(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-09
(45)【発行日】2022-08-18
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用正極活物質及びこれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/525 20100101AFI20220810BHJP
H01M 4/505 20100101ALN20220810BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/505
(21)【出願番号】P 2020070523
(22)【出願日】2020-04-09
(62)【分割の表示】P 2017534507の分割
【原出願日】2015-01-21
【審査請求日】2020-05-08
(31)【優先権主張番号】10-2014-0119852
(32)【優先日】2014-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】517113750
【氏名又は名称】エコプロ ビーエム カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ECOPRO BM CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】キム ジクス
(72)【発明者】
【氏名】チョエ ムンホ
(72)【発明者】
【氏名】ユン ジンギョン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ジェヨン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ソクヨン
(72)【発明者】
【氏名】シン ジョンスン
【審査官】儀同 孝信
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0158932(US,A1)
【文献】特開2002-279985(JP,A)
【文献】特開2014-049410(JP,A)
【文献】特開2001-243951(JP,A)
【文献】国際公開第2006/118279(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/137535(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/061579(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/525
H01M 4/505
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遷移金属を含むR3m構造の菱面体晶構造の層状構造の正極活物質であって、
一次粒子が凝集された球形の二次粒子で、一次粒子のアスペクト比が1以上であり、
前記二次粒子の中心を通る断面において、前記二次粒子の表面と前記二次粒子の中心とを連結する連結線と±40°以内の角度を形成する、一次粒子の内部に形成されたリチウムイオン拡散経路であるa軸方向を有する前記一次粒子が占める面積が、前記二次粒子の中心を通る断面積の10%以上であり、
前記二次粒子の中心を通る断面において、前記アスペクト比が
1より大きく、前記一次粒子の内部に形成されたリチウムイオン拡散経路である
a軸方向が、前記一次粒子の長軸と平
行である前記一次粒子が占める面積が、前記二次粒子の中心を通る断面積の40%以上であり、
前記アスペクト比が、長軸の長さ/短軸の長さを意味するものであり、
Ni、Co及びMnの中で前記正極活物質に含まれ
る各遷移金属の濃度が
二次粒子全体において一定である
ことを特徴とするリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項2】
TEMにおいて測定される前記一次粒子の内部に形成されたリチウムイオン拡散経路であるa軸方向が、前記二次粒子の中心方向への方向性を示すことを特徴とする、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項3】
前記一次粒子の内部に形成されたリチウムイオン拡散経路が、二次粒子全体の中心方向への方向性を有して形成され、前記二次粒子の表面から中心までリチウムイオン拡散経路である軸方向が一次元又は二次元のトンネル構造を有することを特徴とする、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項4】
