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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-10
(45)【発行日】2022-08-19
(54)【発明の名称】ラッシング具
(51)【国際特許分類】
   B65D 19/38 20060101AFI20220812BHJP
   B65D 63/10 20060101ALI20220812BHJP
   B60P 7/135 20060101ALN20220812BHJP
【FI】
B65D19/38 B
B65D63/10 A
B60P7/135
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2017238346
(22)【出願日】2017-12-13
(65)【公開番号】P2019104527
(43)【公開日】2019-06-27
【審査請求日】2020-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】510183730
【氏名又は名称】有限会社ファイバー浜松
(73)【特許権者】
【識別番号】000163899
【氏名又は名称】金山化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136674
【弁理士】
【氏名又は名称】居藤 洋之
(72)【発明者】
【氏名】安立 敦彦
(72)【発明者】
【氏名】古川 誠
【審査官】金丸 治之
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-067293(JP,A)
【文献】中国実用新案第201068264(CN,Y)
【文献】特開平08-033726(JP,A)
【文献】実開平01-120863(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2008/0201915(US,A1)
【文献】特開2017-95124(JP,A)
【文献】実開昭55-93661(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 19/38
B65D 63/10
B60P 7/135
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷物を固定対象物上に固縛するためのラッシング具であって、
長尺に延びる紐状に形成されて荷物に掛けられる長尺紐状体と、
前記長尺紐状体の端部に設けられて前記荷物または同固定対象物に引っ掛けられるフックと、
前記長尺紐状体の太さよりも幅広の帯状に形成され連結帯状体とを有し、
前記フックは、
前記連結帯状体を通す帯状体貫通孔と、
前記長尺紐状体が貫通する紐状体貫通孔とを有しており、
前記連結帯状体は、
前記帯状体貫通孔を貫通して折り返されて両端部が重ね合わされているとともに、この折り返し部分の前後部分が前記長尺紐状体の端部に連結されていることを特徴とするラッシング具。
【請求項2】
請求項1に記載したラッシング具において、
前記紐状体貫通孔は、
前記長尺紐状体が嵌る孔状または凹状に形成されていることを特徴とするラッシング具。
【請求項3】
請求項2に記載したラッシング具において、
前記紐状体貫通孔は、
前記帯状体貫通孔に連通した状態で形成されていることを特徴とするラッシング具。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のうちのいずれか1つに記載したラッシング具において、
前記連結帯状体は、
平坦な帯状に形成されて前記長尺紐状体を挟んだ状態で連結されていることを特徴とするラッシング具。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のうちのいずれか1つに記載したラッシング具において、
前記長尺紐状体は、
中空のチューブ状に形成されていることを特徴とするラッシング具。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のうちのいずれか1つに記載したラッシング具において、
前記帯状体貫通孔は、
前記紐状体貫通孔を兼ねていること特徴とするラッシング具。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のうちのいずれか1つに記載したラッシング具において、
前記連結帯状体は、前記長尺紐状体に連結されている連結部が板状に形成されていることを特徴とするラッシング具。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のうちのいずれか1つに記載したラッシング具において、
