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特許7121866二酸化炭素固定化装置および二酸化炭素固定化方法
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  • 特許-二酸化炭素固定化装置および二酸化炭素固定化方法 図1
  • 特許-二酸化炭素固定化装置および二酸化炭素固定化方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-09
(45)【発行日】2022-08-18
(54)【発明の名称】二酸化炭素固定化装置および二酸化炭素固定化方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/62 20060101AFI20220810BHJP
   B01D 53/83 20060101ALI20220810BHJP
   B01D 53/12 20060101ALI20220810BHJP
   B01D 53/14 20060101ALI20220810BHJP
   B01D 53/18 20060101ALI20220810BHJP
【FI】
B01D53/62 ZAB
B01D53/83
B01D53/12
B01D53/14 100
B01D53/18 130
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022040208
(22)【出願日】2022-03-15
【審査請求日】2022-03-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000228660
【氏名又は名称】日本コンクリート工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(72)【発明者】
【氏名】早川 康之
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 猛
(72)【発明者】
【氏名】松井 信行
【審査官】小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-197810(JP,A)
【文献】特開2020-131076(JP,A)
【文献】特開昭52-041160(JP,A)
【文献】特開昭53-016370(JP,A)
【文献】特表平07-500525(JP,A)
【文献】特開平07-008796(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0238563(US,A1)
【文献】特開2009-090198(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/62
B01D 53/83
B01D 53/12
B01D 53/14
B01D 53/18
B01J 19/00
B09B 3/45
C02F 11/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートスラッジの固体部位が原素材として導入される処理槽と、
この処理槽に導入された前記原素材を前記処理槽の下部から上部に移動させて撹拌する撹拌手段と、
前記処理槽内の前記原素材に二酸化炭素を含むガスを供給するガス供給手段と、
前記処理槽内の前記原素材に水蒸気を供給する水蒸気供給手段と、
前記処理槽内の前記原素材を乾燥させる乾燥手段と、を備え
前記撹拌手段は、
前記処理槽内に上下方向に配置された筒状体と、
この筒状体の下端部からこの筒状体の内部を通して前記処理槽内の下部の原素材を前記処理槽内の上部に移動させる持ち上げ手段と、を有し、
前記持ち上げ手段は、前記筒状体の下端部からこの筒状体の内部へと過熱水蒸気を加圧供給する前記乾燥手段である
ことを特徴とする二酸化炭素固定化装置。
【請求項2】
乾燥手段は、過熱水蒸気により原素材を乾燥させる
ことを特徴とする請求項1記載の二酸化炭素固定化装置
【請求項3】
撹拌手段は、
処理槽の下部から内部の原素材の一部を前記処理槽の外部に導出する導出手段と、
この導出手段により導出された前記原素材を前記処理槽の上部に再導入する導入手段と、を有する
ことを特徴とする請求項1または2記載の二酸化炭素固定化装置
