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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-10
(45)【発行日】2022-08-19
(54)【発明の名称】アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   F15B 15/10 20060101AFI20220812BHJP
   A61B 1/00 20060101ALI20220812BHJP
【FI】
F15B15/10 G
A61B1/00 610
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018106416
(22)【出願日】2018-06-01
(65)【公開番号】P2019210987
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2021-03-03
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 公益社団法人計測自動制御学会,第18回 公益社団法人計測自動制御学会 システムインテグレーション部門講演会(SI2017)論文集,2303-2305,「曲率微分制御により蛇行推進する流体駆動マニピュレータの3次元化」,平成29年12月20日発行
(73)【特許権者】
【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
(74)【代理人】
【識別番号】100137752
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 岳行
(72)【発明者】
【氏名】伊達 央
【審査官】高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-075595(JP,A)
【文献】特表2010-505637(JP,A)
【文献】特開2002-364607(JP,A)
【文献】特開平02-017063(JP,A)
【文献】米国特許第5662587(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00
B25J 1/02
F03G 7/06
F15B 15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に延び且つ内部に予め設定された圧力の流体が収容され、可撓性を有する流体収容部と、
前記流体収容部の周囲に複数配置され、内部への流体の流入出に応じて前記長手方向に伸縮可能な伸縮部と、
前記各伸縮部の一端部に支持された第1の枠体と、前記各伸縮部の他端部に支持された第2の枠体と、前記各伸縮部のそれぞれに対応して形成されて前記各伸縮部に流体が流入するための流入口と、前記第2の枠体に形成された前記流体収容部に接続される接続路と、前記接続路に対応する第1の通気部を有し前記長手方向に交差する方向に移動可能に支持された第1の弁体と、前記各流入口に対応する第2の通気部を有し前記長手方向に交差する方向に移動可能に支持された第2の弁体と、を有する関節ブロックであって、前記長手方向に沿って複数配置された前記関節ブロックと、
長手方向に対して隣接して配置された2つの関節ブロックにおいて、一方の関節ブロックの第1の枠体と、他方の関節ブロックの第1の弁体とを接続して、前記第1の枠体の前記長手方向に対する傾斜に連動して、前記傾斜の外側の前記伸縮部へ流体が流入する流入位置に前記第1の弁体を移動させる第1の連動部材と、
前記各関節ブロックの第2の枠体と前記第2の弁体とを接続して、前記伸縮部の伸縮に連動して、前記傾斜の外側の前記伸縮部の流体を封止する封止位置に前記第2の弁体を移動させる第2の連動部材と、
を備えたことを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
前記流入位置において、傾斜の内側の前記伸縮部の内部を外気に接続する前記第2の弁体、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記長手方向に直交する第1の直交方向に対して、前記流体収容部を挟んで対向して配置された一対の第1の伸縮部と、
前記長手方向および前記第1の直交方向に直交する第2の直交方向に対して、前記流体収容部を挟んで対向して配置された一対の第2の伸縮部と、
前記第1の伸縮部に対応して配置され、前記第1の直交方向に沿って移動可能な各弁体と、
前記第2の伸縮部に対応して配置され、前記第2の直交方向に沿って移動可能な各弁体と、