前記長尺紐状体は、
前記紐状体貫通孔を貫通して屈曲するとともにこの屈曲する前後の部分が連結帯状体の幅方向に並んで配置されていることを特徴とするラッシング具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷物としての物品を搬送または保管する際に物品を固定する荷締め用具としてのラッシング具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、荷物としての物品を輸送または保管する際にこの物品を荷役用のパレットなどに固定するためにラッシング具が用いられている。例えば、下記特許文献1には、トラックの荷台に積まれた荷物を縛るためにロープの先端部にフックが設けられたラッシング具が開示されている。この場合、ロープは、軸線方向に直交する軸線方向周りの方向に自由に屈曲するとともに、先端部がフックの基端部分を貫通する環状に形成されて同フックに連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開平06-10046号公報
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載されたラッシング具においては、ロープ自体が軸線方向に直交する方向に自由に屈曲するとともにフックの向きがロープの先端部に対して自由に傾倒(所謂首振り)するため、荷台に対してロープを把持してフックを引っ掛けるまたは引っ掛けを外す作業が行ない難いという問題があった。
【発明の概要】
【0005】
本発明は上記問題に対処するためなされたもので、その目的は、フックの引っ掛けまたは取り外し作業を行い易くして荷物の固縛または固縛を解く作業の作業性を向上させることができる荷締め用具としてのラッシング具を提供することにある。
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の特徴は、荷物を固定対象物上に固縛するためのラッシング具であって、長尺に延びる紐状に形成されて荷物に掛けられる長尺紐状体と、長尺紐状体の端部に設けられて荷物または同固定対象物に引っ掛けられるフックと、長尺紐状体の太さよりも幅広の帯状に形成され連結帯状体とを有し、フックは、連結帯状体を通す帯状体貫通孔と、長尺紐状体が貫通する紐状体貫通孔とを有しており、連結帯状体は、帯状体貫通孔を貫通して折り返されて両端部が重ね合わされているとともに、この折り返し部分の前後部分が長尺紐状体の端部に連結されていることにある。
【0007】
ここで、紐状とは、柔軟に屈曲させることができるとともに、ベルトのように形状が固定的な平帯状ではなく、軸線方向に直交する平面内において互いに直交する2軸方向における太さを自由に変化させて同2軸方向における太さの大小関係を入れ替えることができる柔軟性を持った長尺体である。
【0008】
このように構成した本発明の特徴によれば、ラッシング具は、フックが帯状に形成された連結帯状体を介して長尺紐状体に連結されるとともにこの連結帯状体がフックを貫通して両端部が重ね合わされているため、長尺紐状体の先端部に対してフックが傾倒し難くなるとともに連結帯状体自体も屈曲し難くなる。これにより、ラッシング具は、作業者が連結帯状体を把持することでフックの傾倒を避けながらフックを荷物また固定対象物に対して引っ掛けまたは引っ掛けを外すことができ荷物の固縛または固縛を解く作業の作業性を向上させることができる。また、本発明に係るラッシング具によれば、荷物に掛けられる部分が長尺紐状体で構成されてフックとの連結が連結帯状体で行われるため、荷物の形状に応じて長尺紐状体を柔軟に変形させて掛けつつ、フックに対しては帯状の連結帯状体によって接触面積を増加させて連結部分に作用する引張力を分散させて連結力を向上させることができる。
【0009】
また、このように構成した本発明特徴によれば、ラッシング具は、フックが長尺紐状体が貫通する紐状体貫通孔を有しており、長尺紐状体が帯状体貫通孔を貫通して折り返されるとともにこの折り返し部分の前後部分が連結帯状体にそれぞれ連結されているため、長尺紐状体もフックに連結されることでフックの傾倒をより効果的に防止することができる。また、このラッシング具によれば、連結帯状体に加えて長尺紐状体もフックに連結されているため、フックと長尺紐状体とをより強固に連結することができるとともに長尺紐状体と連結帯状体とをより強固に連結してラッシング具を耐久性を向上させることができる。
【0010】
また、本発明の他の特徴は、前記ラッシング具において、紐状体貫通孔は、長尺紐状体が嵌る孔状または凹状に形成されていることにある。このように構成した本発明の他の特徴によれば、ラッシング具は、紐状体貫通孔が長尺紐状体が嵌る貫通孔状または凹状の切欠きに形成されているため、長尺紐状体が紐状体貫通孔に嵌ることで長尺紐状体に連結された連結帯状体の帯状体貫通孔内での位置ずれが防止できるとともにフックに掛けられた長尺紐状体と連結帯状体との擦れを防止することができる。
