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特許7121801イオン注入装置内の粒子を低減するための導電性ビーム光学素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-09
(45)【発行日】2022-08-18
(54)【発明の名称】イオン注入装置内の粒子を低減するための導電性ビーム光学素子
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/317 20060101AFI20220810BHJP
   H01L 21/265 20060101ALI20220810BHJP
   H01J 37/05 20060101ALI20220810BHJP
【FI】
H01J37/317 Z
H01J37/317 C
H01L21/265 603Z
H01L21/265 603B
H01J37/05
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020543845
(86)(22)【出願日】2019-01-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-10
(86)【国際出願番号】 US2019014536
(87)【国際公開番号】W WO2019164614
(87)【国際公開日】2019-08-29
【審査請求日】2020-10-16
(31)【優先権主張番号】15/901,775
(32)【優先日】2018-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500324750
【氏名又は名称】バリアン・セミコンダクター・エクイップメント・アソシエイツ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】チャン, ションウー
(72)【発明者】
【氏名】シンクレア, フランク
(72)【発明者】
【氏名】リハンスキー, アレクサンドル
(72)【発明者】
【氏名】キャンベル, クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】リンドバーグ, ロバート シー.
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-506385(JP,A)
【文献】特開2015-191740(JP,A)
【文献】米国特許第09685298(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37
H01L 21/265
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン注入システムであって、
ウエハにイオンビームを伝達するための静電フィルタを備え、
前記静電フィルタは、
ウエハの近傍の出口を有するハウジングと、
前記ハウジング内にあり、イオンビームラインの周囲に配置された複数の導電性ビーム光学素子であって、
前記ハウジングの入口開口の近傍の一組の入口開口電極、
前記一組の入口開口電極から前記イオンビームラインに沿って下流にある一組の高エネルギー電極、および、
前記一組の高エネルギー電極の前記イオンビームラインに沿って下流にある一組の接地電極を含み、
前記一組の高エネルギー電極は、前記一組の入口開口電極および前記一組の接地電極よりも、前記イオンビームラインから遠く離れて配置され、前記イオンビームラインの上方にかつ前記一組の入口開口電極の最も近くに配置された前記一組の高エネルギー電極の第1の高エネルギー電極が、前記一組の高エネルギー電極の残りの高エネルギー電極よりも、前記イオンビームラインから遠く離れて配置される、複数の導電性ビーム光学素子と、
前記静電フィルタと連通する電気システムであって、前記複数の導電性ビーム光学素子に電圧および電流を供給するよう動作可能である電気システムと
を備える、イオン注入システム。
【請求項2】
前記複数の導電性ビーム光学素子のそれぞれは、前記電圧及び前記電流の別々の調整を可能にするために並列に接続されている、請求項1に記載のイオン注入システム。
【請求項3】
前記ハウジングから延びる一組の出口プレートをさらに備え、前記一組の出口プレートは、前記イオンビームの進行方向とほぼ平行に配向され、前記一組の接地電極は、前記出口の近傍の一組の出口開口を含む、請求項1に記載のイオン注入システム。
【請求項4】
前記一組の出口開口は、前記ウエハから前記出口を通って進むバックスパッタ材料の最大エンベロープを、前記一組の出口開口の間で画定し、前記一組の出口開口に対する前記一組の高エネルギー電極の位置によって、前記バックスパッタ材料の前記最大エンベロープが前記一組の高エネルギー電極に達することが防止される、請求項3に記載のイオン注入システム。
【請求項5】
前記一組の出口開口の第1の対の出口開口が、前記一組の出口プレートの下流端の近傍に配置され、前記一組の出口開口の第2の対の出口開口が、前記一組の出口プレートの上流端の近傍に配置される、請求項4に記載のイオン注入システム。
【請求項6】
前記一組の入口開口電極と前記一組の高エネルギー電極との間に配置された一組の端子電極を更に備える、請求項1に記載のイオン注入システム。
【請求項7】
高電圧電源と接地との間で前記一組の高エネルギー電極の各々を切り替えるよう動作可能な一組のリレーを更に備える、請求項1に記載のイオン注入システム。
【請求項8】
加工物にイオンビームを伝達するための静電フィルタであって、
