(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-09
(45)【発行日】2022-08-18
(54)【発明の名称】切断装置、及び、切断品の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20220810BHJP
B24B 27/06 20060101ALI20220810BHJP
B28D 1/24 20060101ALI20220810BHJP
【FI】
H01L21/78 F
B24B27/06 J
B28D1/24
(21)【出願番号】P 2020190780
(22)【出願日】2020-11-17
【審査請求日】2021-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】390002473
【氏名又は名称】TOWA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【氏名又は名称】立花 顕治
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 創
(72)【発明者】
【氏名】黄 善夏
(72)【発明者】
【氏名】石橋 幹司
(72)【発明者】
【氏名】高橋 和宏
【審査官】内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-103648(JP,A)
【文献】特開2010-123683(JP,A)
【文献】特開2012-049260(JP,A)
【文献】特開2003-218064(JP,A)
【文献】特開2009-101617(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
B24B 27/06
B28D 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂成形された切断対象物において、前記切断対象物の厚さ方向にハーフカットを施すように構成された切断装置であって、
前記切断対象物を切断するブレードを有する切断機構を備え、
前記ブレードは、第1側面と、第2側面とを有し、
前記切断装置は、
前記第1側面に対向する位置に設けられた第1押さえ機構と、
前記第2側面に対向する位置に設けられた第2押さえ機構と
をさらに備え、
前記第1及び第2押さえ機構の各々は、
ローラによって構成されている押さえ部材を備え、
前記ローラは、前記切断対象物の切断時に、少なくとも一部が前記ブレードの側面に対向し、前記ローラの回転中心が前記ブレードの回転中心よりも前方の位置において、前記切断対象物を上方から下方に向けて押さえるように構成されており、
前記ハーフカットが施される場合に、前記第1及び第2押さえ機構の各々と前記切断対象物との相対的な位置関係は、前記切断機構と前記切断対象物との相対的な位置関係と同じように変化する、切断装置。
【請求項2】
前記切断装置は、前記ブレードの前方から加工液を吐出する吐出機構をさらに備え、
前記第1及び第2押さえ機構の各々は、前記ブレードの後方側から前記ブレードの回転中心側に向かって延びて、先端部に前記ローラが取付けられる弾性取付部材をさらに備える、請求項1に記載の切断装置。
【請求項3】
樹脂成形された切断対象物において、前記切断対象物の厚さ方向にハーフカットを施すように構成された切断装置であって、
前記切断対象物を切断するブレードを有する切断機構を備え、
前記ブレードは、第1側面と、第2側面とを有し、
前記切断装置は、
前記第1側面に対向する位置に設けられた第1押さえ機構と、
前記第2側面に対向する位置に設けられた第2押さえ機構とをさらに備え、
前記第1及び第2押さえ機構の各々は、前記切断対象物を上方から下方に向けて押さえるように構成されており、
前記ハーフカットが施される場合に、前記第1及び第2押さえ機構の各々と前記切断対象物との相対的な位置関係は、前記切断機構と前記切断対象物との相対的な位置関係と同じように変化し、
前記第1及び第2押さえ機構の各々は、
前記ブレードの後方よりも前方に近い位置に設けられた第1押さえ部材と、
前記ブレードの前方よりも後方に近い位置に設けられた第2押さえ部材とを備え、
前記第1及び第2押さえ部材の各々は、前記切断対象物を上方から下方に向けて押さえるように構成されており、
前記第1及び第2押さえ機構の各々は、
回転方向に力が働くように構成され、前記第1押さえ部材が取り付けられている第1回転部材と、
回転方向に力が働くように構成され、前記第2押さえ部材が取り付けられている第2回転部材と
をさらに備え、
前記第1押さえ部材と前記ブレードとの間の長さは、前記第1回転部材と前記ブレードとの間の長さよりも短く、
