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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-09
(45)【発行日】2022-08-18
(54)【発明の名称】抗PD-1のモノクローナル抗体
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20220810BHJP
   C12N 15/06 20060101ALI20220810BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20220810BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20220810BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220810BHJP
   C12N 5/12 20060101ALI20220810BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220810BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220810BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20220810BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C12N15/06 100
C12N15/63 Z
C07K16/28
C12N5/10
C12N5/12
A61K39/395 N
A61P35/00
A61P37/04
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020215952
(22)【出願日】2020-12-25
(62)【分割の表示】P 2019502126の分割
【原出願日】2016-10-28
(65)【公開番号】P2021058204
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2021-01-14
(31)【優先権主張番号】201610207741.6
(32)【優先日】2016-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【微生物の受託番号】CCTCC  CCTCC C201667
(73)【特許権者】
【識別番号】517031177
【氏名又は名称】アケソ・バイオファーマ・インコーポレイテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】518349215
【氏名又は名称】タイチョウ ハンチョン バイオファーマシューティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【弁理士】
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】ユー・シャ
(72)【発明者】
【氏名】バイヨン・リ
(72)【発明者】
【氏名】チョンミン・マクスウェル・ワン
(72)【発明者】
【氏名】ファミン・チャン
(72)【発明者】
【氏名】ガン・シー
(72)【発明者】
【氏名】イン・フゥァン
【審査官】小金井 悟
(56)【参考文献】
【文献】特許第6857232(JP,B2)
【文献】国際公開第2016/014688(WO,A2)
【文献】国際公開第2011/110621(WO,A1)
【文献】国際公開第2006/121168(WO,A1)
【文献】国際公開第2004/056875(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトPD-1タンパク質に結合特異性を有する抗体であって、
(1)配列番号:1、3、または5に示すアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号:2、4、または6に示すアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む抗体、または(2)(1)の抗原結合断片を含み、ヒトPD-1タンパク質に結合特異性を有する抗体である、
ことを特徴とする抗体。
【請求項2】
重鎖可変領域は、配列番号:5に示すアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域は、配列番号:6に示すアミノ酸配列を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
T細胞の活性化と増殖を促進し、サイトカインの発現と分泌を調節し、または抗腫瘍細胞を刺激してより強い免疫応答を生成することができる、
ことを特徴とする請求項1~2のいずれかに記載の抗体。
【請求項4】
1つまたは複数のポリヌクレオチドであって、
請求項1~3のいずれかに記載の抗体をコードする、
ことを特徴とするポリヌクレオチド。
【請求項5】
発現ベクターであって、
請求項4に記載のポリヌクレオチド、
任意的に、宿主細胞における前記ポリヌクレオチドの発現を制御するように、前記ポリヌクレオチドと操作可能に連結する制御要素を含む、
ことを特徴とする発現ベクター。
【請求項6】
前記宿主細胞は、哺乳動物細胞であることを特徴とする請求項5に記載の発現ベクター。
【請求項7】
前記哺乳動物細胞は、ヒト腎上皮細胞系細胞であることを特徴とする請求項6に記載の発現ベクター。
【請求項8】
記ヒト腎上皮細胞系細胞は、293T細胞であることを特徴とする請求項7に記載の発現ベクター。
【請求項9】
前記制御要素は、
プロモーター、エンハンサー、及びターミネーターから選択される少なくとも1つを含み、
任意的に、前記プロモーターは、CMVプロモーターであり、前記エンハンサーは、初期CMVエンハンサーであり、前記ターミネーターは、SV polyAターミネーターである、
ことを特徴とする請求項5~のいずれかに記載の発現ベクター。
【請求項10】
組み換え細胞であって、