前記加工物の近傍の出口を有するハウジングと、
前記ハウジング内の複数の導電性ビーム光学素子であって、
前記ハウジングの入口開口の近傍の一組の入口開口電極、
前記一組の入口開口電極からイオンビームラインに沿って下流にある一組の高エネルギー電極、および、
前記一組の高エネルギー電極の前記イオンビームラインに沿って下流にある一組の接地電極
を含み、
前記一組の高エネルギー電極は、前記一組の入口開口電極および前記一組の接地電極よりも、前記イオンビームラインから遠く離れて配置され、前記イオンビームラインの上方にかつ前記一組の入口開口電極の最も近くに配置された前記一組の高エネルギー電極の第1の高エネルギー電極が、前記一組の高エネルギー電極の残りの高エネルギー電極よりも、前記イオンビームラインから遠く離れて配置される、
複数の導電性ビーム光学素子と、
前記複数の導電性ビーム光学素子と連通する電気システムであって、前記複数の導電性ビーム光学素子に電圧および電流を別々に供給するよう動作可能である電気システムと
を備える、加工物にイオンビームを伝達するための静電フィルタ
【請求項9】
前記出口の近傍に配置された前記一組の接地電極の一組の出口開口と、
前記ハウジングから延びる、前記イオンビームラインとほぼ平行に配向された一組の出口プレートであって、前記一組の出口開口の第1の対の出口開口が、前記一組の出口プレートの下流端の近傍に配置され、前記一組の出口開口の第2の対の出口開口が、前記一組の出口プレートの上流端の近傍に配置される、一組の出口プレートと
をさらに備える、請求項8に記載の静電フィルタ
【請求項10】
前記一組の出口開口が、前記加工物から前記出口を通って進むバックスパッタ材料の最大エンベロープを、前記一組の出口開口の間で画定し、前記一組の出口開口に対する前記一組の高エネルギー電極の位置によって、前記一組の高エネルギー電極に達するバックスパッタ材料の量が最小に抑えられる、請求項9に記載の静電フィルタ
【請求項11】
前記一組の入口開口電極と前記一組の高エネルギー電極との間に配置された一組の端子電極を更に備える、請求項8に記載の静電フィルタ
【請求項12】
前記一組の高エネルギー電極のそれぞれの内部の内部加熱要素であって、前記一組の高エネルギー電極のそれぞれの温度を上げるよう動作可能な内部加熱要素と、
前記一組の高エネルギー電極のそれぞれの内部の前記内部加熱要素を、ON構成とOFF構成との間で切り替えるよう動作可能な一組のリレーと
をさらに備える、請求項8に記載の静電フィルタ
【請求項13】
イオン注入システム内の粒子を最小に抑える方法であって、
イオンビームラインの周囲に複数の導電性ビーム光学素子を配置することであって、
前記複数の導電性ビーム光学素子は、
ウジングの入口開口の近傍の一組の入口開口電極、
前記一組の入口開口電極から前記イオンビームラインに沿って下流に配置された一組の高エネルギー電極、および、
前記一組の高エネルギー電極の前記イオンビームラインに沿って下流に配置された一組の接地電極
を含み、
前記一組の高エネルギー電極は、前記一組の入口開口電極および前記一組の接地電極よりも、前記イオンビームラインから遠く離れて配置され、前記イオンビームラインの上方にかつ前記一組の入口開口電極の最も近くに配置された前記一組の高エネルギー電極の第1の高エネルギー電極が、前記一組の高エネルギー電極の残りの高エネルギー電極よりも、前記イオンビームラインから遠く離れて配置される、
複数の導電性ビーム光学素子を配置することと、
電気システムが、前記複数の導電性ビーム光学素子に電圧および電流を別々に供給することを可能とすること
を含む、イオン注入システム内の粒子を最小に抑える方法。
【請求項14】
出口の近傍の前記一組の接地電極の一組の出口開口を設けることと、
前記ハウジングから延びる一組の出口プレートを設けることであって、
前記一組の出口開口は、前記イオンビームラインとほぼ平行に配向され、前記一組の出口開口の第1の対の出口開口が、前記一組の出口プレートの下流端の近傍に配置され、前記一組の出口開口の第2の対の出口開口が、前記一組の出口プレートの上流端の近傍に配置され、前記一組の出口開口が、ウエハから前記出口開口を通って進むバックスパッタ材料の最大エンベロープを画定する、
前記ハウジングから延びる一組の出口プレートを設けること
を更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
内部加熱要素を用いて前記複数の導電性ビーム光学素子の少なくとも1つの温度を調整することと、
前記内部加熱要素をON構成とOFF構成との間で切り替えるよう動作可能な一組のリレーを設けること
を更に含む、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、イオン注入装置に関し、より詳細には、粒子蓄積を低減することによって、処理チャンバ内の構成要素の性能を改善し、当該構成要素の寿命を延ばすための導電性ビーム光学素子に関する。
【0002】
イオン注入は、衝撃を介してドーパントまたは不純物を基板に導入するプロセスである。半導体製造において、ドーパントは電気的、光学的、または機械的特性を変えるために導入される。例えば、ドーパントが真性半導体基板に導入されて、基板の導電性の種類およびレベルが変更されうる。集積回路(IC:integrated circuit)の製造では、正確なドーピングプロファイルによって、改善されたIC性能がもたらされる。所望のドーピングプロファイルを実現するために、1つ以上のドーパントが、様々なドーズ量および様々なエネルギーレベルでイオンの形態により注入されうる。
【0003】
