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特許7122022アフラトキシン毒素産生菌株の毒性を同定および評価する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-10
(45)【発行日】2022-08-19
(54)【発明の名称】アフラトキシン毒素産生菌株の毒性を同定および評価する方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/06 20060101AFI20220812BHJP
   C12Q 1/6851 20180101ALI20220812BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20220812BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20220812BHJP
   G01N 30/88 20060101ALI20220812BHJP
   C12N 15/31 20060101ALN20220812BHJP
   C07K 16/14 20060101ALN20220812BHJP
   C12N 7/01 20060101ALN20220812BHJP
【FI】
C12Q1/06 ZNA
C12Q1/6851 Z
C12Q1/686 Z
G01N33/50 Z
G01N33/50 P
G01N30/88 H
C12N15/31
C07K16/14
C12N7/01
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020552711
(86)(22)【出願日】2019-11-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-07-08
(86)【国際出願番号】 CN2019121785
(87)【国際公開番号】W WO2020114322
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2020-09-29
(31)【優先権主張番号】201811491692.9
(32)【優先日】2018-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】516109152
【氏名又は名称】中国農業科学院油料作物研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】張 奇
(72)【発明者】
【氏名】李 培武
(72)【発明者】
【氏名】白 藝珍
(72)【発明者】
【氏名】李 慧
(72)【発明者】
【氏名】姜 俊
(72)【発明者】
【氏名】張 文
【審査官】市島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】Appl. Environ. Microbiol.,2003年,Vol.69, No.2,pp.1154-1158
【文献】J. Appl. Microbiol.,2010年,Vol.109,pp.1914-1922
【文献】Foodborne Pathog. Dis.,2015年,Vol.12, No.4,pp.289-296
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C12Q 1/00-3/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アフラトキシンの収量およびNor-1遺伝子転写量を測定することにより、前記Nor-1遺伝子転写量に対する前記アフラトキシンの収量の比率(AFT/Nor-1)を取得し、前記比率に基づき、アフラトキシン毒素産生菌株毒素産生能力を同定および評価する、ことを特徴とする、アフラトキシン毒素産生菌株の毒性を同定および評価する方法。
【請求項2】
前記アフラトキシンの収量を測定するための方法では、アスペルギルス・フラバス株を培養し、アスペルギルス・フラバス菌の胞子を振とう培養し、培養後、培養濾過で得られる濾液中のアフラトキシンの濃度を測定する、ことを特徴とする、請求項1に記載のアフラトキシン毒素産生菌株の毒性を同定および評価する方法。
【請求項3】
前記アスペルギルス・フラバス株の培養に使用する培地はCDA培地であり、培養条件は、28℃、湿度90%で10日間の培養であり、
前記アスペルギルス・フラバス菌の胞子の振とう培養に使用される培地は、ジャガイモデキストロース液体培地であり、培養条件は、28℃、200rpmで96時間の振とう培養である、ことを特徴とする、請求項2に記載のアフラトキシン毒素産生菌株の毒性を同定および評価する方法。
【請求項4】
前記濾液中のアフラトキシンの濃度を免疫親和性精製-高速液体クロマトグラフィーの標準的な方法で測定する、ことを特徴とする、請求項2に記載のアフラトキシン毒素産生菌株の毒性を同定および評価する方法。
【請求項5】
前記Nor-1遺伝子転写量を測定するための方法では、前記培養液の濾過で得られるアスペルギルス・フラバス菌の菌糸ペレットを乾燥し、乾燥後乾燥菌を取得し、前記乾燥菌中Nor-1遺伝子転写量を測定する、ことを特徴とする、請求項2に記載のアフラトキシン毒素産生菌株の毒性を同定および評価する方法。
【請求項6】
前記アフラトキシンの収量およびNor-1遺伝子転写量は、定量PCRによって得られ、前記定量PCRは、
免疫反応段階において、アフラトキシンモノクローナル抗体コーティング量が一定量である条件下で、異なる濃度のアフラトキシン標準品前記アフラトキシンモノクローナル抗体に対する抗イディオタイプナノ抗体を表面に提示するファージと、アフラトキシンモノクローナル抗体への結合において競合させ、免疫競合反応が終了すると、アフラトキシンモノクローナル抗体に結合前記ファージ溶出し、異なる濃度のアフラトキシン標準品は異なる溶出量の前記ファージに対応し、溶出液中の前記ファージは、PCR加熱プロセス中にDNA分子を放出し、放出された前記DNA分子を定量PCR反応中の増幅ターゲットとして、各溶出液それぞれに定量PCR増幅反応をかけ、増幅反応が完了すると、異なるCt値が得られ、アフラトキシンの濃度の対数値を横軸とし、Ct値を縦軸として回帰分析を実行し、アフラトキシンの定量Sタイプの標準曲線を得る、アフラトキシン量Sタイプの標準曲線の確立の工程(1)と、
