(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-09
(45)【発行日】2022-08-18
(54)【発明の名称】表面保護フィルム
(51)【国際特許分類】
C09J 133/04 20060101AFI20220810BHJP
C09J 7/25 20180101ALI20220810BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20220810BHJP
【FI】
C09J133/04
C09J7/25
C09J7/38
(21)【出願番号】P 2020174595
(22)【出願日】2020-10-16
(62)【分割の表示】P 2016133099の分割
【原出願日】2016-07-05
【審査請求日】2020-11-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】三井 数馬
(72)【発明者】
【氏名】野中 崇弘
(72)【発明者】
【氏名】沖田 奈津子
【審査官】井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第00/044841(WO,A1)
【文献】特開2001-240830(JP,A)
【文献】国際公開第2011/118183(WO,A1)
【文献】特開2011-099073(JP,A)
【文献】特開2016-074899(JP,A)
【文献】特開2013-116983(JP,A)
【文献】特開2005-089547(JP,A)
【文献】特開2015-096601(JP,A)
【文献】特開2013-136729(JP,A)
【文献】特開2016-014135(JP,A)
【文献】特開平08-156157(JP,A)
【文献】特開平07-026223(JP,A)
【文献】国際公開第2016/088683(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00 - 201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材と粘着剤層とを含む積層構造を有する表面保護フィルムであって、
前記透明基材は、基材幅方向一軸延伸ポリエステル系基材であり、
面内位相差が6000nm以上であり且つ75μm以上の厚さを有し、
前記粘着剤層が、アクリル系ポリマーにおける、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来のモノマーユニットの割合が50重量%以上、窒素原子含有モノマー由来のモノマーユニットの割合が1重量%以上30重量%以下であるアクリル系粘着剤を含む粘着剤層であり、
基材幅方向における表面保護フィルムのエルメンドルフ引裂強度が0.5N以下であり、且つ、基材機械方向における表面保護フィルムのエルメンドルフ引裂強度が1N以上である、表面保護フィルム。
【請求項2】
前記粘着剤層が、アクリル系ポリマーにおける水酸基含有モノマー由来のモノマーユニットの割合が1重量%以上20重量%以下であるアクリル系粘着剤を含む粘着剤層である、請求項1に記載の表面保護フィルム。
【請求項3】
前記粘着剤層が、アクリル系ポリマーにおける多官能(メタ)アクリレート由来のモノマーユニットの割合が0.01~1重量部であるアクリル系粘着剤を含む粘着剤層である、請求項1又は2に記載の表面保護フィルム。
【請求項4】
前記粘着剤層がシランカップリング剤を含有し、前記シランカップリング剤の含有量が、前記アクリル系ポリマー100重量部に対して、0.01~1重量部である、請求項1~3の何れか1項に記載の表面保護フィルム。
【請求項5】
前記粘着剤層の厚さは5μm以上である、請求項1~4の何れか1項に記載の表面保護フィルム。
【請求項6】
ヘーズが3%以下である、請求項1~5の何れか1項に記載の表面保護フィルム。
【請求項7】
基材機械方向が長手方向となるようにロール状に券回された形態である、請求項1~6の何れか1項に記載の表面保護フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光透過性を有する表面保護フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な技術分野において、高い透明性を有する表面保護フィルムが利用されている。例えばフラットパネルディスプレイ(FPD)の技術分野では、FPDに組み込まれる各種の光学部品において、その製造過程や、検査工程、輸送過程等での表面保護を目的として、部品表面に表面保護フィルムが貼り合わされる場合がある。このような表面保護フィルムについては、例えば、下記の特許文献1~3に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-17399号公報
【文献】特開2015-157964号公報
【文献】特開2016-74899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
表面保護フィルムの基材としては、耐熱性や、透明性、寸法安定性など種々の特性に優れることからポリエステル系基材が採用される場合がある。光学部品用途の表面保護フィルム等のための光透過性のポリエステル系基材たる例えばPETフィルムについては、製造プロセス上、Tダイ法によって原料樹脂材料をフィルム状に押出成形した後に当該フィルムにおける流れ方向ないし機械方向(MD)への延伸と幅方向(TD)への延伸とを含む二軸延伸処理を経る場合の多いことが知られている。
【0005】
また、表面保護フィルムについては、作業効率等の観点から、良好な手切れ性が求められる場合もある。
【0006】
本発明は、以上のような事情のもとで考え出されたものであって、ポリエステル系基材を有しつつ良好な手切れ性と高いリワーク性とを併せて実現するのに適した表面保護フィルムを提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明により提供される表面保護フィルムは、透明基材と粘着剤層とを含む積層構造を有する。透明基材は、基材幅方向一軸延伸ポリエステル系基材であり、且つ、75μm以上の厚さを有する。ポリエステル系基材とは、構成材料中にポリエステル系樹脂を最も大きな重量割合で含有するフィルムやシート等の基材をいうものとする。基材幅方向一軸延伸ポリエステル系基材とは、ポリエステル系基材の製造プロセスにおいて原料樹脂材料の押出成形後に例えばフィルム状の押出成形体の流れ方向ないし機械方向(MD)に直交する幅方向(TD)への一軸延伸処理を経た、ポリエステル系基材をいうものとする。粘着剤層は、例えば、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤、およびゴム系粘着剤からなる群より選択される少なくとも一種を含む。本表面保護フィルムにおいて、基材幅方向のエルメンドルフ引裂強度は0.5N以下であり、且つ、基材機械方向のエルメンドルフ引裂強度は1N以上である。
【0008】
本表面保護フィルムの有する透明基材は、上述のように、ポリエステル系基材である。このような構成は、耐熱性や、透明性、寸法安定性など、ポリエステル系基材において発現させやすい種々の特性を、表面保護フィルム基材ひいては本表面保護フィルムにおいて享受するのに好適である。
【0009】
また、本表面保護フィルムの有する透明基材は、上述のように、厚さ75μm以上の幅方向一軸延伸ポリエステル系基材である。表面保護フィルムにおけるエルメンドルフ引裂強度等の引裂強度は基材の機械的特性に強く支配されるところ、このような構成は、本表面保護フィルムにおいて、基材幅方向のエルメンドルフ引裂強度が0.5N以下であって基材機械方向のエルメンドルフ引裂強度が1N以上であるという上記構成を、実現するのに適する。
【0010】
加えて、本表面保護フィルムは、上述のように、基材幅方向のエルメンドルフ引裂強度が0.5N以下であり、且つ、基材機械方向のエルメンドルフ引裂強度が1N以上である。このような構成は、本表面保護フィルムにおいて、エルメンドルフ引裂強度が0.5N以下と相対的に有意に低い基材幅方向への良好な手切れ性を実現するのに適する。これとともに、エルメンドルフ引裂強度が基材機械方向では基材幅方向の2倍以上の1N以上であるという構成は、本表面保護フィルムにおいて、基材幅方向への引裂きに関してその指向性を高めるのに好適である。そのため、当該構成は、本表面保護フィルムが被着体に貼り合わせられた状態にある場合において、当該フィルムの基材機械方向に剥離力を作用させて被着体から当該フィルムを裂かずに適切に剥離させるのに好適である。具体的には、被着体に対して本表面保護フィルムを貼り合わせた後に一旦剥離して再び貼り合わせる作業(リワーク作業)にあたり、当該フィルムの基材機械方向に剥離力を作用させて被着体から当該フィルムを裂かずに適切に剥離させるのに好適である。基材幅方向に加えて基材機械方向にも引き裂かれやすい表面保護フィルムは、リワーク作業における剥離時に、裂けやすく、被着体から適切に剥離することが困難な傾向にある。裂けが生じた表面保護フィルムは、再度の貼合わせに用いることができない。これに対し、本表面保護フィルムは、基材幅方向への良好な手切れ性の実現に適した基材幅方向エルメンドルフ引裂強度に比して充分に大きな基材機械方向エルメンドルフ引裂強度を有するので、リワーク作業にあたり、裂かずに適切に被着体から剥離させるのに適するのである。
【0011】
以上のように、本表面保護フィルムは、ポリエステル系基材を有しつつ良好な手切れ性と高いリワーク性とを併せて実現するのに適する。
【0012】
好ましくは、粘着剤層の厚さは5μm以上である。このような構成は、表面保護フィルムにおいて、被着体に対する充分な粘着力を実現するうえで好適である。
【0013】
好ましくは、本表面保護フィルムについて、その厚さ方向のヘーズは3%以下である。このような構成は、例えば光学部品用途の表面保護フィルムにとって、好適である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一の実施形態に係る表面保護フィルムの部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の一の実施形態に係る表面保護フィルムXの部分断面図である。表面保護フィルムXは、透明基材たる基材11と粘着剤層12とを含む積層構造を有する。表面保護フィルムXは、例えば、フラットパネルディスプレイに組み込まれる各種の光学部品の製造過程や、検査工程、輸送過程等での光学部品表面の保護を目的として、部品表面に貼り合わされて使用され得るものである。
【0016】
