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  • 特許-袋体および袋体の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-10
(45)【発行日】2022-08-19
(54)【発明の名称】袋体および袋体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   E02B 3/04 20060101AFI20220812BHJP
【FI】
E02B3/04 301
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021562856
(86)(22)【出願日】2021-05-07
(86)【国際出願番号】 JP2021017483
【審査請求日】2021-10-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000236610
【氏名又は名称】株式会社不動テトラ
(73)【特許権者】
【識別番号】392031572
【氏名又は名称】キョーワ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】弁理士法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 聡
(72)【発明者】
【氏名】藤田 英広
(72)【発明者】
【氏名】梅津 一星
(72)【発明者】
【氏名】小山 裕文
(72)【発明者】
【氏名】木下 勝尊
(72)【発明者】
【氏名】梶原 幸治
(72)【発明者】
【氏名】川村 裕紀
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-188805(JP,A)
【文献】特開2003-129444(JP,A)
【文献】特開2008-063837(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 3/04-3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部と開口部とを有する袋材を含み、前記開口部には吊りロープが設けられ、前記底部には、前記開口部を通って取り出される拘束ロープが設けられ、
前記袋材には、中詰め材が充填されて袋体が形成され、
前記袋材は、前記中詰め材が充填されたとき、前記開口部が閉じられ、
前記袋体の直径をW、前記袋体の底部から、その中心を貫通し、前記袋材の口縛りロープ根元位置までの前記拘束ロープの長さをH1、前記袋材に中詰め材を充填した時の最も波に対して安定した際の袋体の直径をW0としたとき、
W/H1(直径/拘束ロープ長)=15.898×(W/W0)^2-17.784×(W/W0)+6.6314で表される曲線を中心とし、その上下の所定の範囲内にあることを特徴とする、袋体。
【請求項2】
前記所定の範囲は、83%~119%の範囲であることを特徴とする、請求項1に記載の袋体。
【請求項3】
前記拘束ロープが合成繊維のロープまたはベルトである、請求項1または2に記載の袋体。
【請求項4】
前記拘束ロープは、前記袋材の底部の網を束ねて口部方向に引き上げた網を含む、請求項1~3のいずれかに記載の袋体。
【請求項5】
前記開口部には、前記吊りロープの下方に口縛りロープが設けられ、前記開口部は、前記口縛りロープによって閉じられ、
前記拘束ロープは、前記吊りロープ、および前記口縛りロープと組み合わされる、請求項4に記載の袋体。
【請求項6】
前記拘束ロープが前記袋材の底部の網を束ねて口部方向に引き上げた網の集合体と、これに連結したロープの組み合わせであり、最適な拘束ロープの固定位置が明示されている、請求項4又は5に記載の袋体。
【請求項7】
請求項6に記載の 袋体の製造方法であって、
袋体の製作枠を準備するステップと、開口にある吊りロープと、その下部に設けられた口縛りロープと、その底部に一端が固定された拘束ロープを有する袋材を準備するステップとを含み、拘束ロープには、袋体における前記最適な拘束ロープの固定位置が明示されており、製作枠の内部に袋材を、その開口にある吊りロープが製作枠の開口端に引っかかるように置き、拘束ロープ他方端を、袋材の中心を通って、その外部に取り出した状態で、袋材に最適な拘束ロープの固定位置になるまで中詰め材を投入するステップと、中詰め材の投入後に口縛りロープによって袋材の開口を閉じ、拘束ロープと吊りロープとによって袋体を製作枠から取り出すステップとを含む、請求項6に記載の袋体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は袋体および袋体の製造方法に関し、特に、耐波浪安定性に適した袋体および袋体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の袋体が、例えば、特開2003-129444号公報(特許文献1)に開示されている。