イオン注入システムは、イオン源と、一連のビームライン構成要素と、を備えうる。イオン源は、所望のイオンが生成されるチャンバを備えうる。イオン源は、チャンバの近くに配置された電源および抽出電極アセンブリも備えてよい。ビームライン構成要素は、例えば、質量分析器、第1の加速又は減速段、コリメータ、及び、第2の加速又は減速段を含みうる。光線を操作するための一連の光学レンズのように、ビームライン構成要素は、所望の種、形状、エネルギー、および他の性質を有するイオンまたはイオンビームをフィルタに掛け、集束させ、および操作することができる。イオンビームは、ビームライン構成要素を通過し、プラテンまたはクランプ上に取り付けられた基板またはウエハに向かって方向付けられうる。基板は、時にロープラットと呼ばれる装置によって、1つ以上の次元において動かされうる(例えば、平行移動、回転、および傾斜)。
【0004】
イオン注入装置は、様々な異なるイオン種および抽出電圧について、安定的で良好に定められたイオンビームを生成する。ソースガス(例えば、AsH、PH、BF、および他の種)を用いた数時間の操作の後で、ビーム成分が、最終的に、ビーム光学素子上に堆積物を生成する。ウエハからの視線範囲内にあるビーム光学素子も、Siおよびフォトレジスト化合物を含む、ウエハからの残留物で覆われた状態になる。これらの残留物は、ビームライン構成要素上に蓄積し、例えば、(電気的にバイアスされた構成要素の場合には)動作中にDC電位にスパイクを引き起こす。最終的に残留物は剥がれ落ち、ウエハ上の微粒子汚染の可能性が増大する。
【0005】
材料蓄積の影響を防止する1つのやり方は、イオン注入装置システムのビームライン構成要素を周期的に交換することである。代替的に、ビームライン構成要素が手動で洗浄されてよく、これには、イオン源の電源を切ること、およびシステム内の真空を解放することが含まれる。ビームライン構成要素を交換または洗浄した後に、システムが排気され、稼働条件に達するよう電力供給される。従って、これらの保守プロセスには非常に時間が掛かることがある。さらに、ビームライン構成要素は保守プロセス中には使用されない。したがって、頻繁な保守プロセスは、IC製造に利用可能な時間を減らし、よって、全体的な製造コストを増大させうる。
【発明の概要】
【0006】
上記に鑑みて、本明細書では、エネルギーフィルターモジュール(EPM:energy purity module)内での粒子の蓄積を低減するように、EPM内の複数の導電性ビーム光学素子を構成するためのシステムおよび方法が提供される。1つ以上の実施形態において、イオン注入システムは、ウエハにイオンビームを伝達するための静電フィルタを含む。静電フィルタは、ウエハの近傍の出口を有するハウジングと、当該ハウジング内の複数の導電性ビーム光学素子と、を含みうる。複数の導電性ビーム光学素子は、イオンビームラインの周囲に配置されている。複数の導電性ビーム光学素子は、ハウジングの入口開口の近傍の一組の入口開口電極と、一組の入口開口電極からイオンビームラインに沿って下流にある一組の高エネルギー電極と、を含みうる。複数の導電性ビーム光学素子は、一組の高エネルギー電極のイオンビームラインに沿って下流にある一組の接地電極をさらに含んでよく、一組の高エネルギー電極は、一組の入口開口電極及び一組の接地電極よりも、イオンビームラインから遠く離れて配置されうる。イオン注入システムは、静電フィルタと連通する電気システムをさらに含んでよく、電気システムは、複数の導電性ビーム光学素子に電圧および電流を供給するよう動作可能である。
【0007】
1つ以上の実施形態において、加工物にイオンビームを伝達するためのエネルギーフィルターモジュール(EPM)は、ウエハの近傍の出口を有するハウジングと、当該ハウジング内の複数の導電性ビーム光学素子と、を含みうる。複数の導電性ビーム光学素子は、ハウジングの入口開孔の近傍の一組の入口開孔電極と、一組の入口開孔電極からイオンビームラインに沿って下流にある一組の高エネルギー電極と、を含みうる。複数の導電性ビーム光学素子は、一組の高エネルギー電極のイオンビームラインに沿って下流にある一組の接地電極をさらに含んでよく、一組の高エネルギー電極は、一組の入口開口電極及び一組の接地電極よりも、イオンビームラインから遠く離れて配置される。EPMは、複数の導電性ビーム光学素子と連通する電気システムをさらに備えてよく、電気システムは、複数の導電性ビーム光学素子のそれぞれに電圧及び電流を別々に供給するよう動作可能である。
【0008】
1つ以上の実施形態において、イオン注入システム内の粒子を最小に抑える方法は、イオンビームラインの周囲に複数の導電性ビームを配置することを含みうる。複数の導電性ビーム光学素子は、ハウジングの入口開口の近傍に配置された一組の入口開口電極と、一組の入口開口電極から、イオンビームラインに沿って下流に配置された一組の高エネルギー電極と、を含みうる。複数の導電性ビーム光学素子は、一組の高エネルギー電極のイオンビームラインに沿って下流に配置された一組の接地電極をさらに含んでよく、一組の高エネルギー電極は、一組の入口開口電極及び一組の接地電極よりも、イオンビームラインから遠く離れて配置される。方法は、電気システムが、複数の導電性ビーム光学素子のそれぞれに電圧および電流を別々に供給することを可能とすることをさらに含みうる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の実施形態に係るイオン注入システムを示す概略図である。
図2A】本開示の実施形態に係る、図1に示したイオン注入システムの構成要素を示す半透視等角図である。
図2B】本開示の実施形態に係る、図1に示したイオン注入システムの構成要素を示す半透視等角図である。
