(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-10
(45)【発行日】2022-08-19
(54)【発明の名称】マンホールの耐震構造、その構築方法、及び構築方法の実施に供される切削装置
(51)【国際特許分類】
E02D 29/12 20060101AFI20220812BHJP
B28D 1/18 20060101ALI20220812BHJP
E03F 5/02 20060101ALI20220812BHJP
【FI】
E02D29/12 E
B28D1/18
E03F5/02
(21)【出願番号】P 2021077668
(22)【出願日】2021-04-30
【審査請求日】2021-04-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000214847
【氏名又は名称】長野油機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000229667
【氏名又は名称】日本ヒューム株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000229128
【氏名又は名称】ベルテクス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000220675
【氏名又は名称】東京都下水道サービス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】302059953
【氏名又は名称】株式会社メーシック
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100070024
【氏名又は名称】松永 宣行
(72)【発明者】
【氏名】府川 陽一
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 尚平
(72)【発明者】
【氏名】石田 孝太郎
(72)【発明者】
【氏名】谷津 清宏
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特許第6842094(JP,B1)
【文献】特開2010-203141(JP,A)
【文献】特開平09-264032(JP,A)
【文献】特開2001-040751(JP,A)
【文献】特開2017-020191(JP,A)
【文献】特開2000-178991(JP,A)
【文献】実開平07-038887(JP,U)
【文献】特開2006-045816(JP,A)
【文献】特開平10-252129(JP,A)
【文献】特開2002-030686(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 29/12
E03F 5/02
B28D 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下水道本管がその端部において既設のマンホールに接続され、上下方向へ伸びる外副管がその上端部において前記下水道本管に接続され、また、前記外副管がその周囲を取り囲む防護コンクリートにより保護されている前記マンホールの耐震構造であって、
前記マンホールの壁に形成され前記下水道本管の端部の周囲を取り囲む環状の穴及び該環状の穴を埋める弾性変形可能の止水材と、
前記外副管の上端部の近傍において前記外副管及び前記防護コンクリートに形成され前記外副管の管壁及び前記防護コンクリートの内部を前記外副管の軸線の周りに放射状に伸びる環状の溝及び該環状の溝を埋める弾性変形可能の止水材とを備える、マンホールの耐震構造。
【請求項2】
前記環状の溝を埋める止水材は、前記環状の溝のみを埋めるリングからなる、請求項1に記載のマンホールの耐震構造。
【請求項3】
前記環状の溝を埋める止水材は、前記環状の溝及び該溝が取り囲む空間の双方を埋める板状体からなり、
また、前記マンホールの耐震構造は、さらに、前記環状の溝の下方に配置され前記外副管の内部を満たす充填物と、前記環状の溝の上方に配置され前記外副管の上端部内を閉塞する閉塞物と、前記マンホール内に設置された内副管とを備える、請求項1に記載のマンホールの耐震構造。
【請求項4】
請求項1に記載のマンホールの耐震構造の構築方法であって、
マンホール及び下水道本管の内部から、外副管の上端部の近傍において前記外副管及びその周囲の防護コンクリートに前記外副管の管壁及び前記防護コンクリートの内部を前記外副管の軸線の周りに放射状に伸びる環状の溝を形成すること、
前記環状の溝に該溝のみを埋める弾性変形可能の止水材を配置すること、
前記環状の溝の形成に先立ち又はその後に、前記マンホールの壁に前記下水道本管の端部の周囲を取り囲む環状の穴を形成し、前記環状の穴にこれを埋める弾性変形可能の止水材を配置することを含む、マンホールの耐震構造の構築方法。
【請求項5】
請求項1に記載のマンホールの耐震構造の構築方法であって、
マンホール及び下水道本管の内部から、上下方向へ伸びる外副管の上端部の近傍において前記外副管及びその周囲の防護コンクリートに前記外副管の管壁及び前記防護コンクリートの内部を前記外副管の軸線の周りに放射状に伸びる環状の溝を形成すること、
