(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-10
(45)【発行日】2022-08-19
(54)【発明の名称】アミド化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 231/02 20060101AFI20220812BHJP
C07C 237/12 20060101ALI20220812BHJP
C07C 271/22 20060101ALI20220812BHJP
C07C 269/06 20060101ALI20220812BHJP
C07D 209/24 20060101ALI20220812BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20220812BHJP
【FI】
C07C231/02
C07C237/12
C07C271/22
C07C269/06
C07D209/24
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2019514568
(86)(22)【出願日】2018-04-25
(86)【国際出願番号】 JP2018016767
(87)【国際公開番号】W WO2018199147
(87)【国際公開日】2018-11-01
【審査請求日】2021-04-21
(31)【優先権主張番号】P 2017086270
(32)【優先日】2017-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】500433225
【氏名又は名称】学校法人中部大学
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【氏名又は名称】武居 良太郎
(72)【発明者】
【氏名】山本 尚
(72)【発明者】
【氏名】村松 渉
(72)【発明者】
【氏名】服部 倫弘
(72)【発明者】
【氏名】下田 康嗣
【審査官】水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/060843(WO,A1)
【文献】J. Am. Chem. Soc.,2016年,138,14218-14221
【文献】Chemical Reviews,2016年,116,12029-12122
【文献】Inorganica Chimimca Acta,2004年,357,2415-2426
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
CAplus(STN)
CASREACT(STN)
REGISTRY(STN)
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属化合物からなる触媒の存在下に、下記一般式(1)で表されるアミノエステル化合物
(但し、エステル基-COOR
1
に対してα位、β位、γ位、又はδ位の炭素に水酸基が結合する化合物は除く。)と、アミノ化合物とを反応させて、前記アミノエステル化合物のエステル基をアミド化するアミド化工程を備える
と共に、
金属化合物からなる触媒が、タンタル、ニオブ、ハフニウム、鉛、チタン、マンガン、パラジウム、スズ、マグネシウム、タングステン、及びアルミニウムから選択される1以上の金属を含む化合物である、アミド化合物の製造方法。
【化1】
[式(1)中、基R
1は、置換基を有していてもよい脂肪族基、置換基を有していてもよい芳香族基、置換基を有していてもよい脂環式基、または置換基を有していてもよい複素環式基を示す。基R
2及び基R
3は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、置換基を有していてもよい脂肪族基、置換基を有していてもよい芳香族基、置換基を有していてもよい脂環式基、または置換基を有していてもよい複素環式基を示す。基PGは、アミノ基の保護基を示す。Aは、置換基を有していてもよい炭素数1~3の直鎖または分岐鎖のアルキレン基を示す。pは、0または1である。]
【請求項2】
前記アミド化工程の後、得られたアミド化合物において、前記一般式(1)で表されるアミノエステル化合物に由来する保護基PGを脱保護してアミノ基に変換する脱保護工程をさらに備えている、請求項1に記載のアミド化合物の製造方法。
【請求項3】
金属化合物からなる触媒の存在下に、前記一般式(1)で表されるアミノエステル化合物と、請求項2で得られたアミノ基を有するアミド化合物とを反応させて、前記アミノエステル化合物のエステル基をアミド化するアミド化工程をさらに備える、請求項2に記載のアミド化合物の製造方法。
【請求項4】
前記基PGが、tert-ブトキシカルボニル基(Boc)、ベンジル基(Bn)、ベンジルオキシカルボニル基(Cbz)、ベンゾイル基(Bz)、2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル基(Troc)、アリルオキシカルボニル基(Alloc)、2,4-ジニトロフェニル基(2,4-DNP)、フタロイル基(Phth)、パラメトキシベンゾイル基(PMPCO)、シンナモイル基、トルエンスルホニル基(Ts)、2又は4-ニトロベンゼンスルホニル基(Ns)、又は9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基(Fmoc)である、請求項1~3のいずれかに記載のアミド化合物の製造方法。
【請求項5】
前記アミノ化合物が、下記一般式(3)で表されるアミノ化合物である、請求項1~4のいずれかに記載のアミド化合物の製造方法。
【化2】
[基R
a及び基R
bは、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい脂肪族基、置換基を有していてもよい芳香族基、置換基を有していてもよい脂環式基、または置換基を有していてもよい複素環式基を示す。また、R
aとR
bは、結合する窒素原子と共に飽和または不飽和の複素環を形成してもよい。該複素環基には置換基を有していてもよい。]
【請求項6】
前記アミノ化合物が、アミノ酸もしくはその塩、又はアミノ酸エステルもしくはその塩である、請求項1~4のいずれかに記載のアミド化合物の製造方法。
【請求項7】
前記アミノエステル化合物を100mol%とした場合に、前記触媒の使用量が、20mol%以下である、請求項1~6のいずれかに記載のアミド化合物の製造方法。
【請求項8】
アミド化反応は、塩基の存在下で行われる、請求項1~7のいずれかに記載のアミド化合物の製造方法。
【請求項9】
アミド化反応で得られるアミド化合物が、下記一般式(4)である、請求項1~8のいずれかに記載のアミド化合物の製造方法。
【化3】
[式(4)中、基R
2及び基R
3は、それぞれ、前記一般式(1)と同じであり、基R
a及び基R
bは、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい脂肪族基、置換基を有していてもよい芳香族基、置換基を有していてもよい脂環式基、または置換基を有していてもよい複素環式基を示す。また、R
aとR
bは、結合する窒素原子と共に飽和または不飽和の複素環を形成してもよい。該複素環基には置換基を有していてもよい。Aは、置換基を有していてもよい炭素数1~3の直鎖または分岐鎖のアルキレン基を示す。pは、0または1である。]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミド化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ペプチドに代表されるアミド化合物は、医薬品、化粧品、機能性食品をはじめ、幅広い分野で利用されており、その合成法の開発は、合成化学における重要な研究課題として精力的に実施されてきた(非特許文献1~6)。しかし、そのペプチド合成に最も重要であるアミド化反応には有効な触媒が殆ど存在していない。従って、副生成物を生ずる当量の試薬を用いざるを得ず、しかも多段階の反応を繰り返すペプチド合成はアトム・エコノミー(原子収率)の観点から極めて非効率な合成であり、副生成物は膨大な量となり、また、有効な精製手段も少ない。その結果、副生成物の廃棄と精製にかかるコストがペプチド合成の殆どの必要経費を占め、この分野の発展における最大障壁の一つとなっている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】Annu. Rev. Biophys. Biomol. Struct., 2005, 34, 91-118