を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載のアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長手方向に離れた位置にあるものを操作する際に使用可能なアクチュエータに関し、特に、湾曲した通路の先にあるものを操作することに好適に利用可能なアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
外科手術等において、開腹部位を小さくするために、体内に挿入して手術や検査、診断を行う内視鏡が知られている。内視鏡を体内に挿入するための技術として、以下の特許文献1に記載の技術が公知である。
特許文献1(特開2013-236747号公報)には、内視鏡の先端部に推進補助装置(2)を設置し、内視鏡を体内に挿入した後に、推進補助装置(2)を作動させて、先端硬化部(3)を体内で前進、後退させる技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-236747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
(従来技術の問題点)
従来の内視鏡では、長手方向に伸びるケーブル状、紐状の部分を体内に挿入するが、内視鏡を体内で目的の位置まで推進させる必要がある。特許文献1に記載の技術では、最初は、術者の手により送り込まれ、その後、推進補助装置(2)で推進されているが、いずれも、内視鏡の先端部に対して、後ろから押し込む形で推進させている。
したがって、後ろから押し込む形では、目的の位置までの経路が、複雑に湾曲していると、先端部が座屈して進めなくなる場合がある。また、経路に分岐がある場合には、先端部を屈曲させて進路を調整しようとしても、先端部は大きく屈曲させることが困難であり、分岐において目的の進路に進行させることが困難な場合もある。
【0005】
本発明は、後ろから押し込んで推進する形態に比べて、経路に沿って目的の位置まで到達しやすくすることを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記技術的課題を解決するために、請求項1に記載の発明のアクチュエータは、
長手方向に延び且つ内部に予め設定された圧力の流体が収容され、可撓性を有する流体収容部と、
前記流体収容部の周囲に複数配置され、内部への流体の流入出に応じて前記長手方向に伸縮可能な伸縮部と、
前記各伸縮部の一端部に支持された第1の枠体と、前記各伸縮部の他端部に支持された第2の枠体と、前記各伸縮部のそれぞれに対応して形成されて前記各伸縮部に流体が流入するための流入口と、前記第2の枠体に形成された前記流体収容部に接続される接続路と、前記接続路に対応する第1の通気部を有し前記長手方向に交差する方向に移動可能に支持された第1の弁体と、前記各流入口に対応する第2の通気部を有し前記長手方向に交差する方向に移動可能に支持された第2の弁体と、を有する関節ブロックであって、前記長手方向に沿って複数配置された前記関節ブロックと、
長手方向に対して隣接して配置された2つの関節ブロックにおいて、一方の関節ブロックの第1の枠体と、他方の関節ブロックの第1の弁体とを接続して、前記第1の枠体の前記長手方向に対する傾斜に連動して、前記傾斜の外側の前記伸縮部へ流体が流入する流入位置に前記第1の弁体を移動させる第1の連動部材と、
前記各関節ブロックの第2の枠体と前記第2の弁体とを接続して、前記伸縮部の伸縮に連動して、前記傾斜の外側の前記伸縮部の流体を封止する封止位置に前記第2の弁体を移動させる第2の連動部材と、
を備えたことを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のアクチュエータにおいて、
前記流入位置において、傾斜の内側の前記伸縮部の内部を外気に接続する前記第2の弁体、
を備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のアクチュエータにおいて、
前記長手方向に直交する第1の直交方向に対して、前記流体収容部を挟んで対向して配置された一対の第1の伸縮部と、
前記長手方向および前記第1の直交方向に直交する第2の直交方向に対して、前記流体収容部を挟んで対向して配置された一対の第2の伸縮部と、
前記第1の伸縮部に対応して配置され、前記第1の直交方向に沿って移動可能な各弁体と、
前記第2の伸縮部に対応して配置され、前記第2の直交方向に沿って移動可能な各弁体と、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、関節ブロックの傾斜に応じて弁体が移動して、伸縮部が伸縮することで、長手方向の端の傾斜を長手方向に伝搬させることができ、ヘビが進行する動きを実現しやすくなる。したがって、後ろから押し込んで推進する形態に比べて、経路に沿って目的の位置まで到達しやすくすることができる。