or-1遺伝子DNA断片Tq-nor1の既知のコピー数のサンプルを異なるコピー数に連続希釈し、各コピー数Tq-nor1それぞれに定量PCR増幅反応をかけ、増幅反応が完了すると、異なるCt値が得られ、Tq-nor1コピー数の対数値を横軸とし、Ct値を縦軸として回帰分析を実行し、or-1遺伝子転写量の定量標準曲線を得る、Nor-1遺伝子転写量の定量PCR標準曲線の確立の工程(2)と、
前記培養液の濾過で得られる前記濾液を一定の倍数に希釈した後、工程(1)の前記免疫反応中のアフラトキシン標準品の代わりに免疫競合反応に関与させ、競合反応後、前記アフラトキシンモノクローナル抗体に結合したファージを溶出し、溶出液中の前記ファージが放出する前記DNA分子前記定量PCR増幅反応におけるファージテンプレートとし、さらに、前記培養液の濾過で得られるアスペルギルス・フラバス菌糸ペレットを乾燥した後、抽出したトータルRNAをcDNAに逆転写し、前記cDNAを特定の倍数に希釈して、前記定量PCR増幅反応でNor-1遺伝子を増幅するためのNor-1遺伝子テンプレートとする、アスペルギルス・フラバス株培養工程(3)と、
前記ファージテンプレートと前記Nor-1遺伝子テンプレートをテンプレートとして、前記定量PCR増幅反応を実行し、増幅反応が完了すると、2つのCt値が取得され、2つのCt値それぞれを前記アフラトキシンの定量Sタイプの標準曲線と前記Nor-1遺伝子転写量の定量標準曲線に代入し、換算してアフラトキシンの濃度とNor-1遺伝子転写量を取得し、それにより、前記比率を決定する、工程(4)とを備える、ことを特徴とする、請求項2に記載のアフラトキシン毒素産生菌株の毒性を同定および評価する方法。
【請求項7】
前記定量PCR増幅反応の反応システムにおいて、前記ファージテンプレートを標的とする上流プライマーPh-Fおよび下流プライマーPh-R、ならびに前記Nor-1遺伝子テンプレートを標的とする上流プライマーTq-nor1-Fおよび下流プライマーTq-nor1-Rの最終濃度は、300~400nMであり、前記Ph-Fおよび前記Ph-Rによるアンプリコンに対する蛍光プローブであるPh-probeと前記Tq-nor1-Fおよび前記Tq-nor1-Rによるアンプリコンに対する蛍光プローブであるTq-probeの最終濃度は、200~400nMであり、DNAポリメラーの最終投与量は0.5U~1.0Uであり、MgClの最終濃度は1mM~2mMであり、dNTPsの最終濃度は、200μM~400μMである、ことを特徴とする、請求項6に記載のアフラトキシン毒素産生菌株の毒性を同定および評価する方法。
【請求項8】
前記定量PCR増幅反応の反応システムには、ユニバーサルプローブqPCRプレミックス5μLと、前記ファージテンプレートを標的とする上流プライマーPh-F 0.1μL前記ファージテンプレートを標的とする下流プライマーPh-R 0.1μLと、前記Ph-Fおよび前記Ph-Rによるアンプリコンに対する蛍光プローブであるPh-probe 0.1μLと、前記ファージテンプレート 2μLと、前記Nor-1遺伝子テンプレートを標的とする上流プライマーTq-nor1-F 0.1μLと、前記Nor-1遺伝子テンプレートを標的とする下流プライマーTq-nor1-R 0.1μLと、前記Tq-nor1-Fおよび前記Tq-nor1-Rによるアンプリコンに対する蛍光プローブであるTq-probe 0.1μLと、前記Nor-1遺伝子テンプレート 1μLと、DNAポリメラーゼ 0.2μLと、MgCl 0.8μL、dNTPs 0.2μLとが含まれ、HOを加えて10μLを構成する、ことを特徴とする、請求項6に記載のアフラトキシン毒素産生菌株の毒性を同定および評価する方法。
【請求項9】
前記アフラトキシン毒素産生菌株によって産生されるアフラトキシンの濃度(ng/mL)をY、前記比率Xと定義すると
Y=10.14X-16.20である、ことを特徴とする、請求項1に記載のアフラトキシン毒素産生菌株の毒性を同定および評価する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学の分野に属し、特に、アフラトキシン毒素産生菌株の毒性を同定および評価する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アフラトキシンは、これまでに見つかったマイコトキシンの中で最も毒性の高いタイプである。アフラトキシンB1を例にとると、その毒性はシアン化カリウムの10倍、ヒ素の68倍である。アフラトキシンは国際癌機構によってクラスI発がん性物質に分類されている。アフラトキシンは、ピーナッツ、トウモロコシ、米などの穀物や油料作物、クルミ、ピスタチオ、漢方薬などの多くの植物製品を容易に汚染する。国内外でのアフラトキシンによる人や家畜の中毒の多くの事例がある。国際がん研究機関(IARC)の最新の報告によると、開発途上国だけで約5億人がアフラトキシンに曝露するリスクがある。中国はアフラトキシンの汚染が激しい地域である。農業省の数年の国勢調査の結果によれば、中国の主要作物製品におけるアフラトキシンの汚染が増加し続けており、深刻な地域の毒素含有量は制限の数百倍を超えていることを示している。強力な毒素産生株は20%未満であるが、それは作物の品質と安全を脅かす主要な隠れた危険になっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
