IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 学校法人中部大学の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-10
(45)【発行日】2022-08-19
(54)【発明の名称】アミド化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 231/02 20060101AFI20220812BHJP
   C07C 237/22 20060101ALI20220812BHJP
   C07K 1/06 20060101ALN20220812BHJP
【FI】
C07C231/02
C07C237/22
C07K1/06
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020515584
(86)(22)【出願日】2019-04-25
(86)【国際出願番号】 JP2019017786
(87)【国際公開番号】W WO2019208731
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2022-01-25
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2018/016767
(32)【優先日】2018-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018204489
(32)【優先日】2018-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、研究成果展開事業「基質支配による触媒的ペプチド合成システムの実用化検証」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500433225
【氏名又は名称】学校法人中部大学
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(72)【発明者】
【氏名】山本 尚
(72)【発明者】
【氏名】村松 渉
(72)【発明者】
【氏名】服部 倫弘
【審査官】水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/204144(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/060843(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
CASREACT(STN)
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミド化合物を製造する方法であって、
一般式(1)により示される化合物の式中右側のカルボキシル基と、一般式(2)により示される化合物の式中左側のアミノ基との間に、ルイス酸触媒及びシリル化剤の存在下、アミド結合を形成させることにより、一般式(3)により示される化合物を合成する工程を含むと共に、
シリル化剤が、下記一般式(4-1)で表されるシリルイミダゾール系化合物である、製造方法。
【化1】

【化2】

【化3】

(但し、上記一般式(1)、(2)、及び(3)において、
1、R2、R4、及びR5は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基、若しくはチオール基、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい、一価の炭化水素基若しくは複素環式基を表し、ここで、一価の炭化水素基若しくは複素環式基の場合は、連結基を介して窒素原子に結合していてもよく、
3及びR6は、それぞれ独立に、水素原子、カルボキシル基、若しくは水酸基、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい、一価の炭化水素基若しくは複素環式基を表し、ここで、一価の炭化水素基若しくは複素環式基の場合は、連結基を介して炭素原子に結合していてもよく、
ここで、R1とR3とが互いに結合して、R1が結合する炭素原子及びR3が結合する窒素原子と共に、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい複素環を形成していてもよく、また、R4とR6とが互いに結合して、R4が結合する炭素原子及びR6が結合する窒素原子と共に、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい複素環を形成していてもよく、
1~A4は、それぞれ独立に、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい炭素数1~3の二価の脂肪族炭化水素基を表し、
p1~p4は、それぞれ独立に、0又は1を表し、
m及びnは、それぞれ独立に、1以上の整数であり、かつ、[ ]内の構造で表される構成単位の数を表し、
PG1は、アミノ基の保護基を表し、
PG2は、カルボキシル基の保護基を表す。
また、上記一般式(2)の式中左側のアミノ基は、酸と塩を形成していてもよい。)
【化4】

(但し、上記一般式(4-1)において、R 11 ~R 15 は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい、炭素数1~10の直鎖又は分枝鎖状のアルキル基又はアルコキシ基を表す。)
【請求項2】
前記PG1が、1又は2以上の置換基を有していてもよい一価の炭化水素基又は複素環式基を表す(但し、当該炭化水素基又は複素環式基と、前記PG1が結合するアミノ基の窒素原子との間に、連結基が存在していてもよい)、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記ルイス酸触媒が、金属触媒である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記金属触媒が、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、タンタル、及びニオブからなる群より選択される1種以上の金属を含む化合物である、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記工程が、60℃以下の温度で行われる、請求項1~のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記方法が、前記アミド結合の形成後、前記PG1により保護されたアミノ基及び/又は前記PG2により保護されたカルボキシル基を脱保護することを更に含む、請求項1~の何れか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミド化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ペプチドに代表されるアミド化合物は、医薬品、化粧品、機能性食品をはじめ、幅広い分野で利用されており、その合成法の開発は、合成化学における重要な研究課題として精力的に実施されてきた(非特許文献1~6)。しかし、そのペプチド合成に最も重要であるアミド化には有効な触媒が殆ど存在していない。従って、副生成物を生ずる当量の試薬を用いざるを得ず、しかも多段階の反応を繰り返すペプチド合成はアトム・エコノミー(原子収率)の観点から極めて非効率な合成であり、副生成物は膨大な量となり、また、有効な精製手段も少ない。その結果、副生成物の廃棄と精製にかかるコストがペプチド合成の殆どの必要経費を占め、この分野の発展における最大障壁の一つとなっている。
【0003】
アミノ酸又はその誘導体を原料とするペプチド合成では、高立体選択的にアミド化を行うことが求められる。高立体選択的なアミド化としては、生体内での酵素反応が挙げられる。例えば、生体内では、酵素と水素結合を巧みに利用して、極めて高立体選択的にペプチドを合成している。しかしながら、酵素反応は、大量生産には不向きであり、合成化学に適用すると、膨大な金銭的・時間的なコストが必要となる。
【0004】
合成化学においても、触媒を用いたアミド化が検討されているが、従来の手法では、主にカルボン酸を活性化する手法によりアミド結合を形成しているため、ラセミ化の進行が早く、高立体選択的且つ効率的にアミド化合物を合成することは困難である。
【0005】
本発明者等は、ヒドロキシエステル化合物を特定の金属触媒の存在下でアミド化することにより、高化学選択的にアミド化合物を合成できることを見出し、既に特許出願を行っている(特許文献1)。本方法は優れた方法であるが、より広範なアミノ酸又はその誘導体に適用可能な方法が求められている。
【0006】
また、従来の方法では、複数のアミノ酸又はその誘導体が連結されてなるペプチドに、更にアミノ酸又はその誘導体をアミド結合によりライゲーション(Chemical Ligation)することや、二以上のペプチドをアミド結合によりライゲーションすることは、極めて困難である。斯かるペプチドに対するライゲーションのためのアミド化法としては、硫黄原子を有するアミノ酸を用い、硫黄原子の高い反応性を利用してライゲーションを行う方法(非特許文献7)や、アミノ酸のヒドロキシアミンを合成し、ヒドロキシアミンの高い反応性を利用してライゲーションを行う方法(非特許文献8)が知られているが、前者は硫黄原子を有するアミノ酸の合成が難しく、後者は数工程に亘るヒドロキシアミン合成が別途必要となるため、何れも時間・費用がかかり、効率性の面で難がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2017/204144号
【非特許文献】
【0008】
【文献】Annu. Rev. Biophys. Biomol. Struct., 2005, 34, 91-118
【文献】Tetrahedron, 2005, 6, 10827-10852
【文献】Chem. Rev., 2007, 107, 5759-5812
【文献】Chem. Rev., 2011, 111, 6557- 6602
【文献】Org. Process Res. Dev., 2016, 20(2), 140-177
【文献】Chem. Rev., 2016, 116, 12029-12122
【文献】Science, 1992, 256, 221-225
【文献】Angew. Chem. Int. Ed., 2006, 45, 1248-1252
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
斯かる背景の下、高立体選択的且つ効率的にアミド化を生じさせ、アミド化合物を製造することが可能な方法や、ペプチドに対して更にアミド化を生じさせ、アミド化合物を製造することが可能な方法の開発が望まれている。
【0010】
本発明の一の主目的は、複数のアミノ酸の間に、高立体選択的且つ効率的にアミド化を生じさせ、アミド化合物を製造することが可能な、新規な方法を提供することである。
【0011】
本発明の別の主目的は、複数のアミノ酸が連結されてなるペプチドに、更にアミノ酸や別のペプチドをアミド結合により連結することにより、アミド化合物を製造することが可能な、新規な方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは鋭意検討の結果、ルイス酸触媒及びシリル化剤の存在下、アミノ基を保護した第一のアミノ酸又はペプチドの末端カルボキシル基と、カルボキシル基を保護した第二のアミノ酸又はペプチドの末端アミノ基との間にアミド結合を形成して両者を連結することにより、高立体選択的且つ効率的にアミド化合物を製造することができることを見出した。更に、斯かる方法は、ペプチドとアミノ酸との連結や、ペプチドとペプチドとの連結によるにアミド化合物の製造にも適用可能であることを見出し、本発明に到達した。
【0013】
すなわち、本発明の一側面は、アミド化合物を製造する方法であって、後述の一般式(1)により示される化合物の式中右側のカルボキシル基と、後述の一般式(2)により示される化合物の式中左側のアミノ基との間に、ルイス酸触媒及びシリル化剤の存在下、アミド結合を形成させることにより、後述の一般式(3)により示される化合物を合成する工程を含む製造方法に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、複数のアミノ酸の間に、高立体選択的且つ効率的にアミド化を生じさせ、アミド化合物を製造することが可能となる。
【0015】
また、本発明によれば、複数のアミノ酸が連結されてなるペプチドに、更にアミノ酸や別のペプチドをアミド結合により連結することにより、アミド化合物を製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1-1】図1-1は、参考例1で得られたH-NMRスペクトルである。
