(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-09
(45)【発行日】2022-08-18
(54)【発明の名称】ロボットハンド
(51)【国際特許分類】
B25J 19/00 20060101AFI20220810BHJP
【FI】
B25J19/00 F
(21)【出願番号】P 2020181886
(22)【出願日】2020-10-29
【審査請求日】2020-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荻野 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】難波 瞳
【審査官】臼井 卓巳
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-094650(JP,A)
【文献】特開2008-194807(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0130632(US,A1)
【文献】特開2004-033625(JP,A)
【文献】特表2005-525709(JP,A)
【文献】特開昭52-129151(JP,A)
【文献】特開昭59-093278(JP,A)
【文献】特開平08-019985(JP,A)
【文献】特開平09-300270(JP,A)
【文献】特開2006-110658(JP,A)
【文献】特開2017-026441(JP,A)
【文献】特開2019-155534(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 5/00-19/06
B65G 47/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットアームのヘッドに取り付けられて使用されるロボットハンドであって、
バッテリと、
前記ロボットアームの周辺に設置された送電部から無線で送電される電力を受電し、前記バッテリの充電を行う受電部と、
前記バッテリから電力を供給され、前記ロボットアームの周辺に設置された制御装置との間で無線通信を行う通信ユニットと、
前記バッテリから電力を供給され、前記通信ユニットを介して前記制御装置と通信するコントローラと、
前記バッテリから電力を供給され且つ前記コントローラによって作動を制御されるモータを有し、ワークを保持する保持状態と前記保持を解除する保持解除状態とに前記モータの駆動力を用いて切り替えられるハンド部と、
を備え
、
前記ハンド部は、
前記モータの駆動力により第1位置と第2位置との間で往復移動する移動部材と、
前記移動部材に取り付けられ、前記移動部材が第1位置に位置する状態では、磁性体を含んだワークを吸着可能な永久磁石と、
前記移動部材が前記第1位置から前記第2位置へと移動する際に、前記永久磁石に吸着されているワークと係合し、前記永久磁石から前記ワークを脱落させる係合部材と、
を有しているロボットハンド。
【請求項2】
前記バッテリと前記モータとの間に接続され、前記バッテリから前記モータに供給される電力を安定させるコンバータを備えた請求項1に記載のロボットハンド。
【請求項3】
前記
バッテリから前記通信ユニットへの電力の供給を遮断するスイッチを備えた請求項1又は請求項2に記載のロボットハンド。
【請求項4】
前記
スイッチは、操作部が変位されることでオン/オフ状態が切り替わる機械式スイッチである請求項3に記載のロボットハンド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットハンドに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、ロボットアームにより移動されるワイヤレスバルブマニホールドが開示されている。このワイヤレスバルブマニホールドは、複数の流体圧シリンダと、複数の流体圧シリンダへの圧力流体の供給及び排出を切り換える複数の電磁弁と、複数の電磁弁に電力を供給可能なバッテリと、バッテリに接続され、ワイヤレスバルブマニホールドの給電ステーションから無線電力伝送によりバッテリに電力を充電する受電コントロール部と、を有している。これにより、ロボットアームの安定的な移動と、ワイヤレスバルブマニホールドの継続的な動作とを実現するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の先行技術文献には、圧力流体の供給源(例えば、コンプレッサー)については記載されていないが、当該供給源と複数の電磁弁とを配管で繋ぐ必要がある。