前記第2押さえ部材と前記ブレードとの間の長さは、前記第2回転部材と前記ブレードとの間の長さよりも短
い、切断装置。
【請求項4】
前記第1及び第2押さえ部材の各々は、ローラによって構成されている、請求項
3に記載の切断装置。
【請求項5】
側面視において、前記ブレードと重ならない位置まで、前記第1及び第2押さえ機構の各々を退避させるように構成された退避機構をさらに備える、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の切断装置。
【請求項6】
請求項1から請求項
5のいずれか1項に記載の切断装置を用いた切断品の製造方法であって、
第1厚みの前記ブレードが取り付けられた前記切断装置を準備するステップと、
前記切断対象物にハーフカットを施すステップと、
前記ブレードを前記第1厚みよりも薄い第2厚みのブレードに取り替えるステップと、
前記ハーフカットが施された位置に沿って、前記切断対象物を切断するステップと
を含む、切断品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切断装置、及び、切断品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2008-112961号公報(特許文献1)は、半導体装置の製造方法を開示する。この製造方法においては、ダイシングソーによるハーフカットが施されることによって、リードフレームに溝が形成される。その後、溝上にめっき層が形成され、幅の狭いダイシングソーによって溝に沿ってリードフレームが切断される。これにより、個片化された半導体装置が得られる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リードフレーム等の切断対象物が反っている場合がある。切断対象物が沿った状態で、切断対象物にハーフカットを施すと、切断対象物に形成される溝の深さがばらつく。上記特許文献1においては、このような問題の解決手段が開示されていない。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであって、その目的は、ハーフカットによって切断対象物上に形成される溝の深さのばらつきを低減可能な切断装置、及び、切断品の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある局面に従う切断装置は、樹脂成形された切断対象物において、切断対象物の厚さ方向にハーフカットを施すように構成されている。この切断装置は、切断機構を備える。切断機構は、切断対象物を切断するブレードを有する。ブレードは、第1側面と、第2側面とを有する。切断装置は、第1及び第2押さえ機構をさらに備える。第1押さえ機構は、第1側面に対向する位置に設けられている。第2押さえ機構は、第2側面に対向する位置に設けられている。第1及び第2押さえ機構の各々は、切断対象物を上方から下方に向けて押さえるように構成されている。ハーフカットが施される場合に、第1及び第2押さえ機構の各々と切断対象物との相対的な位置関係は、切断機構と切断対象物との相対的な位置関係と同じように変化する。
【0007】
本発明の他の局面に従う切断品の製造方法は、上記切断装置を用いた切断品の製造方法である。この切断品の製造方法は、第1厚みのブレードが取り付けられた切断装置を準備するステップと、切断対象物にハーフカットを施すステップと、ブレードを第1厚みよりも薄い第2厚みのブレードに取り替えるステップと、ハーフカットが施された位置に沿って、切断対象物を切断するステップとを含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ハーフカットによって切断対象物上に形成される溝の深さのばらつきを低減可能な切断装置、及び、切断品の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1に従う切断装置の平面の一部を模式的に示す図である。
【
図2】半導体パッケージを模式的に示す斜視図である。
【
図3】段差部の形成方法について説明するための図である。
【
図4】切断装置の一部を側方から示す模式図である。
【
図5】押さえ機構とブレードとの関係を側方から示す模式図である。
【
図7】押さえ機構とブレードとの関係を正面から示す模式図である。
【
図8】パッケージ基板にハーフカットを施す場合における、ブレードとローラとの位置関係を説明するための模式図である。
【
図9】比較対象である切断装置の一部を側方から示す模式図である。
【
図10】切断装置における押さえ機構60の有効性を説明するための図である。
【
