(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-10
(45)【発行日】2022-08-19
(54)【発明の名称】光エネルギー線硬化型粘土組成物、光エネルギー線硬化型粘土組成物の製造方法および造形物の製造方法
(51)【国際特許分類】
A44C 25/00 20060101AFI20220812BHJP
C08F 290/06 20060101ALI20220812BHJP
A63H 9/00 20060101ALI20220812BHJP
A63H 33/00 20060101ALI20220812BHJP
G09B 19/10 20060101ALI20220812BHJP
A44C 1/00 20060101ALI20220812BHJP
【FI】
A44C25/00 Z
C08F290/06
A63H9/00 D
A63H33/00 F
G09B19/10 D
A44C25/00 A
A44C1/00
(21)【出願番号】P 2020017019
(22)【出願日】2020-02-04
【審査請求日】2020-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】592196123
【氏名又は名称】株式会社パジコ
(73)【特許権者】
【識別番号】390028048
【氏名又は名称】根上工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 隆士
(72)【発明者】
【氏名】石田 久憲
(72)【発明者】
【氏名】畠中 瑞生
【審査官】木戸 優華
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-068300(JP,A)
【文献】特開2010-209276(JP,A)
【文献】特開平08-015807(JP,A)
【文献】特開2011-212344(JP,A)
【文献】特開2019-081830(JP,A)
【文献】特表2008-510641(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A44C 25/00
C08F 290/06
A63H 9/00
A63H 33/00
G09B 19/10
A44C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ウレタンアクリレートと、
(b)希釈剤と、
(c)光開始剤と、
(d)添加剤と、
を含有する光エネルギー線硬化型粘土組成物であって、
前記ウレタンアクリレートは、
水酸基を2個以上持ち、分子量300以下の第1化合物と、
脂環または芳香族構造がポリイソシアネート中に含まれている第2化合物と、
アクリレートまたはメタアクリレートと、活性水素とを持つ第3化合物と、
の反応生成物であり、
前記希釈剤は、アクリレートまたはメタアクリレートのモノマーであり、
前記添加剤は、デンプンを含有する、光エネルギー線硬化型粘土組成物。
【請求項2】
請求項1記載の光エネルギー線硬化型粘土組成物において、
前記デンプンの割合は、
46.7重量%以上70重量%以下である、光エネルギー線硬化型粘土組成物。
【請求項3】
請求項1または2記載の光エネルギー線硬化型粘土組成物において、
前記第1化合物は、炭素数が2以上6以下の脂肪族、炭素数6以上の脂環または芳香族構造が含まれている、光エネルギー線硬化型粘土組成物。
【請求項4】
請求項3記載の光エネルギー線硬化型粘土組成物において、
前記第3化合物は、アクリロイル基またはメタアクリロイル基を1個以上6個以下有する化合物である、光エネルギー線硬化型粘土組成物。
【請求項5】
請求項4記載の光エネルギー線硬化型粘土組成物において、
前記反応生成物の重量平均分子量は、2000以上8000以下である、光エネルギー線硬化型粘土組成物。
【請求項6】
請求項5記載の光エネルギー線硬化型粘土組成物において、
前記希釈剤の割合は、10重量%以上30重量%以下である、光エネルギー線硬化型粘土組成物。
【請求項7】
請求項1または2記載の光エネルギー線硬化型粘土組成物において、
前記デンプンは、片栗粉である、光エネルギー線硬化型粘土組成物。
【請求項8】
請求項1または2記載の光エネルギー線硬化型粘土組成物において、
前記デンプンは、小麦粉、米粉、またはコーンスターチである、光エネルギー線硬化型粘土組成物。
【請求項9】
(a)水酸基を2個以上持つ第1化合物と、アクリレートまたはメタアクリレートと、活性水素とを持つ第3化合物と、希釈剤と、を混合する工程、
(b)(a)工程の後、脂環または芳香族構造がポリイソシアネート中に含まれている第2化合物を添加する工程と、
(c)(b)工程の後、デンプンを添加する工程と、
を有し、
前記第1化合物と、前記第2化合物と、前記第3化合物との反応によりウレタンアクリレートが形成され、
前記希釈剤は、アクリレートまたはメタアクリレートのモノマーである、光エネルギー線硬化型粘土組成物の製造方法。
【請求項10】
請求項9記載の光エネルギー線硬化型粘土組成物の製造方法において、
前記デンプンの割合は、46.7重量%以上70重量%以下である、光エネルギー線硬化型粘土組成物の製造方法。
【請求項11】
光エネルギー線硬化型粘土組成物を準備する工程、
前記光エネルギー線硬化型粘土組成物を加工し、粘土造形物を形成する工程、
前記粘土造形物に光エネルギーを照射することにより、粘土造形物を硬化させ、造形物を形成する工程、
を有し、
前記光エネルギー線硬化型粘土組成物は、
(a)ウレタンアクリレートと、
(b)希釈剤と、
(c)光開始剤と、
(d)添加剤と、
を含有する光エネルギー線硬化型粘土組成物であって、
