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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-10
(45)【発行日】2022-08-19
(54)【発明の名称】超伝導装置及び磁石装置
(51)【国際特許分類】
   H01F 6/04 20060101AFI20220812BHJP
【FI】
H01F6/04
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019540899
(86)(22)【出願日】2018-08-28
(86)【国際出願番号】 JP2018031681
(87)【国際公開番号】W WO2019049720
(87)【国際公開日】2019-03-14
【審査請求日】2021-06-02
(31)【優先権主張番号】P 2017171907
(32)【優先日】2017-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、文部科学省、科学技術試験研究委託事業、東工大元素戦略拠点(TIES)、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100187388
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 天光
(72)【発明者】
【氏名】山本 明保
(72)【発明者】
【氏名】島崎 七海
【審査官】古河 雅輝
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-195310(JP,A)
【文献】特開平7-211538(JP,A)
【文献】国際公開第2016/117658(WO,A1)
【文献】特開平8-279411(JP,A)
【文献】特公昭38-17214(JP,B1)
【文献】特開昭63-296207(JP,A)
【文献】特開昭63-318722(JP,A)
【文献】特開平1-198006(JP,A)
【文献】特開平1-216507(JP,A)
【文献】実開平1-135707(JP,U)
【文献】米国特許第5276419(US,A)
【文献】特開2012-23159(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
G01N 22/00 -22/04
G01N 24/00 -24/14
G01R 33/28 -33/64
H01F 6/00 - 7/02
H01L 27/18
H01L 39/00
H01L 39/06-39/12
H01L 39/18
H01L 39/22-39/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁場を発生させる磁石部を備えた磁石装置に備えられる超伝導装置において、
前記磁石部の外部にそれぞれ設けられた複数の第1超伝導バルク体を含む第1超伝導バルク体群を有し、
前記磁石部は、
第1極性を有する第1磁極と、
前記第1極性と反対の第2極性を有する第2磁極と、
を有し、
前記第1磁極、前記第1超伝導バルク体群及び前記第2磁極は、第1軸の周りの環状経路に沿って、前記第1磁極、前記第1超伝導バルク体群、前記第2磁極の順に配置され、
前記複数の第1超伝導バルク体の各々は、超伝導状態で磁場を捕捉し、
それぞれ磁場を捕捉している前記複数の第1超伝導バルク体と前記磁石部とにより、磁束が通る閉回路であり、且つ、前記環状経路に沿って、前記第1磁極から前記第1超伝導バルク体群を経て前記第2磁極に戻る、磁気回路が形成され、
前記第1超伝導バルク体群に含まれる前記複数の第1超伝導バルク体は、前記複数の第1超伝導バルク体の各々が超伝導状態で磁場を捕捉することにより、前記第1磁極から出た磁束が、前記複数の第1超伝導バルク体を順次通って前記第2磁極に戻るように、前記環状経路に沿って配列され、
前記第1超伝導バルク体群は、前記環状経路に沿って、前記第1磁極と隣り合い、且つ、前記第2磁極と隣り合わず、
前記複数の第1超伝導バルク体のうち、前記環状経路に沿って前記第1磁極に最も近い側に配置された第1超伝導バルク体の、前記環状経路に垂直な断面の外周長さは、前記複数の第1超伝導バルク体のうち、前記環状経路に沿って前記第1磁極に最も近い側と反対側に配置された第1超伝導バルク体の、前記環状経路に垂直な断面の外周長さよりも長い、超伝導装置。
【請求項3】
請求項1に記載の超伝導装置において、
前記磁石部は、前記環状経路に沿って互いに間隔を空けて配置された第1磁石及び第2磁石を有し、
前記第1磁石は、
前記第1磁極と、
前記第2極性を有する第3磁極と、
を有し、
前記第2磁石は、
前記第1極性を有する第4磁極と、
前記第2磁極と、
を有し、
前記第1磁極、前記第1超伝導バルク体群、前記第2磁極、前記第4磁極及び前記第3磁極は、前記環状経路に沿って、前記第1磁極、前記第1超伝導バルク体群、前記第2磁極、前記第4磁極、前記第3磁極の順に配置され、
前記第1磁石と前記第2磁石との間の空間が開放されている、超伝導装置。
【請求項7】
請求項1又は3に記載の超伝導装置において、
前記複数の第1超伝導バルク体の各々の前記環状経路に垂直な断面の外周長さは、前記環状経路に沿って、前記第1磁極に最も近い側から前記第1磁極に最も近い側と反対側に向かって、前記複数の第1超伝導バルク体の配列順に減少する、超伝導装置。
【請求項8】
請求項1、3又は7に記載の超伝導装置において、
前記環状経路に沿って配列された複数の第2超伝導バルク体を含む第2超伝導バルク体群を有し、
前記複数の第2超伝導バルク体の各々は、超伝導状態で磁場を捕捉し、
前記第1磁極、前記第1超伝導バルク体群、前記第2超伝導バルク体群及び前記第2磁極は、前記環状経路に沿って、前記第1磁極、前記第1超伝導バルク体群、前記第2超伝導バルク体群、前記第2磁極の順に配置され、
前記環状経路に沿って、前記第1磁極から前記第1超伝導バルク体群及び前記第2超伝導バルク体群を順次経て前記第2磁極に戻る前記磁気回路が形成され、
前記第1超伝導バルク体群に含まれる前記複数の第1超伝導バルク体、及び、前記第2超伝導バルク体群に含まれる前記複数の第2超伝導バルク体は、前記複数の第1超伝導バルク体及び前記複数の第2超伝導バルク体の各々が超伝導状態で磁場を捕捉することにより、前記第1磁極から出た磁束が、前記複数の第1超伝導バルク体及び前記複数の第2超伝導バルク体を順次通って前記第2磁極に戻るように、前記環状経路に沿って配列され、
前記第2超伝導バルク体群は、前記環状経路に沿って、前記第2磁極と隣り合い、
前記複数の第2超伝導バルク体のうち、前記環状経路に沿って前記第2磁極に最も近い側に配置された第2超伝導バルク体の、前記環状経路に垂直な断面の外周長さは、前記複数の第2超伝導バルク体のうち、前記環状経路に沿って前記第2磁極に最も近い側と反対側に配置された第2超伝導バルク体の、前記環状経路に垂直な断面の外周長さよりも長い、超伝導装置。
【請求項9】
請求項8に記載の超伝導装置において、
前記複数の第2超伝導バルク体の各々の前記環状経路に垂直な断面の外周長さは、前記環状経路に沿って、前記第2磁極に最も近い側から前記第2磁極に最も近い側と反対側に向かって、前記複数の第2超伝導バルク体の配列順に減少する、超伝導装置。
【請求項10】
請求項1、3又は7乃至9のいずれか一項に記載の超伝導装置において、
前記複数の第1超伝導バルク体の各々は、前記環状経路に沿った軸線を中心とした筒状の第1筒部を含み、
前記複数の第1超伝導バルク体は、前記複数の第1超伝導バルク体の各々が超伝導状態で前記軸線に沿った磁場を捕捉することにより、前記第1磁極から出た磁束が前記複数の第1超伝導バルク体の各々にそれぞれ含まれる複数の第1筒部を順次通って前記第2磁極に戻るように、前記環状経路に沿って配列されている、超伝導装置。
【請求項11】
請求項1、3又は7乃至9のいずれか一項に記載の超伝導装置において、
前記複数の第1超伝導バルク体の各々は、前記環状経路に沿って延在する延在部を含み、
前記複数の第1超伝導バルク体は、前記複数の第1超伝導バルク体の各々が超伝導状態で前記環状経路に沿った磁場を捕捉することにより、前記第1磁極から出た磁束が前記複数の第1超伝導バルク体の各々にそれぞれ含まれる複数の延在部を順次通って前記第2磁極に戻るように、前記環状経路に沿って配列されている、超伝導装置。
【請求項12】
請求項1、3又は7乃至11のいずれか一項に記載の超伝導装置において、
前記磁石部を囲む筒状の第2筒部を含む第3超伝導バルク体を有し、
前記第3超伝導バルク体は、超伝導状態で磁場を捕捉し、
それぞれ磁場を捕捉している前記複数の第1超伝導バルク体と、磁場を捕捉している前記第3超伝導バルク体と、前記磁石部と、により前記磁気回路が形成される、超伝導装置。
【請求項13】
請求項1、3又は7乃至12のいずれか一項に記載の超伝導装置において、
前記第1超伝導バルク体は、鉄ニクタイド又は二ホウ化マグネシウムよりなる、超伝導装置。
【請求項14】
請求項1、3又は7乃至13のいずれか一項に記載の超伝導装置において、
前記第1超伝導バルク体を冷却する冷却部を有し、
前記第1超伝導バルク体が前記冷却部に冷却されることにより、前記第1超伝導バルク体が超伝導状態になり、
前記第1超伝導バルク体は、第二種超伝導体よりなり、
前記第1超伝導バルク体は、超伝導状態で、下部臨界磁場を超え且つ上部臨界磁場以下の磁場を、磁束をピン止めすることにより捕捉する、超伝導装置。
【請求項21】
請求項1、3又は7乃至14のいずれか一項に記載の超伝導装置と、
前記磁石部と、
を備えた、磁石装置。
【請求項23】
磁場を発生させる磁石部を備えた磁石装置に備えられる超伝導装置において、
前記磁石部の外部にそれぞれ設けられた複数の第1超伝導バルク体を含む第1超伝導バルク体群を有し、
前記磁石部は、
第1極性を有する第1磁極と、
前記第1極性と反対の第2極性を有する第2磁極と、
を有し、
前記第1磁極、前記第1超伝導バルク体群及び前記第2磁極は、第1軸の周りの環状経路に沿って、前記第1磁極、前記第1超伝導バルク体群、前記第2磁極の順に配置され、
前記複数の第1超伝導バルク体の各々は、超伝導状態で磁場を捕捉し、
それぞれ磁場を捕捉している前記複数の第1超伝導バルク体と前記磁石部とにより、磁束が通る閉回路であり、且つ、前記環状経路に沿って、前記第1磁極から前記第1超伝導バルク体群を経て前記第2磁極に戻る、磁気回路が形成され、
前記複数の第1超伝導バルク体の各々は、前記環状経路に沿って延在する延在部を含み、
前記複数の第1超伝導バルク体は、前記複数の第1超伝導バルク体の各々が超伝導状態で前記環状経路に沿った磁場を捕捉することにより、前記第1磁極から出た磁束が前記複数の第1超伝導バルク体の各々にそれぞれ含まれる複数の延在部を順次通って前記第2磁極に戻るように、前記環状経路に沿って配列されている、超伝導装置。
【請求項28】
請求項23乃至27のいずれか一項に記載の超伝導装置と、
前記磁石部と、
を備えた、磁石装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁石装置に備えられる超伝導装置、及び、磁石装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば磁気共鳴イメージング(Magnetic Resonance Imaging:MRI)装置等が有する磁石装置として、強磁場を発生させる磁石部を備えた磁石装置が用いられている。米国特許第7944208号明細書(特許文献1)には、磁気共鳴イメージングシステムにおいて、主磁石が有する互いに反対の磁極が、水平軸に沿って配置され、且つ、主磁石が発生させた磁場を検出するために構成された開放型磁気共鳴イメージング領域を画定する技術が開示されている。
【0003】