【0011】
また、本発明の他の特徴は、前記ラッシング具において、紐状体貫通孔は、帯状体貫通孔に連通した状態で形成されていることにある。このように構成した本発明の他の特徴によれば、ラッシング具は、紐状体貫通孔が帯状体貫通孔に連通した状態で形成されているため、長尺紐状体を紐状体貫通孔に通し易くすることができるとともにフックをコンパクトに構成することができる。
【0012】
また、本発明の他の特徴は、前記ラッシング具において、連結帯状体は、平坦な帯状に形成されて長尺紐状体を挟んだ状態で連結されていることにある。
【0013】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、ラッシング具は、連結帯状体が長尺紐状体を挟んだ状態で連結されているため、連結帯状体の外表面を凹凸のない平滑にして作業者が把持し易くできるとともに互いに重ね合わせた連結帯状体の剛性を高めた板状体に形成できることでも作業者が把持し易くすることができる。なお、この場合、連結帯状体と長尺紐状体とは、糸による縫合、接着剤による接着または連結部分を溶かして一体化する溶着などの手法で連結することができる。
【0014】
また、本発明の他の特徴は、前記ラッシング具において、長尺紐状体は、中空のチューブ状に形成されていることにある。このように構成した本発明の他の特徴によれば、長尺紐状体が中空のチューブ状に形成されているため、長尺紐状体の外形を潰し易く連結帯状体に連結し易いとともに紐状体貫通孔に通した際においても屈曲させ易く屈曲による膨らみを抑えてフックと連結帯状体および長尺紐状体との連結部分をコンパクトにすることができる。
【0015】
また、本発明の他の特徴は、前記ラッシング具において、帯状体貫通孔は、紐状体貫通孔を兼ねていることにある。
【0016】
また、本発明の他の特徴は、前記ラッシング具において、連結帯状体は、長尺紐状体に連結されている連結部が板状に形成されていることにある。
【0017】
また、本発明の他の特徴は、前記ラッシング具において、長尺紐状体は、紐状体貫通孔を貫通して屈曲するとともにこの屈曲する前後の部分が連結帯状体の幅方向に並んで配置されていることにある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係るラッシング具を備えた三叉ラッシング具の外観構成の概略を示す平面図である。
図2】(A),(B)は図1に示したラッシング具におけるフックの外観構成の概略を示しており、(A)はフックの平面図であり、(B)はフックの一部破断側面図である。
図3】(A),(B)は図2に示したフックの使用状態を示しており、(A)はフックにフック掛け部を掛けるためにゲート体を押し下げた状態を示す側面図であり、(B)はフックにフック掛け部を掛けた状態を示す側面図である。
図4図1に示したラッシング具を用いて荷物をパレット上に固定した使用状態を示す斜視図である。
図5図1に示したラッシング具における長尺紐状体と連結帯状体との連結状態およびフックに対する長尺紐状体および連結帯状体の連結状態を説明するための要部の平面図である。
図6】(A),(B)は図1に示した荷締め体におけるフックの外観構成の概略を示しており、(A)はフックの平面図であり、(B)はフックの一部破断側面図である。
図7図5に示したフックを作業者が把持した状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係るラッシング具の一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係るラッシング具101を備えた三叉ラッシング具100の外観構成の概略を示す平面図である。また、図2は、図1に示した三叉ラッシング具100を用いて荷物WKをパレット90上に固定した使用状態を示す斜視図である。この三叉ラッシング具100は、荷役用のパレット90上に載置された物品(例えば、エンジンやトランスミッションなど)を荷物WKとして縛ってパレット90上に固定するための荷役用の道具である。
【0021】
(三叉ラッシング具100の構成)
三叉ラッシング具100は、主として、ラッシング具101、長さ調整具115および荷締め体110を備えて構成されている。ラッシング具101は、長さ調整具115および荷締め体110と協働して荷物WKを荷役用のパレット90上に固定するためのものであり、長尺に延びる紐状に形成されている。より具体的には、ラッシング具101は、主として、フック102、長尺紐状体105および連結帯状体106をそれぞれ備えて構成されている。
【0022】