図11】ブレードの径が小さくなった状態における、押さえ機構とブレードとの関係を側方から示す模式図である。
【
図12】押さえ機構の動作を説明するための模式図である。
【
図13】実施の形態2に従う切断装置の一部を側方から示す模式図である。
【
図14】実施の形態2において、押さえ機構とブレードとの関係を側方から示す模式図である。
【
図15】実施の形態2において、押さえ機構を模式的に示す平面図である。
【
図16】実施の形態2において、押さえ機構とブレードとの関係を正面から示す模式図である。
【
図17】実施の形態2において、ブレードの径が小さくなった状態における、押さえ機構とブレードとの関係を側方から模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一側面に係る実施の形態(以下、「本実施の形態」とも称する。)について、図面を用いて詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。また、各図面は、理解の容易のために、適宜対象を省略又は誇張して模式的に描かれている。また、各図面において各矢印が示す方向は、各図面において共通である。
【0011】
[1.実施の形態1]
<1-1.概要>
図1は、本実施の形態1に従う切断装置10の平面の一部を模式的に示す図である。
図1に示されるように、切断装置10は、切断テーブル30と、切断機構40とを含んでいる。
【0012】
切断テーブル30は、切断されるパッケージ基板20を保持する。切断テーブル30は、保持部材31と、回転機構32と、移動機構33とを含んでいる。保持部材31は、パッケージ基板20を下方から吸着することによって、パッケージ基板20を保持する。回転機構32は、保持部材31を図のθ方向に回転させることが可能である。移動機構33は、保持部材31を図のY軸に沿って移動させることが可能である。なお、パッケージ基板20においては、半導体チップが接続された基板又はリードフレームが樹脂封止されている。なお、後述する
図2を参照して説明する半導体パッケージ50の製造に用いるパッケージ基板20は、一例として示すリードフレームを用いたものである。
【0013】
切断機構40は、ブレード41を含んでいる。切断機構40は、ブレード41によりパッケージ基板20を切断することによって、パッケージ基板20を複数の半導体パッケージに個片化する。切断機構40は、図のX軸及びZ軸に沿って移動可能である。なお、切断装置10は、2つの切断機構40を有するツインスピンドル構成であってもよいし、1つの切断機構40を有するシングルスピンドル構成であってもよい。
【0014】
また、切断機構40は、ブレード41によりパッケージ基板20の一部を除去することによって、パッケージ基板20に溝を形成するように構成されている。すなわち、切断機構40は、パッケージ基板20において、パッケージ基板20の厚さ方向にハーフカットを施すことが可能である。切断装置10の名称(切断装置)に含まれる「切断」という用語の概念は、切断対象を複数に分離すること、及び、切断対象の一部を除去することを含む。
【0015】
切断装置10は、例えば、切断品の一例である半導体パッケージ50のようなウェッタブルQFN(Quad Flat No-leaded)の製造を可能とするために、パッケージ基板20にハーフカットを施す機能を有している。半導体パッケージ50、及び、半導体パッケージ50の製造方法について次に説明する。
【0016】
図2は、半導体パッケージ50を模式的に示す斜視図である。
図2に示されるように、半導体パッケージ50においては、図中の上面(端子52が形成されている面)と側面との境界部分に段差部51が形成されている。半導体パッケージ50が面実装された場合には、半田が段差部51に入り込む。これにより、半導体パッケージ50に関して、立体的な半田接続構造を実現することができる。また、半田が段差部51に入り込んでいるため、実装後の外観検査において、半導体パッケージ50の側面から半田フィレットを容易に観察することができる。
【0017】
図3は、段差部51の形成方法について説明するための図である。
図3を参照して、段差部51を形成するために、まず、第1の厚みを有するブレード41によってパッケージ基板20上に溝G1が形成される。その後、第2の厚み(第1の厚みよりも薄い)を有するブレード41により位置P1においてパッケージ基板20を切断することによって、パッケージ基板20が個片化される。これにより、段差部51が形成された複数の半導体パッケージ50が製造される。
【0018】
上述のように、半導体パッケージ50には、様々な利点が存在する。ハーフカットを行なうことによって、半導体パッケージ50に形成されている段差部51を実現することができる。切断装置10は、例えば、半導体パッケージ50を製造するために、パッケージ基板20にハーフカットを施す機能を有している。
