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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-09
(45)【発行日】2022-08-18
(54)【発明の名称】換気装置を有するフィルタカートリッジ
(51)【国際特許分類】
   B01D 35/02 20060101AFI20220810BHJP
   B01D 24/00 20060101ALI20220810BHJP
   B01D 29/00 20060101ALI20220810BHJP
   F02M 37/54 20190101ALI20220810BHJP
   F02M 37/32 20190101ALI20220810BHJP
【FI】
B01D35/02 E
B01D29/00 A
F02M37/54
F02M37/32
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020521628
(86)(22)【出願日】2018-07-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-31
(86)【国際出願番号】 IB2018054976
(87)【国際公開番号】W WO2019008536
(87)【国際公開日】2019-01-10
【審査請求日】2021-04-13
(31)【優先権主張番号】102017000076718
(32)【優先日】2017-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】520005369
【氏名又は名称】ユーエフアイ・フィルターズ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
【氏名又は名称原語表記】UFI FILTERS S.P.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(74)【代理人】
【識別番号】100122286
【弁理士】
【氏名又は名称】仲倉 幸典
(72)【発明者】
【氏名】ジョルジョ・ジロンディ
【審査官】瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-205287(JP,A)
【文献】特開2003-299917(JP,A)
【文献】実開昭58-146871(JP,U)
【文献】特開2015-007403(JP,A)
【文献】米国特許第04673500(US,A)
【文献】特開2000-110537(JP,A)
【文献】特表2009-503314(JP,A)
【文献】登録実用新案第3162149(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 24/00-35/04、35/08-37/08
F02M 37/00-37/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の燃料循環回路用のフィルタカートリッジ(1)であって、
- 上記燃料循環回路に流体接続され、入口マウス(210)、出口マウス(220)、および、それらの入口マウスと出口マウスとの間で主軸(X-X)に沿って延びる濾過室(20)を含むカートリッジ本体(2)と、
- 燃料を濾過するために上記濾過室(20)に収容され、上記主軸(X-X)に沿って延びる少なくとも1つのフィルタ挿入物(3)とを備え、
上記フィルタカートリッジ(1)は、上記主軸(X-X)が実質的に水平な姿勢にある態様で、上記車両内で地面に対して実質的に水平な姿勢で配置され動作し、
上記フィルタ挿入物(3)は、上記濾過室(20)を、
i)上記入口マウス(210)と流体連通している、濾過されるべき燃料を含む汚れ室(201)と、
ii)上記出口マウス(220)と流体連通している、濾過された燃料を含む清浄室(202)と
に分割しており、
- 上記汚れ室(201)内の空気を換気する換気装置(4)を備え、
上記換気装置(4)は、上記燃料に浮遊している空気が蓄積する上記濾過室(20)の上部領域に配置された少なくとも1つの換気ダクト(40)を含み、
上記換気ダクト(40)は、互いに間隔を空けて配置された複数の換気孔(400)を有し、これらの換気孔を通して上記空気が濾過室(20)から除去される
ことを特徴とするフィルタカートリッジ。
【請求項2】