前記二次粒子は、下記化学式1で表示され、
<化学式1>
Li
xNi
1-a-b-cCo
aMn
bMe
cO
2-yX
y
(前記化学式1で0.9≦x≦1.15.0≦a≦0.5、0≦b≦0.65、0≦c≦0.15、0≦y≦0.1、Meは、Al、Mg、B、P、Ti、Si、Zr、Ba及びこれらの組合からなる群より選択される少なくとも1つ以上の元素、Xは、F、BO
3、及びPO
4の陰イオンから選択される少なくとも1つ以上の元素乃至分子である)
粒子全体において遷移金属の濃度が一定であることを特徴とする、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項5】
請求項1乃至請求項
4のいずれかに記載のリチウム二次電池用正極活物質を含むリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム二次電池用正極活物質及びこれを含むリチウム二次電池に関し、より詳細には一次粒子内及び二次粒子内のリチウムイオン拡散経路(lithium ion diffusionpath)が特定の方向性を有して形成されることを特徴とするリチウム二次電池用正極活物質及びこれを含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、エネルギー貯蔵技術に対する関心がますます高くなっている。携帯電話、カムコーダー及びノート型コンピュータ、さらには電気自動車のエネルギーまで適用分野が拡大され、電気化学素子の研究と開発に対する努力が益々具体化している。電気化学素子は、このような面で最も注目を浴びている分野であり、その中でも充放電が可能である二次電池の開発は関心の焦点となっている。
【0003】
現在、適用されている二次電池の中で1990年代初に開発されたリチウムイオン電池は小型、軽量、大容量電池として1991年に登場した以来、携帯機器の電源として広く使われている。リチウム二次電池は、水系電解液を使用するNi-MH、Ni-Cd、硫酸-鉛電池など従来の電池に比べて作動電圧が高く、エネルギー密度が著しく高いという長所によって脚光を浴びている。特に電気自動車及びエネルギー貯蔵用として使用されるkWh級以上の中大型電池において主に採択されており、そのために高容量でありながらも、且つ長時間使用できる正極活物質が要求されている。
【0004】
熱安定性が優れたスピネルマンガン(LMO)及びオリビン系正極素材(LFP)の大容量二次電池の適用は、低いエネルギー密度により本格的な商用化に限界を示していて、電池特性を向上させるための高容量の層状系正極素材を適用する必要性が増加している。リチウム二次電池用正極素材のうち、層状系正極素材がこれまで商用化された素材の中において最も高い容量を具現することができる。スマートフォン等の小型IT機器において多く使用されるLiCoO2は、中大型の電池に使用するためには安全性と低い容量と、そして主材料であるコバルト金属は、他の遷移金属と比較すると、高費用による経済性と、埋蔵量による資源の制限性、及び環境汚染による環境規制の問題等を有している。LiCoO2と同一の構造を有するLiNiO2は、価額が比較的に低価であり、理論容量が200mAh/gの高い容量を示すという長所によって、今まで多くの研究が行われて来た。しかし、脆弱な安全性と製造過程で発生される構造的な不安定性による急激な寿命性能低下の問題によって商用化されなかった。
【0005】
LiNiO2の短所を改善するためにニッケルの一部を遷移金属元素に置換して、発熱開始温度を若干高温側に移動させるか、或いは急激な発熱を防止する等の試みがなされている。ニッケルの一部をコバルトに置換したLiNi1-xCoxO2(x=0.1~0.3)物質の場合、LiNoO2に比べて比較的に優れた充・放電特性と寿命特性とを示すが、十分な寿命性能を有していない。また、Ni位値に熱的安全性が優れるMnを一部置換したLi-Ni-Mn系複合酸化物又はMn及びCoに置換したLi-Ni-Mn-Co系複合酸化物の組成とその製造に関連した技術も広く公知され、最近、日本国特許出願2000-227858号では、LiNiO2やLiMnO2に遷移金属を部分置換する概念ではなく、MnとNi化合物とを原子レベルで均一に分散させて固溶体を作る新しい概念の正極活物質を開示した。
【0006】
NiをMn及びCoに置換したLi-Ni-Mn-Co系複合酸化物の組成に対するヨーロッパ特許第0918041号や米国特許第6040090号によれば、LiNi1-xCoxMnyO2(0<y≦0.3)は、既存のNiおよびCoのみで構成された材料に比べて向上された寿命性能及び熱的安定性を有するが、依然としてNi系の熱的安定性及び寿命性能の低下を解決することができなかった。