図3】本開示の実施形態に係る、図2の構成要素を示す側方断面図である。
図4】本開示の実施形態に係る、電気システムにより動作する図3の構成要素を示す側方断面図である。
図5】本開示の実施形態に係る、気体供給により動作する図3の構成要素を示す側方断面図である。
図6】本開示の実施形態に係る、一組のリレーにより動作する図3の構成要素を示す側方断面図である。
図7】本開示の実施形態に係る、一組のリレーにより動作する図3の構成要素を示す側方断面図である。
図8】本開示の実施形態に係る例示的な方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図面は、必ずしも縮尺どおりではない。図面は、単なる表現であり、本開示の特定のパラメータを表すことを意図しない。図面は、本開示の例示的な実施形態を示すことを意図しており、したがって、範囲を限定するものと見做されない。図面では、同様の番号が同様の要素を表す。さらに、図面のいくつかにおける特定の要素は、説明を明確にするために、省略されるか、または縮尺通りには図示されていないことがある。さらに、明確にするために、いくつかの参照番号は、或る特定の図面で省略されていることがある。
【0011】
ここで、本開示に係るシステムおよび方法を、システムおよび方法の実施形態が示された添付の図面を参照しながら、以下により完全に説明する。システムおよび方法は、多くの異なる形態で具現化されてよく、本明細書に記載される実施形態に限定されるものと見做されない。その代わりに、上記実施形態は、本開示が一貫しておりかつ完全となるように提供され、当業者にシステムおよび方法の範囲を完全に伝える。
【0012】
便宜上および明確にするために、「上部(top)」、「底部(bottom)」、「上方(upper)」、「下方(lower)」、「垂直方向(vertical)」、「水平方向(horizontal)」、「横方向(lateral)」、および「縦方向(longitudinal)」といった用語は、本明細書では、図に見られるように、様々な構成要素およびそれらを構成する部分の相対的な配置および配向を説明するために使用される。専門用語には、具体的に言及された単語、その派生語、および、同様の重要度の単語が含まれる。
【0013】
本明細書では、単数形で列挙され、「a」または「an」という単語が続く要素または動作は、複数の要素または動作を除外しないものとして、そのような除外が明示的に言及されないうちは理解される。さらに、本開示の「一実施形態(one embodiment)」への言及は、列挙された特徴も組み込む追加的な実施形態の存在を除外するものとして解釈されることを意図しない。
【0014】
本明細書では、イオン注入装置内の粒子を低減させるためのアプローチが提供される。静電フィルタは、ハウジングと、当該ハウジング内の複数の導電性ビーム光学素子と、を含みうる。導電性ビーム光学素子は、ウエハに向かって方向付けられたイオンビームラインの周囲に配置されており、ハウジングの入口開口の近傍の入口開口電極を含みうる。導電性ビーム光学素子は、入口開口電極から、イオンビームラインに沿って下流にある高エネルギー電極、及び、高エネルギー電極から下流にある接地電極をさらに含みうる。高エネルギー電極は、入口電極および接地電極よりも、イオンビームラインから遠く離れて配置されており、よって、高エネルギー電極は、ウエハから戻るバックスパッタ材料のエンベロープにより覆われることから物理的に遮断され又は護られる。静電フィルタは、導電性ビーム光学素子のそれぞれに電圧および電流を供給するための電気システムをさらに含みうる。
【0015】
静電フィルタは、バックスパッタ材料が高エネルギー電極に到達しにくくなるように、複数の高エネルギー電極が接地電極の奥に「隠されている」エネルギーフィルターモジュールでありうる。いくつかの実施形態では、EPMの1つ以上の導電性ビーム光学素子は内部加熱要素を含み、内部加熱要素は、上記1つ以上の導電性ビーム光学素子の温度を上げるよう動作可能である。EPM内でのガス放出からのその場での洗浄および化学エッチングによって、高エネルギー電極および開口が、バックスパッタ材料の堆積から免れるように保たれる。その結果、イオン注入装置の性能及び精度が向上する。
【0016】
ここで図1を参照すると、ウエハまたは加工物にイオンビームを伝達し、静電フィルタ内の導電性ビーム光学素子といった1つ以上の構成要素の、その場でのプラズマ洗浄を実行するためのイオン注入装置またはイオン注入システム(以下、「システム」)10を示す例示的な実施形態が示されている。システム10は、他の構成要素のうち、イオンビーム18を生成するためのイオン源14と、イオン注入装置と、一連のビームライン構成要素と、を含むプロセスチャンバを表している。イオン源14は、ガス流24を受け取るためのチャンバを備えることが可能であり、イオンを生成する。イオン源14は、上記チャンバの近くに配置された電源および抽出電極アセンブリも備えてもよい。ビームライン構成要素16は、例えば、質量分析器34、第1の加速又は減速段36、コリメータ38、及び、第2の加速又は減速段に対応するエネルギーフィルターモジュール(EPM)40を含みうる。説明のために、以下では、ビームライン構成要素16のEPM40に関して説明するが、その場でのプラズマ洗浄について本明細書で記載する実施形態は、システム10の様々な/追加の構成要素にも適用可能である。
【0017】