このような強磁場を発生させる磁石装置においては、磁石部の外部に強磁場が漏洩することを防止又は抑制し、磁石部の周囲での磁場の強度を低減するために、環状経路に沿って、磁石部の一方の磁極から磁性体を経て磁石部の他方の磁極に戻る磁気回路が形成されるように、磁気回路用部材として、鉄等の透磁率の高い磁性体が設けられることがある。
【0004】
特開平7-178071号公報(特許文献2)には、MRI装置のマグネットアセンブリにおいて、下永久磁石を上面に取り付けた下ベースヨークと、その下ベースヨークの端縁部から立設された柱ヨークと、その柱ヨークで支持されると共に上永久磁石を下永久磁石に対向して下面に取り付けた上ベースヨークと、を有する技術が開示されている。
【0005】
一方、例えばMRI装置以外の磁石装置においては、強磁場を発生させる磁石部として、超伝導バルク体が用いられているものがある。非特許文献1及び非特許文献2には、二ホウ化マグネシウム(MgB)よりなる超伝導バルク体が永久磁石として用いられる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第7944208号明細書
【文献】特開平7-178071号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】A. Yamamoto et al., “Permanent magnet with MgB2 bulk superconductor”, Applied Physics Letters 105 (2014) 032601
【文献】S. Sugino et al., “Enhanced trapped field in MgB2 bulk magnets by tuning grain boundary pinning through milling”, Superconductor Science and Technology 28 (2015) 055016
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
磁気回路用部材として、鉄等の透磁率の高い磁性体が設けられる場合、透磁率の高い磁性体に磁場を閉じ込めることにより、磁性体の外部での磁場の強度を低減することができる。
【0009】
ところが、鉄等の磁性体の透磁率は、印加される磁場の強度の増加に伴って減少するので、印加される磁場の強度の増加に伴って、磁性体の内部の磁場の強度が飽和すると、それ以上磁場の強度が増加した場合には、磁性体は磁場を磁性体の内部だけに閉じ込めることができないので、磁性体の外部に漏れ出す磁場の強度が強くなる。
【0010】
磁場の強度が強い場合でも印加された磁場を磁性体の内部に閉じ込めるためには、磁気回路の断面積、即ち磁性体の環状経路に垂直な断面積を大きくする必要がある。従って、磁気回路用部材として鉄等の磁性体を用いる場合には、磁気回路用部材の体積を大きくする必要があり、磁気回路を小型化又は軽量化することが困難である。
【0011】
本発明は、上述のような従来技術の問題点を解決すべくなされたものであって、強磁場を発生させる磁石部を備えた磁石装置において、磁気回路用部材の体積を小さくすることができ、磁気回路を容易に小型化又は軽量化することができる磁石装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0013】
本発明の一態様としての超伝導装置は、磁場を発生させる磁石部を備えた磁石装置に備えられる。当該超伝導装置は、磁石部の外部に設けられた第1超伝導バルク体を有し、第1超伝導バルク体は、超伝導状態で磁場を捕捉し、磁場を捕捉している第1超伝導バルク体と磁石部とにより磁気回路が形成される。
【0014】
また、他の一態様として、磁石部は、第1極性を有する第1磁極と、第1極性と反対の第2極性を有する第2磁極と、を有し、第1磁極、第1超伝導バルク体及び第2磁極は、第1軸の周りの環状経路に沿って、第1磁極、第1超伝導バルク体、第2磁極の順に配置され、環状経路に沿って、第1磁極から第1超伝導バルク体を経て第2磁極に戻る磁気回路が形成されてもよい。
【0015】
また、他の一態様として、磁石部は、環状経路に沿って互いに間隔を空けて配置された第1磁石及び第2磁石を有し、第1磁石は、第1磁極と、第2極性を有する第3磁極と、を有し、第2磁石は、第1極性を有する第4磁極と、第2磁極と、を有してもよい。第1磁極、第1超伝導バルク体、第2磁極、第4磁極及び第3磁極は、環状経路に沿って、第1磁極、第1超伝導バルク体、第2磁極、第4磁極、第3磁極の順に配置されていてもよい。
【0016】
また、他の一態様として、当該超伝導装置は、環状経路に沿って配列された複数の第1超伝導バルク体を含む第1超伝導バルク体群を有し、第1磁極、第1超伝導バルク体群及び第2磁極は、環状経路に沿って、第1磁極、第1超伝導バルク体群、第2磁極の順に配置され、環状経路に沿って、第1磁極から第1超伝導バルク体群を経て第2磁極に戻る磁気回路が形成されてもよい。第1超伝導バルク体群に含まれる複数の第1超伝導バルク体は、複数の第1超伝導バルク体の各々が超伝導状態で磁場を捕捉することにより、第1磁極から出た磁束が、複数の第1超伝導バルク体を順次通って第2磁極に戻るように、環状経路に沿って配列されていてもよい。
【0017】
また、他の一態様として、複数の第1超伝導バルク体は、互いに間隔を空けて配列されていてもよい。
【0018】
また、他の一態様として、第1超伝導バルク体群は、環状経路に沿って、第1磁極と隣り合い、且つ、第2磁極と隣り合わなくてもよい。複数の第1超伝導バルク体のうち、環状経路に沿って第1磁極に最も近い側に配置された第1超伝導バルク体の、環状経路に垂直な断面の外周長さは、複数の第1超伝導バルク体のうち、環状経路に沿って第1磁極に最も近い側と反対側に配置された第1超伝導バルク体の、環状経路に垂直な断面の外周長さよりも長くてもよい。
【0019】
また、他の一態様として、複数の第1超伝導バルク体の各々の環状経路に垂直な断面の外周長さは、環状経路に沿って、第1磁極に最も近い側から第1磁極に最も近い側と反対側に向かって、複数の第1超伝導バルク体の配列順に減少してもよい。
【0020】
また、他の一態様として、当該超伝導装置は、環状経路に沿って配列された複数の第2超伝導バルク体を含む第2超伝導バルク体群を有し、複数の第2超伝導バルク体の各々は、超伝導状態で磁場を捕捉し、第1磁極、第1超伝導バルク体群、第2超伝導バルク体群及び第2磁極は、環状経路に沿って、第1磁極、第1超伝導バルク体群、第2超伝導バルク体群、第2磁極の順に配置され、環状経路に沿って、第1磁極から第1超伝導バルク体群及び第2超伝導バルク体群を順次経て第2磁極に戻る磁気回路が形成されてもよい。第1超伝導バルク体群に含まれる複数の第1超伝導バルク体、及び、第2超伝導バルク体群に含まれる複数の第2超伝導バルク体は、複数の第1超伝導バルク体及び複数の第2超伝導バルク体の各々が超伝導状態で磁場を捕捉することにより、第1磁極から出た磁束が、複数の第1超伝導バルク体及び複数の第2超伝導バルク体を順次通って第2磁極に戻るように、環状経路に沿って配列されていてもよい。第2超伝導バルク体群は、環状経路に沿って、第2磁極と隣り合い、複数の第2超伝導バルク体のうち、環状経路に沿って第2磁極に最も近い側に配置された第2超伝導バルク体の、環状経路に垂直な断面の外周長さは、複数の第2超伝導バルク体のうち、環状経路に沿って第2磁極に最も近い側と反対側に配置された第2超伝導バルク体の、環状経路に垂直な断面の外周長さよりも長くてもよい。
【0021】
また、他の一態様として、複数の第2超伝導バルク体の各々の環状経路に垂直な断面の外周長さは、環状経路に沿って、第2磁極に最も近い側から第2磁極に最も近い側と反対側に向かって、複数の第2超伝導バルク体の配列順に減少してもよい。
【0022】
また、他の一態様として、複数の第1超伝導バルク体の各々は、環状経路に沿った軸線を中心とした筒状の第1筒部を含み、複数の第1超伝導バルク体は、複数の第1超伝導バルク体の各々が超伝導状態で軸線に沿った磁場を捕捉することにより、第1磁極から出た磁束が複数の第1超伝導バルク体の各々にそれぞれ含まれる複数の第1筒部を順次通って第2磁極に戻るように、環状経路に沿って配列されていてもよい。
【0023】
また、他の一態様として、複数の第1超伝導バルク体の各々は、環状経路に沿って延在する延在部を含み、複数の第1超伝導バルク体は、複数の第1超伝導バルク体の各々が超伝導状態で環状経路に沿った磁場を捕捉することにより、第1磁極から出た磁束が複数の第1超伝導バルク体の各々にそれぞれ含まれる複数の延在部を順次通って第2磁極に戻るように、環状経路に沿って配列されていてもよい。
【0024】
また、他の一態様として、当該超伝導装置は、磁石部を囲む筒状の第2筒部を含む第3超伝導バルク体を有し、第3超伝導バルク体は、超伝導状態で磁場を捕捉し、それぞれ磁場を捕捉している複数の第1超伝導バルク体と、磁場を捕捉している第3超伝導バルク体と、磁石部と、により磁気回路が形成されてもよい。
【0025】
また、他の一態様として、第1超伝導バルク体は、鉄ニクタイド又は二ホウ化マグネシウムよりなるものでもよい。
【0026】
また、他の一態様として、当該超伝導装置は、第1超伝導バルク体を冷却する冷却部を有し、第1超伝導バルク体が冷却部に冷却されることにより、第1超伝導バルク体が超伝導状態になってもよい。第1超伝導バルク体は、第二種超伝導体よりなり、第1超伝導バルク体は、超伝導状態で、下部臨界磁場を超え且つ上部臨界磁場以下の磁場を、磁束をピン止めすることにより捕捉し、磁場を捕捉している第1超伝導バルク体と磁石部とにより、磁束が通る閉回路である磁気回路が形成され、磁石部の一方の磁極から出た磁束が第1超伝導バルク体を通って磁石部の他方の磁極に戻ってもよい。
【0027】
本発明の一態様としての超伝導装置は、磁場を発生させる磁石部を備えた磁石装置に備えられる。当該超伝導装置は、磁石部を囲む筒状の第1筒部を含む第1超伝導バルク体を有し、第1超伝導バルク体は、超伝導状態で磁場を捕捉し、磁場を捕捉している第1超伝導バルク体と磁石部とにより磁気回路が形成される。
【0028】
また、他の一態様として、当該超伝導装置は、磁石部の外部に設けられた第2超伝導バルク体を有し、第2超伝導バルク体は、超伝導状態で磁場を捕捉し、磁場を捕捉している第2超伝導バルク体と、磁場を捕捉している第1超伝導バルク体と、磁石部と、により磁気回路が形成されてもよい。
【0029】
また、他の一態様として、磁石部は、第1極性を有する第1磁極と、第1極性と反対の第2極性を有する第2磁極と、を有してもよい。第1磁極、第2超伝導バルク体及び第2磁極は、第1軸の周りの環状経路に沿って、第1磁極、第2超伝導バルク体、第2磁極の順に配置され、環状経路に沿って、第1磁極から第2超伝導バルク体を経て第2磁極に戻る磁気回路が形成されてもよい。
【0030】
また、他の一態様として、当該超伝導装置は、環状経路に沿って配列された複数の第2超伝導バルク体を含む第1超伝導バルク体群を有し、第1磁極、第1超伝導バルク体群及び第2磁極は、環状経路に沿って、第1磁極、第1超伝導バルク体群、第2磁極の順に配置され、環状経路に沿って、第1磁極から第1超伝導バルク体群を経て第2磁極に戻る磁気回路が形成されてもよい。第1超伝導バルク体群に含まれる複数の第2超伝導バルク体は、複数の第2超伝導バルク体の各々が超伝導状態で磁場を捕捉することにより、第1磁極から出た磁束が、複数の第2超伝導バルク体を順次通って第2磁極に戻るように、環状経路に沿って配列されていてもよい。
【0031】
また、他の一態様として、第1超伝導バルク体は、鉄ニクタイド又は二ホウ化マグネシウムよりなるものでもよい。
【0032】