【0007】
このような短所を無くすために韓国特許出願10-2005-7007548号に金属組成の濃度勾配を有するリチウム遷移金属酸化物に対する特許が提案されている。しかし、この方法は、合成の時、内部層と外部層との金属組成を異なりに合成して高い容量を具現することができるが、生成された正極活物質において金属組成が連続して漸進的に変化しない。熱処理過程により、金属組成の漸進的勾配をなすことはできるが、長期使用の際に内部層と外部層との界面が抵抗成分として作用して出力及び寿命性能を低下させ、850℃以上の高い熱処理温度では金属イオンの熱拡散によって濃度勾配差がほとんど発生しないので、性能向上の効果は微々たるものである。また、この発明により合成された粉末は、キレート剤であるアンモニアを使用しないので、粉末のタップ密度が低く、リチウム二次電池用正極活物質として使用するには好適ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許出願公開第2014/0158932号明細書
【文献】特開2002-279985号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述のような課題を解決するために一次粒子内及び二次粒子内のリチウムイオン拡散経路(lithiumion diffusion path)が特定の方向性を表れ、長寿命を具現できる新しい構造のリチウム二次電池用正極活物質を提供することを目的とする。
また、本発明は、本発明によるリチウム二次電池用正極活物質を含むリチウム二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前記のような課題を解決するために
図1~
図6に示すようなR3m構造の菱面体晶構造の層状構造であり、遷移金属を含む層状構造の正極活物質であって、一次粒子が凝集された二次粒子であり、一次粒子のアスペクト比が1以上であり、前記一次粒子内のリチウムイオン拡散経路であるa軸方向が一次粒子の長辺と平行に形成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明によるリチウム二次電池用正極活物質は、前記一次粒子内のリチウムイオン拡散経路であるa軸方向が二次粒子の中心方向への方向性を示すことを特徴とする。
【0012】
本発明によるリチウム二次電池用正極活物質は、前記一次粒子内のリチウムイオン拡散経路が粒子全体の中心方向への方向性を有して形成され、前記二次粒子の表面から中心までリチウムイオン拡散経路が1次元又は二次元のトンネル構造を有することを特徴とする。
【0013】
本発明によるリチウム二次電池用正極活物質は、前記一次粒子内のリチウムイオン拡散経路が二次粒子の表面と二次粒子の中心とを連結する連結線と±40°以内の角度を形成することを特徴とする。
【0014】
また、本発明によるリチウム二次電池用正極活物質は、前記リチウムイオン拡散経路が、二次粒子の表面と二次粒子の中心とを連結する連結線と±40°以内の角度を形成する一次粒子が占める面積か二次粒子面積の10%以上であることを特徴とする。即ち、本発明によるリチウム二次電池用正極活物質は、前記一次粒子内でも、リチウムイオン拡散経路が二次粒子の中心部に向かって方向性を示しながら形成されることを特徴とする。
【0015】
本発明によるリチウム二次電池用正極活物質は、前記一次粒子内のリチウムイオン拡散経路が粒子全体の中心方向への方向性を有して形成され、前記二次粒子の表面から中心までリチウムイオン拡散経路が一次元又は二次元のトンネル構造を有することを特徴とする。
【0016】
本発明によるリチウム二次電池用正極活物質は、このようなリチウムイオン拡散経路によって、二次粒子内において一次粒子がリチウムイオンの伝導速度が速く、高いリチウムイオン伝導率を示すだけでなく、充放電を繰り返しても結晶構造が崩れ難くなりサイクル特性が向上される。即ち、本発明によるリチウム二次電池用正極活物質は、線型経路に1次元のトンネル構造で形成されたリチウムイオン拡散経路によって活物質の粒子とリチウムイオン又は電解質との間の電子伝達抵抗(chargetransfer resistance)、拡散(diffusion)、移動(migration)及び伝達(convection)が低いので、電池内部のインピーダンスを大きく下げることができる。
【0017】