請求項1に記載のフィルタカートリッジ(1)において、
上記カートリッジ本体(2)は、上記入口マウス(210)を含む入口端(21)、上記出口マウス(220)を含む出口端(22)、および上記濾過室(20)を横方向に画定する周辺側壁(23)を含み、
上記換気ダクト(40)は、カートリッジ本体(2)の上部側壁(231)に近位の位置である上部位置に配置されていることを特徴とするフィルタカートリッジ。
【請求項3】
請求項2に記載のフィルタカートリッジ(1)において、
上記換気ダクト(40)は、上記カートリッジ本体(2)の上部側壁(231)に形成されていることを特徴とするフィルタカートリッジ。
【請求項4】
請求項1または2に記載のフィルタカートリッジ(1)において、
上記換気ダクト(40)は、上記カートリッジ本体(2)とは別の部品であり、上記カートリッジ本体(2)の汚れた側に配置されていることを特徴とするフィルタカートリッジ。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか一つに記載のフィルタカートリッジ(1)において、
上記換気ダクト(40)は、上記主軸(X-X)に沿って延び、上記換気孔(400)は互いに軸方向に間隔が空けられていることを特徴とするフィルタカートリッジ。
【請求項6】
請求項に記載のフィルタカートリッジ(1)において、
上記換気ダクト(40)は、実質的に上記濾過室(20)の軸方向の全長に沿って延びていることを特徴とするフィルタカートリッジ。
【請求項7】
請求項1からまでのいずれか一つに記載のフィルタカートリッジ(1)において、
上記換気装置(40)は、上記フィルタ挿入物(3)に含まれ、そのフィルタ挿入物の汚れた側に配置されていることを特徴とするフィルタカートリッジ。
【請求項8】
請求項1からまでのいずれか一つに記載のフィルタカートリッジ(1)において、
上記換気装置(4)は、複数の換気ダクト(40)を含むことを特徴とするフィルタカートリッジ。
【請求項9】
請求項1からまでのいずれか一つに記載のフィルタカートリッジ(1)において、
上記換気孔(400)は、燃料の通過に比して空気の通過を容易にするような直径を有することを特徴とするフィルタカートリッジ。
【請求項10】
請求項1からまでのいずれか一つに記載のフィルタカートリッジ(1)において、
上記換気ダクト(40)は、この換気ダクトの遠位端に配置された少なくとも1つのヘッド換気孔(400′)を含むことを特徴とするフィルタカートリッジ。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか一つに記載のフィルタカートリッジ(1)において、
上記少なくとも1つのフィルタ挿入物(3)は、外側から内側へ径方向に横断可能な管状タイプであり、そのフィルタ挿入物の外側に汚れ室(201)を画定し、そのフィルタ挿入物の内側に清浄室202を画定することを特徴とするフィルタカートリッジ。
【請求項12】
請求項11に記載のフィルタカートリッジ(1)において、
上記主軸(X-X)に沿って、互いに平行に配置された、複数のフィルタ挿入物(3)を含むことを特徴とするフィルタカートリッジ。
【請求項13】
請求項1から12までのいずれか一つに記載のフィルタカートリッジ(1)において、
上記換気装置(4)は上記出口マウス(220)に流体接続されており、それにより、上記出口マウス(220)を通して燃料を移動させる作用は、上記換気ダクト(40)を通る換気作用も伴うことを特徴とするフィルタカートリッジ。
【請求項14】
請求項13に記載のフィルタカートリッジ(1)において、
上記換気装置(4)は、上記出口マウス(220)の流体的に上流に、上記出口マウス(220)に近接して配置されたフィルタ要素(45)を含むことを特徴とするフィルタカートリッジ。
【請求項15】
請求項2または3に記載のフィルタカートリッジ(1)において、
上記出口端(22)は、流体的に上記濾過室(20)と上記出口マウス(220)との間に配置された出口前室(220′)を含むことを特徴とするフィルタカートリッジ。
【請求項16】
請求項15に記載のフィルタカートリッジ(1)において、
上記換気ダクト(40)は、上記主軸(X-X)に平行な方向に、前記出口前室(220′)内へ延びる補助換気セクション(42)を備えることを特徴とするフィルタカートリッジ。
【請求項17】
請求項1から16までのいずれか一つに記載のフィルタカートリッジ(1)において、
