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特許7121804高熱伝導率アルミニウム合金及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-09
(45)【発行日】2022-08-18
(54)【発明の名称】高熱伝導率アルミニウム合金及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 21/02 20060101AFI20220810BHJP
   C22F 1/043 20060101ALI20220810BHJP
   B22D 17/00 20060101ALI20220810BHJP
   B22D 18/02 20060101ALI20220810BHJP
   C22F 1/00 20060101ALN20220810BHJP
【FI】
C22C21/02
C22F1/043
B22D17/00 332
B22D18/02 G
B22D18/02 J
C22F1/00 681
C22F1/00 611
C22F1/00 691B
C22F1/00 691C
C22F1/00 602
C22F1/00 650F
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020552094
(86)(22)【出願日】2019-08-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-22
(86)【国際出願番号】 CN2019100502
(87)【国際公開番号】W WO2020020382
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2020-06-16
(31)【優先権主張番号】201811532160.5
(32)【優先日】2018-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520215980
【氏名又は名称】珠海市潤星泰電器有限公司
【氏名又は名称原語表記】ZHUHAI RUNXINGTAI ELECTRICAL CO., LTD
【住所又は居所原語表記】Jieyong Industrial Park,Qianshan Town,Xiangzhou Park Zhuhai,Guangdong 519075 (CN)
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】任懐徳
(72)【発明者】
【氏名】王継成
(72)【発明者】
【氏名】李谷南
(72)【発明者】
【氏名】譚劼
(72)【発明者】
【氏名】張瑩
(72)【発明者】
【氏名】王明峰
【審査官】櫛引 明佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-013475(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108531769(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108286001(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105296818(CN,A)
【文献】特表2012-519772(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0009081(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0107599(US,A1)
【文献】特開2015-078399(JP,A)
【文献】Prakash, P.B. et al.,Microstructure Analysis and Evaluation of Mechanical Properties of Al 7075 GNP's Composites,Materials Today: Proceedings,2018年06月19日,Volume 5, Issue 6, Part 2,Pages 14281-14291
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 21/00-21/18
C22F 1/043
B22D 17/00
B22D 18/02
C22F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高熱伝導率アルミニウム合金であって、
重量百分率で以下の成分を含む、
Si 6.5~8.5%
Fe 0.2~0.5%
Zn 0.8~3%
V 0.03~0.05%
Sr 0.01~1%
グラフェン 0.02~0.08%