【請求項4】
持ち上げ手段は、オーガスクリュである
ことを特徴とする請求項ないしいずれか一記載の二酸化炭素固定化装置。
【請求項5】
ガス供給手段は、処理槽内の下部にて原素材に二酸化炭素を含むガスを供給する
ことを特徴とする請求項ないしいずれか一記載の二酸化炭素固定化装置。
【請求項6】
コンクリートスラッジを固液分離した固体部位を原素材として処理槽に導入し、
この処理槽に導入された原素材をこの処理槽の下部から上部に移動させて撹拌しつつ、前記処理槽内の前記原素材に二酸化炭素を含むガスを供給し、前記処理槽内の前記原素材に水蒸気を供給しながら、前記処理槽内にさらに過熱水蒸気を供給して、この過熱水蒸気により前記原素材を乾燥させる
ことを特徴とする二酸化炭素固定化方法
【請求項7】
処理槽内に上下方向に配置された筒状体を用い、
原素材を乾燥させる過熱水蒸気の加圧供給により、処理槽の下部の前記原素材を、前記筒状体の下端部から前記筒状体の内部を通して前記処理槽の上部に移動させる
ことを特徴とする請求項記載の二酸化炭素固定化方法。
【請求項8】
二酸化炭素を含むガスを、処理槽内の下部に供給する
ことを特徴とする請求項記載の二酸化炭素固定化方法。
【請求項9】
過熱水蒸気を常時供給し、
水蒸気を間欠供給する
ことを特徴とする請求項ないしいずれか一記載の二酸化炭素固定化方法。
【請求項10】
処理槽の下部から内部の原素材の一部を外部に導出し、
前記原素材を前記処理槽の上部に再導入する
ことを特徴とする請求項ないしいずれか一記載の二酸化炭素固定化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素を固定化する二酸化炭素固定化装置および二酸化炭素固定化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリートスラッジに含まれるカルシウムに二酸化炭素を反応させることで炭酸カルシウムを析出させる二酸化炭素の固定化装置が知られている(例えば、特許文献1および2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4892520号公報
【文献】特許第5072090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の装置により析出された炭酸カルシウムの粉体は、緩速的な二酸化炭素吸着機能(DAC(Direct Air Capture)機能)を有する。近年、地球温暖化などの問題に伴い、二酸化炭素の削減および二酸化炭素の固定から利活用に至る、いわゆるカーボンニュートラルへの貢献が求められるところ、より短時間で二酸化炭素を固定化したいというニーズがある。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、短時間で二酸化炭素を固定化できる二酸化炭素固定化装置および二酸化炭素固定化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の二酸化炭素固定化装置は、コンクリートスラッジの固体部位が原素材として導入される処理槽と、この処理槽に導入された前記原素材を前記処理槽の下部から上部に移動させて撹拌する撹拌手段と、前記処理槽内の前記原素材に二酸化炭素を含むガスを供給するガス供給手段と、前記処理槽内の前記原素材に水蒸気を供給する水蒸気供給手段と、前記処理槽内の前記原素材を乾燥させる乾燥手段と、を備え、前記撹拌手段は、前記処理槽内に上下方向に配置された筒状体と、この筒状体の下端部からこの筒状体の内部を通して前記処理槽内の下部の原素材を前記処理槽内の上部に移動させる持ち上げ手段と、を有し、前記持ち上げ手段は、前記筒状体の下端部からこの筒状体の内部へと過熱水蒸気を加圧供給する前記乾燥手段であるものである。
【0007】
請求項2記載の二酸化炭素固定化装置は、請求項1記載の二酸化炭素固定化装置において、乾燥手段は、過熱水蒸気により原素材を乾燥させるものである
【0008】
請求項記載の二酸化炭素固定化装置は、請求項1または2記載の二酸化炭素固定化装置において、撹拌手段は、処理槽の下部から内部の原素材の一部を前記処理槽の外部に導出する導出手段と、この導出手段により導出された前記原素材を前記処理槽の上部に再導入する導入手段と、を有するものである
【0009】