アフラトキシンは、主にアスペルギルス・フラバスやアスペルギルス寄生菌などの真菌によって産生される。さまざまなアスペルギルス・フラバス株がアフラトキシンを生成する能力、つまり毒性が数百倍も異なる可能性があることが研究で示されている。強力な毒素産生株は、高汚染の主な原因であるが、これまでのところ、特異性の強力な毒素産生株を迅速に同定する効果的な方法が欠如している。現在、アスペルギルス・フラバス株の毒性を同定するための2つの主要な方法がある。1つは、株を一定期間培養した後に生成されるアフラトキシンの量を測定することにより、株の毒素産生能力を直接評価することである。このタイプの方法は長い時間がかかり、最初に菌株を分離してから培養し、最後にアフラトキシンの含有量を検出して評価する必要がある。さらに、アフラトキシンの生合成が多くの複雑な要因の影響を受け、同じ菌株が異なる培養バッチで培養されると、アフラトキシンの収量は大きく異なり、その結果を使用して菌株の本質的に一定の自己毒素産生特性を特徴付けることは困難であり、この方法の同定と評価結果の精度と信頼性に影響を与える。別の方法は、毒素産生に関連する遺伝子の転写レベルを測定することによって菌株の毒性を評価することであり、Nor-1遺伝子が毒性を評価するためにテストされているという報告が文献1(ZSUZSANNA,Mayer et al,“Monitoring the Production of Aflatoxin B1 in Wheat by Measuring the Concentration of nor-1 mRNA”,APPLIED AND ENVIRONMENTAL MICROBIOLOGY,Volume 69,No.2,(2003-02-28))にある。ただし、このタイプの方法の欠点は、自然状態ではNor-1遺伝子以外の毒素産生遺伝子を欠くため、Nor-1遺伝子の発現が検出されても、本来、アフラトキシンは産生されないことである。これは、そのような方法の誤った結果につながる。
【0004】
要約すると、アフラトキシン毒素産生菌株の毒性を客観的かつ正確に特定および評価することは、常に未解決の世界的な問題であった。
【0005】
従来技術の欠点を考慮して、本発明は、アフラトキシン毒素産生菌株の毒性を同定および評価するための方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記の目的を達成するために、本発明によって採用される技術的解決策は以下のとおりである。
【0007】
本発明に係るアフラトキシン毒素産生菌株の毒性を同定および評価する方法では、アフラトキシンの収量およびNor-1遺伝子転写量を測定し、アフラトキシンの収量とNor-1遺伝子転写の比率を取得し、アフラトキシンの収量とNor-1遺伝子転写の比率に基づき、アフラトキシン毒素産生菌株の毒素産生能力を同定および評価する。
【0008】
上記の方法によれば、前記アフラトキシンの収量を測定するための方法は、アスペルギルス・フラバス株を培養し、アスペルギルス・フラバス菌の胞子を振とう培養し、培養後、濾液を濾過し、濾液中のアフラトキシンの濃度を測定する。
【0009】
上記の方法によれば、前記アスペルギルス・フラバス株の培養に使用する培地はCDA培地であり、培養条件は、28℃、湿度90%で10日間の培養である。
前記アスペルギルス・フラバス菌の胞子の振とう培養に使用される培地は、ジャガイモデキストロース液体培地であり、培養条件は、28℃、200rpmで96時間の振とう培養である。
【0010】
上記の方法によれば、免疫親和性精製-高速液体クロマトグラフィーの標準的な方法で前記アスペルギルス・フラバス菌の胞子振とう培養後の濾液中のアフラトキシンの濃度を測定する。
【0011】
上記の方法によれば、前記Nor-1遺伝子転写量を測定するための方法では、アスペルギルス・フラバス株を培養し、アスペルギルス・フラバス菌の胞子を振とう培養し、培養後、アスペルギルス・フラバス菌の菌糸ペレットを濾過し、乾燥後乾燥菌を取得し、従来のNor-1遺伝子転写量を測定するための方法で、乾燥菌中Nor-1遺伝子転写量を測定する。
【0012】
上記の方法によれば、前記アフラトキシンの収量およびNor-1遺伝子転写量は、定量PCRによっても得ることができ、詳しくは、免疫反応段階において、アフラトキシンモノクローナル抗体1C11コーティング量が一定量である条件下で、異なる濃度のアフラトキシン標準品を使用して、V2-5ファージと競合して1C11に結合させ、免疫反応が終了すると、1C11に結合したファージを溶出し、異なる濃度のアフラトキシン標準品は異なる溶出量のファージに対応し、溶出液中のファージは、PCR加熱プロセス中にDNA分子を放出し、放出されたDNA分子は定量PCR反応中の増幅ターゲットとして、テストキットを使用して各溶出液それぞれに定量PCR増幅反応をかけ、増幅反応が完了すると、異なるCt値が得られ、アフラトキシンの濃度の対数値を横軸とし、Ct値を縦軸として回帰分析を実行し、アフラトキシンの定量Sタイプの標準曲線を得る、アフラトキシン量Sタイプの標準曲線の確立の工程(1)と、
or-1遺伝子DNA断片Tq-nor1の既知のコピー数のサンプルを異なるコピー数に連続希釈し、そして、前記テストキットを使用して各コピー数Tq-nor1それぞれに定量PCR増幅反応をかけ、増幅反応が完了すると、異なるCt値が得られ、Tq-nor1コピー数の対数値を横軸とし、Ct値を縦軸として回帰分析を実行し、or-1遺伝子転写量の定量標準曲線を得る、Nor-1遺伝子転写量の定量PCR標準曲線の確立の工程(2)と、
アスペルギルス・フラバス菌の胞子を振とう培養し、培養後、菌株培養液とアスペルギルス・フラバス菌糸ペレットを濾過し、菌株培養液を一定の倍数に希釈した後、工程(1)の前記免疫反応中のアフラトキシン標準品の代わりに免疫競合反応に関与し、競合反応後、1C11に結合したファージを溶出し、溶出液中のV2-5ファージを定量PCR増幅反応における定量アフラトキシンの増幅テンプレートとし、さらに、アスペルギルス・フラバス菌糸ペレットを乾燥した後、トータルRNAを抽出し、cDNAに逆転写し、前記cDNAを特定の倍数に希釈して、定量PCR増幅反応でNor-1遺伝子を増幅するためのテンプレートとする、アスペルギルス・フラバス株培養工程(3)と、