同公報によれば、水流や波浪の繰り返し作用を受けても、中詰め材の移動を防止し、剪断変形の生じない土木工事用袋材とこれを用いた袋体を提供するために、合成繊維で編成した網で形成し中詰め材を充填して使用する袋材を用いて、袋材に連結し、袋材の開口を閉じた口部から外に引き出される、底部と口部とを連結する拘束手段具を設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-129444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来からある袋型根固め工用袋材は、作用波浪(波高)に対し、袋体必要質量を計算する際に必要となる安定性の係数が既存実験により求められているが、形態がまちまちで安定性が一様でなく、施工場所の波浪を特定し施工しても袋材が波浪により滑動・転動し流失するという課題があった。
【0005】
この発明は、上記のような問題点を解消するためになされたもので、波浪に対し袋体における拘束手段具である拘束ロープの長さを調整し、袋体の高さと直径の最適値を提供するとともに、そのような袋体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る袋体は、底部と開口部とを有する袋材を含み、開口部には吊りロープが設けられ、底部には、開口部を通って取り出される拘束ロープが設けられる。袋材には、中詰め材が充填されて袋体が形成される。袋材は、中詰め材が充填されたとき、開口部が閉じられる。袋体の直径をW、袋体の底部から、その中心を貫通し、袋材の吊りロープ根元位置までの拘束ロープの長さをH1、袋材に中詰め材を充填した時の最も波に対して安定した際の袋体の直径をW0としたとき、W/H1(直径/拘束ロープ長)=15.898×(W/W0)^2-17.784×(W/W0)+6.6314で表される曲線を中心とし、その上下の所定の範囲内にあることを特徴とする。
【0007】
好ましくは、所定の範囲は、83%~111%の範囲である。
【0008】
拘束ロープが合成繊維のロープまたはベルトであってもよい。
【0009】
この発明の一実施の形態によれば、拘束ロープは、袋材の底部の網を束ねて口部方向に引き上げた網を含む。
【0010】
この発明の他の実施の形態によれば、開口部には、吊りロープの下方に口縛りロープが設けられ、開口部は、縛りロープによって閉じられ、拘束ロープは、吊りロープ、および口縛りロープと組み合わされる。
【0011】
拘束ロープが袋材の底部の網を束ねて口部方向に引き上げた網の集合体と、これに連結したロープの組み合わせであり、最適な拘束ロープの固定位置が明示されているのが、好ましい。
【0012】
この発明の他の局面においては、袋体の製造方法は、袋体の製作枠を準備するステップと、開口にある吊りロープと、その下部に設けられた口縛りロープと、その底部に一端が固定された拘束ロープを有する袋材を準備するステップとを含み、拘束ロープには、袋体における最適な拘束ロープの固定位置が明示されており、製作枠の内部に袋材を、その開口にある吊りロープが製作枠の開口端に引っかかるように置き、拘束ロープ他方端を、袋材の中心を通って、その外部に取り出した状態で、袋材に最適な拘束ロープの固定位置になるまで中詰め材を投入するステップと、中詰め材の投入後に口縛りロープによって袋材の開口を閉じ、拘束ロープと吊りロープとによって袋体を製作枠から取り出すステップとを含む。
【発明の効果】
【0013】
発明者らは、様々な実験に基づいて、袋体の安定性を検討し、その結果、W/H1(直径/拘束ロープ長)が所定の式で表される曲線を中心として得られた曲線が、最も波浪に対して安定性を有することを突き止めた。
【0014】
その結果、波浪に対し有効な袋体の形状、およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】通常タイプの袋体を示す図である。
図2】通常タイプの袋体よりも縦方向に長い背高タイプの袋体を示す図である。
図3】通常タイプの袋体よりも幅方向に長い幅広タイプの袋体を示す図である。
図4】波の特性を示す図である。
図5】造波水路の構成を示す図である。
図6】実験結果に基づいて、袋体の直径と、直径/拘束ロープ長との関係を示すグラフである。
図7図6の関係に基づいて、無次元化した場合の、袋体の直径と、直径/拘束ロープ長との関係を示すグラフである。
図8】袋体の製造方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