【0019】
パッケージ基板20にハーフカットが施された場合に、なるべく均一な深さの溝がパッケージ基板20上に形成されることが重要である。切断装置10においては、ハーフカットによって形成される溝の深さのばらつきを抑制するための工夫が施されている。以下、切断装置10の構成等について詳細に説明する。
【0020】
<1-2.切断装置の構成>
図4は、切断装置10の一部を側方から示す模式図である。
図4に示されるように、切断装置10は、切断テーブル30と、切断機構40と、押さえ機構60と、吐出機構70とを含んでいる。
【0021】
押さえ機構60及び吐出機構70の各々は、切断機構40に取り付けられている。押さえ機構60は切断機構40の後方に取り付けられており、吐出機構70は切断機構40の前方に取り付けられている。なお、切断機構40の「前方」は、ブレード41の下方の位置に切断テーブル30が移動してくる場合に、切断テーブル30が進入してくる方向である。ブレード41は、Y軸方向において、押さえ機構60及び吐出機構70によって挟まれている。押さえ機構60は、ブレード41に対して、吐出機構70と反対側の位置に設けられている。これにより、押さえ機構60と吐出機構70との両方が、切断機構40に取り付け可能となっている。
【0022】
押さえ機構60は、切断テーブル30上に配置されるパッケージ基板20を上方から下方に向けて押さえるように構成されている。押さえ機構60の構成、及び、押さえ機構60が設けられている理由については後程詳しく説明する。
【0023】
吐出機構70は、各々が加工液を吐出するように構成された3つのノズル(例えば、第1、第2及び第3ノズル)を含む。第1ノズルは、ブレード41に向けて加工液を吐出する。第2ノズルは、ブレード41とパッケージ基板20との接触箇所(切断部分)に向けて加工液を吐出する。第3ノズルは、パッケージ基板20の切断時に発生する不要な端剤部分に向けて加工液を吐出する。なお、吐出機構70は、必ずしも3つのノズルを含む必要はない。例えば、吐出機構70は、1つ又は2つのノズルによって構成されてもよいし、4つ以上のノズルによって構成されてもよい。吐出機構70は、たとえば貯水タンク又は水道から供給される加工液を吐出する。吐出機構70によって加工液が回転中のブレード41に噴射されると、ブレード41に多くの加工液が接触し、ブレード41がより効果的に冷却される。また、加工液が切断部分に噴射されると、加工点に多くの加工液が供給され、切断時に発生する熱を抑制することができ、パッケージ基板20を適切に切断することができる。また、加工液が端材部分に噴射されることで、切断テーブル30上に残存する端材部分を除去することができる。
【0024】
図5は、押さえ機構60とブレード41との関係を側方から示す模式図である。
図6は、押さえ機構60を模式的に示す平面図である。
図7は、押さえ機構60とブレード41との関係を正面から示す模式図である。
【0025】
図5、
図6及び
図7を参照して、押さえ機構60は、第1押さえ機構61と、第2押さえ機構62とを含んでいる。第1押さえ機構61はブレード41の一方の側面に近い位置に設けられており、第2押さえ機構62はブレード41の他方の側面に近い位置に設けられている。ブレード41によるパッケージ基板20の切断時に、ブレード41は、第1押さえ機構61及び第2押さえ機構62によって挟まれた領域に位置している。すなわち、ブレード41によるパッケージ基板20の切断時に、側面視において、第1押さえ機構61の一部分はブレード41の一方の側面と対向し、第2押さえ機構62の一部分はブレード41の他方の側面と対向する。
【0026】
第1押さえ機構61及び第2押さえ機構62の各々は、パッケージ基板20(
図1)を上方から下方に向けて押さえるように構成されている。第1押さえ機構61及び第2押さえ機構62の各々は、板バネ610と、押さえユニット620と、ベース部材630,640と、ネジ624,625,631,633,634とを含んでいる。
【0027】
ベース部材630,640,650の各々は、例えば、金属で構成されている。ベース部材650は、高さ方向に延びる板状の部材であり、切断機構40の後端部に取り付けられている。ベース部材650の両側面の各々には、孔H1,H2が形成されている。孔H1,H2の各々は、縦長の孔である。孔H1,H2にネジを通すことで、ベース部材650が切断機構40に固定される。孔H1,H2の各々において、ネジ留めする高さ方向の位置を変更することによって、押さえ機構60の高さ方向における位置を変更することができる。
【0028】