例示的な実施形態では、ビームライン構成要素16は、イオンまたはイオンビーム18を、所望の種、形状、エネルギー、および他の性質を有するように、フィルタに掛け、集束させ、操作しうる。ビームライン構成要素16を通過するイオンビーム18は、処理チャンバ46内のプラテン又はクランプ上に取り付けられた基板に向かって方向付けられうる。基板は、1つ以上の次元において動かされうる(例えば、平行移動、回転、および傾斜)。イオンビーム18は、図示されるイオンビーム18のほぼ中央に対応するイオンビーム線に沿って進む。
【0018】
図示されるように、イオン源14のチャンバと共に動作可能な1つ以上の供給源28があってもよい。いくつかの実施形態では、供給源28から供給される材料は、ソース材料および/または追加の材料を含みうる。ソース材料は、イオンの形態で基板に導入されるドーパント種を含みうる。一方、追加の材料は、ソース材料と共にイオン源14のイオン源チャンバに導入される希釈剤を、イオン源14の上記チャンバ内のソース材料の濃度を希釈するために含むことが可能である。追加の材料は、洗浄剤(例えば、エッチャントガス)であって、イオン源14のチャンバ内に導入され、システム10内を搬送されて、1つ以上のビームライン構成要素16を洗浄する洗浄剤も含んでよい。
【0019】
様々な実施形態において、様々な種が、供給源および/または追加の材料として使用されてよい。ソース材料および/または追加の材料の例には、ホウ素(B)、炭素(C)、酸素(O)、ゲルマニウム(Ge)、リン(P)、ヒ素(As)、ケイ素(Si)、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、窒素(N)、水素(H)、フッ素(F)、及び、塩素(Cl)を含有する原子種又は分子種が含まれうる。当業者であれば、先に列挙した種は非限定的であり、他の原子種または分子種も使用されうることが分かるであろう。用途に従って、上記種がドーパントまたは追加の材料として使用されうる。具体的には、1の用途においてドーパントとして使用される1の種が、他の用途において追加の材料として使用されてよく、またはその逆も然りである。
【0020】
例示的な実施形態では、ソース材料および/または追加の材料は、気体または蒸気の形態でイオン源14のイオン源チャンバ内に供給される。ソース材料および/または追加の材料が気体または蒸気の形態ではない場合には、気化器(図示せず)を供給源28の近くに設けて、材料を気体状または蒸気の形態に変換することができる。ソース材料および/または追加の材料がシステム10に供給される量および速度を制御するために、流量コントローラ30が設けられうる。
【0021】
EPM40は、イオンビーム18の偏向、減速、及び焦点を別々に制御するよう動作可能なビームライン構成要素である。一実施形態において、EPM40は、垂直静電エネルギーフィルタ(VEEF:vertical electrostatic energy filter)または静電フィルタ(EF:electrostatic filter)である。以下でより詳細に説明するように、EPM40は、イオンビーム18の上方に配置された一組の上方電極と、イオンビーム18の下方に配置された一組の下方電極と、を含む電極構成を含みうる。一組の上部電極および一組の下部電極は固定的であり、固定の位置を有しうる。一組の上部電極と一組の下部電極との間の電位差も、イオンビームの偏向、減速、および/または焦点を別々に制御するため、中心イオンビーム軌道に沿って各ポイントでイオンビームのエネルギーを反射させるために、中心イオンビーム軌道に沿って変更することが可能である。
【0022】
ここで図2A図2Bを参照して、例示的な実施形態に係るEPM40をより詳細に説明する。図示されるように、EPM40は、EPM40の上方を延在しEPM40を部分的に包むEPMチャンバ50を含む。EPMチャンバ50は、ガスを受け取って、その中でプラズマを生成するよう動作可能である。一実施形態において、図2Aに示すように、EPMチャンバ50は、側壁54を通るガス入口52で、イオン源14からガス流24(図1)を受け取りうる。他の実施形態において、図2Bに示すように、EPMチャンバ50は、EPMチャンバ50の上部60を通るガス入口58で、ガス流56を受け取りうる。ガス56は、イオン源14からのガス流24とは別に、補助ガス源62から供給されうる。例示的な実施形態では、EPMチャンバ50へのガス56の注入速度は、流量コントローラ64(例えば、バルブ)によって制御されうる。
【0023】
EPM40はさらに、EPMチャンバ50の圧力を調整するために、1つ以上の真空ポンプ66(図1)により稼働する。例示的な実施形態では、真空ポンプ66はプロセスチャンバ46に結合されており、圧力が、1つ以上の流路68を通じて、EPMチャンバ50内で調整される。他の実施形態において、EPM40は、EPMチャンバ50により直接的に結合された1つ以上の追加のポンプを含みうる。
【0024】
ここで図3を参照すると、本開示に係るEPM40の構造および動作を示す例示的な実施形態が示されている。図示されるように、EPM40は、イオンビーム18の互いに対向し合う側に沿って配置された複数のグラファイト電極棒のような、複数の導電性ビーム光学素子70A~70Pを含みうる。イオンビーム18がEPM40を通って伝達され、ハウジング49の入口開口53から入って出口47を出て、ウエハ57及び線量カップ59と衝突する。図示されるように、複数の導電性ビーム光学素子70A~70Pは、イオンビーム18(例えば、リボンビーム)を通過させるための空間/開口を提供する。上述のように、真空ポンプ66が、ハウジング49へと、その内部の環境の圧力を調節するために直接的または間接的に接続されうる。
【0025】