前記ウレタンアクリレートは、
水酸基を2個以上持ち、分子量300以下の第1化合物と、
脂環または芳香族構造がポリイソシアネート中に含まれている第2化合物と、
アクリレートまたはメタアクリレートと、活性水素とを持つ第3化合物と、
の反応生成物であり、
前記希釈剤は、アクリレートまたはメタアクリレートのモノマーであり、
前記添加剤として、デンプンを含有する、造形物の製造方法。
【請求項12】
請求項11記載の造形物の製造方法において、
前記デンプンの割合は、46.7重量%以上70重量%以下である、造形物の製造方法。
【請求項13】
請求項11または12記載の造形物の製造方法において、
前記光エネルギーは、紫外線である、造形物の製造方法。
【請求項14】
請求項13記載の造形物の製造方法において、
前記紫外線は、LED-UVである、造形物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光エネルギー線硬化型粘土組成物、光エネルギー線硬化型粘土組成物の製造方法および造形物の製造方法に関し、特に、アクセサリなどを自作するための光エネルギー線硬化型粘土組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アクリル系の光硬化型樹脂は、ネックレス、ペンダント、ブローチ、キーホルダーなどのアクセサリを自作するための樹脂として市販されている。
【0003】
また、特許文献1には、凹形状の主成形面と前記主成形面が開口する主開口部とが設けられた成形型に成形材料を供給し、前記主成形面に対応した凸形状の主表面および前記主開口部に対応する主背面を備えた主アクセサリ部を成形する成形工程と、前記主アクセサリ部の外部に突出する丸環部、前記主アクセサリ部に埋め込まれる埋設部、および前記埋設部と前記丸環部との間に前記丸環部に対して傾斜して設けられ前記主背面を貫通する傾斜連結部を備えたヒートンを前記成形型に配置する配置工程と、前記主アクセサリ部を硬化させて前記ヒートンを前記主アクセサリ部に固定する硬化工程と、を有するアクセサリの製造方法が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、光輝感に優れた塗膜を形成することが可能なメタリック塗料である不飽和基含有ウレタン樹脂化合物(a)、有機溶剤および光輝材を含有して成るメタリック塗料組成物であって、該不飽和基含有ウレタン樹脂化合物(a)が2以上の活性水素を有する分子量300以下の化合物(A)と脂環式または芳香族のポリイソシアネート化合物(B)と活性水素を有する(メタ)アクリレート化合物(C)との反応生成物であり、分子内にウレタン結合および(メタ)アクリロイル基を持ち、3000以上の分子量および2以上の不飽和基を有することを特徴とする組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018- 57590号公報
【文献】特開2010-209276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者は、成形型の凹部にアクリル系光硬化樹脂よりなるレジン液を供給し、レジン液を硬化させることにより、凹部の形状に対応したアクセサリを自作可能なレジン液を開発している。
【0007】
このようなレジン液は、アクセサリの自作用途として非常に有用なものであり、多くの顧客から支持され、愛用されているものであるが、液状であるため成形型を準備する必要があり、例えば、粘土のように素手で触り造形することができない。
【0008】
そこで、紫外線などの光エネルギー線硬化型でありながら、素手で触り、容易に造形することができる粘土状である粘土組成物の開発が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施の形態に記載の光エネルギー線硬化型粘土組成物は、(a)ウレタンアクリレートと、(b)希釈剤と、(c)光開始剤と、(d)添加剤と、を含有する光エネルギー線硬化型粘土組成物であって、前記ウレタンアクリレートは、水酸基を2個以上持ち、分子量300以下の第1化合物と、脂環または芳香族構造がポリイソシアネート中に含まれている第2化合物と、アクリレートまたはメタアクリレートと、活性水素とを持つ第3化合物と、の反応生成物であり、前記希釈剤は、アクリレートまたはメタアクリレートのモノマーであり、前記添加剤として、デンプンを含有する。
【0010】
例えば、前記第1化合物は、炭素数が2以上6以下の脂肪族、炭素数6以上の脂環または芳香族構造が含まれている。
【0011】
例えば、前記第3化合物は、アクリロイル基またはメタアクリロイル基を1個以上6個以下有する化合物である。
【0012】
例えば、前記反応生成物の重量平均分子量は、2000以上8000以下である。
【0013】
例えば、前記希釈剤の割合は、10重量%以上30重量%以下である。
【0014】
例えば、前記デンプンは、片栗粉である。
【0015】
例えば、前記デンプンは、小麦粉、米粉、またはコーンスターチである。
【0016】
例えば、前記デンプンの割合は、30重量%以上70重量%以下である。
【0017】
本発明の一実施の形態に記載の光エネルギー線硬化型粘土組成物の製造方法は、(a)水酸基を2個以上持つ第1化合物と、アクリレートまたはメタアクリレートと、活性水素とを持つ第3化合物と、希釈剤と、を混合する工程、(b)(a)工程の後、脂環または芳香族構造がポリイソシアネート中に含まれている第2化合物を添加する工程と、(c)(b)工程の後、デンプンを添加する工程と、を有し、前記第1化合物と、前記第2化合物と、前記第3化合物との反応によりウレタンアクリレートが形成され、前記希釈剤は、アクリレートまたはメタアクリレートのモノマーである。