ベース部材640は、ベース部材650の下端部から前方に延びる部材であり、ベース部材650に取り付けられている。ベース部材630は、ベース部材640の上面に取り付けられている棒状の部材であり、ベース部材640から前方に延びている。ベース部材630,640の各々にはネジ穴が形成されており、ベース部材630,640はネジ633,634によって互いにネジ留めされている。ベース部材630,640の各々に形成されている孔H3は、前後方向に長い形状を有し、ネジ留め位置を調整することによって、ローラ622の前後方向における位置を調整することができる。
【0029】
ベース部材630の下面には、斜め下方に延びる板バネ610が取り付けられている。板バネ610は、例えば、金属製である。板バネ610にはネジ穴が形成されており、ベース部材630と板バネ610とはネジ632によって互いにネジ留めされている。ネジ631は、ベース部材630のネジ穴を貫通しており、板バネ610を上方から押さえる。板バネ610において、ネジ631によって押さえられる位置は、ネジ632によってベース部材630にネジ留めされる位置よりも前方である。ネジ631の高さ方向の位置を調整することによって、板バネ610の曲がり具合が調整される。これにより、板バネ610の弾性力が調整される。
【0030】
板バネ610の先端部には、押さえユニット620が取り付けられている。
押さえユニット620は、ベース部材621と、ローラ622と、回転軸623と、ネジ624,625とを含んでいる。ベース部材621は、例えば、金属又は樹脂で構成されている。ベース部材621にはネジ穴が形成されており、ベース部材621と板バネ610とはネジ624,625によって互いにネジ留めされている。平面視においてベース部材621の先端部には凹部が形成されており、該凹部にローラ622が位置している。ローラ622は、回転軸623を介してベース部材621に取り付けられており、ベース部材621に対して回転可能である。回転軸623は、X軸方向(ブレード41の厚み方向)に延びている。ローラ622は、例えば、ゴム又は樹脂で構成されている。ローラ622は、本発明の「押さえ部材」の一例である。ゴム又は樹脂のような弾性のあるローラ622を用いることで、ローラ622で押さえた痕がパッケージ基板20に付くことを低減することができる。また、ハーフカット時に発生するバリの押し潰しを低減することができる。
【0031】
ローラ622の下方にパッケージ基板20が存在しない状態で、ローラ622の下端は、ブレード41の下端位置を示す仮想面Z1よりも下方に位置する。したがって、パッケージ基板20の切断時にはローラ622の下端がブレード41の下端よりも高い位置にくるため、板バネ610の弾性力によってローラ622がパッケージ基板20を押下する。
【0032】
図8は、パッケージ基板20にハーフカットを施す場合における、ブレード41とローラ622との位置関係を説明するための模式図である。
図8に示されるように、パッケージ基板20にハーフカットを施す場合に、ブレード41はパッケージ基板20の一部を削り取る。そのため、ブレード41は、高さ方向において、パッケージ基板20の上面よりも下方に進入する。一方、ハーフカットの形成時、ローラ622は、パッケージ基板20の上面を押下する。したがって、ローラ622の下端は、ブレード41の下端よりも高い位置にくる。
【0033】
また、Y軸方向におけるローラ622の回転中心の位置(位置P6)は、Y軸方向におけるブレード41の回転中心の位置(位置P5)よりも前方に位置している。これは、ブレード41によるパッケージ基板20の切込み開始位置(位置P7)が、Y軸方向におけるブレード41の回転中心の位置(位置P5)よりも前方に位置しているためである。切断装置10によれば、ローラ622の回転中心の位置がブレード41の回転中心の位置よりも前方に位置しているため、切込み開始位置により近い位置においてパッケージ基板20をローラ622によって押さえることができる。次に、切断装置10において押さえ機構60が設けられている理由について説明する。
【0034】
<1-3.押さえ機構が設けられている理由>
図9は、比較対象である切断装置10Xの一部を側方から示す模式図である。
図9に示されるように、切断装置10Xは、押さえ機構を有していない。例えば、パッケージ基板20が反っている場合がある。パッケージ基板20が反った状態で、パッケージ基板20にハーフカットを施すと、位置によって溝の深さがばらつくという問題が生じる。例えば、位置P2において形成される溝の深さよりも位置P3において形成される溝の深さの方が深く、位置P3において形成される溝の深さよりも位置P4において形成される溝の深さの方が深いということが生じる。本実施の形態1に従う切断装置10においては、このような問題を解消するために、押さえ機構60が設けられている。