発明者らは、中詰め充填材を充填した袋体を一定の大きさに縮小したモデルの各種の形状を有するものを用いて、様々な波浪条件(波高及び周期)を作用させて袋体の安定性を確認する実験を行い、一定の結論に達した。以下、その内容について説明する。
【0017】
まず、実験に用いた袋体について説明する。ここで、実験に用いた袋体は、設定重量8tをモデルとし、実物の約1/35である。
【0018】
図1は、袋体の形状を示す図である。図1を参照して、袋体10は、合成繊維で編成した網で形成した袋材11と、袋材11に充填された砕石、玉石、コンクリート殻、鉄鉱石塊、重晶石塊、鉄鋼スラグ塊、鉄鋼スラグ水和固化体塊などの密度2t/m以上の中詰め充填材12とを含む。袋材11は、元々、上部に開口部を有し、その開口部の周囲には、吊りロープ15が設けられ、その下部の網目に口縛りロープ13が設けられている。
【0019】
袋材11は、中詰め充填材を充填後、その開口部が口縛りロープ13で固縛され、吊りロープ15とともに後に説明する製作枠から外へ引き出される。また、袋材11の底部には拘束手段となる拘束ロープ14が取り付けられ、この拘束ロープ14が、袋体10の底16の中心を通って、口縛りロープ13および吊りロープ15と一体化されて、袋体10が吊り上げられる。
【0020】
ここで、袋材11に石材12を中詰めした時の直径をWとして、拘束ロープ14は袋体10の底16に拘束ロープ14が取付けられた底部16aからその中心を貫通し、袋材11の口縛りロープ13の根本位置16bまでの長さをH1とする。また、袋体10の底16から口縛りロープ13の根本位置16bまでの長さをHとする。
【0021】
なお、拘束ロープ14を吊りロープ15とともに吊り上げると、図1図3に示すように、拘束ロープ14の下部が底部16aに示すように底16よりも持ち上がるため、H1は図示のように、拘束ロープ14の持ち上げられた底部16aの位置から袋体10の上端部16bの位置までの寸法になる。ここで、袋体10の上端部16bの位置は、口縛りロープ13の根本位置であり、拘束ロープ14の持ち上げられた位置は、通常、中詰め材を収容した袋体10の全高Hの約40~120%である。
【0022】
袋体10の形状は上記(これを通常タイプという)として、袋体10は、その形状がより高さ方向が高い形状(これを背高タイプという)と、その形状がより幅方向に広い形状(これを幅広タイプという)とがありうる。それらの形状を図2および図3に示す。図2は袋体10の形状がより高さ方向が高い形状であり、図3は、その形状がより幅方向に広い形状である。
【0023】
図2のような高い形状の袋体であれば、設置後に転倒し、安定性に欠ける場合があり、図3のような幅方向に広い形状であれば、設置後に捲れ上がりによって、安定性に欠ける場合がある。幅方向の寸法Wが同一であっても、拘束ロープ14の長さH1によって、同様のことが生じる。
【0024】
そこで、発明者らは、これらの寸法による比W/H1=(直径/拘束ロープ長)と、直径Wとの関係に着目して、直径ごとにどの程度の比であれば、袋体10が、設置後に転倒し、安定性に欠ける場合があり、どの程度幅方向に広い形状であれば、設置後に捲れ上がりによって安定性に欠ける場合があるのかを実験によって確認した。
【0025】
すなわち、この発明に係る、袋体を用いた物体の波浪における挙動は、流体現象であり、相似則が成り立つ。そこで、袋体形状の直径Wと拘束ロープ長さH1を変動させた1/35の縮尺模型袋体を用い、二次元造波水路において、各々の波浪作用中の袋体の状態(安定、捲れ上がり、転倒)を観察した。
【0026】
具体的には、一定粒径範囲内にある砕石を袋に詰め、直径Wが75mm~110mmとなる模型袋体を造波水路内に配置し、沖から岸方向に一定周期(1秒)の波を作用させた。それぞれの直径Wにおいては、様々な拘束ロープ長H1を変化させて、徐々に波高を上げた際に、模型が移動した移動形態(捲れ上がりによる移動、転倒による移動など)を観察し、移動限界となる波高時のW/H1の比を求めた。
【0027】
ここで、安定性の判定には、本実施の形態が、海用の耐波浪安定性を検討するためのものであるため、波高を6cm~12cmに変化させ、その周期を1秒として判定した。なお、波の特性を図4に、用いた造波水路の構成を図5に示す。
【0028】
図5を参照して、造波水路は、幅、深さ、長さのそれぞれが、710mm×1000mm×30000mmである。その上に、左の端から右方向に、1対1.5の比で徐々に低くなる法面を水平方向に450mm設け、そこに、幅150mmの水平の段部を設け、その後、さらに同一の比で徐々に低くなる法面を水平方向に675mm設けている。この岸は基礎捨石で構成されている。
【0029】