図1-2】図1-2は、参考例1で得られた29Si-NMRスペクトルである。
図2-1】図2-1は、参考例2で得られたH-NMRスペクトルである。
図2-2】図2-2は、参考例2で得られた29Si-NMRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を具体的な実施の形態に即して詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施の形態に束縛されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、任意の形態で実施することが可能である。
【0018】
なお、本開示で引用する特許公報、特許出願公開公報、及び非特許文献は、何れもその全体が援用により、あらゆる目的において本開示に組み込まれるものとする。
【0019】
・用語の定義:
本開示において「アミノ酸」とは、カルボキシル基及びアミノ基を有する化合物を意味する。別途明示しない限り、アミノ酸の種類は特に限定されない。例えば、光学異性の観点からは、D-アミノ酸でもL-アミノ酸でもよい。また、カルボキシル基とアミノ基との相対位置の観点からは、α-アミノ酸、β-アミノ酸、γ-アミノ酸、δ-アミノ酸等の何れであってもよい。
【0020】
本開示において「ペプチド」とは、複数のアミノ酸がペプチド結合を介して連結された化合物を意味する。別途明示しない限り、ペプチドを構成する複数のアミノ酸単位は、互いに同じ種類のアミノ酸単位であってもよく、二種類以上の異なるアミノ酸単位であってもよい。
【0021】
本開示において「アミノ基」とは、アンモニア、第一級アミン、又は第二級アミンから水素を除去して得られる、それぞれ式-NH、-NRH、又は-NRR’(但しR及びR’はそれぞれ置換基を意味する。)で表される官能基を意味する。
【0022】
本開示において、別途明示しない限り、炭化水素基は、脂肪族でも芳香族でもよい。脂肪族炭化水素基は鎖状でも環状でもよい。鎖状炭化水素基は直鎖状でも分岐鎖状でもよい。環状炭化水素基は、単環式でも橋かけ環式でもスピロ環式でもよい。炭化水素基は、飽和でもよいが、不飽和でもよく、言い換えれば、一又は二以上の炭素-炭素二重結合及び/又は三重結合を含んでいてもよい。即ち、炭化水素基は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、シクロアルキニル基、アリール基等を含む概念である。なお、別途明示しない限り、炭化水素基の一又は二以上の水素原子が、任意の置換基で置換されていてもよく、炭化水素基の一又は二以上の炭素原子が、価数に応じた任意のヘテロ原子に置き換えられていてもよい。
【0023】
本開示において「炭化水素オキシ基」とは、前記定義の炭化水素基がオキシ基(-O-)の一方の結合手に連結された基を意味する。
【0024】
本開示において「炭化水素カルボニル基」とは、前記定義の炭化水素基がカルボニル基(-C(=O)-)の一方の結合手に連結された基を意味する。
【0025】
本開示において「炭化水素スルホニル基」とは、前記定義の炭化水素基がスルホニル基(-S(=O)-)の一方の結合手に連結された基を意味する。
【0026】
本開示において、複素環式基は、飽和でもよいが、不飽和でもよく、言い換えれば、一又は二以上の炭素-炭素二重結合及び/又は三重結合を含んでいてもよい。また、複素環式基は単環式でも橋かけ環式でもスピロ環式でもよい。また、複素環式基の複素環構成原子に含まれるヘテロ原子は制限されないが、例としては窒素、酸素、硫黄、リン、ケイ素等が挙げられる。
【0027】
本開示において「複素環オキシ基」とは、前記定義の複素環式基がオキシ基(-O-)の一方の結合手に連結された基を意味する。
【0028】
本開示において「複素環カルボニル基」とは、前記定義の複素環式基がカルボニル基(-C(=O)-)の一方の結合手に連結された基を意味する。
【0029】
本開示において「複素環スルホニル基」とは、前記定義の複素環式基がスルホニル基(-S(=O)-)の一方の結合手に連結された基を意味する。
【0030】
本開示において「置換基」とは、それぞれ独立に、別途明示しない限り、本発明の製造方法におけるアミド化工程が進行すれば特に制限されず、任意の置換基を意味する。例としては、これらに限定されるものではないが、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基、チオール基、スルホン酸基、アミノ基、アミド基、イミノ基、イミド基、炭化水素基、複素環式基、炭化水素オキシ基、炭化水素カルボニル基(アシル基)、炭化水素オキシカルボニル基、炭化水素カルボニルオキシ基、炭化水素置換アミノ基、炭化水素置換アミノカルボニル基、炭化水素カルボニル置換アミノ基、炭化水素置換チオール基、炭化水素スルホニル基、炭化水素オキシスルホニル基、炭化水素スルホニルオキシ基、複素環オキシ基、複素環カルボニル基、複素環オキシカルボニル基、複素環カルボニルオキシ基、複素環アミノ基、複素環アミノカルボニル基、複素環カルボニル置換アミノ基、複素環置換チオール基、複素環スルホニル基、複素環オキシスルホニル基、複素環スルホニルオキシ基等が挙げられる。また、これらの官能基が、その価数及び物理化学的性質が許容する限りにおいて、更にこれらの官能基により置換された官能基も、本開示における「置換基」に含まれるものとする。なお、ある官能基が置換基を有する場合、その個数は、その価数及び物理化学的性質が許容する限りにおいて、特に限定されない。また、複数の置換基が存在する場合、これらの置換基は互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0031】
本開示において、Meはメチル基を表し、Etはエチル基を表し、Prはプロピル基を表し、i-Prはイソプロピル基を表し、Buはブチル基を表し、t-BuはTert-ブチル基を表す。
【0032】
本開示において、Acはアセチル基を表し、acacはアセチルアセトナートを表し、Cpはシクロペンタジエニルを表し、Tfはトリフルオロメタンスルホニルを表し、Trtはトリチル基を表し、THFはテトラヒドロフランを表す。
【0033】
本開示において、アミノ酸及びその残基は、当業者に周知の三文字略称で表す場合がある。主なアミノ酸の三文字略称を以下の表に示す。
【0034】
【表1】
【0035】
本開示において、β-ホモアミノ酸及びその残基は、対応するα-アミノ酸の三文字略称の前に「Ho」を付して表す場合がある。
【0036】
・本発明の製造方法の概要:
本発明は、アミド化合物を製造する方法であって、一般式(1)により示される化合物(以降適宜「化合物(1)」と称する。)の式中右側のカルボキシル基と、一般式(2)により示される化合物(以降適宜「化合物(2)」と称する。)の式中左側のアミノ基との間に、ルイス酸触媒及びシリル化剤の存在下、アミド結合を形成させることにより、一般式(3)により示される化合物(以降適宜「化合物(3)」と称する。)を製造する工程(以降適宜「アミド化工程」と称する。)を含む方法(以降適宜「本発明の製造方法」と称する。)に関する。
【0037】
【化1】
【0038】
【化2】
【0039】
【化3】
【0040】
言い換えれば、化合物(1)は、式中左側にPGにより保護されたアミノ基を有し、式中右側にカルボン酸を有するアミノ酸又はペプチドに相当する。また、化合物(2)は、式中左側にアミノ基を有し、式中右側にPGにより保護されたカルボン酸を有するアミノ酸又はペプチドに相当する。また、化合物(3)は、化合物(1)の式中右側のカルボン酸と、化合物(2)の式中左側のアミノ基とが、アミド結合を形成して連結されたペプチドに相当する。
【0041】
本発明の製造方法では、前記の化合物(1)及び化合物(2)を、ルイス酸触媒及びシリル化剤の存在下で接触させ、化合物(1)の式中右側のカルボキシル基と、化合物(2)の式中左側のアミノ基との間にアミド結合を形成させる。これにより、前記の化合物(3)が製造される。
【0042】
本発明の製造方法の特徴として、複数のアミノ酸の間に、高立体選択的且つ効率的にアミド化を生じさせ、アミド化合物を製造することが可能となる点が挙げられる。また別の特徴として、複数のアミノ酸が連結されてなるペプチドに、更にアミノ酸又はペプチドをアミド結合により連結することにより、より多くのアミノ酸から構成されるアミド化合物を製造することが可能となる点も挙げられる。特に、本発明の製造方法によれば、立体障害が大きいアミノ酸やペプチドを用いた場合でも、高立体選択的且つ効率的にアミド結合を形成し、アミド化合物を製造することが可能である。また、本発明の製造方法によれば、シリル化剤及びルイス酸触媒を用いることで、特段の活性化剤を必要とせずにアミド結合を形成することが可能となる。
【0043】
本発明の製造方法におけるアミド化工程の具体的な反応過程は不明であるが、以下のように推測される。まず化合物(1)のカルボキシル基がシリル化剤と反応し、いったんトリメチルシリルエステル等のシリルエステル基に変換されるものと推測される(下記反応式(A)参照)。次いで、前記シリルエステルが、ルイス酸触媒存在下で化合物(2)のアミノ基と反応することにより、アミド結合が形成されるものと推測される(下記反応式(B)参照)。ここで、特にシリル基による弱い電子吸引性により、アミド化の反応速度が向上するものと推測される。また、酸素原子とケイ素原子と間の結合距離は、酸素原子と炭素原子と間の結合距離よりも長く、これが立体障害の影響の低減に寄与しているものと推測される。
【0044】
【化4】
【化5】
【0045】
なお、上記反応式(A)及び(B)中、化合物(1)のカルボキシル基がシリルエステル化された化合物を、化合物(1’)と表記する。また、式中、-Si(R)(R)(R)で表される基は、シリル化剤が有するシリル基を意味する。ここで、R、R、及びRは、各々独立に、水素原子又は任意の置換基(好ましくはアルキル基又はアルコキシ基)を表す。
【0046】
・一般式(1)~(3)における各符号の具体的な定義:
一般式(1)~(3)における各基を、以下により具体的に説明する。
【0047】
、R、R、及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基、若しくはチオール基、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい、一価の炭化水素基若しくは複素環式基を表す。なお、これらの基が置換基を有する場合、その種類については先に記載したとおりである。置換基の数の具体例は、例えば5、4、3、2、1、又は0である。
【0048】
また、R、R、R、及び/又はRが、1又は2以上の置換基を有していてもよい、一価の炭化水素基又は複素環式基である場合は、斯かる炭化水素基又は複素環式基とそれが結合する炭素原子との間に、連結基が介在していてもよい。斯かる連結基は、限定されるものではないが、各々独立に、例えば以下に示す構造から選択される(なお、下記化学式中、Aは各々独立に、1又は2以上の置換基を有していてもよい、一価の炭化水素基又は複素環式基を表す。同一の基の中にAが二つ存在する場合、それらは互いに同一でもよく、異なっていてもよい。)。
【0049】
【化6】
【0050】
炭化水素基の(置換基を有する場合はその置換基も含めた)炭素原子数は、特に限定はされないが、上限が例えば20以下、15以下、10以下、8以下、又は6以下等である。下限は炭化水素基の種類によっても異なるが、アルキル基の場合は1以上、アルケニル基やアルキニル基の場合は2以上、シクロアルキル基の場合には3以上、例えば4以上、又は5以上である。当該原子数の具体例は、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20等である。
【0051】
複素環式基の(置換基を有する場合はその置換基も含めた)炭素原子及びヘテロ原子の合計数は、特に限定はされないが、上限が例えば20以下、15以下、10以下、8以下、又は6以下等である。下限は複素環式構造の種類によっても異なるが、通常3以上、例えば4以上、又は5以上である。当該原子数の具体例は、例えば3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20等である。
【0052】
中でも、R、R、R、及びRとしては、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、チオール基、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基、若しくはハロゲン原子、又は、1又は2以上の置換基を有していてもよい、アミノ基、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリーロキシ基、アシル基、複素環式基、若しくは複素環オキシ基等であることが好ましい。