請求項~9のいずれかに記載の発現ベクターを含む、
ことを特徴とする組み換え細胞。
【請求項11】
腫瘍の治療に用いられる請求項1~のいずれかに記載の抗体、請求項に記載のポリヌクレオチド、請求項~9のいずれかに記載の発現ベクター、または請求項10に記載の組み換え細胞。
【請求項12】
医薬組成物であって、
請求項1~のいずれかに記載の抗体、請求項に記載のポリヌクレオチド、請求項~9のいずれかに記載の発現ベクター、または請求項10に記載の組み換え細胞を含む、
ことを特徴とする医薬組成物。
【請求項13】
前記医薬組成物は、免疫強化剤を更に含み、
好ましくは、前記免疫強化剤は、抗CTLA-4抗体、抗CD40抗体、ブデソニド及びサリチル酸塩からなる群から選択される少なくとも1つを含み、
好ましくは、前記サリチル酸塩は、スルファサラジン、オルサラジン、バルサラジド及びメサラジンから選択される少なくとも1つを含む、
ことを特徴とする請求項12に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物医薬分野に関し、特に、抗PD-1のモノクローナル抗体に関する。
【背景技術】
【0002】
プログラム化細胞死因子(PD-1)(別称:CD279、遺伝子名:PDCD1、登録番号:NP_005009)は、免疫システムの刺激シグナルと阻害シグナルとのバランスの調節、及び末梢性トレランスの維持に対して、重要な作用を発揮する細胞表面受容体であり、同時にCD28と同一性を有する免疫グロブリンスーパーファミリーの阻害メンバーとする。PD-1は、モノマーI型膜貫通タンパク質であり、免疫グロブリン可変領域系細胞外構成域(immunoglobulin variable region-like extracellular domain)、及び免疫受容体チロシン依存性抑制モチーフ(ITIM)と免疫受容体チロシン依存性スイッチモチーフ(ITSM)を含有する細胞質ドメインからなる。T細胞、B細胞、ナチュラル・キラー(NK)細胞と単球にPD-1の発現を誘導でき、例えば、T細胞受容体(TCR)またはB細胞受容体(BCR)シグナル伝達によりリンパ球を活性化した。PD-1が既知の二つのリガンドを有し、即ち、PD-L1(B7-H1、CD274)とPD-L2(B7-DC、CD273)であり、これらは、細胞表面に発現されるB7ファミリーのメンバーである。リガンドと結合する場合、PD-1がホスファターゼ(例えば、SHP-1とSHP-2)をその細胞内のチロシンモチーフに動員する。その後、前記チロシンモチーフが、TCRまたはBCRシグナル伝達により活性化されたエフェクタ分子を脱リン酸化させる。これにより、TCRまたはBCRと同時に結合する場合のみ、PD-1が抑制性シグナルをT細胞とB細胞に伝達することができる。
【0003】
しかしながら、現在、PD-1を特異的に認識する抗体を改善することが求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記の技術課題の1つを一定の程度で解決し、または有用の商用利用可能な選択を提供することである。そのため、本発明の1つの目的は、抗PD-1のモノクローナル抗体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の側面において、本発明は、抗PD-1のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片を提供する。本発明の実施例によれば、前記抗体またはその抗原結合断片は、(1)配列番号:1に示すアミノ酸配列、(2)配列番号:3に示すアミノ酸配列、(3)配列番号:5に示すアミノ酸配列、(4)(1)~(3)と比べて、少なくとも1つの保守的アミノ酸突然変異(conservative amino acid mutation)を有するアミノ酸配列から選択される少なくとも1つのアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む。
【0006】
本発明の実施例によれば、前記抗体またはその抗原結合断片は、(5)配列番号:2に示すアミノ酸配列、(6)配列番号:4に示すアミノ酸配列、(7)配列番号:6に示すアミノ酸配列、(8)(5)~(7)と比べて、少なくとも1つの保守的アミノ酸突然変異を有するアミノ酸配列から選択される少なくとも1つのアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を更に含む。
【0007】
本発明の実施例によれば、前記抗体またはその抗原結合断片は、
配列番号:1に示すアミノ酸配列(EVQLVQSGGGLVQPGGSLKLSCAASGFTFSSYGMSWVRQTPEKGLDWVATISGGGRDTYYPDSVKGRFTISRDNSKNNLYLQMNSLRAEDTALYYCARQKGEAWFAYWGQGTLVTVSS)を有する重鎖可変領域と、
配列番号:2に示すアミノ酸配列(DIVLTQSPASLAVSPGQRATITCRASESVDNYGISFMNWFQQKPGQPPKLLIYAASNKGTGVPARFSGSGSGTDFTLNIHPMEENDTAMYFCQQSKEVPWTFGGGTKLEIK)を有する軽鎖可変領域と、を含む。
【0008】
本発明の実施例によれば、前記抗体またはその抗原結合断片は、
配列番号:3に示すアミノ酸配列(EVQLVQSGGGLVQPGGSLKLSCAASGFTFSSYGMSWVRQAPGKGLDWVATISGGGRDTYYPDSVKGRFTISRDNSKNNLYLQMNSLRAEDTALYYCARQKGEAWFAYWGQGTLVTVSS)を有する重鎖可変領域と、
配列番号:4に示すアミノ酸配列(DIVLTQSPASLAVSPGQRATITCRASESVDNYGISFMNWFQQKPGQPPKLLIYAASNKGTGVPARFSGSGSGTDFTLNINPMEENDTAMYFCQQSKEVPWTFGGGTKLEIK)を有する軽鎖可変領域と、を含む。
【0009】
本発明の実施例によれば、前記抗体またはその抗原結合断片は、