流体的に上記入口マウス(210)の上流配置され、上記濾過室(20)へ投入される上記燃料を加熱するヒータ群(8)を含むことを特徴とするフィルタカートリッジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の燃料循環回路のフィルタカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
詳しくは、燃料循環回路(その回路内で、燃料がタンクから燃焼室へ循環する)は、通常、望ましくない存在である浮遊粒子を濾過するためのフィルタカートリッジの存在を必要とする。
【0003】
したがって、本発明は、そのような特定の状況に該当し、特に、本発明のフィルタカートリッジは、燃料(好ましくは、ディーゼル)の濾過において、好ましいが非限定的な用途を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
既知のフィルタカートリッジの主な問題は、それらの内部にガスおよび/または空気(本明細書では「空気」という用語で呼ぶ。)が蓄積している場合、燃料濾過動作を効率的に実行しないことである。
【0005】
通常、このような空気の蓄積は、カートリッジの交換後の点火動作の結果である。しかし、燃料中にガス状の一定量の溶解物質が存在するため、通常の車両使用中でも気泡が発生することは珍しくない。
【0006】
さらに、燃料循環回路内の大きな気泡の存在に関連する別の問題は、これらの気泡がポンプおよび/またはインジェクタなどの回路に含まれた部品に重大な損傷を引き起こす可能性があるという事実に関連する。
【0007】
特に、空気は、その比重のため、フィルタカートリッジの上部に蓄積する傾向がある。したがって、このため、空気は車両、特にフィルタカートリッジの動作中に廃棄される必要がある。
【0008】
この問題を克服するために、従来技術では、カートリッジに、空気が流出するバイパス孔を設けることが知られている。
【0009】
しかし、これらの解決策は特段効果的ではない。例えば、上り坂または下り坂の傾斜面など、車両の幾つかの動作状況では、空気は、このようなバイパス孔から遠く離れた場所に浮くため、流出することはなく、フィルタカートリッジの動作において上記の問題を引き起こす。
【0010】
このような欠点を有するフィルタカートリッジの実施形態の一例は、文献EP2062634に示されている。
【0011】
さらに、この欠点は、鉛直に動作する代わりに、車両内で水平または傾斜した配置を有するフィルタカートリッジで発生する。
【0012】
したがって、従来技術の解決策の前述の欠点を解決しながら、空気を吸引するのに適した換気装置を有するフィルタカートリッジを提供する必要性が強く感じられている。
【0013】
本発明の目的は、濾過動作が常に効率的かつ効果的に実行され、車両のいかなる状況においても車両の内部に空気が蓄積することを回避するフィルタカートリッジを提供することである。好ましくは、本発明の目的は、実質的に水平な姿勢で車両に配置された場合でさえ、そのような技術的利点を有するフィルタカートリッジを有することである。加えて、本発明の目的は、大きな気泡が燃料循環回路内を流れるのを防止することであり、したがって、これらの気泡が車両の部品に損傷を引き起こす危険性を回避することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
このような目的は、請求項1に記載のフィルタカートリッジによって達成される。このフィルタカートリッジは、
車両の燃料循環回路用のフィルタカートリッジであって、
上記燃料循環回路に流体接続され、入口マウス、出口マウス、および、それらの入口マウスと出口マウスとの間で主軸に沿って延びる濾過室を含むカートリッジ本体と、
燃料を濾過するために上記濾過室に収容され、上記主軸に沿って延びる少なくとも1つのフィルタ挿入物とを備え、
上記フィルタカートリッジは、上記主軸が実質的に水平な姿勢にある態様で、上記車両内で地面に対して実質的に水平な姿勢で配置され動作し、
上記フィルタ挿入物は、上記濾過室を、
i)上記入口マウスと流体連通している、濾過されるべき燃料を含む汚れ室と、
ii)上記出口マウスと流体連通している、濾過された燃料を含む清浄室と
に分割しており、
上記汚れ室内の空気を換気する換気装置を備え、
上記換気装置は、上記燃料に浮遊している空気が蓄積する上記濾過室の上部領域に配置された少なくとも1つの換気ダクトを含み、