【0035】
図10は、本実施の形態1に従う切断装置10における押さえ機構60の有効性を説明するための図である。
図10に示されるように、切断装置10においては、パッケージ基板20にハーフカットを施す場合に、パッケージ基板20の切断開始箇所に隣接する位置がローラ622によって押下される。ローラ622によって押下されることによってパッケージ基板20の反りが抑制された状態で、パッケージ基板20にハーフカットが施される。したがって、切断装置10によれば、パッケージ基板20の反りが抑制された状態でパッケージ基板20のハーフカットが行なわれるため、ハーフカットによって形成される溝の深さのばらつきを抑制することができる。
【0036】
図11は、ブレード41の径が小さくなった状態における、押さえ機構60とブレード41との関係を側方から示す模式図である。
図11に示されるように、ブレード41の径が小さくなったとしても、ローラ622は、板バネ610の弾性力によって下方に付勢されるため、切断対象物を上方から下方に向けて押さえつけることができる。
【0037】
図12は、押さえ機構60の動作を説明するための模式図である。
図12に示されるように、押さえ機構60が取り付けられた切断機構40の一部には回転軸J1が設けられており、該切断機構40の一部は回転するように構成されている。すなわち、該切断機構40の一部が回転することによって、押さえ機構60が、側面視においてブレード41と重なる位置から退避する。その結果、ブレード41の交換を容易に行なうことができる。このように、本実施の形態1に従う切断装置10は、側面視においてブレード41と重ならない位置まで押さえ機構60を退避させるように構成された、回転軸J1を含む退避機構を含んでいるといえる。
【0038】
<1-4.切断装置の動作>
例えば、以下の方法により、半導体パッケージ50(
図2)が製造される。切断装置10において、第1の厚みのブレード41が取り付けられる。
【0039】
その後、切断装置10においては、切断機構40の前方から、切断テーブル30がブレード41の下方に進入する。切断テーブル30の進入に伴なって、押さえ機構60が切断テーブル30上のパッケージ基板20を上方から下方に向けて押さえると共に、ブレード41によるパッケージ基板20のハーフカットが始まる。押さえ機構60は切断機構40に取り付けられているため、ハーフカットが施される場合に、押さえ機構60とパッケージ基板20との相対的な位置関係は、切断機構40とパッケージ基板20との相対的な位置関係と同じように変化する。
【0040】
パッケージ基板20のハーフカットが完了すると、切断装置10において、ブレード41が取り替えられる。取り替え後のブレード41は、第2の厚み(第1の厚みよりも薄い)を有する。
【0041】
その後、切断装置10においては、切断機構40の前方から、切断テーブル30がブレード41の下方に進入する。切断テーブル30の進入に伴なって、押さえ機構60が切断テーブル30上のパッケージ基板20を上方から下方に向けて押さえると共に、ブレード41によるパッケージ基板20の切断が始まる。ハーフカットによって形成された溝に沿って、パッケージ基板20の切断が行なわれることによって、複数の半導体パッケージ50が完成する。
【0042】
<1-5.特徴>
以上のように、本実施の形態1に従う切断装置10は、押さえ機構60を備えており、パッケージ基板20にハーフカットが施される場合に、第1押さえ機構61及び第2押さえ機構62の各々とパッケージ基板20との相対的な位置関係は、切断機構40とパッケージ基板20との相対的な位置関係と同じように変化する。切断装置10においては、パッケージ基板20にハーフカットを施す場合に、パッケージ基板20がローラ622によって押下される。ローラ622によって押下されることによってパッケージ基板20の反りが抑制された状態で、パッケージ基板20にハーフカットが施される。したがって、切断装置10によれば、パッケージ基板20の反りが抑制された状態でパッケージ基板20のハーフカットが行なわれるため、ハーフカットによって形成される溝の深さのばらつきを抑制することができる。
【0043】
[2.実施の形態2]
上記実施の形態1に従う切断装置10は、押さえ機構60を含んでいた。本実施の形態2に従う切断装置80と、上記実施の形態1に従う切断装置10とは、主に押さえ機構の構造が異なる。以下では、上記実施の形態1と異なる部分を中心に説明する。
【0044】
<2-1.切断装置の構成>
図13は、本実施の形態2に従う切断装置80の一部を側方から示す模式図である。
図13に示されるように、切断装置80は、切断テーブル30と、切断機構40と、押さえ機構90と、吐出機構70とを含んでいる。