表面保護フィルムXの有する基材11は、表面保護フィルムXにおいて支持体として機能する部位であり、光透過性を有する基材幅方向一軸延伸ポリエステル系基材である。
【0017】
ポリエステル系基材とは、構成材料中にポリエステル系樹脂を最も大きな重量割合で含有するフィルムやシート等の基材をいうものとする。このような基材11の構成材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、および、ポリ-1,4-シクロヘキサンジメチレンテレフタレートが挙げられる。
【0018】
基材幅方向一軸延伸ポリエステル系基材とは、ポリエステル系基材の製造プロセスにおいて原料樹脂材料の押出成形後に例えばフィルム状の押出成形体の流れ方向ないし機械方向(MD)に直交する幅方向(TD)への一軸延伸処理を経た、ポリエステル系基材をいうものとする。このような幅方向一軸延伸ポリエステル系基材たる基材11の幅方向の延伸倍率については、例えば2.5倍以上であり、好ましくは3倍以上である。また、当該延伸倍率については、例えば6倍以下であり、好ましくは5.5倍以下である。
【0019】
基材11の厚さは、75μm以上であり、好ましくは80μm以上である。また、基材11の厚さは、例えば150μm以下であり、好ましくは125μm以下である。
【0020】
基材11の面内位相差は、好ましくは1500nm以上、より好ましくは3000nm以上、より好ましくは6000nm以上である。本実施形態において、基材11の面内位相差とは、波長590nmの光を23℃にて基材11に透過させるときの複屈折に係る、基材11の主面に平行な面内で直行する二つの光学主軸(遅相軸と進相軸)のうち遅相軸の方向に振動する偏光成分(異常光線)と進相軸の方向に振動する偏光成分(常光線)との間に生ずる位相差をいう。当該面内位相差は、異常光線の屈折率(相対的に大きい)をnxとし、常光線の屈折率(相対的に小さい)をnyとし、基材11の厚さをd(nm)とする場合に、(nx-ny)×dで表される値とする。
【0021】
基材11における粘着剤層12側の表面は、粘着剤層との密着性の向上のための表面処理が施されていてもよい。そのような表面処理としては、コロナ処理やプラズマ処理等の物理的処理、および、下塗り処理等の化学的処理が、挙げられる。
【0022】
表面保護フィルムXの粘着剤層12は、主剤として粘着剤を含有し、且つ、光透過性を有する。主剤とは、含有成分中で最も大きな重量割合を占める成分とする。粘着剤層12は、例えば、アクリル系粘着剤たるアクリル系ポリマー、ウレタン系粘着剤たるポリウレタン、シリコーン系粘着剤、およびゴム系粘着剤からなる群より選択される少なくとも一種を含む。表面保護フィルムの粘着剤層に求められる程度の粘着力と高い透明性とを併せて実現するという観点からは、粘着剤層12中の粘着剤としてはアクリル系ポリマーを採用するのが好ましい。また、粘着剤層12は、被着体に貼着し得る粘着面12aを有する。
【0023】
粘着剤層12がアクリル系粘着剤たるアクリル系ポリマーを含有する場合、好ましくは、当該アクリル系ポリマーは、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル、および/または、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル、に由来するモノマーユニットを重量割合で最も多い主たるモノマーユニットとして含む。以下では、「(メタ)アクリル」をもって、「アクリル」および/または「メタクリル」を表す。
【0024】
上記アクリル系ポリマーのモノマーユニットをなすための、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、即ち、上記アクリル系ポリマーを形成するためのモノマー成分に含まれる直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸イソステアリル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、および(メタ)アクリル酸エイコシルなど、炭素数が1~20の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。アクリル系ポリマーのための当該(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、一種類の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを用いてもよいし、二種類以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを用いてもよい。本実施形態では、アクリル系ポリマーのための当該(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして、好ましくは、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、およびアクリル酸イソステアリルからなる群より選択される少なくとも一種が用いられる。
【0025】
上記アクリル系ポリマーにおける、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来のモノマーユニットの割合は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上である。すなわち、当該アクリル系ポリマーを形成するための原料のモノマー成分組成における(メタ)アクリル酸アルキルエステルの割合は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上である。このような(メタ)アクリル酸アルキルエステル割合を伴うモノマー成分組成に由来するモノマーユニット構成を、上記アクリル系ポリマーは有することとなる。直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの割合に関する当該構成は、アクリル系粘着剤たるアクリル系ポリマーの粘着性等の基本特性を、当該アクリル系ポリマーを含んで形成される粘着剤層にて適切に発現させるうえで好適である。
【0026】
粘着剤層12に含有されるアクリル系ポリマーは、脂環式モノマーに由来するモノマーユニットを含んでもよい。アクリル系ポリマーのモノマーユニットをなすための脂環式モノマー、即ち、当該アクリル系ポリマーを形成するためのモノマー成分に含まれる脂環式モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル、二環式炭化水素環を有する(メタ)アクリル酸エステル、および、三環以上の炭化水素環を有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘプチル、および(メタ)アクリル酸シクロオクチルが挙げられる。二環式炭化水素環を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ボルニルおよび(メタ)アクリル酸イソボルニルが挙げられる。三環以上の炭化水素環を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸トリシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸1-アダマンチル、(メタ)アクリル酸2-メチル-2-アダマンチル、および(メタ)アクリル酸2-エチル-2-アダマンチルが挙げられる。アクリル系ポリマーのための脂環式モノマーとしては、一種類の脂環式モノマーを用いてもよいし、二種類以上の脂環式モノマーを用いてもよい。本実施形態では、アクリル系ポリマーのための脂環式モノマーとして、好ましくは、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸イソボルニル、およびメタクリル酸イソボルニルからなる群より選択される少なくとも一種が用いられる。
【0027】
上記アクリル系ポリマーにおける、脂環式モノマー由来のモノマーユニットの割合は、当該アクリル系ポリマーを含んで形成される粘着剤層において適度な柔軟性を実現するという観点から、好ましくは5~60重量%、より好ましくは10~50重量%である。
【0028】
粘着剤層12に含有されるアクリル系ポリマーは、水酸基含有モノマーに由来するモノマーユニットを含んでもよい。水酸基含有モノマーは、モノマーユニット内に少なくとも一つの水酸基を有することとなるモノマーである。粘着剤層12内のアクリル系ポリマーが水酸基含有モノマーユニットを含む場合、粘着剤層12において接着性や適度な凝集力が得られやすい。
【0029】
上記アクリル系ポリマーのモノマーユニットをなすための水酸基含有モノマー、即ち、当該アクリル系ポリマーを形成するためのモノマー成分に含まれる水酸基含有モノマーとしては、例えば、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル、ビニルアルコール、およびアリルアルコールが挙げられる。水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシラウリル、および(メタ)アクリル酸(4-ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチルが挙げられる。アクリル系ポリマーのための水酸基含有モノマーとしては、一種類の水酸基含有モノマーを用いてもよいし、二種類以上の水酸基含有モノマーを用いてもよい。本実施形態では、アクリル系ポリマーのための水酸基含有モノマーとして、好ましくは、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2-ヒドロキシプロピル、アクリル酸4-ヒドロキシブチル、およびメタクリル酸4-ヒドロキシブチルからなる群より選択される少なくとも一種が用いられる。
【0030】
上記アクリル系ポリマーにおける、水酸基含有モノマー由来のモノマーユニットの割合は、好ましくは1重量%以上、より好ましくは2重量%以上、より好ましくは3重量%以上、より好ましくは5重量%以上、より好ましくは7重量%以上、より好ましくは10重量%以上である。上記アクリル系ポリマーにおける、水酸基含有モノマー由来のモノマーユニットの割合は、好ましくは20重量%以下、より好ましくは18重量%以下である。水酸基含有モノマーの割合に関するこれら構成は、当該アクリル系ポリマーを含んで形成される粘着剤層において接着性や適度な凝集力を実現するうえで好適である。
【0031】