請求項記載の二酸化炭素固定化装置は、請求項ないしいずれか一記載の二酸化炭素固定化装置において、持ち上げ手段は、オーガスクリュであるものである。
【0010】
請求項記載の二酸化炭素固定化装置は、請求項ないしいずれか一記載の二酸化炭素固定化装置において、ガス供給手段は、処理槽内の下部にて原素材に二酸化炭素を含むガスを供給するものである。
【0011】
請求項記載の二酸化炭素固定化方法は、コンクリートスラッジを固液分離した固体部位を原素材として処理槽に導入し、この処理槽に導入された原素材をこの処理槽の下部から上部に移動させて撹拌しつつ、前記処理槽内の前記原素材に二酸化炭素を含むガスを供給し、前記処理槽内の前記原素材に水蒸気を供給しながら、前記処理槽内にさらに過熱水蒸気を供給して、この過熱水蒸気により前記原素材を乾燥させるものである。
【0012】
請求項記載の二酸化炭素固定化方法は、請求項記載の二酸化炭素固定化方法において、処理槽内に上下方向に配置された筒状体を用い、原素材を乾燥させる過熱水蒸気の加圧供給により、処理槽の下部の前記原素材を、前記筒状体の下端部から前記筒状体の内部を通して前記処理槽の上部に移動させるものである。
【0013】
請求項記載の二酸化炭素固定化方法は、請求項記載の二酸化炭素固定化方法において、二酸化炭素を含むガスを、処理槽内の下部に供給するものである。
【0014】
請求項記載の二酸化炭素固定化方法は、請求項ないしいずれか一記載の二酸化炭素固定化方法において、過熱水蒸気を常時供給し、水蒸気を間欠供給するものである。
【0015】
請求項10記載の二酸化炭素固定化方法は、請求項ないしいずれか一記載の二酸化炭素固定化方法において、処理槽の下部から内部の原素材の一部を外部に導出し、前記原素材を前記処理槽の上部に再導入するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、短時間で二酸化炭素を固定化できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1の実施の形態の二酸化炭素固定化装置を模式的に示す説明図である。
図2】本発明の第2の実施の形態の二酸化炭素固定化装置を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の第1の実施の形態について、図1を参照して説明する。
【0019】
図1において、1は二酸化炭素固定化装置である。二酸化炭素固定化装置1は、原素材2が有する二酸化炭素吸着機能を積極的に利用して、二酸化炭素を短時間で原素材2に固定化し、乾燥状態の粉体3を製造する粉体製造装置である。
【0020】
ここで、原素材2は、コンクリートスラッジを固液分離した固体部位が用いられる。本実施の形態において、コンクリートスラッジは、コンクリート二次製品製造時に発生するコンクリートスラッジである。コンクリート二次製品とは、セメント、水、細骨材、粗骨材、混和材からなるコンクリート材料を固化させた、例えばコンクリート柱、コンクリート杭等の製品をいう。特に、原素材2は、コンクリート二次製品製造時の遠心成形工程にて発生するコンクリートスラッジである。遠心成形工程にて発生するコンクリートスラッジは、品質的にモルタルスラッジ、さらにはセメントペーストスラッジと同等のものである。そのため、原素材2および粉体3には、粗骨材及び細骨材が除去されている。本実施の形態の二酸化炭素固定化装置1で製造される粉体3は、粒子径0.5mm以上の骨材(石粉等)を含んでいない。粉体3は、二酸化炭素を固定化した二酸化炭素固定化粉体であって、かつ、二酸化炭素吸着機能を有する二酸化炭素吸着材である。
【0021】
原素材2は、セメント由来のカルシウム(Ca)分を豊富に含む、高アルカリ性の材料である。当該カルシウム分が二酸化炭素の吸着に有効な成分である。原素材2は、放置していても、緩速的に二酸化炭素を重量に対して10wt%程度まで吸着することが可能となっている。
【0022】
なお、原素材2は、コンクリート二次製品工場で発生するコンクリートスラッジ、あるいは、生コンプラントにおける残コンクリート(残コン)、あるいは戻りコンクリート(戻りコン)について、粗骨材及び細骨材を分離したものを用いてもよい。すなわち、原素材2となるコンクリートスラッジは、いずれもフレッシュコンクリートの余剰分である。
【0023】