残量がAlである、ことを特徴とする高熱伝導率アルミニウム合金。
【請求項2】
前記高熱伝導率アルミニウム合金は、重量百分率で以下の成分を含む、
Si 6.8~7.8%
Fe 0.25~0.45%
Zn 1~2.5%
V 0.035~0.045%
Sr 0.015~0.8%
グラフェン 0.04~0.07%
残量がAlである、ことを特徴とする請求項1に記載の高熱伝導率アルミニウム合金。
【請求項3】
前記高熱伝導率アルミニウム合金は、重量百分率で以下の成分を含む、
Si 7~7.5%
Fe 0.3~0.4%
Zn 1.5~2%
V 0.038~0.042%
Sr 0.02~0.6%
グラフェン 0.05~0.06%
残量がAlである、ことを特徴とする請求項2に記載の高熱伝導率アルミニウム合金。
【請求項4】
高熱伝導率アルミニウム合金の製造方法であって、
請求項1に記載の重量百分率でAl、Si、Fe、Zn、V、Sr、及びグラフェンを用意し、700~750℃の製錬温度で溶融するまで共に加熱し、アルミニウム合金液を得る工程(1)と、
アルミニウム合金液を噴射装置に投入し、不活性ガスをキャリアとして吹込み精錬を8~18分間行なって、精錬されたアルミニウム合金液を15~30分間静置した後、ろ過する工程(2)と、
工程(2)でろ過されたアルミニウム合金液をロータ脱気装置に移し、ロータ脱気装置のロータ回転速度を500~600rpm、ガス流量を10~20L/minとしてアルミニウム合金液に窒素ガスを回転させながら吹き込み、二次脱気を行う工程(3)と、
工程(3)で得られた脱気後のアルミニウム合金液を、半固体状になるまで580~610℃で機械撹拌し、アルミニウム合金の半固体状スラリーを得る工程(4)と、
工程(4)で得られたアルミニウム合金の半固体状スラリーを、575~590℃の温度、1.5~2.5m/sの射出速度で、射出圧力を30~50MPa、増圧圧力を60~80MPaとして成形した後、圧力を7~15秒間保持し、高熱伝導率アルミニウム合金を得る工程(5)と、を含む、
ことを特徴とする高熱伝導率アルミニウム合金の製造方法。
【請求項5】
工程(5)でアルミニウム合金の半固体状スラリーを成形した後、300~500℃の温度で1~2時間時効処理し、冷却することにより、高熱伝導率アルミニウム合金を得る工程(6)をさらに含む、
ことを特徴とする請求項4に記載の高熱伝導率アルミニウム合金の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2018年12月14日に出願された発明の名称を「高熱伝導率アルミニウム合金及びその製造方法」とする中国特許出願第201811532160.5号の優先権利益を主張し、その開示の全体が本明細書に参考として援用される。
【0002】
本発明は、金属材料分野に関し、特に、アルミニウム合金に関する。
【背景技術】
【0003】
現代の電子情報技術及び製造技術の急速な発展に伴い、電子システム及び5G通信機器は、大規模集積化、小型化、軽量化、高出力化などに向かって発展していくため、電子システム及び5G通信機器の放熱に深刻な課題をもたらす。関連の研究データによると、電子製品の故障の約半分は、過熱及び熱関連の問題が原因である。研究資料によれば、半導体素子の温度が10℃上昇するごとに、信頼性が50%低下し、素子が非常に高い温度で動作する場合、故障率は温度の上昇とともに指数関数的に増加することも示している。
【0004】
アルミニウム合金は、総合性能が優れ、低密度、高強度、良好な電気及び熱伝導性、簡単な加工などの優位性を有し、製品構造及び放熱の要件を十分に満たしているため、自動車、電子、通信などの分野に広く使用されている。純アルミニウムは室温で約238W/(m・K)の高熱伝導率を有し、変形アルミニウム合金(例えば、6063)も209W/(m・K)の高熱伝導率を有する。しかしながら、合金元素の増加に伴い、アルミニウム合金の熱伝導率が徐々に低下し、元素によって合金の熱伝導率に対する影響が大きく異なる。これは、主に金属の自由電子の伝導メカニズムによって決定される。アルミニウム合金の電気伝導特性は、結晶構造の格子歪、欠陥、不純物、相成分、及び分布などに関連している。
【0005】
そのため、使用寿命を延ばし、過熱による故障を低減する高熱伝導率アルミニウム合金を提供することは、現在、通信用電子機器の分野で解決すべき課題であり、通信用電子機器の動作性能を向上させるための重要な工学的応用価値がある。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、高い導電率、優れた鋳造性能及び半固状加圧鋳造性能を有する高熱伝導率アルミニウム合金及びその製造方法を提供することにある。
【0007】
本発明の一態様によれば、高熱伝導率アルミニウム合金であって、重量百分率で以下の成分を含む高熱伝導率アルミニウム合金が提供される。