【0018】
本発明の一実施の形態に記載の造形物の製造方法は、光エネルギー線硬化型粘土組成物を準備する工程、前記光エネルギー線硬化型粘土組成物を加工し、粘土造形物を形成する工程、前記粘土造形物に光エネルギーを照射することにより、粘土造形物を硬化させ、造形物を形成する工程、を有し、前記光エネルギー線硬化型粘土組成物は、(a)ウレタンアクリレートと、(b)希釈剤と、(c)光開始剤と、(d)添加剤と、を含有する光エネルギー線硬化型粘土組成物であって、前記ウレタンアクリレートは、水酸基を2個以上持ち、分子量300以下の第1化合物と、脂環または芳香族構造がポリイソシアネート中に含まれている第2化合物と、アクリレートまたはメタアクリレートと、活性水素とを持つ第3化合物と、の反応生成物であり、前記希釈剤は、アクリレートまたはメタアクリレートのモノマーであり、前記添加剤として、デンプンを含有する。
【0019】
例えば、前記光エネルギーは、紫外線である。
【0020】
例えば、前記紫外線は、LED-UVである。
【発明の効果】
【0021】
本発明の光エネルギー線硬化型粘土組成物によれば、粘土組成物の特性を向上させることができる。また、この粘土組成物を用いて加工された造形物の特性を向上させることができる。
【0022】
本発明の光エネルギー線硬化型粘土組成物の製造方法によれば、特性の良好な粘土組成物を製造することができる。
【0023】
本発明の造形物の製造方法によれば、特性の良好な造形物を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【発明を実施するための形態】
【0025】
(実施の形態1)
以下に、本実施の形態の光エネルギー線硬化型粘土組成物(単に、粘土組成物、粘土とも言う)について説明する。本実施の形態の光エネルギー線硬化型粘土組成物は、素手で容易に造形することができ、光エネルギー線である紫外線により硬化する。このような、紫外線硬化性粘土組成物は、家庭用のものとして、簡易なLED-UV装置を用いて、硬化させることができ、容易に造形物を形成することができる。
【0026】
<粘土組成物>
本実施の形態の紫外線硬化性粘土組成物は、ウレタンアクリレートと、モノマー(希釈剤)と、光開始剤と、デンプンとを有する。
【0027】
本実施の形態のウレタンアクリレートは、例えば、以下の構成を有する。
【0028】
-アクリレート-イソシアネート-ポリオール-イソシアネート-アクリレート-
このようなウレタンアクリレートは、ポリオールの構造および分子量、イソシアネートの種類、アクリレートの種類、アクリロイル基の数などにより、その特性が変化する。アクリレートはメタアクリレートでもよい。
【0029】
このようなウレタンアクリレートは、水酸基を2個以上持つ化合物Aと、脂環または芳香族構造がポリイソシアネート中に含まれている化合物Bと、アクリレートまたはメタアクリレートと、活性水素とを持つ化合物Cとの反応生成物として得ることができる。
【0030】
化合物Aは水酸基を2個以上持つ化合物であればよい。例えば、シクロヘキシルジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、デカヒドロナフタレンジメタノール、テトラリンジメタノール、ノルボルネンジメタノール、ペンタシクロドデカンジメタノールなどの多価脂環式アルコール類;エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、3-メチル-1.5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1.8-オクタンジオールなどの多価脂肪族アルコール類などが挙げられる。
【0031】
特に、分子量300以下の化合物、より具体的には、炭素数が2以上6以下の脂肪族、炭素数6以上の脂環または芳香族構造が含まれているものを用いることが好ましい。
【0032】
化合物Bは脂環または芳香族構造がポリイソシアネート中に含まれている化合物であれば良い。例えば、トリレンジイソシアネート、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、4,4-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)メチルシクロヘキサン-2,4(又は2,6)-ジイソシアネート、1,3-(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、1,3-シクロヘキシレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート重合体、ジフェニルメタンジイソシアネート重合体などを挙げることができる。
【0033】
化合物Cは、アクリレートまたはメタクリレートであって、活性水素(-OH中の水素)を持つ化合物であれば良い。別の言い方をすれば、アクリロイル基(H2C=CH-C(=O)-)またはメタクリロイル基を有し、かつ、活性水素(-OH中の水素)を有する化合物である。
【0034】