【文献】Tetrahedron, 2005, 6, 10827-10852
【文献】Chem. Rev., 2007, 107, 5759-5812
【文献】Chem. Rev., 2011, 111, 6557-6602
【文献】Org. Process Res. Dev., 2016, 20(2), 140-177
【文献】Chem. Rev., 2016, 116, 12029-12122
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アミノ酸又はその誘導体を原料とするペプチド合成では、高立体選択的にアミド化反応を行うことが求められる。高立体選択的なアミド化反応としては、生体内での酵素反応が挙げられる。例えば、生体内では、酵素と水素結合を巧みに利用して、極めて高立体選択的にペプチドを合成している。しかしながら、酵素反応は、大量生産には不向きであり、合成化学に適用すると、膨大な金銭的・時間的なコストが必要となる。
【0005】
合成化学においても、触媒を用いたアミド化反応が検討されているが、従来の手法では、主にカルボン酸を活性化する手法によりアミド結合を形成しており、ラセミ化の進行が早く、高立体選択的にペプチドを合成することは困難である。このように、合成化学においては、触媒を用いて高立体選択的にペプチドを合成する方法は、未だ実用化されていないのが現状である。このような背景のもと、高立体化学選択的アミド化反応の開発が望まれている。
【0006】
このような状況下、本発明は、高立体化学選択的にアミド化合物を製造する新規な方法を提供することを主な目的とする。
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、金属化合物からなる触媒の存在下に、下記一般式(1)で表されるアミノエステル化合物と、アミノ化合物とを反応させて、前記アミノエステル化合物のエステル基をアミド化するアミド化工程を備える、新規なアミド化合物の製造方法よれば、高い立体化学選択的にアミド化反応が進行することを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0008】
【0009】
式(1)において、基R1は、置換基を有していてもよい脂肪族基、置換基を有していてもよい芳香族基、置換基を有していてもよい脂環式基、または置換基を有していてもよい複素環式基を示す。基R2及び基R3は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、置換基を有していてもよい脂肪族基、置換基を有していてもよい芳香族基、置換基を有していてもよい脂環式基、または置換基を有していてもよい複素環式基を示す。基PGは、アミノ基の保護基を示す。Aは、置換基を有していてもよい炭素数1~3の直鎖または分岐鎖のアルキレン基を示す。pは、0または1である。
【0010】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. 金属化合物からなる触媒の存在下に、下記一般式(1)で表されるアミノエステル化合物と、アミノ化合物とを反応させて、前記アミノエステル化合物のエステル基をアミド化するアミド化工程を備える、アミド化合物の製造方法。
【化2】
[式(1)中、基R
1は、置換基を有していてもよい脂肪族基、置換基を有していてもよい芳香族基、置換基を有していてもよい脂環式基、または置換基を有していてもよい複素環式基を示す。基R
2及び基R
3は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、置換基を有していてもよい脂肪族基、置換基を有していてもよい芳香族基、置換基を有していてもよい脂環式基、または置換基を有していてもよい複素環式基を示す。
基PGは、アミノ基の保護基を示す。Aは、置換基を有していてもよい炭素数1~3の直鎖または分岐鎖のアルキレン基を示す。pは、0または1である。]
項2. 前記アミド化工程の後、得られたアミド化合物において、前記一般式(1)で表されるアミノエステル化合物に由来する保護基PGを脱保護してアミノ基に変換する脱保護工程をさらに備えている、項1に記載のアミド化合物の製造方法。
項3. 金属化合物からなる触媒の存在下に、前記一般式(1)で表されるアミノエステル化合物と、項2で得られたアミノ基を有するアミド化合物とを反応させて、前記アミノエステル化合物のエステル基をアミド化するアミド化工程をさらに備える、項2に記載のアミド化合物の製造方法。
項4. 前記基PGが、tert-ブトキシカルボニル基(Boc)、ベンジル基(Bn)、ベンジルオキシカルボニル基(Cbz)、ベンゾイル基(Bz)、2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル基(Troc)、アリルオキシカルボニル基(Alloc)、2,4-ジニトロフェニル基(2,4-DNP)、フタロイル基(Phth)、パラメトキシベンゾイル基(PMPCO)、シンナモイル基、トルエンスルホニル基(Ts)、2又は4-ニトロベンゼンスルホニル基(Ns)、又は9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基(Fmoc)である、項1~3のいずれかに記載のアミド化合物の製造方法。
項5. 前記アミノ化合物が、下記一般式(3)で表されるアミノ化合物である、項1~4のいずれかに記載のアミド化合物の製造方法。
【化3】
[基R
a及び基R
bは、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい脂肪族基、置換基を有していてもよい芳香族基、置換基を有していてもよい脂環式基、または置換基を有していてもよい複素環式基を示す。また、R
aとR
bは、結合する窒素原子と共に飽和または不飽和の複素環を形成してもよい。該複素環基には置換基を有していてもよい。]
項6. 前記アミノ化合物が、アミノ酸もしくはその塩、又はアミノ酸エステルもしくはその塩である、項1~4のいずれかに記載のアミド化合物の製造方法。
項7. 前記アミノエステル化合物を100mol%とした場合に、前記触媒の使用量が、20mol%以下である、項1~6のいずれかに記載のアミド化合物の製造方法。
項8. アミド化反応は、塩基の存在下で行われる、項1~7のいずれかに記載のアミド化合物の製造方法。
項9. アミド化反応で得られるアミド化合物が、下記一般式(4)である、項1~8のいずれかに記載のアミド化合物の製造方法。
【化4】
[式(4)中、基R
2及び基R
3は、それぞれ、前記一般式(1)と同じであり、基R
a及び基R
bは、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい脂肪族基、置換基を有していてもよい芳香族基、置換基を有していてもよい脂環式基、または置換基を有していてもよい複素環式基を示す。また、R
aとR
bは、結合する窒素原子と共に飽和または不飽和の複素環を形成してもよい。該複素環基には置換基を有していてもよい。Aは、置換基を有していてもよい炭素数1~3の直鎖または分岐鎖のアルキレン基を示す。pは、0または1である。]
項10. 金属化合物からなる触媒の存在下に、下記一般式(11)で表されるアミノカルボン酸化合物と、アミノ化合物とを、金属カルボキシレートを経由して、前記アミノカルボン酸化合物の前記カルボキシ基をアミド化するアミド化工程を備える、アミド化合物の製造方法。
【化5】
[式(11)中、基R
2及び基R
3は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、置換基を有していてもよい脂肪族基、置換基を有していてもよい芳香族基、置換基を有していてもよい脂環式基、または置換基を有していてもよい複素環式基を示す。基PGは、アミノ基の保護基を示す。Aは、置換基を有していてもよい炭素数1~3の直鎖または分岐鎖のアルキレン基を示す。pは、0または1である。]