本発明によるリチウム二次電池用正極活物質は、前記一次粒子のアスペクト比が1以上であり、前記一次粒子内のリチウムイオン拡散経路が長軸、つまり、横軸と平行に形成されることを特徴とする。即ち、上述したようにリチウムイオンが充放電過程において一次粒子内部に吸蔵、脱離し、充放電が持続されてもリチウムイオン経路が長軸方向に形成されることによって、一次粒子内においてリチウムの吸蔵・脱離過程で影響を受ける結晶構造の部分が少なくなり、結果的に充放電により構造的安定性が確保されながら、寿命特性が改善される。
【0018】
本発明によるリチウム二次電池用正極活物質は、前記アスペクト比が1以上であり、前記粒子内のリチウムイオン拡散経路であるa軸方向が粒子の長軸と平行に形成される一次粒子が占める面積が、二次粒子面積の40%以上であることを特徴とする。
【0019】
本発明によるリチウム二次電池用正極活物質において、前記二次粒子は、下記化学式1で表され、粒子全体で遷移金属の濃度が一定であることを特徴とする。
【0020】
<化学式1>
LixNi1-a-b-cCoaMnbMecO2-yXy
(前記化学式1で0.9≦x≦1.15.0≦a≦0.5、0≦b≦0.65、0≦c≦0.15、0≦y≦0.1、Meは、Al、Mg、B、P、Ti、Si、Zr、Ba、及びこれらの組合からなる群より選択される少なくとも1つ以上の元素であり、Xは、F、BO3、PO4等の陰イオンから選択される少なくとも1つ以上の原子乃至分子である)
本発明は、また本発明によるリチウム二次電池用正極活物質を含むリチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によるリチウム二次電池用正極活物質は、前記一次粒子内のリチウムイオン拡散経路(lithiumion diffusion path)であるa軸方向が一次粒子の長辺と平行な方向に形成され、また二次粒子の中心方向への方向性を有して形成されるので、充放電過程で一次粒子内へのリチウムイオンの吸蔵放出が容易になって本発明によるリチウム二次電池用正極活物質を含む電池の容量特性及び寿命特性が大きく改善される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、菱面体晶(rhombohedral)構造を示す。
【
図2】
図2は、本発明の実施例1乃至6及び比較例1、2で製造された正極活物質粒子のSEM写真を示す。
【
図3】
図3は、本発明の実施例1乃至6及び比較例1、2で製造された正極活物質粒子の破断面のSEM写真を測定した結果を示す。
【
図4】
図4は、本発明の実施例4における粒子内で一次粒子の形状及び構造を、TEMを用いて測定した結果を示す。
【
図5】
図5は、本発明の比較例1の粒子内で一次粒子の形状及び構造を、TEMを用いて測定した結果を示す。
【
図6】
図6は、本発明の正極活物質粒子断面、一次粒子、及びリチウムイオン拡散経路に対する模式図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下では、本発明を実施例によってさらに詳細に説明する。しかし、本発明が以下の実施例によって限定されるものではない。
【0024】
<実施例1>
共沈反応器(容量100L、回転モーターの出力80W以上)に蒸留水20Lとキレート剤としてアンモニアを1000gとを加えた後、反応器内の温度を48℃に維持しながら、モーターを350rpmで攪拌した。反応槽に窒素ガスを3L/min流量で連続的に供給した。
【0025】
硫酸ニッケル、硫酸コバルト、及び硫酸マンガンのモル比が1:1:1で混合された2.5M濃度の前駆体水容液を3.25L/hr、28%濃度のアンモニア水容液0.15L/hrを反応器に連続的に投入した。また、pH調整のために25%濃度の水酸化ナトリウム水容液を0.835L/hr供給してpHを11.5に合わせて反応槽内の液面に連続して供給した。反応溶液温度を48℃~50℃に維持し、反応溶液のpHを11.5になるように25%濃度の水酸化ナトリウム水容液を加えて金属水酸化物粒子を形成させた。反応が終結された後、共沈反応器(co-precipitation reactor)から球形のニッケルマンガンコバルト複合水酸化物の沈殿物を得た。
【0026】
前記沈殿された複合金属水酸化物を濾過し、水で洗浄した後に100℃温風乾燥機で12時間乾燥させて(Ni0.33Co0.33Mn0.33)(OH)2の組成を有する金属複合水酸化物形態の前駆体粉末を得た。
【0027】
前記金属複合水酸化物と炭酸リチウム(Li2CO3)を1:1.00~1.10モル比に混合した後に2℃/minの乗温速度で700℃~1000℃の温度で10~20時間焼成させてLi(Ni0.33Co0.33Mn0.33)O2の正極活物質粉末を得た。
【0028】
<実施例2>