粘着剤層12に含有されるアクリル系ポリマーは、窒素原子含有モノマーに由来するモノマーユニットを含んでもよい。窒素原子含有モノマーは、モノマーユニット内に少なくとも一つの窒素原子を有することとなるモノマーである。粘着剤層12内のアクリル系ポリマーが窒素原子含有モノマーユニットを含む場合、粘着剤層12において硬さや良好な接着信頼性が得られやすい。
【0032】
上記アクリル系ポリマーのモノマーユニットをなすための窒素原子含有モノマー、即ち、当該アクリル系ポリマーを形成するためのモノマー成分に含まれる窒素原子含有モノマーとしては、例えば、N-ビニル環状アミドおよび(メタ)アクリルアミド類が挙げられる。窒素原子含有モノマーたるN-ビニル環状アミドとしては、例えば、N-ビニル-2-ピロリドン、N-ビニル-2-ピペリドン、N-ビニル-3-モルホリノン、N-ビニル-2-カプロラクタム、N-ビニル-1,3-オキサジン-2-オン、およびN-ビニル-3,5-モルホリンジオンが挙げられる。窒素原子含有モノマーたる(メタ)アクリルアミド類としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-n-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-オクチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジプロピル(メタ)アクリルアミド、およびN,N-ジイソプロピル(メタ)アクリルアミドが挙げられる。アクリル系ポリマーのための窒素原子含有モノマーとしては、一種類の窒素原子含有モノマーを用いてもよいし、二種類以上の窒素原子含有モノマーを用いてもよい。本実施形態では、アクリル系ポリマーのための窒素原子含有モノマーとして、好ましくはN-ビニル-2-ピロリドンが用いられる。
【0033】
上記アクリル系ポリマーにおける、窒素原子含有モノマー由来のモノマーユニットの割合は、当該アクリル系ポリマーを含んで形成される粘着剤層において、適度な硬さや、接着性、透明性を実現するという観点から、好ましくは1重量%以上、より好ましくは3重量%以上、より好ましくは5重量%以上である。また、上記アクリル系ポリマーにおける、窒素原子含有モノマー由来のモノマーユニットの割合は、当該アクリル系ポリマーを含んで形成される粘着剤層において、充分な透明性を実現するという観点や、硬くなり過ぎることを抑制して良好な接着信頼性を実現するという観点から、好ましくは30重量%以下、より好ましくは25重量%以下である。
【0034】
粘着剤層12に含有されるアクリル系ポリマーは、カルボキシ基含有モノマーに由来するモノマーユニットを含んでもよい。カルボキシ基含有モノマーは、モノマーユニット内に少なくとも一つのカルボキシ基を有することとなるモノマーである。粘着剤層12内のアクリル系ポリマーがカルボキシ基含有モノマーユニットを含む場合、粘着剤層12において良好な接着信頼性が得られることがある。
【0035】
上記アクリル系ポリマーのモノマーユニットをなすためのカルボキシ基含有モノマー、即ち、当該アクリル系ポリマーを形成するためのモノマー成分に含まれるカルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、およびイソクロトン酸が挙げられる。アクリル系ポリマーのためのカルボキシ基含有モノマーとしては、一種類のカルボキシ基含有モノマーを用いてもよいし、二種類以上のカルボキシ基含有モノマーを用いてもよい。本実施形態では、アクリル系ポリマーのためのカルボキシ基含有モノマーとして、好ましくはアクリル酸が用いられる。
【0036】
上記アクリル系ポリマーにおける、カルボキシ基含有モノマー由来のモノマーユニットの割合は、当該アクリル系ポリマーを含んで形成される粘着剤層において、被着体表面に極性基が存在する場合の当該極性基との相互作用の寄与を得て良好な接着信頼性を確保するという観点から、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上である。また、上記アクリル系ポリマーにおける、カルボキシ基含有モノマー由来のモノマーユニットの割合は、当該アクリル系ポリマーを含んで形成される粘着剤層において硬くなり過ぎることを抑制して良好な接着信頼性を実現するという観点から、好ましくは20重量%以下、より好ましくは15重量%以下である。
【0037】
粘着剤層12に含有されるアクリル系ポリマーは、共重合性架橋剤たる多官能(メタ)アクリレートに由来する架橋構造を有してもよい。多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、およびビニル(メタ)アクリレートが挙げられる。アクリル系ポリマーのための多官能(メタ)アクリレートとしては、一種類の多官能(メタ)アクリレートを用いてもよいし、二種類以上の多官能(メタ)アクリレートを用いてもよい。本実施形態では、アクリル系ポリマーのための多官能(メタ)アクリレートとして、好ましくは、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、およびトリメチロールプロパントリアクリレートからなる群より選択される少なくとも一種が用いられる。
【0038】
上記アクリル系ポリマーにおける、多官能(メタ)アクリレート由来のモノマーユニットの割合は、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.03重量%以上、より好ましくは0.05重量%以上である。上記アクリル系ポリマーにおける、多官能(メタ)アクリレート由来のモノマーユニットの割合は、好ましくは1重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下である。多官能(メタ)アクリレートの割合に関するこれら構成は、当該アクリル系ポリマーを含んで形成される粘着剤層において適度な硬さや接着性を実現するうえで好適である。
【0039】
粘着剤層12が以上のようなアクリル系ポリマーを粘着剤として含有する場合、粘着剤層12における当該アクリル系ポリマーの含有率は、例えば85~100重量%である。
【0040】
粘着剤層12は、室温での高い粘着性を実現するという観点から例えば、原料モノマー組成が上述のアクリル系ポリマーとは異なるアクリル系オリゴマーを含有してもよい。粘着剤層12がそのようなアクリル系オリゴマーを含有する場合、粘着剤層12中のアクリル系オリゴマーの含有量は、粘着剤層12中の粘着剤ないしアクリル系ポリマー100重量部に対して例えば0.1~20重量部である。
【0041】
上記オリゴマーは、好ましくは、環状構造を有する(メタ)アクリル酸エステル(環含有(メタ)アクリル酸エステル)に由来するモノマーユニットと、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来するモノマーユニットとを含む重合体である。
【0042】
上記オリゴマーのモノマーユニットをなすための環含有(メタ)アクリル酸エステル、即ち、当該オリゴマーを形成するためのモノマー成分に含まれる環含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル、二環式炭化水素環を有する(メタ)アクリル酸エステル、三環以上の炭化水素環を有する(メタ)アクリル酸エステル、および、芳香族環を有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘプチル、および(メタ)アクリル酸シクロオクチルが挙げられる。二環式炭化水素環を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ボルニルおよび(メタ)アクリル酸イソボルニルが挙げられる。三環以上の炭化水素環を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸トリシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸1-アダマンチル、(メタ)アクリル酸2-メチル-2-アダマンチル、および(メタ)アクリル酸2-エチル-2-アダマンチルが挙げられる。芳香族環を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、および(メタ)アクリル酸ベンジルが挙げられる。オリゴマーのための環含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、一種類の環含有(メタ)アクリル酸エステルを用いてもよいし、二種類以上の環含有(メタ)アクリル酸エステルを用いてもよい。本実施形態では、オリゴマーのための環含有(メタ)アクリル酸エステルとして、好ましくは、アクリル酸ジシクロペンタニルおよびメタクリル酸ジシクロペンタニルからなる群より選択される少なくとも一種が用いられる。
【0043】
上記オリゴマーにおける、環含有(メタ)アクリル酸エステル由来のモノマーユニットの割合は、当該オリゴマーを含んで形成される粘着剤層12において適度な柔軟性を実現するという観点から、好ましくは10~90重量%、より好ましくは20~80重量%、より好ましくは35~80重量%である。
【0044】
上記オリゴマーのモノマーユニットをなすための、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、即ち、当該オリゴマーを形成するためのモノマー成分に含まれる、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸イソステアリル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、および(メタ)アクリル酸エイコシルなど、炭素数が1~20の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。上記オリゴマーのための当該(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、一種類の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを用いてもよいし、二種類以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを用いてもよい。本実施形態では、上記オリゴマーのための当該(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして、好ましくはメタクリル酸メチルが用いられる。
【0045】
上記オリゴマーにおける、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来のモノマーユニットの割合は、当該オリゴマーを含んで形成される粘着剤層において適度な弾性率を実現するという観点から、好ましくは10~90重量%、より好ましくは15~80重量%、より好ましくは20~60重量%である。