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高立体化学選択的にアミド化合物を製造する新規な方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のアミド化合物の製造方法は、金属化合物からなる触媒の存在下に、下記一般式(1)で表されるアミノエステル化合物と、アミノ化合物とを反応させて、前記アミノエステル化合物のエステル基をアミド化するアミド化工程を備えることを特徴としている。
【0013】
【0014】
また、本発明のアミド化合物の製造方法は、金属化合物からなる触媒の存在下に、下記一般式(11)で表されるアミノカルボン酸化合物と、アミノ化合物とを、金属カルボキシレートを経由して、前記アミノカルボン酸化合物の前記カルボキシ基をアミド化するアミド化工程を備えていてもよい。すなわち、当該アミド化合物の製造方法においては、出発物質としてアミノカルボン酸化合物を用い、アミノカルボン酸化合物のカルボキシル基を金属試薬によって系中で金属カルボキシレートを生成させることで、アミノカルボン酸化合物とアミノ化合物とを反応させてアミド化する方法である。後述の通り、当該方法においては、金属カルボキシレートを経由することで、アミノカルボン酸化合物とアミノ化合物とを反応させてアミド化することができる。
【0015】
【0016】
以下、本発明のアミド化合物の製造方法について、詳述する。なお、後述の通り、本発明においては、上記一般式(1)に示されているアミノエステル化合物のエステル基(または、上記一般式(11)に示されているアミノカルボン酸化合物のカルボキシ基から生成した金属カルボキシレート)と、アミノ化合物が備えているアミノ基とが反応することにより、アミド結合が形成されて、本発明のアミド化合物が製造される。
【0017】
本明細書において、数値範囲を示す「~」の表示は、その左側に付している数値以上且つその右側に付している数値以下であることを示し、例えば数値範囲「X~Y」の表記はX以上Y以下であることを意味する。
【0018】
上記一般式(1)に示されているアミノエステル化合物(以下、アミノエステル化合物(1)ということがある)において、基R1は、置換基を有していてもよい脂肪族基、置換基を有していてもよい芳香族基、置換基を有していてもよい脂環式基、または置換基を有していてもよい複素環式基を示す。
【0019】
また、上記一般式(1)及び(11)に示されている基R2及び基R3は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、置換基を有していてもよい脂肪族基、置換基を有していてもよい芳香族基、置換基を有していてもよい脂環式基、または置換基を有していてもよい複素環式基を示す。
【0020】
基R1、基R2、及び基R3が有し得る前記置換基(脂肪族基、脂環式基、及び複素環式基の置換基)としては、本発明のアミド化工程が進行すれば特に制限されず、それぞれ独立に、例えば、アルキル基(例えば、炭素数が1~10の直鎖または分枝鎖状のアルキル基)、アルケニル基(例えば、炭素数が1~10の直鎖または分枝鎖状のアルケニル基)、アルキニル基(例えば、炭素数が1~10の直鎖または分枝鎖状のアルキニル基)、アルコキシ基(例えば、炭素数が1~10の直鎖または分枝鎖状のアルコキシ基)、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、チオール基、シアノ基などが挙げられる。また、基R1、基R2、及び基R3における脂肪族基、芳香族基、脂環式基、または複素環式基が、置換基を有する場合、置換基の数としては特に制限されないが、それぞれ独立に、例えば、1~10、1~5、1~3、1~2、1が挙げられる。また、置換基を複数有する場合、置換基は、1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。なお、脂肪族基及び芳香族基は、それぞれ、ヘテロ原子を含んでいてもよい。また、脂肪族基、脂環式基、及び複素環式基は、それぞれ、飽和であってもよいし、不飽和であってもよい。
【0021】
基R1としては、置換基を有していてもよい炭素数が1~20の脂肪族基、置換基を有していてもよい炭素数が4~20の芳香族基、置換基を有していてもよい炭素数が3~20の脂環式基、または置換基を有していてもよい炭素数が2~20の複素環式基であることが好ましく、置換基を有していてもよい炭素数が1~10の脂肪族基、置換基を有していてもよい炭素数が4~10の芳香族基、置換基を有していてもよい炭素数が3~10の脂環式基、または置換基を有していてもよい炭素数が2~10の複素環式基であることがより好ましい。基R1の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、プロパルギル基等の炭素数が1~10の直鎖または分枝鎖状のアルキル基、フェニル基、ベンジル基等のアルキル部分の炭素数が1~10の直鎖または分枝鎖状のアルキル基であるフェニルアルキル基、アリル基等の1~10の直鎖または分枝鎖状のアルケニル基などが挙げられる。なお、基R1の置換基については、前述の通りである。
【0022】
また、一般式(1)及び(11)において、炭素原子に結合している基R2及び基R3としては、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、置換基を有していてもよい炭素数が1~20の脂肪族基、置換基を有していてもよい炭素数が4~20の芳香族基、置換基を有していてもよい炭素数が3~20の脂環式基、または置換基を有していてもよい炭素数が2~20の複素環式基であることが好ましく、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、置換基を有していてもよい炭素数が1~10の脂肪族基、置換基を有していてもよい炭素数が4~10の芳香族基、置換基を有していてもよい炭素数が3~10の脂環式基、または置換基を有していてもよい炭素数が2~10の複素環式基であることがより好ましい。基R2及び基R3の具体例としては、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、ニトロ基、チオール基、シアノ基、フェニル基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基などの炭素数が1~10の直鎖または分枝鎖状のアルキル基;エチレン基、プロピレン基、ブチレン基などの炭素数が1~10の直鎖または分枝鎖状のアルケニル基;プロパルギル基などの炭素数が1~10のアルキニル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基などの炭素数が1~10の直鎖または分枝鎖状のアルコキシ基などが挙げられる。
【0023】
Aは、置換基を有していてもよい炭素数1~3の直鎖または分岐鎖のアルキレン基を示す。具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等が挙げられる。また、pは、0または1である。置換基としては、前記基R1、基R2及び基R3で例示した置換基に同じである。
【0024】
基PGは、アミノ基の保護基である。アミノ基の保護基としては、アミド化合物の製造方法において、アミノ基が反応しないように保護することができ、反応後に脱保護してアミノ基に変換可能なものであれば、特に制限されない。アミノ基の保護基としては、公知の多種多様のものが知られている。保護基の炭素数としては、通常、1~20程度、好ましくは3~15程度が挙げられる。
【0025】
なお、本発明において、基PGには、水酸基が含まれていてもよいし、水酸基が含まれていなくてもよい。また、基R2及びR3にも、それぞれ、水酸基が含まれていてもよいし、水酸基が含まれていなくてもよい。前記一般式(1)において、エステル基に隣接する位置をα位(炭素原子)、次の位置をβ位(窒素原子)としているが、β位の次の位置をγ位、その次の位置をδ位とした場合、基PG、基R2及びR3のうち少なくとも1つの基に水酸基が含まれている場合には、α位、β位、γ位、及びδ位の原子には、いずれも水酸基が結合しておらず、他の位置の原子に水酸基が結合していてもよい。すなわち、一般式(1)で表されるアミノエステル化合物は、α-ヒドロキシエステル化合物、β-ヒドロキシエステル化合物、γ-ヒドロキシエステル化合物、及びδ-ヒドロキシエステル化合物のいずれに該当しなくてもよい。なお、一般式(1)で表されるアミノエステル化合物が、α-ヒドロキシエステル化合物、β-ヒドロキシエステル化合物、γ-ヒドロキシエステル化合物、又はδ-ヒドロキシエステル化合物である場合には、α位、β位、γ位、及びδ位に結合した水酸基と、エステル基とに金属触媒が配位することによって、カルボニル炭素に対して高選択的にアミノ化合物が反応する。前記一般式(11)においても、同様である。