正極の組成がLi(Ni0.5Co0.2Mn0.3)O2になるように、硫酸ニッケル、硫酸コバルト、及び硫酸マンガンの投入モル比を調整することを除いては、実施例1と同一の方法によって正極を製造した。
【0029】
<実施例3>
正極の組成がLi(Ni0.7Co0.2Mn0.1)O2になるように硫酸ニッケル、硫酸コバルト、及び硫酸マンガンのモル比を調整することと、炭酸リチウムの代わりに水酸化リチウムを使用することとを除いては、実施例1と同一の方法によって正極を製造した。
【0030】
<実施例4>
正極の組成がLi(Ni0.8Co0.1Mn0.1)O2になるように硫酸ニッケル、硫酸コバルト、及び硫酸マンガンのモル比を調整することを除いては、実施例1と同一の方法によって正極を製造した。
【0031】
<実施例5>
正極のバルク組成がLi(Ni0.820Co0.145Al0.035)O2になるように硫酸ニッケル、硫酸コバルト、及び硫酸マンガンのモル比を調整することを除いては、実施例4と同一の方法によって正極を製造した。
【0032】
<実施例6>
正極組成がLi(Ni0.90Co0.07Al0.03)O2になるように硫酸ニッケル、硫酸コバルト、及び硫酸マンガンのモル比を調整することを除いては、実施例4と同一の方法によって正極を製造した。
【0033】
<比較例1>
容量100Lの反応器に蒸留水80リットルとキレート剤としてアンモニアを1000g加えた後、反応器内の温度を50±2℃で維持しながら、モーターを5000rpmにして攪拌した。また、反応槽に窒素ガスを3L/min流量で連続的に供給した。次に硫酸ニッケル、硫酸コバルト、及び硫酸マンガンのモル比8:1:1で混合された1M濃度の前駆体水容液を6.5L/hrで、28%濃度のアンモニア水容液を0.6L/hrで、反応器に連続的に投入した。また、pH調整のために25%濃度の水酸化ナトリウム水容液を1.5~2.0L/hrで供給してpHを11~12に合わせて、反応槽内の液面に連続的に供給した。反応溶液温度を50±2℃に維持し、反応溶液のpHを11乃至12に維持されるように25%濃度の水酸化ナトリウム水溶液を加えて金属水酸化物粒子を形成した。反応器内部が正常状態になった30時間後、オーバーフローパイプから排出された水酸化物粒子を連続的に取り水で洗浄した後、100℃の温風乾燥機で12時間乾燥してLi(Ni0.8Co0.1Mn0.1)O2組成を有する金属複合水酸化物状の前駆体粉末を得た。
【0034】
前記金属複合水酸化物と水酸化リチウム(LiOH.H2O)を1:1.00~1.10モル比で混合した後に2℃/minの乗温速度で加熱した後、550℃で10時間熱処理を行った後、750℃において20時間焼成させて正極活物質粉末を得た。
【0035】
<比較例2>
硫酸ニッケル、硫酸コバルト、硝酸アルミニウムのモル比が81.5:15:3.5比率に混合された1M濃度の前駆体水容液を使用したことを除いては、比較例1と同様の方法で合成した。
【0036】
<実験例:SEM写真測定>
実施例1乃至6及び比較例1及び2において製造された正極活物質粒子及び破断面のSEM写真を測定し、その結果を
図2及び
図3に示した。
【0037】
図2において、本発明の実施例1~6及び比較例1及び2で製造された正極活物質粒子は、一次粒子が凝集された球形の二次粒子であることが分かる。
【0038】
粒子の破断面に対するSEM写真である
図3において、本発明の実施例1~6において製造された粒子の場合、一次粒子のアスペクト比が1以上であり、一次粒子が長軸方向に、粒子の中心方向への方向性を有して成長したことに比べて、比較例1及び2の場合、一次粒子が円状に近く、二次粒子の内部に一次粒子の方向性が観察されないことが分かる。
【0039】
<実験例:TEM写真測定>
前記実施例4及び比較例1の一次粒子の模様及び構造を、TEMを用いて測定し、その結果を
図4~
図5に示した。
【0040】
図4において、本発明の実施例4にて製造された粒子の場合、一次粒子内のリチウムイオン拡散経路(lithiumion diffusion path)であるa軸方向が粒子の長軸方向に形成されることと同時に、また、前記一次粒子内のリチウムイオン拡散経路であるa軸方向が二次粒子の中心方向への方向性を示すことを確認することができる。
【0041】
これに比べて比較例1にて製造された粒子のTEM写真を示す
図5の場合、リチウムイオン拡散経路であるa軸方向が粒子の中心方向に向かわないことのみでなく、長軸と平行になされていないことを確認することができる。
【0042】
<実験例:粒子特性測定>
【0043】
【0044】
<製造例:電池製造>