上記換気ダクトは、互いに間隔を空けて配置された複数の換気孔(400)を有し、これらの換気孔を通して上記空気が濾過室から除去される
ことを特徴とする。
従属請求項は、さらなる有利な態様を有する好ましい実施形態の変形を示す。


【図面の簡単な説明】
【0015】
本発明のさらなる特徴および利点は、いずれの場合でも、添付の図面を参照して非限定的な例として行われるその好ましい実施形態の以下の説明から明らかになるであろう。
図1】好ましい実施形態による、本発明によるフィルタカートリッジの斜視図である。
図2図1のフィルタカートリッジの側面図である。
図3図2のフィルタカートリッジの側方から見た縦断面図である。
図3a図3の一部の拡大図である。
図4図2のフィルタカートリッジの上方から見た縦断面図である。
図5図5図5′は、それぞれ、好ましい実施形態によるフィルタカートリッジの分解された部分での斜視図、図5に含まれた換気装置の分解された部分での斜視図である。
図6】さらなる実施形態による、本発明によるフィルタカートリッジの側面図である。
図7図6のフィルタカートリッジの側方から見た縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
添付の図面において、参照番号1は、好ましい実施形態における、本発明によるフィルタカートリッジを全体的に示している。
【0017】
具体的には、フィルタカートリッジ1は、車両の燃料循環回路に挿入するのに特に適している。すなわち、フィルタカートリッジ1は車両に収容可能であり、前述の循環回路の入口および/または出口チャネルおよびダクトに流体を供給するのに適している。この回路は、車両のエンジン群、特にその燃料供給手段に直接接続されており、内燃機関の燃焼室に流体接続される。実際、好ましくは、本発明のフィルタカートリッジ1は、車両のエンジンコンパートメントに収容されるような寸法を有するか、タンクとエンジンとの間の位置で車両のフレームに直接取り付けられる。
【0018】
したがって、本発明によれば、フィルタカートリッジ1は、入口マウス210および出口マウス220を含む、燃料循環回路に流体接続されたカートリッジ本体2を含む。
【0019】
カートリッジ本体2には、入口マウス210と出口マウス220との間に濾過室20が作られている。すなわち、汚れた流体、すなわち濾過されるべき燃料は入口マウス210に入り、一方、清浄な流体、すなわち濾過された燃料は出口マウス220から出てくる。
【0020】
好ましい実施形態によれば、濾過室20は、主軸X-Xに沿って延びている。
【0021】
前記カートリッジ本体2は実質的に箱形であるのが好ましい。添付の図に例示されるように、カートリッジ本体2は、特定の形状、例えば、丸みを帯びた角を有するように設計され得る。
【0022】
特に、カートリッジ本体2は、主軸X-Xに対して2つの端部に位置する2つの軸方向端、すなわち、入口マウス210を含む入口端21と、出口マウス220を含む出口端22とを含んでいる。
【0023】
好ましい実施形態によれば、カートリッジ本体2は、濾過室20を横方向に画定する周辺側壁23も備えている。前記側壁23は、入口端21と出口端22との間で延びているのが好ましい。前記側壁23は、主軸X-Xに平行に延びているのが好ましい。
【0024】
好ましい実施形態によれば、上部側壁231は、上向きの壁として特定される。すなわち、車両が移動する地面に対して、水平または実質的に水平な姿勢で車両に配置されたフィルタカートリッジ1では、上部側壁231は、前記地面から遠位の壁である。言い換えると、水平または実質的に水平の姿勢で、すなわち、主軸X-Xが地面に平行または実質的に平行の状態で車両に配置されたフィルタカートリッジ1では、上部側壁231は、地面から遠位のものである。
【0025】
好ましくは、カートリッジ本体2、特に濾過室20は、特定の重量により燃料中に浮遊する気泡が蓄積する領域(area)(すなわち、リージョン(region)、すなわち、ゾーン(zone))として上部領域を特定する。
【0026】
具体的には、フィルタカートリッジ1が水平姿勢で配置される上述の動作構成では、上部領域は上部側壁231の近位に特定される。
【0027】
フィルタカートリッジ1は、燃料を濾過するために濾過室20に収容されたフィルタ挿入物3をさらに備える。特に、前記フィルタ挿入物3は、前記濾過室20を、入口マウス210と流体連通する、濾過されるべき燃料を含む汚れ室201または第1のチャンバと、出口マウス220と流体連通する、濾過された燃料を含む清浄室202または第2のチャンバとに分割する。本発明の好ましい実施形態によれば、フィルタ挿入物3は、汚れ室201に面する汚れた側と、清浄室202に面する清浄な側とを有する。