フック102は、図2(A),(B)にそれぞれ示すように、長尺紐状体105の両端部をパレット90のフック掛け部92に着脱自在に引っ掛けるための金属製の部品であり、主として、フック本体103、ゲート体104およびスプリング104aによって構成されている。
【0023】
フック本体103は、長尺紐状体105の端部に連結されるとともにフック掛け部92に引っ掛けられる部品であり、平板を略J字状に折り曲げて形成されている。より具体的には、フック本体103は、平板状に形成された基部103aと、この基部103aの一方の端部側が略J字状に折り曲げられたフック部103bとで構成されている。
【0024】
基部103aは、長尺紐状体105の端部に連結されるとともにゲート体104を支持する部分である。この基部103aは、フック部103bとは反対側の端部部分に帯状体貫通孔103cおよび紐状体貫通孔103dがそれぞれ形成されている。
【0025】
帯状体貫通孔103cは、連結帯状体106を通すための部分であり、フック本体103の幅方向に延びる長孔状の貫通孔で構成されている。この場合、帯状体貫通孔103cは、本実施形態においては、連結帯状体106の幅よりも幅広の長孔状に形成されている。なお、帯状体貫通孔103cは、連結帯状体106の幅よりも狭い幅の孔状に形成されていてもよいが、長尺紐状体105の太さよりも幅広に形成することが望ましい。
【0026】
紐状体貫通孔103dは、長尺紐状体105を通すための部分であり、帯状体貫通孔103cの長手方向中央部に繋がった状態で平面視で略半円状の貫通孔で構成されている。この場合、紐状体貫通孔103dは、本実施形態においては、帯状体貫通孔103cに対して基部103aの先端部側に形成されている。また、紐状体貫通孔103dは、長尺紐状体105の外径よりも大きな内径、すなわち、長尺紐状体105を完全に収容できる内径に形成されている。なお、紐状体貫通孔103dは、長尺紐状体105の一部が帯状体貫通孔103c内に突出する内径に形成してもよいし、円形以外の形状、例えば、平面視で方形に形成することともできる。
【0027】
ゲート体104は、図3(A),(B)にそれぞれ示すように、フック部103bの内側に引っ掛けられたフック掛け部92がフック部103b内から外れることを防止するためのものであり、フック本体103の基部103aからフック部103bの先端部に向かって弾性的に突出する金属製の棒体で構成されている。スプリング104aは、ゲート体104をフック部103bの先端部に向かって弾性的に押圧するコイルスプリングである。なお、図3においては、フック102に対するフック掛け部92の相対移動方向およびゲート体104の移動方向をそれぞれ破線矢印で示している。
【0028】
長尺紐状体105は、図4に示すように、荷物WKを縛るために荷物WKに掛けられる部品であり、長尺に延びる紐状に形成されている。この場合、紐状とは、柔軟に屈曲させることができるとともに、ベルトのように形状が固定的な平帯状ではなく、互いに直交する2軸方向における太さを自由に変化させて同2軸方向における太さの大小関係を入れ替えることができる柔軟性を持った長尺体である。
【0029】
本実施形態においては、長尺紐状体105は、樹脂製の繊維(例えば、ナイロンやポリプロピレンなど)を中空の筒状に編んだチューブ状に形成されている。これにより、長尺紐状体105は、任意の位置で軸線方向に直交する方向に自由に屈曲するとともに断面形状が自由に変形するように構成されている。この長尺紐状体105は、図5に示すように、両端部が紐状体貫通孔103dを貫通した状態で連結帯状体106を介してフック102に連結されているとともに、これらの両端部の間の中間部分が挿通環117を貫通している。なお、図1においては、長尺紐状体105の一部を省略して示している。
【0030】
連結帯状体106は、図5に示すように、フック102と長尺紐状体105を互いに連結させるための部品であり、幅広で平坦なベルト状に形成されている。本実施形態においては、連結帯状体106は、樹脂製(例えば、ナイロンやポリプロピレンなど)の繊維を引っ張り強度に優れた幅広の帯状に織ったベルトで構成されている。この連結帯状体106は、帯状体貫通孔103cを貫通した状態で両端部が長尺紐状体105の端部部分を挟んだ状態で互いに貼り合わされた連結部106aを有している。
【0031】
より詳しくは、連結帯状体106は、帯状体貫通孔103cを貫通して折り返された連結帯状体106の両端部が長尺紐状体105における紐状体貫通孔103dを貫通して折り返された前後部分を挟んで縫合されて連結部106aを構成している。この場合、長尺紐状体105は、紐状体貫通孔103dを貫通して屈曲する前後の部分が互いに連結帯状体106の幅方向に並んで配置されて連結帯状体106で挟まれて縫合されることにより押し潰された状態で連結帯状体106に連結されている。これにより、連結帯状体106は、連結部106aが人手で折り曲げることが困難な程度に硬質な板状に形成されている。