配列番号:5に示すアミノ酸配列(EVQLVQSGGGLVQPGGSLKLSCAASGFTFSSYGMSWVRQAPGKGLDWVATISGGGRDTYYPDSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARQKGEAWFAYWGQGTLVTVSS)を有する重鎖可変領域と、
配列番号:6に示すアミノ酸配列(DIVLTQSPASLAVSPGQRATITCRASESVDNYGISFMNWYQQKPGQPPKLLIYAASNKATGVPARFSGSGSGTDFTLNINPMEANDTAVYFCQQSKEVPWTFGGGTKLEIK)を有する軽鎖可変領域と、を含む。
【0010】
本発明の実施例によれば、前記抗体またはその抗原結合断片の抗体は、モノクローナル抗体である。
【0011】
本発明の実施例によれば、前記抗体またはその抗原結合断片が、PD-1と特異的、効率的に結合でき、T細胞の活性化と増殖を促進し、サイトカインの発現と分泌を調節し、または抗腫瘍細胞を刺激してより強い免疫応答を生成することに用いられる。
【0012】
発明者が、本発明の実施例による抗体またはその抗原結合断片、PD-1を特異的に認識でき、かつT細胞の活性化と増殖を促進し、サイトカインの発現と分泌を調節し、抗腫瘍細胞を刺激してより強い免疫応答を生成できることを見出す。
【0013】
本発明の第2の側面において、本発明が、単離ポリヌクレオチドを提供する。本発明の実施例によれば、前記ポリヌクレオチドが前記抗体またはその抗原結合断片をコードする。
【0014】
本発明の実施例によれば、前記ポリヌクレオチドは、下記のヌクレオチド配列の少なくとも1つを有する。
【0015】
本発明の具体的な実施例によれば、前記ポリヌクレオチドが、配列番号:1に示すアミノ酸配列(即ち、H1L1の重鎖可変領域のアミノ酸配列)をコードする配列番号:7に示すヌクレオチド配列またはその相補配列を有する。
GAAGTGCAGCTGGTGCAGAGCGGAGGGGGACTGGTGCAGCCCGGCGGGTCTCTGAAGCTGAGTTGCGCCGCTTCAGGATTCACTTTTAGCTCCTACGGCATGTCCTGGGTGCGACAGACCCCCGAGAAAGGGCTGGACTGGGTCGCTACCATCTCTGGAGGCGGGAGAGACACATACTATCCTGATAGTGTCAAGGGCCGGTTCACAATTAGCAGAGACAACTCCAAAAACAATCTGTATCTGCAGATGAATAGCCTGAGGGCAGAAGATACCGCCCTGTACTATTGTGCCCGCCAGAAAGGAGAGGCTTGGTTTGCATACTGGGGACAGGGGACACTGGTCACCGTCAGCAGC(配列番号:7)。
【0016】
本発明の具体的な実施例によれば、前記ポリヌクレオチドが配列番号:3に示すアミノ酸配列(即ち、H2L2の重鎖可変領域のアミノ酸配列)をコードする配列番号:8に示すヌクレオチド配列またはその相補配列を有する。
GAGGTGCAGCTGGTGCAGTCTGGCGGCGGACTGGTGCAGCCCGGCGGGTCACTGAAGCTGAGCTGCGCCGCTTCCGGCTTCACCTTTAGCTCCTACGGAATGTCCTGGGTGCGACAGGCACCCGGGAAGGGGCTGGACTGGGTCGCTACTATCTCAGGAGGCGGGAGAGACACCTACTATCCTGATAGCGTCAAGGGCCGGTTCACAATTAGCCGGGACAACAGCAAGAACAATCTGTACCTGCAGATGAACAGCCTGAGGGCTGAGGATACTGCACTGTACTATTGTGCCCGCCAGAAGGGCGAAGCATGGTTTGCCTATTGGGGCCAGGGAACCCTGGTGACAGTCTCTAGT(配列番号:8)。
【0017】
本発明の具体的な実施例によれば、前記ポリヌクレオチドが配列番号:5に示すアミノ酸配列(即ち、H3L3の重鎖可変領域のアミノ酸配列)をコードする配列番号:9に示すヌクレオチド配列またはその相補配列を有する。
GAGGTGCAGCTGGTGCAGAGTGGAGGCGGGCTGGTGCAGCCCGGCGGGTCACTGAAGCTGAGCTGCGCCGCTTCCGGCTTCACCTTTAGCTCCTACGGAATGTCCTGGGTGCGACAGGCACCCGGGAAGGGGCTGGACTGGGTCGCTACTATCTCAGGAGGCGGGAGAGACACCTACTATCCTGATAGCGTGAAGGGCCGGTTCACAATTAGCCGGGACAACAGCAAGAACACTCTGTACCTGCAGATGAACTCTCTGAGGGCTGAGGATACAGCAGTCTACTATTGTGCCCGCCAGAAGGGCGAAGCATGGTTTGCCTATTGGGGCCAGGGAACCCTGGTGACAGTCTCTAGT(配列番号:9)。
【0018】
本発明の具体的な実施例によれば、前記ポリヌクレオチドが配列番号:2に示すアミノ酸配列(即ち、H1L1の軽鎖可変領域のアミノ酸配列)をコードする配列番号:10に示すヌクレオチド配列またはその相補配列を有する。
GATATTGTGCTGACTCAGAGCCCTGCTTCCCTGGCCGTGTCTCCAGGACAGCGAGCTACCATCACATGCAGAGCATCTGAGAGTGTGGACAACTACGGAATTAGTTTCATGAATTGGTTTCAGCAGAAGCCCGGCCAGCCCCCTAAACTGCTGATCTATGCCGCTAGCAACAAGGGCACCGGGGTGCCTGCTCGATTCTCAGGAAGCGGCTCCGGGACAGACTTTACTCTGAACATTCACCCAATGGAGGAAAATGATACAGCAATGTACTTCTGCCAGCAGAGCAAGGAGGTGCCCTGGACCTTTGGCGGGGGAACAAAGCTGGAAATCAAA(配列番号:10)。
【0019】
本発明の具体的な実施例によれば、前記ポリヌクレオチドが配列番号:4に示すアミノ酸配列(即ち、H2L2の軽鎖可変領域のアミノ酸配列)をコードする配列番号:11に示すヌクレオチド配列またはその相補配列を有する。