請求項2に記載の発明によれば、傾斜の内側の伸縮部を外気に接続することで伸縮部の内圧を大気圧にすることができ、内圧を変えるための装置を設ける場合に比べて、コストを下げることができる。
請求項3に記載の発明によれば、3次元的な動きを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は本発明の実施例1のアクチュエータの説明図である。
図2図2は実施例1のアクチュエータ本体の側面図である。
図3図3は本発明の関節ブロックの説明図であり、図3Aは部分断面の斜視図、図3B図3Aの断面図、図3Cは関節ブロックの分解図である。
図4図4は第2プレートを基端側から見た図である。
図5図5は第3プレートを基端側から見た図である。
図6図6は実施例1の作用説明図であり、図6Aはアクチュエータが長手方向に伸びている状態の模式図、図6B図6Aの状態から先端側の入力スライダが移動した状態の説明図、図6C図6Bの状態からベローズが伸縮してフィードバックスライダが移動し且つ基端側の入力スライダが移動した状態の説明図、図6D図6Cの状態から基端側のベローズが伸縮してフィードバックスライダが移動した状態の説明図である。
図7図7は実施例2のアクチュエータの説明図であり、図7A図2に対応する側面図、図7Bは関節ブロックの斜視図、図7C図3Cに対応する関節ブロックの分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に図面を参照しながら、本発明の実施の形態の具体例である実施例を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、以下の図面を使用した説明において、理解の容易のために説明に必要な部材以外の図示は適宜省略されている。
【実施例1】
【0012】
図1は本発明の実施例1のアクチュエータの説明図である。
図2は実施例1のアクチュエータ本体の側面図である。
図1において、本発明の実施例1のアクチュエータ1は、アクチュエータ本体2と、アクチュエータ本体2を覆うカバー3とを有する。図1図2において、アクチュエータ本体2は、全体として長手方向に伸びるケーブル状に形成されている。アクチュエータ本体2は、長手方向に沿って間隔をあけて配置された複数の関節ブロック11を有する。各関節ブロック11は、厚みのある円板状に形成されている。
なお、以下の説明において、便宜的に、長手方向の「先端側」を「上側」、長手方向の「基端側」を「下側」と表記して説明する場合がある。
【0013】
図3は本発明の関節ブロックの説明図であり、図3Aは部分断面の斜視図、図3B図3Aの断面図、図3Cは関節ブロックの分解図である。
図1図3において、実施例1のアクチュエータ本体2は、チューブ6の長手方向に沿って間隔をあけて配置された複数の関節ブロック11を有する。各関節ブロック11は、全体として厚みのある円板状に形成されている。
関節ブロック11では、長手方向の先端側(上側)に、第2の枠体の一例としての第1プレート12が配置されている。第1プレート12は、円板状に形成されている。第1プレート12の円の中心部には、第1のチューブ取付部12aが上側に突出して形成されている。第1のチューブ取付部12aの中央には、第1プレート12を貫通する流路が形成されている。
【0014】
図4は第2プレートを基端側から見た図である。
第1プレート12の下側(長手方向の基端側)には、第1の弁体支持部の一例としての第2プレート13が配置されている。図3C図4において、第2プレート13は略円板状に形成されている。第2プレート13は、第1のチューブ取付部12aに形成された流路に接続される貫通孔13aが円板の中央部を貫通して形成されている。図3Cにおいて、第2プレート13の上面には、貫通孔13aから径方向の外側に伸びる第1の接続路13bが形成されている。第1の接続路13bの外端には、第1の接続口13cが形成されている。図4において、第2プレート13の下面には、案内部の一例として、貫通孔13aを囲む略U字状のガイド溝13dが形成されている。
【0015】
第2プレート13のガイド溝13dには、第1の弁体の一例としての入力スライダ14が配置されている。入力スライダ14は、ガイド溝13dよりも幅広の略U字状に形成されており、ガイド溝13dに沿って、円板状の第2プレート13の径方向14aに沿って移動可能に支持されている。入力スライダ14には、第1の接続口13cに対応する位置に、第1の通気部の一例としての第1の通気口14bが形成されている。第1の通気口14bは、入力スライダ14のガイド溝13dに沿った移動に応じて、第1の接続口13cと接続/非接続の状態が切り換えられる。
【0016】