【0032】
また、連結部106aにおける縫合による接合部106bは、フック102に近い程連結帯状体106に対して傾倒する所謂首振りを抑制できるが、フック102の可動性および縫合時における縫合針とフック102との物理的干渉を考慮すれば、互いに隣接するフック102の先端部と接合部106bの先端部との間隔は1cm~2cmの範囲が好ましい。いずれにしても、接合部106bは、連結帯状体106に対してフック102の首振りを規制する程度にフック本体103の先端部を締め付けることができるようにフック102の先端部の近傍に設ける必要がある。
【0033】
荷締め体110は、図4に示すように、三叉ラッシング具100の全体の長さ調整を可能としつつ長さ調整具115およびラッシング具101と協働して荷物WKを荷役用のパレット90上に固定するためのものであり、長尺に延びて形成されている。本実施形態においては、荷締め体110は、樹脂材(例えば、ナイロンやポリプロピレンなど)を引っ張り強度に優れた幅広の帯状に織ったベルトで構成されている。
【0034】
この場合、荷締め体110は、様々な形状および大きさの荷物WKに対応するために、想定される標準的な大きさの荷物WKに対して十分に長い長さに形成されている。この荷締め体110は、一方の端部にフック111が取り付けられているとともに他方の端部が自由端で構成されて長さ調整具115に保持されている。また、荷締め体110におけるこれらの一方の端部と他方の端部との間には、保護スリーブ114が設けられている。
【0035】
フック111は、図6(A),(B)にそれぞれ示すように、荷締め体110における前記一方の端部をパレット90のフック掛け部92に着脱自在に引っ掛けるための金属製の部品であり、主として、フック本体112、ゲート体113およびスプリング113aによって構成されている。
【0036】
フック本体112は、荷締め体110の端部に連結されるフック掛け部92に引っ掛けられる部品であり、平板を略J字状に折り曲げて形成されている。より具体的には、フック本体112は、平板状に形成された基部112aと、この基部112aの一方の端部側が略J字状に折り曲げられたフック部112bとで構成されている。
【0037】
基部112aは、荷締め体110の端部に連結されるとともにゲート体113を支持する部分である。この基部112aは、フック部112bとは反対側の端部部分に荷締め体貫通孔112cがそれぞれ形成されている。
【0038】
荷締め体貫通孔112cは、荷締め体110を通すための部分であり、フック本体112の幅方向に延びる長孔状の貫通孔で構成されている。この場合、荷締め体貫通孔112cは、本実施形態においては、荷締め体110の幅よりも幅広の長孔状に形成されている。すなわち、荷締め体貫通孔112cは、帯状体貫通孔103cと同様に構成されている。
【0039】
ゲート体113は、フック部112bの内側に引っ掛けられたフック掛け部92がフック部112b内から外れることを防止するためのものであり、ゲート体104と同様に、フック本体112の基部112aからフック部112bの先端部に向かって弾性的に突出する金属製の棒体で構成されている。スプリング113aは、ゲート体113をフック部112bの先端部に向かって弾性的に押圧するコイルスプリングである。すなわち、フック111は、紐状体貫通孔103dを除いてフック102と同様に構成されている。
【0040】
保護スリーブ114は、荷物WKを縛る荷締め体110の損傷を防止するための部品であり、長尺に延びる荷締め体110における長手方向の一部の範囲の外周部を覆う筒状に形成されている。この場合、保護スリーブ114は、荷締め体110上を自由に移動可能な大きさの内径に形成されている。この保護スリーブ114は、本実施形態においては、樹脂(例えば、ポリ塩化ビニル)製のシート材を筒状に形成して構成されている。なお、図1においては、荷締め体110および保護スリーブ114の各一部を省略して示している。
【0041】
長さ調整具115は、図1および図4にそれぞれ示すように、荷締め体110の長さを調整することで三叉ラッシング具100全体の長さ調整を可能としつつ長尺紐状体105と荷締め体110とを互いに連結するための器具であり、長尺に延びる荷締め体110を作業者の任意の位置で固定することができる留め具(所謂バックル)で構成されている。本実施形態においては、長さ調整具115は、長さ調整具115内に挿通される荷締め体110にローレット加工が施された押圧片をトーションコイルスプリングの弾性力で押し付けて荷締め体110を固定する所謂スプリングバックルで構成されている。
【0042】