前記V2-5ファージと前記cDNAをテンプレートとして、定量PCR増幅反応を実行し、増幅反応が完了すると、2つのCt値が取得され、2つのCt値それぞれをアフラトキシンの定量Sタイプの標準曲線とor-1遺伝子転写量の定量標準曲線に代入し、換算してアフラトキシンの濃度とNor-1遺伝子転写量を取得し、それにより、アフラトキシンの収量とNor-1遺伝子転写量の比率を決定する、工程(4)とを備える。
【0013】
上記の方法によれば、アフラトキシンに対する抗イディオタイプナノ抗体を表面に提示する(surface-displaying)ファージは、ファージVHH 2-5であり、前記アフラトキシンモノクローナル抗体はアフラトキシンモノクローナル抗体1C11である。
【0014】
上記の方法によれば、前記定量PCR増幅反応の反応システムにおいて、上流および下流プライマーであるPh-F、Ph-R、Tq-nor1-F、Tq-nor1-Rの最終濃度は、300~400nMであり、蛍光プローブであるPh-probeとTq-probeの最終濃度は、200~400nMであり、DNAポリメラーの最終投与量は0.5U~1.0Uであり、MgClの最終濃度は1mM~2mMであり、dNTPsの最終濃度は、200μM~400μMである。
【0015】
上記の方法によれば、前記上流プライマーPh-Fのヌクレオチド配列は、SEQ ID NO.1に示され、下流プライマーPh-Rのヌクレオチド配列はSEQ ID NO.2に示され、蛍光プローブPh-probeのヌクレオチド配列はSEQ ID NO.3に示され、前記上流プライマーTq-nor1-Fのヌクレオチド配列はSEQ ID NO.4に示され、下流プライマーTq-nor1-Rのヌクレオチド配列はSEQ ID NO.5に示され、蛍光プローブTq-probeのヌクレオチド配列はSEQ ID NO.6に示される。
【0016】
上記の解決策によれば、前記定量PCR増幅反応的反応システムには、ユニバーサルプローブqPCRプレミックス5μLと、Ph-F 0.1μL、Ph-R 0.1μLと、Ph-probe 0.1μLと、ファージテンプレート2μLと、Tq-nor1-F 0.1μLと、Tq-nor1-R 0.1μLと、Tq-probe 0.1μLと、Nor-1遺伝子テンプレート1μLと、DNAポリメラーゼ 0.2μLと、MgCl2 0.8μL、dNTPs 0.2μLとが含まれ、HOを加えて10μLを構成する。
【0017】
上記の方法によれば、前記定量PCR増幅反応的の条件は、95℃で5分、95℃で10秒、及び60℃で30秒、を40サイクルである。
【0018】
上記の方法によれば、前記アフラトキシンの定量Sタイプの標準曲線におけるアフラトキシンの濃度範囲は33.33ng/mL~1.69pg/mLであり、アフラトキシンの最低検出線LODは0.018ng/mLであり、前記or-1遺伝子転写量の定量標準曲線におけるor-1遺伝子コピー数の範囲が10~10である。
【0019】
上記の方法によれば、前記アフラトキシン毒素産生菌株の毒性はYと定義され、アフトキシンの収量とNor-1遺伝子転写量(AFT/Nor-1)の比率はXと定義され、アスペルギルス・フラバス株毒性の同定方程式は次のとおりであり、
Y=10.14X-16.20
高毒素産生株によると、毒素産生量>150ng/mLであり、中程度の毒素産生によると、50<毒素産生量<150ng/mLであり、低毒素産生によると、毒素産生量<50ng/mLであり、非毒素産生によると、0であり、毒性同定範囲を計算するための方程式に代入すると、高毒素産生株がAFT/Nor-1>16.4、中程度の毒素産生株が6.5<AFT/Nor-1<16.4、低毒素産生株が0<AFT/Nor-1<6.5、非毒素産生株がAFT/Nor-1=0である。
【発明の効果】
【0020】
本発明の有益な効果は以下の通りである。
(1)本発明の研究により、アフラトキシンの収量とNor-1遺伝子転写の比率が非常に良好な相対的安定性を有することが証明され、アスペルギルス・フラバス株毒性同定モデルが確立された。すなわち、アスペルギルス・フラバス菌毒性およびアフラトキシンの収量とnor-1遺伝子転写量の比率(AFT/Nor-1)の間の回帰方程式が得られ、AFT/Nor-1の比率を決定することにより、アスペルギルス・フラバス株毒性の迅速かつ正確な同定および評価を実現でき、アフラトキシン汚染の早期警告と防止および管理にとって非常に重要である。
【0021】
(2)本発明は、アスペルギルス・フラバス株毒素産生量とor-1遺伝子転写量を同期検出するための定量PCR検出法を確立する。本発明の前記定量PCR法で得られたアスペルギルス・フラバス株毒素産生量、or-1遺伝子転写量と、HPLC定量アフラトキシン、Nanodrop定量Nor-1遺伝子転写量の結果との間には良好な線形関係があるため、定量PCR法に基づいて得られたAFT/Nor-1(アスペルギルス・フラバス株毒素産生量/or-1遺伝子転写量)の比率は信頼性が高く正確であり、アスペルギルス・フラバス株毒性大小を判断するための同定指標として使用できる。
【0022】
(3)本発明の前記アスペルギルス・フラバス株毒素産生量とor-1遺伝子転写量の定量PCR法では、試薬量が少なく、コストが低く、ハイスループット検出が可能で、前記定量PCR法は分析モードを合理化し、実験プロセスと構造を最適化し、アフラトキシンおよび合成経路における他の小分子の同期分析のための検出プラットフォームと理論的基盤を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1定量PCR反応中DNAポリメラーゼ、dNTPsおよびMgCl濃度を最適化する。
図2定量PCR増幅効率の評価である。
図3定量PCR定量アフラトキシンB1およびor-1遺伝子転写量の定量標準曲線である。
図4定量PCR定量:アフラトキシンB1、B2、G1、G2、ZEN、DON、FB1交叉反応率との交差反応率を示す。
図5定量PCRの、HPLCとNanodrop定量結果の比較を示す。