また、ガイド溝13dには、入力スライダ14の下方に、第2の弁体の一例としてのフィードバックスライダ16が配置されている。フィードバックスライダ16も、入力スライダ14と同様に、ガイド溝13dよりも幅広の略U字状に形成されている。したがって、フィードバックスライダ16も、入力スライダ14と同様に、ガイド溝13dに沿ってスライド移動可能に支持されている。フィードバックスライダ16には、第1の通気口14bとはスライド移動の方向にずれた位置に、第2の通気部の一例としての第2の通気口16bが一対形成されている。第2の通気口16bは、フィードバックスライダ16の移動に応じて、両方共が入力スライダ14で塞がれる状態(第1の通気口14bと非接続状態)と、一方が第1の通気口14bに接続されると共に他方が入力スライダ14の外縁よりも外方に達して大気に通じる状態とで切替可能となっている。
【0017】
図5は第3プレートを基端側から見た図である。
フィードバックスライダ16の下方には、第2の弁体支持部の一例としての第3プレート17が配置されている。第3プレート17は、円板状に形成されている。第3プレート17の中央部には、貫通孔17aが形成されており、第2プレート13の貫通孔13aに接続される。第3プレート17には、フィードバックスライダ16の第2の通気口16bに対応して、第2の接続口17bが一対形成されている。第2の接続口17bは第3プレート17を長手方向に貫通して形成されている。図5において、第3プレートの下面には、各第2の接続口17bからそれぞれ伸びる溝状の第2の接続路17cが形成されている。各第2の接続路17cは、貫通孔17aの両側に対称に並んだ位置まで延びている。
【0018】
図3において、第3プレート17の下方には、第1の枠体の一例としての第4プレート18が配置されている。第4プレート18は、円板状に形成されている。第4プレート18の下面の中央部には、第2のチューブ取付部18aが下方に突出して形成されている。第2のチューブ取付部18aには、貫通孔18bが形成されており、第3プレート17の貫通孔17aに接続される。第4プレート18には、貫通孔18bの径方向の外側の位置に、第2の通気部の一例としての第2の通気口18cが形成されている。第2の通気口18cは、第2の接続路17cの下流端に対応する位置に配置されている。第2の通気口18cは、第4プレート18を長手方向に貫通して形成されている。
【0019】
なお、各プレート12,13,17,18の外縁部には、ボルト止め孔が形成されており、図示しないボルトで連結される。前記各プレート12,13,17,18や、各スライダ14,16により、実施例1の関節ブロック11が構成されている。
図1において、実施例1のアクチュエータ1では、長手方向の最先端の関節ブロック11には、撮影部材の一例としてのカメラ19が支持されている。
【0020】
図2図3において、第4プレート18の各第2の通気口18cには、伸縮部の一例としてのベローズ(蛇腹)21の一端(上端)が支持されている。ベローズ21は、長手方向に伸縮可能に構成されている。また、ベローズ21は、内部に流体を収容可能に構成されている。なお、ベローズ21の他端(下端)は封止されている(塞がれている)。
【0021】
また、長手方向に隣接する関節ブロック11において、基端側の関節ブロック11の第1のチューブ取付部12aと、先端側の関節ブロック11の第2のチューブ取付部18aとの間は、流体収容部の一例としてのチューブ22で連結されている。実施例1のチューブ22は、一例として、長手方向に伸び、可撓性を有するゴムチューブで構成されているが、弾性のある樹脂(プラスチック)製のチューブを使用することも可能である。なお、チューブ22の基端部(根元)は、高圧タンク7に接続されており、予め設定された圧力の流体が供給される。なお、実施例1では、流体の圧力は大気圧よりも高圧に設定されている。
【0022】
図2において、蛇腹状のベローズ21は、「腹」(外径の大きな部分)と「節」(外径の小さい部分)を複数有しており、各「節」の部分には、姿勢制御部材の一例として、ドーナツ状のガイド板23が支持されている。ガイド板23を設けないと、ベローズ21やチューブ22が柔軟であるため、想定しない方向に曲がりすぎて座屈等する恐れがあるが、ガイド板23を設けることで座屈等を抑制でき、アクチュエータ1の姿勢が制御しやすくなる。
【0023】
図1において、実施例1では、長手方向に隣接する関節ブロック11において、長手方向の先端側の第4プレート18と、長手方向の基端側の入力スライダ14との間は、第1の連動部材の一例としての入力ワイヤ26で接続されている。なお、入力ワイヤ26は、チューブ22を挟んでベローズ21の外側に一対配置されている。入力ワイヤ26は、第4プレート18の長手方向に対する傾斜と、入力スライダ14のスライド移動とを連動させる。