また、好ましくは、粉体3は、5mm以下、または、0.5mm以下、または、10μm以下の粒体である。粉体3は、細粒化されているほど、二酸化炭素吸着機能が向上して、より早く反応し、粒が大きいほど、長期に亘り二酸化炭素吸着機能が維持される。
【0024】
粉体3は、基本的にセメントと水のみの組成であり、一例として、カルシウム20重量%以上30重量%以下、ケイ素(Si)5重量%以上10重量%以下、アルミニウム(Al)1重量%以上5重量%以下、鉄(Fe)1重量%以上5重量%以下を含有する。
【0025】
そして、原素材2には、水和反応機能が残存しており、時間経過により固結し、強度が発現して大きな塊を生成する。そのため、本実施の形態の二酸化炭素固定化装置1では、原素材2に対し二酸化炭素の吸着率をさらに増加させるとともに、水和反応による強度発現を低減させるために、水分を含ませる。
【0026】
そこで、二酸化炭素固定化装置1は、原素材2を収容する処理槽5を備えるとともに、処理槽5内の原素材2に対して二酸化炭素を含むガス供給手段6に加えて、水分として水蒸気を供給する水分供給手段である水蒸気供給手段7を備える。
【0027】
処理槽5は、竪型サイロとも呼ばれるもので、撹拌機能を有する。処理槽5は、上下方向に長手状に形成されている。本実施の形態において、処理槽5は、外面が円筒状の処理槽本体部8と、外面が円錐状の縮小部9と、を上下に一体的に有し、軸方向を上下方向に沿わせて配置されている。処理槽本体部8は、一定または略一定の径寸法を有する円筒状である。縮小部9は、処理槽本体部8の下部に同軸状に連なり、下方に向かって縮径している。
【0028】
ガス供給手段6は、ガス中の二酸化炭素を原素材2のカルシウム分に反応させることで、炭酸カルシウムを生成させ、二酸化炭素を固定化させるものである。ガス供給手段6は、ガス供給源と接続された配管、バルブ、および、ノズルなどを有する。ガス供給手段6は、処理槽5の下部に接続されている。図示される例では、ガス供給手段6は、縮小部9に接続されている。したがって、ガス供給手段6からのガスの供給により、処理槽5内の下部に滞留した原素材2が上下方向などに揺動されるようになっている。ガス供給手段6は、ガスを常時または間欠的に加圧供給する。好ましくは、ガス供給手段6は、縮小部9の周囲の複数箇所に均等または略均等に配置されている。より好ましくは、ガス供給手段6は、縮小部9の上下の複数の位置に配置されている。さらに好ましくは、ガス供給手段6のいずれかは、処理槽5の最下部の近傍に位置している。
【0029】
ガス供給手段6により供給されるガスは、ボイラや発電所などのガス供給源からの排ガスが好適に利用される。
【0030】
水蒸気供給手段7は、水蒸気供給源と接続されたポンプ、配管、バルブ、および、ノズルなどを有する。水蒸気供給手段7は、処理槽5の上部に接続され、処理槽5内の原素材2に対し上部から水蒸気を供給する。図示される例では、水蒸気供給手段7は、処理槽5の処理槽本体部8の上部側の外周部に接続されている。好ましくは、水蒸気供給手段7は、間欠的に水蒸気を供給するように駆動される。
【0031】
処理槽5内でガスおよび水蒸気が供給される原素材2は、撹拌手段10によって処理槽5の下部から上部へと移動されることで撹拌される。本実施の形態において、撹拌手段10は、処理槽5内で原素材2を下部から上部に移動させて撹拌する内部撹拌手段を有する。内部撹拌手段は、処理槽5内に配置された筒状体12と、筒状体12の内部を通して処理槽5内の下部の原素材2を処理槽5の上部に循環させる持ち上げ手段13と、からなる。
【0032】
筒状体12は、処理槽5の中心軸に沿って上下方向に延びて配置された円筒状のパイプ(直管)である。筒状体12の下端部は、処理槽5の縮小部9内に位置する。筒状体12の下端部は、縮小部9の下端部に対して上方に離れている。筒状体12の下端部は、下方に向かって拡開されていてもよい。また、筒状体12の上端部は、処理槽5の処理槽本体部8内に位置する。筒状体12の上端部は、処理槽5の上端部近傍まで延びている。好ましくは、筒状体12の上端部に対向して、拡散体14が配置されている。拡散体14は、筒状体12から吹き出した原素材2の上方への飛散を阻止しつつ、筒状体12の周辺へと原素材2を拡散させるものである。拡散体14は、上方から下方へと拡大する円錐状(傘状)に形成されている。拡散体14の下部の外径寸法は、筒状体12の外径寸法よりも大きく設定されている。拡散体14は、筒状体12の上端部に対し、離れて位置する。拡散体14は、筒状体12から吹き出した原素材2を筒状体12の側方にて処理槽5内へと拡散させる機能を有する。