例えば、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシブチルアクリレート、3-ヒドロキシブチルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、2-ヒドロキシ-1-アクリロキシ-3-メタクリレートなどのヒドロキシアクリレート;プロピレングリコールジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物;1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物;1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物;1,5-ペンタンジオールジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物;1,7-ヘプタンジオールジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物;1,8-オクタンジオールジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物などが挙げられる。
【0035】
また、その他にもネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物、ビスフェノールAジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物などが挙げられる。
【0036】
例えば、化合物Cとしては、アクリロイル基またはメタクリロイル基を1~6個有するものを用いることができる。このような基は、架橋結合の起点となり、基の数を制御することで、紫外線硬化物の硬度を調整することができる。例えば、基の数を1、2個程度とすることで、紫外線硬化物を柔らかくすることができる。また、基の数を4個以上とすることで、紫外線硬化物を硬くすることができる。
【0037】
本実施の形態の希釈剤(モノマー)としては、アクリレートまたはメタクリレートのモノマーを用いることができる。このモノマーは、ウレタンアクリレートに組み込まれるモノマーではない。
【0038】
アクリレートまたはメタクリレートとしては、例えば、ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、N-ビニルカプロラクタム、(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチルアクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の単官能(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコール#200ジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンEO変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロキエチルイソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリヒドロキシエチルイソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート(一例として、ビスコート#700HV)等の多官能(メタ)アクリレートなどを用いることができる。このような希釈剤(モノマー)としてのアクリレートまたはメタクリレートは、化合物Cと異なり、可塑性の付与を目的とするものである。
【0039】
本実施の形態の光開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(Omnirad184)、2-メチル-2-モルフォリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタノン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルエトキシフォスフィンオキサイド(Speedcure TPO)、メチルベンゾイルホルメート(OmniradMBF)、ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、ヒドロキシベンゾフェノン、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、2,4,6-トリス(トリクロロメチル)-S-トリアジン、2-メチル-4,6-ビス(トリクロロ)-S-トリアジン、2-(4-メトキシフェニル)-4、6-ビス(トリクロロメチル)-S-トリアジン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパノン(Omnirad 2959)、鉄-アレン錯体、チタノセン化合物などが挙げられ、これらのうち1種以上を使用できる。
【0040】
本実施の形態のデンプンとしては、片栗粉、小麦粉、米粉、コーンスターチなどを用いることができる。デンプンは、(C6H10O5)nで示される炭水化物で、グルコース(C6H12O6)分子がグリコシド結合によって重合した高分子である。このように、デンプンを添加することで、可塑性の付与、タックの軽減、形状保持性の向上等、加工性、造形性を向上することができる。
【0041】
なお、本実施の形態の紫外線硬化型粘土組成物には、その他の添加剤として、デンプン(充填剤、フィラー)の他、滑材(例えば、化粧油)、香料、顔料等を含有させることができる。また、触媒、禁止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、レベリング剤、染料、消泡剤、無機フィラー、有機フィラー、架橋剤等を含有させることができる。
【0042】
また、粘土組成物を構成する上記具体的材料は、単独で用いても良く、また、2種以上のものを混合して用いてもよい。
【0043】