また、他の一態様として、当該超伝導装置は、第1超伝導バルク体を冷却する冷却部を有し、第1超伝導バルク体が冷却部に冷却されることにより、第1超伝導バルク体が超伝導状態になってもよい。第1超伝導バルク体は、第二種超伝導体よりなり、第1超伝導バルク体は、超伝導状態で、下部臨界磁場を超え且つ上部臨界磁場以下の磁場を、磁束をピン止めすることにより捕捉し、磁場を捕捉している第1超伝導バルク体と磁石部とにより、磁束が通る閉回路である磁気回路が形成され、磁石部の一方の磁極から出る磁束が第1筒部の内部を通って磁石部の他方の磁極に戻ってもよい。
【0033】
本発明の一態様としての磁石装置は、磁場を発生させる磁石部と、磁石部の外部に設けられた超伝導装置と、を備えている。超伝導装置は、磁石部の外部に設けられた超伝導バルク体を有し、超伝導バルク体は、超伝導状態で磁場を捕捉し、磁場を捕捉している超伝導バルク体と磁石部とにより磁気回路が形成される。
【0034】
本発明の一態様としての磁石装置は、磁場を発生させる磁石部と、磁石部を囲む超伝導装置と、を備えている。超伝導装置は、磁石部を囲む筒状の筒部を含む超伝導バルク体を有し、超伝導バルク体は、超伝導状態で磁場を捕捉し、磁場を捕捉している超伝導バルク体と磁石部とにより磁気回路が形成される、
【発明の効果】
【0035】
本発明の一態様を適用することで、強磁場を発生させる磁石部を備えた磁石装置において、磁気回路用部材の体積を小さくすることができ、磁気回路を容易に小型化又は軽量化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】実施の形態の超伝導装置を備えた磁石装置を模式的に示す平面図である。
図2】実施の形態の超伝導装置を備えた磁石装置を模式的に示す斜視図である。
図3】実施の形態の超伝導装置の一部分を模式的に示す斜視図である。
図4】実施の形態の超伝導装置の一部分を模式的に示す断面図である。
図5】実施の形態の超伝導装置の他の部分を模式的に示す斜視図である。
図6】実施の形態の超伝導装置の他の部分を模式的に示す断面図である。
図7】実施の形態の超伝導装置の第1変形例を模式的に示す断面図である。
図8】実施の形態の超伝導装置の第2変形例を模式的に示す断面図である。
図9】実施の形態の磁石装置の第1変形例を模式的に示す平面図である。
図10】実施の形態の磁石装置の第2変形例を模式的に示す平面図である。
図11】実施の形態の磁石装置の第3変形例を模式的に示す平面図である。
図12】実施の形態の磁石装置の第4変形例を模式的に示す平面図である。
図13】実施の形態の磁石装置の第5変形例を模式的に示す平面図である。
図14】実施の形態の超伝導装置を備えた磁石装置を有するMRI装置を示すブロック図である。
図15】実施例1の超伝導装置が有する超伝導バルク体の製造方法の一部のステップを示すフロー図である。
図16】実施例1の超伝導装置内に配置された5個のホール素子により測定された局所磁束密度の外部磁場依存性を示すグラフである。
図17】実施例1の超伝導装置内に配置された5個のホール素子により測定された局所磁束密度の時間依存性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下に、本発明の各実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0038】
なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実施の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0039】
また本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0040】
更に、実施の形態で用いる図面においては、構造物を区別するために付したハッチング(網掛け)を図面に応じて省略する場合もある。
【0041】
なお、以下の実施の形態においてA~Bとして範囲を示す場合には、特に明示した場合を除き、A以上B以下を示すものとする。
【0042】
(実施の形態)
<磁石装置及び超伝導装置>
始めに、本発明の一実施形態である実施の形態の超伝導装置を備えた磁石装置及び超伝導装置について説明する。
【0043】
図1は、実施の形態の超伝導装置を備えた磁石装置を模式的に示す平面図である。図2は、実施の形態の超伝導装置を備えた磁石装置を模式的に示す斜視図である。なお、図2では、理解を簡単にするために、超伝導装置を備えた磁石装置のうち、超伝導バルク部以外の部分の図示を省略している。また、図1に示す配置は、必ずしも上面から視た場合の配置に限られず、正面から視た場合の配置であってもよい(後述する図9乃至図13においても同様)。
【0044】
図1及び図2に示すように、本実施の形態の超伝導装置1を備えた磁石装置2は、磁場を発生させる磁石部3を備えている。即ち、本実施の形態の超伝導装置1は、磁石部3を備えた磁石装置2に備えられるものであり、磁石部3の外部に設けられるものである。
【0045】
本実施の形態の超伝導装置1は、磁石部3の外部に設けられ、且つ、第二種超伝導体よりなる超伝導バルク体、即ち超伝導バルク部4を有する。超伝導バルク部4は、超伝導状態で、下部臨界磁場を超え且つ上部臨界磁場以下の磁場を、磁束をピン止めすることにより捕捉し、磁場を捕捉している超伝導バルク部4と磁石部3とにより、磁束が通る閉回路である磁気回路5が形成され、磁石部3の一方の磁極から出た磁束が超伝導バルク部4を通って磁石部3の他方の磁極に戻る。
【0046】
なお、本願明細書において、磁気回路とは、磁束即ち磁力線が通る通路を意味する。或いは、本願明細書において、磁気回路とは、高密度の磁束を運ぶ媒体を意味するか、又は、磁束を漏洩させたくない方向には漏洩させないように、高密度の磁束を捕捉して伝達又は伝搬する通路を意味する。或いは、本願明細書において、磁気回路とは、磁束が通る閉回路であって、所望の位置に磁場又は磁束を閉じ込める閉回路を意味する。このとき、磁気回路の内部の透磁率にも依存するが、磁気回路の内部及び周辺において、全ての磁束のうち磁気回路の内部に閉じ込められて磁気回路の長手方向に沿って周回するものが大部分を占めるか又は全部であり、全ての磁束のうち磁気回路の長手方向と交差するものは一部にすぎないか又は皆無である。
【0047】
具体的には、磁石部3は、第1極性を有する第1磁極としてのN極PL1と、第1極性と反対の第2極性を有する第2磁極としてのS極PL2と、を有する。そして、N極PL1、超伝導バルク部4及びS極PL2は、ある軸6の周りの環状経路7に沿って、N極PL1、超伝導バルク部4、S極PL2の順に配置されている。
【0048】
また、図1及び図2に示す例では、磁石部3は、環状経路7に沿って互いに間隔を空けて配置された2個の磁石MG1及びMG2を有し、磁石MG1は、N極PL1と、第2極性を有する第3磁極としてのS極PL3と、を有し、磁石MG2は、第1極性を有する第4磁極としてのN極PL4と、S極PL2と、を有する。N極PL1、超伝導バルク部4、S極PL2、N極PL4及びS極PL3は、環状経路7に沿って、N極PL1、超伝導バルク部4、S極PL2、N極PL4、S極PL3の順に配置されている。
【0049】
磁石MG1及びMG2を有する磁石部3として、所謂ヘルムホルツコイルを用いることができる。そして、磁石MG1と磁石MG2との間では、磁石MG1のS極PL3と、磁石MG2のN極PL4とが対向している。これにより、磁石MG1と磁石MG2との間の空間8に、磁場を印加して処理する被処理物(MRI装置の場合は、人体等の被検体)を容易に出し入れすることができる。なお、磁石部3として、ネオジム鉄ボロン(ホウ素)合金よりなるネオジム磁石などの強磁性永久磁石を用いることもできる。
【0050】
なお、N極PL1、S極PL2、S極PL3及びN極PL4の全ての極性を、一括して反対の極性に代えてもよい。
【0051】
後述する図14を用いて説明するように、例えば磁気共鳴イメージング(Magnetic Resonance Imaging:MRI)装置等が有する磁石装置として、強磁場を発生させる磁石部を備えた磁石装置が用いられている。このような磁石装置においては、磁石部の外部に強磁場が漏洩することを防止又は抑制し、磁石部の周囲での磁場の強度を低減するために、環状経路に沿って、磁石部の一方の磁極から磁性体を経て磁石部の他方の磁極に戻る磁気回路が形成されるように、磁気回路用部材として、鉄等の透磁率の高い磁性体が設けられることがある。この場合、透磁率の高い磁性体に磁場を閉じ込めることにより、磁性体の外部での磁場の強度を低減することができる。このとき、磁石部の外側には、環状経路に沿って、磁石部の一方の磁極(例えばN極)から出て、磁性体を通り、他方の磁極(例えばS極)に戻る磁気回路が形成される。
【0052】
ところが、鉄等の磁性体の透磁率は、印加される磁場の強度の増加に伴って減少するので、印加される磁場の強度の増加に伴って、磁性体の内部の磁場の強度が徐々に飽和する。磁性体の内部の磁場の強度が飽和すると、それ以上磁場の強度が増加した場合には、磁性体は磁場を磁性体の内部だけに閉じ込めることができないので、磁性体の外部に漏洩する磁場の強度が強くなる。
【0053】
磁場の強度が強い場合でも印加された磁場を磁性体の内部に閉じ込めるためには、磁気回路の断面積、即ち磁性体の環状経路に垂直な断面積を大きくする必要がある。従って、磁気回路用部材として鉄等の磁性体を用いる場合には、磁気回路用部材の体積を大きくする必要があり、磁気回路を小型化又は軽量化することが困難である。
【0054】
一方、本実施の形態では、超伝導状態で磁場を捕捉している超伝導バルク体、即ち超伝導バルク部4と磁石部3とにより、磁気回路5が形成される。超伝導バルク体の場合、超伝導状態での臨界電流密度が十分に大きい場合には、磁性体が飽和するときの磁場である飽和磁場よりも強い磁場を捕捉することができる。言い換えれば、磁性体の飽和磁場よりも強い磁場を、超伝導バルク体の内部に閉じ込めることができる。そのため、強い磁場を超伝導バルク体の内部に閉じ込める場合、磁性体の内部に閉じ込める場合に比べて、磁気回路の断面積、即ち超伝導バルク体の環状経路に垂直な断面積を、小さくすることができる。従って、磁気回路用部材として超伝導バルク体を用いる場合、磁気回路用部材の体積を小さくすることができ、磁気回路を容易に小型化又は軽量化することができる。
【0055】
また、MRI装置が有する磁石装置として、強磁場を発生させる磁石部3を備えた磁石装置2が用いられる場合であって、磁石部3が磁石MG1と磁石MG2とを有する場合を考える。このような場合には、磁石MG1と磁石MG2との間の空間8が開放されているため、磁石MG1と磁石MG2との間に、断層画像を撮像することにより検査を受ける被検体として例えば人間が検査のために立ち入った場合でも、閉塞感をあまり感じずに検査を受けることができる。
【0056】
超伝導バルク部4に強磁場を捕捉させて磁気回路を形成する方法として、超伝導バルク部4に強磁場を印加しながら超伝導バルク部4を常伝導状態から超伝導状態に冷却、即ち磁場中冷却することにより、超伝導バルク部4に磁場を捕捉させる方法が考えられる。具体的には、超伝導バルク部4の近傍に磁石部3と異なる磁石部を磁場印加用に設け、磁場印加用に設けられた磁石部を用いて超伝導バルク部4を磁場中冷却することにより、超伝導バルク部4に強磁場を捕捉させて磁気回路を形成することができる。或いは、磁石装置2の外部で磁場中冷却して強磁場を捕捉させた超伝導バルク部4を、強磁場を捕捉させたまま磁石装置2の内部に移動させて磁気回路を形成することができる。或いは、磁石部3に、磁石部3を通常使用する時の磁場よりも強磁場を発生させた状態で超伝導バルク部4を冷却することにより、超伝導バルク部4に強磁場を捕捉させて磁気回路を形成することができる。
【0057】