例示的な実施形態では、導電性ビーム光学素子70A~70Pは、互いに電気的に結合された一対の導電片を含む。代替的に、導電性ビーム光学素子70A~70Pは、イオンビームを通過させるための開口をそれぞれが含む一連の一体構造であってよい。図示される実施形態では、各電極対の上方部分および下方部分は、そこを通過するイオンビームを偏向させるために、(例えば、別個の導電片において)異なる電位を有しうる。複数の導電性ビーム光学素子70A~70Pは、16個の要素を含むものとして描かれているが、異なる数の要素(または電極)が利用されてよい。例えば、導電性ビーム光学素子70A~70Pの構成は、3~10組の範囲の電極を利用しうる。
【0026】
非限定的な一実施形態において、導電性ビーム光学素子70A~70Pは、ハウジング49の入口開口53の近傍の、一組の入口開口電極または開口端子70A~70Bを含みうる。一組の入口開口電極70A~70Bの下流には、一組の高エネルギー電極70C~70Fが存在する。一組の入口開口電極70A~70Bと一組の高エネルギー電極70C~70Fとの間には、一組の端子電極70G~70Hを設けてもよい。複数の導電性ビーム光学素子70A~70Pは、一組の接地電極70I~70Pをさらに含んでよく、接地電極70M、70N、70O、および70Pは、出口47の近傍に配置された一組の出口開口を表しうる。示されるように、一組の高エネルギー電極70C~70Fは、一組の入口開口電極70A~70Bおよび一組の接地電極70I~70Pよりも、イオンビーム18から遠く離れて配置されている。
【0027】
さらに図示されるように、ハウジング49は、当該ハウジング49から延びる一組の出口プレート45を含みうる。いくつかの実施形態において、一組の出口プレート45はそれぞれ、イオンビーム18の進行方向にほぼ平行に配向されている。示されるように、接地電極70Oおよび70Pといった第1の一対の出口開口が、一組の出口プレート45の下流端51の近傍に配置されている。接地電極70Mおよび70Nといった第2の一対の出口開口が、一組の出口プレート45の上流端41の近傍に配置されている。第1および第2の対の出口開口は、イオンビーム18をウエハ57へと伝達するように、及び、ウエハ57から、イオンビーム18の方向に沿ってEPM40の中へと跳ね返る材料を制御するように動作可能である。
【0028】
例えば、使用中に、ウエハ57上のイオンビーム18の衝撃によって、イオンビーム18に沿って上流へと及びEPM40の中へと進む傾向のある材料が発生する。一組の出口開口70M~70Pが、バックスパッタ材料の最大エンベロープ61と、ウエハ57から出口47を通って一組の出口開口70M~70Pの間を進むバックスパッタ材料の実際のエンベロープ63と、を画定する。いくつかの実施形態において、最大エンベロープ61は、EPM40内の出口開口70Oと70Pとの間及び接地電極70Kと70Lとの間の領域によって画定される。実際のエンベロープ63は、例えばハウジング49の出口47の近傍の、イオンビーム18の上方端/上方エッジ及び下方端/下方エッジによって画定されうる。
【0029】
示されるように、一組の出口開口70M~70P、並びに接地電極70I、70J、70K、及び70Lに対する一組の高エネルギー電極70C~70Fの位置によって、バックスパッタ材料の最大エンベロープ61とバックスパッタ材料の実際のエンベロープ63との双方が、一組の高エネルギー電極70C~70Fに達することが防止される。上記の他のやり方では、一組の高エネルギー電極70C~70Fが、イオンビーム18から離れて配置されており、これにより、一組の出口開口70M~70P、並びに接地電極70I、70J、70K、及び70Lの奥で隠されまたはブロックされる。
【0030】
ここで図4を参照しながら、本開示の実施形態に係るEPM40と連通する電気システム65についてより詳細に説明する。図示されるように、電気システム65は、複数の導電性ビーム光学素子70A~70Pのそれぞれに電圧および電流を供給するよう動作可能である。いくつかの実施形態では、複数の導電性ビーム光学素子70A~70Pがそれぞれ、電気システム65を介して並列に接続され、電圧及び電流の別々の調整が可能となる。いくつかの実施形態では、電気システム65は、第1の電源67(例えば、端子)および第2の電源69(例えば、接地)を含みうる。第1の電源67及び第2の電源69は、複数の導電性ビーム光学素子70A~70Pに高電圧(例えば200V)を供給するよう動作可能である。より具体的には、第1の電源67は、第1の電気経路73を介して、一組の入口開口電極70A~70Bと、一組の端子電極70G~70Hと、に電気的に接続されうる。その一方、第2の電源69は、第2の電気経路75を介して、一組の高エネルギー電極70C~70Fのそれぞれと、一組の接地電極70I~70Pのそれぞれと、に接続されうる。本明細書では、高エネルギー電極という用語は、第1の電源67または第2の電源69から高電圧を受け取る電極を指す。
【0031】
いくつかの実施形態において、複数の導電性ビーム光学素子70A~70Pの少なくとも1つの導電性ビーム光学素子は、内部加熱要素を含み、内部加熱要素は、上記少なくとも1つの導電性ビーム光学素子の温度を上げるよう動作可能である。例えば、内部加熱要素5は、一組の入口開口電極70A~70Bのうちの1つ以上の中にあってよく、かつ、一組の端子電極70G~70Hのうちの1つ以上の中にあってもよい。内部加熱要素5はまた、一組の接地電極70I~70Pのそれぞれの中にあってもよい。図示されるように、内部加熱要素5は、第3電気経路77および第4電気経路79を介して給電されうる。いくつかの実施形態では、内部加熱要素5は、各電極内に埋設された石英ヒータランプであってあってよく、固体のバックスパッタ材料78を蒸発させてEPM40から圧送して出しうる気体状とする。