GATATTGTGCTGACTCAGAGCCCTGCTTCCCTGGCCGTGTCTCCAGGACAGCGAGCTACCATCACATGCAGAGCATCTGAGAGTGTGGACAACTACGGAATTAGTTTCATGAATTGGTTTCAGCAGAAGCCCGGCCAGCCCCCTAAACTGCTGATCTATGCCGCTAGCAACAAGGGCACCGGGGTGCCTGCTCGATTCTCAGGAAGCGGCTCCGGGACAGACTTTACTCTGAACATTAACCCAATGGAGGAAAATGATACAGCAATGTACTTCTGCCAGCAGAGCAAGGAGGTGCCCTGGACCTTTGGCGGGGGAACAAAGCTGGAAATCAAA(配列番号:11)。
【0020】
本発明の具体的な実施例によれば、前記ポリヌクレオチドが配列番号:6に示すアミノ酸配列(即ち、H3L3の軽鎖可変領域のアミノ酸配列)をコードする配列番号:12に示すヌクレオチド配列またはその相補配列を有する。
GACATCGTCCTGACTCAGAGCCCTGCTTCCCTGGCCGTGAGCCCAGGCCAGCGAGCAACCATCACATGCAGAGCCTCAGAGAGCGTGGACAACTACGGCATTAGCTTCATGAATTGGTATCAGCAGAAGCCCGGGCAGCCTCCCAAGCTGCTGATCTACGCCGCTTCCAACAAGGCCACTGGGGTGCCTGCTCGATTCTCCGGCTCTGGGAGTGGAACAGACTTTACTCTGAACATTAATCCAATGGAAGCTAATGATACAGCAGTGTATTTCTGCCAGCAGAGCAAGGAGGTCCCATGGACCTTCGGCGGCGGCACCAAGCTGGAGATCAAG(配列番号:12)。
【0021】
発明者が、本発明の実施例によれば、本発明のポリヌクレオチドを介して、PD-1を特異的に認識する抗体またはその抗原結合断片を合成することができる。PD-1を特異的に認識する抗体またはその抗原結合断片の前記特徴及びメリットについて、前記ポリヌクレオチドにも適用できるため、ここで、詳細な説明は省略する。
【0022】
本発明の第3の側面において、本発明が発現ベクターを提供する。前記発現ベクターが前記ポリヌクレオチドを含む。
【0023】
本発明の具体的な実施例によれば、前記発現ベクターは、
宿主細胞における前記ポリヌクレオチドの発現を制御するように、前記ポリヌクレオチドと操作可能に連結する制御要素を更に含む。
【0024】
本発明の具体的な例示によれば、前記宿主細胞は、哺乳動物細胞でも良い。前記哺乳動物細胞は、ヒト腎上皮細胞系細胞でも良い。
【0025】
本発明の具体的な例示によれば、前記ヒト腎上皮細胞系細胞は、293T細胞でも良い。
【0026】
本発明の具体的な実施例によれば、前記制御要素は、
プロモーター、エンハンサー、及びターミネーターから選択される少なくとも1つを含み、
任意的に、前記プロモーターは、CMVプロモーターであり、前記エンハンサーは、初期CMVエンハンサーであり、前記ターミネーターは、SV polyAターミネーターである。
【0027】
本発明の第4の側面によれば、本発明は、組み換え細胞を提供する。前記組み換え細胞は、前記発現ベクターを含む。
【0028】
本発明の第5の側面において、本発明は、前記抗体またはその抗原結合断片の製造方法を提供する。本発明の実施例によれば、前記組み換え細胞を培養するステップを含む。
【0029】
発明者が、本発明の方法を介して、前記組み換え細胞を培養することにより、本発明の実施例によるPD-1を特異的に認識する抗体またはその抗原結合断片を合成できることを見出す。PD-1を特異的に認識する抗体またはその抗原結合断片の前記特徴及びメリットについて、前記方法にも適用できるため、ここで、詳細な説明は省略する。
【0030】
本発明の第6の側面において、本発明は、前記ポリヌクレオチド、発現ベクター、または組み換え細胞の抗体またはその抗原結合断片の製造における使用を提供する。前記抗体とPD-1とが特異的に結合する。これにより、発明者が、前記ポリヌクレオチド、発現ベクター、または組み換え細胞を利用することにより、PD-1と特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を製造できることを見出す。従って、得られた抗体またはその抗原結合断片によりPD-1とその受容体の結合を阻害できるため、PD-1受容体(例えば、SHP1/2)に関するシグナル経路を阻害でき、腫瘍の成長を有効に抑制できる。
【0031】
本発明の第7の側面において、本発明は、ハイブリドーマを提供する。それが中国典型培養物保蔵センターに寄託されていた(CCTCC)。
【0032】
発明者が、本発明のハイブリドーマを利用することにより、本発明の実施例におけるPD-1を特異的に認識する抗体またはその抗原結合断片を合成できることを見出す。PD-1を特異的に認識する抗体またはその抗原結合断片の前記特徴及びメリットについて、前記ハイブリドーマにも適用できるため、ここで、詳細な説明は省略する。
【0033】
本発明の第8の側面において、本発明は、前記ハイブリドーマのモノクローナル抗体の製造における使用を提供する。
【0034】
発明者が、本発明のハイブリドーマを利用することにより、本発明の実施例によるPD-1を特異的に認識する抗体またはその抗原結合断片を合成できることを見出す。PD-1を特異的に認識する抗体またはその抗原結合断片の前記特徴及びメリットについて、前記使用にも適用できるため、ここで、詳細な説明は省略する。
【0035】
本発明の第9の側面において、本発明は、前記抗体またはその抗原結合断片、前記ポリヌクレオチド、発現ベクター、組み換え細胞または前記ハイブリドーマの医薬の製造における使用を提供する。前記医薬が、T細胞の活性化と増殖を促進し、サイトカインの発現と分泌を調節し、抗腫瘍細胞を刺激してより強い免疫応答を生成することに用いられる。
【0036】
本発明の第10の側面において、本発明は、医薬組成物を提供する。本発明の実施例によれば、前記医薬組成物は、前記抗体またはその抗原結合断片、前記ポリヌクレオチド、前記発現ベクター、前記組み換え細胞または前記ハイブリドーマを含む。
【0037】
本発明の第11の側面において、本発明は、PD-1と結合できる医薬の検出方法を提供する。
【0038】
本発明の実施例によれば、前記方法は、