前記環状の溝の下方において前記外副管の内部を充填物で満たすこと、
前記環状の溝と該環状の溝が取り囲む空間とにこれらを埋める弾性変形可能の止水材を配置すること、
前記環状の溝の上方において前記外副管の上端部を閉塞する閉塞物を配置すること、
前記環状の溝の形成に先立ち又はその後に、前記マンホールの壁に前記下水道本管の端部の周囲を取り囲む環状の穴を形成し、前記環状の穴にこれを埋める弾性変形可能の止水材を配置すること、
前記マンホールの内部に内副管を設置することを含む、マンホールの耐震構造の構築方法。
【請求項6】
請求項4又は5に記載のマンホールの耐震構造の構築方法において、マンホール及び下水道本管の内部から、上下方向へ伸びる外副管及びその周りの防護コンクリートに前記外副管の管壁及び防護コンクリートの内部を前記外副管の軸線の周りに放射状に伸びる環状の溝を形成するために用いられる切削装置であって、
前記外副管の上端部に嵌合される外筒であって前記外副管に対する載置部を有する外筒と、
前記外筒に嵌合されかつ回転可能に支持された内筒と、
前記内筒に取り付けられ該内筒の下方へ伸びる反力支持部材と、
前記反力支持部材に支持された推進機構であって前記反力支持部材に対する取付部と前記内筒の軸線に直交する方向へ直線的に移動可能である可動部とを有する推進機構と、
前記推進機構の可動部に取り付けられたモータ及び該モータの回転軸に取り付けられたコンクリートカッターと、
前記外筒に揺動可能に取り付けられた操作ハンドルとを備える、切削装置。
【請求項7】
前記推進機構は、前記反力支持部材に支持された互いに相対する、全体に菱形を呈する二組のパンタグラフと、
前記二組のパンタグラフ間に配置された上下2つのスペーサと、
前記二組のパンタグラフ間を前記内筒の軸線の伸長方向へ伸びる、
右ねじ部及び左ねじ部を有するボルトとを備え、
各組のパンタグラフが二対のリンクを有し、前記二対のリンクのうちの一対のリンクが上方のスペーサにピン結合された一端部と、前記反力支持部材及び前記モータにピン結合された他端部とを有し、他の一対のリンクが下方のスペーサにピン結合された一端部と、前記反力支持部材及び前記モータにピン結合された他端部とを有し、
前記ボルトがその右ねじ部及び左ねじ部においてそれぞれ両スペーサに螺合され両スペーサを貫通している、請求項6に記載の切削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水道本管に接続されまた防護コンクリートで保護された外副管を有する既設のマンホールに適用される耐震構造、その構築方法、及び構築方法の実施に供される切削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下水道本管に接続されまた上下方向へ伸びる外副管を有する既設のマンホールの耐震構造として、マンホールと該マンホールに接続された下水道本管の端部との間に弾性変形可能の止水材(一の止水材)を配置し、また、外副管の上端部近傍を切除し、切除後に残る空間に弾性変形可能の止水材(他の止水材)を配置することが提案されている。これによれば、前記一の止水材の弾性変形を介してのマンホールに対する下水道本管の相対変位が許容され、また、前記他の止水材の弾性変形を介しての外副管に対する下水道本管の相対変位が許容される。これにより、地震の発生に伴う下水道本管、あるいはさらにマンホールの損壊や破壊が防止される。
【0003】
ところで、既設のマンホールには、外副管がその周囲を取り巻く防護コンクリートにより保護されているものがあり、防護コンクリートは下水道本管に対しその直下において接している。このため、このようなマンホールに前記従来の耐震構造を適用すると、防護コンクリートによって、外副管に対する下水道本管の相対変位が阻害される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記従来の事情に鑑み、下水道本管に接続された既設のマンホールであって防護コンクリートで保護された外副管を有する既設のマンホールに適用される新たな耐震構造、その構築方法、及び当該構築方法の実施に供される切削装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下水道本管がその端部において既設のマンホールに接続され、上下方向へ伸びる外副管がその上端部において前記下水道本管に接続され、前記外副管がその周囲を取り囲む防護コンクリートにより保護されている前記マンホールの耐震構造に係る。前記マンホールの耐震構造は、マンホールの壁に形成され前記下水道本管の端部の周囲を取り囲む環状の穴及び該環状の穴を埋める弾性変形可能の止水材と、前記外副管の上端部の近傍において前記外副管及び前記防護コンクリートに形成され前記外副管の管壁及び前記防護コンクリートの内部を前記外副管の軸線の周りに放射状に伸びる環状の溝と、前記環状の溝を埋める弾性変形可能の止水材とを備える。
【0007】