前記実施例1~6及び比較例1及び2で製造された正極活物質と、導電剤としてsuper-P、結合剤としては、ポリビニリデンフルオライド(PVdF)を92:5:3の重量比で混合してスラリーを製造した。前記スラリーを15μm厚さのアルミニウム薄に均一に塗布し、135℃で真空乾燥してリチウム二次電池用正極を製造した。
【0045】
前記正極と、リチウムホイルを相対電極とし、多孔性ポリエチレン膜(Celgard,LLC.製、Celgard2300、厚さ:25μm)をセパレータとし、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとが体積比3:7で混合された溶媒にLiPF6が1.15M濃度で含まれている液体電解液を使用して、公知の製造工程によってコイン型電池を製造した。
【0046】
<実験例:電池特性の測定>
前記実施例1乃至6及び比較例1及び2にて製造された活物質で製造された電池の初期容量、初期効率、比率特性、及び寿命特性を測定し、その結果を下記表2に示した。
【0047】
下記表2において、本発明の実施例にて製造された活物質を含む電池の場合、電池特性が比較例より大きく向上されることが確認できる。
【0048】
【産業上の利用可能性】
【0049】
以上のように、本発明によるリチウム二次電池用正極活物質は、前記一次粒子内のリチウムイオン拡散経路であるa軸方向が、一次粒子の長辺と平行な方向に形成され、また二次粒子の中心方向への方向性を有して形成されるので、充放電過程で一次粒子内へのリチウムイオンの吸蔵放出が容易になり、本発明によるリチウム二次電池用正極活物質を含む電池の容量特性及び寿命特性が大きく改善されるという点で非常に有用である。
以下に、本発明の実施形態を記載する。
条項1.
遷移金属を含む層状構造の正極活物質であって、
一次粒子が凝集された球形の二次粒子で、一次粒子のアスペクト比が1以上であり、
TEMにおいて測定される層状構造を有する前記一次粒子の内部に形成されたリチウムイオン拡散経路(lithiumion diffusion path)が、前記二次粒子の中心方向に形成されていることを特徴とするリチウム二次電池用正極活物質。
条項2.
TEMにおいて測定される前記一次粒子の内部に形成されたリチウムイオン拡散経路であるa軸方向が、前記二次粒子の中心方向への方向性を示すことを特徴とする、条項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
条項3.
前記一次粒子の内部に形成されたリチウムイオン拡散経路が、粒子全体の中心方向への方向性を有して形成され、前記二次粒子の表面から中心までリチウムイオン拡散経路が一次元又は二次元のトンネル構造を有することを特徴とする、条項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
条項4.
前記一次粒子の内部に形成されたリチウムイオン拡散経路であるa軸方向が、前記二次粒子の表面と前記二次粒子の中心とを連結する連結線と±40°以内の角度を形成することを特徴とする、条項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
条項5.
前記リチウムイオン拡散経路が、前記二次粒子の表面と前記二次粒子の中心とを連結する連結線と±40°以内の角度を形成する前記一次粒子が占める面積が前記二次粒子面積の10%以上であることを特徴とする、条項4に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
条項6.
前記一次粒子の中で前記アスペクト比が1以上であり、前記一次粒子の内部に形成されたリチウムイオン拡散経路が、前記一次粒子の長軸と平行に形成される前記一次粒子が占める面積が前記二次粒子面積の40%以上であることを特徴とする、条項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
条項7.
前記二次粒子は、下記化学式1で表示され、
<化学式1>
LixNi1-a-b-cCoaMnbMecO2-yXy
(前記化学式1で0.9≦x≦1.15.0≦a≦0.5、0≦b≦0.65、0≦c≦0.15、0≦y≦0.1、Meは、Al、Mg、B、P、Ti、Si、Zr、Ba及びこれらの組合からなる群より選択される少なくとも1つ以上の元素、Xは、F、BO3、及びPO4等の陰イオンから選択される少なくとも1つ以上の元素乃至分子である)
粒子全体において遷移金属の濃度が一定であることを特徴とする、条項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
条項8.
条項1乃至条項7のいずれかに記載のリチウム二次電池用正極活物質を含むリチウム二次電池。