検出対象である医薬が存在する場合、前記抗体またはその抗原結合断片と抗原を接触させ、かつ前記抗体またはその抗原結合断片と前記抗原との第1の結合量を決定して、前記抗原は、PD-1またはその断片であるステップ、及び
検出対象である医薬が存在しない場合、前記抗体またはその抗原結合断片と抗原を接触させ、かつ前記抗体またはその抗原結合断片と前記抗原との第2の結合量を決定して、前記抗原は、PD-1またはその断片であるステップを含み、
ただし、前記第2の結合量が前記第1の結合量より多いことは、前記検出対象である医薬がPD-1と結合できる合図である。
前記方法により、PD-1と結合できる検出対象である医薬を選別できる。
【0039】
本発明の第12の側面において、本発明は、混合薬を提供する。
【0040】
本発明の実施例によれば、前記混合薬は、
(1)前記抗体またはその抗原結合断片、前記ポリヌクレオチド、前記発現ベクター、前記組み換え細胞または前記ハイブリドーマ、及び
(2)(1)と異なる免疫強化剤、を含む。
【0041】
本発明の実施例によれば、前記(1)と異なる免疫強化剤は、抗CTLA-4抗体、抗CD40抗体、ブデソニド(Budesonide)、サリチル酸塩から選択される少なくとも1つを含み、任意的に、前記サリチル酸塩は、スルファサラジン(sulfasalazine)、オルサラジン(olsalazine)、バルサラジド(balsalazide)及びメサラジン(mesalamine)から選択される少なくとも1つを含む。
【0042】
PD-1とCTLA-4との併用による阻害と、腫瘍の標準治療(例えば、化学療法)と同時に利用されることがある。臨床試験に基づいて、抗PD-1抗体と抗CTLA-4抗体との併用により、化学療法剤の用量を低下しても同じ効果を達成できる。従来文献によると、抗PD-1抗体と抗CTLA-4抗体、及びダカルバジン(ドセタキセル、抗がん薬に属する)またはインターロイキン-2(IL-2)とを併用することにより悪性黒色腫を治療することが提案する。多種類の化学療法薬における細胞毒素は、細胞死を誘導し、腫瘍細胞によって発現される抗原のレベルを増加させる。一方、抗PD-1抗体と抗CTLA-4抗体を併用すると、放射線療法、手術、ホルモン療法などの相乗効果を増加させることができる。上記のいずれも体内の抗原のソースを増加するためである。血管増殖を阻害することにより、腫瘍細胞の増殖をさらに阻害させるため、血管新生阻害剤も抗PD-1抗体および抗CTLA-4抗体と併用できる。これにより、体内の抗原発現の増加に寄与することがある。
【0043】
本発明の付加的な特徴及びメリットは、以下の説明において一部が述べられ、一部が以下の説明においてさらに明瞭になり、又は本発明の実践を介して把握できる。
【0044】
本発明の付加的な特徴及びメリットは、下記の図面を参考しながら実施例を説明することにより、明瞭かつ理解しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】本発明の1つの実施例によれば、H1L1、H2L2、H3L3のPD-1との結合のELISA結果図である。
図2】本発明の1つの実施例によれば、H1L1、H2L2、H3L3がPD-1とPdL1との結合を抑制する競合ELISA結果図である。
図3】本発明の1つの実施例によれば、H2L2がPD-1とPdL2との結合を抑制する競合ELISA結果図である。
図4】本発明の1つの実施例によれば、H1L1の運動特性パラメータ検出結果を示す図である。
図5】本発明の1つの実施例によれば、H2L2の運動特性パラメータ検出結果を示す図である。
図6】本発明の1つの実施例によれば、H3L3の運動特性パラメータ検出結果を示す図である。
図7】本発明の1つの実施例によれば、抗体H1L1、H2L2、H3L3が、PD-1タンパク質の活性化を阻害することにより、T細胞を刺激してIL-2とIFNgammaの分泌レベルを示す図。
図8】本発明の1つの実施例によれば、それぞれ抗体H1L1、H2L2、H3L3のBB007細胞との結合の蛍光を示す図。
図9】本発明の1つの実施例によれば、それぞれ抗体H1L1、H2L2、H3L3のBB007細胞との結合後の蛍光強度を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。以下の実施形態は、例示的なものであり、本発明を解釈するのみに用いられ、本発明を限定するものと理解されてはならない。また、明確に記載されていない場合、下記実施例に利用された試薬は、いずれも一般的な市販品に属することや、本発明または既知の方法で合成できるものであり、明確に記載されていない反応条件は、当業者にとって容易に取得できるものである。
【実施例
【0047】
実施例1 PD-1 4G10ハイブリドーマ細胞株の確立
分子生物学の方法に基づいて、下記のアミノ酸配列を有する融合タンパク質PD-1-mIgGFcを調製する。
MQIPQAPWPVVWAVLQLGWRPGWFLDSPDRPWNPPTFSPALLVVTEGDNATFTCSFSNTSESFVLNWYRMSPSNQTDKLAAFPEDRSQPGQDCRFRVTQLPNGRDFHMSVVRARRNDSGTYLCGAISLAPKAQIKESLRAELRVTERRAEVPTAHPSPSPRPAGQFQTLVSPRPSETVTCNVAHPASSTKVDKKIVPRDCGCKPCICTVPEVSSVFIFPPKPKDVLTITLTPKVTCVVVDISKDDPEVQFSWFVDDVEVHTAQTQPREEQFNSTFRSVSELPIMHQDWLNGKEFKCRVNSAAFPAPIEKTISKTKGRPKAPQVYTIPPPKEQMAKDKVSLTCMITDFFPEDITVEWQWNGQPAENYKNTQPIMNTNGSYFVYSKLNVQKSNWEAGNTFTCSVLHEGLHNHHTEKSLSHSPGK(配列番号:13)。
【0048】
1. マウス免疫及び細胞融合
フロイントアジュバントにより予め乳化された抗原(前記方法により調製されたPD-1-mIgGFc融合タンパク質)でBALB/Cマウスを免疫する。BALB/Cマウスが免疫応答を生成した後、その脾細胞を採取し、マウス骨髄腫細胞と融合させてハイブリドーマを得、96ウェルプレートで前記ハイブリドーマを培養する。