その配管がロボットアーム側からワイヤレスバルブマニホールド側へ配索されることになるため、その配管によってロボットアームの動作に制約(例えば、動作範囲や動作速度の制限)が生じる。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、ロボットアームの動作の制約を従来よりも少なくすることができるロボットハンドを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様のロボットハンドは、ロボットアームのヘッドに取り付けられて使用されるロボットハンドであって、バッテリと、前記ロボットアームの周辺に設置された送電部から無線で送電される電力を受電し、前記バッテリの充電を行う受電部と、前記バッテリから電力を供給され、前記ロボットアームの周辺に設置された制御装置との間で無線通信を行う通信ユニットと、前記バッテリから電力を供給され、前記通信ユニットを介して前記制御装置と通信するコントローラと、前記バッテリから電力を供給され且つ前記コントローラによって作動を制御されるモータを有し、ワークを保持する保持状態と前記保持を解除する保持解除状態とに前記モータの駆動力を用いて切り替えられるハンド部と、を備えている。
【0007】
第1の態様のロボットハンドは、バッテリと、受電部と、通信ユニットと、コントローラと、ハンド部とを備えており、ロボットアームのヘッドに取り付けられて使用される。受電部は、ロボットアームの周辺に設置された送電部から無線で送電される電力を受電し、バッテリの充電を行う。通信ユニットは、バッテリから電力を供給され、ロボットアームの周辺に設置された制御装置との間で無線通信を行う。コントローラは、バッテリから電力を供給され、通信ユニットを介して上記の制御装置と通信する。ハンド部は、バッテリから電力を供給され且つコントローラによって作動を制御されるモータを有している。このハンド部は、ワークを保持する保持状態と当該保持を解除する保持解除状態とにモータの駆動力を用いて切り替えられる。このロボットハンドでは、ロボットアーム側から配線や配管を配索する必要がない。これにより、ロボットアームの動作の制約を従来よりも少なくすることができる。
【0008】
第2の態様のロボットハンドは、第1の態様のロボットハンドにおいて、前記バッテリと前記モータとの間に接続され、前記バッテリから前記モータに供給される電力を安定させるコンバータを備えている。
【0009】
第2の態様のロボットハンドでは、バッテリとハンド部のモータとの間に接続されたコンバータが、バッテリからモータに供給される電力を安定させる。これにより、バッテリの電圧変動の影響を受けずに、モータすなわちハンド部を動作させることができる。
【0010】
第3の態様のロボットハンドは、第1の態様又は第2の態様のロボットハンドにおいて、前記ハンド部は、前記モータの駆動力により第1位置と第2位置との間で往復移動する移動部材と、前記移動部材に取り付けられ、前記移動部材が第1位置に位置する状態では、磁性体を含んだワークを吸着可能な永久磁石と、前記移動部材が前記第1位置から前記第2位置へと移動する際に、前記永久磁石に吸着されているワークと係合し、前記永久磁石から前記ワークを脱落させる係合部材と、を有している。
【0011】
第3の態様のロボットハンドでは、ハンド部は、モータの他、移動部材と、永久磁石と、係合部材とを有している。移動部材は、モータの駆動力により第1位置と第2位置との間で往復移動する。永久磁石は、移動部材に取り付けられる。この永久磁石は、移動部材が第1位置に位置する状態では、磁性体を含んだワークを吸着可能となる。係合部材は、移動部材が第1位置から第2位置へと移動する際に、永久磁石に吸着されているワークと係合し、永久磁石からワークを脱落させる。これにより、鉄等からなるワークの保持及び保持解除を、簡素な構成で行うことができる。
【0012】
第4の態様のロボットハンドは、第1の態様~第3の態様の何れか1つの態様のロボットハンドにおいて、前記バッテリから前記通信ユニットへの電力の供給を遮断するスイッチを備えている。
【0013】
第4の態様のロボットハンドでは、例えばハンド部の動作を必要としない待機時間が長い場合、上記のスイッチにより、バッテリから通信ユニットへの電力の供給を遮断することができる。これにより、通信のために必要な電力によって、ハンド部の動作時間が短くなることを抑制できる。
【0014】
第5の態様のロボットハンドは、第4の態様のロボットハンドにおいて、前記スイッチは、操作部が変位されることでオン/オフ状態が切り替わる機械式スイッチである。
【0015】