【0046】
また、上記オリゴマーは、カルボキシ基含有モノマーや、アミド基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、シアノ基含有モノマー、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、イソシアネート基含有モノマー、イミド基含有モノマーに由来するモノマーユニットを含んでいてもよい。
【0047】
上記オリゴマーの重量平均分子量(Mw)は、例えば1000~30000であり、好ましくは1000~20000、より好ましくは1500~10000である。上記オリゴマーを含んで形成される粘着剤層において良好な粘着力を確保するという観点からは、当該オリゴマーの重量平均分子量は1000以上であるのが好ましい。一方、上記オリゴマーを含んで形成される粘着剤層において特に室温での粘着力を確保するという観点からは、当該オリゴマーの重量平均分子量は30000以下であるのが好ましい。
【0048】
上記オリゴマーの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法により測定することができる。例えば、GPC測定装置(商品名「HLC-8120GPC」,東ソー株式会社製)を使用して、下記の測定条件の下、標準ポリスチレン換算値として重量平均分子量(Mw)を求めることができる。
・カラム:TSKgel SuperAWM-H(上流側,東ソー株式会社製)とTSKgel SuperAW4000(東ソー株式会社製)とTSKgel SuperAW2500(下流側,東ソー株式会社製)とを直列に接続
・カラムサイズ:各カラムとも6.0mmφ×150mm
・カラム温度(測定温度):40℃
・溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
・流量:0.4mL/分
・サンプル注入量:20μL
・サンプル濃度:約2.0g/L(テトラヒドロフラン溶液)
・標準試料:ポリスチレン
・検出器:示差屈折計(RI)
【0049】
粘着剤層12は、シランカップリング剤を含有してもよい。シランカップリング剤としては、例えば、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、およびN-フェニル-アミノプロピルトリメトキシシランが挙げられる。シランカップリング剤としては、商品名「KBM-403」(信越化学工業株式会社製)等の市販品も挙げられる。シランカップリング剤としては、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0050】
粘着剤層12がシランカップリング剤を含有する場合、粘着剤層12中のシランカップリング剤の含有量は、粘着剤層12中の粘着剤ないしアクリル系ポリマー100重量部に対して好ましくは0.01重量部以上、より好ましくは0.02重量部以上である。また、粘着剤層12中のシランカップリング剤の含有量は、アクリル系ポリマー100重量部に対して好ましくは1重量部以下、より好ましくは0.5重量部以下である。シランカップリング剤の含有量に関する当該構成は、当該シランカップリング剤を含んで形成される粘着剤層12において、加湿条件下での高い接着性、特にガラスに対する高い接着性を実現するうえで、好適である。
【0051】
粘着剤層12は、紫外線吸収剤を含有してもよい。紫外線吸収剤は、紫外線を効率よく吸収可能であり且つ吸収したエネルギーを熱や赤外線などに変えて放出可能な化学種である。そのような紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤、サリチル酸エステル系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、オキシベンゾフェノン系紫外線吸収剤、およびシアノアクリレート系紫外線吸収剤が挙げられる。粘着剤層12は、一種類の紫外線吸収剤を含有してもよいし、二種類以上の紫外線吸収剤を含有してもよい。
【0052】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール(商品名「TINUVIN PS」,BASF社製)、ベンゼンプロパン酸3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシの炭素数7~9のアルキルエステル(商品名「TINUVIN 384-2」,BASF社製)、オクチル3-[3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェニル]プロピオネートおよび2-エチルヘキシル-3-[3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2イル)フェニル]プロピオネートの混合物(商品名「TINUVIN 109」,BASF社製)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール(商品名「TINUVIN 900」,BASF社製)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(1-メチル-1-フェニルエチル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(商品名「TINUVIN 928」,BASF製)、メチル3-(3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートとポリエチレングリコール300との反応生成物(商品名「TINUVIN 1130」,BASF社製)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-p-クレゾール(商品名「TINUVIN P」,BASF社製)、2(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール(商品名「TINUVIN 234」,BASF社製)、2-[5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル]-4-メチル-6-(tert-ブチル)フェノール(商品名「TINUVIN 326」,BASF社製)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ジ-tert-ペンチルフェノール(商品名「TINUVIN 328」,BASF社製)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(商品名「TINUVIN 329」,BASF社製)、2,2'-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール](商品名「TINUVIN 360」,BASF社製)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-ドデシル-4-メチルフェノール(商品名「TINUVIN 571」,BASF社製)、2-[2-ヒドロキシ-3-(3,4,5,6-テトラヒドロフタルイミド-メチル)-5-メチルフェニル]ベンゾトリアゾール(商品名「Sumisorb 250」,住友化学株式会社製)、および2,2'-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-tert-オクチルフェノール](商品名「アデカスタブ LA-31」,株式会社ADEKA製)が挙げられる。
【0053】
ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、2-(4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-ヒドロキシフェニルと[(炭素数10~16のアルキルオキシ)メチル]オキシランとの反応生成物(商品名「TINUVIN 400」,BASF社製)、2-[4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-5-[3-(ドデシルオキシ)-2-ヒドロキシプロポキシ]フェノール)、2-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-4,6-ビス-(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジンと(2-エチルヘキシル)-グリシド酸エステルとの反応生成物(商品名「TINUVIN 405」,BASF社製)、2,4-ビス(2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル)-6-(2,4-ジブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン(商品名「TINUVIN 460」,BASF社製)、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[(ヘキシル)オキシ]-フェノール(商品名「TINUVIN 1577」,BASF社製)、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[2-(2-エチルヘキサノイルオキシ)エトキシ]-フェノール(商品名「アデカスタブ LA-46」,株式会社ADEKA製)、および2-(2-ヒドロキシ-4-[1-オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)-4,6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,3,5-トリアジン(商品名「TINUVIN 479」,BASF社製)が挙げられる。
【0054】
サリチル酸エステル系紫外線吸収剤としては、例えば、フェニル2-アクリロイルオキシベンゾエート、フェニル2-アクリロイルオキシ-3-メチルベンゾエート、フェニル2-アクリロイルオキシ-4-メチルベンゾエート、フェニル2-アクリロイルオキシ-5-メチルベンゾエート、フェニル2-アクリロイルオキシ-3-メトキシベンゾエート、フェニル2-ヒドロキシベンゾエート、フェニル2-ヒドロキシ-3-メチルベンゾエート、フェニル2-ヒドロキシ-4-メチルベンゾエート、フェニル2-ヒドロキシ-5-メチルベンゾエート、フェニル2-ヒドロキシ-3-メトキシベンゾエート、および2,4-ジ-tert-ブチルフェニル3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート(商品名「TINUVIN 120」,BASF社製)が挙げられる。
