(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-10
(45)【発行日】2022-08-19
(54)【発明の名称】自己免疫疾患および骨疾患の治療剤としてのペプチドの用途
(51)【国際特許分類】
C07K 7/06 20060101AFI20220812BHJP
C07K 7/08 20060101ALI20220812BHJP
C07K 14/00 20060101ALI20220812BHJP
A61K 38/06 20060101ALI20220812BHJP
A61K 38/08 20190101ALI20220812BHJP
A61K 38/10 20060101ALI20220812BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20220812BHJP
A61P 19/08 20060101ALI20220812BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220812BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20220812BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20220812BHJP
A61P 19/10 20060101ALI20220812BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220812BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20220812BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20220812BHJP
A61P 1/02 20060101ALI20220812BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20220812BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20220812BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20220812BHJP
A61P 11/02 20060101ALI20220812BHJP
A61P 27/16 20060101ALI20220812BHJP
A61P 13/10 20060101ALI20220812BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20220812BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20220812BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20220812BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20220812BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20220812BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20220812BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20220812BHJP
A61P 21/04 20060101ALI20220812BHJP
A61P 7/06 20060101ALI20220812BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20220812BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20220812BHJP
C07K 5/097 20060101ALN20220812BHJP
C07K 5/08 20060101ALN20220812BHJP
【FI】
C07K7/06 ZNA
C07K7/08
C07K14/00
A61K38/06
A61K38/08
A61K38/10
A61K38/16
A61P19/08
A61P29/00
A61P37/06
A61P19/02
A61P19/10
A61P35/00
A61P35/04
A61P7/00
A61P1/02
A61P37/08
A61P17/00
A61P17/06
A61P11/02
A61P27/16
A61P13/10
A61P13/12
A61P1/04
A61P11/06
A61P25/00
A61P1/00
A61P27/02
A61P29/00 101
A61P21/00
A61P21/04
A61P7/06
A61P1/16
A61P37/02
C07K5/097
C07K5/08
(21)【出願番号】P 2020515231
(86)(22)【出願日】2018-09-14
(86)【国際出願番号】 KR2018010873
(87)【国際公開番号】W WO2019054808
(87)【国際公開日】2019-03-21
【審査請求日】2020-03-13
(31)【優先権主張番号】10-2017-0118947
(32)【優先日】2017-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2017-0118949