本発明に係るマンホールの耐震構造にあっては、地震時、前記外副管の管壁及び前記防護コンクリートの内部を放射状に伸びる環状の溝の周囲に存する防護コンクリートの一部が地震力を受けて破壊され、前記環状の穴内の止水材と前記環状の溝内の止水材とがそれぞれ弾性変形をする。これらの止水材の弾性変形により前記マンホールに対する前記下水道本管の端部の相対変位と、前記外副管に対する前記下水道本管の相対変位とが許容される。これにより、地震の発生に伴う前記下水道本管、あるいはさらに前記マンホールの損壊や破壊が防止される。
【0008】
前記環状の溝を埋める止水材は、前記環状の溝のみを埋めるリングからなるものとすることができる。これによれば、前記外副管の継続的利用が可能である。
【0009】
また、前記環状の溝を埋める止水材は、前記環状の溝及び該溝が取り囲む空間の双方を埋める板状体からなるものとすることができる。ここにおいて、前記マンホールの耐震構造は、さらに、前記環状の溝の下方に配置され前記外副管の内部を満たす充填物と、前記環状の溝の上方に配置され前記外副管の上端部内を閉塞する閉塞物と、前記マンホール内に設置された内副管とを備える。これによれば、前記外副管の内部を埋めて前記外副管を廃管とし、新たに設けられる内副管の利用が可能である。
【0010】
本発明は、また、前記マンホールの耐震構造の構築方法に係り、2つの実施の形態を有する。
【0011】
一の実施の形態に係る構築方法は、マンホール及び下水道本管の内部から、上下方向へ伸びる外副管の上端部の近傍において前記外副管及び前記防護コンクリートに前記外副管の管壁及び前記防護コンクリートの内部を前記外副管の軸線の周りに放射状に伸びる環状の溝を形成すること、前記環状の溝に該溝のみを埋める弾性変形可能の止水材を配置すること、前記環状の溝の形成に先立ち又はその後に、前記マンホールの壁に前記下水道本管の端部の周囲を取り囲む環状の穴を形成し、前記環状の穴にこれを埋める弾性変形可能の止水材を配置することを含む。
【0012】
また、他の実施の形態に係る構築方法は、マンホール及び下水道本管の内部から、上下方向へ伸びる外副管の上端部の近傍において前記外副管の管壁及び前記防護コンクリートの内部を前記外副管の軸線の周りに放射状に伸びる環状の溝を形成すること、前記環状の溝の下方において前記外副管の内部を充填物で満たすこと、前記環状の溝と該溝が取り囲む空間とにこれらを埋める弾性変形可能の止水材を配置すること、前記環状の溝の上方において前記外副管の上端部を閉塞する閉塞物を配置すること、前記環状の溝の形成に先立ち又はその後に、前記マンホールの壁に前記下水道本管の端部の周囲を取り囲む環状の穴を形成し、前記環状の穴にこれを埋める弾性変形可能の止水材を配置すること、その後、前記マンホールの内部に内副管を設置することを含む。
【0013】
前記一及び他の各実施の形態においては、前記環状の溝の形成について、これを前記マンホール内及び前記下水道本管内から行うことから、前記マンホールの外部から地盤を掘削して行う場合と比べて、前記耐震構造の構築に要する時間及び労力の節減を図ることができる。また、前記環状の溝について、これが前記外副管の管壁及び前記防護コンクリートの内部を前記外副管の軸線の周りに放射状に伸びるように形成することから、前記耐震構造の構築の間及びその後において、地盤中の土砂や地下水の前記環状の溝内への流入を防止することができる。
【0014】
また、前記一の実施の形態に係る構築方法によれば、前記外副管の利用が可能であるマンホールの耐震構造を構築することができる。また、前記他の実施の形態に係る構築方法によれば、前記外副管を廃管とし、新たに設けられる内副管の利用が可能であるマンホールの耐震構造を構築することができる。
【0015】
本発明は、さらに、切削装置に係る。この切削装置は、前記一の実施の態様又は他の実施の態様に係るマンホールの耐震構造の構築方法において、マンホール及び下水道本管の内部から外副管及びその防護コンクリートに前記環状の溝を形成するために用いられる。
【0016】
前記切削装置は、前記外副管の上端部に嵌合される外筒であって前記外副管に対する載置部を有する外筒と、前記外筒に嵌合されかつ回転可能に支持された内筒と、前記内筒に取り付けられ該内筒の下方へ伸びる反力支持部材と、前記反力支持部材に支持された推進機構であって前記反力支持部材に対する取付部と、前記内筒の軸線に直交する方向へ直線的に移動可能である可動部とを有する推進機構と、前記推進機構の可動部に取り付けられたモータ及び該モータの回転軸に取り付けられたコンクリートカッターと、前記外筒に揺動可能に取り付けられた操作ハンドルとを備える。
【0017】
前記切削装置を用いて行う前記外副管及びその周りの防護コンクリートへの環状の溝の形成は、次のようにして行うことができる。
【0018】
まず、マンホール内から下水道本管内へ切削装置を差し入れ、その外筒を前記下水道本管に連なる外副管の上端部に嵌合させ、該上端部に載置する。このとき、前記反力支持部材が前記外副管の内周面に接する。これらの作業は、前記マンホール内で操作ハンドルを操作することにより行うことができる。次に、前記モータを作動させ、これにより前記コンクリートカッターを駆動回転させ、この間に前記推進機構の可動部を直線移動させる。これにより、前記反力支持部材による反力支持の下で前記コンクリートカッターから前記外副管の管壁及び前記防護コンクリートに順次に切削力を及ぼし、前記外副管の管壁を経て前記防護コンクリートの内部を放射方向へ伸びる一条の穴を形成する。前記穴の形成後、前記推進機構の可動部と共に前記モータ及びコンクリートカッターを元の位置に引き戻す。次いで、前記外筒に対して前記内筒を所要の角度だけ回転させ、その回転角度位置で前記推進機構の可動部を再度直線移動させ、前記一条の穴の隣に該穴と部分的に重なり合いこれに連通する他の一条の穴を形成する。この穴の形成作業を前記内筒の他の回転角度位置において繰り返し行うことにより、前記外副管の管壁及び前記防護コンクリートの内部を放射状に伸びる環状の溝を形成することができる。
