、マルチジェット溶融型付加製造、高速焼結プロセス、及び積層オブジェクトモデリングから選択され得る。付加製造方法は、焼結方法又は溶融積層方法であることが好ましい。
【0044】
本発明の文脈において、焼結方法は、特に物品を層ごとに積み上げるために熱可塑性粉末を利用する方法である。この文脈では、いわゆるコーターによって、粉末の薄層が塗布され、次いでエネルギー源によって選択的に溶融される。周囲の粉末は、ここでは構成要素の幾何学形状を支持する。したがって、複雑な幾何学形状は、FDM法よりも経済的に実行可能な方法で製造することができる。さらに、様々な物品を、いわゆる粉末ベッドにおいて密集した形態で配置又は製造することができる。これらの利点により、粉末型付加製造方法は市場で最も経済的に実行可能な付加製造方法の1つである。したがって、それらは、主に産業用ユーザーによって使用される。粉末型付加製造方法の例は、選択的レーザー焼結(SLS)又は高速焼結(HSS)である。それらは、選択的溶融のためのエネルギーをプラスチックに導入する方法において互いに異なる。レーザー焼結方法では、エネルギーは、指向性レーザービームを介して導入される。高速焼結(HSS)方法では、エネルギーは、赤外線(IR)源を介して、粉末床に選択的に印刷されたIR吸収剤と組み合わせて導入される。選択的熱焼結(SHS)は、熱可塑性粉末を選択的に溶融するために従来のサーマルプリンタの印刷ユニットを利用する。選択的レーザー焼結方法(SLS)が好ましい。
【0045】
用語「溶融積層方法」は、付加製造の分野からの製造方法を指し、それによって加工物は、例えば可融性プラスチックから層ごとに積み上げられる。プラスチックは、繊維などのさらなる添加物を伴って又は伴わずに使用することができる。FFF用の機械は、3Dプリンタの機械クラスの一部である。この方法は、加熱によるワイヤ形態のプラスチック又はワックス材料の液化に基づいている。最終冷却の過程で、材料は固化する。材料は、製造平面に対して自由に移動可能な加熱ノズルを用いた押出しによって適用される。ここでは、製造平面を固定してノズルを自由に移動可能にすること、又はノズルを固定して基板テーブル(製造平面を有する)を移動可能にすること、又は両方の要素、ノズル及び製造平面を移動可能にすることが可能である。基板とノズルとが互いに対して移動可能である速度は、好ましくは1~200mm/sの範囲内である。用途によると、層厚は、0.025~1.25mmの範囲内であり;ノズルの材料ジェットの出口直径(ノズル出口直径)は、典型的には少なくとも0.05mmである。
【0046】
層ごとのモデル製造では、個々の層がそのように組み合わされて複雑なパーツを形成する。本体は、典型的には、各作業平面を1ラインずつトレースし(層の形成)、次いで作業平面をスタックのように上方に動かして(第1の層の上に少なくとも1つのさらなる層の形成)、層ごとになるように形状を生じさせる。ノズルからの材料混合物の出口温度は、例えば、80℃~420℃であり得る。さらに、基板テーブルを例えば20℃~250℃に加熱することが可能である。したがって、その上に適用されたさらなる層が第1の層に十分に結合するように、適用された層の過度に急速な冷却を防ぐことが可能である。
【0047】
本発明はさらに、本発明による多孔質体を含む、人を支持する及び/又は支えるための装置に関する。本発明による装置は、例えばベッド又は家具のクッションアイテムであってもよい。マットレス又はクッションエリアとして機能する本発明による多孔質体と同様に、装置は、能動要素及び受動要素を含んでもよい。受動要素は、フレーム、ジョイント、ローラーなどの構成要素である。能動要素は、アクチュエータモータ、例えばベッド幾何学形状を調整するためのモータ、センサ、又は所望の機能を提供する他の要素であり得る。
【0048】
好ましくは、本発明による装置は、病院及び介護施設用のベッドである。さらなる好ましい使用分野は、乗り物、特に長距離用の乗り物におけるシートの分野である。そのような用途において、本発明による多孔質体の利点、すなわち、従来のフォームでは達成できない通気性に加えて粘弾性特性が特によく明らかにされている。
【0049】
一実施形態において、本発明による装置は、多孔質体の少なくとも一部に空気を通過させるためのベンチレータ(ventilator)をさらに備える。最も簡単な場合には、装置の周囲からの空気は、多孔質体の少なくとも一部を通って導出されるので、装置を利用し、かつ多孔質体の上に座ったり横たわったりしている人による発汗によって放出された水分を容易に運び去ることができる。これだけで、座ったり横たわったりする快適さが増加する。
【0050】
空気が室温に対して1つ以上の加熱要素によって加熱される(20℃超の温度)か、又は1つ以上の冷却要素によって冷却される(20℃以下の温度)場合、快適さの知覚は、さらに増加させることができる。
【0051】
本発明は、好ましい実施形態を参照して以下の図面によって詳細に説明されるが、それらに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1】本発明による多孔質体の第1の図である。