【0053】
、R、R、及びRの具体例としては、これらに限定されるものではないが、例えば以下が挙げられる。
・水素原子、水酸基、チオール基、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基;
・フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;
・メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、デシル基、ノニル基等のアルキル基;
・エテニル基、プロペニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、へプテニル基、オクテニル基等のアルケニル基;
・プロパルギル基等のアルキニル基;
・シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロへプチル基、ビシクロオクチル基、スピロオクチル基等のシクロアルキル基;
・メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基等のアルコキシ基;
・フェニル基、ベンジル基、トリル基、ナフチル基、アントラセニル基等のアリール基;
・フェニロキシ基、ベンジロキシ基、ナフチロキシ基等のアリーロキシ基;
・アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基、パラメトキシベンゾイル基、シンナモイル基等のアシル基;
・無置換のアミノ基、及び、ジメチルアミノ基、ベンジルアミノ基、トリフェニルメチルアミノ基等の置換アミノ基;
・フラニル基、チオフェニル基、ピラニル基、ピロリニル基、ピロリル基、2,3-ジヒドロ-1H-ピロリル基、ピぺリジニル基、ピペラジニル基、ホモピペラジニル基、モルホリノ基、チオモルホリノ基、1,2,4,6-テトラヒドロピリジル基、ヘキサヒドロピリミジル基、ヘキサヒドロピリダジル基、1,2,4,6-テトラヒドロピリジル基、1,2,4,6-テトラヒドロピリダジル基、3,4-ジヒドロピリジル基、イミダゾリル基、4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾリル基、2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾリル基、ピラゾリル基、4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾリル基、2,3-ジヒドロ-1H-ピラゾリル基、オキサゾリル基、4,5-ジヒドロ-1,3-オキサゾリル基、2,3-ジヒドロ-1,3-オキサゾリル基、2,5-ジヒドロ-1,3-オキサゾリル基、チアゾリル基、4,5-ジヒドロ-1,3-チアゾリル基、2,3-ジヒドロ-1,3-チアゾリル基、2,5-ジヒドロ-1,3-チアゾリル基、カルバゾリル基等の複素環式基;及び
・フラニルオキシ基、ピロリルオキシ基、インドリルオキシ基、キノリルオキシ基等の複素環オキシ基;等。
【0054】
なお、上記置換基のうち、カルボキシル基を有する置換基は、保護基を有していてもよいが、いなくてもよい。反応に用いる化合物(1)と化合物(2)との反応性により異なるが、通常は化合物(1)の式中右側のカルボキシル基との反応選択性が、その他の置換基に存在するカルボキシル基との反応選択性よりも向上するためである。
【0055】
及びRは、それぞれ独立に、水素原子、カルボキシル基、若しくは水酸基、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい、一価の炭化水素基若しくは複素環式基を表す。なお、置換基を有する場合、その種類については先に記載したとおりである。置換基の数の具体例は、例えば5、4、3、2、1、又は0である。
【0056】
また、R及び/又はRが、1又は2以上の置換基を有していてもよい、一価の炭化水素基又は複素環式基である場合は、斯かる炭化水素基又は複素環式基とそれが結合する窒素原子との間に、連結基が介在していてもよい。斯かる連結基は、限定されるものではないが、各々独立に、例えば以下に示す構造から選択される(なお、下記化学式中、Aは各々独立に、1又は2以上の置換基を有していてもよい、一価の炭化水素基又は複素環式基を表す。同一の基の中にAが二つ存在する場合、それらは互いに同一でもよく、異なっていてもよい。)。
【0057】
【化7】
【0058】
炭化水素基の(置換基を有する場合はその置換基も含めた)炭素原子数は、上限が例えば20以下、15以下、10以下、8以下、又は6以下等である。下限は炭化水素基の種類によっても異なるが、アルキル基の場合は1以上、アルケニル基やアルキニル基の場合は2以上、シクロアルキル基の場合には3以上、例えば4以上、又は5以上である。当該原子数の具体例は、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20等である。
【0059】
複素環式基の(置換基を有する場合はその置換基も含めた)炭素原子及びヘテロ原子の合計数は、上限が例えば20以下、15以下、10以下、8以下、又は6以下等である。下限は複素環式構造の種類によっても異なるが、通常3以上、例えば4以上、又は5以上である。当該原子数の具体例は、例えば3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20等である。
【0060】
中でも、R及びRとしては、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、若しくはカルボキシル基、又は、1又は2以上の置換基を有していてもよい、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリーロキシ基、アシル基、複素環式基、若しくは複素環オキシ基等であることが好ましい。
【0061】
及びRの具体例としては、これらに限定されるものではないが、例えば以下が挙げられる。
・水素原子、水酸基、カルボキシル基;
・メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、デシル基、ノニル基等のアルキル基;
・エテニル基、プロペニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、へプテニル基、オクテニル基等のアルケニル基;
・プロパルギル基等のアルキニル基;
・シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロへプチル基、ビシクロオクチル基、スピロオクチル基等のシクロアルキル基;
・フェニル基、ベンジル基、トリル基、ナフチル基、アントラセニル基等のアリール基;
・フラニル基、チオフェニル基、ピラニル基、ピロリニル基、ピロリル基、2,3-ジヒドロ-1H-ピロリル基、ピぺリジニル基、ピペラジニル基、ホモピペラジニル基、モルホリノ基、チオモルホリノ基、1,2,4,6-テトラヒドロピリジル基、ヘキサヒドロピリミジル基、ヘキサヒドロピリダジル基、1,2,4,6-テトラヒドロピリジル基、1,2,4,6-テトラヒドロピリダジル基、3,4-ジヒドロピリジル基、イミダゾリル基、4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾリル基、2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾリル基、ピラゾリル基、4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾリル基、2,3-ジヒドロ-1H-ピラゾリル基、オキサゾリル基、4,5-ジヒドロ-1,3-オキサゾリル基、2,3-ジヒドロ-1,3-オキサゾリル基、2,5-ジヒドロ-1,3-オキサゾリル基、チアゾリル基、4,5-ジヒドロ-1,3-チアゾリル基、2,3-ジヒドロ-1,3-チアゾリル基、2,5-ジヒドロ-1,3-チアゾリル基、カルバゾリル基等の複素環式基;等。
【0062】
なお、RとRとが互いに結合して、Rが結合する炭素原子及びRが結合する窒素原子と共に、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい複素環を形成していてもよく、RとRとが互いに結合して、Rが結合する炭素原子及びRが結合する窒素原子と共に、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい複素環を形成していてもよい。なお、置換基を有する場合、その種類については先に記載したとおりである。置換基の数の具体例は、例えば5、4、3、2、1、又は0である。
【0063】
複素環式基の(置換基を有する場合はその置換基も含めた)炭素原子及びヘテロ原子の合計数は、上限が例えば20以下、15以下、10以下、8以下、又は6以下等である。下限は複素環式構造の種類によっても異なるが、通常3以上、例えば4以上、又は5以上である。当該原子数の具体例は、例えば3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20等である。
【0064】
斯かる複素環の具体例としては、これらに限定されるものではないが、ピロリニル基、ピロリル基、2,3-ジヒドロ-1H-ピロリル基、ピぺリジニル基、ピペラジニル基、ホモピペラジニル基、モルホリノ基、チオモルホリノ基、1,2,4,6-テトラヒドロピリジル基、ヘキサヒドロピリミジル基、ヘキサヒドロピリダジル基、1,2,4,6-テトラヒドロピリジル基、1,2,4,6-テトラヒドロピリダジル基、3,4-ジヒドロピリジル基、イミダゾリル基、4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾリル基、2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾリル基、ピラゾリル基、4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾリル基、2,3-ジヒドロ-1H-ピラゾリル基、オキサゾリル基、4,5-ジヒドロ-1,3-オキサゾリル基、2,3-ジヒドロ-1,3-オキサゾリル基、2,5-ジヒドロ-1,3-オキサゾリル基、チアゾリル基、4,5-ジヒドロ-1,3-チアゾリル基、2,3-ジヒドロ-1,3-チアゾリル基、2,5-ジヒドロ-1,3-チアゾリル基等が挙げられる。
【0065】
~Aは、それぞれ独立に、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい炭素数1~3の二価の脂肪族炭化水素基を表す。具体例としては、これらに限定されるものではないが、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、及びイソプロピレン基等、並びにこれらの基が1又は2以上の前記の置換基で置換された基が挙げられる。置換基の数の具体例は、例えば3、2、1、又は0である。
【0066】
p1~p4は、それぞれ独立に、0又は1を表す。
【0067】
m及びnは、それぞれ独立に、[ ]内の構造で表される構成単位の数を表す、1以上の整数である。即ち、mは、一般式(1)の[ ]内のアミノ酸単位の数を表す。mが1の場合、化合物(1)はアミノ酸となり、mが2以上の場合、化合物(1)はペプチドとなる。同様に、nは、一般式(2)の[ ]内のアミノ酸単位の数を表す。nが1の場合、化合物(2)はアミノ酸となり、nが2以上の場合、化合物(2)はペプチドとなる。m及びnの上限は、アミノ化工程が進行する限りにおいて特に制限されないが、例えば100以下、80以下、60以下、50以下、40以下、30以下、20以下、15以下、12以下、又は10以下等である。m及びnの具体例は、それぞれ独立に、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100等である。
【0068】
PGは、式(1)中左側のアミノ基の保護基を表す。保護基としては、アミド化工程において、当該アミノ基が反応しないように保護することができ、反応後にこれを脱保護してアミノ基に変換可能なものであれば、特に制限されない。
【0069】