第5の態様のロボットハンドでは、例えばロボットアームの動作により、機械スイッチの操作部をロボットアームの周辺物に当てて変位させることにより、機械式スイッチのオン/オフ状態を切り替えることができる。このため、ロボットアームの動作により、バッテリから通信ユニットへの電力の供給及び遮断を切り替えることができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明に係るロボットハンドによれば、ロボットアームの動作の制約を従来よりも少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態に係るロボットハンドが取り付けられたロボットアームと、ワークの仮置台を示す斜視図である。
【
図2】実施形態に係るロボットハンドの第1斜視図である。
【
図3】実施形態に係るロボットハンドの第2斜視図である。
【
図4】実施形態に係るロボットハンドの第3斜視図である。
【
図5】実施形態に係るロボットハンドの第4斜視図である。
【
図6】実施形態に係るロボットハンドのハンド部周辺の構成を示す斜視図であり、移動部材が第1位置に位置する状態を示す図である。
【
図7】移動部材が第2位置に位置する状態を示す
図6に対応した斜視図である。
【
図8A】移動部材が第1位置に位置する状態を示す側面図である。
【
図8B】移動部材が第2位置に位置する状態を示す側面図である。
【
図10】仮置台にワークが仮置きされた状態を示す斜視図である。
【
図11】仮置状態のワークに対するロボットハンドのピッキング方向の第1例を示す斜視図である。
【
図12】仮置状態のワークに対するロボットハンドのピッキング方向の第2例を示す斜視図である。
【
図13】仮置状態のワークに対するロボットハンドのピッキング方向の第3例を示す斜視図である。
【
図14】仮置状態のワークに対するロボットハンドのピッキング方向の第4例を示す斜視図である。
【
図15】仮置状態のワークに対するロボットハンドのピッキング方向の第5例を示す斜視図である。
【
図16】仮置状態のワークに対するロボットハンドのピッキング方向の第6例を示す斜視図である。
【
図17】比較例を示す斜視図であり、従来のロボットハンドに対するワークの保持方向を変更するために用いられる専用装置の一例について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、
図1~
図16を参照して、本発明の一実施形態に係るロボットハンド30について説明する。なお、各図においては、図面を見易くする関係から一部の符号を省略している場合がある。
【0019】
図1に示されるように、本実施形態に係るロボットハンド30は、ロボットアーム10のヘッド10Aに取り付けられて使用される。このロボットアーム10は、一例として、6軸の垂直多関節型ロボットとされている。このロボットアーム10は、例えば工場での製品の組立工程において、小物部品の組付作業を行うものである。この組付作業では、例えばロボットアーム10は、搬送コンベアによって搬送されてくる小物部品(ワーク)をロボットハンド30によってピックアップし、製造途中の製品に組み付ける。このロボットアーム10は、
図1に示される制御装置12によって動作を制御される構成になっている。この制御装置12は、ロボットアーム10とは別体に構成されており、ロボットアーム10の周辺に設置されている。なお、
図1において20は、トライアル用のワークWを仮置きするためのトライアル用仮置台である。上記のワークWは、鉄などの磁性体によって長尺な直方体状に形成されている。
【0020】
図2~
図5に示されるように、ロボットハンド30は、蓄電池であるバッテリ34と、無線機器である通信ユニット38と、受電部であるワイヤレス充電ユニット40と、制御部であるコントローラ42と、部品保持部であるハンド部50と、電力安定化回路であるコンバータ44とを備えている。さらに、このロボットハンド30は、上記のバッテリ34、ワイヤレス充電ユニット40、通信ユニット38、コントローラ42、コンバータ44及びハンド部50が取り付けられたベース部32を備えている。以下、説明の便宜上、
図2~
図8Bに記す前後左右上下の方向を、ロボットハンド30の前後左右上下の方向とする。これらの方向は、ロボットハンド30の使用状態での方向とは無関係である。また、以下に記載するロボットハンド30の構成は単なる一例であり、各部材の配置等は適宜変更可能である。
【0021】
ベース部32は、例えば金属板によって矩形板状に形成されている。このベース部32は、ロボットアーム10の第6軸の軸線方向を板厚方向として配置されており、上面の中央部がボルト締結等の手段でロボットアーム10のヘッド10Aに固定されている。ロボットアーム10の第6軸の軸線方向は、ロボットハンド30の上下方向と一致している。