(32)【優先日】2017-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0110473
(32)【優先日】2018-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0110480
(32)【優先日】2018-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】517432569
【氏名又は名称】カイン サイエンス シーオー.,エルティーディー.
【氏名又は名称原語表記】KINE SCIENCES Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】(Yeoksam-dong,Info Storm Building)2F,525,Seolleung-ro Gangnam-gu Seoul 06149,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】チョ、デホ
(72)【発明者】
【氏名】キム、キョンウン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ミョンス
(72)【発明者】
【氏名】パク、ソンヨン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、ヒヨン
【審査官】鈴木 崇之
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第10112002(DE,A1)
【文献】国際公開第2003/023067(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0143993(US,A1)
【文献】特表2015-522586(JP,A)
【文献】国際公開第2017/155233(WO,A1)
【文献】Chem. Pharm. Bull,1985年,Vol. 33, No. 1,pp. 184-201
【文献】Chem. Pharm. Bull.,1987年,Vol. 35, No. 2,pp. 468-478
【文献】Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,2000年,Vol. 10,pp. 2639-2642
【文献】INFECTION AND IMMUNITY,2001年,Vol. 69, No. 12,p. 7946-7949
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記配列番号1に示される一般式1のアミノ酸配列から構成されたペプチド:
(化1)
(X
1-X
2-X
3)
n...(1)
前記式中、
X
1は、プロリン(Proline;P)およびセリン(Serine;S)からなる群から選ばれ
ており、
X
2は、プロリン(Proline;P)、セリン(Serine;S)およびトレオニン(Threonine;T)からなる群から選ばれ
ており、
X
3は、プロリン(Proline;P)、セリン(Serine;S)、トレオニン(Threonine;T)、グルタミン(Glutamine;Q)、アスパラギン(Asparagine;N)およびシステイン(Cysteine;C)からなる群から選ばれ
ており、
nは、
2~7の整数であり、
一般式1のアミノ酸配列は、配列番号6~10、及び、配列番号12~19に示されるアミノ酸配列である。
【請求項2】
前記ペプチドのN-またはC-末端は、アセチル基、フルオレニルメトキシカルボニル基、ホルミル基、パルミトイル基、ミリスチル基、ステアリル基、およびポリエチレングリコール(PEG)からなる群から選ばれる保護基と結合されていることを特徴とする、請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
下記配列番号1に示される一般式1のアミノ酸配列から構成されたペプチドを有効成分として含有する骨疾患(bone disease)、炎症性疾患または自己免疫疾患(autoimmune disease)の予防および治療用の薬学的組成物:
(化1)
(X
1-X
2-X
3)
n...(1)
前記式中、
X
1は、プロリン(Proline;P)およびセリン(Serine;S)からなる群から選ばれ
ており、
X
2は、プロリン(Proline;P)、セリン(Serine;S)およびトレオニン(Threonine;T)からなる群から選ばれ
ており、
X
3は、プロリン(Proline;P)、セリン(Serine;S)、トレオニン(Threonine;T)、グルタミン(Glutamine;Q)、アスパラギン(Asparagine;N)およびシステイン(Cysteine;C)からなる群から選ばれ
ており、
nは、1~7の整数であり、
一般式1のアミノ酸配列は、配列番号6~19に示されるアミノ酸配列である。
【請求項4】
前記骨疾患は、関節炎、骨粗鬆症、骨転移癌(bone metastatic cancer)、固形癌骨転移、固形癌骨転移による筋骨格合併症、悪性腫瘍による高カルシウム血症、多発性骨髄腫、原発性(primary)骨腫瘍、歯周疾患、炎症性歯槽骨吸収疾患、炎症性骨吸収疾患およびパジェット病(Paget's disease)からなる群から選ばれるいずれか1種以上であることを特徴とする、