超伝導バルク部4は、下部臨界磁場Hc1及び上部臨界磁場Hc2を有する、所謂第二種超伝導体よりなる。外部磁場が下部臨界磁場Hc1以下の場合、第二種超伝導体はマイスナー効果を示し、第二種超伝導体中から磁束が排除された状態になり、所謂完全反磁性を示す。また、外部磁場が下部臨界磁場Hc1を超え且つ上部臨界磁場Hc2以下の場合、第二種超伝導体中には磁束が侵入するが、第二種超伝導体中に微細に分布する常伝導相等により磁束がピン止めされることで超伝導電流を電気抵抗が零の状態で流すことができ、このように磁束をピン止めすることにより、第二種超伝導体よりなる超伝導バルク部4は、強磁場を捕捉することができる。例えば10K程度の温度で、鉄ニクタイドの下部臨界磁場Hc1は、0.01~0.03T(テスラ)程度であり、鉄ニクタイドの上部臨界磁場Hc2は50Tよりも大きい。また、例えば10K程度の温度で、二ホウ化マグネシウム(MgB)の下部臨界磁場Hc1は、0.01~0.03T程度であり、MgBの上部臨界磁場Hc2は、30T程度である。
【0058】
なお、後述する実施例1では、MgBよりなる超伝導バルク体が2Tの磁場を捕捉し、後述する実施例2では、鉄ニクタイドよりなる超伝導バルク体も同様に磁場を捕捉している。そのため、例えばMgB及び鉄ニクタイドよりなる本実施の形態の超伝導バルク部4が、第二種超伝導体であり、且つ、マイスナー効果ではなく磁束をピン止めすることにより下部臨界磁場Hc1を超え且つ上部臨界磁場Hc2以下の強磁場を捕捉するものであることが分かる。
【0059】
好適には、超伝導バルク部4は、その少なくとも一部が、環状経路7に沿って配列された複数の部材(複数の超伝導バルク体)に分割されていてもよい。このような場合でも、超伝導バルク部4が一体的に形成されている場合と、略同様の効果を得ることができるので、磁石部3と超伝導バルク部4とにより磁気回路5を形成する場合に、超伝導バルク部4を容易に形成即ち製造することができる。以下では、超伝導バルク部4が、全体に亘って、環状経路7に沿って配列された複数の部材に分割された場合を例示して説明するものとする。
【0060】
図1及び図2に示すように、好適には、超伝導バルク部4は、超伝導バルク体群としての部材群を複数有する。即ち、超伝導バルク部4は、部材群SG1、SG2及びSG3を有する。部材群SG1は、環状経路7に沿って配列された超伝導バルク体としての部材SB1を複数含む。部材群SG2は、環状経路7に沿って配列された超伝導バルク体としての部材SB2を複数含む。部材群SG3は、環状経路7に沿って配列された超伝導バルク体としての部材SB3を複数含む。複数の部材SB1、複数の部材SB2及び複数の部材SB3の各々は、超伝導状態で磁場を捕捉する。
【0061】
N極PL1、部材群SG2、部材群SG1、部材群SG3、S極PL2、N極PL4及びS極PL3は、環状経路7に沿って、N極PL1、部材群SG2、部材群SG1、部材群SG3、S極PL2、N極PL4、S極PL3の順に配置されている。そして、環状経路7に沿って、N極PL1から部材群SG2、部材群SG1及び部材群SG3を順次経てS極PL2に戻る磁気回路5が形成される。
【0062】
このような場合、部材群SG2に含まれる複数の部材SB2、部材群SG1に含まれる複数の部材SB1、及び、部材群SG3に含まれる複数の部材SB3は、複数の部材SB2、複数の部材SB1及び複数の部材SB3の各々が超伝導状態で磁場を捕捉することにより、N極PL1から出た磁束9が、複数の部材SB2、複数の部材SB1及び複数の部材SB3を順次通ってS極PL2に戻るように、環状経路7に沿って配列されている。
【0063】
なお、超伝導バルク部4は、部材群を複数有しなくてもよく、部材群SG1、SG2及びSG3のうちいずれかの部材群を有するだけでもよい。
【0064】
図3は、実施の形態の超伝導装置の一部分を模式的に示す斜視図である。図4は、実施の形態の超伝導装置の一部分を模式的に示す断面図である。図3及び図4は、実施の形態の超伝導装置として部材群SG1を例示して説明する。また、図3及び図4では、軸線11に沿って互いに隣り合う2個の部材SB1の間にスペーサSP1が配置される例を例示している。
【0065】
図3及び図4に示すように、複数の部材SB1の各々は、環状経路7に沿った軸線11を中心とした筒状の筒部CP1を含む。複数の部材SB1は、複数の部材SB1の各々が軸線11に沿った磁場を捕捉することにより、N極PL1(図1参照)から出た磁束9が複数の部材SB1の各々にそれぞれ含まれる複数の筒部CP1を順次通ってS極PL2(図1参照)に戻るように、環状経路7に沿って配列されている。磁場を捕捉した筒部CP1は、磁気を帯びたチューブ、即ち磁気チューブとして機能する。
【0066】
筒部CP1が円筒状である場合、図4に示すように、筒部CP1の軸線11を中心とした外径を外径DM1とし、筒部CP1の内径を内径DM2とし、筒部CP1の軸線11に沿った長さを長さHT1とする。なお、図3では、筒部CP1が円筒状である例を示すが、筒部CP1は筒状であればよく、楕円筒状でもよく、四角筒状等の角筒状でもよい。
【0067】
図3に示すように、複数の部材SB1の各々の環状経路7に垂直な断面の外周長さLN1は、互いに等しくてもよい。このような場合、複数の部材SB1の各々の外径を細くすることができ、磁気回路用部材の体積を小さくすることができ、磁気回路を容易に小型化又は軽量化することができる。
【0068】
また、複数の部材SB1は、互いに間隔を空けて配列されていてもよい。後述する実施例1の超伝導装置において、図16を用いて説明するように、複数の部材SB1が互いに間隔を空けて配列される場合でも、軸線11に沿った強磁場を捕捉することができる。これによっても、磁気回路用部材の体積を小さくすることができ、磁気回路を更に小型化又は軽量化することができる。なお、図4に示すように、軸線11に沿って互いに隣り合う2個の部材SB1の各々がそれぞれ有する2個の筒部CP1の間の間隔をギャップGP1とする。
【0069】
図4に示すように、軸線11に沿って互いに隣り合う2個の部材SB1の間には、スペーサSP1が配置されていてもよい。これにより、複数の部材SB1の各々が磁場を捕捉している時に、軸線11に沿って互いに隣り合う2個の部材SB1が磁気吸引力により吸着することを防止することができる。なお、図4に示すように、スペーサSP1の軸線11に沿った長さは、ギャップGP1に等しい。
【0070】
図5は、実施の形態の超伝導装置の他の部分を模式的に示す斜視図である。図6は、実施の形態の超伝導装置の他の部分を模式的に示す断面図である。図5及び図6は、実施の形態の超伝導装置の他の部分として部材群SG2及びSG3を例示するものであるが、まず、部材群SG2を例示する場合について説明する。また、図5及び図6では、軸線11に沿って互いに隣り合う2個の部材SB2が互いに間隔を空けて配置されるものの、互いに隣り合う2個の部材SB2の間にスペーサが配置されない例を図示している。
【0071】
図5及び図6に示すように、複数の部材SB2の各々も、複数の部材SB1の各々と同様に、環状経路7に沿った軸線11を中心とした筒状の筒部CP2を含む。複数の部材SB2は、複数の部材SB2の各々が軸線11に沿った磁場を捕捉することにより、N極PL1(図1参照)から出た磁束9が、複数の部材SB2の各々にそれぞれ含まれる複数の筒部CP2を順次通ってS極PL2(図1参照)に戻るように、環状経路7に沿って配列されている。
【0072】
図1図2図5及び図6に示すように、部材群SG2は、環状経路7に沿って、N極PL1と隣り合い、且つ、S極PL2と隣り合わない。また、複数の部材SB2のうち、環状経路7に沿ってN極PL1に最も近い側に配置された部材SB2の、環状経路7に垂直な断面の外周長さLN2(図5参照)は、複数の部材SB2のうち、環状経路7に沿ってN極PL1に最も近い側と反対側に配置された部材SB2の、環状経路7に垂直な断面の外周長さLN2よりも長い。
【0073】
これにより、部材群SG2のうちN極PL1に最も近い側では、磁石部3のN極PL1の環状経路7に垂直な断面の外周長さに合わせて、部材SB2の環状経路7に垂直な断面の外周長さLN2を長くする、即ち部材SB2を太くすることができる。そのため、磁石部3のN極PL1から出た磁束9よりなる磁場を超伝導バルク部4に効率良く閉じ込めることができる。一方、部材群SG2のうちN極PL1に最も近い側と反対側では、部材SB2の環状経路7に垂直な断面の外周長さLN2を短くする、即ち部材SB2を細くすることができる。そのため、磁気回路用部材の体積を小さくすることができ、磁気回路を小型化又は軽量化することができる。
【0074】
なお、部材SB2の、環状経路7に垂直な断面の外周長さLN2(図5参照)が環状経路7に沿って一様に変化する場合には、部材SB2のうち環状経路7に沿って中央に位置する部分の、環状経路7に垂直な断面の外周長さを、外周長さLN2と定義する。
【0075】
好適には、複数の部材SB2の各々の環状経路7に垂直な断面の外周長さLN2は、環状経路7に沿って、N極PL1に最も近い側からN極PL1に最も近い側と反対側に向かって、複数の部材SB2の配列順に減少する。
【0076】
これにより、N極PL1に最も近い側からN極PL1に最も近い側と反対側に向かって、複数の部材SB2の各々の外周長さLN2を一様に減少させることができる。そのため、N極PL1に最も近い側からN極PL1に最も近い側と反対側に向かって、複数の部材SB2の各々に捕捉される磁束9を一様に収束させることができる。よって、複数の部材SB2の例えば角部等に局所的に磁場が集中することを防止又は抑制することができ、強磁場を複数の部材SB2により効率良く捕捉することができ、強磁場を効率良く部材群SG2内に閉じ込めることができる。なお、部材群SG2のうちN極PL1側の部分は、ラッパ形状即ちトランペット形状若しくはホルン形状、又は、朝顔形状を有していてもよい。
【0077】
次に、図5が部材群SG3を例示する場合について説明する。この場合、図5及び図6では、軸線11に沿って互いに隣り合う2個の部材SB3が互いに間隔を空けて配置されるものの、互いに隣り合う2個の部材SB3の間にスペーサが配置されない例を図示している。
【0078】
図5及び図6に示すように、複数の部材SB3の各々も、複数の部材SB1の各々と同様に、環状経路7に沿った軸線11を中心とした筒状の筒部CP3を含む。複数の部材SB3は、複数の部材SB3の各々が軸線11に沿った磁場を捕捉することにより、N極PL1(図1参照)から出た磁束9が、複数の部材SB3の各々にそれぞれ含まれる複数の筒部CP3を順次通ってS極PL2(図1参照)に戻るように、環状経路7に沿って配列されている。なお、図6に示す磁束9の向きは、図5が部材群SG2を例示する場合の磁束9の向きを示しており、図5が部材群SG3を例示する場合の磁束9の向きとは逆向きになっている。
【0079】
図1図2図5及び図6に示すように、部材群SG3は、環状経路7に沿って、S極PL2と隣り合い、且つ、N極PL1と隣り合わない。また、複数の部材SB3のうち、環状経路7に沿ってS極PL2に最も近い側に配置された部材SB3の、環状経路7に垂直な断面の外周長さLN3(図5参照)は、複数の部材SB3のうち、環状経路7に沿ってS極PL2に最も近い側と反対側に配置された部材SB3の、環状経路7に垂直な断面の外周長さLN3よりも長い。
【0080】
これにより、部材群SG3のうちS極PL2に最も近い側では、磁石部3のS極PL2の環状経路7に垂直な断面の外周長さに合わせて、部材SB3の環状経路7に垂直な断面の外周長さLN3を長くする、即ち部材SB3を太くすることができる。そのため、磁石部3のS極PL2に戻る磁束9よりなる磁場を超伝導バルク部4に効率良く閉じ込めることができる。一方、部材群SG3のうちS極PL2に最も近い側と反対側では、部材SB3の環状経路7に垂直な断面の外周長さLN3を短くする、即ち部材SB3を細くすることができる。そのため、磁気回路用部材の体積を小さくすることができ、磁気回路を小型化又は軽量化することができる。
【0081】
好適には、複数の部材SB3の各々の環状経路7に垂直な断面の外周長さLN3は、環状経路7に沿って、S極PL2に最も近い側からS極PL2に最も近い側と反対側に向かって、複数の部材SB3の配列順に減少する。