【0055】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤やオキシベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸、2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシベンゾフェノン、4-ドデシルオキシ-2-ヒドロキシベンゾフェノン、4-ベンジルオキシ-2-ヒドロキシベンゾフェノン、2,2'-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン(商品名「KEMISORB 111」,ケミプロ化成株式会社製)、2,2',4,4'-テトラヒドロキシベンゾフェノン(商品名「SEESORB 106」,シプロ化成株式会社製)、および2,2'-ジヒドロキシ-4,4'-ジメトキシベンゾフェノンが挙げられる。
【0056】
シアノアクリレート系紫外線吸収剤としては、例えば、アルキル2-シアノアクリレート、シクロアルキル2-シアノアクリレート、アルコキシアルキル2-シアノアクリレート、アルケニル2-シアノアクリレート、およびアルキニル2-シアノアクリレートが挙げられる。
【0057】
粘着剤層12に含有される紫外線吸収剤は、高い紫外線吸収性を有するとともに高い光安定性を有するという観点や、透明性の高い粘着剤層12を得やすいという観点から、好ましくは、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤、およびベンゾフェノン系紫外線吸収剤からなる群より選ばれる少なくとも一種である。粘着剤層12に含有される紫外線吸収剤は、より好ましくは、炭素数6以上の炭化水素基および水酸基を置換基として有するフェニル基がベンゾトリアゾール環を構成する窒素原子に結合しているベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤である。
【0058】
粘着剤層12が紫外線吸収剤を含有する場合、粘着剤層12中の紫外線吸収剤の含有量は、粘着剤層12における波長350nmの光の透過率を制御して高い紫外線吸収性を実現するという観点から、粘着剤層12中の粘着剤ないしアクリル系ポリマー100重量部に対して好ましくは0.01重量部以上、より好ましくは0.05重量部以上、より好ましくは0.1重量部以上である。また、粘着剤層12中の紫外線吸収剤の含有量は、粘着剤層12において紫外線吸収剤の添加に伴う粘着剤の黄色化現象の発生を抑制して優れた光学特性や高い透明性を実現するという観点から、粘着剤層12中の粘着剤ないしアクリル系ポリマー100重量部に対して好ましくは10重量部以下、より好ましくは9重量部以下、より好ましくは8重量部以下である。
【0059】
粘着剤層12は、光安定剤を含有してもよい。粘着剤層12は、光安定剤を含有する場合、好ましくは紫外線吸収剤を共に含有する。光安定剤は、紫外線等の光の照射に因って生成し得るラジカルを捕捉可能な化学種である。光安定剤としては、例えば、フェノール系光安定剤、リン系光安定剤、チオエーテル系光安定剤、および、ヒンダードアミン系安定剤等のアミン系光安定剤が、挙げられる。粘着剤層12は、一種類の光安定剤を含有してもよいし、二種類以上の光安定剤を含有してもよい。
【0060】
フェノール系光安定剤としては、例えば、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、4-ヒドロキシメチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェノール、ブチル化ヒドロキシアニソール、n-オクタデシル3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)プロピオネート、ジステアリル(4-ヒドロキシ-3-メチル-5-tert-ブチル)ベンジルマロネート、トコフェロール、2,2'-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2'-メチレンビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4'-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、4,4'-ブチリデンビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)、4,4'-チオビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)、スチレン化フェノール、N,N'-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナミド、ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホン酸エチルエステル)カルシウム、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシメチル]メタン、1,6-ヘキサンジオール-ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2'-メチレンビス(4-メチル-6-シクロヘキシルフェノール)、2,2'-メチレンビス[6-(1-メチルシクロヘキシル)-p-クレゾール]、1,3,5-トリス(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)イソシアヌル酸、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌル酸、トリエチレングリコール-ビス[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート]、2,2'-オキサミドビス[エチル3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルアニリノ)-2,4-ジオクチルチオ-1,3,5-トリアジン、ビス[2-tert-ブチル-4-メチル-6-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルベンジル)フェニル]テレフタレート、3,9-ビス{2-[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]-1,1-ジメチルエチル}-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、および3,9-ビス{2-[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]-1,1-ジメチルエチル}-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンが挙げられる。
【0061】
リン系光安定剤としては、例えば、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス[2-tert-ブチル-4-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニルチオ)-5-メチルフェニル]ホスファイト、トリデシルホスファイト、オクチルジフェニルホスファイト、ジ(デシル)モノフェニルホスファイト、ジ(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ジ(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4,6-トリ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラ(トリデシル)イソプロピリデンジフェノールジホスファイト、テトラ(トリデシル)-4,4'-n-ブチリデンビス(2-tert-ブチル-5-メチルフェノール)ジホスファイト、ヘキサ(トリデシル)-1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタントリホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ビフェニレンジホスホナイト、9,10-ジハイドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナンスレン-10-オキサイド、およびトリス(2-[(2,4,8,10-テトラキス-tert-ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン-6-イル)オキシ]エチル)アミンが挙げられる。
【0062】
チオエーテル系光安定剤としては、例えば、チオジプロピオン酸ジラウリル、チオジプロピオン酸ジミリスチル、およびチオジプロピオン酸ジステアリル等のジアルキルチオジプロピオネート化合物、並びに、テトラキス[メチレン(3-ドデシルチオ)プロピオネート]メタン等のポリオールのβ-アルキルメルカプトプロピオン酸エステル化合物が挙げられる。
【0063】