請求項3に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
前記炎症性疾患は、アトピー、乾癬、皮膚炎、アレルギー、関節炎、鼻炎、中耳炎、咽喉炎、扁桃炎、膀胱炎、腎臓炎、骨盤炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、強直性脊椎炎、全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematodes;SLE)、喘息、浮腫、遅延性アレルギー(IV型アレルギー)、移植拒否、移植片対宿主病、自己免疫脳脊髓炎、多発性硬化症、炎症性腸疾患、嚢胞性線維症、糖尿性網膜症、虚血再灌流傷害、血管再狭窄、糸球体腎炎、および胃腸管アレルギーからなる群から選ばれることを特徴とする、
請求項3に記載の薬学的組成物。
【請求項6】
前記自己免疫疾患は、関節リウマチ(rheumatoid arthritis)、シェーグレン症候群(Sjogren's syndrome)、全身性硬化症(systemic sclerosis)、多発性筋炎(polymyositis)、全身性血管炎(systemic angitis)、混合性結合組織病(mixed connective tissue disease)、クローン病(Crohn's disease)、橋本病(Hashimoto's disease)、グレーブス病(Grave's disease)、グッドパスチャー症候群(Goodpasture's sydrome)、ギラン・バレー症候群(Guillain-Barre syndrom)、特発性血小板減少性紫斑病、過敏性腸症候群、重症筋無力症、嗜眠症、尋常性天疱瘡、悪性貧血、原発性胆汁性肝硬変症、潰瘍性大腸炎、血管炎、ウェゲナー肉芽腫症(Wegener's granulomatosis)および乾癬(Psoriasis)からなる群から選ばれることを特徴とする、
請求項3に記載の薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨疾患および自己免疫疾患の治療剤としてのペプチドの用途に関し、さらに詳しくは、本発明の一般式1で表わされるアミノ酸配列から構成されたペプチド、および前記ペプチドの骨粗鬆症などをはじめとする骨疾患、炎症性疾患または関節リウマチなどをはじめとする自己免疫疾患の治療用途に関する。
【背景技術】
【0002】
骨組織は、コラーゲン、糖タンパクなどの細胞外基質(extracellular substance)と造骨細胞(osteoblast)、破骨細胞(osteoclast)、骨細胞など多種多様な細胞から構成されている。特に、造骨細胞(osteoblast)及び破骨細胞(osteoclast)間の相互バランスは、健康な骨格系の形成に欠かせない。すなわち、骨代謝(bone metabolism)と骨再形成(bone remodeling)は、骨基質(bone matrix)を作る造骨細胞(osteoblasts)と骨を吸収する破骨細胞(osteoclasts)との間のバランスの取れた活動が骨の恒常性の維持に重要である。
【0003】
骨組織は、コラーゲン、糖タンパクなどの細胞外基質(extracellular substance)と造骨細胞(osteoblast)、破骨細胞(osteoclast)、骨細胞など多種多様な細胞から構成されている。また、破骨細胞による骨吸収と造骨細胞による新たな骨基質の形成および無機質化の過程が繰り返し起こる代謝器官であって、造骨細胞の活動による骨の形成の方が、破骨細胞の活動による骨吸収よりも多くなる。骨の再形成は、成長が終わった後、古い骨を除去し、再び新たな骨に置き換える過程であって、副甲状腺ホルモン(PTH)、カルシトニン、エストロゲンなどのホルモンとIGFI(insulin-like growth factor I;インスリン様成長因子I)などの骨組織から分泌される多種多様な成長因子、TNF-α(tumor necrosis factor-α;腫瘍壊死因子-α)などのサイトカイン(cytokines)を用いて造骨細胞と破骨細胞との間の活性バランスを調節し且つ恒常性を維持する。これらの造骨細胞と破骨細胞との間のバランスが崩れる場合、骨粗鬆症や関節炎などの疾患が引き起こされる。
【0004】
特に、造骨細胞と破骨細胞との間のバランスが崩れてしまうと、破骨細胞による過剰な骨の破壊が起こり、これは、骨粗鬆症などの疾患につながる。このような破骨細胞は、骨代謝過程において骨吸収を担う特化した細胞であって、前駆細胞である単核球(monocyte)やマクロファージ(macrophage)から分化プログラムにより形成される。なお、破骨細胞は、αvβ3インテグリン(integrin)などを用いて骨に結合し、酸性環境を造成する一方で、各種のコラゲナーゼ(collagenase)およびプロテアーゼ(protease)を分泌して骨吸収(bone resorption)を引き起こすので、このような破骨細胞の抑制が、骨疾患の治療の有効な方法になり得る。
【0005】
また、自己免疫疾患は、人体の免疫系が異常を引き起こして、自己細胞が自己細胞を攻撃することである。ヒトの免疫系は、基本的に、人体に侵入した微生物および癌細胞の発生などに対して外部抗原として認識し、これを攻撃して除去する強力な力を有しているものの、自己寛容性があるため、自己細胞に対しては攻撃をしない。これを人体の自己寛容(self-tolerance)現象と呼ぶ。しかしながら、免疫系の自己寛容が破壊される場合、人体は、自己細胞(または、自己抗原)に反応する自己反応T細胞が活性化され、自己抗体(auto antibody)が生成されて絶えず自己細胞を破壊し、且つ、炎症および免疫反応を引き起こす。