アミノ基の保護基PGとしては、公知の多種多様のものが知られている。例としては、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい一価の炭化水素基、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい一価の複素環式基等が挙げられる。中でも、1又は2以上の置換基を有していてもよい一価の炭化水素基が好ましい。但し、斯かる炭化水素基又は複素環式基と、それが保護するアミノ基の窒素原子(式(1)中PGが結合する窒素原子)との間に、連結基が介在していてもよい。斯かる連結基は、限定されるものではないが、各々独立に、例えば以下に示す連結基から選択される(なお、下記化学式中、Aは各々独立に、1又は2以上の置換基を有していてもよい一価の炭化水素基又は複素環式基を表す。同一の基の中にAが二つ存在する場合、それらは互いに同一でもよく、異なっていてもよい。)。
【0070】
【化8】
【0071】
保護基PGの炭素数は、通常1以上、又は3以上、また、通常20以下、又は15以下が挙げられる。
【0072】
中でも、アミノ基の保護基PGは、1又は2以上の置換基を有していてもよい、一価の炭化水素基、アシル基、炭化水素オキシカルボニル基、及び炭化水素スルホニル基、及びアミド基からなる群より選択される1種以上の基であることが好ましい。
【0073】
以下、アミノ基の保護基PGの具体例を列記する。なお、アミノ基の保護基の名称としては、アミノ基の窒素原子に結合している官能基の名称の他、窒素原子をも含めた名称も存在しており、以下の名称においても両者が含まれている。
【0074】
非置換又は置換の炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基;エテニル基、プロペニル基、アリル基、等のアルケニル基;プロパルギル基等のアルキニル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、ベンジル基、パラメトキシベンジル基、トリル基、トリフェニルメチル基(トロック基)等のアリール基;シアノメチル基等の置換炭化水素基等が挙げられる。炭素数は、通常1以上、又は3以上、また、通常20以下、又は15以下が挙げられる。
【0075】
非置換又は置換のアシル基の具体例としては、ベンゾイル基(Bz)、オルトメトキシベンゾイル基、2,6-ジメトキシベンゾイル基、パラメトキシベンゾイル基(PMPCO)、シンナモイル基、フタロイル基(Phth)等が挙げられる。
【0076】
非置換又は置換の炭化水素オキシカルボニル基の具体例としては、tert-ブトキシカルボニル基(Boc)、ベンジルオキシカルボニル基(Cbz)、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、2-トリメチルシリルエトキシカルボニル基、2-フェニルエトキシカルボニル基、1-(1-アダマンチル)-1-メチルエトキシカルボニル基、1-(3,5-ジ-t- ブチルフェニル)-1-メチルエトキシカルボニル基、ビニロキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基(Alloc)、N-ヒドロキシピペリジニルオキシカルボニル基、p-メトキシベンジルオキシカルボニル基、p-ニトロベンジルオキシカルボニル基、2-(1,3-ジチアニル)メトキシカルボニル、m-ニトロフェノキシカルボニル基、3,5-ジメトキシベンジルオキシカルボニル基、o-ニトロベンジルオキシカルボニル基、2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル基(Troc)、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基(Fmoc)等が挙げられる。
【0077】
非置換又は置換の炭化水素スルホニル基の具体例としては、メタンスルホニル基(Ms)、トルエンスルホニル基(Ts)、2-又は4-ニトロベンゼンスルホニル基(Ns)基等が挙げられる。
【0078】
非置換又は置換のアミド基の具体例としては、アセトアミド、o-(ベンゾイロキシメチル)ベンズアミド、2-[(t-ブチルジフェニルシロキシ)メチル]ベンズアミド、2-トルエンスルホンアミド、4-トルエンスルホンアミド、2-ニトロベンゼンスルホンアミド、4-ニトロベンゼンスルホンアミド、tert-ブチルスルフィニルアミド、4-トルエンスルホンアミド、2-(トリメチルシリル)エタンスルホンアミド、ベンジルスルホンアミド等が挙げられる。
【0079】
また、脱保護の手法の観点からは、水素化による脱保護、弱酸による脱保護、フッ素イオンによる脱保護、一電子酸化剤による脱保護、ヒドラジンによる脱保護、酸素による脱保護等のうち、少なくとも1種の手法により脱保護可能な保護基も、アミノ基の保護基PGの例として挙げられる。
【0080】
アミノ基の保護基PGの好ましい具体例としては、メシル基(Ms)、tert-ブトキシカルボニル基(Boc)、ベンジル基(Bn)、ベンジルオキシカルボニル基(Cbz)、ベンゾイル基(Bz)、パラメトキシベンジル基(PMB)、2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル基(Troc)、アリルオキシカルボニル基(Alloc)、2,4-ジニトロフェニル基(2,4-DNP)、フタロイル基(Phth)、パラメトキシベンゾイル基(PMPCO)、シンナモイル基、トルエンスルホニル基(Ts)、2又は4-ニトロベンゼンスルホニル基(Ns)、シアノメチル基、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基(Fmoc)等が挙げられる。これらの保護基は、前記の通り、容易にアミノ基を保護でき、かつ比較的温和な条件で除去することができるためである。
【0081】
アミノ基の保護基PGのより好ましい具体例としては、メシル基(Ms)、tert-ブトキシカルボニル基(Boc)、ベンジルオキシカルボニル基(Cbz)、ベンジル基(Bn)、パラメトキシベンジル基(PMB)、2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル基(Troc)、アリルオキシカルボニル基(Alloc)、パラメトキシベンゾイル基(PMPCO)、ベンゾイル基(Bz)、シアノメチル基、シンナモイル基、2又は4-ニトロベンゼンスルホニル基(Ns)、トルエンスルホニル基(Ts)、フタロイル基(Phth)、2,4-ジニトロフェニル基(2,4-DNP)、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基(Fmoc)等が挙げられる。
【0082】
アミノ基の保護基PGの更に好ましい具体例としては、メシル基(Ms)、tert-ブトキシカルボニル基(Boc)、ベンジルオキシカルボニル基(Cbz)、ベンジル基(Bn)、パラメトキシベンジル基(PMB)、2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル基(Troc)、アリルオキシカルボニル基(Alloc)、パラメトキシベンゾイル基(PMPCO)、ベンゾイル基(Bz)、シアノメチル基、シンナモイル基等が挙げられる。
【0083】
PGは、式(2)中右側のカルボキシル基の保護基を表す。保護基としては、アミド化工程において、当該カルボキシル基が反応しないように保護することができ、反応後にこれを脱保護してカルボキシル基に変換可能なものであれば、特に制限されない。
【0084】
カルボキシル基の保護基PGの例としては、1又は2以上の置換基を有していてもよい、一価の炭化水素基又は複素環式基等が挙げられる。なお、置換基を有する場合、その種類については先に記載したとおりである。置換基の数の具体例は、例えば5、4、3、2、1、又は0である。
【0085】
炭化水素基の(置換基を有する場合はその置換基も含めた)炭素原子数は、上限が例えば20以下、15以下、10以下、8以下、又は6以下等である。下限は炭化水素基の種類によっても異なるが、アルキル基の場合は1以上、アルケニル基やアルキニル基の場合は2以上、シクロアルキル基の場合には3以上、例えば4以上、又は5以上である。当該原子数の具体例は、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20等である。
【0086】
複素環式基の(置換基を有する場合はその置換基も含めた)炭素原子及びヘテロ原子の合計数は、上限が例えば20以下、15以下、10以下、8以下、又は6以下等である。下限は複素環式構造の種類によっても異なるが、通常3以上、例えば4以上、又は5以上である。当該原子数の具体例は、例えば3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20等である。
【0087】
カルボキシル基の保護基PGの具体例としては、これらに限定されるものではないが、例えば以下が挙げられる。
・メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、デシル基、ノニル基等のアルキル基;
・エテニル基、プロペニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、へプテニル基、オクテニル基等のアルケニル基;
・プロパルギル基等のアルキニル基;
・シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロへプチル基、ビシクロオクチル基、スピロオクチル基等のシクロアルキル基;
・フェニル基、ベンジル基、トリル基、ナフチル基、アントラセニル基等のアリール基;
・フラニル基、チオフェニル基、ピラニル基、ピロリニル基、ピロリル基、2,3-ジヒドロ-1H-ピロリル基、ピぺリジニル基、ピペラジニル基、ホモピペラジニル基、モルホリノ基、チオモルホリノ基、1,2,4,6-テトラヒドロピリジル基、ヘキサヒドロピリミジル基、ヘキサヒドロピリダジル基、1,2,4,6-テトラヒドロピリジル基、1,2,4,6-テトラヒドロピリダジル基、3,4-ジヒドロピリジル基、イミダゾリル基、4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾリル基、2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾリル基、ピラゾリル基、4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾリル基、2,3-ジヒドロ-1H-ピラゾリル基、オキサゾリル基、4,5-ジヒドロ-1,3-オキサゾリル基、2,3-ジヒドロ-1,3-オキサゾリル基、2,5-ジヒドロ-1,3-オキサゾリル基、チアゾリル基、4,5-ジヒドロ-1,3-チアゾリル基、2,3-ジヒドロ-1,3-チアゾリル基、2,5-ジヒドロ-1,3-チアゾリル基、カルバゾリル基等の複素環式基;等。
【0088】
なお、化合物(2)において、一般式(2)の式中左側のアミノ基は、他の酸と塩を形成していてもよい。この場合、他の酸としては、これらに限定されるものではないが、酢酸、プロピオン酸等の炭素数1~5の脂肪族カルボン酸;トリフルオロ酢酸、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸、スルホン酸等が挙げられる。
【0089】
・化合物(1)と化合物(2)との量比:
本発明の製造方法に用いられる化合物(1)と化合物(2)との量比は、特に制限されないが、化合物(1)1モルに対して、化合物(2)を通常0.1モル以上、例えば0.2モル以上、0.3モル以上、又は0.5モル以上、また、通常20モル以下、例えば10モル以下、8モル以下、6モル以下、5モル以下、より好ましくは2モル以下の範囲で用いることが好ましい。
【0090】
また、化合物(1)を化合物(2)よりも多く用いることが、反応の効率が高くなる点で好ましい。具体的には、化合物(1)1モルに対して、化合物(2)のモル比が0.5以下となるように用いることが好ましい。
【0091】
・ルイス酸触媒:
本発明の製造方法に用いられるルイス酸触媒は、後述するシリル化剤の共存下、化合物(1)のカルボキシル基と化合物(2)のアミノ基とのアミド化反応を誘導しうるルイス酸化合物であれば、その種類は制限されない。中でも、ルイス酸触媒は、ルイス酸として機能する金属化合物であることが好ましい。
【0092】
金属化合物を構成する金属元素としては、元素周期律表の第2族から第15族に属する種々の金属が挙げられる。金属元素の具体例としては、ホウ素、マグネシウム、アルミニウム、ガリウム、インジウム、珪素、カルシウム、鉛、ビスマス、水銀、遷移金属、ランタノイ系元素等が挙げられる。遷移金属の具体例としては、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、スズ、銀、カドミウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、プラチナ、金、タリウム等が挙げられる。ランタノイ系元素の具体例としては、ランタン、セリウム、ネオジム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム等が挙げられる。これらの中でも、優れた反応促進効果を発揮し、高立体選択的にアミド化合物を製造する観点からは、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、タンタル、ニオブ、ホウ素、バナジウム、タングステン、ネオジム、鉄、鉛、コバルト、銅、銀、パラジウム、スズ、タリウム等から選択される1種又は2種以上が好ましく、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、タンタル、ニオブ等から選択される1種又は2種以上が好ましい。なお、金属化合物に含まれる金属元素は1つでも2つ以上でもよい。金属化合物が2つ以上の金属元素を含む場合、これらはそれぞれ同じ種類の元素でもよく、2種類以上の異なる金属元素であってもよい。