【0033】
持ち上げ手段13は、任意の構成としてよいが、本実施の形態では、加圧された気体を筒状体12の下端部の位置から筒状体12の内部に吹き込んで、エアリフト効果によって処理槽5内の下部の原素材2を筒状体12内に通して処理槽5の上部に持ち上げるようになっている。持ち上げ手段13は、気体を吹き込む先端部が筒状体12の内部に挿入されている。好ましくは、持ち上げ手段13は、処理槽5内の原素材2を乾燥させる乾燥手段である。すなわち、持ち上げ手段13は、加圧された乾燥用の気体、例えば過熱水蒸気を用いて、処理槽5内の下部の原素材2を筒状体12内に通して処理槽5の上部に移動させる。過熱水蒸気は、例えば300℃~800℃程度の温度である。本実施の形態において、持ち上げ手段13は、過熱水蒸気源と接続されたポンプ、配管、バルブ、および、ノズルなどを有し、加圧された過熱水蒸気を、筒状体12の下端部から筒状体12の内部に向かって常時供給するように駆動される。好ましくは、持ち上げ手段(乾燥手段)13は、過熱水蒸気に二酸化炭素を含むガスを混入したものを供給する。このガスは、ガス供給手段6により供給されるガスと同一でもよいし、異なっていてもよい。持ち上げ手段13は、処理槽5の下部に位置し、水蒸気供給手段7よりも下方にある。
【0034】
また、撹拌手段10は、処理槽5の外部を介して原素材2を処理槽5の下部から上部に移動させる外部撹拌手段を有していてもよい。外部撹拌手段は、内部撹拌手段により撹拌される原素材2よりも処理槽5において下方に位置する原素材2を撹拌するためのものである。外部撹拌手段は、処理槽5の下部から原素材2の一部を導出する導出手段16と、導出手段16により導出された原素材2を処理槽5の上部に再導入する導入手段17と、からなる。
【0035】
導出手段16は、処理槽5の下部に形成された導出口20に取り付けられている。本実施の形態において、導出口20は、処理槽5の最下部に形成されている。つまり、導出口20は、筒状体12の下端部よりも下方に位置する。導出手段16は、導出口20から原素材2の一部を処理槽5の外部に導出可能となっている。本実施の形態において、導出手段16は、例えば回動により所定量ずつの原素材2を処理槽5から導出するロータリフィーダが用いられる。また、導出手段16は、処理槽5内で原素材2が粉体3に製造された後、この粉体3を処理槽5から排出する排出手段の機能を有する。
【0036】
導出手段16から導出された原素材2は、排出部22および搬送手段23を介して導入手段17へと運ばれる。排出部22は、原素材2を搬送手段23に運ぶシュートである。本実施の形態では、排出部22は、導出手段16により処理槽5から導出された原素材2を搬送手段23に運ぶ第一部分22aと、導出手段16により処理槽5から導出された粉体3を粉体搬送手段24に運ぶ第二部分22bと、に分岐された二股シュートである。排出部22の内部には、第一部分22aと第二部分22bとのいずれか一方を択一的に開くように切り替え可能な弁体25が配置されている。
【0037】
搬送手段23および粉体搬送手段24としては、例えばコンベヤが用いられる。搬送手段23および粉体搬送手段24は、それぞれ排出部22から離れるほど上方に向かって傾斜するように配置されている。搬送手段23の搬送方向の下流側の下方に、導入手段17の受け部27が配置されている。また、搬送手段23の上方には、原素材2を最初に処理槽5に導入するための原素材導入手段30が配置されている。本実施の形態において、原素材導入手段30は、原素材2を受け入れる受け入れ部31と、受け入れ部31に受け入れた原素材2を搬送手段23へと搬送するコンベヤなどの搬送部32と、を有する。受け入れ部31としては、例えばホッパフィーダが用いられる。図示される例では、受け入れ部31は、原素材2が投入されるホッパ部34と、このホッパ部34に投入された原素材2を粉砕しながら搬送部32へと排出するフィーダ部35と、を有する。フィーダ部35には、原素材2を粉砕するスクリュ35aと、このスクリュ35aを駆動するモータ35bと、が設けられている。
【0038】
また、粉体搬送手段24の搬送方向の下流側の下方に、運ばれた粉体3を受け取る受け取り部(受取箱)37が配置されている。