図6】アフラトキシンの収量とNor-1遺伝子発現の相関関係(A)、アフラトキシンの収量とAFT/Nor-1の相関関係(B)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明をよりよく理解するために、本発明の内容は、実施例と併せて以下でさらに明らかにされるが、本発明の内容は、以下の実施例に限定されない。
【0025】
(実施例1)
I.研究により、アフラトキシンの収量とNor-1遺伝子転写の比率が非常に良好な相対的安定性を有する。
1g NaNO、1g KHPO、0.5g MgSO・7HO、0.5g KCl、0.01g FeSO、30gデキストロースおよび寒天粉末20gの重さを量り、脱イオン水で総容量1000mlに希釈し、121℃で30分間、高温蒸気で滅菌して、CDA培地を調製する。アスペルギルス・フラバス株を28℃、湿度90%のCDA固形培地で10日間培養した後、培養プレートを20%Tween-20で洗浄し、アスペルギルス・フラバス菌の胞子溶液を得る。血球計数板計数法を用いて、アスペルギルス・フラバス菌の胞子溶液をボルテックスオシレーターで均一に振とうし、アスペルギルス・フラバス菌の胞子溶液を顕微鏡法でカウントする。
【0026】
15mLのジャガイモデキストロース液体培地を50mLの三角フラスコに入れ、121℃で30分間オートクレーブし、カウント結果に従ってアスペルギルス・フラバス菌の胞子溶液を1×10胞子/mlの最終濃度になるように加え、28℃、200rpmで振とうして、96時間培養する。培養液を二層濾紙で濾過して、濾液(後で使用するために保存)とアスペルギルス・フラバス菌の菌糸ペレットを取得する。アスペルギルス・フラバス菌の菌糸ペレットの場合、濾紙で余分な水を絞り、65℃のオーブンで12時間乾燥させて乾燥菌を取得する。室温まで冷却した後、-70℃で保管し、後で使用する。濾過で得られた濾液を後で使用するために4℃で保管する。
【0027】
アスペルギルス・フラバス菌の胞子振とう培養後に得られた濾液(上記の後で使用するために保存したもの)中のアフラトキシンの濃度を測定するために、免疫親和性精製-高速液体クロマトグラフィーの標準的な方法を使用し、従来のNor-1遺伝子転写相対量測定方法を使用し、上記の後で使用するために保存した乾燥菌のNor-1遺伝子転写相対量を測定する。
【0028】
上記と同様の操作を行い、2バッチ試験の前後でアスペルギルス・フラバス7株を異なる時間で培養した結果を表1に示す。
【0029】
【表1】
【0030】
表1の測定結果によると、2つのバッチのアフラトキシンの濃度はまったく異なるため、アフラトキシンの収量だけではアスペルギルス・フラバス株の毒性の評価を満たすことができない。一部のアスペルギルス・フラバス株のor-1遺伝子転写の相対量が高い場合、毒性が比較的低い場合もあるが、非毒素産生株もor-1遺伝子を転写する可能性があるため、or-1遺伝子だけではアスペルギルス・フラバス株の毒性の評価を満たすことができない。予想外に、表1では、アフラトキシンの濃度とor-1遺伝子転写の相対量を除算したときに得られる比率、つまり、表1の[AFT]/[or-1]の値は、強い規則性があることがわかった。2つの培養測定バッチから得られた7つの菌株は、同じ毒性シーケンスを持っているだけでなく、各菌株の[AFT]/[or-1]値も比較的安定していたため、アスペルギルス・フラバス株の毒性評価を満たすことができる。
【0031】
表1のデータから、アフラトキシンの濃度値とNor-1遺伝子転写相対量値の比率を使用してアスペルギルス・フラバス株の毒性を評価すると、精度と信頼性はアフラトキシンの濃度値のみまたはor-1遺伝子転写相対量のみよりもはるかに優れていることがわかる。
【0032】
(実施例2 アフラトキシンの収量とNor-1遺伝子転写量の同期検出のための定量PCR法の確立)
既存のアフラトキシンに対する抗イディオタイプナノ抗体を表面に提示するファージVHH 2-5とor-1遺伝子DNA断片Tq-nor1とを使用して、アフラトキシンの収量とNor-1遺伝子転写量の同期検出のための定量PCR法を確立する。同定評価アスペルギルス・フラバス株毒性の同定と評価の科学的根拠としての上記の検出結果によれば、アスペルギルス・フラバス株毒性の迅速な同定と評価のための支援方法を提供する。これらの具体的な手順は次のとおりである。
【0033】
前記アフラトキシンに対する抗イディオタイプナノ抗体を表面に提示するファージVHH 2-5は、中国農業科学院の油料作物研究所の品質検査センターによって開発され、ジャーナル文献「Yanru Wang;Peiwu Li;Zuzana Majkova;Candace R.S.Bever;Hee Joo Kim;Qi Zhang;Julie E.Dechant;Shirley J.Gee;Bruce D.Hammock;アフラトキシンイムノアッセイ用のアルパカ抗イディオタイプ重鎖単一ドメイン抗体の分離(Isolation of Alpaca Anti-Idiotypic Heavy-Chain Single-Domain Antibody for the Aflatoxin Immunoassay);分析化学、2013,8298-8303」に掲載されている。本実施例で使用したファージは、あらかじめ実験室で大腸菌ER2738に保存し、増幅して得た。増幅方法は次のとおりである。
【0034】
ナノ抗体ファージVHH 2-5を保持しているER2738単一コロニープレートからランダムにモノクローナルを選び、1mLのSB-アンピシリンを含有液体培地に接種し、37℃の恒温シェーカーによって225rpmで一晩培養する。上記の一晩培養液SB-アンピシリン液体培地100mLに加え、2OD600=0.5-0.6になるまで37℃、225rpmで培養し、培養した細菌溶液に1.5ml M13KO7セカンダリファージ(滴定量1×1011-1×1012pfu/mL)を加え、37℃で30分間放置し、最終濃度70μg/mLのカナマイシンを細菌溶液に加え、37℃、225rpmで一晩培養し、振とうする。4℃、10000rpmで一晩培養した細菌溶液を15分間遠心分離し、上澄み液を取り、そして、きれいな遠心ボトルに移し、1/4容量のPEG/NaClを加え、氷上で2時間放置し、4℃、10000rpmで30分間遠心し、2mLの0.5%BSA/PBSで沈殿を再懸濁する。12000rpmで5分間遠心分離し、上澄み液を取り、上澄み液を0.22μmフィルターで濾過し、等量の滅菌グリセリンと混合し、それらを分割して、滴定量を測定する。滴定量の決定方法は次のとおりである。