図2図1からの本発明による多孔質体の別の図である。
図3図1からの本発明による多孔質体の別の図である。
図4】本発明によるさらなる多孔質体である。
図5】実施例1及び2による多孔質構造である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
図1は、支柱100によって互いに接合された節点200の三次元ネットワークを有する本発明による多孔質体10を斜視図で示す。支柱100の間は、空隙空間300である。本体10の縁部には切頭節点201があり、そこから支柱が本体10の内部にのみ突出している。図2は、第1の等角図で同じ本体10を示し、図3は、さらなる等角図で同じ本体10を示し、本体10の一側面の上面図に対応する。図3に示す本体10の外面には、参照番号202によって識別される切頭節点も存在する。
【0054】
本発明による本体10内の節点200は、その体積の少なくとも一部において規則的に分布していてもよい。それらがその体積の少なくとも一部において不規則に分布していることも同様に可能である。本体10は、節点200が規則的に分布している1つ以上のサブボリューム及び節点200が不規則に分布している1つ以上のサブボリュームを有することも可能である。
【0055】
本発明による多孔質体10内の支柱100及び節点200からなるネットワークの構造によれば、特定の機械的特性はまた、それらが本体上で決定される空間方向の関数であり得る。これは、例えば、図1図3に示される本体10の場合である。単位セルの基本因子に対応する空間方向に沿って、特に圧縮硬度及びtanδ値は、例えば、構成要素として3つ全ての基本スペクトルを含む空間方向とは異なり得る。
【0056】
空隙体積300は、本体10の体積の50%以上99%以下、好ましくは55%以上95%以下、より好ましくは60%以上90%以下を占めることが可能である。本体の出発材料の密度及び本体自体の密度の知識を用いて、このパラメータを決定することは容易に可能である。
【0057】
好ましくは、本体10の体積の少なくとも一部における節点200は、周期的に繰り返す分布にある。体積内の節点200が周期的に繰り返す分布にあるとき、この状況は、結晶学によって説明することができる。節点は、14個のブラベ格子:単純立方体(sc)、体心立方体(bcc)、面心立方体(fcc)、単純正方晶、体心正方晶、単純斜方晶、底辺中心斜方晶、体心斜方晶、面心斜方晶、単純六方晶、菱面体晶、単純単斜晶、底心単斜晶、及び三斜晶に従って配置され得る。好ましいのは立方格子sc、fcc、及びbccである。
【0058】
結晶学的な見方を続けると、1つの節点200が他の節点に接続される際に通る支柱100の数は、節点200の配位数と見なすことができる。節点200から出発する支柱100の平均数は、4以上12以下であり得るが、異常であるか又は結晶学において不可能である配位数を達成することも可能である。配位数の決定のために、図1の参照番号201によって示されるように、本体の外面上の切頭節点は考慮されない。
【0059】
異常な配位数又は結晶学的に不可能な配位数の存在は、本発明による多孔質体が付加製造技術によって製造される場合に特に達成することができる。第1の群の節点200が、第1の平均数の支柱100を有し、第2の群の節点が、第2の平均数の支柱100を有することも同様に可能であり、第1の平均数は、第2の平均数とは異なる。
【0060】
図1図3に示す本体10では、節点200は、体心立方格子状に配置されている。配位数、したがってそこから出発する支柱の平均数は8である。
【0061】
隣接する支柱100間の平均最小角度は、30°以上140°以下、好ましくは45°以上120°以下、より好ましくは50°以上100°以下であることが可能である。図1図3に示す本体10の場合、全ての点において、支柱100間の最小角度は、立方体の空間対角線間の角度に関する三角法の考察から推論できるように、約70.5°(アークコサイン(1/3))である。
【0062】
本発明による多孔質体の構造はまた、少なくとも空間内に節点200を規則的に配置する場合には、元は固体の本体20を通る中空チャネルの貫通の結果として説明し得る。したがって、図4を参照すると、キャビティ300は、相互に貫通する第1のチャネル群310、第2のチャネル群320、及び第3のチャネル群330の形態をとってもよく、それぞれ各チャンネル群内の多数の個々のチャネル311、321、331は、互いに平行に延び、第1のチャネル群310、第2のチャネル群320、及び第3のチャネル群330は、異なる空間方向に延在する。
【0063】
図4に示す本体20は、図の左側に示すその部分において、図の右側に示す部分におけるよりも高い空間密度の節点200を有する。より良く説明するために、前述の実施形態は、右側に示される部分を参照して考察される。矢印によってその方向が特定される個々のチャネル311のアレイ310は、本体に面しているその面に対して直角に本体を貫通している。もちろん、参照番号によって識別される3つのチャネルだけでなく、特定された面に対して直角に本体を貫通する全てのチャネルである。
【0064】