【0082】
これにより、S極PL2に最も近い側と反対側からS極PL2に最も近い側に向かって、複数の部材SB3の各々の外周長さLN3を一様に増加させることができる。そのため、S極PL2に最も近い側と反対側からS極PL2に最も近い側に向かって、複数の部材SB3の各々に捕捉される磁束9を一様に広げることができる。よって、複数の部材SB3の例えば角部等に局所的に磁場が集中することを防止又は抑制することができ、強磁場を複数の部材SB3により効率良く捕捉することができ、強磁場を効率良く部材群SG3内に閉じ込めることができる。なお、部材群SG3のうちS極PL2側の部分は、ラッパ形状即ちトランペット形状若しくはホルン形状、又は、朝顔形状を有していてもよい。
【0083】
また、図1に示すように、超伝導装置1は、超伝導バルク部4を冷却する冷却部として、例えばGM冷凍機等の冷凍機21を有してもよい。冷凍機21は、磁石部3の外部に設けられ、本体部22と、コールドヘッド23と、を含む。また、超伝導装置1は、超伝導バルク部4が外部と断熱された状態で、超伝導バルク部4を格納する低温容器(図示は省略)を有してもよい。超伝導バルク部4と、コールドヘッド23とは、低温容器内に配置され、超伝導バルク部4は、コールドヘッド23と熱的に接触される。超伝導バルク部4を冷凍機21により超伝導バルク部4の臨界温度以下に冷却することにより、超伝導バルク部4を超伝導状態にすることができる。
【0084】
<超伝導装置の第1変形例>
図7は、実施の形態の超伝導装置の第1変形例を模式的に示す断面図である。なお、図7は、実施の形態の超伝導装置における部材群SG1に対応した部材群を、部材群SG1として示し、部材群SG1に含まれる複数の部材SB1のうち、環状経路7に沿って互いに隣り合う2個の部材SB1を例示して説明する。また、図7では、環状経路7に沿って互いに隣り合う2個の部材SB1の間にスペーサが配置されていない例を例示している。
【0085】
図7に示すように、部材群SG1は、複数の部材SB1を含み、複数の部材SB1の各々は、環状経路7に沿って延在する延在部EX1を含んでもよい。複数の部材SB1は、複数の部材SB1の各々が超伝導状態で環状経路7に沿った磁場を捕捉することにより、N極PL1から出た磁束9が複数の部材SB1の各々にそれぞれ含まれる複数の延在部EX1を順次通ってS極PL2に戻るように、環状経路7に沿って配列されている。
【0086】
部材SB1が延在部EX1を含む場合でも、部材SB1が筒部CP1(図4参照)を含む場合と同様に、複数の部材SB1の各々が超伝導状態で環状経路7に沿った磁場を捕捉することにより、磁気回路の断面積、即ち超伝導バルク体の環状経路に垂直な断面積を、小さくすることができる。従って、磁気回路用部材として超伝導バルク体を用いる場合、磁気回路用部材として磁性体を用いる場合に比べて、磁気回路用部材の体積を小さくすることができ、磁気回路を容易に小型化又は軽量化することができる。ただし、部材SB1が延在部EX1を含む場合には、部材SB1が筒部CP1を含む場合に比べ、重量が増加するため、上記した軽量化の効果は、ある程度小さくなる。
【0087】
或いは、複数の部材SB1の各々は、環状経路7に垂直な表面及び裏面を有する板部PP1を含んでもよい。複数の部材SB1は、複数の部材SB1の各々が超伝導状態で環状経路7に沿った磁場を捕捉することにより、N極PL1から出た磁束9が複数の部材SB1の各々にそれぞれ含まれる複数の板部PP1を順次通ってS極PL2に戻るように、環状経路7に沿って配列されている。
【0088】
部材SB1が板部PP1を含む場合でも、部材SB1が筒部CP1(図4参照)を含む場合と同様に、複数の部材SB1の各々が超伝導状態で環状経路7に沿った磁場を捕捉することにより、磁気回路の断面積、即ち超伝導バルク体の環状経路に垂直な断面積を、小さくすることができる。従って、磁気回路用部材として超伝導バルク体を用いる場合、磁気回路用部材として磁性体を用いる場合に比べて、磁気回路用部材の体積を小さくすることができ、磁気回路を容易に小型化又は軽量化することができる。
【0089】
図7に示すように、複数の部材SB1の各々の環状経路7に垂直な断面の外周長さLN1(図3参照)は、互いに等しくてもよい。即ち、複数の部材SB1の各々の軸線11を中心とした外径DM1は、互いに等しくてもよい。このような場合、複数の部材SB1の各々の外径DM1を細くすることができ、磁気回路用部材の体積を小さくすることができ、磁気回路を小型化又は軽量化することができる。
【0090】
また、複数の部材SB1は、互いに間隔を空けて配列されていてもよい。これによっても、磁気回路用部材の体積を小さくすることができ、磁気回路を小型化又は軽量化することができる。
【0091】
なお、部材SB1が延在部EX1を含むとは、例えば、部材SB1の外径DM1に対する、部材SB1の軸線11に沿った長さHT1の比が、1を超える場合を意味する。また、部材SB1が板部PP1を含むとは、例えば、部材SB1の外径DM1に対する、部材SB1の軸線11に沿った長さHT1の比が、1以下の場合を意味する。
【0092】
<超伝導装置の第2変形例>
図8は、実施の形態の超伝導装置の第2変形例を模式的に示す断面図である。なお、図8は、実施の形態の超伝導装置における部材群SG2に対応した部材群を、部材群SG2として例示して説明する。また、図8では、環状経路7に沿って互いに隣り合う2個の部材SB2の間にスペーサが配置されていない例を例示している。
【0093】
図8に示すように、部材群SG2は、複数の部材SB2を含み、複数の部材SB2の各々は、環状経路7に垂直な断面の外周長さLN2(図5参照)が環状経路7に沿って一様に変化する台部TL2を含んでもよい。複数の部材SB2は、複数の部材SB2の各々が超伝導状態で環状経路7に沿った磁場を捕捉することにより、N極PL1から出た磁束が複数の部材SB2の各々にそれぞれ含まれる複数の台部TL2を順次通ってS極PL2に戻るように、環状経路7に沿って配列されている。
【0094】
部材SB2が台部TL2を含む場合でも、部材SB2が筒部CP2(図6参照)を含む場合と同様に、複数の部材SB2の各々が超伝導状態で環状経路7に沿った磁場を捕捉することにより、磁気回路の断面積、即ち超伝導バルク体の環状経路に垂直な断面積を、小さくすることができる。従って、磁気回路用部材として超伝導バルク体を用いる場合、磁気回路用部材として磁性体を用いる場合に比べて、磁気回路用部材の体積を小さくすることができ、磁気回路を容易に小型化又は軽量化することができる。ただし、部材SB2が台部TL2を含む場合には、部材SB2が筒部CP2を含む場合に比べ、重量が増加するため、上記した軽量化の効果は、ある程度小さくなる。
【0095】
好適には、複数の部材SB2の各々の環状経路7に垂直な断面の外周長さLN2(図5参照)は、環状経路7に沿って、N極PL1に最も近い側からN極PL1に最も近い側と反対側に向かって、複数の部材SB2の配列順に減少する。
【0096】
これにより、N極PL1に最も近い側からN極PL1に最も近い側と反対側に向かって、複数の部材SB2の各々の外周長さLN2を一様に減少させることができる。そのため、N極PL1に最も近い側からN極PL1に最も近い側と反対側に向かって、複数の部材SB2の各々に捕捉される磁束9を一様に収束させることができる。よって、複数の部材SB2の例えば角部等に局所的に磁場が集中することを防止又は抑制することができる。また、部材SB2が筒部CP2を含む場合に比べれば、効果は若干小さくなるものの、強磁場を複数の部材SB2により効率良く捕捉することができ、強磁場を効率良く部材群SG2内に閉じ込めることができる。
【0097】
なお、部材群SG2に含まれる部材SB2が台部TL2を含むのと同様に、部材群SG3に含まれる部材SB3が台部TL3を含んでもよい。このとき、複数の部材SB3の各々の環状経路7に垂直な断面の外周長さLN3(図5参照)が、環状経路7に沿って、S極PL2に最も近い側からS極PL2に最も近い側と反対側に向かって、複数の部材SB3の配列順に減少してもよい。これにより、部材SB3が筒部CP3(図6参照)を含む場合に比べれば、効果は若干小さくなるものの、磁気回路用部材の体積をある程度は小さくすることができ、磁気回路をある程度は小型化又は軽量化することができる。
【0098】
<超伝導バルク体の材料>
超伝導バルク体として、二ホウ化マグネシウム(MgB)の焼結体バルク又は鉄ニクタイドの焼結体バルクを用いることができる。即ち、超伝導バルク部4は、二ホウ化マグネシウム又は鉄ニクタイドよりなることが好ましい。
【0099】
MgBの臨界温度Tは、約39Kであり、NbTi合金の臨界温度(9K)、及び、NbSnの臨界温度(18K)のいずれよりも高い。そのため、MgBは、液体ヘリウム温度(4.2K)に比べて極めて高い温度である10~30K程度の温度で超伝導状態を維持することができ、超伝導バルク体を冷却する冷却方法として、液体ヘリウムに代えて冷凍機を用いた冷却方法を用いることができる。これにより、本実施の形態の超伝導装置を磁石装置の磁気回路用部材として用いる場合でも、磁気回路を小型化又は軽量化することができる。
【0100】
また、MgBよりなる超伝導バルク体は、MgBの焼結体よりなり、その合成方法としては、各種の方法があるものの、例えばマグネシウム(Mg)とホウ素(B)の粉末とを混合した混合物を成型した成型体を焼結することにより容易に形成することができる。これにより、MgBよりなる超伝導バルク体として、大型の超伝導バルク体を容易に形成することができる。従って、大型の超伝導バルク体を用いて、本実施の形態の超伝導装置を容易に大型化することができるので、本実施の形態の超伝導装置を、鉄等の磁性体に代えて、強磁場を発生させる磁石装置の磁気回路用部材として、容易に用いることができる。このような観点でも、本実施の形態の超伝導装置を、鉄等の磁性体に代えて、磁石装置の磁気回路用部材として用いる場合に、磁気回路を容易に小型化又は軽量化することができる。
【0101】
また、MgBの結晶中の臨界電流密度の方向依存性が小さい。即ち、MgBの臨界電流密度特性は、異方性が小さく、略等方的である。そのため、MgBの焼結体よりなる超伝導バルク体については、隣り合う2個の結晶粒の各々の配向方向のなす角度が0°から離れた場合でも、当該2個の結晶粒の間の界面を横切って流れる臨界電流密度が大きく減少することはない。そのため、MgBの焼結体よりなる超伝導バルク体については、超伝導バルク体を形成する際に、結晶粒の配向方向を制御する必要がないので、大型の超伝導バルク体を容易に形成することができる。
【0102】
MgBよりなる超伝導バルク体におけるMgBの平均粒径は、磁場を捕捉する観点からは、可能な限り小さい方が良いので、当該平均粒径の下限値は、10~20nmであるものの、当該下限値以上の範囲においては、当該平均粒径は、200~400nmであることがより好ましい。MgBの平均粒径が200nm以上の場合、MgBの平均粒径が200nm未満の場合に比べ、平均粒径を所望の値に容易に調整することができる。一方、MgBの平均粒径が400nm以下の場合、MgBの平均粒径が400nmを超える場合に比べ、超伝導バルク体の内部構造の均一性を容易に高めることができ、臨界電流密度を容易に向上させることができる。
【0103】
鉄ニクタイドは、鉄(Fe)とヒ素(As)等の第15族元素との化合物を意味する。鉄ニクタイドの臨界温度Tは、組成により異なるものの、MgBの臨界温度Tと同程度か、MgBの臨界温度Tよりも高い。そのため、磁石装置の磁気回路用部材として、MgBよりなる超伝導バルク体に代えて鉄ニクタイドよりなる超伝導バルク体を用いる場合でも、磁気回路用部材として鉄等の磁性体を用いる場合に比べて磁気回路を容易に小型化又は軽量化する効果については、MgBよりなる超伝導バルク体を用いた場合と同程度の効果、又は、MgBよりなる超伝導バルク体を用いた場合よりも大きな効果が得られる。