【0035】
ER2738単一コロニープレートからランダムにモノクローナルを選び、0.04mg/mLテトラサイクリンを含むLB液体培地に接種し、37℃、225rpmの恒温シェーカーで一晩培養する。上記の一晩培養液を20μL取り、2mL SB培養液に加える。225rpm、37℃でOD600≒1まで培養する。滴定量を測定する必要があるファージの勾配希釈を行うためにLB液体培地を使用する。各希釈液を10μL取り、OD600≒1、37℃のER2738細菌溶液100μLに加える。大腸菌をファージに感染させるために37℃で20分間放置し、感染した大腸菌溶液をLB-アンピシリンプレートに広げ、37℃の恒温インキュベーターに30分間直立させ、培養物を一晩反転させる。単一コロニーの数を約100個選択して、プレートカウントを行い、次の方程式に従ってファージ滴定量を計算する。
(単一コロニー数×希釈係数×1000μl/ml)/加えられるファージ容量(μl)。
【0036】
前記or-1遺伝子DNA断片Tq-nor1を取得する方法として、15mLのジャガイモデキストロース液体培地を50mLの三角フラスコに入れ、121℃で30分間オートクレーブし、No.N73 アスペルギルス・フラバス菌の胞子溶液を最終濃度1×10ml-1になるまで加え、28℃、200rpmで96時間振とう培養した後、二層濾紙で菌糸ペレット培養液を絞り出し、65℃で12時間乾燥させ、液体窒素で急速凍結し、粉末に粉砕する。正確に200mgの菌糸粉末を量り、DNAをキット(DNeasy Plant Mini Kit)で抽出し、キットのマニュアルに従ってNo.N73株のゲノムDNAを抽出し、次のプライマーを使用して400bpのサイズのor-1遺伝子断片産物を増幅し、E.Z.N.A.TM(OMEGA)ゲルを使用してキットを抽出し、マニュアルに従って400bp DNAフラグメントを精製して、Tq-nor1を入手できる。
【0037】
Nor1-F: 5’-ACCGCTACGCCGGCACTCTCGGCAC-3’;
Nor1-R: 5’-GTTGGCCGCCAGCTTCGACACTCCG-3’。
【0038】
I.アフラトキシンの収量とNor-1遺伝子転写量を同期検出するための定量PCR法の確立
1.アフラトキシンの収量とNor-1遺伝子転写量を同期検出するための定量PCRのプライマーのプライマーとプローブのシーケンス設計
アフラトキシンに対する抗イディオタイプナノ抗体を表面に提示するファージVHH 2-5によって放出されたDNA断片およびor-1遺伝子のDNA断片Tq-nor1をテンプレートとして定量PCR増幅を行い、定量PCRの増幅結果によってアフラトキシンの収量とNor-1遺伝子転写量の比率を決定する。
【0039】
アフラトキシンに対する抗イディオタイプナノ抗体を表面に提示するファージVHH 2-5ナノ抗体をコードするシーケンスとor-1遺伝子シーケンス、アフラトキシンの上流および下流プライマー(Ph-F,Ph-R)プローブ(Ph-probe)シーケンス、Tq-nor-1の上流および下流プライマー(Tq-nor1-F,Tq-nor1-R)とプローブ(Tq-probe)シーケンスに基づいて、そして、ダブル定量PCR反応のプライマープローブによる設計原理と注意事項に従って、Oligo7.0プライマー分析ソフトウェアで検証する。
【0040】
プライマーとプローブの検証原理:すべてのプライマーのTM値は同じまたは近いレベルに設定する必要があり、すべてのプローブのTM値はプライマーのTM値にできるだけ近く、プライマーのTM値よりも約5~10℃高くする必要がある。同じシステムの同期であるため、すべてのプライマーとプローブが二量体を容易には形成しないことが確保される。BLAST検索により、プライマーとプローブが目標ターゲットに対して特異性を有することが確保される。
【0041】
以下のプライマーとプローブシーケンスは、表2にまとめられているように、上記の原則と要件を満たすように決定されている。
【0042】
【表2】
【0043】
2.アフラトキシンの収量とNor-1遺伝子転写量の定量PCR検出法の反応パラメーター
反応システム間の相互作用を完全に考慮する必要があるため、定量PCR反応パラメーターは単一遺伝子増幅の定量PCRとは異なる。まず、2つの単層アフラトキシンに対する抗イディオタイプナノ抗体ファージ特異DNA断片とor-1遺伝子DNA断片を定量PCRで増幅する。反応成分は、他の成分を追加せずに直接混合し、ダブル定量PCR反応を行い、PCR反応の結果を図1Aに示す。図から、VHH 2-5ファージDNA分子の増幅が著しく阻害されていることがわかる。ダブル定量PCR反応では、異なるアンプリコンの増幅効率とターゲットシーケンスが異なる場合がある。増幅効率が低いサンプルまたはターゲットシーケンスが少ないサンプルの増幅は、高増幅サンプルまたはターゲットシーケンスが多いターゲットシーケンスによって抑制される。
【0044】
このため、本発明は、アフラトキシンの収量とNor-1遺伝子転写量の同期検出法の定量PCR反応条件を最適化する。本発明では、DNAポリメラーゼ、MgClおよびdNTPsの濃度が最適化される。図1Bに示す結果は、VHH 2-5ファージ濃度が10pfu/mLの場合、dNTPsおよびMgClをさらに追加した後、サイクルしきい値Ctが前に移動し、増幅曲線はより早いサイクル数のところに現れる。これは、VHH 2-5ファージDNA分子の増幅増加を示している。図1Cは、DNAポリメラーゼが0.25Uから1.0Uに増加すると、ファージの増幅効率も大幅に向上することを示している。したがって、しきい値サイクルCtがより早く現れ、増幅曲線が指数期のSタイプにより近いという原理に基づいて、本発明のDNAポリメラーゼ、MgClおよびdNTPsの好ましい投与量範囲は、DNAポリメラーゼ:0.5U~1.0U;MgCl:1mM~2mM;dNTPs:200μM~400μMである。