同じことが、互いに直角にかつ第1のチャネル群310のチャネル311に対して直角に延びる、チャネル群320のチャネル321及びチャネル群330のチャネル331にも当てはまる。相互に貫通するチャネル311、321、331の間に残る本体の材料は、支柱100及び節点200を形成する。
【0065】
個々のチャネル311、321、331は、多角形又は円形の断面を有することが可能である。多角形断面の例は、三角、四角形、五角形、及び六角形の断面である。図4は、全てのチャネル311、321、331の正方形の断面を示す。第1のチャネル群310、第2のチャネル群320、及び第3のチャネル群330内の個々のチャネル311、321、331がそれぞれ同じ断面を有することも可能である。これを図4に示す。
【0066】
第1のチャネル群310の個々のチャネル311の断面、第2のチャネル群320の個々のチャネル321の断面、及び第3のチャネル群330の個々のチャネル331の断面が互いに異なることも同様に可能である。例えば、チャネル311は、正方形の断面を有し、チャネル321は円形の断面を有し、チャネル331は、六角形の断面を有し得る。チャネルの断面は、支柱100の形状を決定するので、異なる断面の場合、本体20の異なる特性も空間方向に応じて達成することができる。
【0067】
一変形形態では、本体20の第1の領域内の節点200の空間密度は、本体20の第2の領域内の節点200の空間密度とは異なり得る。これは、図4による一体型本体20内に概略的に示されている。既に述べたように、そこに示されている本体20は、図の右側に示されているその部分におけるよりも、図の左側に示されているその部分においてより高い空間密度の節点20を有する。左側部分の第2の節点200ごとにのみ、右側部分の節点200に対する支柱100が形成される。
【0068】
図5は、実験部において以下のように実施例に関連して記載されている。
【0069】
実験部
[実施例]
以下の実験で使用された本発明による材料及びフィラメントは、240℃未満の温度で原料(顆粒、ペレット、粉末、又は最大直径4~6mmの粗い材料に切断された形態で)の直径1.75mmのフィラメントへの押出しによって製造されている。
【0070】
直径1.75mmの本発明による熱可塑性ポリウレタン(TPU)フィラメントは、それぞれ、ショア85Aの硬度を有する脂肪族イソシアネートエーテル/エステル-ハイブリッドタイプに基づくTPUグレード、及びショア90Aの硬度を有する芳香族イソシアネートエステルタイプに基づくTPUグレードの押出しによって製造されている。
【0071】
全てのフィラメントは、使用前に真空乾燥キャビネット内において30℃で24時間乾燥されている。
【0072】
付加製造法を使用して本発明による2つの多孔質体を製造し、それらの圧縮硬度を測定した。
【0073】
[実施例1]
多孔質体は、融解堆積モデリング(FDM)の付加製造プロセスを使用して製造した。造形材料は、熱可塑性ポリウレタン(TPU)フィラメントであり、ショア90Aの硬度を有する芳香族イソシアネートエステル型に基づくTPUグレードのペレットを直径1.75mmの円形フィラメントに押し出すことによって作製した。このフィラメントをPrusa I3プリンタに取り付けたDD3押出機に供給した。DD3押出機のノズル温度は、235℃に設定し、印刷速度は、25mm/sに設定した。
【0074】
縁部長さLが30mm、バー幅110が2.5mm、及び体心格子のノード200間の距離120が4.5mmである立方体として、図5に示される足場構造の部分によるTPUフィラメントを使用して、多孔質体を層ごとに印刷した。足場構造の部分は、全てのバーが切頭ノード202の立方体の平面で、及び切頭ノード201の立方体の縁部で終わるように選択された。
【0075】
製造されたままの多孔質体の圧縮硬度をInstron(登録商標)GmbH,GermanyからのInstron 5566機を使用して、DIN EN ISO 3386-1:2010-09に基づいて測定した。測定は、室温(23℃)及び100mm/分の移動速度で行った。多孔質体を40%(圧縮されていない立方体の3cmの高さLと比較して60%の残存高さL0=1.8cmに対応する)だけ連続的に3回圧縮し、同じ移動速度を使用して直ちに緩めた。その後、多孔質構造を40%だけ4回圧縮し、この圧縮に使用した力を記録する。値を表1に示す。
【0076】
[実施例2]
実施例1のような多孔質体を製造したが、ショア85Aの硬度を有する脂肪族イソシアネートエーテル/エステル-ハイブリッド型に基づくTPUグレードから作製されたフィラメントを使用した。プリンタ設定は、実施例1に示したものと等しく、圧縮硬度測定は、実施例1に記載したように行った。
【表1】
【0077】
3D印刷された本発明の幾何学的設計と本発明に従う材料硬度(ショアA)が98未満の材料との好適な組み合わせは、本発明の空隙密度及び分布と組み合わせて、優れた機械的結果を生じ、10kPa以上100kPa以下の40%圧縮、DIN EN ISO 3386-1:2010-09を完全に対象とすることを明確に観察することができる。
図1
図2
図3
図4
図5