すなわち、長さ調整具115には、荷締め体110を引き込みおよび送り出し可能に保持している。なお、長さ調整具115は、長さ調整具115から延びる荷締め体110の長さを作業者の任意の長さに調整できる留め具であればよく、スプリングバックル以外のバックル、例えば、ラチェットバックルやオーバセンタバックルの他、スプリングの弾性力を利用しないバックル、例えば、カムバックルやラダーバックルで構成することもできる。この長さ調整具115には、荷締め体110を保持する側とは反対側に連結体116を介して挿通環117が設けられている。
【0043】
連結体116は、長さ調整具115と挿通環117とを連結するための部品であり、前記連結帯状体106と同じ素材によって構成されている。これにより、長さ調整具115と挿通環117とは、連結体116の変形によって互いに変位および変向可能に連結されている。この連結体116の下面には、荷物保護体118が取り付けられている。
【0044】
挿通環117は、前記ラッシング具101を遊動的に通して長さ調整具115と連結するための部品であり、金属製の丸棒を円形のリング状に形成して構成されている。この場合、挿通環117は、ラッシング具101の幅よりも十分に大きな内径のリング状に形成されている。これにより、ラッシング具101は、挿通環117を介して二又に形成される。すなわち、三叉ラッシング具100は、ラッシング具101および荷締め体110によって三叉状に形成される。なお、挿通環117は、連結体116を省略して長さ調整具115に直接設けられていてもよい。
【0045】
荷物保護体118は、長さ調整具115および挿通環117が荷物WKに接触して損傷を与えることを防止するための部品であり、長さ調整具115と挿通環117との間における荷物WK側の面を覆う大きさおよび形状に形成されている。本実施形態においては、荷物保護体118は、人手で屈曲変形可能な柔軟なシート状の材料(例えば、荷締め体110と同じ素材)で構成されている。この場合、荷物保護体118は、長さ調整具115および挿通環117の下面からそれぞれ張り出すように連結体116の下面に縫合により取り付けられている。
【0046】
(三叉ラッシング具100の作動)
次に、上記のように構成した三叉ラッシング具100の作動について説明する。この三叉ラッシング具100は、荷役用のパレット90上に載置された荷物WKをパレット90に固縛するために用いられるものである(図2参照)。この場合、パレット90は、荷物WKを載置可能な大きさの平面視で方形状に形成された平たい板状体である。このパレット90における4つの側面のうち、互いに対向する2つの側面からなる1組の側面にはフォークリフトの爪を挿入するためのフォーク挿入孔91が貫通した状態で形成されている。
【0047】
また、パレット90における4つの側面のうちの前記1組の側面とは異なる互いに対向する残りの2つの側面からなるもう1組の側面には三叉ラッシング具100のフック102,111をそれぞれ引っ掛けるためのフック掛け部92がそれぞれ張り出した状態で設けられている。この場合、フック掛け部92は、三叉ラッシング具100のフック102,111の各内側に収まる外径の丸棒で構成されており、各側面の長手方向に沿って延びて形成されている。なお、図2においては、互いに対向する2つの側面にそれぞれ形成されるフック掛け部92のうちの一方(図示手前側)のみ示している。
【0048】
パレット90上に荷物WKを固縛する作業者は、まず、パレット90上に荷物WKを載置した後、三叉ラッシング具100を用意して荷物WKに掛ける。具体的には、作業者は、荷締め体110のフック111をパレット90におけるフック掛け部92に引っ掛ける。この場合、作業者は、フック111におけるゲート体113を弾性的に押し下げながらフック掛け部92をフック部112b内に配置する。次いで、作業者は、フック111をフック掛け部92に引っ掛けた後、荷締め体110、長さ調整具115および長尺紐状体105を荷物WK上に掛け渡して長尺紐状体105の2つのフック102をフック111を引っ掛けたフック掛け部92とは反対側のフック掛け部92にそれぞれ引っ掛ける。
【0049】
具体的には、作業者は、図7に示すように、フック102における連結帯状体106の連結部106aを把持してフック部103bをパレット90におけるフック掛け部92に引っ掛ける。この場合、フック本体103は、連結帯状体106が帯状に形成されて帯状体貫通孔103cを貫通するとともに長尺紐状体105が紐状体貫通孔103dを貫通しているため、連結部106aに対して傾倒し難くなっている。これにより、作業者は、図5および図7にそれぞれ破線矢印で示す連結部106aに対するフック本体103がふらつく首振りが抑えられるため、フック部103bをフック掛け部92に容易に引っ掛けることができる。
【0050】