【0006】
免疫系において抗原に特異的に反応する細胞には、T細胞とB細胞がある。T細胞は、抗原提示細胞(antigen presenting cell)により提示される特定の抗原に出会ったとき、その抗原に応じて反応を示すが、抗原提示細胞が提示する抗原が「non-self」として認識されれば、これを除去しようとする免疫反応を示し、「self」として認識されれば、免疫反応が無視される寛容性を示す。T細胞が抗原に対して活性化されれば、ほとんどの場合、B細胞が次から次へと活性化され、B細胞は形質細胞(plasma cell)に変わって認識した特定の抗原に対して特異的に反応する抗体を生成する。したがって、人体に寛容性が崩れながら自己免疫が生じる場合、T細胞が自己抗原を非正常的に認識して活性化され、B細胞もまた活性化されることで自己抗原に反応する自己抗体を生成してしまい、我々の身体では自己細胞を攻撃する免疫反応が起こってしまう。
【0007】
また、これと同様に、臓器移植患者においても、臓器の移植後に免疫系が移植された組織を「non-self」として認識すれば、移植された臓器を攻撃して除去しようとする臓器移植拒否反応が起こってしまう。これを抑えるために、免疫細胞の活性化を抑え、免疫細胞が移植された臓器に移動することを抑えるなど様々な免疫抑制剤が用いられているが、継続した免疫抑制剤の使用は色々な副作用を招く。
【0008】
一方、近年では、CD4+T細胞系であるTh17細胞が自己免疫疾患の炎症の誘発と進行に核心的な役割を果たすことが判明されており、このようなTh17細胞の重要性は、この細胞から分泌されたIL-17が自己免疫疾患と直接的な関係があることが判明されることにより益々高まりつつある。
【0009】
さらに、Th17細胞は、骨の破壊の主な原因であるRANKLおよび色々な炎症性サイトカインを誘導し(Chabaud and Miossec、2001;Connell and McInnes、2006)、それによって、炎症および関節破壊機序をさらに活性化させることが知られている。したがって、Th17細胞は、関節リウマチをはじめとする自己免疫疾患、骨疾患に関わるシグナル伝達過程において核心病因細胞であると認められているので、Th17細胞の分化を有効に抑える候補物質の発掘が求められている。
【0010】
なお、関節リウマチは、多発性関節炎を特徴とする炎症性疾患であって、自己免疫現象が主な機序であることが知られている。症状を調べてみると、関節滑膜(synovial membrane)組織に炎症が生じながら、マクロファージ、樹枝状細胞およびTリンパ球、Bリンパ球などが滑膜組織に移動し、その結果、関節液が増えて関節が晴れながら痛症が現れる。このような炎症が持続して炎症性滑膜組織が増生(hyperplasia)すれば、骨と軟骨を破壊して関節の構造が変形され、運動障害が生じる。なお、様々な研究結果によれば、関節リウマチ患者において、炎症性サイトカインが滑膜繊維細胞と軟骨細胞からコラーゲン分解酵素および中性プロテアーゼ(protease)を産生し、産生されたこれらの酵素はコラーゲンとプロテオグリカン(proteoglycan)を破壊して関節軟骨を破壊することが知られている。
【0011】
そこで、本発明者らは、治療剤としての副作用を極力抑えながら有効な治療効果を有する新規な骨疾患および自己免疫疾患の治療剤を開発するために鋭意努力したところ、本発明において製造したペプチドが骨粗鬆症をはじめとする骨疾患、または炎症性疾患および関節リウマチをはじめとする自己免疫疾患の治療に有用であることを見出すことにより、本発明を完成するに至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、骨疾患(bone disease)、炎症性疾患および自己免疫疾患(autoimmune disease)の予防および治療用のペプチドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記の目的を達成するために、本発明は、
下記配列番号1に示される一般式1のアミノ酸配列から構成されたペプチド、および前記ペプチドを有効成分として含有する骨疾患、炎症性疾患および自己免疫疾患の予防および治療用の薬学的組成物、または骨疾患、炎症性疾患または自己免疫疾患の予防および改善用の健康食品を提供する。
【0014】
(化1)
(X1-X2-X3)n...(1)
前記式中、X1~X3は、それぞれプロリン(Proline;P)、セリン(Serine;S)、トレオニン(Threonine;T)、グルタミン(Glutamine;Q)、アスパラギン(Asparagine;N)およびシステイン(Cysteine;C)からなる群から選ばれるいずれか1種であり、
nは、1~10の整数であり、但し、前記一般式1のアミノ酸配列が配列番号2に示されるPSPを含み、且つ、n=1~3の場合は除く。
【発明の効果】
【0015】
本発明のペプチドは、自己免疫疾患に関わるT細胞(T cell)の活性およびTh17細胞(T helper 17 cell)の分化を有意的に抑え、関節炎動物モデルにおいて著しい関節炎の治療および改善効果を有することを確認したので、前記ペプチドは、骨疾患、炎症性疾患または関節リウマチなどの多種多様な自己免疫疾患の治療剤に有効成分として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の合成ペプチドによる活性T細胞集団(%)を示す図である。