【0104】
鉄ニクタイドとして用いられる材料として、REFeAsO1-x(0<x<1、REは希土類元素)、(AE,A)(Fe,TM)(As,Pn)(AEはアルカリ土類元素、Aはアルカリ元素、TMは遷移金属元素、Pnはニクトゲン元素)、A1-x(Fe,TM)(As,Pn)(0<x<1、Aはアルカリ元素、TMは遷移金属元素、Pnはニクトゲン元素)、SmFeAsO1-x(0<x<1)、NdFeAsO1-x(0<x<1)、CeFeAsO1-x(0<x<1)、LaFeAsO1-x(0<x<1)、SmFeAs1-y1-x(0<x<1、0<y<1)、LaFe1-yZnAsO1-x(0<x<1、0<y<1)、LaFeAsO0.85(0≦x≦0.85)、LaFeAsO1-x(0<x<1)、CaFe1-xCoAsH(0<x<1)、Ca1-xLaFeAsH(0<x<1)、Ca1-xSmFeAsH(0<x<1)、CaFeAsF1-x(0<x<1)、Sr1-xLaFeAs(0<x<1)、(Ba,La)FeAs、(Ba,Ce)FeAs、(Ba,Pr)FeAs、(Ba,Nd)FeAs、(Sr,La)FeAs、(Ca,La)Fe(As,P)、Ba(Fe,Pt)As、(Ca,La)FeAs、(Ca,La)Fe(As,Sb)、(Ca,RE)Fe(As,Sb)(RE=La,Ce,Pr,Nd)、Ca10(IrAs)(FeAs、Na0.65Fe1.93Se、(Na,NH)FeSe、LaFeAs(O,C)が挙げられる。即ち、鉄ニクタイドは、上記した組成式で表される化合物からなる群から選択された一種以上よりなることが好ましい。
【0105】
<磁石装置の第1変形例>
図9は、実施の形態の磁石装置の第1変形例を模式的に示す平面図である。
【0106】
図9に示すように、磁石部3は、環状経路7に沿って設けられた1個の磁石MG3のみを有し、磁石部3は、第1極性を有する第1磁極としてのN極PL1と、第1極性と反対の第2極性を有する第2磁極としてのS極PL2と、のみを有してもよい。そして、N極PL1、超伝導バルク部4及びS極PL2は、環状経路7に沿って、N極PL1、超伝導バルク部4、S極PL2の順に配置されていてもよい。
【0107】
このような場合、磁石部3が所謂ヘルムホルツコイルよりなる場合に比べれば、磁石部3の内部の空間8に、例えば人体等の被検体を出し入れしにくくなるものの、磁気回路用部材として磁性体を用いる場合に比べて、磁気回路用部材の体積を小さくする効果が得られ、磁気回路を容易に小型化又は軽量化する効果が得られる。
【0108】
<磁石装置の第2変形例>
図10は、実施の形態の磁石装置の第2変形例を模式的に示す平面図である。
【0109】
図10に示すように、超伝導バルク部4は、部材群SG2及びSG3(図1参照)を有さず、部材群SG1のみを有してもよい。そして、環状経路7のうちN極PL1から出てS極PL2に戻る部分において、複数の部材SB1の各々の環状経路7に垂直な断面の外周長さLN1(図3参照)は、互いに等しくてもよい。このような場合、前述した図1及び図2を用いて説明した実施の形態の磁石装置に比べれば効果の程度は小さくなるものの、磁気回路用部材として磁性体を用いる場合に比べて、磁気回路用部材の体積をある程度小さくすることができ、磁気回路をある程度小型化又は軽量化することができる。
【0110】
<磁石装置の第3変形例>
図11は、実施の形態の磁石装置の第3変形例を模式的に示す平面図である。
【0111】
図11に示すように、超伝導バルク体、即ち超伝導バルク部4は、環状経路7に沿って分割されておらず、一体的に形成されていてもよい。このような場合、超伝導バルク部4を一体的に形成する点で、前述した図1及び図2を用いて説明した実施の形態の磁石装置に比べれば、超伝導バルク部4を容易に形成しにくくなるものの、磁気回路用部材の体積をある程度小さくすることができ、磁気回路をある程度小型化又は軽量化することができる。
【0112】
<磁石装置の第4変形例>
実施の形態の磁石装置では、超伝導バルク体、即ち超伝導バルク部4は、磁石部3の外部に設けられていた。しかし、超伝導バルク部4の端部が磁石部3を囲み、磁石部3の一部が、超伝導バルク部4の端部の内部に入り込んでいてもよい。このような磁石装置を、磁石装置の第4変形例として説明する。
【0113】
図12は、実施の形態の磁石装置の第4変形例を模式的に示す平面図である。なお、図12では、理解を簡単にするために、部材SB4及びSB5については、断面を示している。
【0114】
図12に示すように、本第4変形例の磁石装置に備えられた超伝導装置は、超伝導バルク体としての超伝導バルク部4を有する。また、超伝導バルク部4は、磁石MG1即ち磁石部3の一部分を囲む筒状の筒部CP5を含む、超伝導バルク体としての部材SB4と、磁石MG2即ち磁石部3の他の部分を囲む筒状の筒部CP6を含む、超伝導バルク体としての部材SB5と、を有する。部材SB4及び部材SB5の各々は、第二種超伝導体よりなり、超伝導状態で、下部臨界磁場を超え且つ上部臨界磁場以下の磁場を、磁束をピン止めすることにより捕捉する。
【0115】
図12に示す例では、複数の部材SB2を含む部材群SG2、複数の部材SB1を含む部材群SG1、及び、複数の部材SB3を含む部材群SG3については、前述した図1を用いて説明した実施の形態の磁石装置と同様にすることができる。
【0116】
また、図12に示す例では、部材SB4、複数の部材SB2、複数の部材SB1、複数の部材SB3及び部材SB5は、ある軸6の周りの環状経路7に沿って、部材SB4、複数の部材SB2、複数の部材SB1、複数の部材SB3、部材SB5の順に配置されている。即ち、N極PL1、部材群SG2、部材群SG1、部材群SG3及びS極PL2は、環状経路7に沿って、N極PL1、部材群SG2、部材群SG1、部材群SG3、S極PL2の順に配置されている。そして、磁場を捕捉している部材SB4と、それぞれ磁場を捕捉している複数の部材SB2と、それぞれ磁場を捕捉している複数の部材SB1と、それぞれ磁場を捕捉している複数の部材SB3と、磁場を捕捉している部材SB5と、磁石部3と、により磁気回路5が形成される。即ち、環状経路7に沿って、N極PL1から、複数の部材SB2、複数の部材SB1及び複数の部材SB3を順次経てS極PL2に戻る磁気回路5が形成される。なお、筒部CP5及びCP6は、いずれも環状経路7に沿った軸線11(図3参照)を中心とした筒状の筒部である。また、N極PL1から出る磁束は、筒部CP5の内部、及び、筒部CP6の内部を順次通ってS極PL2に戻る。
【0117】
図12に示す例では、部材群SG2に含まれる複数の部材SB2、部材群SG1に含まれる複数の部材SB1、及び、部材群SG3に含まれる複数の部材SB3は、複数の部材SB2、複数の部材SB1及び複数の部材SB3の各々が超伝導状態で磁場を捕捉することにより、N極PL1から出た磁束が、複数の部材SB2、複数の部材SB1及び複数の部材SB3を順次通ってS極PL2に戻るように、環状経路7に沿って配列されている。
【0118】
なお、図12では、超伝導装置が2個の部材SB4と、2個の部材SB5と、を有する場合を例示して説明するが、部材SB4の数は1個以上であればよく、部材SB5の数は1個以上であればよい。また、本第4変形例でも、実施の形態と同様に、部材SB4及びSB5を含む超伝導バルク部4は、二ホウ化マグネシウム又は鉄ニクタイドよりなることが好ましい。また、本第4変形例でも、実施の形態と同様に、超伝導装置は、部材SB4及びSB5を含む超伝導バルク部4を冷却する冷却部として、例えばGM冷凍機等の冷凍機21を有してもよい。
【0119】
本第4変形例でも、実施の形態と同様に、磁気回路用部材の体積を小さくすることができ、磁気回路を小型化又は軽量化することができる。一方、本第4変形例では、超伝導バルク部4の端部が磁石部3を囲み、磁石部3の一部が、超伝導バルク部4の端部の内部に入り込んでいる。そのため、本第4変形例では、実施の形態に比べ、磁石部3の周辺において、強い磁場を超伝導バルク部4に効率良く閉じ込めることができる。
【0120】
なお、超伝導バルク部4が、複数の部材SB2、複数の部材SB1及び複数の部材SB3のいずれも有さず、部材SB4又は部材SB5のみを有してもよい。このとき、磁場を捕捉している部材SB4又は磁場を捕捉している部材SB5と、磁石部3と、により磁気回路5が形成される。このような場合でも、磁石装置に超伝導バルク部4が備えられていない場合に比べれば、磁気回路用部材の体積を小さくすることができ、磁気回路を小型化又は軽量化することができる。
【0121】
また、超伝導バルク部4のうち、部材SB4及びSB5以外の部分が、図10に示したように、部材群SG2及びSG3を有さず、部材群SG1のみを有してもよく、環状経路7のうちN極PL1から出てS極PL2に戻る部分において、複数の部材SB1の各々の環状経路7に垂直な断面の外周長さLN1(図3参照)が、互いに等しくてもよい。或いは、超伝導バルク部4のうち、部材SB4及びSB5以外の部分が、図11に示したように、環状経路7に沿って分割されておらず、一体的に形成されていてもよい。その他、部材群SG1、SG2及びSG3については、図7に示した部材群SG1、又は、図8に示した部材群SG2若しくは部材群SG3と同様にすることができる。
【0122】
<磁石装置の第5変形例>
実施の形態の磁石装置では、超伝導バルク体、即ち超伝導バルク部4は、磁石部3の外部に設けられていた。しかし、超伝導バルク部4の途中の部分が磁石部を囲み、磁石部が超伝導バルク部4の途中の部分の内部に設けられていてもよい。このような磁石装置を、磁石装置の第5変形例として説明する。
【0123】
図13は、実施の形態の磁石装置の第5変形例を模式的に示す平面図である。なお、図13では、二点鎖線で囲まれた領域RG1を拡大して断面図として示している。
【0124】
図13に示すように、本第5変形例の磁石装置は、磁石部3(図1参照)に代え、超伝導バルク体、即ち超伝導バルク部4の途中の内部に設けられた磁石部3aを備えている。磁石部3aは、磁石MG4を有し、磁石MG4は、第1極性を有する第1磁極としてのN極PL1と、第1極性と反対の第2極性を有する第2磁極としてのS極PL2と、を有する。
【0125】
また、本第5変形例の磁石装置に備えられた超伝導装置は、超伝導バルク体としての超伝導バルク部4を有する。また、超伝導バルク部4は、磁石MG4即ち磁石部3aを囲む筒状の筒部CP7を含む、超伝導バルク体としての部材SB6を有する。筒部CP7は、環状経路7に沿った軸線11(図3参照)を中心とした筒状の筒部である。部材SB6は、第二種超伝導体よりなり、超伝導状態で、下部臨界磁場を超え且つ上部臨界磁場以下の磁場を、磁束をピン止めすることにより磁場を捕捉する。そして、N極PL1、超伝導バルク部4及びS極PL2は、ある軸6の周りの環状経路7に沿って、N極PL1、超伝導バルク部4、S極PL2の順に配置されている。
【0126】
図13に示す例では、複数の部材SB2を含む部材群SG2、複数の部材SB1を含む部材群SG1、及び、複数の部材SB3を含む部材群SG3については、前述した図1を用いて説明した実施の形態の磁石装置と同様にすることができる。一方、図13に示す例では、複数の部材SB2と、複数の部材SB1との間に、部材SB6が配置され、複数の部材SB2と、部材SB6との間に、複数の部材SB7を含む、超伝導バルク体群としての部材群SG4が配置されている。複数の部材SB7の各々は、環状経路7に沿った軸線11(図3参照)を中心とした筒状の筒部CP8を含む。複数の部材SB7を含む部材群SG4については、複数の部材SB1を含む部材群SG1と同様にすることができる。なお、複数の部材SB2、複数の部材SB7、複数の部材SB1及び複数の部材SB3は、磁石部3aの外部に設けられている。また、複数の部材SB7の各々は、超伝導状態で磁場を捕捉する。
【0127】