アミン系光安定剤としては、例えば、コハク酸ジメチルと4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジンエタノールとの重合物(商品名「TINUVIN 622」,BASF社製)、当該重合物とN,N',N'',N'''-テトラキス-(4,6-ビス-(ブチル-(N-メチル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)-トリアジン-2-イル)-4,7-ジアザデカン-1,10-ジアミンとの1対1反応生成物(商品名「TINUVIN 119」,BASF社製)、ポリ[{6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2-4-ジイル}{2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル}イミノ]ヘキサメチレン{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ})(商品名「TINUVIN 944」,BASF社製)、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート(商品名「TINUVIN 770」,BASF社製)、デカン二酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-1-(オクチルオキシ)-4-ピペリジニル)エステルと1,1-ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンとの反応生成物(商品名「TINUVIN 123」,BASF社製)、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート(商品名「TINUVIN 144」,BASF社製)、シクロヘキサンおよび過酸化N-ブチル2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジンアミン-2,4,6-トリクロロ-1,3,5-トリアジンの反応生成物と2-アミノエタノールとの反応生成物(商品名「TINUVIN 152」,BASF社製)、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケートおよびメチル1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルセバケートの混合物(商品名「TINUVIN 292」,BASF社製)、並びに、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノールおよび3,9-ビス(2-ヒドロキシ-1,1-ジメチルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンとの混合エステル化物(商品名「アデカスタブ LA-63P」,株式会社ADEKA製)が挙げられる。アミン系安定剤としては、特にヒンダードアミン系安定剤が好ましい。
【0064】
粘着剤層12が光安定剤を含有する場合、粘着剤層12中の光安定剤の含有量は、粘着剤層12において充分な耐光性を実現するという観点から、粘着剤層12中の粘着剤ないしアクリル系ポリマー100重量部に対して好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは0.2重量部以上である。また、粘着剤層12中の光安定剤の含有量は、粘着剤層12において光安定剤に因る着色を抑制して高い透明性を実現するという観点から、粘着剤層12中の粘着剤ないしアクリル系ポリマー100重量部に対して好ましくは5重量部以下、より好ましくは3重量部以下である。
【0065】
粘着剤層12に含有される粘着剤ないしアクリル系ポリマーは、上述の共重合性架橋剤ではない架橋剤で架橋されていてもよい。当該架橋剤による粘着剤ないしアクリル系ポリマーの架橋を利用して、粘着剤層12のゲル分率を調整することが可能である。そのような架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、メラミン系架橋剤、過酸化物系架橋剤、尿素系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、およびアミン系架橋剤が挙げられる。粘着剤層12は、一種類の当該架橋剤を含有してもよいし、二種類以上の当該架橋剤を含有してもよい。本実施形態では、好ましくはイソシアネート系架橋剤および/またはエポキシ系架橋剤が用いられる。
【0066】
イソシアネート系架橋剤としては、例えば、低級脂肪族ポリイソシアネート類、脂環式ポリイソシアネート類、および芳香族ポリイソシアネート類が挙げられる。低級脂肪族ポリイソシアネート類としては、例えば、1,2-エチレンジイソシアネート、1,4-ブチレンジイソシアネート、および1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートが挙げられる。脂環式ポリイソシアネート類としては、例えば、シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、および水素添加キシレンジイソシアネートが挙げられる。芳香族ポリイソシアネート類としては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、およびキシリレンジイソシアネートが挙げられる。また、イソシアネート系架橋剤としては、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート付加物(商品名「コロネートL」,日本ポリウレタン工業株式会社製)、トリメチロールプロパン/ヘキサメチレンジイソシアネート付加物(商品名「コロネートHL」,日本ポリウレタン工業株式会社製)、トリメチロールプロパン/キシリレンジイソシアネート付加物(商品名「タケネートD-110N」,三井化学株式会社製)等の市販品も挙げられる。
【0067】
エポキシ系架橋剤(多官能エポキシ化合物)としては、例えば、N,N,N',N'-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、ジグリシジルアニリン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、o-フタル酸ジグリシジルエステル、トリグリシジル-トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、レゾルシンジグリシジルエーテル、およびビスフェノール-S-ジグリシジルエーテルが挙げられる。また、エポキシ系架橋剤としては、エポキシ基を二つ以上有するエポキシ系樹脂も挙げられる。加えて、エポキシ系架橋剤としては、商品名「テトラッドC」(三菱ガス化学株式会社製)等の市販品も挙げられる。
【0068】
アクリル系ポリマー間を架橋するための以上のような架橋剤を粘着剤層12が含有する場合、粘着剤層12中の当該架橋剤の含有量は、粘着剤層12において被着体に対する充分な接着信頼性を実現するという観点から、粘着剤層12中の粘着剤ないしアクリル系ポリマー100重量部に対して好ましくは0.001重量部以上、より好ましくは0.01重量部以上である。また、粘着剤層12中の当該架橋剤の含有量は、粘着剤層において適度な柔軟性を発現させて良好な粘着力を実現するという観点から、粘着剤層12中の粘着剤ないしアクリル系ポリマー100重量部に対して好ましくは10重量部以下、より好ましくは5重量部以下である。
【0069】
粘着剤層12は、必要に応じて、架橋促進剤、粘着付与樹脂、老化防止剤、充填剤、顔料や染料などの着色剤、酸化防止剤、連鎖移動剤、可塑剤、軟化剤、界面活性剤、および帯電防止剤などの添加剤を更に含有してもよい。粘着付与樹脂としては、例えば、ロジン誘導体、ポリテルペン樹脂、石油樹脂、および油溶性フェノールが挙げられる。
【0070】
粘着剤層12の厚さは、表面保護フィルムXにおいて粘着剤層12側の被着体に対する充分な粘着力を実現するという観点からは、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上である。また、形成のし易さという観点からは、粘着剤層12の厚さは、好ましくは1000μm以下、より好ましくは900μm以下、より好ましくは800μm以下である。
【0071】
以上のような基材11および粘着剤層12を含む積層構造を有する表面保護フィルムXにおいて、基材幅方向のエルメンドルフ引裂強度は0.5N以下であり、且つ、基材機械方向のエルメンドルフ引裂強度は1N以上である。表面保護フィルムXにおける基材幅方向のエルメンドルフ引裂強度については、好ましくは0.45N以下、より好ましくは0.4N以下、より好ましくは0.3N以下である。表面保護フィルムXにおける基材機械方向のエルメンドルフ引裂強度については、好ましくは1.1N以上、より好ましくは1.3N以上、より好ましくは1.5N以上である。エルメンドルフ引裂強度は、JIS K 7128-2に準拠して測定される値とする。
【0072】
また、光学用の表面保護フィルムXの厚さ方向のヘーズは、好ましくは3%以下、より好ましくは2.5%以下、より好ましくは2%以下、より好ましくは1.5%以下、より好ましくは1%以下である。ヘーズは、JIS K 7136に準拠して測定される値とする。表面保護フィルムXについて、可視光波長領域における全光線透過率は、例えば85%以上である。全光線透過率は、JIS K 7361-1に準拠して測定される値とする。
【0073】
表面保護フィルムXは、粘着剤層12の粘着面12aを被覆するように剥離ライナー(セパレーター)が設けられていてもよい。剥離ライナーは、表面保護フィルムXの粘着剤層12が露出しないように保護するための要素であり、表面保護フィルムXを被着体に貼り合せる際に表面保護フィルムXから剥がされる。剥離ライナーとしては、例えば、剥離処理層を有する基材、フッ素ポリマーからなる低接着性基材、および、無極性ポリマーからなる低接着性基材が挙げられる。剥離ライナーの表面は、離型処理、防汚処理、または帯電防止処理が施されていてもよい。剥離ライナーの厚さは、例えば5~200μmである。表面保護フィルムXは、具体的には、粘着剤層12の粘着面12aを被覆する剥離ライナーを伴うシート状の形態をとってもよいし、剥離ライナーを伴わずに表面保護フィルムXの基材11と粘着剤層12とが交互に配されるようにロール状に巻回された形態をとってもよい。
【0074】
以上のような構成の表面保護フィルムXは、例えば、粘着剤層12を形成した後、粘着剤層12を基材11に対して貼り合せることによって、製造することができる。粘着剤層12は、例えば、所定の剥離ライナー上に粘着剤層12形成用の粘着剤組成物を塗布して粘着剤組成物層を形成し、当該粘着剤組成物層上に更なる剥離ライナーを積層し、当該剥離ライナー間で粘着剤組成物を硬化させることによって、形成することができる。
【0075】
粘着剤層12形成用の粘着剤組成物としては、例えば、活性エネルギー線の照射によって重合反応が進行して硬化可能な粘着剤組成物が用いられる。すなわち、粘着剤層12は、例えば活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物の硬化物である。アクリル系粘着剤層形成用の活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物は、アクリル系ポリマーを形成するためのモノマー、オリゴマー、および光重合開始剤を少なくとも含有する。当該組成物中のモノマーおよびオリゴマーは、アクリル系ポリマーを形成するための所定組成のモノマー混合物のいわゆる部分重合物として供することができる。また、当該粘着剤組成物は、形成される粘着剤層12の成分として必要に応じて採用されるその他の成分を含有してもよい。粘着剤層12の硬化のために活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物に照射される活性エネルギー線としては、例えば、紫外線、α線、β線、γ線、中性子線、および電子線が挙げられ、好ましくは紫外線が採用される。活性エネルギー線の照射を受けた、アクリル系粘着剤層形成用の活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物においては、光重合開始剤の活性化を経て開始反応が生じ、アクリル系ポリマーの形成に向けて重合反応が進行する。粘着剤層形成用の硬化性粘着剤組成物の硬化手法として紫外線照射等の活性エネルギー線照射を採用すると、当該粘着剤組成物の塗膜が比較的に厚い場合であっても、適切に硬化した粘着剤層を得やすい。したがって、粘着剤層12が活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物の硬化物であるという構成は、比較的に厚くても充分に硬化した粘着剤層12を実現するうえで好適である。