【0019】
前記推進機構は、例えば、前記反力支持部材に支持された、互いに相対する、全体に菱形を呈する二組のパンタグラフと、前記二組のパンタグラフ間に配置された上下2つのスペーサと、前記二組のパンタグラフ間を前記内筒の軸線の伸長方向へ伸びる、右ねじ部及び左ねじ部を有するボルトとを備えるものとすることができる。ここにおいて、各組のパンタグラフは二対のリンクを有し、前記二対のリンクのうちの一対のリンクが上方のスペーサにピン結合された一端部と、前記反力支持部材及び前記モータにピン結合された他端部とを有し、他の一対のリンクが下方のスペーサにピン結合された一端部と、前記反力支持部材及び前記モータにピン結合された他端部とを有する。また、前記ボルトはその右ねじ部及び左ねじ部においてそれぞれ両スペーサに螺合され両スペーサを貫通している。前記ボルトは、例えばレンチを用いて回転させて前記二組のパンタグラフを伸縮させることができ、これにより前記モータ及びコンクリートカッターを直線的に往復動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の適用対象である既設のマンホールの概略的な断面図であり、マンホールは耐震構造が施される前の状態にある。
【
図2】耐震構造の構築のためにマンホールの壁に下水道本管の端部の周囲を取り囲む環状の穴が形成され、前記環状の穴内にこれを埋める弾性変形可能の止水材が配置された状態を示すマンホールの部分断面図である。
【
図3】耐震構造の構築のために外副管の管壁及びその周りの防護コンクリートの内部を放射状に伸びる環状の溝が設けられた状態を示すマンホールの部分断面図である。
【
図4】耐震構造の構築のために前記環状の溝内にこれを埋める弾性変形可能の止水材が配置された状態を示すマンホールの部分断面図である。
【
図5】耐震構造が施された状態にあるマンホールの部分断面図である。
【
図6】耐震構造が施されたマンホールに地震力が作用したときの状態を概略的に示すマンホールの部分断面図である。
【
図7】外副管及び防護コンクリートに環状の溝を形成するために用いられる切削装置の正面図である。
【
図10】切削装置の推進機構を作動させた状態にある前記切削装置の正面図である。
【
図11】外副管及び防護コンクリートへの環状の溝の形成のために切削装置がマンホール内から下水道本管内に差し込まれた状態を示すマンホールの部分断面図である。
【
図12】下水道本管内から外副管上への配置途上にある切削装置を示すマンホールの部分断面図である。
【
図13】外副管上に配置された切削装置を示すマンホールの部分断面図である。
【
図14】切削装置による環状の溝の一部の形成中におけるマンホールの部分断面図である。
【
図15】切削装置による環状の溝の一部の形成後におけるマンホールの部分断面図である。
【
図16】切削装置による環状の溝の他の一部の形成前におけるマンホールの部分断面図である。
【
図17】切削装置による環状の溝の他の一部の形成中におけるマンホールの部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1を参照すると、本発明が適用される、地盤E中に設置された既設のマンホールが全体に符号10で示されている。
【0022】
このマンホール10には、高さ位置を異にする2つの下水道本管12、14がそれぞれ接続されている。上方に位置する下水道本管(上流側の下水道本管)12はその端部12aにおいてマンホール10の躯体である壁10aに固定され、また、これによりマンホール10に接続されマンホール10の内部に開放している。また、下方に位置する下水道本管(下流側の下水道本管)14も、同様に、マンホール10の壁10aに固定され、これによりマンホール10に接続されマンホール10の内部に開放している。
【0023】
マンホール10は、上流側の下水道本管12に接続され上下方向へ伸びる外副管16を有する。外副管16は上下両端部16a、16bを有し、その上端部16aにおいて上流側の下水道本管12に接続され、下水道本管12の内部に開放している。また、外副管16はその下端部16bにおいて下流側の下水道本管14に開放している。外副管16は、通常、マンホールに10に近接した位置に配置されている。このため、外副管16の上端部16aは、マンホール10の内部から下水道本管12を通して手の届く位置にある。
【0024】
また、外副管16はその周囲を取り巻く防護コンクリート17により保護されている。防護コンクリート17は全体にブロック状を呈し、上下の両下水道本管12、14間を上下方向へ伸びている。また、防護コンクリート17は上下の下水道本管12、14にそれぞれ接する上下両端面17a、17bと、マンホール10の壁10aに部分的に接する外周面17cとを有する。