また、図13に示す例では、複数の部材SB2、複数の部材SB7、部材SB6、複数の部材SB1及び複数の部材SB3は、ある軸6の周りの環状経路7に沿って、複数の部材SB2、複数の部材SB7、部材SB6、複数の部材SB1、複数の部材SB3の順に配置されている。即ち、N極PL1、部材群SG1、部材群SG3、部材群SG2、部材群SG4及びS極PL2は、環状経路7に沿って、N極PL1、部材群SG1、部材群SG3、部材群SG2、部材群SG4、S極PL2の順に配置されている。そして、それぞれ磁場を捕捉している複数の部材SB2と、それぞれ磁場を捕捉している複数の部材SB7と、磁場を捕捉している部材SB6と、それぞれ磁場を捕捉している複数の部材SB1と、それぞれ磁場を捕捉している複数の部材SB3と、磁石部3aと、により磁気回路5が形成される。即ち、環状経路7に沿って、N極PL1から、複数の部材SB1、複数の部材SB3、複数の部材SB2及び複数の部材SB7を順次経てS極PL2に戻る磁気回路5が形成される。また、N極PL1から出る磁束は、筒部CP7の内部を通ってS極PL2に戻る。
【0128】
図13に示す例では、部材群SG1に含まれる複数の部材SB1、部材群SG3に含まれる複数の部材SB3、部材群SG2に含まれる複数の部材SB2、及び、部材群SG4に含まれる複数の部材SB7は、複数の部材SB1、複数の部材SB3、複数の部材SB2及び複数の部材SB7の各々が超伝導状態で磁場を捕捉することにより、N極PL1から出た磁束が、複数の部材SB1、複数の部材SB3、複数の部材SB2及び複数の部材SB7を順次通ってS極PL2に戻るように、環状経路7に沿って配列されている。
【0129】
本第5変形例でも、実施の形態と同様に、部材SB6を含む超伝導バルク部4は、二ホウ化マグネシウム又は鉄ニクタイドよりなることが好ましい。また、本第5変形例でも、実施の形態と同様に、超伝導装置は、部材SB6を含む超伝導バルク部4を冷却する冷却部として、例えばGM冷凍機等の冷凍機21を有してもよい。
【0130】
本第5変形例では、超伝導バルク部4の途中の部分が磁石部3aを囲み、磁石部3aが超伝導バルク部4の途中の部分の内部に設けられている。このような場合でも、実施の形態と同様に、磁気回路用部材の体積を小さくすることができ、磁気回路を小型化又は軽量化することができる。そのため、実施の形態に比べて、磁石部が配置される位置を変更することができるので、磁石装置の設計の自由度を向上させることができる。
【0131】
なお、超伝導バルク部4が、複数の部材SB2、複数の部材SB7、複数の部材SB1及び複数の部材SB3のいずれも有さず、部材SB6のみを有してもよい。このとき、磁場を捕捉している部材SB6と、磁石部3aと、により磁気回路5が形成される。このような場合でも、磁石装置に超伝導バルク部4が備えられていない場合に比べれば、磁気回路用部材の体積を小さくすることができ、磁気回路を小型化又は軽量化することができる。
【0132】
また、超伝導バルク部4のうち、部材SB6以外の部分が、図10に示したように、部材群SG2及びSG3を有さず、部材群SG1及びSG4のみを有してもよく、環状経路7のうちN極PL1から出てS極PL2に戻る部分において、複数の部材SB1及び複数の部材SB7の各々の環状経路7に垂直な断面の外周長さが、互いに等しくてもよい。
【0133】
<MRI装置>
次に、本実施の形態の超伝導装置を備えた磁石装置を有するMRI装置について説明する。
【0134】
図14は、実施の形態の超伝導装置を備えた磁石装置を有するMRI装置を示すブロック図である。
【0135】
MRI装置31は、核磁気共鳴(Nuclear Magnetic Resonance:NMR)現象を利用して被検体32の生体組織の断層画像を得る。MRI装置31は、図14に示すように、静磁場発生磁石33と、傾斜磁場コイル34及び傾斜磁場電源35と、RF(Radio Frequency)送信コイル36及びRF送信部37と、RF受信コイル38及び信号処理部39と、計測制御部41と、を備えている。なお、図14では図示を省略するが、MRI装置31は、MRI装置31全体を制御する全体制御部と、計測操作を行い、且つ、計測結果等を表示する表示・操作部と、被検体32を静磁場発生磁石33の内部に出し入れする搬送装置と、を備えていてもよい。
【0136】
静磁場発生磁石33として、本実施の形態の超伝導装置である超伝導装置1及び磁石部3(図1参照)を備えた磁石装置2を用いることができる。前述した図1及び図2を用いて説明したように、磁石装置2に備えられる磁石部3(図1参照)は、環状経路7(図1参照)に沿った直流磁場を発生させるものであればよい。このような磁石部3(図1参照)として、永久磁石、又は、銅線等を巻回した常伝導コイル又は超伝導線を巻回した超伝導コイル等の電磁石、を用いることができる。なお、図14に示す例では、前述した図1を用いて説明したように、静磁場発生磁石33、即ち磁石装置2に備えられる磁石部3(図1参照)として、ヘルムホルツコイルよりなる電磁石が設けられている。
【0137】
傾斜磁場コイル34は、MRI装置31の実空間座標系(静止座標系)における互いに交差、好適には直交するX軸、Y軸及びZ軸の3軸方向の各々を中心としてそれぞれ巻回された3個のコイルを含む。傾斜磁場コイル34は、傾斜磁場電源35に接続されている。傾斜磁場電源35は、傾斜磁場コイル34に電流を供給する。具体的には、傾斜磁場電源35は、計測制御部41による制御に従って、傾斜磁場コイル34に電流を供給する。これにより、X軸、Y軸及びZ軸の3軸方向に傾斜磁場が発生する。従って、傾斜磁場コイル34と傾斜磁場電源35とにより、傾斜磁場を発生させる傾斜磁場発生部が形成される。
【0138】
RF送信コイル36は、被検体32にRFパルス信号を照射するコイルである。RF送信コイル36は、RF送信部37に接続されている。RF送信部37は、RF送信コイル36に、高周波パルス電流を供給する。これにより、被検体32の生体組織を構成する原子のスピンにNMR現象が誘起される。具体的には、RF送信部37は、計測制御部41による制御に従って、高周波パルス電流を振幅変調し、増幅してRF送信コイル36に供給することにより、RFパルス信号が被検体32に照射される。従って、RF送信コイル36とRF送信部37とにより、RFパルス信号を発生させるRFパルス発生部が形成される。
【0139】
RF受信コイル38は、被検体32の生体組織のNMR現象により放出されるエコー信号を受信するコイルである。RF受信コイル38は、信号処理部39に接続されている。RF受信コイル38が受信したエコー信号は、信号処理部39に送られる。
【0140】
信号処理部39は、RF受信コイル38により受信されたエコー信号の検出処理を行う。具体的には、信号処理部39は、計測制御部41による制御に従って、受信されたエコー信号を増幅し、直交位相検波により直交する二系統の信号に分割し、それぞれを一定数だけサンプリングし、サンプリングされた信号をA/D変換してデジタルデータとしてのエコーデータを取得する。そして、信号処理部39は、エコーデータに対して各種処理を行い、処理が行われたエコーデータを計測制御部41に送る。
【0141】
計測制御部41は、被検体32の断層画像の形成に必要なエコーデータを収集するため、傾斜磁場電源35、RF送信部37及び信号処理部39に制御信号を送信してこれらを制御する制御部である。
【0142】
具体的には、計測制御部41は、ある一定の撮像シーケンスの制御データに基づいて、傾斜磁場電源35、RF送信部37及び信号処理部39を制御して、被検体32へのRFパルス信号の照射及び傾斜磁場パルスの印加と、被検体32からのエコー信号の検出と、を繰り返して実行し、被検体32の撮像領域についての断層画像の形成に必要なエコーデータを収集する。
【0143】
MRI装置31が有する磁石装置としての静磁場発生磁石33が発生させる磁場の強度は、MRI装置以外の装置が有する磁石装置が発生させる磁場の強度に比べて強い。そのため、MRI装置31が有する静磁場発生磁石33において、磁場を磁気回路の内部に閉じ込めるために、磁気回路の断面積を大きくする必要があり、磁気回路用部材として鉄等の磁性体を用いる場合には、磁性体の体積を大きくする必要性が増加する。従って、MRI装置が有する磁石装置において、磁気回路を小型化又は軽量化することができない、という課題は、MRI装置以外の装置が有する磁石装置において、磁気回路を小型化又は軽量化することができない、という課題に比べて、顕著なものである。
【0144】
よって、本実施の形態の超伝導装置を備えた磁石装置をMRI装置が有する磁石装置として用いる場合、磁気回路を小型化又は軽量化できるという効果は、本実施の形態の超伝導装置を備えた磁石装置をMRI装置以外の装置が有する磁石装置として用いる場合に比べて、顕著なものになる。
【0145】
前述した図1及び図2を用いて説明したように、磁石装置2に備えられる磁石部3が磁石MG1と磁石MG2とを有し、ヘルムホルツコイルよりなる場合を考える。このような場合、磁石MG1と磁石MG2との間の空間8が開放されているため、磁石MG1と磁石MG2との間に、被検体として例えば人間が検査のために立ち入った場合でも、閉塞感をあまり感じずに検査を受けることができる。
【0146】
一方、前述した図9を用いて説明したように、磁石装置2に備えられる磁石部3が磁石MG3のみを有する場合を考える。このような場合には、磁石部3が磁石MG1と磁石MG2とを有する場合に比べ、磁石部3の内部に、例えば人体等の被検体を出し入れしにくくなるものの、磁気回路用部材として磁性体を用いる場合に比べて、磁気回路用部材の体積を小さくする効果が得られ、磁気回路を容易に小型化又は軽量化する効果が得られる。
【実施例
【0147】
以下、実施例に基づいて本実施の形態をさらに詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。
【0148】
(実施例1)
以下では、実施の形態で図3及び図4を用いて説明した筒部CP1を含む部材SB1、即ち磁気チューブを、二ホウ化マグネシウム(MgB)よりなる超伝導バルク体を用いて、実施例1の超伝導装置として形成し、実施例1の超伝導装置が磁場を閉じ込め可能かを評価するための評価試験を行った。実施例1の超伝導装置として、それぞれ軸線11を中心とした筒状の筒部CP1をそれぞれ含む4個の超伝導バルク体としての部材SB1を有する超伝導装置1を形成した。4個の部材SB1は、軸線11に沿って互いに間隔を空けて配列されていた。
【0149】
[超伝導バルク体の形成]
まず、超伝導バルク体として、筒状の筒部CP1を含み、且つ、MgBよりなる超伝導バルク体としての部材SB1を、形成した。
【0150】
図15は、実施例1の超伝導装置が有する超伝導バルク体の製造方法の一部のステップを示すフロー図である。
【0151】
まず、粒径が325メッシュで純度が99.9%であるマグネシウム(Mg)粉末と、粒径が300メッシュで純度が99%であるホウ素(B)粉末とを、Mg粉末とB粉末との混合比がモル比即ち原子数比で1:2になるように混合し、混合された粉末を粉砕した(図15のステップS11)。
【0152】
次に、混合及び粉砕された粉末を一軸方向に加圧して、円盤状のペレットに成型した(図15のステップS12)。この成型されたペレットにおいて、ペレットの軸線の周りの外径は、30mmであり、ペレットの軸線に沿った長さは、10mmであった。また、加圧する際の圧力は、100MPaであった。
【0153】
次に、成型された円盤状のペレットを、内部の雰囲気がアルゴン(Ar)雰囲気下に制御された管状炉を用いて、850℃で3時間熱処理した(図15のステップS13)。このように、Ar雰囲気下で熱処理する理由は、Mgを酸化させずにBと反応させてMgBを形成するためである。これにより、MgBの焼結体よりなり、且つ、円盤状の超伝導バルク体を形成した。形成されたMgBよりなる超伝導バルク体の臨界温度Tは、約39Kであった。また、形成されたMgBよりなる超伝導バルク体におけるMgBの平均粒径は、300nmであった。