また、長手方向の先端側のフィードバックスライダ16と、長手方向の基端側の第1プレート12との間は、第2の連動部材の一例としてのフィードバックワイヤ27で接続されている。フィードバックワイヤ27は、第1プレート12の長手方向に対する傾斜とフィードバックスライダ16のスライド移動とを連動させる。
【0024】
(実施例1の作用)
図6は実施例1の作用説明図であり、図6Aはアクチュエータが長手方向に伸びている状態の模式図、図6B図6Aの状態から先端側の入力スライダが移動した状態の説明図、図6C図6Bの状態からベローズが伸縮してフィードバックスライダが移動し且つ基端側の入力スライダが移動した状態の説明図、図6D図6Cの状態から基端側のベローズが伸縮してフィードバックスライダが移動した状態の説明図である。
なお、図6において、作用の説明と理解の容易のため、あえて一部の部材は図示を省略したり、実物に対して不正確な表記としている部分がある。
【0025】
前記構成を備えたアクチュエータ1では、アクチュエータ1が長手方向に沿って延びている状態、すなわち、長手方向に対して湾曲していない状態では、図6Aに示すように、入力スライダ14の第1の通気口14bとフィードバックスライダ16の第2の通気口16bとが接続されていない。したがって、チューブ22の両側のベローズ21の何れにも、チューブ22に収容された流体が流入しない。
図6A図6Bにおいて、長手方向の先端側の関節ブロック11が、図6における左右何れかに傾いた場合(いわゆる首を振った場合)、先端側の関節ブロック11に接続された入力ワイヤ26が入力スライダ14を移動させる。具体的には、傾きの曲率半径の外側の入力ワイヤ26が入力スライダ14を引っ張る形で、入力スライダ14が、図6Bに示す流入位置にスライド移動する。
【0026】
したがって、図6Bの状態では、入力スライダ14の第1の通気口14bが、フィードバックスライダ16の右側の第2の通気口16b(16b-1)に接続する形となる。よって、チューブ22につながる第1の接続路13bが右側のベローズ21(21-1)の内部に接続される。したがって、右側のベローズ21(21-1)の内圧がチューブ22の高圧流体の圧力となる。
なお、図6Bの状態では、入力スライダ14が右側にスライドした状態では、フィードバックスライダ16の左側の第2の通気口16b(16b-2)が外部、すなわち、大気に接続される。したがって、左側のベローズ21(21-2)の内圧が大気圧となる。よって、左右のベローズ21の圧力差で、図6Cに示すように、ベローズ21が伸縮し、第4プレート18が長手方向に対して傾斜する。
【0027】
図6Cにおいて、第4プレート18が傾斜すると、基端側の関節ブロック11の第1プレート12に対してフィードバックスライダ16が長手方向に対して傾斜することとなる。したがって、フィードバックワイヤ27の曲率半径の外側の入力ワイヤが、フィードバックスライダ16を引っ張る形で、フィードバックスライダ16が右側の封止位置にスライド移動する。したがって、図6Cに示すように、入力スライダ14の第1の通気口14bと、フィードバックスライダ16の右側の第2の通気口16b(16b-1)とが非接続の状態となる。なお、この状態では、右側のベローズ21(21-1)の内部の高圧の流体は、フィードバックスライダ16で封じられた状態となる。
【0028】
図6Cにおいて、第4プレート18の傾斜に伴って基端側の関節ブロック11の入力スライダ14が入力ワイヤ26で引っ張られる。したがって、図6Bでの説明と同様に、右側のベローズ21(21-1)に高圧の流体が流入して、図6Dに示すように右側が延びるように傾く。
なお、先端側の関節ブロック11が、図6B図6Dの逆側に傾くと、同様にして、逆側に傾いていく。
【0029】
このようにして、実施例1のアクチュエータ1では、先端側の関節ブロック11の長手方向に対する傾きが、基端側の関節ブロック11に向かって伝搬していく。そして、先端側の関節ブロック11が長手方向に対して、交互に傾くと、ヘビが移動する場合のようにアクチュエータ1が変動する。したがって、配管の検査や人体の内部を進む内視鏡として使用する際に、アクチュエータ1の先端が物体に接触して傾くと、基端側に傾きが伝搬して進路が変わるとともに、アクチュエータ1の傾きに応じて、推進力が発生する。また、先端の関節ブロック11だけを長手方向に対して傾ける機構(モータや圧力バルブ等)を設け、無線通信等で関節ブロック11を作業者が、配管や人体の外部から指示をするだけで、進路を設定したり、推進力を発生させることができる。したがって、アクチュエータ1を基端側から押し込んだり、アクチュエータ1を奥に向けて送り込むための複雑な機構を設けなくても、目的の位置まで、アクチュエータ1が自身の傾斜、湾曲で進路を変更しつつ推進力を発生させて進むことが可能である。