【0025】
次に、マンホール10に施された本発明に係る耐震構造について説明する。マンホール10の耐震構造は、
図2~
図5を参照して後述する構築方法に従って構築することができる。
【0026】
マンホール10の耐震構造は、
図5に示すように、マンホール10の壁10aに形成された環状の穴18及び該環状の穴を埋める弾性変形可能の止水材20と、外副管16及び防護コンクリート17に形成された環状の溝22及び該環状の溝を埋める弾性変形可能の止水材24とを備える。
【0027】
マンホール10の壁10aに設けられた環状の穴18は、下水道本管12の端部12aの周囲を取り囲んでいる。より正確には、環状の穴18は下水道本管12の端部12aからその径方向外方へ僅かな間隔をおいて端部12aの周囲を取り囲んでいる。このため、下水道本管12の端部12aと環状の穴18との間にマンホール10の壁10aの一部34が存する。止水材20は例えばゴム製の弾性シーリング材からなる。止水材20は、平時及び地震時において、環状の穴18の通しての地盤E中の地下水や土砂のマンホール10内への流入を阻止する。
【0028】
他方、外副管16及び防護コンクリート17に設けられた環状の溝22は、外副管16の上端部16aの近傍、好ましくは上端部16aの直下の高さ位置において、外副管16の壁(管壁)及び防護コンクリート17の内部を外副管16の軸線L1の周りに放射状に伸び、外副管16の内部に開放している(
図3参照)。好ましくは、環状の溝22は、防護コンクリート17の内部をその外周面17cに至る直前の位置まで伸びている。このため、環状の溝22の周縁を規定する比較的薄い防護コンクリート17の一部36が存する。また、図示の止水材24は、環状の溝22と、該環状の溝が取り囲む筒状の空間26(
図3)との双方を埋める例えばゴム製の円板からなる。
【0029】
図示の耐震構造は、さらに、環状の溝22の下方に配置され外副管16の内部を満たすモルタルのような充填物28と、環状の溝22の上方に配置され外副管16の上端部16aの内部を閉塞するモルタルのような閉塞物30と、マンホール10内に設置された内副管32とを備える。外副管16内を充填物28で満たすことにより、外副管16を廃管とし、代わりに内副管32の利用を可能とする。外副管16の上端部16a内に配置された閉塞物30は、環状の溝22の形成によって下水道本管12と外副管16との接続部に生じた凹部を埋め、前記接続部を滑らかな円筒面にする。
【0030】
また、図示の例に係る耐震構造に代えた他の例に係る耐震構造として、環状の溝22を埋める止水材24が空間26を埋めることなく環状の溝22のみを埋める例えばゴム製のリング(図示せず)からなり、充填物28及び閉塞物30を備えず、また、内副管32を備えないものとすることができる。これによれば、外副管16を中実状態にして廃管とする図示の例に代えて、中空状態が維持された外副管16としての継続的利用が可能である。この例では、環状の溝22及び止水材24は平時において、また、止水材24は地震時において、地盤E中の地下水や土砂のマンホール10内への流入を阻止する。
【0031】
環状の溝22の周縁を規定する防護コンクリート17の一部36は機械的強度が比較的低く構造上の弱点をなす。このため、防護コンクリート17の一部36は、地震力を受けると比較的容易に破壊する。この破壊が生じると、環状の溝22の周囲の防護コンクリート17の一部36が複数の破砕片(図示せず)となり、環状の溝22が地盤Eに開放される。その結果、
図6に示すように、止水材24の弾性変形とこれに伴う外副管16に対する下水道本管12の相対変位が許容され、また、同時に生じる止水材20の弾性変形により、マンホール10に対する下水道本管12の端部12aの相対変位が許容される。これにより、下水道本管12、あるいは、さらに、マンホール10の壁10aの破損や破壊の発生が防止される。
【0032】
次に、
図2~
図5を参照して、マンホール10の耐震構造の構築方法の一例について説明する。
【0033】
先ず、
図2に示すように、マンホール10の壁10aに下水道本管12の端部12aの周囲を取り囲む環状の穴18を形成する。環状の穴18の形成は、筒状のコンクリートコアドリルを有する既存のコンクリートコアカッター(図示せず)を用いて行うことができる。前記コンクリートコアカッターは、例えばこれを分解した状態でマンホール10内にその入り口10b(
図1)を通して搬入することが可能のものを選択、使用することができる。
【0034】
搬入後、前記コンクリートコアドリルの先端をマンホール10の壁10aに当て、下水道本管12の端部12aの開放端とその周囲とを包囲する。次いで、前記コンクリートコアドリルを回転駆動し、マンホール10の壁10aの内周面からその外周面に向けて進め、マンホール10の内外両周面を規定する壁10aを切削する。マンホール10の壁10aは円筒状を呈することから、壁10aを切削しながら水平に進む前記筒状のコンクリートコアドリルは、その左右両側部において、先に前記マンホールの壁10aの外周面に到達し、次いでその上下両側部が壁10aの外周面に到達する。