【0028】
フィルタ挿入物3もまた、主軸X-Xに沿って延びている。
【0029】
好ましい実施形態によれば、少なくとも1つのフィルタ挿入物3は、流体が外側から内側へ径方向に横断可能な管状タイプである。換言すれば、濾過室20に収容されたフィルタ挿入物3は、その外側に汚れ室201を画定し、その内側に清浄室202を画定する。
【0030】
したがって、フィルタ挿入物3の外側はその外側円筒面であり、一方、フィルタ挿入物3の内側はその内側円筒面であるのが好ましい。
【0031】
好ましい実施形態によれば、フィルタカートリッジ1は、主軸X-Xに沿って互いに平行に配置された複数のフィルタ挿入物3を備える。前記フィルタ挿入物(複数)3は、それらの外側で前記汚れ室201を特定し、それらの各々の内側で対応する清浄室202を特定するように、管状タイプのものであるのが好ましい。
【0032】
本発明の好ましい実施形態によれば、フィルタカートリッジ1は、好ましくは管状タイプの2つのフィルタ挿入物3を備える。
【0033】
好ましい実施形態によれば、出口端22は、流体的に濾過室20と出口マウス220との間に配置された出口前室220′を含んでいる。したがって、特に、清浄室202(または清浄室(複数)202)は、出口前室220′と流体接続される。例えば、複数の管状のフィルタ挿入物3を含む実施形態のように、複数の清浄室202がある実施形態では、画定された各清浄室202は、前記出口前室220′と流体的に関連付けられて、それから出口マウス220へ流入する。
【0034】
好ましい実施形態によれば、さらに、他の補助構成要素も前記出口前室220′に収容される。例えば、出口前室220′は、燃料から水粒子を分離するための水分離ユニット5を収容している。水分離ユニット5は、水分離作用が行われる、燃料が通過可能な分離装置51と、この分離装置51の下方に位置し、燃料から分離されて出口前室220′の下方底部に蓄積された水が前記分離装置51へ戻るのを防止するようになっている遮断装置52とを備えるのが好ましい。換言すれば、出口前室220′は、軸方向断面だけ主軸X-Xに対して長手方向に延びている。
【0035】
好ましくは、例えば添付の図面に示されるように、各フィルタ挿入物3は、2つの端板によって端部が閉じられた濾材を含む。
【0036】
本発明によれば、フィルタカートリッジ1は、汚れ室201内に存在する空気を除去するのに適した換気装置4をさらに備えている。
【0037】
特に、換気装置4は、空気を濾過室から除去することができる少なくとも1つの換気ダクト40を含んでいる。
【0038】
本発明によれば、換気ダクト40は、濾過室20の前述の上部領域に配置される。したがって、換気ダクト40は、濾過室20内で、濾過室20が最大量の空気を蓄積する位置に配置されることが好ましい。
【0039】
前記換気ダクト40は、軸方向に間隔を空けて配置された複数の換気孔400が存在する長手方向に延びている。特に、前記換気ダクト40は、主軸X-Xに沿って延びているのが好ましい。
【0040】
したがって、上記の好ましい実施形態によれば、主換気ダクト40は、地面に対して水平または実質的に水平になる態様で延びる。
【0041】
例えば、好ましい実施形態によれば、換気ダクト40は、カートリッジ本体2の上壁、例えばカートリッジ本体2の上部側壁231の近位の位置に配置される。
【0042】
好ましい実施形態では、換気装置4は、少なくとも部分的にカートリッジ本体2と一体化される。例えば、好ましい実施形態では、換気ダクト40は、カートリッジ本体2の上部側壁231に作られる。
【0043】
例えば添付の図に示されるような、さらなる好ましい実施形態では、換気ダクト40はカートリッジ本体2とは別個の部品である。
【0044】
好ましい実施形態によれば、換気ダクト40は、実質的に濾過室20の軸方向の全長に沿って延びている。特に、換気ダクト40は、少なくともカートリッジ本体の軸方向長さの中央線を実質的に越えて延びている。
【0045】
好ましい実施形態によれば、換気孔400は、燃料の通過に比して空気の通過を容易にするような直径を有する。言い換えれば、換気孔400は、空気と燃料との間の異なる物理的特性を利用して、燃料に比して空気の通過を容易にするのに十分大きく寸法調整されている。
【0046】