この前記段部の右端に中詰め材を充填した袋体を置き、そこに右側から波を当てて、中詰め材を充填した袋体の安定性を判断した。
【0030】
中詰め材を充填した袋体の配置の位置については、汀線付近が最も流体力が働き、袋体の安定性を評価するには、最も過酷な条件である。
【0031】
なお、ここで、水平部(150mm)における法面の下がり部端部を起点として、袋体の模型を設置したとき、水平部における、袋体の模型直径が150mmより小さく、法面上がり部とに隙間がある。その隙間での移動時の開始と終了とを測定した。
【0032】
波による、袋体の模型の移動の始まりを「開始点」とし、法面上がり部に袋体の模型が当接したときを「終了」と判断した。
【0033】
その結果を表1に示す。表1は、安定した場合の、Wが、75mm~110mmまでの8段階における、H,H1,W/H1,W0,W/W0を示す。
【表1】
【0034】
◎は、波高10cm以上でも安定したケース。
【0035】
○、および●は、波高8.5cm以上~10.0cm未満で安定したケース。
【0036】
×は波高8.5cm未満で捲れあがり、転倒、滑動し流出したケースであり、×Aは捲れあがりで不安定な場合を示し、×Bは転倒で不安定な場合を示す。
【0037】
なお、表1を参照して、◎のデータは、そのほとんどが、H<H1になっており、これは、図1と異なっているように見える。これは、袋体を吊り上げた際、網と中詰め材の間に空間が発生するためである。空間がないと中詰め材が固定された袋体となり、載置場所への追随性が失われる。そのため、このような場合が存在する。
【0038】
これらのデータについて、横軸を直径Wとし、縦軸をW/H1としたときのグラフを図6に示す。図6から、袋体10が、波浪に対し、最も安定した状態であることが確認された際(表1において、二重○と判定されたもので、グラフにおいて、●で示した点を接続した曲線)の拘束ロープ長H1と直径Wの比を近似曲線として捉えたとき、
W/H1(直径/拘束ロープ長)=0.0016×W^2-0.178×W+6.33で表されることがわかる。
【0039】
なお、ここで、「最も安定した状態」というのは、上記した「開始点」から「終了」迄の間に、袋体が捲れ上がり移動や転倒移動等をしない状態を言う。
【0040】
また、波浪に対し、安定性を担保できる限界点は、波高8.5cm~10.0cm未満であり、その状態の袋体について、拘束ロープ長H1と直径Wの比を近似曲線として捉えたとき(表1において、○と判定されたもので、グラフにおいて、◆で示した点を接続した曲線)、
W/H1(直径/拘束ロープ長)
=0.0016×W^2-0.178×W+5.5 (1点鎖線で表示)と、
(表1において、●と判定されたもので、グラフにおいて、■で示した点を接続した曲線)W/H1(直径/拘束ロープ長)
=0.0016×W^2-0.178×W+7.9 (2点鎖線で表示)で表されることがわかる。
【0041】
得られた曲線より、W/H1(直径/拘束ロープ長)が大きくなると、袋体の高さが高くなり、重心位置が高くなることから転倒し、著しく安定性が失われる。(1点鎖線のライン)。
【0042】
W/H1(直径/拘束ロープ長)が小さくなると、袋体の拘束性が失われて捲れ上がり、著しく安定性が失われる。(2点鎖線のライン)
【0043】
上記曲線の範囲内に収まる袋体の形状が最も波浪に対し有効な袋材の形状である。
【0044】
実際の袋体10は、その大きさに応じて、4t用、6t用、8t用等があり、それぞれは、当然ながら、WやH1等が異なる。そこで、表1の結果に基づいて、無次元化した場合について説明する。ここで、無次元化にあたっては、実験結果より波浪に対して、最も安定したときの拘束ロープ入りの中詰め材を充填した袋体形状、すなわち、直径をW0=100mmで袋材直径を除算することにより、無次元化を行った。
【0045】
その結果を図7に示す。図7を参照して、袋材に石材を中詰めした時の袋体10の直径をW、袋体10の底部から、その中心を貫通し、袋材の口縛りロープ根元位置までの拘束ロープの長さをH1、波の状態に対し最も安定した際の袋体10の直径をW0としたとき、
W/H1(直径/拘束ロープ長)=15.898×(W/W0)^2-17.784×(W/W0)+6.6314から成ることを特徴とする袋体が、波浪に対し、最も安定した形状を示す。
【0046】
得られた曲線より、W/H1(直径/拘束ロープ長)が大きくなると、袋体の拘束性能が失われ捲れあがる可能性が発生し、著しく安定性が失われる。(1点鎖線のライン)
【0047】
W/H1(直径/拘束ロープ長)が小さくなると、袋体の高さが高くなり、重心位置が高くなることから転倒する可能性が発生し、著しく安定性が失われる。(2点鎖線のライン)
【0048】