また、本実施の形態の紫外線硬化型粘土組成物は、成形後、光エネルギー線(紫外線(UV)、LED-UV等)で硬化させることができる。例えば、UVライト(株式会社パジコ社製)、UV-LEDハンディライト(株式会社パジコ社製)などを用いて、本実施の形態の紫外線硬化型粘土組成物を硬化させることができる。例えば、LED-UVの照射領域は、30~180cm2、出力(強度)は、5~15W、照射時間は、30~240秒程度である。また、照射部の高さ(ライトから床面までの距離)3cm~6cm程度である。また、本実施の形態の紫外線硬化型粘土組成物は、太陽光により硬化させることもできる。
【0044】
(実施例)
以下、実施例を通じて本実施の形態をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0045】
<紫外線硬化型粘土組成物の合成>
化合物Aとしてのエチレングリコールと、化合物Cとしてのペンタエリスリトールトリアクリレートと、希釈剤(モノマー)とを混合した。混合割合は、ウレタンアクリレートと希釈剤(モノマー)が表1に示す割合となるように、化合物A~Cの量を調整した。
【0046】
【0047】
次いで、化合物Bとしてのイソホロンジイソシアネートを添加し、70℃で15時間撹拌し、化合物A、B、Cの反応によりウレタンアクリレートを生成した。化合物A、B、Cの混合割合(重量)は、1:4.2~5.0:2.5~8.3程度であった。
【0048】
次いで、デンプンなどの添加剤を加えて、混合した。
【0049】
得られた組成物は、不透明の粘土状であり、容易に成形可能な粘土であった。また、ウレタンアクリレートの重量平均分子量は、2000以上8000以下であった。
【0050】
<硬化物の形成>
表1に示す配合で形成された粘土を成形し、LED-UVを照射し、硬化物を得た。粘土および硬化物について後述の評価を行った。なお、具体的な使用材料を以下に示す。
【0051】
<使用材料>
MEDOL-10:(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチルアクリレート
ビスコート#700HV:ビスフェノールAEO3.8モル付加物ジアクリレート
Speedcure TPO:2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルエトキシフォスフィンオキサイド
Cetiol SN-1:エチルヘキサン酸セチル(化粧油)
なお、Cetiol SN-1は、化粧油であり、ブルーイング剤とは、青色系顔料を使用した光学的増白剤である。
【0052】
<評価>
(1)粘土性
粘土性について、“柔軟性”“形状保持性”“滑らかさ”の3つの観点から、次のように評価した。
【0053】
柔軟性については、素手でほぼ力を加えることなく容易に引き延ばせる柔軟性を有するものを「◎」、引き延ばすために若干力を入れる必要があるが容易に引き延ばせる柔軟性を有するものを「○」、引き延ばすために力を入れる必要があるが素手で加工可能な程度の柔軟性を有するものを「△」、引き延ばすためにかなりの力を加える必要があり、叩いて延ばす、またはのし棒などの道具を用いて延ばす等の加工方法が好ましい程度の柔軟性を有するものを「×」とした。
【0054】
形状保持性については、加工した形状が維持されるものを「○」、加工した形状物の角部などにおいて若干ラウンド化するものの形状の維持としては問題ないものを「△」、加工した形状物が時間とともに変化し、当初形状を維持し難いものを「×」とした。
【0055】
滑らかさについては、粘土を引き延ばした際、引き延ばす距離に応じて粘土が滑らかに紐状となるものを「○」、紐状の粘土の表面が若干ぼそぼそしているものの、加工性に問題がないものを「△」、ぼそぼそし、紐状に引き延ばすことができないものを「×」とした。
(2)臭気
粘土の臭いを嗅いで、臭いがほとんど認められないものを「○」、臭いが認められるが、加工に差しさわりのない程度のものを「△」、臭いが強いものを「×」とした。
(3)黄変
粘土について、黄変がほとんど認められないものを「○」、黄変が僅かに認められるものを「△」、黄変が強いものを「×」とした。
(4)べたつき(タック)
粘土の表面を指で触わる指触評価を実施し、べたつきが全く認められないものを「○」、明らかにべたつきが認められるものを「×」とし、これらの間の感触のものを「△」とした。
(5)硬化性(べたつき(タック))
LED-UVの照射後の硬化物の表面を指で触わる指触評価を実施し、べたつきが全く認められず、硬化性が良いものを「○」、明らかにべたつきが認められ、硬化性が低いものを「×」とし、これらの間の感触のものを「△」とした。
【0056】
(実施例1)
上記ウレタンアクリレートを33重量部、モノマーとしてMEDOL-10およびビスコート#700HVをそれぞれ15重量部、2重量部、光開始剤としてSpeedcure TPOを1重量部、ミント香料を1重量部、スミプラストバイオレットB(ブルーイング剤)を0.0001重量部、市販の片栗粉を50重量部、前述の合成工程に基づき混合し、粘土1を得た。粘土1は、粘土性(柔軟性;△、形状保持性;○、滑らかさ;△)、臭気○、黄変○、べたつき○であった。
【0057】
次いで、粘土1を造形し、LED-UVを照射したところ、造形形状に対応した硬化物(成形品)を得ることができた。硬化性○であった。
【0058】
なお、上記ウレタンアクリレート、モノマーおよび片栗粉の総量が100重量部となるように調整されている。
【0059】
(実施例2)
上記ウレタンアクリレートを30重量部、モノマーのうちビスコート#700HVを5重量部とする以外は実施例1と同様にして粘土2を得た。粘土2は、粘土性(柔軟性;△、形状保持性;○、滑らかさ;△)、臭気○、黄変○、べたつき○であった。
【0060】
次いで、粘土2を造形し、LED-UVを照射したところ、造形形状に対応した硬化物(成形品)を得ることができた。硬化性○であった。