【0030】
なお、アクチュエータ1を配管等から引き抜く場合には、高圧タンク7からの高圧の流体の流入を停止し、大気に開放すれば、ベローズ21の内圧が大気圧となり、アクチュエータ1の先端部の傾斜に関わらず自由に湾曲できる状態となる。したがって、この状態で基端側から引き出すだけで、アクチュエータ1を配管や人体から引き出すことが可能である。
【実施例2】
【0031】
次に本発明の実施例2の説明をするが、この実施例2の説明において、前記実施例1の構成要素に対応する構成要素には同一の符号を付して、その詳細な説明は省略する。
この実施例は下記の点で、前記実施例1と相違しているが、他の点では前記実施例1と同様に構成される。
図7は実施例2のアクチュエータの説明図であり、図7A図2に対応する側面図、図7Bは関節ブロックの斜視図、図7C図3Cに対応する関節ブロックの分解図である。
図7において、実施例2のアクチュエータ1′では、実施例1の関節ブロック11とは異なる関節ブロック11′を有する。図7Cにおいて、実施例2の関節ブロック11′は、実施例1と同様の第1プレート12、第2プレート13、第1入力スライダ14、第1フィードバックスライダ16を有する。なお、実施例2では、第1入力スライダ14および第1フィードバックスライダ16が移動する方向を、第1の直交方向の一例としてのX方向(左右方向)として説明する。
【0032】
第1フィードバックスライダ16の下側には、第5プレート31が配置されている。第5プレート31は円板状に形成されている。第5プレート31の中央部には貫通孔31aが形成されている。また、第5プレート31には、第2の通気口16bの移動方向に沿って延びる左右一対の第5の接続路31b,31c が形成されている。第5の接続路31b,31cの右端には、第5の接続口31d,31eがそれぞれ形成されている。
【0033】
第5プレート31の下側には、第2の枠体の一例としての第6プレート32が配置されている。第6プレート32は、円板状に形成されている。また、第6プレート32は、第2プレート13と同様に中央部に貫通孔32aが形成されており、第2プレート13の第1の接続路13bが延びる方向とは直交する方向に延びる第6の接続路32bと、第6の接続口32cが形成されている。また、第6プレート32には、左側の第5の接続口31dに接続される第6の接続路32dが形成されている。また、貫通孔32aを挟んで第6の接続口32cとは反対側の位置には、第6の左接続口32eが、第6プレート32を貫通して形成されている。第6の接続路32dは、左側の第5の接続口31dと第6の左接続口32eとを接続するように形成されている。第6の左接続口32eの前側には、第6の右接続口32fが形成されている 。第6の右接続口32fは、右側の第5の接続口31eに接続される。なお、第6プレート32の下面には、第2プレート13とは直交する第2の直交方向(Y方向、前後方向)に第2入力スライダ33および第2フィードバックスライダ34をガイドするガイド溝32g(詳細図省略、図7参照)が形成されている。
【0034】
第6プレート32の下方には、第1の弁体の一例としての第2入力スライダ33と第2の弁体の一例としての第2フィードバックスライダ34とが配置されている。第2入力スライダ33と第2フィードバックスライダ34は、第1入力スライダ14と第1フィードバックスライダ16の移動方向とは直交する方向に移動可能に支持されている。なお、実施例2では、第2入力スライダ33および第2フィードバックスライダ34が移動する方向を、第2の直交方向の一例としてのY方向(前後方向)として説明する。なお、第2入力スライダ33および第2フィードバックスライダ34は、第1入力スライダ14および第1フィードバックスライダ16と、X方向(14a)とY方向(33a)の違いがあるだけで、同様に構成されているため、詳細な説明は省略する。
【0035】
第2フィードバックスライダ34の下方には、第3プレート17に替えて、第7プレート36が配置されている。実施例2の第7プレート36には、中央の貫通孔36aが形成されている。また、図7において、第7プレート36の上面には、第2フィードバックスライダ34の接続口34bに対応して、接続口34bの移動方向に延びる前後一対の第7の前接続路36bおよび第7の後接続路36cが形成されている。第7の接続路36b,36cの前後両端には、第7プレート36を貫通する第7の前接続口36dおよび第7の後接続口36eが形成されている。
第7プレート36の下面には、第7の前接続口36dから前方に弧状に延びる第7の前弧状接続路36fが形成されている。同様に、第7プレート36の下面には、第7の後接続口36eから後方に弧状に延びる第7の後弧状接続路36gが形成されている。
【0036】