【0026】
このような保護基の典型的なものとしては、置換または非置換の、アシル基、カルバメート、アミド、アリール基、アラルキル基、アルケニル基などが挙げられる。なお、保護基の名称としては、アミノ基のN原子に結合している基の名称の他、N原子を含めた名称も存在しており、以下の名称においても両者が含まれている。アシル基の具体例としては、ベンゾイル基(Bz)、オルトメトキシベンゾイル基、2,6-ジメトキシベンゾイル基、パラメトキシベンゾイル基(PMPCO)、2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル基(Troc)、アリルオキシカルボニル基(Alloc)、シンナモイル基、フタロイル基(Phth)、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基(Fmoc)などが挙げられる。カルバメートの具体例としては、tert-ブトキシカルボニル基(Boc)、ベンジルオキシカルボニル基(Cbz)、メチルカルバメート、エチルカルバメート、2-トリメチルシリルエチルカルバメート、2-フェニルエチルカルバメート、1-(1-アダマンチル)-1-メチルエチルカルバメート、1-(3,5-ジ-t-ブチルフェニル)-1-メチルエチルカルバメート、ビニルカルバメート、アリルカルバメート、N-ヒドロキシピペリジニルカルバメート、p―メトキシベンジルカルバメート、p-ニトロベンジルカルバメート、[2-(1,3-ジチアニル)メチルカルバメート、m-ニトロフェニルカルバメート、3,5-ジメトキシベンジルカルバメート、o-ニトロベンジルカルバメートなどが挙げられる。アミドの具体例としては、アセトアミド、o-(ベンゾイロキシメチル)ベンズアミド、2-[(t-ブチルジフェニルシロキシ)メチル]ベンズアミド、2-トルエンスルホンアミド、4-トルエンスルホンアミド、2-ニトロベンゼンスルホンアミド、4-ニトロベンゼンスルホンアミド、tert-ブチルスルフィニルアミド、4-トルエンスルホンアミド、2-(トリメチルシリル)エタンスルホンアミド、ベンジルスルホンアミドなど、芳香族または複素環式のカルボン酸、又はスルホン酸から誘導されたアシル基が挙げられる。アリール基の具体例としては、2,4-ジニトロフェニル基(2,4-DNP)などが挙げられる。アラルキル基の具体例としては、ベンジル基(Bn)、フェネチル基などが挙げられる。アルケニル基の具体例としては、ビニル基、アリル基、ヘキセニル基などが挙げられる。
【0027】
また、脱保護の手法の観点からは、水素化による脱保護、弱酸による脱保護、フッ素イオンによる脱保護、一電子酸化剤による脱保護、ヒドラジンによる脱保護、酸素による脱保護などのうち、少なくとも1種の手法により脱保護可能な保護基が挙げられる。
【0028】
好ましい保護基の具体例としては、tert-ブトキシカルボニル基(Boc)、ベンジル基(Bn)、ベンジルオキシカルボニル基(Cbz)、ベンゾイル基(Bz)、2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル基(Troc)、アリルオキシカルボニル基(Alloc)、2,4-ジニトロフェニル基(2,4-DNP)、フタロイル基(Phth)、パラメトキシベンゾイル基(PMPCO)、シンナモイル基、トルエンスルホニル基(Ts)、2又は4-ニトロベンゼンスルホニル基(Ns)、又は9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基(Fmoc)などが挙げられる。
【0029】
また、本発明において、アミノ化合物としては、アミノエステル化合物(1)又はアミノカルボン酸化合物(11)と反応してアミド基を形成できるものであれば特に制限されないが、エステル基との反応性が高いことから、例えば、1級アミン、2級アミンが好ましい。
【0030】
好ましいアミノ化合物を一般式で表すと、例えば、下記一般式(3)で表すことができる。
【0031】
【0032】
一般式(3)で表されるアミノ化合物(以下、アミノ化合物(3)ということがある)において、基Ra及び基Rbは、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい脂肪族基、置換基を有していてもよい芳香族基、置換基を有していてもよい脂環式基、または置換基を有していてもよい複素環式基を示す。また、RaとRbは、結合する窒素原子と共に飽和または不飽和の複素環を形成してもよい。該複素環基には置換基を有していてもよい。
【0033】
基Ra及び基Rb及び結合する窒素原子と共に形成した複素環における前記置換基としては、アミノエステル化合物(1)又はアミノカルボン酸化合物(11)と反応してアミド基を形成できるものであれば特に制限されず、それぞれ独立に、例えば、アルキル基(例えば、炭素数が1~10の直鎖または分枝鎖状のアルキル基)、アルケニル基(例えば、炭素数が1~10の直鎖または分枝鎖状のアルケニル基)、アルキニル基(例えば、炭素数が1~10の直鎖または分枝鎖状のアルキニル基)、アルコキシ基(例えば、炭素数が1~10の直鎖または分枝鎖状のアルコキシ基)、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、チオール基、シアノ基、炭素数が1~10の直鎖または分枝鎖状のアルキルチオ基、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよいアミド基、置換基を有していてもよいグアジニノ基、基-COOR1(R1は前記に同じ)、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよい複素環基などが挙げられる。(ここで、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよいアミド基、置換基を有していてもよいグアジニノ基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよい複素環基における置換基は、前記基Ra及び基Rbの定義に同じである。アリール基としては、フェニル基等が挙げられる。複素環基としては、インドリル基、イミダゾリル基等が挙げられる。)また、基Ra及び基Rb及び連結して形成した環構造における脂肪族基、芳香族基、脂環式基、または複素環式基が、置換基を有する場合、置換基の数としては特に制限されないが、それぞれ独立に、例えば、1~10、1~5、1~3、1~2、1が挙げられる。また、置換基を複数有する場合、置換基は、1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。なお、脂肪族基及び芳香族基は、それぞれ、ヘテロ原子を含んでいてもよい。また、脂肪族基、脂環式基、及び複素環式基は、それぞれ、飽和であってもよいし、不飽和であってもよい。
【0034】
アミノ化合物(3)の基Ra及び基Rbは、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数が1~20の脂肪族基、置換基を有していてもよい炭素数が4~20の芳香族基、置換基を有していてもよい炭素数が3~20の脂環式基、または置換基を有していてもよい炭素数が2~20の複素環式基であることが好ましく、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数が1~10の脂肪族基、置換基を有していてもよい炭素数が4~10の芳香族基、置換基を有していてもよい炭素数が3~10の脂環式基、または置換基を有していてもよい炭素数が2~10の複素環式基であることが好ましい。ただし、基Ra及び基Rbが共に水素原子である場合(すなわち、アミノ化合物(3)がアンモニアである場合)については、低沸点であるため、好ましくない。なお、基Ra及び基Rbの置換基については、それぞれ、前述の通りである。