【0045】
上記の研究結果によれば、本発明は、表3に示されるように、最終的に最適化された増幅反応パラメーターを提供する。
【0046】
【表3】
【0047】
3.定量PCR法の増幅効率の検出のためのアフラトキシンの収量とNor-1遺伝子転写量の同期検出法
図2Aに示すように、連続希釈ファージと連続希釈or-1の定量PCR増幅結果は、定量PCR増幅曲線(RFU、相対蛍光単位)に表示される。図2Bは、増幅曲線から得られた増幅効率の標準曲線である。ファージVHH 2-5増幅効率の標準曲線傾き-3.37は、増幅効率Eの計算式(E=[101/-slope-1]×100%)により算出され、増幅効率Eが98.03%の場合、VHH 2-5ファージの検出可能な濃度範囲は10~10pfu/mLである。当or-1遺伝子DNA断片Tq-nor1のコピー数が10-10コピーの場合、or-1遺伝子の増幅効率は90.25%である。増幅効率Eは90%-105%の範囲を満たし、増幅効率標準曲線の相関係数R>0.99である。したがって、最適化された定量PCRシステムは、VHH 2-5ファージおよびor-1遺伝子の同期かつ効率的な増幅に使用できる。
【0048】
II.定量標準曲線の確立と定量PCR方法評価
1.アフラトキシン定量のためのSタイプの標準曲線
1.1 免疫反応
(1)コーティング:市販のアフラトキシンモノクローナル抗体1C11(寄託番号はCCTCC NO:C201013のハイブリドーマ細胞株1C11(特許出願番号CN201010245095.5に詳しい説明がある)によって分泌される)をPBSで1.0μg/mLに希釈し、マイクロピペットを使用して96ウェルマイクロタイタープレートに追加する(ウェルあたり100μL)。4℃で一晩(約12時間)インキュベートし、プレートをPBSTで3回洗浄する。ブロック:ブロック液でブロックし、ウェルあたり300μL、37℃で45分間インキュベートし、プレートをPBSTで3回洗浄する。
【0049】
(2)ブロック:ブロック液でブロックし、ウェルあたり300μL、37℃で45分間インキュベートし、プレートをPBSTで3回洗浄する。
【0050】
(3)競合:アフラトキシンB1標準品を100%純粋なメタノールで200ng/mLの濃度に希釈する。そして、アフラトキシンB1の標準溶液を10%(v/v)メタノール/PBSの3倍勾配比で33.33ng/mL-1.69pg/mLの濃度範囲に希釈し、そして、50μLの既知濃度のVHH 2-5ファージ(1.0×1010cfu/mL)と50μLシリーズ濃度のアフラトキシンB1を混合し、100μLの混合物を96-wellマイクロタイタープレートに加え、37℃で1時間インキュベートした後、マイクロタイタープレートをPBSTで10回洗浄する。
【0051】
(4)溶出:ファージ溶出液90μLを各ウェルに注入し、37℃の温浴に15分間静置し、マイクロピペットで軽く叩き、ファージミドを含む溶出液を移す。
【0052】
(5)中和:移出された溶液90μLと中和溶液10μLを混合して、混合物を中性にする。追加する中和溶液の容量は、溶出液と中和液の実際のpH値を調整して、混合物が中性になるようにする。
【0053】
1.2 標準曲線を確立する:免疫反応段階では、アフラトキシンモノクローナル抗体1C11コーティング量が一定である場合、異なる濃度のアフラトキシンは、異なる量のVHH 2-5ファージと競合して1C11に結合する。アフラトキシンの濃度が高いほど、ファージが1C11に結合する可能性が低くなり、結合量が低くなる。免疫応答が終了すると、1C11に結合する溶出液中のファージが溶出し、溶出液中のファージ数はアフラトキシンの濃度に関連する。溶出液中のファージミドはPCR反応の加熱プロセス中にDNA分子を放出し、放出されたDNA分子は定量PCR反応として使用されるターゲットを増幅する。増幅反応後、蛍光定量システムソフトウェアは、異なる量アフラトキシンに対応する異なる溶出液中の異なる数のファージ増幅のCt値を取得し、および、シリーズ希釈された異なる濃度のアフラトキシン(33.33ng/mL~1.69pg/mL)で得られたCt値でアフラトキシンの濃度の対数値を取得し、Origin Pro 8.0ソフトウェアを使用して、図3Aに示すように、アフラトキシン量Sタイプ標準曲線として4パラメーターロジスティック回帰を実行する。
【0054】
2.or-1遺伝子転写量の定量標準曲線の確立
この例では、アスペルギルス・フラバス株を取り上げる。この例では、この研究センターで保存されている高毒素生産株であるアスペルギルス・フラバス株No.N73を使用しており、この研究でのTq-nor1の調製に用いられる。他のアスペルギルス・フラバス株の場合、400bp DNA断片Tq-nor1は、上記の「or-1遺伝子DNA断片Tq-nor1の取得方法」によって増幅で得られ、or-1遺伝子転写の定量化に使用できる。標準曲線の候補株。分光光度計(NanoDrop 2000、Thermo Scientific、米国)でTq-nor1の濃度を検出した後、Tq-nor1のコピー数が計算される。Tq-nor1を既知量のサンプルとして連続的に希釈(10~10コピー)し、定量PCRで増幅する。OriginPro 8.0ソフトウェアを使用して、Tq-nor1標準品のシリアルコピー数の対数を横軸とし、Ct値を縦軸として、回帰分析に使用され、図3Bは、or-1遺伝子転写の定量的標準曲線を示している。
【0055】