【0049】
2. 間接ELISA
各ハイブリドーマ細胞株細胞が分泌する抗体について、抗原であるPD-1-hFcによりコーティングされ、1%BSAを含むPBS緩衝液でELISAプレートをブロックして、コーティングされたELISAプレートを利用する間接ELISA法で、PD-1と特異的に結合する新たな抗体を分泌するハイブリドーマ細胞を選別する。
【0050】
具体的なステップは、以下のようである。
1)抗原のコーティング
4℃で、ELISAプレートに1μg/mlであるPD-1-hFc抗原(50μl/ウェル)を一晩コーティングするステップ。
2)ブロッキング
37℃、1% BSA(PBSで希釈する)で2時間ブロックして、1%Tween-20を含む1×PBSTで3回洗浄して、乾燥するように軽く叩くステップ。
3)一次抗体のインキュベート
1μg/mlから1:3で希釈して、7つの濃度勾配の抗体溶液を得て、対照組は、PBSであり、それぞれ37℃で1時間インキュベートするステップ。
4)二次抗体のインキュベート
PBSTで3回洗浄して、乾燥するように軽く叩き、1:5000で希釈したHRP標識ヤギ抗マウスlgG(H+L)を各ウェルに50μlずつ入れ、37℃で1時間インキュベートするステップ。
5)顕色
PBSTで3回洗浄して、乾燥するように軽く叩き、TMB顕色剤を各ウェルに50μlずつ入れ、室温で5~10分反応するステップ。
6)顕色完了
50μl/ウェルで2M HSO溶液を入れ、顕色反応を完了するステップ。
7)読取り
マイクロプレートリーダーにより、吸光度450nmで各ウェルの吸光値を検出するステップ。
【0051】
3. 競合ELISA
間接ELISAにより選別されたハイブリドーマ細胞を、競合ELISA法でPD-L1と競合してPD-1と結合するモノクローナル抗体を分泌できるハイブリドーマ細胞を選別する。
【0052】
具体的なステップは、以下のようである。
1)抗原のコーティング
96ウェルELISAプレートに、4℃で0.5μg/mlであるPD-1-mIgGFc抗原(50μl/ウェル)を一晩コーティングするステップ。
2)ブロッキング
PBSTでプレートを3回洗浄して、乾燥するように軽く叩き、37℃、1% BSA(PBSで希釈する)で2時間ブロックして、1%Tween-20を含む1×PBSTで3回洗浄するステップ。
3)一次抗体のインキュベート
3μg/mlから1:3で希釈して、7つの濃度勾配の抗体溶液を得て、対照組は、PBSであり、それぞれ室温で10分インキュベートするステップ。
4)リガンド
2μg/mlのPDL1-hIgG1Fc溶液を各ウェルに50μlずつを入れ、37℃で1時間インキュベートするステップ。
5)二次抗体のインキュベート
PBSTで3回洗浄して、乾燥するように軽く叩き、1:5000で希釈した二次抗体であるHRP標識ヤギ抗マウスIgG-(H+L)を各ウェルに50μlずつ入れ、37℃で1時間インキュベートするステップ。
6)顕色
PBSTで3回洗浄して、乾燥するように軽く叩き、TMB顕色剤を各ウェルに50μlずつ入れ、室温で5~10分反応するステップ。
7)顕色完了
50μl/ウェルで2M HSO溶液を入れ、顕色反応を完了するステップ。
8)読取り
マイクロプレートリーダーにより、吸光度450nmで各ウェルの吸光値を検出するステップ。
検出結果に基づいて、PD-1 18A10ハイブリドーマ細胞株を選別して、それが分泌するモノクローナル抗体は、18A10と名付ける。
【0053】
4.サブクローニングにより安定な細胞株を取得する
選別された細胞株18A10をサブクローニングすることにより、PD-L1と競合してPD-1と特異的に結合する抗体を分泌するモノクローナル安定細胞株を選別する。
【0054】
具体的に、サブクローニング対象の細胞をカウントして、生存細胞数に基づいて、15%ウシ胎児血清を含むIMDM培地により希釈され、96ウェルプレートに接種して培養する。理論上の細胞密度は、1細胞/ウェルである。細胞がモノクローナル細胞集塊に成長した後、ELISA法で選別を行い、サブクローニング・選別することを何回繰り返して、安定的なモノクローナル細胞株18A10を得た。
【0055】
5. 18A10抗体の製造
安定的な細胞株18A10を得た後、10%IgGを含むウシ胎児血清で安定的な細胞株18A10を培養する。7~10日培養した後、細胞培養上清を収集・精製して、18A10抗体を得た。
【0056】
実施例2 ハイブリドーマ細胞株cDNA配列の取得
1.細胞/細菌トータルRNA抽出キットの取扱書(Tiangen、製番DP430)に従って、18A10ハイブリドーマ細胞株からmRNAを抽出する。
2.Invitrogen SuperScript(商標)III First-Strand Synthesis system for RT-PCRキットの取扱書に従って、一本鎖を合成して、PCR増幅を行う。
3.pEASY-T1 クローニングキット(Tiangen、製番CT101)の取扱書に従って、TAクローニングを行う。
4.M13ユニバーサルプライマーを利用してPCR法によって検出して、陽性クローンを選んでシーケンシングする。
5.シーケンシング結果をアライメントして、正確なcDNA配列を取得する。
【0057】
実施例3 抗体18A10ヒト化
ヒト化抗体を構成するため、マウス18A10抗体の可変領域アミノ酸配列と、ヒトの可変領域基因配列とアライメントして、マウスアミノ酸配列の一部を選択的に変異させ、ヒト化アミノ酸配列を得ることにより、3つのヒト化抗体を取得する。ヒト化の程度に基づいて、それぞれH1L1、H2L2及びH3L3と名付ける。
【0058】
ヒト化抗体H1L1の重鎖可変領域配列は、
EVQLVQSGGGLVQPGGSLKLSCAASGFTFSSYGMSWVRQTPEKGLDWVATISGGGRDTYYPDSVKGRFTISRDNSKNNLYLQMNSLRAEDTALYYCARQKGEAWFAYWGQGTLVTVSS(配列番号:1)である。
ヒト化抗体H1L1の軽鎖可変領域アミノ酸配列は、
DIVLTQSPASLAVSPGQRATITCRASESVDNYGISFMNWFQQKPGQPPKLLIYAASNKGTGVPARFSGSGSGTDFTLNIHPMEENDTAMYFCQQSKEVPWTFGGGTKLEIK(配列番号:2)である。