【0093】
金属化合物を構成する配位子としては、金属の種類に応じて適宜選択される。配位子の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、トリフルオロエトキシ基、トリクロロエトキシ基等の、置換又は非置換の炭素数が1~10の直鎖又は分枝鎖状のアルコキシ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;炭素数1~10のアリロキシ基;アセチルアセトナート基(acac)、アセトキシ基(AcO)、トリフルオロメタンスルホナート基(TfO);置換又は非置換の炭素数が1~10の直鎖又は分枝鎖状のアルキル基;フェニル基、酸素原子、硫黄原子、基-SR(ここでRは置換基であり、置換基の例としては、置換又は非置換の炭素数が1~20程度の炭化水素基が挙げられる。)、基-NRR’(ここでR及びR’は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基であり、置換基の例としては、置換又は非置換の炭素数が1~20程度の炭化水素基が挙げられる。)、シクロペンタジエニル(Cp)基等が挙げられる。
【0094】
中でも、金属化合物としては、チタン化合物、ジルコニウム化合物、ハフニウム化合物、タンタル化合物、又はニオブ化合物が好ましい。以下、それぞれの具体例を挙げる。
【0095】
チタン化合物の具体例としては、TiX (但し、4つのXは、それぞれ独立に、前記で例示した配位子である。4つのXは同一の配位子でもよく、互いに異なっていてもよい。)で表されるチタン化合物が挙げられる。Xがアルコキシ基の場合、好ましくは炭素数1~10の直鎖又は分枝鎖状のアルコキシ基、中でも炭素数1~5の直鎖又は分枝鎖状のアルコキシ基、更には炭素数1~4の直鎖又は分枝鎖状のアルコキシ基等が挙げられる。Xがアリロキシ基の場合、好ましくは炭素数1~20のアリロキシ基、中でも炭素数1~15のアリロキシ基、更には炭素数1~10のアリロキシ基等が挙げられる。これらの配位子は更に置換基を有していてもよい。Xがハロゲン原子の場合、好ましくは塩素原子、臭素原子等が挙げられる。これらの中でも、例えばTi(OMe)、Ti(OEt)、Ti(OPr)、Ti(Oi-Pr)、Ti(OBu)、Ti(Ot-Bu)、Ti(OCHCH(Et)Bu)、CpTiCl、CpTiCl、CpTi(OTf)、(i-PrO)TiCl、(i-PrO)TiCl等が好ましい。
【0096】
ジルコニウム化合物の具体例としては、ZrX (但し、4つのXは、それぞれ独立に、前記で例示した配位子である。4つのXは同一の配位子でもよく、互いに異なっていてもよい。)で表されるジルコニウム化合物が挙げられる。Xがアルコキシ基の場合、好ましくは炭素数1~10の直鎖又は分枝鎖状のアルコキシ基、中でも炭素数1~5の直鎖又は分枝鎖状のアルコキシ基、更には炭素数1~4の直鎖又は分枝鎖状のアルコキシ基等が挙げられる。Xがアリロキシ基の場合、好ましくは炭素数1~20のアリロキシ基、中でも炭素数1~15のアリロキシ基、更には炭素数1~10のアリロキシ基等が挙げられる。これらの配位子は更に置換基を有していてもよい。Xがハロゲン原子の場合、好ましくは塩素原子、臭素原子等が挙げられる。これらの中でも、例えばZr(OMe)、Zr(OEt)、Zr(OPr)、Zr(Oi-Pr)、Zr(OBu)、Zr(Ot-Bu)、Zr(OCHCH(Et)Bu)、CpZrCl、CpZrCl、CpZr(OTf)、(i-PrO)ZrCl、(i-PrO)ZrCl等が好ましい。
【0097】
ハフニウム化合物の具体例としては、HfX (但し、4つのXは、それぞれ独立に、前記で例示した配位子である。4つのXは同一の配位子でもよく、互いに異なっていてもよい。)で表されるハフニウム化合物が挙げられる。Xがアルコキシ基の場合、好ましくは炭素数1~10の直鎖又は分枝鎖状のアルコキシ基、中でも炭素数1~5の直鎖又は分枝鎖状のアルコキシ基、更には炭素数1~4の直鎖又は分枝鎖状のアルコキシ基等が挙げられる。Xがアリロキシ基の場合、好ましくは炭素数1~20のアリロキシ基、中でも炭素数1~15のアリロキシ基、更には炭素数1~10のアリロキシ基等が挙げられる。これらの配位子は更に置換基を有していてもよい。Xがハロゲン原子の場合、好ましくは塩素原子、臭素原子等が挙げられる。これらの中でも、例えばHfCpCl、HfCpCl、HfCl等が好ましい。
【0098】
タンタル化合物の具体例としては、TaX (但し、5つのXは、それぞれ独立に、前記で例示した配位子である。5つのXは同一の配位子でもよく、互いに異なっていてもよい。)で表されるタンタル化合物が挙げられる。Xがアルコキシ基の場合、好ましくは炭素数1~10の直鎖又は分枝鎖状のアルコキシ基、中でも炭素数1~5の直鎖又は分枝鎖状のアルコキシ基、更には炭素数1~3の直鎖又は分枝鎖状のアルコキシ基等が挙げられる。Xがアリロキシ基の場合、好ましくは炭素数1~20のアリロキシ基、中でも炭素数1~15のアリロキシ基、更には炭素数1~10のアリロキシ基等が挙げられる。これらの配位子は更に置換基を有していてもよい。Xがハロゲン原子の場合、好ましくは塩素原子、臭素原子等が挙げられる。これらの中でも、タンタルアルコキシド化合物(例えばXがアルコキシ基の化合物)等であることが好ましく、例えばTa(OMe)、Ta(OEt)、Ta(OBu)、Ta(NMe、Ta(acac)(OEt)、TaCl、TaCl(THF)、TaBr等が好ましい。また、Xが酸素である化合物、即ちTaも使用することができる。
【0099】
ニオブ化合物の具体例としては、NbX (但し、5つのXは、それぞれ独立に、前記で例示した配位子である。5つのXは同一の配位子でもよく、互いに異なっていてもよい。)で表されるニオブ化合物が挙げられる。Xがアルコキシ基の場合、好ましくは炭素数1~10の直鎖又は分枝鎖状のアルコキシ基、中でも炭素数1~5の直鎖又は分枝鎖状のアルコキシ基、更には炭素数1~3の直鎖又は分枝鎖状のアルコキシ基等が挙げられる。Xがアリロキシ基の場合、好ましくは炭素数1~20のアリロキシ基、中でも炭素数1~15のアリロキシ基、更には炭素数1~10のアリロキシ基等が挙げられる。これらの配位子は更に置換基を有していてもよい。Xがハロゲン原子の場合、好ましくは塩素原子、臭素原子等が挙げられる。これらの中でも、ニオブアルコキシド化合物(例えばXがアルコキシ基の化合物)であることが好ましく、例えばNbCl(THF)、NbCl、Nb(OMe)、Nb(OEt)等が好ましい。また、Xが酸素である化合物、即ちNbも使用することができる。
【0100】
なお、本発明の製造方法におけるルイス酸触媒として好ましい金属化合物は、化合物(1)及び化合物(2)の種類によっても異なる。
【0101】
例えば、化合物(1)及び化合物(2)が何れもアミノ酸の場合(即ち、m及びnが共に1の場合)、ルイス酸触媒としては、タンタル化合物又はニオブ化合物が好ましい。
【0102】
一方、化合物(1)及び化合物(2)のうち一方又は両方がペプチドの場合(即ち、m及びnのうち一方又は両方が2以上の場合)、ルイス酸触媒としては、チタン化合物、ジルコニウム化合物、又はハフニウム化合物が好ましく、特にチタン化合物が好ましい。その理由は定かではないが、チタン触媒はチタン金属の原子半径が小さいため、ペプチド結合を起点官能基とする7員環での活性化に適しており、ペプチド鎖の立体障害にも影響が少ないためであると推測される。
【0103】
また、何れか1種類のルイス酸触媒を単独で用いてもよく、2種類以上のルイス酸触媒を任意の組み合わせで併用してもよい。
【0104】
ルイス酸触媒の使用量としては、後述するシリル化剤の共存下、化合物(1)のカルボキシル基と化合物(2)のアミノ基とのアミド化反応を誘導しうる量であれば、特に制限されない。例えば、化合物(1)又は化合物(2)を100mol%とした場合、通常0.1mol%以上、例えば0.2mol%以上、又は0.3mol%以上、また、通常30mol%以下、例えば20mol%以下、又は15mol%以下のルイス酸触媒を用いることがより好ましい。
【0105】
なお、ルイス酸触媒は、担体に担持されていてもよい。ルイス酸触媒を担持する担体としては、特に制限されず、公知のものが使用できる。また、ルイス酸触媒を担体に担持させる方法としても、公知の方法が採用できる。
【0106】
・シリル化剤:
本発明の製造方法に用いられるシリル化剤は、後述するルイス酸触媒の共存下、化合物(1)のカルボキシル基と化合物(2)のアミノ基とのアミド化反応を誘導しうるシリル化剤であれば、その種類は制限されない。
【0107】
前述のように、シリル化剤は、化合物(1)のカルボキシル基をトリメチルシリル等のシリルエステルに変換することにより、高立体選択的なアミド化を可能にしていると推測される。従って、シリル化剤としては、カルボキシル基をシリルエステルに変換する能力を有するケイ素含有化合物が好ましい。また、シリル化剤としては、カルボキシル基とアミノ基が共存した場合に、カルボキシル基と選択的に反応するものがより好ましい。
【0108】
シリル化剤の例としては、これらに限定されるものではないが、下記一般式(4-1)で表されるシリルイミダゾール系化合物、下記一般式(4-2)で表されるシリルトリアゾール系化合物、下記一般式(4-3)で表されるシリルハライド系化合物、下記一般式(4-4)で表されるシリルアミド系化合物、及び下記一般式(4-5)で表されるシリルアミン系化合物が挙げられる。
【0109】
【化9】
【0110】
【化10】
【0111】
【化11】
【0112】
【化12】
【0113】
【化13】
【0114】
式中、R11~R15は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい、炭素数1~10(好ましくは炭素数1~5、中でも1~3)の直鎖又は分枝鎖状のアルキル基又はアルコキシ基が挙げられる。
【0115】
式中、Xは、塩素原子、臭素原子等のハロゲン基を表す。
【0116】
一般式(4-1)で表されるシリルイミダゾール系化合物の例としては、1-(トリメチルシリル)イミダゾール(TMSIM)、1-(tert-ブチルジメチルシリル)イミダゾール(TBSIM)等が挙げられる。中でも、TMSIM、TBSIM等がとりわけ好ましい。
【0117】
一般式(4-2)で表されるシリルトリアゾール系化合物の例としては、1-(トリメチルシリル)トリアゾール、1-(tert-ブチルジメチルシリル)トリアゾール等が挙げられる。
【0118】
一般式(4-3)で表されるシリルハライド系化合物の例としては、トリメチルブロモシラン(TMBS)、トリメチルクロロシラン(TMCS)等が挙げられる。中でも、TMBS等がとりわけ好ましい。
【0119】
一般式(4-4)で表されるシリルアミド系化合物の例としては、N-メチル-Nトリメチルシリルトリフルオロアセタミド(MSTFA)、N,O-ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセタミド(BSTFA)、N,O-ビス(トリメチルシリル)アセタミド(BSA)等が挙げられる。中でも、MSTFA等がとりわけ好ましい。
【0120】
一般式(4-5)で表されるシリルアミン系化合物の例としては、N-(トリメチルシリル)ジメチルアミン(TMSDMA)、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)等が挙げられる。中でも、TMSDMA等がとりわけ好ましい。
【0121】
中でも、シリル化剤としては、シリルイミダゾール系化合物が好ましく、トリアルキルシリルイミダゾール化合物又はトリアルコキシシリルイミダゾール化合物がとりわけ好ましい。
【0122】
また、何れか1種類のシリル化剤を単独で用いてもよく、2種類以上のシリル化剤を任意の組み合わせで併用してもよい。
【0123】