【0035】
環状の穴18の形成においては、前記コンクリートコアドリルがその左右両側部に続いてその上下両側部が壁10aの外周面に到達したときをもって完了とすることが可能である。しかし、このようにすると、前記コンクリートコアドリルの上下両側部が壁10aの外周面に到達したとき、壁10aの外周面に先に到達している前記コンクリートコアドリルの左右両側部がマンホール10の外部に突出し、マンホール10の壁10aの周囲に配置されていることがある他の配管に損傷を及ぼすおそれがある。
【0036】
このことから、前記コンクリートコアドリルの左右両側部が壁10aの外周面に到達したときをもって、マンホール10の壁10aの切削の完了とすることが望ましい。その結果、下水道本管12の端部12aの周囲に、上下方向へ伸びるマンホール10の壁10aにその一部である非切削部を残して、環状の穴18が形成される。その後、前記コンクリートコアドリルを撤去し、形成された環状の穴18にこれを埋める環状の止水材20を配置する。
【0037】
その後、
図3に示すように、マンホール10及び下水道本管12の内部から、環状の溝22を形成する。環状の溝22の形成は、外副管16の上端部16aの近傍、好ましくは上端部16aの直下の高さ位置において、外副管16の管壁を横断する一部と、その周囲の防護コンクリート17の一部とを順次に切除することにより行う。これにより、外副管16の管壁と防護コンクリート17の内部とを外副管16の軸線L1の周りに放射状に伸びる環状の溝22が形成される。ここにおいて、防護コンクリート17の内部の切除は、防護コンクリート17の外周面17cから例えば数mmの一部36を残して行う。
【0038】
次に、
図4に示すように、環状の溝22の下方の空間を規定する外副管16の内部をモルタルのような充填物28で満たす。環状の溝22下を前記モルタルで満たすために、例えば、前記モルタルの供給ホースを地上からマンホール10及び下水道本管12内に通し、さらに外副管16の上端部16aを通して外副管16内に送り込み、環状の溝22下の外副管16の内部と外副管16の下端部16b下の空間38(
図1)とを前記モルタルで埋める。空間38は、予め設置された堰板40(
図1)で塞がれている。
【0039】
次いで、環状の溝22と該環状の溝が取り囲む筒状の空間26(
図3)とにこれらの双方を埋める円板状の止水材24を配置する。止水材24の配置は、作業員がマンホール10の内部から下水道本管12内に手を差し入れて行うことができる。止水材24の配置後、環状の溝22の上方において外副管16の上端部16aを閉塞する閉塞物30を配置する。上端部16aの閉塞は、例えば上端部16a内へのモルタルの充填、上端部16a内へのキャップの配置等により行うことができる。これにより、外副管16の内部が止水材24、充填物28及び閉塞物30で埋められ、廃管とされる。その後、マンホール10の内部に内副管32を配置する。これにより、マンホール10の前記耐震構造が構築される。
【0040】
マンホール10の前記耐震構造の構築方法におけるマンホール10の壁10aへの環状の穴18の形成及び環状の穴18への止水材20の配置については、図示の例に代えて、環状の溝22を形成した後、あるいは、さらに外副管16内への充填物28の配置、環状の溝22内への止水材24の配置及び閉塞物30の配置を行った後に、行うことができる。
【0041】
マンホール10の前記耐震構造は、他の例に係る構築方法によって構築することができる。前記他の例の構築方法においては、マンホール10の壁10aへの環状の穴18の形成及び該環状の穴内への止水材20の配置後、前記一の例の構築方法におけると同様に、マンホール10及び下水道本管12の内部から、外副管16の上端部16aの近傍において、外副管16及びその周囲の防護コンクリート17に環状の溝22を形成し、該環状の溝にこれを埋める弾性変形可能の止水材24を配置する。この他の例では、止水材24が環状の溝22のみを埋める例えばリング状のものとされる。また、前記一の例におけると同様に、環状の溝22の形成後に、あるいはさらに環状の溝22内に止水材24の配置を行った後に、マンホール10の壁10aに下水道本管12の端部12aの周囲を取り囲む環状の穴18を形成し、環状の穴18にこれを埋める止水材20を配置する。
【0042】
したがって、前記他の例の構築方法では、前記一の例の構築方法と異なり、外副管16内に充填物28及び閉塞物30を配置せず、また、内副管32を設置しない。これによれば、外副管16を中実状態にして廃管とするマンホール10の耐震構造に代えて、中空状態が維持された外副管16としての継続的利用が可能であるマンホール10の耐震構造を構築することができる。
【0043】
外副管16及び防護コンクリート17に設けられる環状の溝22は、
図7~
図10に示す切削装置42を用いて形成することができる。
【0044】
切削装置42は、外副管16の上端部16aに嵌合される外筒44と、内筒46と、反力支持部材48と、推進機構50と、モータ52と、コンクリートカッター54と、操作ハンドル56とを備える。
【0045】