次に、作業者は、三叉ラッシング具100で荷物WKをパレット90に対して固縛する。具体的には、作業者は、荷締め体110の自由端側を引っ張ることによって長さ調整具115が固定する荷締め体110の位置を変化させて長さ調整具115から延びる荷締め体110の長さを短くしていく。この荷締め体110を締めていく過程において作業者は、荷物WK上に掛けられる長尺紐状体105の位置を適宜調節する。この場合、作業者は、長尺紐状体105の外形を潰して変形させることにより長尺紐状体105を荷物WKの表面に形成された凹凸または隙間に沿わせて配置することができる。
【0051】
これにより、作業者は、三叉ラッシング具100を用いて荷物WKをパレット90に対して固縛することができる。なお、作業者は、三叉ラッシング具100を用いて荷物WKをパレット90に対して固縛する作業において、長尺紐状体105の2つのフック102をフック掛け部92にそれぞれ掛けた後に荷締め体110のフック111をフック掛け部92に掛けるようにしてもよいことは当然である。
【0052】
次に、作業者は、パレット90上に三叉ラッシング具100によって固縛された荷物WKを輸送または保管する。この場合、三叉ラッシング具100は、長さ調整具115を介した長尺紐状体105および荷締め体110によって荷物WKを固定するため、荷物WKを安定的に固定することができる。
【0053】
次に、三叉ラッシング具100による固縛状態を解く場合には、作業者は、長さ調整具115を操作して荷締め体110の固定状態を解除して荷締め体110の長さを長くした後、長尺紐状体105および荷締め体110における各フック102,111をフック掛け部92からそれぞれ取り外す。この場合、作業者は、ゲート体104を押し下げながら、フック掛け部92からフック部103b,112bをそれぞれ取り外す。また、作業者は、フック102を取り外す際には、前記引っ掛け時と同様に、フック102における連結帯状体106の連結部106aを把持してフック掛け部92からフック部103bを取り外す。これにより、作業者は、連結部106aに対するフック本体103がふらつく首振りが抑えられるため、フック部103bをフック掛け部92から容易に取り外すことができる。
【0054】
上記作動説明からも理解できるように、上記実施形態によれば、ラッシング具101は、フック102が帯状に形成された連結帯状体106を介して長尺紐状体105に連結されるとともにこの連結帯状体106がフック102を貫通して両端部が重ね合わされているため、長尺紐状体105の先端部に対してフック102が傾倒し難くなるとともに連結帯状体106自体も屈曲し難くなる。これにより、ラッシング具101は、作業者が連結帯状体106を把持することでフック102の傾倒を避けながらフック102を荷物WKのを固定対象である固定対象物としてのパレット90のフック掛け部92に対して引っ掛けまたは引っ掛けを外すことができ荷物WKの固縛または固縛を解く作業の作業性を向上させることができる。また、ラッシング具101によれば、荷物WKに掛けられる部分が長尺紐状体105で構成されてフック102との連結が連結帯状体106で行われるため、荷物WKの形状に応じて長尺紐状体105を柔軟に変形させて掛けつつ、フック102に対しては帯状の連結帯状体106によって接触面積を増加させて連結部分に作用する引張力を分散させて連結力を向上させることができる。
【0055】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。なお、各変形例の説明においては、参照する図における上記実施形態と同様の構成部分については同じ符号を付すとともに重服する説明は適宜省略する。
【0056】
例えば、上記実施形態においては、長尺紐状体105は、中空のチューブ状に形成して構成した。しかし、長尺紐状体105は、軸線方向における任意の位置で同軸線方向に直交する方向に自由に屈曲するとともに断面形状が自由に変形するように紐状に形成されていればよい。したがって、長尺紐状体105は、中実の紐状体に構成されていてもよいし、中空に形成するとともに、この中空体の内部に線状に延びる材料(例えば、短繊維や繊維の束)を芯材を備えて構成されていてもよい。
【0057】
また、上記実施形態においては、長尺紐状体105は、樹脂製の繊維を編んだ編物で構成した。しかし、長尺紐状体105は、樹脂製以外の繊維や線材、例えば、天然繊維、炭素繊維、金属製の繊維や線材、さらには、織物以外で構成、例えば、繊維を織った織物で構成することもできる。また、長尺紐状体105は、ゴム紐のように伸縮性を有する材料で構成されていてもよい。
【0058】
また、上記実施形態においては、2つのフック102は、それぞれゲート体104およびスプリング104aを備えて構成した。しかし、フック102は、パレット90のフック掛け部92、すなわち荷物WKを固定する対象である固定対象物または荷物WK自体に着脱自在に引っ掛けられるように構成されていればよい。したがって、フック102は、ゲート体104およびスプリング104aをそれぞれ省略した単なるJ字状に形成されていてよい。