【0022】
バッテリ34は、例えばリチウムイオン二次電池であり、ロボットアーム10のヘッド10Aに対する右方側に配置されている。このバッテリ34は、ワンタッチで着脱可能なアタッチメント(図示省略)を介してベース部32の上面に取り付けられている。このバッテリ34は、前後方向を長手とし且つ上下方向に扁平な直方体状をなしている。バッテリ34に対する右方側には、バッテリ取外しレバー36が設けられている。この取外しレバー36が操作されることで、バッテリ34がベース部32から取外し可能となるように構成されている。
【0023】
通信ユニット38は、ロボットアーム10のヘッド10Aに対する左方側でベース部32の上面に取り付けられている。通信ユニット38は、前後方向を長手とし且つ上下方向に扁平な直方体状をなしており、ボルト締結等の手段でベース部32に固定されている。この通信ユニット38は、ロボットアーム10の制御装置12と無線で通信を行うことが可能な無線機器である。この通信には、例えばデバイスネット、イーサーネット、CCリンク(Control & Communication Link)等のネットワークが用いられる。この通信ユニット38は、バッテリ34に対して電気的に接続されており、バッテリ34から電力を供給されて作動する。
【0024】
なお、バッテリ34から通信ユニット38への電力の供給を遮断するスイッチ46(
図2参照;
図2以外では図示省略)を設ける構成にしてもよい。このスイッチ46は、一例として回動式の操作部46Aを有しており、当該操作部が回動(変位)されることでオン/オフ状態が切り替わる機械式スイッチとされている。このスイッチ46は、例えばビス止め等の手段でベース部32に固定されており、バッテリ34と通信ユニット38との間に電気的に接続されている。このスイッチ46がオンの状態では、バッテリ34から通信ユニット38へ電力が供給され、このスイッチ46がオフの状態では、バッテリ34から通信ユニット38へ電力が遮断される。このスイッチ46のオン/オフ状態は、例えば上記の操作部46Aがロボットアーム10の動作によってロボットアーム10の周辺物に当てられて回動されることにより切り替えられる。
【0025】
ワイヤレス充電ユニット40は、全体として直方体状をなしており、通信ユニット38に対する後方側に配置されている。このワイヤレス充電ユニット40は、例えばブラケットを介してベース部32に固定されており、バッテリ34に対して電気的に接続されている。このワイヤレス充電ユニット40は、ロボットアーム10の周辺に設置された送電部14(
図1参照)から無線で送電される電力を受電し、バッテリ34の充電を行うものである。この無線電力伝送の方式としては、例えば、磁界結合式、電解結合式、エバネセント波式、レーザ式、マイクロ波式又は超音波式とされている。
【0026】
上記の送電部14は、給電ステーションの給電部を構成しており、AC電源16(
図1参照)から供給される電力を、無線電力伝送によりワイヤレス充電ユニット40に送電する。なお、
図1では、制御装置12、AC電源16及び送電部14を概略的に記載している。この送電部14は、ロボットアーム10の待機位置付近に設置されている。ロボットアーム10が待機位置に復帰すると、ロボットハンド30のワイヤレス充電ユニット40が送電部14と対向し、上記の無線電力伝送が行われる。これにより、ロボットアーム10の待機状態では、バッテリ34が充電されるように構成されている。
【0027】
コントローラ42は、前後方向に長尺で且つ左右方向に扁平な直方体状をなしており、ベース部32を介して通信ユニット38と反対側に配置されている。このコントローラ42は、ボルト締結等の手段でベース部32の下面に固定されている。このコントローラ42は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ストレージ、通信I/F(Inter face)及び入出力I/Fを含んで構成されている。CPU、ROM、RAM、ストレージ、通信I/F及び入出力I/Fは、バスを介して相互に通信可能に接続されている。
【0028】