【0039】
導入手段17は、受け部27に連なって、搬送路40を有する。搬送路40は、上下方向に延びる円筒状のパイプである。搬送路40の下端部に受け部27が配置され、搬送路40の上端部が処理槽5の上端部よりも上方に位置する。搬送路40内には、原素材2を搬送する搬送体41が配置されている。本実施の形態において、搬送体41は、オーガスクリュである。搬送体41は、搬送路40に沿って配置されている。搬送体41は、搬送路40の下端部から上端部に亘って位置する。搬送体41は、モータ42により回転駆動されることで、原素材2を搬送路40内で上方に持ち上げる。また、搬送路40の上端部には、搬送路40から処理槽5の上部へと原素材2を導入する導入部43が接続されている。導入部43は、原素材2を処理槽5の上部へと運ぶ導入用シュートである。導入部43は、基端部である搬送路40側から先端部である処理槽5側へと下方に向かい傾斜している。好ましくは、導入部43の先端部は、処理槽5の頂部にて拡散体14の上部に対向して位置する。導入手段17は、原素材2を最初に処理槽5に導入する際の原素材導入手段の一部として兼用される。
【0040】
そして、処理槽5には、内部に供給されたガスや過熱水蒸気などを排出するための排気部45が接続されている。排気部45は、例えば処理槽5の上部に接続されている。排気部45には、フィルタ46が接続されている。フィルタ46は、排気に含まれる粉塵の大気中への拡散を抑制するものである。フィルタ46としては、例えばバグフィルタが用いられる。
【0041】
次に、本実施の形態の二酸化炭素固定化装置1による二酸化炭素固定化方法(粉体3の製造方法)について説明する。
【0042】
まず、コンクリートスラッジを固液分離した固体部位を原素材2として処理槽5に導入する。本実施の形態では、原素材2を原素材導入手段30の受け入れ部31のホッパ部34に投入すると、受け入れ部31のフィーダ部35において、モータ35bにより駆動されたスクリュ35aが原素材2を粉砕しつつ搬送部32へと搬送する。搬送部32により搬送された原素材2は、搬送手段23へと落下し、搬送手段23から導入手段17の受け部27へと搬送される。受け部27に搬送された原素材2は、モータ42により回動される搬送体41によって搬送路40内を上昇し、導入部43を介して処理槽5へと導入される。
【0043】
次いで、所定量の原素材2が処理槽5に導入されると、この処理槽5内の原素材2を撹拌手段10によって処理槽5の上部に移動させて撹拌しつつ、処理槽5内の原素材2に二酸化炭素を含むガスをガス供給手段6により供給し、処理槽5内の原素材2に水蒸気供給手段7から水蒸気を(間欠的に)供給しながら、処理槽5内の原素材2を乾燥手段の機能を有する持ち上げ手段13によって乾燥させる。
【0044】
つまり、ガス供給手段6では、処理槽5の下部の位置で処理槽5内の原素材2に二酸化炭素を含むガスを加圧供給する。ガス供給手段6は、ガスを常時、または、間欠的に供給する。これにより、原素材2に含まれるカルシウム分が二酸化炭素と反応し、炭酸カルシウムが生成されて、二酸化炭素が原素材2に固定化されていく。
【0045】
また、撹拌手段10では、持ち上げ手段13から加圧過熱水蒸気を筒状体12の下端部から筒状体12に常時吹き込むことで、処理槽5の下部に位置する原素材2を乾燥させつつエアリフト効果によって筒状体12内を上昇させ、筒状体12の上端部から処理槽5の上部へと吹き出させる。このとき、ガス供給手段6から処理槽5の下部の位置で原素材2にガスが加圧供給されていることで、原素材2が処理槽5内で揺動し、持ち上げ手段13によるエアリフト効果による原素材2の吸い上げがより容易になる。また、持ち上げ手段13により供給される加圧過熱水蒸気には、二酸化炭素を含むガスが混入されているので、原素材2の二酸化炭素吸着機能(DAC(Direct Air Capture)機能)によって、二酸化炭素が原素材2のカルシウム分と反応し、炭酸カルシウムが生成されて、二酸化炭素が原素材2に固定化されていく。筒状体12の上端部から吹き出された原素材2は、拡散体14の下部に吹き付けられ、拡散体14の傾斜にしたがい筒状体12の側方へと拡散されて、処理槽5内の原素材2の上部に重なる。
【0046】