【
図2】本発明の合成ペプチドによる活性T細胞集団(%)をグラフで示す図である。
【
図3】本発明の合成ペプチドによるT細胞の活性化の抑制率(%)を示す図である。
【
図4】本発明の合成ペプチドによるTh17細胞の分化の抑制効能を示す図である。
【
図5】コラーゲン誘発関節炎マウスモデルの製造過程および本発明に係るペプチドの投与時期を概略的に示す模式図である。
【
図6】本発明のPep1ペプチドの関節炎の改善効果を示す図である。
【
図7】本発明のPep2ペプチドの関節炎の改善効果を示す図である。
【
図8】本発明のPep4ペプチドの関節炎の改善効果を示す図である。
【
図9】本発明のPep6ペプチドの関節炎の改善効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の用語は、下記のように定義する。
【0018】
本発明において、天然的に存在するアミノ酸に対する通常の1文字および3文字コードが用いられるだけではなく、Aib(α-アミノイソ酪酸)、Sar(N-methylglycine)などの他のアミノ酸に対して一般的に許容される3文字コードが用いられる。なお、本明細書において略語で述べられたアミノ酸は、IUPAC-IUB命名法に従い記載された。
【0019】
本発明の「ペプチド(peptide)」とは、アミド結合(または、ペプチド結合)により連結された2以上のアミノ酸からなるポリマーを意味し、本発明の目的からみて、骨疾患、炎症性疾患、自己免疫疾患の治療効果を有するペプチドを意味する。
【0020】
本発明の「安定性」とは、生体内タンパク質切断酵素の攻撃から本発明のペプチドを保護するインビボ安定性だけではなく、貯蔵安定性(例えば、常温貯蔵安定性)も意味する。
【0021】
本発明の「予防」とは、本発明に係る薬学的組成物の投与により疾患を抑えたり発病を遅らせたりするあらゆる行為を意味する。
【0022】
本発明の「治療」とは、本発明に係る薬学的組成物の投与により疾患に対する病症が好転されたり有利に変更されたりするあらゆる行為を意味する。
【0023】
本発明の「個体」とは、疾患の治療を必要とする対象を意味し、より具体的には、ヒトまたはヒトではない霊長類、マウス(mouse)、イヌ、ネコ、ウマおよびウシなどの哺乳類を意味する。
【0024】
本発明の「改善」とは、治療される状態と関わるパラメータ、例えば、症状の重症度を少なくとも減少させるあらゆる行為を意味する。
【0025】
以下、本発明を詳しく説明する。
【0026】
本発明は、
下記配列番号1に示される一般式1のアミノ酸配列から構成されたペプチド、および前記ペプチドを有効成分として含有する骨疾患、炎症性疾患または自己免疫疾患の予防および治療用の薬学的組成物を提供する:
【0027】
(化1)
(X1-X2-X3)n...(1)
前記式中、X1~X3は、それぞれプロリン(Proline;P)、セリン(Serine;S)、トレオニン(Threonine;T)、グルタミン(Glutamine;Q)、アスパラギン(Asparagine;N)およびシステイン(Cysteine;C)からなる群から選ばれるいずれか1種であり、nは、1~10の整数であり、但し、前記一般式1のアミノ酸配列が配列番号2に示されるPSPであり、且つ、n=1~3の場合は除く。
【0028】
前記ペプチドは、前記一般式1を用いて様々なペプチドを製造することができ、これは、いずれも本発明に含まれる。なお、前記X1~X3は、それぞれプロリン(Proline;P)、セリン(Serine;S)およびトレオニン(Threonine;T)からなる群から選ばれるいずれか1種であることが好ましく、プロリン(Proline;P)またはセリン(Serine;S)であることがより好ましいが、これに限定されるものではない。
【0029】
また、前記式中、nは、1~6の整数であることが好ましく、1~3であることがより好ましい。
【0030】
前記本発明のペプチドは、当該分野において広く公知となっている種々の方法により取得することができる。例えば、ポリヌクレオチド組み換えとタンパク質発現システムを用いて製造したり、ペプチド合成などの化学的合成を用いて試験管内において合成する方法、および無細胞タンパク質合成法などにより製造したりすることができる。
【0031】
さらに、より良い化学的な安定性、強化された薬理特性(半減期、吸収性、力価、効能など)、変更された特異性(例えば、幅広い生物学的な活性スペクトル)、減少された抗原性を取得するために、ペプチドのN-またはC-末端に保護基が結合されていてもよい。好ましくは、前記保護基は、アセチル基、フルオレニルメトキシカルボニル基、ホルミル基、パルミトイル基、ミリスチル基、ステアリル基またはポリエチレングリコール(PEG)であってもよいが、ペプチドの改質、特に、ペプチドの安定性を増進させ得る成分であれば、制限なしに含み得る。
【0032】
前記骨疾患は、関節炎、骨粗鬆症、骨転移癌(bone metastatic cancer)、固形癌骨転移、固形癌骨転移による筋骨格合併症、悪性腫瘍による高カルシウム血症、多発性骨髄腫、原発性(primary)骨腫瘍、歯周疾患、炎症性歯槽骨吸収疾患、炎症性骨吸収疾患およびパジェット病(Paget's disease)からなる群から選ばれるいずれか1種以上であることが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0033】