CPUは、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPUは、ROMからプログラムを読み出し、RAMを作業領域としてプログラムを実行する。本実施形態では、ROMにプログラム及び各種データが記憶されている。RAMは、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。ストレージは、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)により構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラムを記憶している。通信I/Fには、通信ユニット38が電気的に接続されている。入出力I/Fには、バッテリ34、通信ユニット38、及びハンド部50が有する電動シリンダ52が電気的に接続されている。
【0029】
このコントローラ42は、バッテリ34から電力を供給されて作動し、通信ユニット38を介して制御装置12と通信する。このコントローラ42は、制御装置12から送信される制御信号に基づき、電動シリンダ52の作動を制御する。
【0030】
コンバータ44は、電動シリンダ52が有するモータ56とバッテリ34との間に電気的に接続されている。このコンバータ44は、DC/DCコンバータであり、バッテリ34からモータ56に供給される電力を安定させる機能を有している。具体的には、このコンバータ44は、バッテリ34から入力される電力を一定の電圧で出力し、モータ56に供給する。
【0031】
図2~
図8Bに示されるように、ハンド部50は、上記の電動シリンダ52の他、支持部材62と、移動部材78と、永久磁石84とを有している。電動シリンダ52は、一例として、ステッピングモータであるモータ56にボールねじ58(
図4参照)が組み込まれた直動アクチュエータであり、ガイド付きロッドタイプとされている。この電動シリンダ52は、ベース部32の下側すなわちベース部32を介してロボットアーム10のヘッド10Aとは反対側において、ボールねじ58の軸線方向が上下方向に沿う姿勢で配置されている。ボールねじ58は、電動シリンダ52のシリンダ本体54から上方へ向けて突出しており、モータ56の駆動力で上下方向に往復移動する。このボールねじ58の先端には、ガイド60が連結されており、当該ガイド60がボールねじ58と一緒に上下方向に往復移動する。この電動シリンダ52は、支持部材62を介してベース部32に支持されている。
【0032】
支持部材62は、一例として、一対の基端側ロッド64と、基端側プレート66と、一対のメインロッド68と、係合部材としての先端側プレート70と、シリンダ取付プレート74とによって構成されている。一対の基端側ロッド64、基端側プレート66、一対のメインロッド68、先端側プレート70、及びシリンダ取付プレート74は、例えば金属材料によって構成されている。
【0033】
一対の基端側ロッド64は、ベース部32の下面から下方側へ突出している。これらの基端側ロッド64は、円柱状に形成されており、上下方向を軸線方向とし且つ前後方向に平行に並んで配置されている。これらの基端側ロッド64は、例えば溶接等の手段でベース部32に固定されている。
【0034】
基端側プレート66は、前後方向を長手とし且つ上下方向を板厚方向とする長尺な板状に形成されており、一対の基端側ロッド64の下方側に配置されている。基端側プレート66の長手方向両端部は、例えば溶接等の手段により、一対の基端側ロッド64の下端部に固定されている。
【0035】
一対のメインロッド68は、基端側プレート66の長手方向中間部の下面から下方側へ突出している。これらのメインロッド68は、例えば金属材料によって長尺な円柱状に形成されており、上下方向を軸線方向とし且つ前後方向に平行に並んで配置されており、例えば溶接等の手段で基端側プレート66に固定されている。
【0036】
先端側プレート70は、前後方向を長手とし且つ上下方向を板厚方向とする長尺な板状をなす板状部70Aと、板状部70Aの下面から下方側へ突出した一対の突出部70Bとによって構成されており、一対のメインロッド68の下方側に配置されている。板状部70Aの長手方向両端部は、例えば溶接等の手段により、一対のメインロッド68の下端部に固定されている。一対の突出部70Bは、上下方向を長手方向とする直方体状をなしている。これらの突出部70Bは、板状部70Aの長手方向中間部の下面から下方側へ突出し、互いに前後方向に間隔をあけて並んでいる。この先端側プレート70には、板状部70A及び一対の突出部70Bを上下方向に貫通した一対の貫通孔72が形成されている。一対の貫通孔72は、上下方向から見て円形状をなしており、前後方向に平行に並んで配置されている。
【0037】
シリンダ取付プレート74は、上下方向を長手方向とし且つ左右方向を板厚方向とする長尺板状に形成されており、先端側プレート70の板状部70Aに対する上方側に配置されている。このシリンダ取付プレート74は、板状部70Aにおける左右方向(幅方向)の中央部に対して左方側にずれて配置されている。シリンダ取付プレート74の下端部は、例えば溶接等の手段で板状部70Aに固定されている。このシリンダ取付プレート74には、軽量化のために一対の軽減孔76(