外筒44は外副管16に対する載置部を有する。前記載置部は、外筒44に固定され外筒44の外周面からその径方向外方へ張り出す互いに相対する2つの板状の張出部44a、44bからなる。外筒44は両張出部44a、44bにおいて外副管16の上端部16a上に載置することができる。
【0046】
内筒46は外筒44に嵌合されかつ回転可能に支持されている。図示の例では、内筒46の上部に螺合されその径方向外方へ伸びる、互いに相対する2つのボルト58が設けられている。内筒46は両ボルト58の軸部において外筒44上に載置され、これにより外筒44に回転可能に支持されている。内筒46は、外筒44が外副管16の上端部16a上に載置されるとき、その軸線L2が外副管16の軸線L1(
図3、
図13)上を伸びる。
【0047】
反力支持部材48は、内筒46の内周面に固定され内筒46の内部からその外部へ下方に伸びる棒状体48aと、棒状体48aに固定され外筒44の下端面に接する高さ位置から棒状体48aに沿って下方へ伸びる湾曲板48bとからなる。湾曲板48bは外筒44の外周面の曲率と同じ曲率で湾曲する外周面を有する。
【0048】
推進機構50は、反力支持部材48に支持されており、反力支持部材48の棒状体48aに対する取付部と、内筒46の軸線L2(
図7、
図13)に直交する方向へ直線的に移動可能である可動部とを有する。
【0049】
図示の推進機構50は、反力支持部材48の棒状体48aに支持され互いに相対する、全体に菱形を呈する二組のパンタグラフ60と、該二組のパンタグラフ間に配置された上下2つの棒状のスペーサ62(
図8参照)、63(
図9参照)と、二組のパンタグラフ60間を内筒46の軸線L2の伸長方向へ下方に伸びる、右ねじ部64a及び左ねじ部64bを有するボルト64とを備える。
【0050】
各組のパンタグラフ60は二対のリンク66、68及び70、72を有する。前記二対のリンクのうちの一対のリンク66、68は、上方のスペーサ62(
図8)にピン結合された一端部(上端部)66a、68aと、反力支持体48の棒状体48a及びモータ52にそれぞれピン結合された他端部(下端部)66b、68bとを有する。また、下方のスペーサ63(
図9)にピン結合された一端部(下端部)70a、72aと、反力支持部材48の棒状体48a及びモータ52にそれぞれピン結合された他端部(上端部)70b、72bとを有する。
【0051】
一対のリンク66、68の一端部66a、68aは互いに重ね合わされ、これらの一端部66a、68aを貫通する一のピンボルト74を介して、上方のスペーサ62にその端面において結合されている。また、一対のリンク66、68の他端部66b、68bはこれらをそれぞれ貫通する一対のピンボルト76、78を介して反力支持部材48の棒状体48a及びモータ52に結合されている。他方、一対のリンク70、72の一端部70a、72aも同様に互いに重ね合わされ、これらの一端部70a、72aを貫通する一のピンボルト80を介して、下方のスペーサ63にその端面において結合されている。また、一対のリンク70、72の他端部70b、72bは、一対のリンク66、68の他端部66b、68bに近接する位置にあってこれらの他端部70b、72bをそれぞれ貫通する一対のピンボルト82、84を介して反力支持部材48の棒状体48a及びモータ52に結合されている。図示の推進機構50にあっては、リンク66の他端部66b及びリンク70の他端部70bが推進機構50の前記取付部をなし、また、リンク68の他端部68b及びリンク72の他端部72bが推進機構50の前記可動部をなす。
【0052】
また、二組のパンタグラフ60間を伸びるボルト64は、その右ねじ部64a及び左ねじ部64bにおいて、それぞれ、上下の2つのスペーサ62、63に螺合され両スペーサ62、63を貫通している。ボルト64は例えばレンチW(
図10参照)を用いて時計方向及び反時計方向にそれぞれ回転させることができる。これによれば、
図7に示す状態においてボルト64を反時計方向に回転させると、
図10に示すように、二組のパンタグラフ60が拡張するように動作し、前記可動部であるリンク68の他端部68b及びリンク72の他端部72bが前進する。反対に、
図10に示す状態においてボルト64を時計方向に回転させると、二組のパンタグラフ60が収縮するように動作し、前記可動部であるリンク68の他端部68b及びリンク72の他端部72bが後退する(
図7参照)。
【0053】
推進機構50は、図示の例に代えて、例えばシリンダ及びプランジャを有する液圧ジャッキ(図示せず)からなるものとすることができる。ここにおいて、前記液圧ジャッキのシリンダは反力支持部材48に対する前記推進機構の取付部をなす。また、前記プランジャが前記推進機構の可動部をなし、前記プランジャの先端部にコンクリートカッター54が取り付けられる。
【0054】
モータ52は油圧モータ、電動モータ、エアモータ等からなり、回転軸52aを有する。モータ52は、推進機構50の可動部である二組のパンタグラフ60のリンク68の他端部68b及びリンク72の他端部72bに取り付けられ、支持された状態にあり、その回転軸52aが内筒46の軸線L2に直交する方向へ伸びている。
【0055】