【0032】
図4の非限定的な実施形態では、4つの高エネルギー電極70C~70Fが設けられている。高エネルギー電極70C~70Fは、一組の接地電極70I~70Pの奥に「隠れる」ように配置されており、よって、高エネルギー電極70C~70Fが、最大エンベロープ61および/または実際のエンベロープ63の範囲内で、バックスパッタ材料の飛散および被覆から護られる。バックスパッタ材料は、一組の入口開口電極70A~70B、一組の端子電極70G~70H、及び、一組の接地電極70I~70Pによって止められて集められる。一組の入口開口電極70A~70B、一組の端子電極70G~70H、および/または、一組の接地電極70I~70Pのうちの1つ以上の中に埋設された加熱要素は、固体バックスパッタ材料78を蒸発させて、EPM40から圧送して出しうる気体状にしうる。
【0033】
いくつかの実施形態では、固体バックスパッタ材料の蓄積は、例えば、カルボラン、SiF、またはGeFがソース材料として使用される場合には、より深刻でありうる。過剰な蓄積を防止するために、本開示のEPM40は、処理モードと洗浄モードとの2つのモードで動作しうる。処理モードの間には、EPM40は、通常のようにイオンビーム18を処理するよう稼働しうる。洗浄モードの間には、EPM40がその場で洗浄されうる。非限定的な一実施形態において、第2の電圧及び第2の電流が、EPM40の導電性ビーム光学素子70A~70Pに供給されうる。導電性ビーム光学素子70A~70Pは、並列で(例えば、個別に)または直列で電気的に駆動することが可能であり、導電性ビーム光学素子70A~70Pの均一なおよび/または独立した洗浄が可能となる。第2の電圧および第2の電流が、第1の電源67によって供給されてよい。
【0034】
次に図5を参照すると、EPM40は、洗浄モードの間にその場で洗浄されうる。洗浄を実現するために、エッチャントガス(例えば、HまたはO)が、ガス供給構成要素81から、選択された流量/注入速度で、EPM40に導入されうる。例示的な実施形態では、ガス供給構成要素81は、ガス放出装置であり、エッチャントガスがEPM40の中で分配されることを可能とするよう複数の開口が形成された導管を含んでいる。例えば、ガス放出装置を通じて、1~5標準立方センチメートル/分(SCCM:standard cubic centimeters per minute)のO2又はH2といったガスがEPMチャンバに導入されうる。上記のガスによって、一組の入口開口電極70A~70B、一組の端子電極70G~70H、および、一組の接地電極70I~70Pから、バックスパッタ材料78の堆積物が化学的にエッチング除去されうる。他の非限定的な例では、エッチャントガスが、約25SCCM~約200SCCMの流量で導入されうる。一実施形態では、エッチャントガスは、導電性ビーム光学素子70A~70Pの周囲の高圧流を維持するために、約50SCCM~約100SCCMで導入されうる。
【0035】
エッチャントガスの洗浄剤として、様々な種が導入されうる。洗浄剤は、化学的に反応性の種を含有する原子種または分子種であってよい。そのような種は、イオン化されると、導電性ビーム光学素子70A~70Pの1つ以上に蓄積された堆積物と化学的に反応しうる。化学的に反応性の種を有する洗浄剤が本明細書では記載されるが、本開示では、化学的に不活性の種を利用することが排除されない。他の実施形態では、洗浄剤は、イオン化されると、原子質量単位(amu)が高いイオンを形成するために、重い原子種を含みうる。洗浄剤の非限定的な例には、H、He、N、O、F、Ne、Cl、Ar、Kr、およびXe、またはこれらの組み合わせを含有する原子種または分子種が含まれうる。一実施形態では、NF、O、若しくは、ArとFの混合物、または、これらの組合せが、洗浄剤として使用されうる。
【0036】
エッチャントガスの組成は、導電性ビーム光学素子70A~70P上に形成される堆積物の組成に基づいて化学エッチングを最適化するよう選択することが可能である。例えば、フッ素系のプラズマが、B、P、およびAsを含有するビーム成分をエッチングするために使用されてよく、酸素系のプラズマが、フォトレジスト材料をエッチングするために使用されてよい。一実施形態では、Arまたは他の重い種をプラズマ混合物に添加することにより、イオン衝撃が増大し、結果的に、化学的に強化されたイオンスパッタリングプロセスが使用される場合に、導電性ビーム光学素子70A~70Pからの堆積物の除去速度が改善される。プラズマまたはイオン衝撃はまた、表面の加熱を引き起こし、化学エッチング速度を支援し、かつ、導電性ビーム光学素子70A~70Pの表面から堆積物を振り落とすことを支援する。
【0037】
次に、図6図7を参照しながら、本開示の実施形態に係るEPM40内の一組のリレー84A~84Dの動作について、より詳細に説明する。図示されるように、EPM40は、高電圧の第1の電源67と第2の電源69(接地)との間で、一組の高エネルギー電極70C~70Fのそれぞれを切り替えるよう動作可能な一組のリレー84A~84Dを含みうる。図示される構成では、高エネルギー電極70C~70Fは、中に埋設された内部加熱要素5を有しうる。図6に示されるように、イオン注入の間、高エネルギー電極70C~70Fは、高電圧電源67に接続されており、内部加熱要素5はOFFにされている。
【0038】