図6及び
図7以外では図示省略)が上下方向に並んで形成されている。
【0038】
このシリンダ取付プレート74の左方側には、前述した電動シリンダ52のシリンダ本体54が配置されている。シリンダ本体54は、ボルト締結等の手段でシリンダ取付プレート74に固定されている。これにより、電動シリンダ52が支持部材62を介してベース部32に支持されている。この電動シリンダ52のガイド60には、移動部材78が取り付けられている。
【0039】
移動部材78は、一例として、連結プレート80と、一対の移動ロッド82とによって構成されている。連結プレート80及び一対の移動ロッド82は、例えば金属材料によって構成されている。連結プレート80は、上下方向を板厚方向とする矩形板状に形成されている。この連結プレート80の一端側は、ガイド60の上面に重ね合わされており、ボルト締結等の手段でガイド60に固定されている。
【0040】
一対の移動ロッド82は、連結プレート80の他端側の下方側に配置されている。一対の移動ロッド82は、上下方向を軸線方向とする長尺な円柱状に形成され、前後方向に平行に並んで配置されている。一対の移動ロッド82の上端部は、例えば溶接等の手段で連結プレート80に固定されている。一対の移動ロッド82の下端部は、前述した先端側プレート70の一対の貫通孔72内に挿入されている。これらの移動ロッド82を有する移動部材78は、電動シリンダ52の駆動力(すなわちステッピングモータ56の駆動力)によって、
図6及び
図8Aに示される第1位置と、
図7及び
図8Bに示される第2位置との間で往復移動される。
【0041】
図6~
図8Bに示されるように、一対の永久磁石84は、上下方向を軸線方向とする円柱状に形成されており、一対の移動ロッド82の下方側にそれぞれ配置されている。一対の永久磁石84は、一対の移動ロッド82と同軸的に配置されており、例えば皿小ねじまたはビス等の手段で一対の移動ロッド82の下端部に固定されている。これらの移動ロッド82を有する移動部材78が第1位置に位置する状態では、
図6及び
図8Aに示されるように、一対の永久磁石84の下面が先端側プレート70の一対の突出部70Bの下面と略同一面上に配置される。この状態では、
図8Aに示されるように、磁性体を含んだワークWを一対の永久磁石84に吸着可能となる。この状態は、ハンド部50にワークWが保持された保持状態である。
【0042】
上記の保持状態から移動部材78が
図7及び
図8Bに示される第2位置へ移動されると、一対の永久磁石84が一対の突出部70Bよりも上方側へ変位する。この際には、一対の突出部70Bの下面にワークWが係合し、一対の永久磁石84からワークWが脱落するようになっている(
図8B参照)。このように移動部材78が第2位置に位置する状態は、上記の保持を解除する保持解除状態である。つまり、上記構成のハンド部50は、ワークWを保持する保持状態と当該保持を解除する保持解除状態とにモータ56の駆動力を用いて切り替えられる構成になっている。
【0043】
(作用及び効果)
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0044】
上記構成のロボットハンド30は、バッテリ34と、ワイヤレス充電ユニット40と、通信ユニット38と、コントローラ42と、ハンド部50とを備えており、ロボットアーム10のヘッド10Aに取り付けられて使用される。ワイヤレス充電ユニット40は、ロボットアーム10の周辺に設置された送電部14から無線で送電される電力を受電し、バッテリ34の充電を行う。通信ユニット38は、バッテリ34から電力を供給され、ロボットアーム10の周辺に設置された制御装置12との間で無線通信を行う。コントローラ42は、バッテリ34から電力を供給され、通信ユニット38を介して制御装置12と通信する。ハンド部50は、バッテリ34から電力を供給され、コントローラ42によって作動を制御されるモータ56を有している。このハンド部50は、ワークWを保持する保持状態と当該保持を解除する保持解除状態とにモータ56の駆動力を用いて切り替えられる。このロボットハンド30では、ロボットアーム10側から配線や配管を配索する必要がない。これにより、ロボットアーム10の動作の制約を従来よりも少なくすることができる。その結果、例えばワークWの組付作業を行う製造現場の設備を簡素化することが可能となる。
【0045】
上記の効果について、
図9~