言い換えると、換気孔400は、空気の通過と比較してディーゼルの通過に対してより高い抵抗を示すように寸法設定されている。
【0047】
好ましくは、換気孔400を通して空気は、小さな気泡に吸引され、大きな気泡を壊すか、さもなければ大きな気泡が出口ダクトに到達するのを防ぐ。
【0048】
例えば、換気孔400は、1mm程度、好ましくは0.5mmから4mmの間の直径を有するのが好ましい。
【0049】
本発明の好ましい実施形態によれば、ダクト40は、孔400を含むダクトの主延在方向から好ましくは径方向に延びる特定の換気「噴出口(spouts)」401を有する。好ましくは、前記噴出口401により、例えば添付図面に示されるように、換気孔400は、濾過室20の上部により近い位置に配置される。
【0050】
さらに好ましい実施形態によれば、換気ダクト40は、その遠位端(またはヘッド(head))に配置された少なくとも1つのヘッド換気孔400′を含む。したがって、前記ヘッド換気孔400′は、ダクトの延在軸上に形成されるのが好ましい。したがって、前記ヘッド換気孔400′は、出口端に対して反対の位置に収容されるのが好ましい。言い換えれば、カートリッジ本体2の中央線は、ヘッド換気孔400′と出口端22との間にあるのが好ましい。
【0051】
幾つかの実施形態では、換気ダクト40は、前記ヘッド換気孔400′のみを有し、側部換気孔400を有さない。
【0052】
さらに好ましい実施形態によれば、換気装置4は複数の換気ダクト40を備える。
【0053】
好ましい実施形態によれば、換気ダクト40は、フィルタ挿入物3および/または複数のフィルタ挿入物3と同様に、交換可能な要素である。言い換えれば、換気ダクト40は、カートリッジ本体2から取り外し可能であるのが好ましい。
【0054】
さらに、さらなる好ましい実施形態によれば、換気装置4は、少なくとも部分的に、少なくとも1つのフィルタ挿入物3と一体化される。具体的には、実際には、主換気ダクト40は、フィルタ挿入物3の汚れた側面に近位の位置に延びるのに適している。実際、好ましい実施形態によれば、換気ダクト40は、少なくともフィルタ挿入物3の端板から始まる長さで延びている。
【0055】
車両の循環回路のタイプは、フィルタカートリッジ1の動作モードを確立する。具体的には、実際に、フィルタカートリッジ1の下流に配置された吸引ポンプが含まれる循環回路の実施形態が提供され、これはフィルタ挿入物3を通して燃料の吸引作用を行うのに適している。さらに、フィルタカートリッジ1の上流に配置された圧力ポンプが含まれる循環回路の実施形態が提供され、これはフィルタ挿入物3を通して燃料の推進作用を行うのに適している。
【0056】
言い換えれば、循環回路は、燃料に上記の作用(吸引または推進)を実行するのに適した少なくとも1つのポンプを備え、燃料を、入口マウス210、濾過室20(フィルタ挿入物3をも通して)および出口マウス220を通して通過させる。
【0057】
好ましい実施形態によれば、換気装置4は、出口マウス220に流体接続されている。したがって、換気ダクト40を通って移動する空気および/または燃料は、出口マウス220に流入するのが好ましい。
【0058】
特に、出口マウス220を通して燃料を移動させる(吸引または推進のいずれかのポンプによって誘発される)作用は、換気ダクト40を通る換気作用も誘発する。換言すれば、フィルタカートリッジ1、特に濾過室20を通して燃料を移動させる作用を行う燃料循環回路内のポンプは、換気ダクト40を通して換気作用を行う。したがって、特に、濾過室20内の燃料を移動させる作用は、空気が濾過室20内に存在する限り、空気の換気作用と同時に起こる。
【0059】
好ましくは、濾過室20内の空気が一旦尽きると、燃料が換気ダクト40を通って流れる。しかし、説明したように、換気ダクト40および換気孔400の形状に依存して、流体は、少なくとも1つのフィルタ挿入物3を通過する抵抗の方がより少ないことを見出す。
【0060】
好ましい実施形態によれば、換気ダクト40は、出口前室220′を介して出口マウス220に順に流体接続される。
【0061】
好ましい実施形態によれば、換気ダクト40はまた、主軸X-Xと平行に、出口前室220′内へ延びる補助換気セクション42を備える。好ましくは、補助換気セクション42は、実質的に出口前室220′の軸方向の全長に沿って延びる。特に、補助換気ダクト42は、実質的に出口前室220′の軸方向長さの中央線を少なくとも超えて延びる。
【0062】