前記炎症性疾患は、アトピー、乾癬、皮膚炎、アレルギー、関節炎、鼻炎、中耳炎、咽喉炎、扁桃炎、膀胱炎、腎臓炎、骨盤炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、強直性脊椎炎、全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematodes;SLE)、喘息、浮腫、遅延性アレルギー(IV型アレルギー)、移植拒否、移植片対宿主病、自己免疫脳脊髓炎、多発性硬化症、炎症性腸疾患、嚢胞性線維症、糖尿性網膜症、虚血再灌流傷害、血管再狭窄、糸球体腎炎、および胃腸管アレルギーからなる群から選ばれることが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0034】
前記自己免疫疾患は、関節リウマチ(rheumatoid arthritis)、シェーグレン症候群(Sjogren's syndrome)、全身性硬化症(systemic sclerosis)、多発性筋炎(polymyositis)、全身性血管炎(systemic angitis)、混合性結合組織病(mixed connective tissue disease)、クローン病(Crohn's disease)、橋本病(Hashimoto's disease)、グレーブス病(Grave's disease)、グッドパスチャー症候群(Goodpasture's sydrome)、ギラン・バレー症候群(Guillain-Barre syndrom)、特発性血小板減少性紫斑病、過敏性腸症候群、重症筋無力症、嗜眠症、尋常性天疱瘡、悪性貧血、原発性胆汁性肝硬変症、潰瘍性大腸炎、血管炎、ウェゲナー肉芽腫症(Wegener's granulomatosis)および乾癬(Psoriasis)からなる群から選ばれることが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0035】
さらにまた、本発明のペプチドをコードするポリヌクレオチドを用いても同じ治療効果を奏することができるので、本発明のペプチドをコードするポリヌクレオチドもまた本発明に含まれることは言うまでもない。
【0036】
本発明の具体的な実施例において、本発明者らは、前記一般式1[(X1-X2-X3)n]を用いて、多種多様なペプチドを製作した(表1を参照)。
【0037】
また、本発明者らは、前記ペプチドのT細胞の活性の抑制効果を確認したところ、表1のペプチドは、平均15~25%までT細胞の活性を有意的に抑え、これらのうち、任意に選別したペプチドのT細胞の活性の抑制効果は、
図1ないし
図3に示す(
図1ないし
図3を参照)。
【0038】
さらに、本発明者らは、前記<実施例1>において製作した合成ペプチドがTh17細胞の分化を抑える効能を確認したところ、本発明のペプチドは、Th17細胞の分化を有意的に抑えることを確認した(
図4を参照)。
【0039】
なお、本発明者らは、関節リウマチ動物モデルを製作した後(
図5を参照)、本発明のペプチドの治療効果を確認したところ、有意的な関節炎の改善効果を示し、特に、陽性対照群MTXに比べて、ほぼ同じ効能が現れることを確認した(
図6ないし
図9を参照)。
【0040】
したがって、本発明のペプチドは、自己免疫疾患に関わるT細胞(T cell)の活性およびTh17細胞(T helper 17 cell)の分化を有意的に抑え、関節炎動物モデルにおいて著しい関節炎の治療および改善効果を有することを確認したので、前記ペプチドは、骨疾患、炎症性疾患または関節リウマチなどの多種多様な自己免疫疾患の治療剤に有効成分として有効に用いることができる。
【0041】
一方、本発明のペプチドまたはこれをコードするポリヌクレオチドは、コロイド懸濁液、粉末、食塩水、脂質、リポゾーム、微小球体(microspheres)、またはナノ球状粒子などの薬学的に許容可能な担体により運ばれ得る。これらは、運搬手段と錯体を形成するか、あるいは関連していてもよく、脂質、リポゾーム、微細粒子、金、ナノ粒子、ポリマー、縮合反応剤、多糖類、ポリアミノ酸、デンドリマー、サポニン、吸着増進物質または脂肪酸などの当業界における公知の運搬システムを用いて生体内運搬が行われてもよい。
【0042】
これらに加えて、薬学的に許容される担体は、製剤の際に通常的に用いられるラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、澱粉、アカシア、ゴム、リン酸カルシウム、アルギネート、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微細結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、滑石、ステアリン酸マグネシウムおよびミネラルオイルなどを含んでいてもよいが、これらに限定されるものではない。なお、前記成分に加えて、潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤などをさらに含んでいてもよい。
【0043】
本発明の薬学的組成物は、目的とする方法に従って経口投与しても非経口投与(例えば、筋肉内、静脈内、腹腔内、皮下、皮内、または局所への適用)してもよく、投与量は、患者の状態および体重、疾病の重症度、薬物のタイプ、投与経路および時間によるが、当業者によって適宜に選択可能である。
【0044】