コンクリートカッター54は、モータ52の回転軸52aに取り付けられた円板54aと、該円板に植え込まれた複数のビット54bとを備える。また、操作ハンドル56は、細長い板状体56aと、該板状体の一端部に取り付けられた取手56bとからなる。操作ハンドル56はその板状体56aの他端部においてヒンジ86を介して外筒44の一方の張出部44aに取り付けられ、内筒46の軸線L2の伸長方向とこれに直角な方向との間で揺動可能である。
【0056】
切削装置42は、さらに、油圧ジャッキのような液圧ジャッキ88を備える。但し、液圧ジャッキ88を有しないものとすることが可能である。液圧ジャッキ88はシリンダ88aとプランジャ88b(
図7)とを有する。液圧ジャッキ88は、外筒44の他方の張出部44bに設けられた板状の突起90と、シリンダ88aに固定され突起90を挟む一対の支持板92とを貫通するピン94の周りに揺動可能である。
【0057】
切削装置42を用いて行う外副管16及びその周りの防護コンクリート17への環状の溝22の形成は、次のようにして行うことができる。
【0058】
図11に示すように、まず、マンホール10内から下水道本管12内へ、両パンタグラフ60を収縮させまた液圧ジャッキ88を傾けた状態で切削装置42を差し入れ、操作ハンドル56を介して、切削装置42全体を外副管16上へと押し進める。さらに押し進めると、
図12に示すように、外副管16の上端部16a上において、切削装置42の一部がこれらの自重により操作ハンドル56に対して揺動し、外副管16内に入り込む。次いで、
図13に示すように、外筒44が外副管16の上端部16aに嵌合し、その両張出部44a、44bにおいて外副管16の上端部16a上に載る。このとき、内筒46の軸線L2が外副管16の軸線L1上を伸び、切削装置42のコンクリートカッター54のビット54bが、外副管16の上端部16aの直下において、外副管16の内周面16cに対向する。また、コンクリートカッター54の反対側において、反力支持部材48の湾曲板48bが外副管16の内周面16cに当接する。ここで、液圧ジャッキ88を揺動させて垂直に立て、そのプランジャ88bを上方へ伸長させ、下水道本管12の内周面に押し当てる。これにより、切削装置42が外副管16上に固定される。なお、液圧ジャッキ88を有しない場合にあっては、マンホール10内から下水道本管12内に角棒のような棒状体(図示せず)を差し入れ、液圧ジャッキ88の代用に供することができる。
【0059】
次に、モータ52を作動させ、コンクリートカッター54を回転駆動する。この間に、ボルト64をレンチWで回転させ、パンタグラフ60を拡張させる。これにより、
図14に示すように、コンクリートカッター54が前方へ直線的に推進され、外副管16の管壁と防護コンクリート17の一部とを順次に切削する。この間、外副管16に接する反力支持部材48がコンクリートカッター54の推進反力を担う。これにより、外副管16の管壁と防護コンクリート17の内部とを放射方向へ伸びる一条の穴96が形成される。
【0060】
穴96の形成後、ボルト64を反対方向に回し、
図15に示すように、パンタグラフ60を収縮させる。これにより、コンクリートカッター54及びモータ52が穴96内から外副管16内へと直線的に後退する。次に、外筒44内の内筒46を角度的に回転させ、同様にして、穴96の隣にこれと部分的に重なり合い、連通する、穴96と同様の一条の穴(図示せず)を形成する。このようにして、外副管16の周りに360度の角度にわたって複数条の穴を形成する(
図16、
図17参照)。これにより、外副管16の軸線L1の周りに互いに部分的に重なり合いかつ互いに連通する複数の穴からなる環状の溝22が形成される。
【0061】
環状の溝22の形成後、液圧ジャッキ88を収縮動作させてそのプランジャ88bを下降させ、さらにこれを揺動させて傾斜させ、また、パンタグラフ60を収縮させる。その後、操作ハンドル56をマンホール10内から手前に引き寄せることにより、切削装置42を外副管16内及び下水道本管12内からマンホール10内に引き出し、これを撤去することができる。
【符号の説明】
【0062】
10 マンホール
10a マンホールの壁
12 下水道本管
12a 下水道本管の端部
16 外副管
16a 外副管の上端部
18 環状の穴
20 止水材
22 環状の溝
24 止水材
28 充填物
30 閉塞物
32 内副管
42 切削装置
44 外筒
46 内筒
48 反力支持部材
50 推進機構
52 モータ
54 コンクリートカッター
56 操作ハンドル
60 パンタグラフ60
62 スペーサ
64 ボルト
66、68、70、72 リンク
88 液圧ジャッキ
【要約】 (修正有)
【課題】マンホールの耐震構造、その構築方法、及び切削装置を提供する。
【解決手段】耐震構造はマンホールの壁10aに形成され下水道本管12の端部の周囲を取り囲む環状の穴18及びこれを埋める止水材20と、外副管16の管壁及び防護コンクリートの内部を放射状に伸びる環状の溝22及びこれを埋める止水材24とを備える。耐震構造は、マンホール及び下水道本管12の内部から外副管16及び防護コンクリートに環状の溝22を形成し、溝を止水材24で埋め、環状の溝22の形成に先立ち又はその後にマンホールの壁に下水道本管12の端部の周囲を取り囲む環状の穴18を形成し、これを止水材20で埋めることにより構築する。
【選択図】
図5