【0045】
押さえ機構90及び吐出機構70の各々は、切断機構40に取り付けられている。押さえ機構90は切断機構40の後方に取り付けられており、吐出機構70は切断機構40の前方に取り付けられている。ブレード41は、Y軸方向において、押さえ機構90及び吐出機構70によって挟まれている。押さえ機構90は、ブレード41に対して、吐出機構70と反対側の位置に設けられている。これにより、押さえ機構90と吐出機構70との両方が、切断機構40に取り付け可能となっている。押さえ機構90は、切断テーブル30上に配置されるパッケージ基板20を上方から下方に向けて押さえるように構成されている。
【0046】
図14は、押さえ機構90とブレード41との関係を側方から示す模式図である。
図15は、押さえ機構90を模式的に示す平面図である。
図16は、押さえ機構90とブレード41との関係を正面から示す模式図である。
【0047】
図14、
図15及び
図16を参照して、押さえ機構90は、第1押さえ機構91と、第2押さえ機構92とを含んでいる。第1押さえ機構91はブレード41の一方の側面に近い位置に設けられており、第2押さえ機構92はブレード41の他方の側面に近い位置に設けられている。ブレード41によるパッケージ基板20の切断時に、ブレード41は、第1押さえ機構91及び第2押さえ機構92によって挟まれた領域に位置している。すなわち、ブレード41によるパッケージ基板20の切断時に、側面視において、第1押さえ機構91の一部分はブレード41の一方の側面と対向し、第2押さえ機構92の一部分はブレード41の他方の側面と対向する。
【0048】
第1押さえ機構91及び第2押さえ機構92の各々は、パッケージ基板20を上方から下方に向けて押さえるように構成されている。第1押さえ機構91は、ベース部材940と、押さえユニット950,960とを含んでいる。第2押さえ機構92は、ベース部材910と、押さえユニット920,930とを含んでいる。
【0049】
ベース部材910,940,970の各々は、例えば、金属で構成されている。ベース部材910,940,970によって構成される部材は、略L字状の部材であり、切断機構40の後端部に取り付けられている。該部材の両側面の各々には、孔H4,H5が形成されている。孔H4,H5の各々は、縦長の孔である。孔H4,H5にネジを通すことで、該部材が切断機構40に固定されている。孔H4,H5の各々において、ネジ留めする高さ方向の位置を変更することによって、押さえ機構90の高さ方向における位置を変更することができる。また、ベース部材910,940の各々には、X軸方向(ブレード41の厚み方向)に延びる支え軸926が形成されている。
【0050】
押さえユニット920,930,950,960の各々は、回転部材921と、ローラ922と、回転軸923,925と、ねじりバネ924とを含んでいる。回転軸923,925の各々は、X軸方向に延びている。回転部材921は、例えば、金属製の板状部材であり、ベース部材910又はベース部材940に回転可能に取り付けられている。ベース部材910又はベース部材940と、回転部材921とは、回転軸925を介して取り付けられている。回転軸925の周囲には、ねじりバネ924が取り付けられている。
【0051】
回転部材921の先端部には、ローラ922が回転可能に取り付けられている。ローラ922は、例えば、ゴム又は樹脂で構成されている。回転部材921とローラ922とは、回転軸923を介して接続されている。ねじりバネ924の一端は回転軸923を下方に押さえ、ねじりバネ924の他端は支え軸926を下方に押さえる。これにより、ローラ922は、回転方向に付勢される。なお、ブレード41の厚み方向において、ローラ922は、回転部材921の内側に取り付けられている。すなわち、ローラ922とブレード41との間の長さは、回転部材921とブレード41との間の長さよりも短い。これにより、パッケージ基板20にハーフカットを施す場合に、ハーフカット位置により近い位置をローラ922によって押さえることができる。押さえユニット930,960に含まれている回転部材921は、本発明の「第1回転部材」の一例であり、該回転部材921に取り付けられているローラ922は、本発明の「第1押さえ部材」の一例である。また、押さえユニット920,950に含まれている回転部材921は、本発明の「第2回転部材」の一例であり、該回転部材921に取り付けられているローラ922は、本発明の「第2押さえ部材」の一例である。
【0052】
ローラ922の下方にパッケージ基板20が存在しない状態で、ローラ922の下端は、ブレード41の下端位置を示す仮想面Z2よりも下方に位置する。したがって、パッケージ基板20の切断時にはローラ922の下端がブレード41の下端よりも高い位置にくるため、ねじりバネ924の弾性力によってローラ922がパッケージ基板20を押下する。