本発明の薬学的組成物は、薬学的に有効な量で投与する。本発明において、「薬学的に有効な量」とは、医学的な治療に適用可能な合理的なベネフィット/リスクの比率であって、疾患を治療するのに十分な量を意味し、有効な容量レベルは、患者の疾患の種類、重症度、薬物の活性、薬物への敏感度、投与時間、投与経路および排出割合、治療期間、同時に用いられる薬物を含めた要素、並びにその他の医学分野によく知られている要素に応じて決定可能である。本発明に係る薬学的組成物は、個別の治療剤として投与してもよく、他の骨疾患、炎症性疾患、もしくは自己免疫疾患の治療剤と併せて投与されてもよく、従来の骨疾患、炎症性疾患、もしくは自己免疫疾患の治療剤とは同時に、別途に、または順次に投与されてもよく、単回または複数回投与されてもよい。前記要素をすべて考慮した上で、副作用のない最小限の量で最大の効果が得られる量を投与することが重要であり、これは、当業者によって容易に決定可能である。
【0045】
具体的に、本発明の薬学的組成物の有効量は、患者の年齢、性別、状態、体重、体内への活性成分の吸収度、不活性率、排泄速度、疾病の種類、併用される薬物により異なり、投与経路、肥満の重症度、性別、体重、年齢などに応じて増減可能である。
【0046】
なお、本発明は、本発明のペプチドまたはこれをコードするポリヌクレオチドを有効成分として含有する骨疾患、炎症性疾患または自己免疫疾患の予防および改善用の健康食品を提供する。
【0047】
前記健康食品は、疾患の予防または改善のために当該疾患の発病段階前または発病後に、治療のための薬剤と同時にまたは別々に使用可能である。
【0048】
本発明の健康食品において、有効成分を食品にそのまま添加したり、他の食品または食品成分と一緒に用いたりしてもよく、通常の方法に従って適宜に使用可能である。有効成分の混合量は、その使用目的(予防または改善用)に応じて好適に決定可能である。一般に、食品または飲料の製造に際して、本発明の組成物は、原料に対して、好ましくは、15重量%以下、好ましくは、10重量%以下の量で添加可能である。しかしながら、健康および衛生を目的としたり、健康の調節を目的としたりする長期間の摂取の場合には、前記量は、前記範囲以下であってもよい。
【0049】
本発明の健康食品は、前記有効成分を含有することに加えて、特別な制限なしに他の成分を必須成分として含有してもよい。例えば、通常の飲料のように色々な香味剤または天然炭水化物などを追加成分として含有してもよい。前述した天然炭水化物の例は、モノサッカライド、例えば、ブドウ糖、果糖など;ジサッカライド、例えば、マルトース、スクロースなど;およびポリサッカライド、例えば、デキストリン、シクロデキストリンなどの通常の糖、およびキシリトール、ソルビトール、エリスリトールなどの糖アルコールであってもよい。前述したもの以外の香味剤として、天然香味剤(タウマチン、ステビア抽出物(例えば、レバウジオシドA、グリチルリチンなど))および合成香味剤(サッカリン、アスパルテームなど)を有利に用いることができる。前記天然炭水化物の割合は、当業者の選択により適宜に決定可能である。
【0050】
前記に加えて、本発明の健康食品は、色々な栄養剤、ビタミン、鉱物(電解質)、合成風味剤および天然風味剤などの風味剤、着色剤および増進剤(チーズ、チョコレートなど)、ペクチン酸およびその塩、アルギン酸およびその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に用いられる炭酸化剤などを含有してもよい。これらの成分は、独立してまたは組み合わせて用いてもよく、このような添加剤の割合もまた、当業者により適宜に選択可能である。
【0051】
以下、本発明を実施例および実験例により詳しく説明する。
【0052】
但し、下記の実施例および実験例は、単に本発明を例示するものに過ぎず、本発明の内容が下記の実施例および実験例に限定されるものではない。
【0053】
<実施例1> ペプチドの製作
下記一般式1に基づいて、様々なペプチドを製作した。次いで、高性能液体クロマトグラフィ(SHIMADZU Prominence HPLC)を用いて合成されたペプチドのそれぞれを純粋に分離し、カラムとしては、資生堂カプセルパックC18カラム(4.6×50mm)を用いた。なお、質量分析機(HP 1100 series LC/MSD)を用いて、合成されたペプチドのそれぞれの質量を確認した。
【0054】
(化1)
(X1-X2-X3)n...(1)
前記式中、X1~X3は、それぞれプロリン(Proline;P)、セリン(Serine;S)、トレオニン(Threonine;T)、グルタミン(Glutamine;Q)、アスパラギン(Asparagine;N)およびシステイン(Cysteine;C)からなる群から選ばれるいずれか1種であり、
nは、1~10の整数であり、但し、前記一般式1のアミノ酸配列が配列番号2に示されるPSPであり、且つ、n=1~3の場合は除く。
【0055】
なお、前記方法により合成されたペプチドの一部を下記の表1に書き並べた。
【0056】
【0057】
<実験例1> T細胞の活性の抑制効果の確認
前記<実施例1>において製作した合成ペプチドのT細胞の活性の抑制効能を確認するために、マウスのリンパ節から抽出したT細胞を用いてex vivo活性の抑制実験を行った。
【0058】