好ましい実施形態によれば、補助換気セクション42は、上述したように、換気ダクト40を通して吸い込まれた空気を、上部側壁231の近位の出口前室220′の上部領域に導くように設計されている。
【0063】
換気ダクト40に関して、補助換気セクション42も少なくとも1つの補助換気孔420を備え、吸引された空気がその補助換気孔420を通して逃げる。
【0064】
出口マウス220はまた、出口前室220に蓄積された空気を吸引するための空気換気チューブ224を有するのが好ましい。空気換気チューブ224のチューブ換気孔224′は、出口前室220の上部近くになるような位置に配置されるのが好ましい。
【0065】
好ましい実施形態によれば、補助換気セクション42は、換気チューブ224と実質的に近位の領域内にある長さまで延びている。
【0066】
好適な実施形態によれば、換気装置4は、出口マウス220の流体的に上流に、出口マウス220に近接して配置されたフィルタ要素45を含む。言い換えれば、前記フィルタ要素45は、換気ダクト40を通って移動された空気中および/または燃料中に浮遊された物質を分離するのに適している。前記フィルタ要素45は換気ダクト40内に配置されるのが好ましい。
【0067】
好ましい実施形態によれば、フィルタカートリッジ1は、流体的に入口マウス210の上流に、好ましくは入口端21に配置され、濾過室20に入る燃料を加熱するのに適したヒータ群8をさらに備える。
【0068】
好ましくは、ヒータ群8は加熱室を備え、この加熱室内へ、濾過されるべき燃料が入口マウス210を横切る前に流入する。前記加熱室内のヒータ群8はCTP要素を収容し、このCTP要素の温度が電気的に制御され得るのが好ましい。前記ヒータ群8によって、燃料中に懸濁しているパラフィンワックスおよび/または氷のゆるい結晶が溶解されるのが好ましい。
【0069】
革新的に、上記のフィルタカートリッジは、従来技術に典型的な欠点を克服する本発明の目的を完全に解決する。
【0070】
有利なことに、実際、本発明のフィルタカートリッジは、ますます効率的かつ効果的な態様で、濾過室内の空気の蓄積の問題を回避し、それによってフィルタ挿入物の各部分を燃料によって「浸かった」状態に保つのに適切である。したがって、燃料のフラッシングによって影響を受けるフィルタ表面が最大化される。
【0071】
加えて、有利なことに、本発明のフィルタカートリッジは、車両が平らな道、上り坂または下り坂を移動する際の、車両の如何なる動作条件の下でも前述の問題を解決する。
【0072】
有利なことに、前記フィルタカートリッジは、水平姿勢で動作するのに適している。
【0073】
加えて、有利なことに、大きな気泡が燃料循環回路内を循環してポンプまたはインジェクタに到達するリスクが回避される。具体的には、実際には、換気孔を通して行われる空気の換気に伴って、如何なる大きな気泡も、幾つかの小さな気泡に分割される。
【0074】
有利には、換気ダクトの使用により、回路の正確かつ完全な換気を確保することが可能になり、出口からある距離で捕えられた気泡を捕捉することが可能になる。
【0075】
有利には、換気ダクトの使用により、換気孔を容易に実現し、所望のサイズを確認し、空気および燃料の通過に対する所望の抵抗を確保することが可能になる。
【0076】
有利には、フィルタと組み合わされたダクトの使用は、そのフィルタ要素の下流での望ましくない燃料漏れを回避する。
【0077】
さらなる利点は、フィルタカートリッジ1は、インジェクタが一定量を受け取り、したがって絶え間なく効率的に作動する態様で、空気を乳化するのに適していることである。
【0078】
添付の特許請求の範囲によって規定された通りの保護範囲内に含まれた全ての付帯要件を満たすように、当業者が上述のフィルタカートリッジに変更を加え得ることは明らかである。
【符号の説明】
【0079】
1 フィルタカートリッジ
2 カートリッジ本体
20 濾過室
201 汚れ室
202 清浄室
21 入口端
210 入口マウス
22 出口端
220 出口マウス
220′ 出口前室
224 換気チューブ
224′ 換気チューブ孔
23 周辺側壁
231 上部側壁
3 フィルタ挿入物
4 換気装置
40 換気ダクト
400 換気孔
400′ ヘッド換気孔
401 噴出口
42 補助換気セクション
420 補助孔
45 フィルタ要素
5 水分離ユニット
51 分離装置
52 遮断装置
8 ヒータ群
X-X 主軸
図1
図2
図3
図3a
図4
図5
図5-1】
図6
図7