図17を用いて補足説明する。本実施形態では、ロボットハンド30によって保持されるワークWが組付方向の方向性を持っている。このワークWは、一例として、
図9に示されるA、B、C、Dの4つの面を有している。このワークWを製品に組み付ける際には、上記4つの面を
図9に示される方向に向ける必要がある。
【0046】
実際の製造現場では、上記のようなワークWが搬送コンベアによってロボットアーム10の近くに搬送され、ロボットアーム10によって保持(ピッキング)される場合がある。その場合、搬送コンベア上のワークWは不規則に置かれており、向きが揃っていないため、ロボットアーム10によってワークWを保持した後でワークWの向きを変更する必要が生じる。
【0047】
この点、例えば
図17に示される比較例のように、ロボットアーム100側からロボットハンド102側へエア配管104が配索される構成では、ロボットアーム100の動作に制約が生じるため、ワークWの向き変更をロボットアーム100によって行うことが困難である。このため、この比較例では、ワークWの向き変更するための専用装置106をロボットアーム10の周辺に設置し、当該専用装置106でワークWの向きを変更する。
【0048】
具体的には、上記の比較例では、ホッパ107から搬送コンベア108上に落下し、当該搬送コンベア108によって搬送されてくるワークWを、ロボットアーム100のロボットハンド102でピックアップする。この際には、2次元カメラ110によって平面方向のワークWの形状と向きが認識され、その情報がロボットアーム10の座標系に転送され、ロボットアーム10がロボットハンド30によりワークWをピッキング可能となる。ただし、ここでのピックアップにおいてもケーブルの制約のため、ピックアップできない条件も発生する。その後、ピックアップしたワークWを向き検出用カメラ112で撮像し、その画像を認識することにより、ワークWの形状と向き(姿勢)を確認する。確認したワークWの向きが適切でない場合、上記の専用装置106にワークWをセットし、当該専用装置106でワークWの向きを変更する。その後、ワークWを再度ロボットハンド102でピックアップし、
図17の矢印Sの方向に配置された図示しないセット治具にワークWをセットする。この比較例では、上記のような専用装置106が必要となるため、製造設備が複雑になり、製造コストが増加する原因となる。
【0049】
これに対し、本実施形態では、ロボットアーム10の動作の制約が少なくなるため、ワークWを仮置きするための簡素な仮置台(一例として、
図1及び
図10~
図16に示される仮置台20参照)があれば、ワークWの向きを変更可能となり、製造設備が簡素になる。なお、
図1及び
図10~
図16において矢印FR、矢印LH、矢印UPは、ロボットアーム10の前方、左方、上方をそれぞれ示している。
【0050】
上記の仮置台20は、ワークWを仮置き可能な仮置部22を有している。
図10に示されるように、ワークWは、長手方向がロボットアーム10の前後方向に沿う姿勢で仮置部22に仮置きされる。この仮置部22は、仮置きされたワークWに対してロボットアーム10の前後方向両側から係合する一対の係合部22Aを有している。一対の係合部22Aは、ロボットアーム10の前後方向において対称な形状に形成されており、ロボットアーム10の上下方向から見て互いに対向する側が開放されたコの字状をなしている。各係合部22Aにおける左右方向の両端部には、仮置きされたワークWに対して左右方向両側から係合する係合片22A1が形成されている。なお、
図10以外では、係合部22A及び係合片22A1の符号を省略している。
【0051】
上記の仮置部22には、ロボットアーム10の上方側からワークWが仮置きされる。上記の仮置部22に仮置きされたワークWに対しては、
図11~
図16に示される6つの向きでロボットハンド30を接近させることができ且つ永久磁石84で保持することができる。なお、
図11と
図12とに示される状態、
図13と
図14とに示される状態、及び
図15と
図16とに示される状態では、それぞれロボットアーム10の第6軸回りのロボットハンド30の向きが180度反転している。
図11~
図16に示されるロボットアーム10の動作は、上記比較例のようなエア配管104が省略されることで実現される。これにより、上記比較例のような専用装置106を用いずにワークWの向きを変更可能となる。
【0052】