Al 80~90%
Si 6.5~8.5%
Fe 0.2~0.5%
Zn 0.8~3%
V 0.03~0.05%
Sr 0.01~1%
グラフェン 0.02~0.08%
また、高熱伝導率アルミニウム合金含は、重量百分率で以下の成分を含んでもよい。
Al 82~90%
Si 6.8~7.8%
Fe 0.25~0.45%
Zn 1~2.5%
V 0.035~0.045%
Sr 0.015~0.8%
グラフェン 0.04~0.07%
また、高熱伝導率アルミニウム合金は、重量百分率で以下の成分を含んでもよい。
Al 85~88%
Si 7~7.5%
Fe 0.3~0.4%
Zn 1.5~2%
V 0.038~0.042%
Sr 0.02~0.6%
グラフェン 0.05~0.06%
また、高熱伝導率アルミニウム合金は、重量百分率で以下の成分を含んでもよい。
Al 80~82%
Si 6.5~8.5%
Fe 0.2~0.5%
Zn 0.8~3%
V 0.03~0.05%
Sr 0.01~1%
グラフェン 0.02~0.08%
RE 1~5%
また、REは、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Y、及びScから選ばれた少なくとも1種を含んでもよい。
【0008】
また、REは、重量百分率で以下の成分を含んでもよい。
La 40~70%
Sc ≦15%
Y ≦15%
また、高熱伝導率アルミニウム合金は、重量百分率で以下の成分を含んでもよい。
Al 80~82%
Si 6.5~8.5%
Fe 0.2~0.5%
Zn 0.8~3%
V 0.03~0.05%
Sr 0.01~1%
グラフェン 0.02~0.08%
La 0.4~3.5%
Sc ≦0.75%
Y ≦0.75%
【0009】
本発明の別の態様によれば、高熱伝導率アルミニウム合金の製造方法であって、
重量百分率でAl、Si、Fe、Zn、V、Sr、及びグラフェンを用意し、700~750℃の製錬温度で溶融するまで共に加熱し、アルミニウム合金液を得る工程(1)と、
アルミニウム合金液を噴射装置に投入し、不活性ガスをキャリアとして吹込み精錬(injection refining)を8~18分間行なって、精錬されたアルミニウム合金液を15~30分間静置した後、ろ過する工程(2)と、
工程(2)でろ過されたアルミニウム合金液をロータ脱気装置に移し、ロータ脱気装置のロータ回転速度を500~600rmp、ガス流量を10~20L/minとしてアルミニウム合金液に窒素ガスを回転させながら吹き込み、二次脱気を行う工程(3)と、
工程(3)で得られた脱気後のアルミニウム合金液を、半固状になるまで580~610℃で機械撹拌し、アルミニウム合金の半固状スラリーを得る工程(4)と、
工程(4)で得られたアルミニウム合金の半固状スラリーを、575~590℃、1.5~2.5m/sの射出速度で、射出圧力を30~50MPa、増圧圧力を60~80MPaとしてプレス成形した後、圧力を7~15秒間保持し、高熱伝導率アルミニウム合金を得る工程(5)と、を含む高熱伝導率アルミニウム合金の製造方法を提供する。
【0010】
また、前記高熱伝導率アルミニウム合金の製造方法は、工程(5)でアルミニウム合金の半固状スラリーをプレス成形した後、300~500℃の温度で1~2時間時効処理し、冷却した後、高熱伝導率アルミニウム合金を得工程(6)をさらに含んでも良い。
【0011】
また、前記高熱伝導率アルミニウム合金の製造方法における工程(1)では、さらに、重量百分率でREを用意し、Al、Si、Fe、Zn、V、Sr、及びグラフェンと共に、溶融するまで加熱し、アルミニウム合金液を得ても良い。
【0012】
本発明の高熱伝導率アルミニウム合金における主要な合金元素は、Si、Fe、Zn、V、Sr、グラフェン、及びREである。本発明は、Si、Fe、Znの主要な合金元素を最適化することに基づいて、V元素の添加により鉄リッチ相を精製及び改質し、Sr、RE元素の添加により共晶シリコンを精製及び改質し、グラフェンの添加により熱伝導率を改善することができる。また、合金元素及び不純物の含有量を厳密に制御し、それらを互に配合することにより、アルミニウム合金の最適な性能が確保され、最終的に、当該アルミニウム合金が高熱伝導率、良好な鋳造性能及び優れた機械的特性を有する高熱伝導率アルミニウム合金になる。
【0013】
当該高熱伝導率アルミニウム合金における各成分の機能及び含有量を以下に示す。
【0014】
Alは、アルミニウム合金を形成する主成分である。本発明の高熱伝導率アルミニウム合金では、Alの含有量(重量百分率)範囲が、80~90%に限定されている。
【0015】