シリル化剤の使用量としては、後述するルイス酸触媒の共存下、化合物(1)のカルボキシル基と化合物(2)のアミノ基とのアミド化反応を誘導しうる量であれば、特に制限されない。例えば、化合物(1)1モルに対して、シリル化剤を通常0.1モル以上、例えば0.2モル以上、0.3モル以上、又は0.5モル以上用いることができる。中でも、化合物(1)1モルに対して、シリル化剤を1モル以上用いることが好ましい。一方、シリル化剤の使用量の上限にも特に制限はないが、化合物(1)1モルに対して通常20モル以下、例えば10モル以下、8モル以下、6モル以下、又は5モル以下の範囲で用いることが好ましく、反応効率の面で2モル以下用いることがより好ましい。
【0124】
・その他の成分:
本発明の製造方法において、アミド化を実施する際には、前記の化合物(1)、化合物(2)、ルイス酸触媒、及びシリル化剤に加えて、他の成分を共存させてもよい。
【0125】
例えば、反応効率を高める観点から、塩基の存在下でアミド化を行ってもよい。塩基としては、特に制限されないが、例えば、トリエチルアミン(EtN)、ジイソプロピルアミン(i-PrNH)、ジイソプロピルエチルアミン(i-PrEtN)等の炭素数1~10の直鎖又は分枝鎖状のアルキル基を1~3個有するアミンなどが挙げられる。塩基の使用量としては、特に制限されないが、化合物(1)又は化合物(2)を100mol%とした場合に、塩基の量が20~120mol%程度であることが好ましく、50~100mol%程度であることがより好ましい。
【0126】
また、配位子の存在下でアミド化を行ってもよい。配位子としては、特に制限されないが、例えば、2,2’-ビピリジン、8-ヒドロキシキノリン、[2,2’-ビスキノリン]-8,8’-ジオール、2,2’:6’,2”:6”,2'''-クォーターピリジンなどが挙げられる。配位子のヘテロ原子の位置によって、触媒として用いる金属化合物の金属の配位形態が異なり、さまざまな距離でのアミド化反応が進行する。配位子の使用量としては、特に制限されないが、化合物(1)又は化合物(2)を100mol%とした場合に、20mol%以下であることが好ましく、配位子が0.1mol%~10mol%程度であることがより好ましい。
【0127】
・反応手順:
本発明の製造方法におけるアミド化は、前記の化合物(1)、化合物(2)、ルイス酸触媒、及びシリル化剤、並びに任意により用いられる他の成分を接触させればよい。接触順は特に限定されず、全てを同時に混合してもよく、任意の順序で逐次混合してもよい。
【0128】
具体的には、本発明の製造方法においては、通常、前記化合物(1)とシリル化剤が反応し、化合物(1)のシリルエステル(1’)が形成されるものと考えられる(前記反応式(A)参照)。こうして形成されたシリルエステル(1’)は、ルイス酸触媒の存在下で、前記化合物(2)と接触することでアミド化がおこるものと考えられる(前記反応式(B)参照)。
【0129】
以上の推測される反応機構において、本発明の製造方法においては、例えば前記化合物(1)とシリル化剤とを反応させ、化合物(1)のシリルエステル(1’)を形成させた後、これに前記化合物(2)及びルイス酸を添加し、接触させてもよい。また、前記シリル化剤は、通常、カルボキシル基とアミノ基が共存した場合でも、カルボキシル基と選択的に反応し、かつその後のアミド化反応を阻害しないため、前記の反応成分すべてを同時に混合してもよく、反応の効率の面ではすべて同時に混合して反応を行うことが好ましい。
【0130】
なお、反応効率を高める観点から、有機溶媒中でアミド化を行ってもよい。有機溶媒としては、特に制限されないが、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ペンタン、石油エーテル、1-メチルテトラヒドロフラン(1-MeTHF)、ジイソプロピルエーテル(i-PrO)、ジエチルエーテル(EtO)、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)等のエーテル類、酢酸エチル(AcOEt)等のエステル類、酢酸等の有機酸などが挙げられる。有機溶媒は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0131】
反応系中の化合物(1)及び化合物(2)の濃度としては、特に制限されないが、反応効率を高める観点からは、2体積%~70体積%とすることが好ましい。
【0132】
・反応条件:
本発明の製造方法におけるアミド化反応の条件は以下のとおりである。
反応温度は、シリル化剤及びルイス酸触媒の共存下、化合物(1)のカルボキシル基と化合物(2)のアミノ基とのアミド化反応が進行する限りにおいて制限されないが、通常0℃以上、中でも10℃以上、特に20℃以上であり、また、通常100℃以下、中でも80℃以下、特に60℃以下であることが好ましい。特に、本発明の製造方法では、例えば60℃以下という穏和条件下でも十分にアミド化反応が進行する点で有利である。
【0133】
反応温度も、シリル化剤及びルイス酸触媒の共存下、化合物(1)のカルボキシル基と化合物(2)のアミノ基とのアミド化反応が進行する限りにおいて制限されず、減圧下、常圧下、加圧下の何れで行ってもよいが、通常は常圧で実施することが好ましい。
【0134】
反応雰囲気も、シリル化剤及びルイス酸触媒の共存下、化合物(1)のカルボキシル基と化合物(2)のアミノ基とのアミド化反応が進行する限りにおいて制限されないが、アルゴン、窒素等の不活性ガスの雰囲気下に行うことが好ましい。
【0135】
反応時間も、シリル化剤及びルイス酸触媒の共存下、化合物(1)のカルボキシル基と化合物(2)のアミノ基とのアミド化反応が進行する限りにおいて制限されないが、反応を十分且つ効率的に進行させる観点からは、例えば10分間以上、中でも20分間以上、又は30分間以上、また、例えば80時間以内、中でも60時間以内、又は50時間以内とすることが好ましい。
【0136】
・後処理等(精製・回収等):
本発明の製造方法は、アミド化により生成された化合物(3)に対して、更に種々の後処理を施してもよい。
【0137】
例えば、生成された化合物(3)を、カラムクロマトグラフィー、再結晶等の常法に従って単離・精製することができる。
【0138】
また、生成された化合物(3)に対して、任意により単離・精製を実施した後、前記PGにより保護されたアミノ基、及び/又は、前記PGにより保護されたカルボキシル基の脱保護を行うことができる。
【0139】
PGにより保護されたアミノ基を脱保護する方法としては、特に制限されず、保護基PGの種類に応じて様々な方法を用いることができる。例としては、水素化による脱保護、弱酸による脱保護、フッ素イオンによる脱保護、一電子酸化剤による脱保護、ヒドラジンによる脱保護、酸素による脱保護などが挙げられる。水素化による脱保護の場合、(a)水素ガスの存在下に、還元触媒として、パラジウム、パラジウム-炭素、水酸化パラジウム、水酸化パラジウム-炭素等のなどの金属触媒を用いて還元して脱保護する方法、(b)パラジウム、パラジウム-炭素、水酸化パラジウム、水酸化パラジウム-炭素等のなどの金属触媒の存在下、水素化ホウ素ナトリウム、水素化アルミニウムリチウム、水素化ホウ素リチウム、ジボラン等の水素化還元剤を用いて還元して脱保護する方法等が挙げられる。
【0140】
PGにより保護されたカルボキシル基を脱保護する方法としては、特に制限されず、保護基PGの種類に応じて様々な方法を用いることができる。例としては、水素化による脱保護、塩基による脱保護、弱酸による脱保護などが挙げられる。塩基による脱保護の場合、塩基として、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の強塩基を用いて脱保護する方法等が挙げられる。
【0141】
また、本発明の製造方法によるアミド化の実施後、得られた化合物(3)の前記PGにより保護されたアミノ基、又は、前記PGにより保護されたカルボキシル基の脱保護を行い、これを新たに化合物(1)又は(2)として再び本発明の製造方法に供し、他の化合物(2)又は(1)とアミド結合により連結することができる。こうして本発明の製造方法を逐次繰り返すことにより、原理的には任意のアミノ酸配列のペプチドを合成することが可能となる。
【0142】
なお、別法として、本発明の製造方法によるアミド化の実施後、得られた化合物(3)に対して、他の方法を用いて、更に別のアミノ酸を結合することもできる。他の方法の例としては、本発明者等による国際特許出願PCT/JP2018/016767に記載の方法等が挙げられる。PCT/JP2018/016767に記載の方法は、特定のタンタル化合物やニオブ化合物等の金属触媒の存在下で、第1のアミノ酸又はペプチドのカルボキシル基と、第2のアミノ酸のアミノ基との間にアミド結合を形成する方法である。具体的には、予め前記化合物(2)のカルボキシル基の保護基PGを、PCT/JP2018/016767に記載の方法に使用される特定のタンタル化合物やニオブ化合物等の金属触媒の存在下で反応可能な保護基としておき、本発明の製造方法により化合物(3)を製造した上で、続いてPCT/JP2018/016767に記載の方法を用いて、この化合物(3)に別のアミノ酸を反応させ、アミド化により連結すればよい。
【実施例
【0143】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施例にも束縛されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、任意の形態で実施することが可能である。
【0144】
以下の各実施例欄に記載の方法に従って、本発明の製造方法によるアミド化合物の製造を行った。
【0145】
なお、以下の実施例において、ジアステレオマー比又はエナンチオマー比は、下記条件のH-NMR分析により決定した。但し、実施例4のみ、下記条件のHPLC分析により決定した。
【0146】
[分析条件]
H-NMR:
測定機器:日本電子社製JEOL 400SS
測定条件:400MHz
測定溶媒:CDCl(但し実施例28のみCDOD)
【0147】
29 Si-NMR(参考例1及び2のみ測定):
測定機器:日本電子社製JEOL 400SS
測定条件:80MHz
測定溶媒:CDCl
【0148】
・高速液体クロマトグラフ(HPLC):
機器名:島津製作所社製CBM 20A
検出機:島津製作所社製SPD-M20A
カラム:ダイセル社製IA-3(φ4.6mm×25cm)
溶離液:2-プロパノール/n-ヘキサン=2/98(vol/vol)
検出波長:λ=216nm
【0149】
[実施例群1:2つのα-アミノ酸のアミド化によるアミド化合物の製造]
・実施例1-1:Boc-L-Asp(L-Ala-Ot-Bu)-Ot-Buの製造
L-Ala-Ot-Bu・HCl(渡辺化学工業社製)を、アンバーリストA21フリーアミン(アルドリッチ社製)を用いて中和し、L-Ala-Ot-Buとした。
【0150】
アルゴン雰囲気下のグローブボックス内において、乾燥させた5mLスクリューバイアル中に、攪拌子と共に、Boc-L-Asp(OH)-Ot-Bu(渡辺化学工業社製、578.6mg、2.0mmol)、前記L-Ala-Ot-Bu(145.2mg、1.0mmol)、1-(トリメチルシリル)イミダゾール(東京化成社製、308.6mg、2.2mmol)、Ta(OMe)(アルドリッチ社製、33.6mg、0.10mmol)、を入れ、スクリューキャップで蓋をし、アルゴン雰囲気下で密封した。このスクリューバイアルをグローブボックスから取り出し、オイルバス内に設置し、反応温度50℃で、72時間撹拌した後、オイルバスから取り出し、常温まで放冷した。スクリューバイアル中に得られた反応生成物を、クロロホルム(和光ケミカル社製、15mL)で希釈し、フラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/n-ヘキサン)により精製した後、エバポレータを用いて溶媒を留去し、白色固体のBoc-L-Asp(L-Ala-Ot-Bu)-Ot-Bu(393.0mg)を得た。収率は94%、ジアステレオマー比は>99:1であった。
【0151】
・実施例1-2:Boc-L-Lys(Boc)-L-Ala-Ot-Buの製造
実施例1-1において、Boc-L-Asp(OH)-Ot-Buを、Boc-L-Lys(Boc)-OH(渡辺化学工業社製、692.8mg、2.0mmol)に変更した以外は、実施例1-1と同様の手順を経て合成することにより、Boc-L-Lys(Boc)-L-Ala-Ot-Bu(424.8mg)を得た。収率は90%、ジアステレオマー比>99:1であった。
【0152】
・実施例1-3:Boc-L-Pro-L-Ala-Ot-Buの製造
実施例1-1において、Boc-L-Asp(OH)-Ot-Buを、Boc-L-Pro-OH(渡辺化学工業社製、430.5mg、2.0mmol)に変更した以外は、実施例1-1と同様の手順を経て合成することにより、Boc-L-Pro-L-Ala-Ot-Bu(341.4mg)を得た。収率は99%、ジアステレオマー比>99:1であった。