【0061】
(実施例3)
片栗粉を60重量部に増加し、ウレタンアクリレートを24重量部、モノマーとしてMEDOL-10およびビスコート#700HVをそれぞれ12重量部、4重量部とする以外は実施例2と同様にして粘土3を得た。粘土3は、粘土性(柔軟性;×、形状保持性;○、滑らかさ;×)、臭気○、黄変○、べたつき○であった。
【0062】
次いで、粘土3を造形し、LED-UVを照射したところ、造形形状に対応した硬化物(成形品)を得ることができた。硬化性○であった。
【0063】
(実施例4)
片栗粉を70重量部に増加し、ウレタンアクリレートを18重量部、モノマーとしてMEDOL-10およびビスコート#700HVをそれぞれ9重量部、3重量部とする以外は実施例2と同様にして粘土4を得た。粘土4は、粘土性(柔軟性;×、形状保持性;○、滑らかさ;×)、臭気○、黄変○、べたつき○であった。
【0064】
次いで、粘土4を造形し、LED-UVを照射したところ、造形形状に対応した硬化物(成形品)を得ることができた。硬化性○であった。
【0065】
(実施例5)
化粧油を5重量部さらに添加する以外は実施例2と同様にして粘土5を得た。粘土5は、粘土性(柔軟性;○、形状保持性;○、滑らかさ;○)、臭気○、黄変○、べたつき○であった。
【0066】
次いで、粘土5を造形し、LED-UVを照射したところ、造形形状に対応した硬化物(成形品)を得ることができた。硬化性○であった。
【0067】
(実施例6)
片栗粉を30重量部に減少させ、ウレタンアクリレートを42重量部、モノマーとしてMEDOL-10およびビスコート#700HVをそれぞれ21重量部、7重量部とする以外は実施例5と同様にして粘土6を得た。粘土6は、粘土性(柔軟性;○、形状保持性;△、滑らかさ;○)、臭気○、黄変○、べたつき△であった。
【0068】
次いで、粘土6を造形し、LED-UVを照射したところ、造形形状に対応した硬化物(成形品)を得ることができた。硬化性○であった。
【0069】
(実施例7)
片栗粉を40重量部に減少させ、ウレタンアクリレートを36重量部、モノマーとしてMEDOL-10およびビスコート#700HVをそれぞれ18重量部、6重量部とする以外は実施例5と同様にして粘土7を得た。粘土7は、粘土性(柔軟性;○、形状保持性;△、滑らかさ;○)、臭気○、黄変○、べたつき△であった。
【0070】
次いで、粘土7を造形し、LED-UVを照射したところ、造形形状に対応した硬化物(成形品)を得ることができた。硬化性○であった。
【0071】
(実施例8)
ウレタンアクリレートを25重量部、モノマーとしてMEDOL-10およびビスコート#700HVをそれぞれ15重量部、10重量部とする以外は実施例5と同様にして粘土8を得た。粘土8は、粘土性(柔軟性;○、形状保持性;○、滑らかさ;○)、臭気○、黄変○、べたつき△であった。
【0072】
次いで、粘土8を造形し、LED-UVを照射したところ、造形形状に対応した硬化物(成形品)を得ることができた。硬化性○であった。
【0073】
(実施例9)
化粧油の添加量を2重量部とする以外は実施例8と同様にして粘土9を得た。粘土9は、粘土性(柔軟性;○、形状保持性;○、滑らかさ;△)、臭気○、黄変○、べたつき○であった。
【0074】
次いで、粘土9を造形し、LED-UVを照射したところ、造形形状に対応した硬化物(成形品)を得ることができた。硬化性○であった。
【0075】
(実施例10)
化粧油の添加量を3重量部とする以外は実施例8と同様にして粘土10を得た。粘土10は、粘土性(柔軟性;○、形状保持性;○、滑らかさ;○)、臭気○、黄変○、べたつき○であった。
【0076】
次いで、粘土10を造形し、LED-UVを照射したところ、造形形状に対応した硬化物(成形品)を得ることができた。硬化性○であった。
【0077】
(実施例11)
片栗粉を60重量部に増加し、ウレタンアクリレートを20重量部、モノマーとしてMEDOL-10およびビスコート#700HVをそれぞれ12重量部、8重量部とする以外は実施例10と同様にして粘土11を得た。粘土11は、粘土性(柔軟性;△、形状保持性;○、滑らかさ;△)、臭気○、黄変○、べたつき○であった。
【0078】
次いで、粘土11を造形し、LED-UVを照射したところ、造形形状に対応した硬化物(成形品)を得ることができた。硬化性○であった。
【0079】
(実施例12)
片栗粉を70重量部に増加し、ウレタンアクリレートを15重量部、モノマーとしてMEDOL-10およびビスコート#700HVをそれぞれ9重量部、6重量部とする以外は実施例10と同様にして粘土12を得た。粘土12は、粘土性(柔軟性;△、形状保持性;○、滑らかさ;△)、臭気○、黄変○、べたつき○であった。
【0080】
次いで、粘土12を造形し、LED-UVを照射したところ、造形形状に対応した硬化物(成形品)を得ることができた。硬化性○であった。
【0081】
(実施例13)
化粧油の添加量を3.5重量部とする以外は実施例10と同様にして粘土13を得た。粘土13は、粘土性(柔軟性;◎、形状保持性;○、滑らかさ;◎)、臭気○、黄変○、べたつき○であった。
【0082】
次いで、粘土13を造形し、LED-UVを照射したところ、造形形状に対応した硬化物(成形品)を得ることができた。硬化性○であった。
【0083】
(他の実施例)
上記実施例1~13においては、ウレタンアクリレートを合成する化合物Aとしてエチレングリコールを用いたが、化合物Aとしてシクロヘキサンジメタノールを用いた場合についても粘土組成物および硬化物を形成することができた。
【0084】