【0035】
RaとRbとが結合する窒素原子と共に形成する飽和または不飽和の複素環の具体例としては、ピロリニル、ピロリル、2,3-ジヒドロ-1H-ピロリル、ピぺリジニル、ピペラジニル、ホモピペラジニル、モルホリノ、チオモルホリノ、1,2,4,6-テトラヒドロピリジル、ヘキサヒドロピリミジル、ヘキサヒドロピリダジル、1,2,4,6-テトラヒドロピリジル、1,2,4,6-テトラヒドロピリダジル、3,4-ジヒドロピリジル、イミダゾリル、4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾリル、2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾリル、ピラゾリル、4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾリル、2,3-ジヒドロ-1H-ピラゾリル、オキサゾリル、4,5-ジヒドロ-1,3-オキサゾリル、2,3-ジヒドロ-1,3-オキサゾリル、2,5-ジヒドロ-1,3-オキサゾリル、チアゾリル、4,5-ジヒドロ-1,3-チアゾリル、2,3-ジヒドロ-1,3-チアゾリル、2,5-ジヒドロ-1,3-チアゾリル等の5~6員環の飽和または不飽和の複素環基を挙げることができる。
【0036】
本発明においては、アミノ化合物が、アミノ酸もしくはその塩、又はアミノ酸エステルもしくはその塩であることが特に好ましい。本発明のアミド化合物の製造方法は、高立体化学選択的にアミド化合物を製造することができるため、アミノエステル化合物(1)又はアミノカルボン酸化合物(11)と、不斉中心を有する、アミノ酸もしくはその塩、又はアミノ酸エステルもしくはその塩とを反応させることにより、高立体化学選択的にペプチドを合成することができる。前述のアミノ化合物(3)には、アミノ酸もしくはその塩、又はアミノ酸エステルもしくはその塩が含まれる。
【0037】
アミノ酸としては、特に制限されず、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、これらのうち少なくとも1種を含むアミノ酸の多量体(通常、二量体から十量体)などの公知のアミノ酸が挙げられる。また、アミノ酸のエステルとしては、これらのアミノ酸のカルボキシル基が、炭素数が1~10の直鎖または分枝鎖状のアルキル基、プロパルギル基等の炭素数が1~10の直鎖または分枝鎖状のアルキニル基、アリール基などでエステル化されたものなどが挙げられる。また、アミノ酸の塩またはアミノ酸エステルの塩としては、それぞれ、これらのアミノ酸又はアミノ酸エステルの塩酸塩、硫酸塩、シュウ酸塩、リン酸塩などが挙げられる。
【0038】
本発明のアミド化合物の製造方法において、例えば、アミノエステル化合物(1)と、アミノ化合物(3)との反応は、下記反応式により示すことができる。本発明では、下記の反応により、アミド化合物(4)を好適に製造することができる。
【0039】
【0040】
また、本発明のアミド化合物の製造方法において、例えば、アミノカルボン酸化合物(11)と、アミノ化合物(3)との反応は、下記反応式により示すことができる。本発明では、下記の反応によっても、アミド化合物(4)を好適に製造することができる。下記の反応においては、アミノカルボン酸化合物(11)のカルボキシ基を、金属試薬を用いて、アミノ化合物(3)と反応し得る金属カルボキシレートとすることで、アミド化合物(4)が生成する。
【0041】
【0042】
本発明のアミド化合物の製造方法におけるアミノエステル化合物(1)とアミノ化合物とのモル比としては、特に制限されないが、アミノエステル化合物(1)1モルに対して、アミノ化合物を0.1モル~10モル程度、好ましくは0.1モル~5モル程度、1モル~10モル程度、好ましくは1モル~5モル程度使用すればよい。また、本発明のアミド化合物の製造方法におけるアミノカルボン酸化合物(11)とアミノ化合物とのモル比についても、特に制限されず、アミノカルボン酸化合物(11)1モルに対して、アミノ化合物を0.1モル~10モル程度、好ましくは0.1モル~5モル程度、1モル~10モル程度、好ましくは1モル~5モル程度使用すればよい。
【0043】
ただし、アミド化工程の後、得られたアミド化合物(例えば、上記一般式(4)で表される化合物)において、一般式(1)で表されるアミノエステル化合物又は一般式(11)で表されるアミノカルボン酸化合物に由来するβ位の基PGをアミノ基に変換する脱保護工程を経て、アミノ化合物を製造し、当該アミノ化合物を、上記アミノエステル化合物(1)又は一般式(11)で表されるアミノカルボン酸化合物と反応させてジペプチドを製造する場合や、これを繰り返して、複数のペプチド結合を形成してオリゴペプチドを製造する際には、反応に用いるアミノ化合物に対して、アミノエステル化合物又はアミノカルボン酸化合物を過剰に用いる方が、コスト的には有利である。すなわち、本発明において、アミノエステル化合物(1)及びアミノカルボン酸化合物(11)は、アミノ化合物に順次結合させるアミノ酸単位として利用することができ、アミノ酸から誘導されるアミノエステル化合物(1)又はアミノカルボン酸化合物(11)は、比較的安価に用意することができる。
【0044】
本発明のアミド化合物の製造方法において、触媒として用いられる金属化合物としては、アミノエステル化合物のエステル基をアミド化するアミド化工程(または、アミノカルボン酸化合物のカルボキシ基から生成した金属カルボキシレートをアミド化するアミド化工程)を促進できるものであれば、特に制限されない。金属化合物としては、ルイス酸として機能する金属化合物が好ましい。
【0045】
金属化合物を構成している金属としては、元素周期律表の第2族から第15族に位置する幅広い金属が挙げられる。金属化合物を構成している金属の具体例としては、ホウ素、マグネシウム、アルミニウム、ガリウム、インジウム、珪素、カルシウム、鉛、ビスマス、水銀の他、遷移金属、ランタノイ系元素が挙げられる。遷移金属の具体例としては、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、スズ、銀、カドミウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、プラチナ、金、タリウムなどが挙げられる。また、ランタノイ系元素の具体例としては、ランタン、セリウム、ネオジム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウムなどが挙げられる。これらの中でも、優れた反応促進効果を発揮し、高立体化学選択的にアミド化合物を製造する観点から、タンタル、ホウ素、バナジウム、タングステン、ハフニウム、ニオブ、ネオジム、鉄、鉛、コバルト、銅、銀、パラジウム、スズ、タリウムなどが特に好ましい。
【0046】
触媒は、これらの金属化合物を1種類単独で含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。
【0047】
特に、アミノエステル化合物(1)がオキシム化合物(11)である場合に、優れた反応促進効果を発揮し、高立体化学選択的にアミド化合物を製造する観点からは、これらの中でも、タンタル化合物、ニオブ化合物、バナジウム化合物、タングステン化合物、ハフニウム化合物、ネオジム化合物、鉄化合物、鉛化合物、コバルト化合物、及び銅化合物の少なくとも1種の金属化合物が触媒に含まれることが好ましく、タンタル化合物及びニオブ化合物の少なくとも1種が触媒に含まれることがより好ましい。
【0048】
金属化合物の配位子としては、金属の種類に応じて適宜選択される。配位子の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などの炭素数が1~10の直鎖または分枝鎖状のアルコキシ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子;炭素数が1~10のアリロキシ基、アセチルアセトナト基(acac)、アセトキシ基(AcO)、トリフルオロメタンスルホナート基(TfO)、炭素数が1~10の直鎖または分枝鎖状のアルキル基、フェニル基、酸素原子、硫黄原子、基:-SR、基:-NRR’、シクロペンタジエニル(Cp)基などが挙げられる。基:-SRのRは、炭素数が1~10程度直鎖または分枝鎖状の、アルキル基、アルケニル基、アリール基などである。基:-NRR’のR及びR’は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数が1~10程度直鎖または分枝鎖状の、アルキル基、アルケニル基、アリール基などである。