袋体の形状が、1点鎖線のライン、2点鎖線のラインで囲まれた範囲に収ることで、作用波浪に対し、捲れ上がりや転倒による移動を避けることができる安定性が確保される。この範囲を袋体製作時における管理が行ないやすいよう、形状で数値化するために、Wの寸法が3点以上のデータがある点を用いた表2を作成した。
【表2】

( )内の数値は、近似曲線W/H1(直径/拘束ロープ長)=15.898×(W/W0)^2-17.784×(W/W0)+6.6314による計算値との比を示す。
【0049】
以上から、袋体が安定する範囲は、W/H1が、最小比率である、83%~119%であることを特徴とし、かつ、W<W0に限定すると、所定の範囲が71%~123%の範囲であることがわかる。
【0050】
拘束ロープを入れることで、中詰め材の移動を拘束できるが、より安定性を高めるために、拘束ロープの最適値を求め、それが明らかになった。
【0051】
なお、この式を用いて、H1=W/(15.898×(W/W0)^2-17.784×(W/W0)+6.6314)を求めると、Wの値に応じた、袋材の拘束ロープの、中詰め材を充填した後における、最適な固定位置の長さを求めることができ、そのような構成を有する袋体の製造方法が提供できる。
【0052】
図8は、拘束ロープに中詰め材を充填した後における、最適な固定位置の長さを明示した袋体の製造方法を示す図である。図8を参照して、この実施の形態に係る袋体の製造においては、逆六角錐台形の袋体の製作枠17の内部に袋材11を、その開口にある吊りロープ15が製作枠17の開口端に引っかかるように置く。このとき、袋材11の開口に設けられた吊りロープ15の下方の網目に口縛りロープ13が挿通されており、袋材11の底部16aに拘束ロープ14の一方端が固定され、その他方端は、袋材11の中心を通って、その外部に取り出されている。この状態で、石材等の中詰め材12が袋材11の内部に投入される。
【0053】
ここで、拘束ロープ14の底部16aから、上記した式に基づいて、H1を求めて、その求めた長さの拘束ロープ位置に、最適な拘束ロープの固定位置が予めマーキング(図8において、●で示す)がされている。このマーキングによって、袋体の製造時に、どの位置でロープを縛れば良いかが分かる。
【0054】
この後、吊りロープ15で袋材の開口を閉じ、その周囲を口縛りロープ13によってしばり、袋体を完成して、拘束ロープ14と吊りロープ15とを一体化して袋体を製作枠17から取り出す。
拘束ロープ14は、合成繊維製のロープまたはベルトであるのが好ましい。
【0055】
なお、参考までに拘束ロープの長さH1の計算例を示すと、表1の判定が◎で示した袋体のうち、W=75mm(実寸2625mm)のもので、拘束ロープの長さH1は、1190mmであり、W=90mm(実寸3150mm)のもので、拘束ロープの長さH1は、910mmであり、W=110mm(実寸3850mm)のもので、拘束ロープの長さH1は、612mmである。
なお、上記実施の形態においては、袋材の底部に1本の拘束ロープが取り付けられている場合について説明したが、これに限らず、拘束ロープは、袋材の底部の網を束ねて口部方向に引き上げた網を含んでもよい。
また、上記実施の形態においては、1本の拘束ロープ位置に、最適な拘束ロープの固定位置が予めマーキングされている場合について説明したが、これに限らず、拘束ロープが袋材の底部の網を束ねて口部方向に引き上げた網の集合体と、これに連結したロープの組み合わせであり、それらに、最適な拘束ロープの固定位置が明示されていてもよい。
【0056】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示する実施形態のものに限定されない。図示された実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0057】
この発明にかかる袋体は、最も波浪に対して安定性を有するため、波浪に対して安定な袋体として、有利に使用される。
【符号の説明】
【0058】
10 袋体、11 袋材、12 中詰め充填材、13 口縛りロープ、14 拘束ロープ、15 吊りロープ、16a 底部、16b 袋体の上端部。
【要約】
袋体10は石材12を中詰めしている。袋体10の直径をW、袋体10の底部から、その中心を貫通し、吊りロープ15と合わせて吊り上げる、袋体10の底部から、その中心を貫通し、袋材の吊りロープ15の根元位置までの拘束ロープ14の長さをH1、袋材11に中詰め材12を中詰めした時の直径をW0としたとき、
W/H1(直径/拘束ロープ長)=15.898×(W/W0)2-17.784×(W/W0)+6.6314で表される曲線を中心とし、その上下の所定の範囲内にある。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8