しかも、本実施形態では、上記比較例のようなエア配管104が不要となることにより、ロボットハンド30の高速動作が可能となり、ロボットアーム10の性能を十分に発揮可能となる。また、エア配管104の巻き付きや切断などのトラブルを回避できるので、エア配管104を取り回すためのトライ&エラーの確認作業や、専門知識、ノウハウ等が不要となる。さらに、ロボットハンド30に接続するエア配管104が不要となったことにより、スペアのロボットハンド30とのツールチェンジや載せ替えが容易になる。すなわち、例えばロボットハンド30とロボットアーム10のヘッド10Aとの間に手動式のツールチェンジユニットを取り付ければ、使用中のロボットハンド34のバッテリ容量が低下した際に、予備のロボットハンド30とのツールチェンジが可能となる。予備のロボットハンド30は、例えば送電部14付近に置いておくことで、当該予備のロボットハンド30のバッテリ34を充電させることができる。この予備ロボットハンド30と使用中のロボットハンド30とを交換するだけで連続稼働が可能となる。
【0053】
また、本実施形態では、バッテリ34とハンド部50のモータ56との間に接続されたコンバータ44が、バッテリ34からモータ56に供給される電力を安定させる。これにより、バッテリ34の電圧変動の影響を受けずに、モータ56すなわちハンド部50を動作させることができる。
【0054】
また、本実施形態では、ハンド部50は、移動部材78と、一対の永久磁石84と、係合部材である先端側プレート70とを有している。移動部材78は、電動シリンダ52のモータ56の駆動力により第1位置と第2位置との間で往復移動する。一対の永久磁石84は、移動部材78に取り付けられている。これらの永久磁石84は、移動部材78が第1位置に位置する状態では、鉄などの磁性体からなるワークWを吸着可能となる。先端側プレート70は、移動部材78が第1位置から第2位置へと移動する際に、一対の永久磁石84に吸着されているワークWと係合し、一対の永久磁石84からワークWを脱落させる。これにより、鉄等からなるワークWの保持及び保持解除を、簡素な構成で行うことができる。
【0055】
また、本実施形態では、
図2に示されるスイッチ46をロボットハンド30に設け、当該スイッチ46をバッテリ34と通信ユニット38との間に接続してもよい。これにより、例えばハンド部50の動作を必要としない待機時間が長い場合、上記のスイッチ46により、バッテリ34から通信ユニット38への電力の供給を遮断することができる。その結果、通信のために必要な電力によって、ハンド部50の動作時間が短くなることを抑制できる。
【0056】
また、上記のスイッチ46は、操作部46Aが回動されることでオン/オフ状態が切り替わる機械式のスイッチである。このため、例えばロボットアーム10の動作により、スイッチ46の操作部46Aをロボットアーム10の周辺物に当てて回動させることにより、機械式スイッチ46のオン/オフ状態を切り替えることができる。このため、ロボットアーム10の動作により、バッテリ34から通信ユニット38への電力の供給及び遮断を切り替えることができる。
【0057】
なお、上記実施形態では、ハンド部50は、電動シリンダ52によって永久磁石84を変位させる構成としたが、これに限るものではない。例えば、ハンド部は、電動式の平行ハンドやチャックタイプであってもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、ハンド部50は、電動シリンダ52が有するモータ56の駆動力を用いて保持状態と保持解除状態とに切り替えられる構成にしたが、これに限るものではない。例えば、ハンド部は、モータを動力源とする電動ユニット(例えばコンプレッサ等)によって生み出される圧縮空気の圧力でエアシリンダを作動させることにより、ワークを保持するものでもよい。その場合、例えば上記の電動ユニットがベース部32に取り付けられ、当該電動ユニットのモータの駆動力を間接的に用いて保持状態と保持解除状態とに切り替える構成となる。また例えば、ハンド部は、電動バキュームポンプの吸引力を用いてワークを保持するものでもよい。その場合、例えば電動バキュームポンプがベース部32に取り付けられ、当該電動バキュームポンプのモータの駆動力を間接的に用いて保持状態と保持解除状態とに切り替える構成となる。
【0059】
その他、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲が上記実施形態に限定されないことは勿論である。
【符号の説明】
【0060】
10 ロボットアーム
12 制御装置
14 送電部
30 ロボットハンド
34 バッテリ
38 通信ユニット
40 ワイヤレス充電ユニット
42 コントローラ
44 コンバータ
46 スイッチ
46A 操作部
50 ハンド部
56 モータ
78 移動部材
84 永久磁石
70 先端側プレート(係合部材)