【0049】
例えば、好ましいタンタル化合物の具体例としては、TaX1
5(但し、5つのX1は、それぞれ独立に、前記で例示した配位子である。通常、5つのX1は同じ基である)で表されるタンタル化合物が挙げられる。X1のアルコキシ基としては、好ましくは炭素数1~10の直鎖または分枝鎖状のアルコキシ基、より好ましくは炭素数1~5の直鎖または分枝鎖状のアルコキシ基、さらに好ましくは炭素数1~3の直鎖または分枝鎖状のアルコキシ基が挙げられる。また、アリロキシ基としては、好ましくは炭素数1~20のアリロキシ基、より好ましくは炭素数1~15のアリロキシ基、さらに好ましくは炭素数1~10のアリロキシ基が挙げられる。ハロゲン原子としては、好ましくは塩素原子、臭素原子が挙げられる。これらの中でも、タンタルアルコキシド化合物(例えば、X1がアルコキシ基)であることが好ましく、例えばTa(OMe)5、Ta(OEt)5、Ta(OBu)5、Ta(NMe2)5、Ta(acac)(OEt)4、TaCl5、TaCl4(THF)、TaBr5などが好ましい。
【0050】
また、好ましいニオブ化合物の具体例としては、NbX2
5(但し、5つのX2は、それぞれ独立に、前記で例示した配位子である。通常、5つのX2は同じ基である)で表されるニオブ化合物が挙げられる。X2のアルコキシ基としては、好ましくは炭素数1~10の直鎖または分枝鎖状のアルコキシ基、より好ましくは炭素数1~5の直鎖または分枝鎖状のアルコキシ基、さらに好ましくは炭素数1~3の直鎖または分枝鎖状のアルコキシ基が挙げられる。また、アリロキシ基としては、好ましくは炭素数1~20のアリロキシ基、より好ましくは炭素数1~15のアリロキシ基、さらに好ましくは炭素数1~10のアリロキシ基が挙げられる。ハロゲン原子としては、好ましくは塩素原子、臭素原子が挙げられる。これらの中でも、ニオブアルコキシド化合物(例えば、X2がアルコキシ基)であることが好ましく、例えばNbCl4(THF)、NbCl5、Nb(OEt)5などが好ましい。
【0051】
また、好ましいハフニウム化合物の具体例としては、例えば、HfX3
4(4つのX3は、それぞれ独立に、前記で例示した配位子である。)で表されるハフニウム化合物が挙げられる。X3のアルコキシ基としては、好ましくは炭素数1~10の直鎖または分枝鎖状のアルコキシ基、より好ましくは炭素数1~5の直鎖または分枝鎖状のアルコキシ基、さらに好ましくは炭素数1~4の直鎖または分枝鎖状のアルコキシ基が挙げられる。また、アリロキシ基としては、好ましくは炭素数1~20のアリロキシ基、より好ましくは炭素数1~15のアリロキシ基、さらに好ましくは炭素数1~10のアリロキシ基が挙げられる。ハロゲン原子としては、好ましくは塩素原子、臭素原子が挙げられる。これらの中でも、例えば、HfCp2Cl2などが好ましい。
【0052】
また、好ましい銅化合物の具体例としては、CuX4
2(但し、2つのX4は、それぞれ独立に、前記で例示した配位子である。通常、2つのX4は同じ基である)、CuX5(但し、X5は、前記で例示した配位子である。)で表される銅化合物が挙げられる。これらの中でも、例えばCu(OAc)2などが好ましい。
【0053】
また、好ましいパラジウム化合物の具体例としては、PdX6
2(但し、2つのX6は、それぞれ独立に、前記で例示した配位子である。通常、2つのX6は同じ基である)で表されるパラジウム化合物が挙げられる。これらの中でも、例えばPd(OAc)2などが好ましい。
【0054】
触媒は、担体に担持されていてもよい。触媒を担持する担体としては、特に制限されず、公知のものが使用できる。また、触媒を担体に担持させる方法としても、公知の方法が採用できる。
【0055】
触媒の使用量としては、特に制限されないが、アミノエステル化合物(1)を100mol%(又はアミノカルボン酸化合物(11)100mol%)とした場合に、30mol%以下であることが好ましく、0.1mol%~20mol%程度であることがより好ましい。
【0056】
また、アミノカルボン酸化合物のカルボキシ基をアミノ化合物と反応する金属カルボキシレートとするために用いられる金属試薬としては、特に制限されないが、アミノカルボン酸化合物と共に混合されることで、カルボキシ基を金属カルボキシレートに変換できるものが好ましい。金属試薬としては、公知のものが使用でき、例えば、N-トリメチルシリルイミダゾール、アリールホウ酸(ArB(OH)2)、塩化ジルコニウム(ZrCl4)、ジルコノセンジクロリド(Cp2ZrCl2)などが挙げられる。
【0057】
金属試薬の使用量としては、特に制限されないが、アミノカルボン酸化合物(11)100質量部に対して、例えば100~300質量部程度、好ましくは150~220質量部程度が挙げられる。
【0058】
本発明のアミド化合物の製造方法は、反応効率を高める観点から、塩基の存在下で行ってもよい。塩基としては、特に制限されないが、例えば、トリエチルアミン(Et3N)、ジイソプロピルアミン(i-Pr2NH)、ジイソプロピルエチルアミン(i-Pr2EtN)等の炭素数1~10の直鎖または分枝鎖状のアルキル基を1~3個有するアミンなどが挙げられる。
【0059】
塩基の使用量としては、特に制限されないが、アミノエステル化合物(1)を100mol%(又はアミノカルボン酸化合物(11)100mol%)とした場合に、20~120mol%程度であることが好ましく、50~100mol%程度であることがより好ましい。
【0060】
本発明のアミド化合物の製造方法は、反応効率を高める観点から、有機溶媒中で行ってもよい。有機溶媒としては、特に制限されないが、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ペンタン、石油エーテル、1-メチルテトラヒドロフラン(1-MeTHF)、ジイソプロピルエーテル(i-Pr2O)、ジエチルエーテル(Et2O)、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)等のエーテル類、酢酸エチル(AcOEt)等のエステル類、酢酸等の有機酸などが挙げられる。有機溶媒は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。また、反応系中のアミノエステル化合物(1)及びアミノカルボン酸化合物(11)の濃度としては、特に制限されないが、反応効率を高める観点からは、2体積%~70体積%とすることが好ましい。
【0061】
また、本発明のアミド化合物の製造方法における反応温度としては、特に制限されないが、反応効率を高める観点から、0℃~150℃程度であることが好ましい。また、反応時間としては、特に制限されないが、例えば10分間~80時間程度が挙げられる。
【0062】
本発明のアミド化合物の製造方法は、常圧下、減圧下、加圧下のいずれでも行うことができるが、反応を簡便に行う観点からは、常圧下で行えばよい。また、アミド化合物の製造は、アルゴン、窒素などの不活性ガスの雰囲気下に行うことが好ましい。
【0063】
本発明のアミド化合物の製造方法は、配位子の存在下行ってもよい。配位子としては、特に制限されないが、例えば、2,2’-ビピリジン、8-ヒドロキシキノリン、[2,2’-ビスキノリン]-8,8’-ジオール、2,2':6',2'':6'',2'''-クォーターピリジンなどが挙げられる。配位子のヘテロ原子の位置によって、触媒として用いる金属化合物の金属の配位形態が異なり、さまざまな距離でのアミド化反応が進行する。
【0064】
配位子の使用量としては、特に制限されないが、アミノエステル化合物(1)を100mol%(又はアミノカルボン酸化合物(11)100mol%)とした場合に、20mol%以下であることが好ましく、0.1mol%~10mol%程度であることがより好ましい。
【0065】
かくして、本発明の製造方法により、アミド化合物が、好適に生成される。