ヒト化抗体H2L2の重鎖可変領域配列は、
EVQLVQSGGGLVQPGGSLKLSCAASGFTFSSYGMSWVRQAPGKGLDWVATISGGGRDTYYPDSVKGRFTISRDNSKNNLYLQMNSLRAEDTALYYCARQKGEAWFAYWGQGTLVTVSS(配列番号:3)である。
ヒト化抗体H2L2の軽鎖可変領域アミノ酸配列は、
DIVLTQSPASLAVSPGQRATITCRASESVDNYGISFMNWFQQKPGQPPKLLIYAASNKGTGVPARFSGSGSGTDFTLNINPMEENDTAMYFCQQSKEVPWTFGGGTKLEIK(配列番号:4)である。
ヒト化抗体H3L3の重鎖可変領域配列は、
EVQLVQSGGGLVQPGGSLKLSCAASGFTFSSYGMSWVRQAPGKGLDWVATISGGGRDTYYPDSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARQKGEAWFAYWGQGTLVTVSS(配列番号:5)である。
ヒト化抗体H3L3の軽鎖可変領域アミノ酸配列は、
DIVLTQSPASLAVSPGQRATITCRASESVDNYGISFMNWYQQKPGQPPKLLIYAASNKATGVPARFSGSGSGTDFTLNINPMEANDTAVYFCQQSKEVPWTFGGGTKLEIK(配列番号:6)である。
【0059】
実施例4 ヒト化抗体H1L1、H2L2及びH3L3のタンパク発現
遺伝子合成手段でヒト化抗体H1L1、H2L2、H3L3をコードするヌクレオチド配列を合成して、発現ベクターに取り込む。発現ベクターのDNAを抽出し、哺乳動物細胞である293細胞にトランスフェクトする。トランスフェクション後、抗体が哺乳動物細胞内に発現され、細胞外に分泌された。プロテインAアフィニティークロマトグラフィーカラムで、発現された抗体を精製して、ヒト化抗体H1L2、H2L2、H3L3タンパクを得た。
【0060】
実施例5 18A10組み換えヒト化抗体のELISA実験
18A10 DNA配列を取得した後、組み換え手段によりヒト化させ、ヒト化抗体を製造して、対比実験を行う。前記実験について、ELISA結合実験と競合ELISA実験を含むが、これらに限定されるものではない。
【0061】
1. 18A10 H1L1、18A10 H2L2、18A10 H3L3 ELISA結合実験
具体的なステップは、以下のようである。
1)抗原のコーティング
4℃で0.5μg/mlであるPD-1-mFc抗原(50μl/ウェル)を一晩コーティングするステップ。
2)ブロッキング
37℃、1% BSA(PBSで希釈する)で2時間ブロックして、1%Tween-20を含む1×PBSTで3回洗浄して、乾燥するように軽く叩くステップ。
3)一次抗体のインキュベート
1μg/mlから1:3で希釈して、7つの濃度勾配の抗体溶液を得て、対照組は、PBSであり、それぞれ37℃で1時間インキュベートするステップ。
4)二次抗体のインキュベート
PBSTで3回洗浄して、乾燥するように軽く叩き、1:5000で希釈した二次抗体であるHRP標識ヤギ抗マウスIgG-(H+L)を各ウェルに50μlずつ入れ、37℃で1時間インキュベートするステップ。
5)顕色
PBSTで3回洗浄して、乾燥するように軽く叩き、TMB顕色剤を各ウェルに50μlずつ入れ、室温で5~10分反応するステップ。
6)顕色完了
50μl/ウェルで2M HSO溶液を入れ、顕色反応を完了するステップ。
7)読取り
マイクロプレートリーダーにより、吸光度450nmで各ウェルの吸光値を検出するステップ。
結果を図1に示すように、H1L1、H2L2及びH3L3のPD-1に対するEC50値は、それぞれ0.156nM、0.111nM及び0.144nMである。
図1に示すように、前記3つの抗体H1L1、H2L2及びH3L3が、PD-1に対して強い親和性を有する。
【0062】
【表1】
【0063】
2. 18A10 H1L1、18A10 H2L2、及び18A10 H3L3とPDL1競合ELISA実験
具体的なステップは、以下のようである。
1)抗原のコーティング
96ウェルELISAプレートに、4℃で0.5μg/mlであるPD-1-mIgGFc抗原(50μl/ウェル)を一晩コーティングするステップ。
2)ブロッキング
PBSTでプレートを3回洗浄して、乾燥するように軽く叩き、37℃、1% BSA(PBSで希釈する)で2時間ブロックして、1%Tween-20を含む1×PBSTで3回洗浄するステップ。
3)一次抗体のインキュベート
3μg/mlから1:3で希釈して、7つの濃度勾配の抗体溶液を得て、対照組は、PBSであり、それぞれ室温で10分インキュベートするステップ。
4)リガンド
2μg/mlのPDL1-mIgG2aFc溶液を各ウェルに50μlずつを入れ、37℃で1時間インキュベートするステップ。
5)二次抗体のインキュベート
PBSTで3回洗浄して、乾燥するように軽く叩き、1:5000で希釈した二次抗体であるHRP標識ヤギ抗マウスIgG-(H+L)を各ウェルに50μlずつ入れ、37℃で1時間インキュベートするステップ。
6)顕色
PBSTで3回洗浄して、乾燥するように軽く叩き、TMB顕色剤を各ウェルに50μlずつ入れ、室温で5~10分反応するステップ。
7)顕色完了
50μl/ウェルで2M HSO溶液を入れ、顕色反応を完了するステップ。
8)読取り
マイクロプレートリーダーにより、吸光度450nmで各ウェルの吸光値を検出するステップ。
結果を図2に示すように、H1L1、H2L2及びH3L3が、PdL1と競合してPD-1と結合するEC50値は、それぞれ0.992nM、0.838nM及び1.194nMである。
図2に示すように、前記3つの抗体H1L1、H2L2及びH3L3が、PdL1とPD-1との結合を有効に阻害できる。
【0064】
【表2】
【0065】
3. 18A10 H2L2及びPDL2の競合ELISA実験
具体的なステップは、以下のようである。
1)抗原のコーティング
96ウェルプレートに、4℃で1.0μg/mlであるPD-1-hIgGFc抗原(50μl/ウェル)を一晩コーティングするステップ。