具体的に、まず、T細胞の活性化を誘導するために、96ウェルプレートにCD3抗体をコーティングして4℃で一晩中インキュベーションし、CD3抗体付き96ウェルを作製した。次いで、マウスから抽出したナイーブT細胞を96ウェルプレートに1×105/wellずつ接種し、前記<実施例1>において製作した各合成ペプチドを処置して18時間培養した後、フローサイトメトリー方法で活性T細胞集団を確認した。そのために、培養したそれぞれのグループから同じ数字の細胞を捕集し、PBSで洗浄する過程を経た後、ヘルパーT細胞マーカーであるウサギ抗マウスCD4とT細胞の活性化マーカーであるウサギ抗マウスCD69抗体を用いて染色過程を行った。PBSで洗浄した後、CD4+CD69+T細胞集団を解析した。
【0059】
その結果、前記<実施例1>において合成したペプチドは、平均15~25%までT細胞活性を有意的に抑えることを確認した。
【0060】
また、前記<実施例1>において合成したペプチドのうち、表2に示すペプチドのT細胞の活性の抑制効果については、
図1ないし
図3に示す。
【0061】
具体的に、活性化を誘導しなかったグループ(0.98%)に比べて、CD3抗体で活性化させたグループにおいて活性T細胞が74.8%に増加し、各合成ペプチドを処置したグループでは55~62%まで減少することを確認した。なお、それぞれの合成ペプチドの活性T細胞の抑制率は、<実施例1>において合成したペプチドと同様に、約15%から最大25%であることを確認した。
【0062】
したがって、本願発明の合成ペプチドは、T細胞の活性を有意的に抑えて自己免疫疾患の治療に使用可能であることを確認した(
図1ないし
図3)。
【0063】
【0064】
<実験例2> Th17細胞の分化の抑制効果の確認
前記<実施例1>において製作した合成ペプチドがTh17細胞の分化を抑える効能を確認するために、マウスのリンパ節から抽出したナイーブCD4+T細胞にTCR活性化処理を施すとともにIL-6の20ng/mlとTGF-betaの5ng/mlを処置してTh17細胞への分化を誘導した。
【0065】
これと同時に、前記<実験例1>の表2に開示されたペプチド3種(Pep2、Pep3、Pep4)を10~1000ng/mlの濃度でそれぞれ処置した。次いで、3日間インキュベーションした後、CD4+IL-17+T細胞集団を解析した。
【0066】
その結果、
図4に示すように、Th17細胞への分化を誘導しなかったグループ(1.2%)に比べて、Th17細胞への分化を誘導したグループにおいて約2.5倍増加する傾向が見られ(3.14%)、Pep2、Pep3、Pep4ペプチドをそれぞれ処置したグループでは、分化を誘導しなかったグループとほぼ同様に、Th17細胞の割合が減少することを確認した(
図4)。
【0067】
<実験例3> コラーゲン誘発関節炎(Collagen-induced arthritis;CIA)マウスモデルを用いた関節リウマチの治療効果の確認
<3-1> 関節リウマチマウスモデルの製作
前記<実施例1>において製作したペプチドの関節リウマチの改善効果を確認するために、公知の文献(Nat Protoc.2007;2(5):1269-75.)を参考にして、関節リウマチマウスモデルを製作した。
【0068】
具体的に、CIAマウスモデルは、ヒトの関節リウマチとほぼ同様の特徴を示す自己免疫疾患関節炎モデルであって、関節リウマチ動物実験において最も頻繁に用いられるマウスモデルである。CIAマウスモデルは、まず、ウシII型コラーゲン(Bovine type II collagen、Chondrex、USA)とフロイント完全アジュバント(Freund's complete adjuvant、Chondrex、USA)を1:1にて混合して乳状化させた後、乳状化されたコラーゲン溶液50μlを6週齢のDBA/1Jマウスの尻尾に皮内注射して1次免疫(immunization)させた。1次免疫してから2週目にウシII型コラーゲンとフロイント不完全アジュバント(Freund's incomplete adjuvant、Chondrex、USA)を1:1にて混合して乳状化させた後、乳状化されたコラーゲン溶液50μlをマウスの尻尾に皮内注射して2次免疫(ブースト)を誘導した。2次免疫後、翌日から1週間に3回ずつ各ペプチドを腹腔投与してペプチドの関節リウマチの治療効果を観察した。投与ペプチドとしては、表2に開示されたペプチド4種(Pep1、Pep2、Pep4、Pep6)を選定した(
図5)。
【0069】
<3-2> 関節リウマチマウスモデルを用いた治療効果の確認
本発明のペプチドの処置に伴う関節リウマチの進行推移を調べるために、経時的な関節リウマチの深化度を関節リウマチの進行指数で評価して測定した。
【0070】
具体的な実験条件について知らない観察者2人が1週間に3回ずつ、関節炎の進行の度合いを評価した。このとき、関節炎の進行指数は、下記の表2のRossoliniecらによる関節炎の進行評価基準に基づき、各脚当たりに0点~4点で評価して、合計で0点~16点(4本の脚を合算)で示し、次いで、2人の観察者が評価した結果の平均値を算出して関節炎の重症度を数値化させた。
【0071】
【0072】
その結果、
図6ないし
図9に示すように、正常マウス(normal)グループと比較して、CIAを引き起こしたマウス(Vehicle control;PBS)において関節炎のスコア(点数)が格段に増加することが分かり、ペプチド4種(Pep1、Pep2、Pep4、Pep6)をそれぞれ腹腔投与したグループにおいて関節炎の改善効能が現れることを確認した。なお、陽性対照群MTXに比べてほぼ同じ効能を示すことを確認した(
図6ないし
図9)。
【0073】
したがって、本発明のペプチドが関節炎をはじめとする多種多様な骨疾患、自己免疫疾患の治療剤として使用可能であることを確認した。
【配列表】