【0066】
本発明のアミド化合物の製造方法によって生成されたアミド化合物は、常法に従って精製することができ、単離して種々の用途に使用することができる。
【0067】
また、本発明のアミド化合物の製造方法においては、前述のアミド化工程の後、得られたアミド化合物において、前記一般式(1)で表されるアミノエステル化合物又は前記一般式(11)で表されるアミノカルボン酸化合物に由来する保護基PGを脱保護してアミノ基に変換する脱保護工程をさらに備えていてもよい。当該脱保護工程により、アミド化合物にアミノ基を導入することができる。
【0068】
さらに、脱保護還元工程によりアミノ基が導入されたアミド化合物(すなわち、アミノ基を有するアミド化合物)を用い、前述の金属化合物からなる触媒の存在下に、アミノエステル化合物(1)と、当該アミノ基を有するアミド化合物とを反応させて、アミノエステル化合物(1)のエステル基をアミド化するアミド化工程を行うことができる。同様に、脱保護還元工程によりアミノ基が導入されたアミド化合物(すなわち、アミノ基を有するアミド化合物)を用い、前述の金属化合物からなる触媒及び金属試薬の存在下に、アミノカルボン酸化合物(11)と、当該アミノ基を有するアミド化合物とを反応させて、金属カルボキシレートをアミド化するアミド化工程を行うことができる。
【0069】
このように、本発明においては、繰り返して付加させるアミノエステル化合物(1)又はアミノカルボン酸化合物(11)の構造を種々選択してアミド化工程を行うことにより、所望の構造を有するアミノ酸単位がペプチド結合で連結されたアミン化合物を合成し、所望のオリゴペプチドを高立体化学選択的に製造することができる。
【0070】
アミノ基に保護基を導入する手法と、当該保護基を脱保護してアミノ基とする手法は、保護基に応じて多種多様なものが知られている。よって、脱保護の方法としては、特に制限されず、用いた保護基に応じた脱保護の手法を用いることができる。脱保護の手法としては、前述の通り、水素化による脱保護、弱酸による脱保護、フッ素イオンによる脱保護、一電子酸化剤による脱保護、ヒドラジンによる脱保護、酸素による脱保護などが挙げられる。
【0071】
ここで、水素化による脱保護には、(a)水素ガスの存在下に、還元触媒として、パラジウム、パラジウム-炭素、水酸化パラジウム、水酸化パラジウム-炭素等のなどの金属触媒を用いて還元して脱保護する方法、(b)パラジウム、パラジウム-炭素、水酸化パラジウム、水酸化パラジウム-炭素等のなどの金属触媒の存在下、水素化ホウ素ナトリウム、水素化アルミニウムリチウム、水素化ホウ素リチウム、ジボラン等の水素化還元剤を用いて還元して脱保護する方法等が挙げられる。
【0072】
本発明においては、下記反応式に従い、下記一般式(4)で表されるアミド化合物の保護基PGを脱保護することにより、下記一般式(5)で表されるアミノ化合物を製造することができる。
【0073】
【0074】
一般式(5)において、基R2、R3、Ra、Rbは、前記の一般式(4)と同じである。
【0075】
保護基PGを脱保護する方法としては、前述の各種脱保護の手法が挙げられ、好ましくは水素化による脱保護が挙げられる。水素化に脱保護の条件については、保護基の種類に応じて適した条件が公知であり、適宜選択することができる。例えば、水素化による脱保護に用いられる触媒としては、前述のものが挙げられる。また、触媒の使用量としては、特に制限されないが、一般式(4)で表されるアミド化合物を100mol%とした場合に、1~20mol%程度とすればよい。また、溶媒としては、メタノール、エタノール、2-プロパノールなどのアルコール類、酢酸エチルなどのエステル類、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサンなどのエーテル類などが挙げられる。反応温度としては、通常、0~100℃程度が挙げられる。反応時間としては、通常、1~48時間程度が挙げられる。また、水素ガスの圧力としては、通常、1~10気圧程度が挙げられる。
【実施例】
【0076】
以下に実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。但し本発明は実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例において、それぞれ、catは触媒、r.t.は室温(約23℃)を意味する。また、特に断りの無い限り、収率は、オクタンを内部標準としたGC分析法、または、クロマトを用いて単離することにより求めた値である。ジアステレオ選択性は、1H NMR分析法により求めた値である。また、生成物の同定は、1H NMR分析法及び液体クロマトグラム質量分析法(LC-MS)により行った。
【0077】
<実施例1>
下記式に示すように、窒素ガス雰囲気下、塩基としてのトリエチルアミン(Et3N)(2.5当量)、触媒 (10mol%)の存在下、アミノ化合物としてのL-アラニンt-ブチルエステル塩酸塩(L-Ala-Ot-Bu・HCl、0.5mmol)と、ベンジル基(Bn)でアミノ基が保護されたL-アラニンメチルエステル塩酸塩1(Bn-L-Ala-OMe)(1.5当量)とを、温度60℃で反応させて、下記式で表されるアミド化合物2(ジペプチド前駆体)を合成した。収率を表1に示す。
【0078】
【0079】
【0080】
なお、表1において、収率は、オクタンを内部標準としたGC分析法により測定した値である(注釈a)
【0081】
<実施例2>
下記式に示すように、窒素ガス雰囲気下、塩基としてのトリエチルアミン(Et3N)を所定の量を適宜加え、触媒としてTa(OEt)5(10mol%)の存在下、アミノ化合物としてのL-アラニンt-ブチルエステル塩酸塩(L-Ala-Ot-Bu・HCl、0.5mmol)と、ベンジル基(Bn)でアミノ基が保護されたL-アラニンメチルエステル塩酸塩1(Bn-L-Ala-OMe)(1.5当量)とを、温度60℃、24時間反応させて、下記式で表されるアミド化合物2(ジペプチド前駆体)を合成した。収率を表2に示す。
【0082】
【0083】
【0084】
なお、表2において、収率は、単離収率である(注釈a)。
【0085】
<実施例3>
下記式に示すように、窒素ガス雰囲気下、塩基としてのトリエチルアミン(Et3N)(1.0当量)、表3に記載の触媒(10mol%)の存在下、アミノ化合物としてのL-アラニンt-ブチルエステル塩酸塩(L-Ala-Ot-Bu・HCl、0.5mmol)と、ベンゾイル基(Bz)でアミノ基が保護されたL-アラニンメチルエステル3(Bz-L-Ala-OMe)(表3に記載の量)とを、表3に記載の温度及び時間の条件で反応させて、下記式で表されるアミド化合物4(ジペプチド前駆体)を合成した。収率を表3に示す。
【0086】
【0087】
【0088】
なお、表3において、収率は、単離収率である(注釈a)。
【0089】
<実施例4>
下記式に示すように、窒素ガス雰囲気下、塩基としてのトリエチルアミン(Et3N)(1.0当量)、表4に記載の触媒(10mol%)の存在下、アミノ化合物としてのL-アラニンt-ブチルエステル塩酸塩(L-Ala-Ot-Bu・HCl、0.5mmol)と、パラメトキシベンゾイル基(PMPCO)でアミノ基が保護されたL-アラニンメチルエステル5(PMPCO-L-Ala-OMe)(1.5当量)とを、表4に記載の温度及び時間の条件で反応させて、下記式で表されるアミド化合物(ジペプチド前駆体)を合成した。収率を表4に示す。
【0090】
【0091】
【0092】
なお、表4において、収率は、単離収率である(注釈a)。
【0093】
<実施例5>
下記式に示すように、窒素ガス雰囲気下、塩基としてのトリエチルアミン(Et3N)(1.0当量)、触媒 (10mol%)の存在下、アミノ化合物としてのL-アラニンt-ブチルエステル塩酸塩(L-Ala-Ot-Bu・HCl、0.5mmol)と、ベンジルオキシカルボニル基(Cbz)でアミノ基が保護されたL-アラニンメチルエステル7(Cbz-L-Ala-OMe)(表5の量)とを、表5に記載の温度及び時間の条件で反応させて、下記式で表されるアミド化合物8(ジペプチド前駆体)を合成した。収率を表5に示す。
【0094】
【0095】
【0096】
なお、表5において、収率は、単離収率である(注釈a)。
【0097】