また、持ち上げ手段13により持ち上げきれない処理槽5の最下部の原素材2は、導出口20から導出手段16により排出され、排出部22の第一部分22aを介して搬送手段23へと搬送される。そして、この原素材2は、搬送手段23により導入手段17の受け部27へと送られ、導入手段17のモータ42により回動される搬送体41によって搬送路40内を上昇し、導入部43を介して処理槽5へと再導入される。このとき、拡散体14の上部に原素材2が導入されることで、拡散体14の上部の形状にしたがい、原素材2が拡散されつつ処理槽5内の原素材2の上部に重なる。
【0047】
このように、原素材2は、撹拌手段10によって、上下に撹拌されつつ徐々に乾燥される。
【0048】
また、水蒸気供給手段7では、処理槽5の上部の位置で処理槽5内の原素材2に水蒸気を加圧供給する。つまり、処理槽5の下部にある原素材2が処理槽5の上部に吹き上げられた状態で水蒸気供給手段7により加水される。これにより、原素材2による二酸化炭素吸着効果が上昇される。本実施の形態では、水蒸気供給手段7は、水蒸気を間欠的に供給する。
【0049】
このように、処理槽5内で原素材2に対し、撹拌(乾燥)、ガス供給、加水が繰り返されることで、原素材2が乾燥されながら、二酸化炭素の固定化が効率的に進んでいく。
【0050】
そして、二酸化炭素固定化装置1の所定時間の稼働により、原素材2に二酸化炭素が吸着された粉体3が乾燥物として処理槽5内に製造される。この粉体3には、水蒸気を導入することなく原素材2から製造した粉体と比較して、二酸化炭素の吸着率が約10%程度向上しており、当該粉体3の二酸化炭素の吸着率は、当該粉体3の重量に対して10wt%~25wt%である。
【0051】
製造された粉体3は、導出口20を介して処理槽5の下部から排出され、排出部22の第二部分22bを介して粉体搬送手段24に運ばれ、粉体搬送手段24により受け取り部37へと搬送される。受け取り部37に受け取られた粉体3を、必要に応じてフィルタ手段によりフィルタリングすることで、5mm以下、または、0.5mm以下、または、10μm以下の3種の製品が得られる。そして、この粉体3は、製造過程で二酸化炭素が固定化されているだけでなく、その内部においてさらなる二酸化炭素吸着機能を備え、時間経過とともに二酸化炭素を吸着する機能、つまり緩速的な二酸化炭素吸着機能を発揮する。粉体3による二酸化炭素吸着機能は、微細粉(粒径1μm以上30μm以下)であれば、より早く二酸化炭素を吸着でき、粒状(粒径5mm以上20mm以下)であれば、より長期に亘り緩速的に二酸化炭素を吸着できる。
【0052】
例えば、本実施の形態により製造される粉体3は、山岳トンネル及びシールドトンネルの裏込め注入剤の主材、コンクリート混練り時の混和材、アスファルト舗装フィラー材、あるいは土壌改良剤としての脱水及び硬化助材、様々な間隙充填材、中和剤等、様々なものに適用でき、使い勝手が良好であるとともに、これらの適用により二酸化炭素を固定化した固定物の利活用が可能となる。
【0053】
したがって、従来産業廃棄物として廃棄されてきて年間300万トン以上の排出があるコンクリートスラッジを有効利用して粉体を製造できるだけでなく、二酸化炭素に起因する地球温暖化対策にも有効であるとともに、二酸化炭素を回収し有効利用するCCU(Carbon dioxide Capture and Utilization)に好適に用いることができる。
【0054】
このように、第1の実施の形態によれば、処理槽5に導入した原素材2を撹拌手段10により処理槽5の下部から上部に移動させて撹拌しつつ、ガス供給手段6により処理槽5内の原素材2に二酸化炭素を含むガスを供給し、水蒸気供給手段7により処理槽5内の原素材2に水蒸気を供給しながら乾燥手段により処理槽5内の原素材2を乾燥させることで、原素材2が有する二酸化炭素吸着機能を効果的に発現させ、短時間で二酸化炭素を固定化できる。
【0055】
また、乾燥手段から供給する過熱水蒸気により原素材2を乾燥させるため、二酸化炭素を新たに発生させることなく原素材2を乾燥させることができる。
【0056】
また、撹拌手段10は、処理槽5内に上下方向に配置された筒状体12の下端部からこの筒状体12の内部を通して処理槽5内の下部の原素材2を持ち上げ手段13により処理槽5内の上部に移動させることで原素材2を撹拌するので、簡素な構成で原素材2を効率よく撹拌できる。
【0057】