また、上記実施例1~13においては、モノマーとしてMEDOL-10およびビスコート#700HVを用いたが、以下のモノマーを用いた場合についても粘土組成物および硬化物を形成することができた。
【0085】
<他のモノマー例>
IBXA:イソボルニルアクリレート
FA-511AS:ジシクロペンテニルアクリレート
HEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート
HPMA:2-ヒドロキシプロピルメタクリレート
NOD-N:1,9-ノナンジオールジメタクリレート
また、上記実施例1~13においては、光開始剤としてSpeedcure TPOを用いたが、以下の光開始剤を用いた場合についても粘土組成物および硬化物を形成することができた。
【0086】
<他の光開始剤例>
Omnirad184:1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン
Omnirad 2959:1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパノン
OmniradMBF:メチルベンゾイルホルメート
(考察)
このように、ウレタンアクリレートをモノマー中で合成することにより、ウレタン樹脂間にモノマーが介在し、固形でありながら、手で加工可能な粘土性を有する組成物を形成することができる。
【0087】
そして、さらに、デンプンを添加することにより、加工性に優れた粘土組成物を形成することができる。
【0088】
組成物中のモノマーの割合は、例えば、10重量%以上30重量%以下であり、より好ましくは15重量%以上25重量%以下である。
【0089】
組成物中のウレタンアクリレートの割合は、10重量%以上50重量%以下であり、より好ましくは15重量%以上42重量%以下である。
【0090】
組成物中のデンプンの割合は、30重量%以上70重量%以下であり、より好ましくは40重量%以上60重量%以下である。
【0091】
上記割合は、粘土組成物の総量に対する割合である。また、粘土組成物の主成分であるウレタンアクリレート、モノマーおよびデンプンの総量(例えば、実施例では100重量部)に対する割合としてもよい。
【0092】
また、組成物中のウレタンアクリレート:モノマー:デンプンの割合(重量比)は、1:1:2が好ましい。但し、各材料において、各重量の±10%程度までの配合のズレは許容範囲である。
【0093】
また、化粧油を用いることで、粘土性が改善することができることが判明した。また、本発明者らの検討(本願において明示していない実施例)によれば、以下の事項が判明している。臭気については、MEDOL-10などのモノマーを用いることで改善する。また、黄変については、ブルーイング剤を用いることで改善する。また、硬化性については、Speedcure TPOのようなアシルホスフィンオキサイド系の光開始剤を用いることで改善する。さらにSpeedcure TPOのようなアシルホスフィンオキサイド系の光開始剤を用いた場合、黄変も改善する。
【0094】
(実施の形態2)
本実施の形態においては、実施の形態1で説明した粘土組成物の使用方法について説明する。
【0095】
図1~
図3は、粘土を造形する方法(硬化物の製造方法)を示す図である。
【0096】
図1に示す粘土10は、実施の形態1で説明した粘土組成物である。この粘土10を遮光袋から取り出し、
図2に示すように、造形物10aを形成する。造形物10aは、例えば、いちごの造形物である。このような造形物には、着色剤(例えば、市販の星の雫着色剤)を添加することで、有色不透明の造形物を形成することができる。このようにして、造形物(作品)10aを形成することができる。なお、この造形物10aは、硬化前の変形可能な粘土状の造形物(粘土造形物)である。
【0097】
次いで、
図3に示すように、LED-UV装置20を用いて、造形物10aに、LED-UVを照射する。これにより、粘土よりなる造形物(作品)10aが硬化する。硬化後の造形物(作品)を“11H”とする。
【0098】
このように、実施の形態1で説明した粘土は、紙粘土やブロンズ粘土などより容易に素手で造形することが可能となる。そして、この粘土は、LED-UVにより容易に短時間で硬化させることができ、硬化後は樹脂組成物となるため、強固で保存性の高いものとなる。
【0099】
このような、LED-UV硬化型の樹脂組成物としては、液状のものが市販されているが、液状のものは、例えば、
図5に示すような型が必要となり、また、造形の範囲が画一的となる。
図5は、造形用の型を示す図である。
【0100】
しかしながら、実施の形態1で説明した粘土によれば、造形の範囲が広がり、オリジナリティの高い造形物(作品)を作ることができる。
【0101】
また、
図4に示すように、チェーン12などの金属部材の取付けも簡単である。例えば、造形物10aに孔をあけ、チェーン12の一端を孔に通すことにより、チェーン12を取り付けた後、LED-UVを照射することで、容易にチェーン12を取付けることができる。
図4は、チェーンを取付けた造形物を示す図である。
【0102】
例えば、前述した液状のLED-UV硬化型の樹脂組成物では、チェーンなどを通す孔の位置にヒートンを埋め込んでおき、硬化後にこのヒートンを抜くことにより孔を形成する必要があり、ヒートンの位置決めなどが難しかった。
【0103】
しかしながら、実施の形態1で説明した粘土によれば、チェーンなどを通す孔の形成や位置の修正が容易である。
【0104】
また、液状のLED-UV硬化型の樹脂組成物と異なり、実施の形態1で説明した粘土は、粘土ヘラや、はさみを用いた微細な加工が容易であり、また、型抜き加工が容易であり、造形の幅が広がる。もちろん、実施の形態1で説明した粘土を、