<比較例1>
触媒を用いなかったこと以外は、実施例5のエントリー3と同様にしてアミド化反応を行った。その結果、上記式8で表されるアミド化合物の収率は3%であった。
【0098】
<実施例6>
下記式に示すように、窒素ガス雰囲気下、塩基としてのトリエチルアミン(Et3N)(1.0当量)、表6に記載の触媒(10mol%)の存在下、アミノ化合物としてのL-アラニンt-ブチルエステル塩酸塩(L-Ala-Ot-Bu・HCl、0.5mmol)と、ブトキシカルボニル基(Boc)でアミノ基が保護されたL-アラニンメチルエステル9(Boc-L-Ala-OMe)(表6の量)とを、表6に記載の温度及び時間の条件で反応させて、下記式で表されるアミド化合物10(ジペプチド前駆体)を合成した。収率を表6に示す。
【0099】
【0100】
【0101】
なお、表6において、収率は、単離収率である(注釈a)。
【0102】
<実施例7>
下記式に示すように、窒素ガス雰囲気下、塩基としてのトリエチルアミン(Et3N)(1.0当量)、触媒 (10mol%)の存在下、アミノ化合物としてのL-アラニンt-ブチルエステル塩酸塩(L-Ala-Ot-Bu・HCl、0.5mmol)と、ブトキシカルボニル基(Boc)でアミノ基が保護されたL-アラニンメチルエステル(Boc-L-Ala-OMe)(1.5当量)とを、マイクロウェーブ下(MW)に、表7に記載の温度及び時間の条件で反応させて、下記式で表されるアミド化合物10(ジペプチド前駆体)を合成した。収率を表7に示す。
【0103】
【0104】
【0105】
なお、表7において、収率は、オクタンを内部標準としたGC分析法により測定した値である(注釈a)。
【0106】
<実施例8>
下記式に示すように、窒素ガス雰囲気下、塩基としてのトリエチルアミン(Et3N)、触媒としてのTa(OEt)5(5-10mol%)存在下、アミノ化合物としてのL-アラニンt-ブチルエステル塩酸塩(L-Ala-Ot-Bu・HCl、0.5mmol)と、2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル基(Troc)でアミノ基が保護されたL-アラニンメチルエステル11(Troc-L-Ala-OMe)(1.5当量)とを、表8に記載の温度及び時間の条件で反応させて、下記で表されるアミド化合物12(ジペプチド前駆体)を合成した。収率を表8に示す。
【0107】
【0108】
【0109】
なお、表8において、収率は、単離収率である(注釈a)。
【0110】
<実施例9>
下記式に示すように、窒素ガス雰囲気下、塩基としてのトリエチルアミン(Et3N)、触媒としてのTa(OEt)5(10mol%)の存在下、アミノ化合物としてのL-アラニンt-ブチルエステル塩酸塩(L-Ala-Ot-Bu・HCl、0.5mmol)と、フタロイル基(Phth)でアミノ基が保護されたL-アラニンメチルエステル(Phth-L-Ala-OMe)(1.5当量)とを、温度60℃、24時間反応させて、下記で表されるアミド化合物(ジペプチド前駆体)を合成した(収率60%)。
【0111】
【0112】
<実施例10>
下記の各反応条件により、水素ガス存在下、各種アミド化合物の保護基(Cbz)の脱保護反応を行った。その結果、収率は、全て99%以上(Crude)であった。
【0113】
【0114】
<実施例11>
下記の各反応条件により、Ta(OMe)5触媒及びシリル化剤(TMS-イミダゾール)の存在下に、アミノカルボン酸化合物と、アミノ化合物とを反応させて、アミド化合物を製造した。各反応条件おける収率を併記する。なお、下記反応式において、L-AlaはL-アラニン残基、L-IleはL-イソロイシン残基、L-PheはL-フェニルアラニン残基、L-LeuはL-ロイシン残基、L-ValはL-バリン残基を意味する。
【0115】
【0116】
なお、実施例11において、収率は、単離収率である。ジアステレオ選択性は、1H NMR分析法により求めた値である。
【0117】
<実施例12>
下記の各反応条件により、Ta(OMe)5触媒及びシリル化剤(TMS-イミダゾール)の存在下に、アミノカルボン酸化合物と、アミノ化合物とを反応させて、アミド化合物を製造した。各反応条件おける収率を併記する。なお、下記反応式において、L-AlaはL-アラニン残基、L-IleはL-イソロイシン残基、L-PheはL-フェニルアラニン残基、L-LeuはL-ロイシン残基はL-ロイシン残基を意味する。また、Boc-L-Tle-OHは、N-(tert-ブトキシカルボニル)-L-tert-ロイシンである。
【0118】
【0119】
なお、実施例12において、収率は、単離収率である。ジアステレオ選択性は、1H NMR分析法により求めた値である。
【0120】
<実施例13>
下記の各反応条件により、Ta(OMe)5触媒及び各種配位子(リガンド)の存在下に、アミノエステル化合物と、アミノ化合物とを反応させて、アミド化合物を製造した。配位子毎の収率を反応式の下に示す。なお、配位子を用いなかった場合の収率は41%である。下記反応式において、L-AlaはL-アラニン残基を意味する。また、Boc-(L-Ala)2-OMeは、N-(tert-ブトキシカルボニル)-L-アラニン-L-アラニンメチルエステルである。
【0121】
【0122】
なお、実施例13において、収率は、単離収率である。
【0123】
<実施例14>
下記の各反応条件により、Ta(OMe)5触媒及び配位子(リガンド)の存在下に、アミノエステル化合物と、アミノ化合物とを反応させて、アミド化合物を製造した。生成物毎の収率を下記式の下に示す。なお、下記反応式において、L-AlaはL-アラニン残基、ValはL-バリン残基、LeuはL-ロイシン残基、ILeはL-イソロイシン残基、Glyはグリシン残基、PheはL-フェニルアラニン残基、Thr(OtBu)はO-(tert-ブチル)L-スレオニン残基を意味する。
【0124】
【0125】
なお、実施例14において、収率は、単離収率である。
【0126】
<実施例15>
下記の各反応条件により、チタン触媒(Cp2TiCl2又は(i-PrO)2TiCl2)及びシリル化剤(TMS-イミダゾール)の存在下に、アミノカルボン酸化合物と、アミノ化合物とを反応させて、アミド化合物を製造した。なお、下記反応式において、L-GlyはL-グリシン残基、L-LeuはL-ロイシン残基、L-Pheはフェニルアラニン残基を意味する。
【0127】
【0128】
なお、実施例15において、収率は、単離収率である。ジアステレオ選択性は、1H NMR分析法により求めた値である。
<実施例16>
下記の各反応条件により、Pd(OAc)2触媒及び各種配位子(リガンド)の存在下に、アミノエステル化合物と、アミノ化合物とを反応させて、アミド化合物を製造した。配位子毎の収率を反応式の表9に示す。なお、配位子を用いなかった場合の収率は35%である。
【0129】
【0130】
【0131】
なお、表9において、収率は、単離収率である。
【0132】
<実施例17>
下記の各反応条件により、各種触媒の存在下に、アミノエステル化合物と、アミノ化合物とを反応させて、アミド化合物を製造した。触媒毎の収率を反応式の表10に示す。
【0133】
【0134】
【0135】
なお、表10において、収率は、単離収率である。ジアステレオ選択性は、1H NMR分析法により求めた値である。
【0136】
<実施例18>
下記の反応条件により、Ta(OMe)5触媒の存在下に、アミノエステル化合物と、各種アミノ化合物とを反応させて、各種アミド化合物を製造した。生成物毎の収率を反応式の下に示す。
【0137】
【0138】
なお、実施例18において、収率は、単離収率である。
【0139】
<実施例19>
下記の反応条件により、Ta(OMe)5触媒の存在下に、アミノエステル化合物と、各種アミノ化合物とを反応させて、各種アミド化合物を製造した。生成物毎の収率を反応式の下に示す。
【0140】
【0141】
なお、実施例19において、収率は、単離収率である。
【0142】
<実施例20>
下記の反応条件により、Ta(OMe)5触媒の存在下に、アミノエステル化合物と、各種アミノ化合物とを反応させて、各種アミド化合物を製造した。生成物毎の収率を反応式の下に示す。
【0143】
【0144】
なお、実施例20において、収率は、単離収率である。