さらに、持ち上げ手段13として、筒状体12の下端部からこの筒状体12の内部へと過熱水蒸気を加圧供給する乾燥手段を用いることで、処理槽5内などに配線を施すことなく、簡素な構成で原素材2を容易に持ち上げることができる。
【0058】
しかも、ガス供給手段6によるガス供給を、処理槽5の下部に行うことで、ガスの供給によって処理槽5の下部の原素材2が揺動されるので、撹拌手段10により原素材2をより容易に持ち上げることができる。
【0059】
さらに、乾燥手段により過熱水蒸気を常時供給し、水蒸気供給手段7により水蒸気を間欠供給するので、原素材2の二酸化炭素吸着機能を効果的に発現させて、二酸化炭素をより短時間で固定化できる。
【0060】
また、撹拌手段10は、処理槽5の下部から内部の原素材2の一部を導出手段16により処理槽5の外部に導出し、この導出した原素材2を導入手段17により処理槽5の上部に再導入することで、筒状体12および持ち上げ手段13により持ち上げきれない処理槽5内の原素材2、つまり処理槽5の最下部に溜まった原素材2を処理槽5の上部へと循環(切り返し)させて、処理槽5内の原素材2の全体の撹拌が可能になる。
【0061】
次に、第2の実施の形態について、図2を参照して説明する。なお、上記第1の実施の形態と同様の構成および作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0062】
この第2の実施の形態は、第1の実施の形態の撹拌手段10が、持ち上げ手段であるオーガスクリュ47を備えるものである。オーガスクリュ47は、筒状体12の内部に、筒状体12に沿って配置されている。オーガスクリュ47は、筒状体12の下端部から上端部に亘って位置する。オーガスクリュ47は、モータ48により回転駆動されることで、原素材2を筒状体12内で上方に持ち上げる。
【0063】
また、二酸化炭素固定化装置1は、処理槽5内の原素材2を乾燥させる乾燥手段49を備える。この乾燥手段49は、第1の実施の形態の持ち上げ手段13と同様に、加圧された乾燥用の気体、例えば過熱水蒸気を原素材2に吹き付けて、原素材2を乾燥させるものである。乾燥手段49は、気体を吹き込む先端部が筒状体12の内部に挿入されている。なお、第1の実施の形態の持ち上げ手段13と同様に、乾燥手段49により過熱水蒸気を筒状体12の下端部から筒状体12の内部に吹き込むことで、原素材2の持ち上げを補助するようにしてもよい。
【0064】
そして、コンクリートスラッジを固液分離した固体部位を原素材2として処理槽5に所定量導入し、この処理槽5内の原素材2を撹拌手段10によって処理槽5の上部に移動させて撹拌しつつ、処理槽5内の原素材2に二酸化炭素を含むガスをガス供給手段6により供給し、処理槽5内の原素材2に水蒸気供給手段7から水蒸気を(間欠的に)供給しながら、処理槽5内の原素材2を乾燥手段49によって乾燥させるなど、上記の第1の実施の形態と同様に処理することで、短時間で二酸化炭素を固定化できるなど、第1の実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0065】
また、撹拌手段10の持ち上げ手段としてオーガスクリュ47を用い、筒状体12の下端部からこの筒状体12の内部へとオーガスクリュ47によって物理的に原素材2を持ち上げるので、簡素な構成で原素材2を確実に持ち上げることができる。
【0066】
なお、上記の各実施の形態において、原素材2を処理槽5に導入するための各手段は、上記に示した例に限らず、任意に構成されていてよい。
【符号の説明】
【0067】
1 二酸化炭素固定化装置
2 原素材
5 処理槽
6 ガス供給手段
7 水蒸気供給手段
10 撹拌手段
12 筒状体
13 乾燥手段の機能を有する持ち上げ手段
16 導出手段
17 導入手段
47 持ち上げ手段であるオーガスクリュ
49 乾燥手段
【要約】
【課題】短時間で二酸化炭素を固定化できる二酸化炭素固定化装置および二酸化炭素固定化方法を提供する。
【解決手段】二酸化炭素固定化装置1は、コンクリートスラッジの固体部位が原素材2として導入される処理槽5と、処理槽5に導入された原素材2を処理槽5の下部から上部に移動させる撹拌手段10と、処理槽5内の原素材2に二酸化炭素を含むガスを供給するガス供給手段6と、処理槽5内の原素材2に水蒸気を供給する水蒸気供給手段7と、処理槽5内の原素材2を乾燥させる乾燥手段と、を備える。
【選択図】図1
図1
図2