【0154】
次に、円盤状の超伝導バルク体を軸線に沿って貫通する貫通孔を形成した(図15のステップS14)。これにより、図3及び図4に示したように、筒状の筒部CP1を含み、且つ、MgBよりなる超伝導バルク体、即ち部材SB1を、形成した。上記したように、この超伝導バルク体、即ち部材SB1において、筒部CP1の軸線11の外径DM1(図4参照)は、30mmであり、筒部CP1の内径DM2(図4参照)は、10mmであり、筒部CP1の軸線11に沿った長さHT1(図4参照)は、10mmであった。
【0155】
なお、実施例1では、混合及び粉砕された粉末を円盤状のペレットに成型し、熱処理して円盤状の焼結体を形成した後、貫通孔を形成することにより、筒状の筒部を含む超伝導バルク体を形成した。しかし、混合及び粉砕された粉末を筒状に成型し、熱処理することにより、筒状の筒部を含む超伝導バルク体を形成してもよい。
【0156】
[超伝導装置の形成]
次に、実施例1の超伝導装置として、軸線11を中心とした筒状の筒部CP1をそれぞれ含む4個の超伝導バルク体としての部材SB1を有する超伝導装置1を形成した。4個の部材SB1の各々がそれぞれ有する4個の筒部CP1は、軸線11に沿って互いに間隔を空けて配列されていた。前述したように、筒部CP1の外径DM1(図4参照)は、30mmであり、筒部CP1の内径DM2(図4参照)は、10mmであり、筒部CP1の軸線11に沿った長さHT1(図4参照)は、10mmであった。また、軸線11に沿って互いに隣り合う2個の部材SB1の各々がそれぞれ有する2個の筒部CP1の間の間隔即ちギャップGP1(図4参照)は、3mmであった。
【0157】
図3及び図4に示すように、実施例1では、互いに隣り合う2個の部材SB1の各々がそれぞれ有する2個の筒部CP1の間には、スペーサSP1が配置されていた。スペーサSP1は、超伝導装置1が磁場を捕捉している時に、互いに隣り合う2個の部材SB1の各々がそれぞれ有する2個の筒部CP1が磁気吸引力により吸着することを防止する。実施例1では、スペーサSP1として、ステンレス鋼よりなるステンレスリングを用いた。スペーサSP1は、軸線11を中心とした筒状の筒部CP4を有する。筒部CP4の軸線11を中心とした外径(外径DM1)は、30mmであり、筒部CP4の軸線11を中心とした内径(内径DM2)は、10mmであり、筒部CP4の軸線11に沿った長さ(ギャップGP1)は、3mmであった。
【0158】
[超伝導装置が磁場を閉じ込め可能かを評価する評価試験]
次に、実施例1の超伝導装置が磁場を閉じ込め可能かを評価する評価試験を行った。
【0159】
まず、超伝導装置1に対して、超伝導装置1が有する4個の部材SB1の各々の筒部CP1の軸線11に平行な磁場(外部磁場)を印加し、外部磁場が印加された状態で、GM(Gifford-McMahon)冷凍機により、MgBの転移温度(約39K)よりも低い温度である10Kの温度に冷却し、MgBを超伝導状態とした。この状態で、外部磁場の強度を0まで減少させて外部磁場を除去した。これにより、超伝導状態にある4個の部材SB1に、磁場を捕捉させた。
【0160】
図4に示すように、軸線11上に配置された5個のホール素子(商品名:Model HGT-2101 Magnetic Field Sensor、LakeShore社製)51~55を用いて、実施例1の超伝導装置が捕捉した磁場の強さを測定した。
【0161】
図4に示すように、ホール素子51は、軸線11上で、且つ、図4における上から1番目の部材SB1の筒部CP1と2番目の部材SB1の筒部CP1との間、言い換えれば図4における上から1番目のスペーサSP1の筒部CP4内に配置されていた。ホール素子52は、図4における上から2番目の部材SB1の筒部CP1内で、且つ、軸線11に沿った長さ方向における中央位置に配置されていた。ホール素子53は、軸線11上で、且つ、図4における上から2番目の部材SB1の筒部CP1と3番目の部材SB1の筒部CP1との間、言い換えれば図4における上から2番目のスペーサSP1の筒部CP4内に配置されていた。ホール素子54は、図4における上から3番目の部材SB1の筒部CP1内で、且つ、軸線11に沿った長さ方向における中央位置に配置されていた。ホール素子55は、軸線11上で、且つ、図4における上から3番目の部材SB1の筒部CP1と4番目の部材SB1の筒部CP1との間、言い換えれば図4における上から3番目のスペーサSP1の筒部CP4内に配置されていた。
【0162】
図16は、実施例1の超伝導装置内に配置された5個のホール素子により測定された局所磁束密度の外部磁場依存性を示すグラフである。図16は、前述したように、10Kの温度において、20000Oe(2T)の外部磁場を印加した状態から、外部磁場の強度を0まで減少させて外部磁場を除去させて、超伝導装置1に磁場を捕捉させる際に、ホール素子51~55を用いて測定した局所磁束密度を示す。なお、図16において、Ch1、Ch2、Ch3、Ch4、Ch5は、それぞれホール素子51、52、53、54、55が測定した局所磁束密度を示す。
【0163】
その結果、ホール素子51の測定値(図16のCh1)、ホール素子52の測定値(図16のCh2)、ホール素子53の測定値(図16のCh3)、ホール素子54の測定値(図16のCh4)及びホール素子55の測定値(図16のCh5)のいずれにおいても、局所磁束密度は、略2T(20000G)であった。即ち、ホール素子51~55のいずれの測定値においても、外部磁場を除去させる過程における局所磁束密度の測定値の減少量は、20000Oeの外部磁場が印加された状態を基準としたときに、1%以内であり、略減衰していなかった。
【0164】
また、図16に示すように、外部磁場が0の状態、即ち超伝導装置1内に磁場が捕捉された状態において、ホール素子52の測定値とホール素子54の測定値との差、即ちギャップを介して隣り合う2個の超伝導バルク体の各々がそれぞれ有する2個の筒部CP1の内部に捕捉された局所磁束密度の差は、20000Oeの外部磁場が印加された状態を基準としたときに、1%以内であった。また、ホール素子52の測定値とホール素子51又は53の測定値との差も、20000Oeの外部磁場が印加された状態を基準としたときに、1%以内であり、ホール素子54の測定値とホール素子53又は55の測定値との差も、20000Oeの外部磁場が印加された状態を基準としたときに、1%以内であった。
【0165】
従って、実施例1の超伝導装置では、互いに間隔を空けて配列された4個の超伝導バルク体としての部材SB1が磁場を捕捉できること、即ち、当該4個の部材SB1の間で磁場を無損失で伝送できることが明らかになった。よって、実施例1の超伝導装置により、磁気回路を小型化又は軽量化できることが明らかになった。
【0166】
次に、超伝導装置に捕捉された磁場の時間依存性を測定した。
【0167】
図17は、実施例1の超伝導装置内に配置された5個のホール素子により測定された局所磁束密度の時間依存性を示すグラフである。図17は、前述したように、10Kの温度において、2T(20000G)の磁場を捕捉させた後、20Kの温度において約17時間保持する際に、ホール素子51~55を用いて測定した局所磁束密度を示す。なお、図17において、Ch1、Ch2、Ch3、Ch4、Ch5は、それぞれホール素子51、52、53、54、55が測定した局所磁束密度を、測定開始の時点での局所磁束密度で規格化して示している。
【0168】
その結果、ホール素子51の測定値(図17のCh1)、ホール素子52の測定値(図17のCh2)、ホール素子53の測定値(図17のCh3)、ホール素子54の測定値(図17のCh4)及びホール素子55の測定値(図17のCh5)のいずれにおいても、保持時間の経過に伴う局所磁束密度の測定値の減少量は、1%以内であり、略減衰していなかった。
【0169】
従って、実施例1の超伝導装置では、当該4個の超伝導バルク体としての部材SB1が時間が経過しても安定して磁場を捕捉できること、即ち、当該4個の部材SB1の間で時間が経過しても安定して磁場を無損失で伝送できることが明らかになった。
【0170】
(実施例2)
次に、二ホウ化マグネシウム(MgB)よりなる超伝導バルク体に代えて、鉄ニクタイドよりなる超伝導バルク体を用いたこと以外、実施例1の超伝導装置と同様にして、実施の形態で図3及び図4を用いて説明した筒部CP1を含む部材SB1、即ち磁気チューブを、実施例2の超伝導装置として形成し、実施例2の超伝導装置が磁場を閉じ込め可能かを評価するための評価試験を行った。実施例2の超伝導装置として、軸線11を中心とした筒状の筒部CP1をそれぞれ含む4個の超伝導バルク体としての部材SB1を有する超伝導装置1を形成した。4個の部材SB1の各々がそれぞれ有する4個の筒部CP1は、軸線11に沿って互いに間隔を空けて配列されていた。
【0171】
実施例2では、鉄ニクタイドよりなる超伝導バルク体として、(Ba,K)FeAs等よりなる超伝導バルク体を合成した。まず、バリウム(Ba)、カリウム(K)、鉄(Fe)及びヒ素(As)のモル比が上記の組成式で表されるモル比となるように秤量した原料粉末を、粉砕し、混合した。次に、混合した原料粉末を、所定の形状に成型した後、例えば500~1100℃で24~240時間熱処理した。形成された鉄ニクタイドよりなる超伝導バルク体の臨界温度Tは、約30Kであり、MgBよりなる超伝導バルク体の臨界温度Tと同程度であった。
【0172】
次に、実施例1で説明した方法と同様の方法により、実施例2の超伝導装置を形成し、超伝導状態である超伝導装置に磁場を捕捉させ、捕捉された磁場を測定した。その結果、鉄ニクタイドよりなる超伝導バルク体の臨界温度がMgBよりなる超伝導バルク体の臨界温度と同程度に高いことから予想できるものの、図16及び図17を用いて説明した結果と略同様の結果が得られた。また、鉄ニクタイドとして、前述した各種の鉄ニクタイドを用いた場合も略同様の結果が得られた。これにより、MgBに代え鉄ニクタイドを用いた場合でも、実施例1の超伝導装置と同様に、磁気回路を小型化又は軽量化できることが明らかになった。
【0173】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【0174】
本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【0175】
例えば、前述の各実施の形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除若しくは設計変更を行ったもの、又は、工程の追加、省略若しくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0176】
本発明は、磁石装置に備えられる超伝導装置、及び、磁石装置に適用して有効である。
【符号の説明】
【0177】
1 超伝導装置
2 磁石装置
3、3a 磁石部
4 超伝導バルク部
5 磁気回路
6 軸
7 環状経路
8 空間
9 磁束
11 軸線
21 冷凍機
22 本体部
23 コールドヘッド
31 MRI装置
32 被検体
33 静磁場発生磁石
34 傾斜磁場コイル
35 傾斜磁場電源
36 RF送信コイル
37 RF送信部
38 RF受信コイル
39 信号処理部
41 計測制御部
51~55 ホール素子
CP1~CP8 筒部
DM1 外径
DM2 内径
EX1 延在部
GP1 ギャップ
HT1 長さ
LN1~LN3 外周長さ
MG1~MG4 磁石
PL1、PL4 N極
PL2、PL3 S極
PP1 板部
RG1 領域
SB1~SB7 部材
SG1~SG4 部材群
SP1 スペーサ
TL2、TL3 台部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17