第7プレート36には、第6の右接続口32fに接続される第7の右接続口36hが、第7プレート36を貫通して形成されている。
第7プレート36には、第6の左接続口32eに接続される第7の左接続口36jが、第7プレート36を貫通して形成されている。また、第7プレート36の下面には、第7の左接続口36jから、左斜め前方に向けて延びる第7の左接続路36kが形成されている。実施例2では、第7の左接続路36kの前端は、貫通孔36aと第7の前弧状接続路36fの前端との間の位置まで伸びている。
【0037】
第7プレート36の下方には、第4プレート18に替えて、第8プレート37が配置されている。実施例2の第8プレート37には、貫通孔12a,13a,31a,32a,36aに接続される貫通孔37aが形成されている。
第8プレート37の上面には、第7の左接続路36kの下流端(前端)に接続し、第8プレート37の左端に向けて延びる第8の左接続路37bが形成されている。第8の左接続路37bの左端には、第8の左接続口37cが、第8プレート37を貫通して形成されている。
また、第8プレート37の上面には、第7の右接続口36hに接続し、且つ、第8プレート37の右端に向けて延びる第8の右接続路37dが形成されている。第8の右接続路37dの右端には、第8の右接続口37eが、第8プレート37を貫通して形成されている。
【0038】
第8プレート37には、第7の前接続口36dおよび第7の後接続口36eに対応して、第8プレート37を貫通する第8の前接続口37fおよび第8の後接続口37gが形成されている。
また、実施例2では、第8の左接続口37cおよび第8の右接続口37eに対応して、第1の伸縮部の一例としての第1ベローズ21が接続されている。また、第8の前接続口37fおよび第8の後接続口37gに対応して、第2の伸縮部の一例としての第2ベローズ21′が接続されている。
なお、実施例2では、図示は省略するが、第2入力スライダ33および第2フィードバックスライダ34には、第1入力スライダ14および第1フィードバックスライダ16と同様に、長手方向に隣接する関節ブロック11′の第8プレート37および第1プレート12との間にワイヤ26,27が連結されており、各プレート37,12のY方向の傾斜に連動して各スライダ33,34がスライド移動可能に連結されている。
【0039】
(実施例2の作用)
前記構成を備えた実施例2のアクチュエータ1′では、X方向にしか傾斜できなかった実施例1の構成に比べて、Y方向にも傾斜ができるようになっている。したがって、アクチュエータ1′がヘビが進行するように動く際に、実施例1のような2次元的な動きだけでなく、3次元的な動きも可能である。よって、人体や配管等の内部に進行しやすくなっている。
【0040】
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内で、種々の変更を行うことが可能である。
例えば、流体としてガスを使用したが、これに限定されない。例えば、人体で使用する場合は、生理食塩水等の液体を使用することも可能である。
【0041】
また、ワイヤ26,27でスライダ14,16を移動させる構成を例示したが、これに限定されない。例えば、スプールバルブ等の連動部材を使用して、ベローズ21とチューブ22とを接続することも可能である。
さらに、アクチュエータ1の先端部にカメラ19を設ける構成を例示したが、これに限定されない。例えば、マジックハンドやハサミ、注射器、センサ等、アクチュエータ1を通じて遠隔で行いたい作業に応じた部材を設置することが可能である。
【0042】
また、ベローズ21において、曲率半径の内側のベローズ21を大気圧に開放する方法としてフィードバックスライダ16を移動させる方法を例示したが、これに限定されない。例えば、低圧のガスが封入されたチューブも通し、低圧ガスと接続する構成とすることも可能である。また、高圧ガスに替えて低圧ガスを使用すれば、傾斜、湾曲の方向を実施例とは逆向きにすることも可能である。
さらに、関節ブロック11は、複数のプレートを積層してボルト止めする構成を例示したが、これに限定されない。3Dプリンタ等を使用することで、例えば、第1プレート12と第2プレート13を一体形成する等、任意の構成を取ることが可能である。
【符号の説明】
【0043】
1…アクチュエータ、
11,11′…関節ブロック、
12…第2の枠体、
13b…接続路、
14,33…第1の弁体、
14b,33b…第1の通気部、
16,34…第2の弁体、
16b,34b…第2の通気部、
18…第1の枠体、
18c…流入口、
21…第1の伸縮部、
21,21′…伸縮部、
21′…第2の伸縮部、
22…流体収容部、
26…第1の連動部材、
27…第2の連動部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7