【0076】
上記の光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、α-ケトール系光重合開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、ケタール系光重合開始剤、およびチオキサントン系光重合開始剤が挙げられる。ベンゾインエーテル系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、および2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オンが挙げられる。アセトフェノン系光重合開始剤としては、例えば、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(α-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)、4-フェノキシジクロロアセトフェノン、および4-(t-ブチル)ジクロロアセトフェノンが挙げられる。α-ケトール系光重合開始剤としては、例えば、2-メチル-2-ヒドロキシプロピオフェノン、および1-[4-(2-ヒドロキシエチル)フェニル]-2-メチルプロパン-1-オンが挙げられる。芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤としては、例えば2-ナフタレンスルホニルクロリドが挙げられる。光活性オキシム系光重合開始剤としては、例えば1-フェニル-1,1-プロパンジオン-2-(o-エトキシカルボニル)-オキシムが挙げられる。ベンゾイン系光重合開始剤としては、例えばベンゾインが挙げられる。ベンジル系光重合開始剤としては、例えばベンジルが挙げられる。ベンゾフェノン系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3'-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、およびポリビニルベンゾフェノンが挙げられる。ケタール系光重合開始剤としては、例えばベンジルジメチルケタールが挙げられる。チオキサントン系光重合開始剤としては、例えば、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、およびドデシルチオキサントンが挙げられる。活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物における光重合開始剤の含有量は、例えば0.01~3重量%である。
【0077】
粘着剤層12形成用の粘着剤組成物としては、粘着剤たるアクリル系ポリマーを既に含有して例えば加熱乾燥によって硬化可能な溶剤型粘着剤組成物やエマルション型粘着剤組成物を用いてもよい。当該組成物は、形成される粘着剤層12の成分として必要に応じて採用されるその他の成分を含有してもよい。当該粘着剤組成物中のアクリル系ポリマーは、アクリル系ポリマー形成用の原料モノマー成分を重合して得ることができる。重合手法としては、例えば、溶液重合、乳化重合、および塊状重合が挙げられる。溶液重合を行うに際しては、溶媒として、例えば、芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類、脂環式炭化水素類、エステル類、およびケトン類を用いることができる。芳香族炭化水素類の溶媒としては、例えば、トルエンおよびベンゼンが挙げられる。脂肪族炭化水素類の溶媒としては、例えば、n-ヘキサンおよびn-ヘプタンが挙げられる。脂環式炭化水素類の溶媒としては、例えば、シクロヘキサンおよびメチルシクロヘキサンが挙げられる。エステル類の溶媒としては、例えば、酢酸エチルおよび酢酸n-ブチルが挙げられる。ケトン類の溶媒としては、例えば、メチルエチルケトンおよびメチルイソブチルケトンが挙げられる。溶液重合においては、一種類の溶媒を用いてもよいし、二種類以上の溶媒を用いてもよい。
【0078】
アクリル系ポリマーを得るために原料モノマー成分を重合する際には、重合開始剤を用いることができる。重合反応の種類に応じて、例えば、光重合開始剤や熱重合開始剤を用いることができる。重合の際には、一種類の重合開始剤を用いてもよいし、二種類以上の重合開始剤を用いてもよい。
【0079】
光重合開始剤としては、例えば、上記のベンゾインエーテル系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、α-ケトール系光重合開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、ケタール系光重合開始剤、およびチオキサントン系光重合開始剤が挙げられる。光重合開始剤の使用量は、例えば、モノマー成分全量(100重量部)に対して0.01~3重量部である。
【0080】
熱重合開始剤としては、例えば、アゾ系重合開始剤、過酸化物系重合開始剤、およびレドックス系重合開始剤が挙げられる。アゾ系重合開始剤としては、例えば、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス-2-メチルブチロニトリル、2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオン酸)ジメチル、および4,4'-アゾビス-4-シアノバレリアン酸が挙げられる。過酸化物系重合開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイルおよびtert-ブチルペルマレエートが挙げられる。熱重合開始剤の使用量は、例えば、モノマー成分全量(100重量部)に対して0.05~0.3重量部である。
【0081】
上記アクリル系ポリマーを得るための重合に際しては、アクリル系ポリマーの分子量を調整するために、連鎖移動剤を使用することができる。連鎖移動剤としては、例えば、α-チオグリセロール、2-メルカプトエタノール、2,3-ジメルカプト-1-プロパノール、オクチルメルカプタン、t-ノニルメルカプタン、ドデシルメルカプタン(ラウリルメルカプタン)、t-ドデシルメルカプタン、グリシジルメルカプタン、チオグリコール酸、チオグリコール酸メチル、チオグリコール酸エチル、チオグリコール酸プロピル、チオグリコール酸ブチル、チオグリコール酸t-ブチル、チオグリコール酸2-エチルヘキシル、チオグリコール酸オクチル、チオグリコール酸イソオクチル、チオグリコール酸デシル、およびチオグリコール酸ドデシルが挙げられる。連鎖移動剤としては、一種類の連鎖移動剤を用いてもよいし、二種類以上の連鎖移動剤を用いてもよい。本実施形態では、連鎖移動剤として、好ましくはα-チオグリセロールが用いられる。連鎖移動剤の使用量は、例えば、アクリル系ポリマーを得るためのモノマー成分全量(100重量部)に対して0.01~0.5重量部である。
【0082】
活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物や、溶剤型粘着剤組成物、エマルション型粘着剤組成物などの、粘着剤層12形成用の粘着剤組成物が、上述のアクリル系オリゴマーを含む場合、当該オリゴマーは、所定組成の原料モノマー成分を重合して得ることができる。重合手法としては、例えば、溶液重合、乳化重合、および塊状重合が挙げられる。溶液重合のための溶媒としては、アクリル系ポリマーを得るための溶液重合に用いることのできる溶媒として上記したものが挙げられる。当該溶液重合においては、一種類の溶媒を用いてもよいし、二種類以上の溶媒を用いてもよい。また、上記オリゴマーを得るために原料モノマー成分を重合する際には、重合開始剤を用いることができる。当該重合開始剤としては、アクリル系ポリマーを得るための重合に用いることのできる重合開始剤として上記した光重合開始剤や熱重合開始剤が挙げられる。重合の際には、一種類の重合開始剤を用いてもよいし、二種類以上の重合開始剤を用いてもよい。
【0083】
例えば以上のようにして製造される表面保護フィルムXの有する基材11は、上述のように、ポリエステル系基材である。このような構成は、耐熱性や、透明性、寸法安定性など、ポリエステル系基材において発現させやすい種々の特性を、表面保護フィルム基材ひいては表面保護フィルムXにおいて享受するのに好適である。
【0084】
また、表面保護フィルムXの有する基材11は、上述のように、幅方向一軸延伸ポリエステル系基材である。当該基材11の厚さは、上述のように、75μm以上であり、好ましくは80μm以上である。当該基材11の厚さは、上述のように、例えば150μm以下であり、好ましくは125μm以下である。表面保護フィルムにおけるエルメンドルフ引裂強度等の引裂強度は基材の機械的特性に強く支配されるところ、これら構成は、表面保護フィルムXにおいて、基材幅方向のエルメンドルフ引裂強度が0.5N以下であって基材機械方向のエルメンドルフ引裂強度が1N以上であるという上記構成を、実現するのに適する。
【0085】
加えて、表面保護フィルムXにおける基材幅方向のエルメンドルフ引裂強度は、上述のように、0.5N以下であり、好ましくは0.45N以下、より好ましくは0.4N以下、より好ましくは0.3N以下である。これとともに、表面保護フィルムXにおける基材機械方向のエルメンドルフ引裂強度は、上述のように、1N以上であり、好ましくは1.1N以上、より好ましくは1.3N以上、より好ましくは1.5N以上である。これら構成は、表面保護フィルムXにおいて、エルメンドルフ引裂強度が0.5N以下と相対的に有意に低い基材幅方向への良好な手切れ性を実現するのに適する。そして、エルメンドルフ引裂強度が基材機械方向では基材幅方向の2倍以上であるという構成は、表面保護フィルムXにおいて、基材幅方向への引裂きに関してその指向性を高めるのに好適である。そのため、当該構成は、表面保護フィルムXが被着体に貼り合わせられた状態にある場合において、表面保護フィルムXの基材機械方向に剥離力を作用させて被着体から当該表面保護フィルムXを裂かずに適切に剥離させるのに好適である。具体的には、被着体に対して表面保護フィルムXを貼り合わせた後に一旦剥離して再び貼り合わせる作業(リワーク作業)にあたり、表面保護フィルムXの基材機械方向に剥離力を作用させて被着体から当該表面保護フィルムXを裂かずに適切に剥離させるのに好適である。基材幅方向に加えて基材機械方向にも引き裂かれやすい表面保護フィルムは、リワーク作業における剥離時に、裂けやすく、被着体から適切に剥離することが困難な傾向にある。裂けが生じた表面保護フィルムは、再度の貼合わせに用いることができない。これに対し、表面保護フィルムXは、基材幅方向への良好な手切れ性の実現に適した基材幅方向エルメンドルフ引裂強度に比して充分に大きな基材機械方向エルメンドルフ引裂強度を有するので、リワーク作業にあたり、裂かずに適切に被着体から剥離させるのに適するのである。