【0053】
図17は、ブレード41の径が小さくなった状態における、押さえ機構90とブレード41との関係を側方から模式的に示す図である。
図17に示されるように、ブレード41の径が小さくなったとしても、ローラ922は、ねじりバネ924の弾性力によって下方に付勢されているため、切断対象物を上方から下方に向けて押さえつけることができる。
【0054】
なお、本実施の形態2に従う切断装置80においても、
図12によって示されたような退避機構が設けられている。
【0055】
<2-2.特徴>
以上のように、本実施の形態2に従う切断装置80は、押さえ機構90を備えており、パッケージ基板20にハーフカットが施される場合に、第1押さえ機構91及び第2押さえ機構92の各々とパッケージ基板20との相対的な位置関係は、切断機構40とパッケージ基板20との相対的な位置関係と同じように変化する。切断装置80においては、パッケージ基板20にハーフカットを施す場合に、パッケージ基板20がローラ922によって押下される。ローラ922によって押下されることによってパッケージ基板20の反りが抑制された状態で、パッケージ基板20にハーフカットが施される。したがって、切断装置80によれば、パッケージ基板20の反りが抑制された状態でパッケージ基板20のハーフカットが行なわれるため、ハーフカットによって形成される溝の深さのばらつきを低減することができる。
【0056】
[3.他の実施の形態]
上記実施の形態1,2の思想は、以上で説明された実施の形態1,2に限定されない。以下、上記実施の形態1,2の思想を適用できる他の実施の形態の一例について説明する。
【0057】
上記実施の形態1,2においては、保持部材31の上面が平らであった。しかしながら、保持部材31の上面は、必ずしも完全に平らである必要はない。例えば、パッケージ基板20の反りに合わせて、保持部材31の上面が反っていてもよい。この場合には、ブレード41の高さ位置を調整しながら、パッケージ基板20にハーフカットが施される。この場合であっても、保持部材31の上面よりもパッケージ基板20がさらに反っている場合に、押さえ機構が有効に機能する。
【0058】
また、上記実施の形態1,2においては、切断テーブル30がY軸方向に移動することによって、パッケージ基板20の切断が行なわれた。しかしながら、切断方法はこれに限定されない。切断テーブル30が可能な動作は回転動作のみとし、切断機構40をY軸方向に移動させることによって、パッケージ基板20の切断が行なわれてもよい。すなわち、切断テーブル30と切断機構40とを相対的に移動させてパッケージ基板20の切断が行なわれればよい。
【0059】
また、上記実施の形態1において、例えば、ベース部材630,640,650は、一体的に形成されてもよい。
【0060】
また、上記実施の形態2において、ベース部材910,940,970は、一体的に形成されてもよい。
【0061】
以上、本発明の実施の形態について例示的に説明した。すなわち、例示的な説明のために、詳細な説明及び添付の図面が開示された。よって、詳細な説明及び添付の図面に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須でない構成要素が含まれることがある。したがって、それらの必須でない構成要素が詳細な説明及び添付の図面に記載されているからといって、それらの必須でない構成要素が必須であると直ちに認定されるべきではない。
【0062】
また、上記実施の形態は、あらゆる点において本発明の例示にすぎない。上記実施の形態は、本発明の範囲内において、種々の改良や変更が可能である。すなわち、本発明の実施にあたっては、実施の形態に応じて具体的構成を適宜採用することができる。
【符号の説明】
【0063】
10,10X,80 切断装置、20 パッケージ基板、30 切断テーブル、31 保持部材、32 回転機構、33 移動機構、40 切断機構、41 ブレード、50 半導体パッケージ、51 段差部、52 端子、60,90 押さえ機構、61,91 第1押さえ機構、62,92 第2押さえ機構、70 吐出機構、610 板バネ、620,920,930,950,960 押さえユニット、621,630,640,650,910,940,970 ベース部材、622,922 ローラ、623,923,925,J1 回転軸、624,625,631,632,633,634 ネジ、921 回転部材、924 ねじりバネ、926 支え軸、G1 溝、H1,H2,H3,H4,H5 孔、P1,P2,P3,P4,P5,P6,P7 位置、Z1,Z2 仮想面。