2)ブロッキング
PBSTで3回洗浄して、乾燥するように軽く叩き、37℃、1% BSA(PBSで希釈する)で2時間ブロックして、1%Tween-20を含む1×PBSTで4回洗浄するステップ。
3)一次抗体のインキュベート
20μg/mlから1:3で希釈して、7つの濃度勾配の抗体溶液を得て、対照組は、PBSであり、それぞれ室温で10分インキュベートするステップ。
4)リガンド
1.0μg/mlのPDL2-histag溶液を各ウェルに50μlずつを入れ、37℃で1時間インキュベートするステップ。
5)二次抗体のインキュベート
PBSTで5回洗浄して、乾燥するように軽く叩き、1:750で希釈した二次抗体であるHRP標識抗histagマウスモノクローナル抗体を各ウェルに50μlずつ入れ、37℃で1時間インキュベートするステップ。
6)顕色
PBSTで6回洗浄して、乾燥するように軽く叩き、TMB顕色剤を各ウェルに50μlずつ入れ、室温で30分反応するステップ。
7)顕色完了
50μl/ウェルで2M HSO溶液を入れ、顕色反応を完了するステップ。
8)読取り
マイクロプレートリーダーにより、吸光度450nmで各ウェルの吸光値を検出するステップ。
図3に示すように、前記抗体H2L2が、PdL1とPD-1との結合を有効に阻害できることが分かる。
【0066】
【表3】
【0067】
実施例6
Fortebio分子間相互作用解析装置によりH1L1、H2L2、H3L3の運動特性パラメータを検出する。
ビオチン標識の抗原PD-1をSAセンサーの表面に固定され、PBSTと平衡した後、抗体H1L1と結合して、H1L1:PBST=1:3で希釈し(濃度は、200、66.67、22.22、7.41、2.47、0.82、0.27、0nM)、PBSTで解離させる。H2L2とH3L3の検出方法は、H1L1と同一である。それぞれH1L1、H2L2、H3L3の運動特性パラメータを表4に示し、検出結果を図4~6に示す。
【0068】
【表4】
【0069】
実施例7 抗体H1L1、H2L2及びH3L3がT細胞を刺激してIL-2とIFNgammaを分泌することに対する分析
混合リンパ球反応(MLR)実験で、抗体H1L1、H2L2とH3L3がTリンパ球を刺激してIL-2とIFNgammaの分泌能力を検出する。MLR実験は、異なるヒトT細胞(TC)とヒト樹状細胞(DC)とを混合して、DC細胞の抗原提供能力によりT細胞を刺激してIL-2とIFNgammaを分泌する。まず、サイトカインGM-CSFとIL-4で血液における単球を樹状細胞に分化させ、TNFaで未熟なDC細胞を成熟させる。その後、成熟DC細胞と同種異系のTC細胞と混合して5日培養した後、細胞上清におけるIL-2とIFNgammaの分泌レベルを検出する。
【0070】
96ウェルプレートに、TCとDCを混合して、ウェルごとに1×10TC細胞と1×10DC細胞を入れ、3つの抗体の濃度(1nM、10nMと100nM)で、5日培養した後、IL-2アッセイキットで上清におけるIL-2の含量を検出し、IFNgammaアッセイキットでIFNgammaの含量を検出する。
【0071】
図7に、抗体H1L1、H2L2及びH3L3がT細胞を刺激してIL-2とIFNgammaを分泌するレベルを示す。図7に示すように、抗体H1L1、H2L2及びH3L3がT細胞を刺激してIL-2とIFNgammaを有効に分泌し、かつ用量依存的な関係を呈する。
【0072】
実施例8 抗体H1L1、H2L2及びH3L3とPD-1との結合のEC50に対する分析
フローサイトメトリーにより抗体H1L1、H2L2及びH3L3が、PD-1を安定的に発現する細胞(BB007細胞と名付ける)の表面抗原の結合活性を検出する。通常なトリプシン消化法によりBB007細胞を取得して、PBSで1回洗浄して、複数なチューブに分けられ、チューブごとに2×10個細胞を有する。PBS(1%BSA)でそれぞれ濃度20nM、10nM、5nM、1nM、0.1nM、0nMのH1L1、H2L2及びH3L3の抗体希釈液を調製して、各濃度の総体積は、100μlであり、氷上で細胞を1時間インキュベートする、PBSで1回洗浄して、各チューブに100μl FITC-Goat-Anti-Human IgG(1:500)を入れ、氷上で1時間インキュベートして、その後、各チューブに300μl PBSを入れ、フローサイトメーターでFITCチャンネルを利用して蛍光シグナルを検出する。
【0073】
それぞれH1L1、H2L2、H3L3抗体とBB007細胞との結合を表5に示す。図8に示すように、H1L1、H2L2及びH3L3抗体が、BB007細胞表面のターゲットタンパク質であるPD-1と有効に結合でき、かつその結合効率が、用量依存的な関係を呈することが分かる。
【0074】
【表5】
【0075】
結合後のH1L1、H2L2、H3L3抗体に対して蛍光定量分析を行い、曲線模擬によりH1L1、H2L2、H3L3のEC50(結合効率を示す)は、それぞれ3.38nM、1.59nM、1.68nM(図9)である。
【0076】
本願の明細書の説明において、「1つの実施例」、「いくつかの実施例」、「例示」、「具体的な例示」または「いくつかの例示」などの用語は、該当実施例または例示を結合しながら説明した具体的な特徴、構成、材料または特性が本願の少なくとも1つの実施例または例示に含まれることを意味する。本明細書において、前記用語の概要な表現は、同一の実施例または例示を対象とする必要がない。かつ、説明した具体的な特徴、構成、材料または特性が任意の1つまたは複数の実施例または例示に適当な手段で結合されることができる。また、互いに矛盾しない場合、当業者が本明細書に記載の異なる実施例または例示及び異なる実施例または例示における特徴を結合することや組み合わせることができる。
【0077】
本発明の実施例は、上記内容に開示・説明されているが、上記実施例は、例示として挙げられ、それに限定されるものではない、当業者が本発明の範囲で、様々な変化、修正、取り替え及び変形を行うことができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【配列表】
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