図7に示されるように、ビームのセットアップ中、または注入装置がアイドル状態の期間中には、高エネルギー電極70C~70Fが第2の電源69に接続され、内部加熱要素5がオンにされうる。いくつかの実施形態では、高エネルギー電極70C~70Fは、注入中に200oCを上回るよう維持され、高エネルギー電極70C~70Fが、気体状のバックスパッタ材料の凝縮による堆積から免れることを保証する。EPM40内のガス供給構成要素81からの、その場での洗浄および化学エッチングによって、高エネルギー電極70C~70F、並びに、出口開口70M、70N、70O、及び70Pが、バックスパッタ材料の堆積から免れる。その結果、イオン注入装置の性能及び精度が向上する。
【0039】
ここで図8を参照すると、本開示の実施形態に係るイオン注入装置内の粒子を低減するための方法100を示すフロー図が示されている。方法100は、図1図7に示された図に関連して記載される。
【0040】
ブロック101において、方法100は、EPMのハウジングの入口開口の近傍に配置された一組の入口開口電極を設けることを含みうる。いくつかの実施形態では、EPMは、一組の入口開口電極を含む複数の導電性ビーム光学素子を備える。いくつかの実施形態では、複数の導電性ビーム光学素子は、複数の電極棒を含む。
【0041】
ブロック103において、方法100は、一組の入口開口電極から、イオンビームラインに沿って下流に配置された一組の高エネルギー電極を設けることを含みうる。ブロック105において、方法100は、一組の高エネルギー電極のイオンビームラインに沿って下流に配置された一組の接地電極を設けることを含んでもよく、一組の高エネルギー電極は、一組の入口開口電極、および、一組の接地電極よりも、イオンビームラインから遠く離れて配置されている。
【0042】
いくつかの実施形態では、方法100のブロック105は、出口の近傍の一組の接地電極の一組の出口開口を設けるステップと、ハウジングから延びる一組の出口プレートを設けるステップと、を含んでよく、一組の出口開口は、イオンビームラインとほぼ平行に配向される。方法100のブロック105は、一組の出口プレートの下流端の近傍に、一組の出口開口の第1の対の出口開口を配置するステップをさらに含んでよく、ここで、一組の出口開口の第2の対の出口開口が、一組の出口プレートの上流端の近傍に配置される。一組の出口開口は、ウエハから、その後出口開口を通って進むバックスパッタ材料のエンベロープを画定しうる。
【0043】
ブロック107において、方法100は、電気システムが、複数の導電性ビーム光学素子のそれぞれに電圧および電流を別々に供給することを可能とすることを含みうる。いくつかの実施形態では、処理モードの間に、第1の電圧及び第1の電流が複数の導電性ビーム光学素子に供給される。いくつかの実施形態では、第1の電圧および第1の電流は、直流(DC)電源によって供給される。いくつかの実施形態では、方法100は、処理モードから洗浄モードへと切り替えることをさらに含む。いくつかの実施形態では、ブロック107は、所定の閾値、例えばビームグリッチの最大許容数に達した場合に、処理モードから洗浄モードに自動的に切り替えるステップを含む。
【0044】
洗浄モードの間には、第2の電圧および第2の電流が、導電性ビーム光学素子に供給されうる。いくつかの実施形態では、第2の電圧および第2の電流が、プラズマを生成するために導電性ビーム光学素子に印加される。いくつかの実施形態では、第2の電圧および第2の電流は、直流(DC)電源または無線周波数(RF)電源から供給される。
【0045】
ブロック109において、方法100は、イオン注入装置内の粒子を低減し及びエッチングを可能にするために、エッチャントガスを供給すること、および/または、複数の導電性ビーム光学素子のうちの1つ以上の温度を調整することを含みうる。いくつかの実施形態では、エッチャントガスの注入速度が調整される。いくつかの実施形態では、エッチャントガスの組成は、構成要素の表面上に形成される堆積物の組成に基づいて構成要素のエッチングを最適化するよう選択される。いくつかの実施形態では、複数の導電性ビーム光学素子の少なくとも1つの導電性ビーム光学素子が、内部加熱要素を含み、内部加熱要素は、上記少なくとも1つの導電性ビーム光学素子の温度を上げるよう動作可能である。
【0046】
上記に鑑みて、本明細書に開示される実施形態によって、少なくとも以下の利点が実現される。第1の利点において、EPMは、EPM電極および開口へのバックスパッタ材料の堆積を解消しまたは大幅に低減することによって粒子を低減し、したがって、イオン注入装置のデバイス歩留まりおよび生産性を改善する。第2の利点において、EPMは、接地電極および開口の奥に隠された、たった4つの高エネルギー電極を含むことが可能であり、よって、高エネルギー電極が、バックスパッタ材料の飛沫および被覆から護られる。バックスパッタ材料は、接地電極/開口、及び端子電極/開口によって止められ、集められる。第3の利点において、導電性ビーム光学素子の1つ以上が、バックスパッタ材料を蒸発させて気体状にしてEPMから圧送して出すために、内部に埋設されたヒータランプを含みうる。隠された高エネルギー電極に加えて、セルフ洗浄及びその場での洗浄の仕組みによって、全てのEPM電極及び開口が、注入中に堆積するバックスパッタ材料から免れることが支援される。
【0047】
本開示の特定の実施形態が本明細書に記載されてきたが、当該技術分野が許す限り範囲が広く本明細書が同様に解されるため、本開示はこれらに限定されない。したがって、上記の説明は、限定として解釈されるべきではない。当業者は、本明細書に添付された特許請求の範囲および思想の範囲内での他の変更を想定するであろう。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8