【0086】
以上のように、表面保護フィルムXは、ポリエステル系基材を有しつつ良好な手切れ性と高いリワーク性とを併せて実現するのに適する。
【0087】
表面保護フィルムXの基材11の面内位相差は、上述のように、好ましくは1500nm以上、より好ましくは3000nm以上、より好ましくは6000nm以上である。このような構成は、液晶表示装置の表示画面の最前面部品たる透明カバーの表面に表面保護フィルムXが貼り合わせられている場合に例えば、偏光サングラス等の偏光機能付レンズを介しての当該表示画面の視認時にいわゆるブラックアウト現象が発生するのを抑制するのに好適である。また、基材11の面内位相差が大きいほど、液晶表示装置の表示画面の最前面部品たる透明カバーの表面に表面保護フィルムXが貼り合わせられている場合に例えば、偏光サングラス等の偏光機能付レンズを介しての当該表示画面の視認時にいわゆる虹ムラ現象が抑制される傾向にある。
【実施例】
【0088】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。ここで、実施例2は参考例1と読み替えるものとする。
【0089】
〔アクリル系オリゴマーの製造例〕
反応容器内で、メタクリル酸ジシクロペンタニル(DCPMA)60重量部と、メタクリル酸メチル(MMA)40重量部と、連鎖移動剤としてのα-チオグリセロール3.5重量部と、重合溶媒としてのトルエン100重量部とを含む混合物を、70℃で1時間、窒素雰囲気下で撹拌した。次に、重合開始剤としての2,2'-アゾビスイソブチロニトリル0.2重量部を反応容器内の混合物に加えて反応溶液を調製し、70℃で2時間、反応を行った。続いて、80℃で2時間、反応を行った。その後、反応容器内の反応溶液を、130℃の温度雰囲気下に置き、当該反応溶液からトルエン、連鎖移動剤、および未反応モノマーを乾燥除去した。これにより、固形状のアクリル系オリゴマーを得た。当該アクリル系オリゴマーの重量平均分子量(Mw)は、5.1×103であった。
【0090】
〔アクリル系粘着剤組成物C1の調製例〕
アクリル酸2-エチルヘキシル(2EHA)78重量部と、N-ビニル-2-ピロリドン(NVP)18重量部と、アクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEA)4重量部とを含有するモノマー混合物に、第1の光重合開始剤(商品名「イルガキュア651」,BASF社製)0.035重量部および第2の光重合開始剤(商品名「イルガキュア184」,BASF社製)0.035重量部を加えた後、当該混合物に対し、粘度測定装置を使用して粘度を測定しつつ当該混合物の粘度が約20Pa・sになるまで紫外線照射装置を使用して紫外線を照射した。粘度測定において、装置のローター回転速度は10rpmとし、測定温度は30℃とした。これにより、混合物中のモノマー成分の一部が重合した部分重合物たるプレポリマー組成物(重合反応を経ていないモノマー成分を含有する)を得た。そして、このプレポリマー組成物100重量部と、上述のアクリル系オリゴマー11.8重量部と、アクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEA)17.6重量部と、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)0.294重量部と、シランカップリング剤(商品名「KBM-403」,信越化学工業株式会社製)0.353重量部とを混合した。これにより、アクリル系粘着剤組成物(アクリル系粘着剤組成物C1)を得た。
【0091】
〔アクリル系粘着剤組成物C2の調製例〕
環流冷却器、窒素ガス導入管、攪拌機、および温度計を備え付けたフラスコ(反応容器)内で、アクリル酸2-エチルヘキシル(2EHA)100重量部と、アクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEA)4重量部と、重合開始剤としての2,2'-アゾビスイソブチロニトリル0.2重量部と、重合溶媒としての酢酸エチル205重量部とを含む混合物を、窒素雰囲気下で穏やかに撹拌しつつ、63℃で4時間、反応を行った。これにより、約35重量%の濃度でアクリル系ポリマーを含有する溶液(アクリル系ポリマー溶液)を得た。そして、アクリル系ポリマー濃度が29重量%となるようにアクリル系ポリマー溶液を酢酸エチルで希釈した後、当該アクリル系ポリマー溶液に、アクリル系ポリマー100重量部に対して4重量部のトリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート付加物(商品名「コロネートL」,日本ポリウレタン工業株式会社製)と、0.02重量部の錫系触媒たるジオクチルスズジラウレート(商品名「エンビライザー OL-1」,東京ファインケミカル株式会社製)と、3重量部の架橋遅延剤たるアセチルアセトンとを加えて、25℃で約1分間の混合を行った。これにより、溶剤型のアクリル系粘着剤組成物(アクリル系粘着剤組成物C2)を得た。
【0092】
〔実施例1〕
厚さ80μmの第1のポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名「コスモシャイン SRF」,面内位相差8400,東洋紡株式会社製)の両面にコロナ処理を施して得たフィルム(フィルムF1)の上に、上記のアクリル系粘着剤組成物C1を塗布し、粘着剤組成物層を形成した。次に、ポリエチレンテレフタレート(PET)系剥離ライナー(厚さ125μm,日東電工株式会社製)を当該粘着剤組成物層上に積層し、当該粘着剤組成物層を被覆して酸素を遮断した。このようにして、[剥離ライナー/粘着剤組成物層/フィルムF1]の積層構成を有する積層体を得た。次に、この積層体に対し、剥離ライナーの側から、ブラックライト(株式会社東芝製)を使用して照度3mW/cm2の紫外線を300秒間照射した。これによって積層体の粘着剤組成物層を硬化させて粘着剤層とした。この粘着剤層の厚さは100μmである。以上のようにして、[剥離ライナー/粘着剤層(厚さ100μm)/基材たるフィルムF1(厚さ80μm)]の積層構成を有する実施例1の表面保護フィルムを作製した。
【0093】
〔実施例2〕
厚さ80μmの第2のポリエチレンテレフタレートフィルムの両面にコロナ処理を施して得たフィルム(フィルムF2)の上に、上記のアクリル系粘着剤組成物C2を塗布し、粘着剤組成物層を形成した。第2のポリエチレンテレフタレートフィルムは、第1のポリエチレンテレフタレートフィルムたる「コスモシャイン SRF」の易接着処理層をハードコート用途の易接着処理層に替えた、東洋紡株式会社製のフィルムである。次に、この粘着剤組成物層を130℃で60秒間加熱して乾燥および硬化させ、フィルムF2上に粘着剤層を形成した。この粘着剤層の厚さは21μmである。そして、この粘着剤層の表面にPET系剥離ライナー(厚さ25μm,日東電工株式会社製)を貼り合わせた。以上のようにして、[剥離ライナー/粘着剤層(厚さ21μm)/基材たるフィルムF2(厚さ80μm)]の積層構成を有する実施例2の表面保護フィルムを作製した。
【0094】
〔比較例1〕
表面保護フィルムの基材として、厚さ75μmの第3のポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名「XD500P」,面内位相差3000,東レ株式会社製)の両面にコロナ処理を施して得たフィルム(フィルムF3)をフィルムF1の代わりに用いたこと以外は実施例1と同様にして、比較例1の表面保護フィルムを作製した。
【0095】
〔比較例2〕
表面保護フィルムの基材としてフィルムF2に代えてフィルムF3を用いたこと以外は実施例2と同様にして、比較例2の表面保護フィルムを作製した。
【0096】
〈エルメンドルフ引裂強度〉
実施例および比較例の表面保護フィルムから切り出された各サンプル片(60mm×75mm)について、エルメンドルフ引裂強度測定装置(商品名「エルメンドルフ引裂度試験機」,テスター産業株式会社製)を使用して、テープ基材の幅方向(TD)のエルメンドルフ引裂強度(N)とテープ基材の機械方向(MD)におけるエルメンドルフ引裂強度(N)とを、それぞれ測定した。本測定は、JIS K 7128-2に準拠して行った。測定に付されたサンプル片には、その端から測定方向(TDまたはMD)に延びる長さ20mmの切込みが予め設けられている。本測定では、当該切込みが更に伸びるように装置によってサンプル片に付与される引裂負荷に対する抵抗力が、測定される。また、本測定に使用した上記装置の計測最大値は1Nである。本測定の結果を表1に掲げる。
【0097】
〈手切れ性〉
実施例および比較例の各表面保護フィルムについて、その基材幅方向の手切れ性を調べた。具体的には、剥離ライナーが剥離された表面保護フィルムについて、その基材幅方向への手作業による引裂きを試みた。当該手作業検査において、容易に引き裂くことが出来た場合を手切れ性は良好(○)と評価し、引き裂くことが出来なかった場合を手切れ性は不良(×)と評価した。その結果を表1に掲げる。
【0098】
〈ヘーズ〉
実施例および比較例の各表面保護フィルムについて、ヘーズメーター HM-150型(株式会社村上色彩技術研究所製)を使用して、JIS K 7136に規定の方法に準拠してヘーズ(%)を測定した。本測定は、剥離ライナーが剥離され且つスライドガラス(商品名「スライドグラス S1112」,厚さ1.0~1.2mm,松波硝子工業株式会社製)に貼り付けられた状態にある表面保護フィルムについて行った。その結果を表1に掲げる。
【0099】
[評価]
本発明の構成を具備する実施例1,2の表面保護フィルムにおいては、いずれも、良好な手切れ性が実現された。これに対し、比較例1,2の表面保護フィルムにおいては、いずれも、基材幅方向に手で引き裂くことが出来ず、良好な手切れ性が実現されなかった。
【0100】
【符号の説明】
【0101】
X 表面保護フィルム
11 基材
12 粘着剤層