Siは、アルミニウム合金を形成するための重要な成分の1つである。Si元素とAlの格子定数が大きく異なるので、シリコンがアルミニウム基体に固溶する場合に、アルミニウム基体の格子歪を引き起こし、外部電場の下で、電子波の伝播抵抗が増加し、電気抵抗が増加し、アルミニウム合金の熱伝導率が低下する。一方、シリコンは、アルミニウム合金においてAlとAl+Si共晶液相を形成可能であり、アルミニウム合金の加圧鋳造の流動性を向上させると同時に、アルミニウム合金の強度及び機械加工性能を向上することができる。Siの含有量が高いほど、共晶液相が多くなり、アルミニウム合金の加圧鋳造の流動性が良くなるが、加圧鋳造アルミニウム合金の熱伝導率、可塑性が低くなる。Siの含有量が6.5%未満の場合、アルミニウム合金の流動性が半固状加圧鋳造のプロセス要件を満たすことができない一方、Siの含有量が8.5%を超えると、アルミニウム合金の熱伝導率に大きな影響を与える。したがって、アルミニウム合金の高い熱伝導率及び良好な半固状加圧鋳造の成形性能を確保するために、Siの含有量は6.5~8.5%であり、好ましくは6.8~8%であり、より好ましくは7.0~8%である。
【0016】
Feは、アルミニウム合金における不可避の不純物であり、アルミニウム合金において粗大なβ-AlFeSiFe相を形成する。このようなβ-AlFeSiFe相は、アルミニウム合金基体を強く分断するので、アルミニウム合金の強度及び可塑性を低下させる。本発明の高熱伝導率アルミニウム合金は、不純物である元素Feの含有量を0.2~0.5%、好ましくは0.25~0.45%、より好ましくは0.3~0.4%に抑える。
【0017】
Vは、本発明の高熱伝導率アルミニウム合金の重要な成分の1つとして、主に、β-AlFeSiFe相を精製及び改質する役割を果たす。本発明の高熱伝導率アルミニウム合金は、Vの添加によりアルミニウム合金の鉄リッチ相におけるFeの成長方向を変更及び抑制し、β-AlFeSiFe相が粗大な針状から微細で均一な粒子状に精製及び改質され、鉄リッチ相によるアルミニウム合金の強度及び可塑性への影響を除去し、アルミニウム合金に高強度及び高可塑性を付与する。本発明の高熱伝導率アルミニウム合金におけるVの含有量は0.03~0.05%であり、好ましくは0.035~0.045%であり、さらに好ましくは0.038~0.042%であり、最も好ましくは4%である。
【0018】
Srは、本発明の高熱伝導率アルミニウム合金の重要な成分の1つである。本発明の高熱伝導率アルミニウム合金に添加されたSrは、半固状加圧鋳造アルミニウム合金においてAl-Si合金における共晶シリコンの改質に使用される。未改質のAl-Si合金における共晶シリコンは、主に繊維状、長い針状をなして分布が不均一であり、アルミニウム合金において通常、細長い針状をなしている。このような細長い針状の共晶シリコンは、同様にアルミニウム合金基体を強く分断し、従来の加圧鋳造アルミニウム合金の強度及び可塑性を低下させる重要な理由である。従来技術では、共晶シリコンが主に、Naの添加により精製及び改質されるが、Naによる改質効果に短い有効時間と環境汚染の問題がある。本発明の高熱伝導率アルミニウム合金は、Srを添加して精製改質を行うことにより、アルミニウム合金における共晶シリコンの形態が繊維状、長い針状から均一に分布された短い棒状、球状に変換され、本発明の高熱伝導率アルミニウム合金の機械的性能を著しく改善する。その効果は、従来のNa改質剤よりも明らかに優れ、安定性が高く、持続時間が長く、再現性が良いなどの優位性を有する。本発明の高熱伝導率アルミニウム合金におけるSrの含有量は0.01~1%であり、好ましくは0.015~0.8%であり、より好ましくは0.02~0.6%である。
【0019】
グラフェンは、本発明の高熱伝導率アルミニウム合金の重要な成分の1つであり、非常に優れた熱伝導性を有する。純粋な欠陥のない単層グラフェンは、熱伝導係数が5300W/mKと高く、単層カーボンナノチューブ(3500W/mK)及び多層カーボンナノチューブ(3000W/mK)よりも高いであり、いままで熱伝導係数の最も高い炭素材料であり、キャリアとして使用する場合に熱伝導係数が600W/mKに達する。本発明の高熱伝導率アルミニウム合金に添加されたグラフェンは、熱伝導率を向上できるが、グラフェンが高価であるため、本発明で添加するグラフェンの含有量は0.02~0.08%であり、好ましくは0.04~0.07%であり、より好ましくは0.05~0.06%である。
【0020】