図5に示すような型(成形型)を用いて加工してもよい。
【0105】
また、実施の形態1で説明した粘土は、市販の形状物(例えば、携帯端末など)を押し当てることにより、容易に“かたどり”を行うことができ、市販の形状物(例えば、携帯端末など)のカバーなどを容易に形成することができる。
【0106】
このように、実施の形態1で説明した粘土は、手で容易に加工可能な粘土状であり、かつ、エネルギー線で硬化させることができるため、容易にオリジナリティの高い造形物(作品)を形成することができる。
【0107】
また、硬化後には適度な硬さを有するため研磨加工なども可能である。また、硬化後の着色も可能である。また、硬化後に他の部材と接着することも可能であり、例えば、マグネットを接着することができる。また、硬化物は耐水性を有し、例えば、花瓶などとして用いることもできる。
【0108】
図6~
図17は、粘土の造形工程を示す図(写真)である。例えば、実施の形態1で説明した粘土(紫外線硬化性粘土組成物)30は、
図6(A)に示すように、手で容易に丸めることができ、そして、のし棒31で容易に伸ばし、平らにすることができる(
図6(B))。例えば、所望の形状に伸ばした粘土を、
図7(A)に示すように、ヘラ32で押すなどして加工することができ、また、ヘラ32により所望の凹凸を形作ることができる(
図7(B))。また、テクスチャを付ける(質感を出す)ことができる。例えば、
図8(A)に示すように、ブラシ状の針金(例えば、7本針、パジコ社製、品番404472)33を用い、表面に細かい凹凸を付けることにより、素材の質感を出すことができる。また、
図8(B)に示すように、先端の細いヘラ32を用い、表面に細かい線を付けることにより、素材の質感を出すことができる。
【0109】
例えば、デンプンを添加していない粘土においては、形状保持性が低下し、例えば、前述のような、表面の細かい凹凸や細かい線を形成しても、時間の経過とともに凹凸や線が埋まり、繊細な表現ができない。これに対し、実施の形態1で説明した粘土(紫外線硬化性粘土組成物)30においては、上記のような表面の細かい凹凸や細かい線を維持することができ、表現性の豊かな造形物を形成することができる。
【0110】
また、実施の形態1で説明した粘土(紫外線硬化性粘土組成物)30は、
図9(A)、(B)に示すように、ヘラ32や指先で加工することにより、花びらや、凹形状物など、繊細な形状物を造形することができる。また、
図10に示すように、容易に抜き型34で加工することができ、また、
図11に示すように、加工パーツ同士を容易に接着することができる。さらに、
図12に示すように、はさみ35を用いたカットが可能であり、緻密で繊細な表現物を形成することができる。
【0111】
上記のように、種々に加工した造形物に、
図13に示すLED-UV装置20を用いてLED-UVを照射することで、粘土状の造形物(例えば、花)を硬化させることができる。硬化物(造形物)を30Hで示す。また、LED-UV硬化後において、
図14に示すように、サンドペーパー36を用いて研磨することができ、また、
図15に示すように、マット剤37やグロス剤を塗布し、表面の質感を変えることができる。さらに、
図16に示すように、硬化後にアクセサリ金具38を接着することが可能である。
【0112】
図17に、具体的な造形物(粘土の硬化物)の例を示す。着色剤(例えば、市販の宝石の雫着色剤)を添加することで、有色の造形物を形成することができる。
【0113】
このように、実施の形態1で説明した粘土は、紙粘土、軽量粘土、樹脂粘土などと同様に素手で容易に造形することが可能となる。特に、実施の形態1で説明した粘土は、ベタつかないのに、粘土が伸びた後に戻ることがなく、容易に繊細な加工をすることができる。また、実施の形態1で説明した粘土は、白色であるものの、薄く加工することが可能であり、薄くすることにより光透過性が生じ、このような特性を生かし、表現性豊かな造形物を製造することができる。また、硬化後には、プラスチックと同等の硬さを有し、強固で保存性の高い硬化物となる。また、硬化物は、耐水性を発現するため、アクセサリやその他の実用品(例えば、花瓶など)の製造に好適に利用することができる。また、硬化時間もLED-UV硬化の場合、例えば、30秒~240秒程度と短く、短時間でアクセサリやその他の実用品を製造することができる。
【0114】
(実施の形態3)
本実施の形態においては、各種応用例について説明する。
【0115】
(応用例1)
実施の形態1の粘土に着色剤を添加してもよい。
【0116】
(応用例2)
実施の形態1の粘土に香料を添加してもよい。例えば、レモンやいちごなどの造形物(作品)に対応した香料を添加してもよい。
【0117】
(応用例3)
実施の形態1の粘土の硬化性を調整し、ゴム状のような柔軟性を持たせても良い。硬化性を調整することで、例えば、いちごやぶどうなどのグミを模した造形物(作品)を形成することができる。
【0118】
(応用例4)
実施の形態2においては、いわゆる、ハンドメイドの造形物(作品)を例に説明したが、実施の形態1の粘土を、タイルなどの補修材として用いても良い。
【0119】
このように、本発明は上記実施の形態や実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明は、光エネルギー線硬化型粘土組成物、光エネルギー線硬化型粘土組成物の製造方法および造形物の製造方法として利用できるものである。特に、アクセサリなどを自作するための光エネルギー線硬化型粘土組成物に関するものとして利用できるものである。
【符号の説明】
【0121】
10 粘土
10a 造形物
11H 硬化後の造形物(作品)
12 チェーン
20 LED-UV装置