【0153】
・実施例1-4:Boc-L-Ala-Gly-Ot-Buの製造
実施例1-1の手順と同様に、Boc-L-Ala-OH(渡辺化学工業社製、378.4mg、2.0mmol)、Gly-Ot-Bu(コンビブロック社製、131.2mg、1.0mmol)、1-(トリメチルシリル)イミダゾール(308.6mg、2.2mmol)、及びTa(OMe)(33.6mg、0.10mmol)を入れ、スクリューキャップで蓋をし、アルゴン雰囲気下で密封した。以下、実施例1-1と同様に反応させたところ、白色固体のBoc-L-Ala-Gly-Ot-Bu(290.5mg)を得た。収率は96%、エナンチオマー比は>99:1であった。
【0154】
・実施例1-5:Boc-L-Ala-L-Trp(Boc)-Ot-Buの製造
L-Trp(Boc)-Ot-Bu・HCl(渡辺化学工業社製)を、アンバーリストA21 free amineを用いて中和し、L-Trp(Boc)-Ot-Buとした。
【0155】
実施例1-4において、Gly-Ot-Buを、前記L-Trp(Boc)-Ot-Bu(360.5mg、1.0mmol)に変更した以外は、実施例1-4と同様の方法により、白色固体のBoc-L-Ala-L-Trp(Boc)-Ot-Bu(486.1mg)を得た。収率は91%、ジアステレオマー比は>99:1であった。
【0156】
・実施例1-6:Boc-L-Ala-L-Asp(t-Bu)-Ot-Buの製造
L-Asp(t-Bu)-Ot-Bu・HCl(渡辺化学工業社製)を、アンバーリストA21 free amineを用いて中和し、L-Asp(t-Bu)-Ot-Buとした。
【0157】
実施例1-4において、Gly-Ot-Buを、前記L-Asp(t-Bu)-Ot-Bu(245.3mg、1.0mmol)に変更した以外は、実施例1-4と同様の方法により、白色固体のBoc-L-Ala-L-Asp(t-Bu)-Ot-Bu(415.9mg)を得た。収率は99%、ジアステレオマー比は>99:1であった。
【0158】
・実施例1-7:Boc-L-Ala-L-Cys(Trt)-Ot-Buの製造
L-Cys(Trt)-Ot-Bu・HCl(渡辺化学工業社製)を、アンバーリストA21 free amineを用いて中和し、L-Cys(Trt)-Ot-Buとした。
【0159】
実施例1-4において、Gly-Ot-Buを、前記L-Cys(Trt)-Ot-Bu(419.5mg、1.0mmol)に変更した以外は、実施例1-4と同様の方法により、白色固体のBoc-L-Ala-L-Cys(Trt)-Ot-Bu(585.0mg)を得た。収率は99%、ジアステレオマー比は>99:1であった。
【0160】
・実施例1-8:Boc-L-Ala-L-Lys(Boc)-Ot-Buの製造
L-Lys(Boc)-Ot-Bu・HCl(渡辺化学工業社製)を、アンバーリストA21 free amineを用いて中和し、L-Lys(Boc)-Ot-Buとした。
【0161】
実施例1-4において、Gly-Ot-Buを、前記L-Lys(Boc)-Ot-Bu(302.4mg、1.0mmol)に変更した以外は、実施例1-4と同様の方法により、白色固体のBoc-L-Ala-L-Lys(Boc)-Ot-Bu(462.1mg)を得た。収率は98%、ジアステレオマー比は>99:1であった。
【0162】
・実施例1-9:Boc-L-Ala-L-Arg(Mtr)-Ot-Buの製造
L-Arg(Mtr)-Ot-Bu・HCl(渡辺化学工業社製)を、アンバーリストA21 free amineを用いて中和し、L-Arg(Mtr)-Ot-Buとした。
【0163】
実施例1-4において、Gly-Ot-Buを、前記L-Arg(Mtr)-Ot-Bu(442.6mg、1.0mmol)に変更した以外は、実施例1-4と同様の方法により、白色固体のBoc-L-Ala-L-Arg(Mtr)-Ot-Bu(530.6mg)を得た。収率は86%、ジアステレオマー比は>99:1であった。
【0164】
・実施例1-10:Boc-L-Ala-L-Asn-Ot-Buの製造
実施例1-4において、Gly-Ot-Buを、L-Asn-Ot-Bu(渡辺化学工業社製、188.2mg、1.0mmol)に変更し、クロロホルム(0.5mL)を加えた以外は、実施例1-4と同様の方法により、白色固体のBoc-L-Ala-L-Asn-Ot-Bu(345.4mg)を得た。収率は96%、ジアステレオマー比は>99:1であった。
【0165】
・実施例1-11:Boc-L-Ala-L-His(Trt)-Ot-Buの製造
実施例1-4において、Gly-Ot-Buを、L-His(Trt)-Ot-Bu(渡辺化学工業社製、453.6mg、1.0mmol)に変更した以外は、実施例1-4と同様の方法により、白色固体のBoc-L-Ala-L-His(Trt)-Ot-Bu(611.6mg)を得た。収率は98%、ジアステレオマー比は>99:1であった。
【0166】
・実施例1-12:Bz-L-Ala-L-Pro-Ot-Buの製造
実施例1-4において、Boc-L-Ala-OHを、Bz-L-Ala-OH(渡辺化学工業社製、386.4mg、2.0mmol)に変更し、Gly-Ot-Buを、L-Pro-Ot-Bu(渡辺化学工業社製、145.2mg、1.0mmol)に変更した以外は、実施例1-4と同様の方法により、白色固体のBz-L-Ala-L-Pro-Ot-Bu(314.9mg)を得た。収率は91%、ジアステレオマー比は>99:1であった。
【0167】
・実施例1-13:Boc-L-Asn(Trt)-L-Ala-Ot-Buの製造
実施例1-1において、Boc-L-Ala-OHを、Boc-L-Asn(Trt)-OH(渡辺化学工業社製、949.2mg、2.0mmol)に変更し、また、前記L-Ala-Ot-Buの代わりに、前記L-Ala-Ot-Bu・HCl(181.7mg、1.0mmol)を中和することなくそのまま用いて、DMSO(0.5mL)を追加し、反応温度を40℃に変更した以外は、実施例1-1と同様の方法で反応を行うことにより、同様にBoc-L-Asn(Trt)-L-Ala-Ot-Bu(214.2mg)を得た。収率は71%、ジアステレオマー比は>99:1であった。
【0168】
[実施例群2:β-ホモアミノ酸とα-アミノ酸のアミド化によるアミド化合物の製造]
・実施例2-1:Boc-β-HoGly-L-Ile-Ot-Buの製造
L-Ile-Ot-Bu・HCl(渡辺化学工業社製)を、アンバーリストA21 free amineを用いて中和し、L-Ile-Ot-Buとした。
実施例1-1の手順と同様に、Boc-β-HoGly-OH(渡辺化学工業社製、182.9mg、1.0mmol)、前記L-Ile-Ot-Bu(渡辺化学工業社製、93.6mg、0.5mmol)、1-(トリメチルシリル)イミダゾール(154.3mg、1.1mmol)、及びTa(OMe)(16.8mg0.05mmol)を入れ、スクリューキャップで蓋をし、アルゴン雰囲気下で密封した。反応温度を40℃で、48時間撹拌した以外は、実施例1-1と同様に反応させたところ、白色固体のBoc-β-HoGly-L-Ile-Ot-Bu(179.0mg)を得た。収率は99%、ジアステレオマー比は>99:1であった。
【0169】
また、前記L-Ile-Ot-Buの代わりに、前記L-Ile-Ot-Bu・HCl(111.9mg、0.5mmol)を中和することなくそのまま用いて、同様の方法で反応を行うことにより、同様にBoc-β-HoGly-L-Ile-Ot-Bu(178.9mg)を得た。収率は>99%、ジアステレオマー比は>99:1であった。
【0170】
・実施例2-2:Bz-β-HoGly-L-Ile-Ot-Buの製造
実施例2-1において、Boc-β-HoGly-OHを、Bz-β-HoGly-OH(東京化成社製、193.2mg、1.0mmol)に変更した以外は、実施例2-1と同様の方法により、白色固体のBz-β-HoGly-L-Ile-Ot-Bu(175.5mg)を得た。収率は97%、ジアステレオマー比は>99:1であった。
【0171】
また、前記L-Ile-Ot-Buの代わりに、実施例2-1に記載のL-Ile-Ot-Bu・HCl(111.9mg、0.5mmol)を中和することなくそのまま用いて、同様の方法で反応を行うことにより、同様にBz-β-HoGly-L-Ile-Ot-Bu(175.5mg)を得た。収率は97%、ジアステレオマー比は>99:1であった。
【0172】
・実施例2-3:Boc-L-β-HoAla-L-Ala-Ot-Buの製造
実施例2-1において、Boc-β-HoGly-OHを、Boc-L-β-HoAla-OH(コンビブロック社製、203.2mg、1.0mmol)に変更し、L-Ile-Ot-Buを、実施例1-1に記載のL-Ala-Ot-Bu(72.6mg、0.5mmol)に変更した以外は、実施例2-1と同様の方法により、白色固体のBoc-L-β-HoAla-L-Ala-Ot-Bu(160.1mg)を得た。収率は97%、ジアステレオマー比は>99:1であった。
【0173】
また、前記L-Ala-Ot-Buの代わりに、実施例1-1に記載のL-Ala-Ot-Bu・HCl(90.8mg、0.5mmol)を中和することなくそのまま用いて、同様の方法で反応を行うことにより、同様にBoc-L-β-HoAla-L-Ala-Ot-Bu(160.0mg)を得た。収率は97%、ジアステレオマー比は>99:1であった。
【0174】
・実施例2-4:Boc-L-β-HoAla-L-Val-Ot-Buの製造
実施例2-1において、Boc-β-HoGly-OHを、Boc-L-β-HoAla-OH(コンビブロック社製、203.2mg、1.0mmol)に変更し、L-Ile-Ot-Buを、L-Val-Ot-Bu(コンビブロック社製、86.7mg、0.5mmol)に変更した以外は、実施例2-1と同様の方法により、白色固体のBoc-L-β-HoAla-L-Val-Ot-Bu(174.7mg)を得た。収率は97%、ジアステレオマー比は>99:1であった。
【0175】
また、前記L-Val-Ot-Buの代わりに、L-Val-Ot-Bu・HCl(渡辺化学工業社製、104.9mg、0.5mmol)を中和することなくそのまま用いて、同様の方法で反応を行うことにより、同様にBoc-L-β-HoAla-L-Val-Ot-Bu(174.8mg)を得た。収率は97%、ジアステレオマー比は>99:1であった。
【0176】
・実施例2-5:Boc-L-β-HoPhe-L-Ser(t-Bu)-Ot-Buの製造
実施例2-1において、Boc-β-HoGly-OHを、Boc-L-β-HoPhe-OH(渡辺化学工業社製、279.3mg、1.0mmol)に変更し、L-Ile-Ot-Buを、L-Ser(t-Bu)-Ot-Bu(渡辺化学工業社製、108.7mg、0.5mmol)に変更し、反応温度を50℃にした以外は、実施例2-1と同様の方法により、白色固体のBoc-L-β-HoPhe-L-Ser(t-Bu)-Ot-Bu(238.1mg)を得た。収率99%以上、ジアステレオマー比は>99:1であった。
【0177】
また、前記L-Ser(t-Bu)-Ot-Buの代わりに、L-Ser(t-Bu)-Ot-Bu・HCl(渡辺化学工業社製、126.9mg、0.5mmol)を中和することなくそのまま用いて、同様の方法で反応を行うことにより、同様にBoc-L-β-HoPhe-L-Ser(t-Bu)-Ot-Bu(239.0mg)を得た。収率は>99%、ジアステレオマー比は>99:1であった。
【0178】
・実施例2-6:Boc-L-β-HoPhg-L-Lys(Boc)-Ot-Buの製造
L-Lys(Boc)-Ot-Bu・HCl(渡辺化学工業社製)を、アンバーリストA21 free amineを用いて中和し、L-Lys(Boc)-Ot-Buとした。
【0179】
実施例2-1において、Boc-β-HoGly-OHを、Boc-L-β-HoPhg-OH(渡辺化学工業社製、265.3mg、1.0mmol)に変更し、L-Ile-Ot-Buを、前記L-Lys(Boc)-Ot-Bu(151.1mg、0.5mmol)にし、反応温度を50℃に変更した以外は、実施例2-1と同様の方法により、白色固体のBoc-L-β-HoPhg-L-Lys(Boc)-Ot-Bu(266.5mg)を得た。収率97%以上、ジアステレオマー比は>99:1であった。
【0180】
また、前記L-Lys(Boc)-Ot-Buの代わりに、前記L-Lys(Boc)-Ot-Bu・HCl(渡辺化学工業社製、169.4mg、0.5mmol)を中和することなくそのまま用いて、同様の方法で反応を行うことにより、同様にBoc-L-β-HoPhg-L-Lys(Boc)-Ot-Bu(265.2mg)を得た。収率は96%、ジアステレオマー比は>99:1であった。
【0181】