【0059】
また、フック102は、板材ではなく、線材を折り曲げてJ字状に構成されていてもよい。すなわち、フック102は、平板を折り曲げて形成した所謂フラットフック以外で構成、例えば、カギフック(ナローフックともいう)、デルタリングフック、ナスカンフック、スイベルフック、チェーンフックまたはスナップフックなどで構成することもできる。なお、フック111についても同様に、所謂フラットフック以外で構成できることは当然である。
【0060】
また、上記実施形態においては、連結帯状体106は、樹脂製の繊維を織った織物で構成した。しかし、連結帯状体106は、樹脂製以外の繊維や線材、例えば、天然繊維、炭素繊維、金属製の繊維や線材、さらには、織物以外で構成、例えば、繊維を編んだ編物で構成することもできる。
【0061】
また、上記実施形態においては、フック102は、帯状体貫通孔103cおよび紐状体貫通孔103dをそれぞれ設けて構成した。しかし、フック102は、帯状体貫通孔103cのみを設けてこの帯状体貫通孔103cに連結帯状体106と長尺紐状体105とをそれぞれ貫通させることもできる。すなわち、帯状体貫通孔103cは、紐状体貫通孔103dを兼ねることができる。また、フック102は、帯状体貫通孔103cのみを設けてこの帯状体貫通孔103cに連結帯状体106のみを貫通させることもできる。すなわち、フック102は、図6に示したフック111のように、紐状体貫通孔103dを省略して構成することができる。この場合、ラッシング具101は、長尺紐状体105は、フック102に直接引っ掛けられず、連結帯状体106を介してフック102に連結されることになる。
【0062】
また、上記実施形態においては、紐状体貫通孔103dは、帯状体貫通孔103cに連通した状態で半円形状に切り欠いた凹状に形成した。しかし、紐状体貫通孔103dは、長尺紐状体105が嵌る孔状または凹状に形成されていればよい。したがって、紐状体貫通孔103dは、帯状体貫通孔103cの周囲に隣接した位置に帯状体貫通孔103cと連通することなく独立した貫通孔状に形成することもできる。
【0063】
また、上記実施形態においては、長尺紐状体105は、連結帯状体106に挟まれた状態で接合部106bによって縫合されて連結されている。しかし、長尺紐状体105は、縫合以外の方法、例えば、接着または溶着によって連結帯状体106に連結されていてもよい。また、長尺紐状体105は、連結帯状体106における帯状体貫通孔103cを貫通した折り返し部分の前側(先端部側)または後側の一方に縫合、接着または溶着されていてもよい。すなわち、長尺紐状体105と連結帯状体106との接合部106bは、縫合のほか、接着または溶着で構成することができる。また、長尺紐状体105は、連結帯状体106における帯状体貫通孔103cを貫通した折り返し部分の前後の部分を貼り合わせた板状の貼り合わせ部分の表側に長尺紐状体105を縫合、接着または溶着で連結してもよい。
【0064】
また、上記実施形態においては、ラッシング具101は、三叉ラッシング具100の一部を構成する部品として使用した。しかし、ラッシング具101は、ラッシング具101単体で荷物WKをパレット90に固縛することもできる。また、ラッシング具101は、2つのフック102のうちの一方を省略して、そのフック102を省略した端部を長さ調整具115に直接または挿通環117を介して連結することで長さ調整可能に構成することもできる。
【0065】
また、上記実施形態においては、ラッシング具101は、荷物WKをパレット90上に固定した。しかし、ラッシング具101は、荷物WKを運搬や保管のために固定する際に用いられれば、必ずしも上記実施形態に限定されるものではない。すなわち、ラッシング具101は、パレット90の他に、例えば、車両の荷台やアンカーが設置された床面に荷物WKを固定することができる。
【符号の説明】
【0066】
WK…荷物、
90…パレット、91…フォーク挿入孔、92…フック掛け部、
100…三叉ラッシング具、
101…ラッシング具、
102…フック、103…フック本体、103a…基部、103b…フック部、103c…帯状体貫通孔、103d…紐状体貫通孔、104…ゲート体、104a…スプリング、105…長尺紐状体、106…連結帯状体、106a…連結部、106b…接合部、
110…荷締め体、111…フック、112…フック本体、112a…基部、112b…フック部、112c…荷締め体貫通孔、113…ゲート体、113a…スプリング、114…保護スリーブ、115…長さ調整具、116…連結体、117…挿通環、118…荷物保護体。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7