RE(希土類元素)は、本発明の高熱伝導率アルミニウム合金の重要な成分の1つであり、優れた脱気、不純物除去、改質作用を有し、合金の熱伝導率を向上することができる。金属Alは、融解した後で温度が高いほど、水素を吸収しやすくなる一方、REは、良好な水素固定効果を有し、水素と安定的な希土類水素化物(REH2、REH3)を生成することができる。また、REは、アルミニウム合金液に固溶した有害な不純物及びシリコンと、それぞれ安定的な金属間化合物(FeRE5など)及び粒界に分散したAlRESiを形成し、アルミニウム合金の孔隙率、及びアルミニウムにおける不純物やシリコンの固溶量を低下させることで、結晶粒内部の不純物の含有量を低下させ、格子歪を減少させ、合金の熱伝導率を向上する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態の目的、技術案、及び優位性をより明確にするために、本発明の実施例を参照しながら本発明の技術案を明確かつ完全に説明する。説明した実施例は、本発明の実施例の一部であり、すべての実施例ではないことが明らかである。本発明の実施例に基づいて、創造的な努力をすることなく当業者によって得られる他のすべての実施例は、本発明の保護範囲に属するものである。なお、本願における実施例及び実施例の特徴は、矛盾のない限り、任意に互いに組み合わせることができる。
【0022】
以下、具体的な実施例により、本発明に係る高熱伝導率アルミニウム合金を詳細に説明する。
【実施例1】
【0023】
高熱伝導率アルミニウム合金は、重量百分率で以下の成分を含む。
Al 90%
Si 6.5%
Fe 0.2%
Zn 0.8%
V 0.03%
Sr 0.01%
グラフェン 0.02%
実施例1の高熱伝導率アルミニウム合金は、熱伝導係数が最大で198に達し、熱伝導性能が最も良い。
【実施例2】
【0024】
高熱伝導率アルミニウム合金は、重量百分率で以下の成分を含む。
Al 80%
Si 8.5%
Fe 00.5%
Zn 3%
V 0.05%
Sr 1%
グラフェン 0.08%
実施例2の高熱伝導率アルミニウム合金型は、他の高熱伝導率アルミニウム合金と比較して、同体積で軽量である。
【実施例3】
【0025】
高熱伝導率アルミニウム合金は、重量百分率で以下の成分を含む。
Al 90%
Si 6.8%
Fe 0.25%
Zn 1%
V 0.035%
Sr 0.015%
グラフェン 0.04%
実施例3の高熱伝導率アルミニウム合金は、成形率が最高で96.02%に達し、プロセス過程を減らし、時間及びコストを節約する。
【0026】
本発明の異なる実施例における高熱伝導率アルミニウム合金のパラメータを以下の表に示す。なお、実施例における成分の合計含有量は100%よりもやや小さく、残留量が微量の不純物であると解釈され得る。
【0027】
表1は、本発明のいくつかの実施例の熱伝導係数を示す。
【0028】
【表1】

表2は、本発明のいくつかの実施例の性能パラメータを示す。
【0029】
【表2】

ここで、表2における成分REの一部は2つの列に分かれる。そのうち、左の列は本発明の高導電率アルミニウム合金におけるREの含有量(重量百分率で)を示し、右の列はREの重量百分率で各希土類元素が占める割合を示す。
【0030】
上述の内容は、個別に又は様々な形で組み合わせて実施可能であるが、これらの変形が本発明の保護範囲にある。
【0031】
最後に、本明細書において用語「含む」、「含有」、又はその他の変形は、非排他的な包含を含むことが意図される。このように、一連の要素を含むプロセス、方法、物品、又はデバイスは、それらの要素だけでなく、明示的に例示されていない他の要素も含むか、そのようなプロセス、方法、物品、又はデバイスに固有の要素も含む。別段の制限がない限り、「1つの...を含む」という文章で定義された要素は、その要素を含むプロセス、方法、物品、又はデバイスに別の同一の要素が存在することを排除しない。
【0032】
上記の実施例は、本発明の技術案を説明するためのものであり、それらの実施例を限定するものではない。前述の実施例を参照して本発明を詳細に説明したが、当業者は、依然として前述の各実施例に記載された技術案に基づく変更、もしくはその技術的特徴の一部の均等な代替及び置換が、対応する技術案の本質を本発明の各実施例の技術案の思想及び範囲から逸脱するものではないことを理解すべきである。
【産業上の利用可能性】
【0033】
(1)本発明の高熱伝導率アルミニウム合金は、Si、Fe、Znなどの合金元素を最適化し、Sr、V、グラフェン、RE元素を添加して各成分の含有量を制御し、互に配合することにより、高熱伝導率、良好な鋳造性能、及び優れた半固状加圧鋳造性能が得られる。
【0034】
(2)本発明の高熱伝導率アルミニウム合金は、グラフェンを添加することにより、グラフェンの良好な熱伝導性をアルミニウム合金に適用し、高熱伝導率アルミニウム合金が得られる。
【0035】
(3)本発明の高熱伝導率アルミニウム合金は、アルミニウム合金におけるシリコン及び他の不純物の固溶量、及び鋳引けや引け巣などの内部欠陥を低減することで、結晶粒内部の不純物の含有量を低減し、格子歪を低減し、アルミニウム合金の熱伝導率を向上する。
【0036】
(4)本発明の高熱伝導率アルミニウム合金は、高導電率を有するので、現在の通信電子分野の発展ニーズに適合しており、通信分野の急速な発展に伴う半導体部品の性能要件を満たすことができる。