・実施例2-7:Boc-L-β-HoMet-L-Leu-Ot-Buの製造
L-Leu-Ot-Bu・HCl(渡辺化学工業社製)を、アンバーリストA21 free amineを用いて中和し、L-Leu-Ot-Buとした。
【0182】
実施例2-1において、Boc-β-HoGly-OHを、Boc-L-β-HoMet-OH(コンビブロック社製、263.4mg、1.0mmol)に変更し、L-Ile-Ot-Buを、前記L-Leu-Ot-Bu(93.6mg、0.5mmol)に変更した以外は、実施例2-1と同様の方法により、白色固体のBoc-L-β-HoMet-L-Leu-Ot-Bu(203.3mg)を得た。収率は94%、ジアステレオマー比は>99:1であった。
【0183】
また、前記L-Leu-Ot-Buの代わりに、前記L-Leu-Ot-Bu・HCl(渡辺化学工業社製、111.9mg、0.5mmol)を中和することなくそのまま用いて、同様の方法で反応を行うことにより、同様にBoc-L-β-HoMet-L-Leu-Ot-Bu(210.8mg)を得た。収率は97%、ジアステレオマー比は>99:1であった。
【0184】
[実施例群3:3つのα-アミノ酸のアミド化によるアミド化合物の製造]
・実施例3-1:Boc-L-Ala-L-Ala-L-Ala-Ot-Buの製造
L-Ala-OMe・HCl(渡辺化学工業社製)を、アンバーリストA21 free amineを用いて中和し、L-Ala-OMeとした。
【0185】
アルゴン雰囲気下のグローブボックス内において、乾燥させた5mLスクリューバイアル中に攪拌子と共に、Boc-L-Ala-OH(渡辺化学工業社製、94.6mg、0.50mmol)、前記L-Ala-OMe(26.8mg、0.25mmol)、1-(トリメチルシリル)イミダゾール(70.1mg、0.50mmol)、及びTa(OMe)(8.40mg、0.025mmol)を入れ、スクリューキャップで蓋をし、密封した。このスクリューバイアルをグローブボックスから取り出し、オイルバス内に設置し、反応温度60℃で、24時間撹拌した後、オイルバスから取り出し、常温まで放冷した。スクリューバイアル中に得られた反応生成物をクロロホルムで希釈し、蒸留水(20mL)と共に分液ロートに移し、クロロホルム(20mL)を用いて2回抽出した。前記抽出液を無水硫酸マグネシウムを用いて乾燥し、引き続き濾過して濾液を採取した。この濾液を5mLスクリューバイアルに移した後、前記濾液からロータリーエバポレータを用いて溶媒留去し、Boc-L-Ala-L-Ala-OMeを得た。
【0186】
次に、アルゴン雰囲気下のグローブボックス内で、前記で得られたBoc-L-Ala-L-Ala-OMeの容器に、実施例1-1に記載の方法で得られたL-Ala-Ot-Bu(72.5mg、0.50mmol)、2,2’:6’,2”:6”,2'''-クォーターピリジン(Wachter et al., Chem. Commun. 2016, 52[66]:10121-10124に記載の方法に準拠して合成、7.8mg、0.025mmol)、Ta(OMe)(8.40mg、0.025mmol)を入れ、スクリューキャップで蓋をし、密封した。このスクリューバイアルをグローブボックスから取り出し、オイルバス内に設置し、反応温度70℃で、48時間撹拌した後、オイルバスから取り出し、常温まで放冷した。スクリューバイアル中に得られた反応生成物を、クロロホルム(13mL)で希釈し、フラッシュカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/n-ヘキサン)により精製した後、エバポレータを用いて溶媒を留去し、白色固体のBoc-L-Ala-L-Ala-L-Ala-Ot-Bu(80.4mg)を得た。収率は83%、ジアステレオマー比>99:1であった。
【0187】
・実施例3-2:Boc-L-Leu-L-Ala-L-Ala-Ot-Buの製造
実施例3-1において、Boc-L-Ala-OHを、Boc-Leu-OH(渡辺化学工業社製、115.5mg、0.5mmol)に変更した以外は、実施例3-1と同様の方法により、白色固体のBoc-L-Leu-L-Ala-L-Ala-Ot-Bu(97.5mg)を得た。収率は91%、ジアステレオマー比は>99:1であった。
【0188】
・実施例3-3:Boc-L-Phe-L-Ala-L-Ala-Ot-Buの製造
実施例3-1において、Boc-L-Ala-OHを、Boc-Phe-OH(渡辺化学工業社製、140.1mg、0.5mmol)に変更した以外は、実施例3-1と同様の方法により、白色固体のBoc-L-Phe-L-Ala-L-Ala-Ot-Bu(96.1mg)を得た。収率は83%、ジアステレオマー比は>99:1であった。
【0189】
・実施例3-4:Cbz-Gly-L-Ala-L-Ala-Ot-Buの製造
実施例3-1において、Boc-L-Ala-OHを、Cbz-Gly-OH(渡辺化学工業社製、104.5mg、0.5mmol)に変更した以外は、実施例3-1と同様の方法により、白色固体のCbz-Gly-L-Ala-L-Ala-Ot-Bu(92.6mg)を得た。収率は91%、ジアステレオマー比は>99:1であった。
【0190】
・実施例3-5:Boc-L-Ala-L-Leu-Gly-Ot-Buの製造
L-Leu-OMe・HCl(渡辺化学工業社製)及びGly-Ot-Bu・HCl(渡辺化学工業社製)を、アンバーリストA21 free amineを用いて中和し、各々L-Leu-OMe及びGly-Ot-Buとした。
【0191】
実施例3-1において、L-Ala-OMeを前記L-Leu-OMe(36.3mg、0.25mmol)に変更した他は、実施例3-1と同様の方法でBoc-L-Ala-L-Leu-OMeを合成し、引き続き、L-Ala-Ot-Buを前記Gly-Ot-Bu(65.5mg、0.50mmol)に変更した他は、実施例3-1と同様の方法により、白色固体のBoc-L-Ala-L-Leu-Gly-Ot-Bu(91.3mg)を得た。収率は88%、ジアステレオマー比は>99:1であった。
【0192】
・実施例3-6:Boc-L-Ala-L-Met-L-Ala-Ot-Buの製造
L-Met-OMe・HCl(渡辺化学工業社製)を、アンバーリストA21 free amineを用いて中和し、L-Met-OMeとした。
【0193】
実施例3-1において、L-Ala-OMeを前記L-Met-OMe(40.8mg、0.25mmol)に変更した以外は、実施例3-1と同様の方法により白色固体のBoc-L-Ala-L-Met-Ala-Ot-Bu(101.0mg)を得た。収率は91%、ジアステレオマー比は>99:1であった。
【0194】
・実施例3-7:Boc-L-Ala-L-Ala-L-Val-Ot-Buの製造
L-Val-Ot-Bu・HCl(渡辺化学工業社製)を、アンバーリストA21 free amineを用いて中和し、L-Val-Ot-Buとした。
【0195】
実施例3-1において、L-Ala-Ot-Buを、前記L-Val-Ot-Bu(渡辺化学工業社製、130.1mg、0.75mmol)に変更した以外は、実施例3-1と同様の方法により、白色固体のBoc-L-Ala-L-Ala-L-Val-Ot-Bu(84.1mg)を得た。収率は81%、ジアステレオマー比は>99:1であった。
【0196】
・実施例3-8:Boc-L-Ala-L-Ala-L-Met-Ot-Buの製造
L-Met-Ot-Bu・HCl(渡辺化学工業社製)を、アンバーリストA21 free amineを用いて中和し、L-Met-Ot-Buとした。
【0197】
実施例3-1において、L-Ala-Ot-Buを、前記L-Leu-Ot-Bu(渡辺化学工業社製、103.1mg、0.50mmol)に変更した以外は、実施例3-1と同様の方法により、白色固体のBoc-L-Ala-L-Ala-L-Met-Ot-Bu(106.1mg)を得た。収率は95%、ジアステレオマー比は>99:1であった。
【0198】
・実施例3-9:Boc-Gly-Gly-Gly-L-Ala-L-Ala-Ot-Buの製造
アルゴン雰囲気下のグローブボックス内において、乾燥させた5mLスクリューバイアル中に攪拌子と共に、Boc-Gly-Gly-Gly-OH(渡辺化学工業社製、144.6mg、0.50mmol)、Ala-L-Ala-Ot-Bu(54.1mg、0.25mmol)、1-(トリメチルシリル)イミダゾール(77.1mg、0.55mmol)、Ti(Oi-Pr)(アルドリッチ社製、3.6mg、0.0125mmol)、CHCl(0.25mL)を入れ、スクリューキャップで蓋をし、密封した。このスクリューバイアルをグローブボックスから取り出し、オイルバス内に設置し、反応温度50℃で、72時間撹拌した後、オイルバスから取り出し、常温まで放冷した。
【0199】
スクリューバイアル中に得られた反応生成物を、クロロホルム(15mL)で希釈し、フラッシュカラムクロマトグラフィー(メタノール/クロロホルム)により精製した後、エバポレータを用いて溶媒を留去し、Boc-Gly-Gly-Gly-L-Ala-L-Ala-Ot-Bu(121.4mg)を得た。収率は99%、>99:1のジアステレオマー比であった。
【0200】
[参考例群:反応機序の検討]
・参考例1
実施例2-4の前段に記載の方法において、L-Val-Ot-Bu及びTa(OMe)を使用せず、即ちBoc-L-β-HoAla-OH(203.2mg、1.0mmol)及び1-(トリメチルシリル)イミダゾール(154.3mg、1.1mmol)のみを用いた他は同様の手順により、24時間反応を行った。得られた反応混合物の一部を重クロロホルムに溶解させ、H-NMR測定及び29Si-NMR測定を行なった。
【0201】
H-NMR測定及び29Si-NMR測定は、測定機器としてJEOL 400SS(日本電子社製)を用い、測定溶媒としてCDClを用い、H-NMRについては400MHz、29Si-NMRについては80MHzで測定を行った。化学シフトはppmで示し、内部標準として溶媒の共鳴を用いた(H-NMR:内部標準としてクロロホルム、7.26ppm;29Si-NMR:内部標準としてテトラメチルシラン、0ppm)。
【0202】
H-NMRスペクトル及び29Si-NMRスペクトルをそれぞれ図1-1及び図1-2として示す。これらの結果から、Boc-L-β-HoAla-OTMSの生成が確認された。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 5.20-4.95 (m, 1H, NH), 4.10-3.90 (m, 1H, BocNHCH(CH3)CH2), 2.48 (dd, J = 15.6, 5.5 Hz, 1H, BocNHCH(CH3)CH 2), 2.41 (dd, J = 15.6, 6.4 Hz, 1H, BocNHCH(CH3)CH 2), 1.39 (s, 9H, (CH 3)3COCONHCH(CH3)CH2), 1.16 (d, J = 6.9 Hz, 3H, BocNHCH(CH 3)CH2), 0.24 (s, 9H, CO2Si(CH 3)3).
29Si NMR (80 MHz, CDCl3) δ 17.00.
【0203】
・参考例2
実施例2-4の前段に記載の方法において、Ta(OMe)を使用せず、即ちBoc-L-β-HoAla-OH(203.2mg、1.0mmol)、1-(トリメチルシリル)イミダゾール(154.3mg、1.1mmol)、及びL-Val-Ot-Bu(86.7mg、0.50mmol)のみを用いた他は同様の手順により、48時間反応を行った。得られた反応混合物の一部を重クロロホルムに溶解させ、H-NMR測定及び29Si-NMR測定を行なった。
【0204】
H-NMRスペクトル及び29Si-NMRスペクトルをそれぞれ図2-1及び図2-2として示す。これらの結果から、Boc-L-β-HoAla-OTMSと、未反応のL-Val-Ot-Buの存在が確認された。実施例2-4の前段に記載の方法の最終生成物である、Boc-L-β-HoAla-L-Val-Ot-Buは確認されなかった。
【0205】
・考察
参考例1より、本願発明の方法において、一般式(1)の化合物に対してシリル化剤を作用させることにより、一般式(1)の化合物のカルボキシル基がシリルエステル化されることが分かる。また、参考例2より、一般式(1)の化合物及び一般式(2)の化合物に対して、シリル化剤のみを作用させると、一般式(1)の化合物のカルボキシル基はシリルエステル化されるものの、一般式(2)の化合物のアミノ基との反応は進行しないことが分かる。言い換えれば、シリル化剤に加えてルイス酸触媒が共存することにより初めて、一般式(1)の化合物のカルボキシル基がシリルエステル化された後、一般式(2)の化合物のアミノ基との間にアミド結合が形成されることが分かる。
図1-1】
図1-2】
図2-1】
図2-2】