アフラトキシンの定量的標準曲線は図3Aに示される。図から、定量PCR定量的アフラトキシンB1の検出限界LOD(IC10で表される)は0.018ng/mLであるため、確立されたアフラトキシンB1の定量PCRでの検出は高感度であることがわかる。さらに、図3Bは、定量PCRが10~10の範囲のor-1遺伝子コピー数を定量化できることを明らかにし、確立された定量PCRが低レベルでのor-1遺伝子の絶対定量に明らかな利点を持っていることが完全に確認される。
【0056】
3.アフラトキシン交差反応率測定の定量PCR検出
アフラトキシンB2、G1、G2、ゼアラレノン(ZEN)、デオキシニバレノール(DON)、フモニシン(FB1)の標準品をシリーズの濃度に希釈し、ファージVHH 2-5競合免疫反応の後、ELISAプレートの下部にあるモノクローナル抗体1C11に結合したファージが溶出され、定量PCRによってTq-nor1で増幅される。増幅によって得られたCt値は、毒素の異なる濃度の対数値に対応し、標準曲線を作成し、IC50値を計算し、交差反応計算式%CR=(IC50 AFB1/IC50検体)×100に従って交差反応率を計算する。図4に示すように、アフラトキシンB1、B2、G1、およびG2の交差反応率は、それぞれ100%、101%、34%、および12%であった。この方法は、アフラトキシンの総量の測定を実現できることがわかる。その中で、アフラトキシンG1とG2の交差反応率はそれぞれ34%と12%であるが、アスペルギルス・フラバス株はBグループのアフラトキシンのみを生成するため、アスペルギルス・フラバスの毒性の同定におけるこの方法の適用には影響しない。アフラトキシンB2の交差反応率は101%であり、アフラトキシンB2を定量化するための確立された定量PCR法は感度が高く、アフラトキシンの毒性を同定するための確立された定量PCR法の信頼性をある程度向上させる。これは、アスペルギルス・フラバス株がアフラトキシンB1とアフラトキシンB2を生成できるためである。したがって、確立された定量PCRを使用してアスペルギルス・フラバス株の毒性を特定することは、B1およびB2の包括的な収量の評価である。
【0057】
4.定量PCRによる回復検証の追加
アフラトキシンB1標準品とor-1遺伝子DNA断片Tq-nor-1を2mLのブランクのPDB培地に追加する。よく振ってよく混ぜ、均一に混合した後、混合液を4℃に置き、4日間光を避ける。4日後、混合液を20倍に希釈し、混合液中のアフラトキシンB1とTq-nor-1の含有量を定量PCRで同期検出した。同日にグループ内で3回の繰り返しを設定し、異なる日にグループ間で3回の繰り返しを設定する。回復を追加した結果を表4に示す。
【0058】
【表4】
【0059】
アフラトキシンB1の追加回収率は88.37%~103.10%であり、or-1遺伝子DNA断片Tq-nor-1の追加回収率は86.18%~98.17%であり、確立された定量PCRが実際のサンプルの検出と分析では、信頼性の高い重複性と再現性があることを示している。
【0060】
5.定量PCR法を使用したアフラトキシン菌株の毒素産生量およびor-1遺伝子発現レベルの定量化
この研究では、毒性の異なる17株のアスペルギルス・フラバス株を選択した。15mLのジャガイモデキストロース液体培地を50mLの三角フラスコに入れ、121℃で30分間オートクレーブし、アスペルギルス・フラバス菌の胞子溶液を最終濃度が1×10ml-1になるように加える。培養液を28℃、200rpmで96時間振とうした後、培養液を2層濾紙で濾過し、得られた菌培養液とアスペルギルス・フラバス菌糸体ペレットを濾紙で絞り、余分な水分を取り除き、オーブンで65℃この条件で12時間乾燥し、室温まで冷却した後、液体窒素で粉末に粉砕し、サンプルあたり0.20mgの菌糸粉末を正確に計量する。RNA抽出キット(RNeasy Plant Mini Kit)でマニュアルに従ってトータルRNAを抽出する。そして、QuantiTect転写キットを使用してcDNAを合成する。定量PCR増幅システムでTq-nor1を置き換えるために、前記cDNA溶液を100~1000倍に希釈し、定量PCR増幅の増幅テンプレートの1つとして使用して、or-1遺伝子転写の量を測定する。菌株培養液を10%(w/v)BSA/PBSで10倍に希釈した後、免疫反応のアフラトキシン標準品を置き換えて免疫競合反応に関与させ、競合反応後の溶出液中のファージミドを増幅システムのもう一方のテンプレートとし、定量PCRによる増幅にかけられ、菌株によって産生される毒素の量が測定される。定量PCR法を使用して、17のアスペルギルス・フラバス株の毒素産生量およびor-1遺伝子発現レベルを定量化した結果を表5に示す。
【0061】
【表5】
【0062】
結果の正確さを検証するには、国家標準のGB5009.22-2016方法を参照し、HPLC方法を使用してアスペルギルス・フラバス株によって生成されたアフラトキシンの量を定量化する。一方、分光光度計(Nanodrop)を使用して、菌株のor-1遺伝子発現量を定量化する。定量結果は表5に示すとおり。結果を定量PCRで得られた結果と比較した比較結果が図5に示されている。図5-Aは、定量PCRとHPLCの定量的アフラトキシンの比較結果を示している。得られた線形回帰式はY=0.947X-3.84であり、線形回帰分析は良好な相関を示した(R=0.999)。図5-Bは、定量PCRとNanodropの定量的or-1遺伝子転写量の比較結果を示している。この方法で得られた線形回帰式は、Y=1.05X-1.18、相関係数R=0.989である。異なる検出方法の比較結果は、確立された定量PCR定量結果の信頼性が高く、毒素産生量とアスペルギルス・フラバス株のor-1遺伝子転写量の同期分析に使用できることを示している。
【0063】
(実施例3)
I.or-1転写量とAFT/or-1(毒素産生とor-1転写量の比率)を使用して、アスペルギルス・フラバスの毒性の比較をそれぞれ評価する。
結果の比較分析を通じて、アスペルギルス・フラバスの毒性がor-1転写量のみから評価された場合、同定結果は信頼できないことがわかる。たとえば、アスペルギルス・フラバス株のPc124-2およびPc34-1では、or-1遺伝子発現のコピー数の対数は、それぞれ7.85±0.52および6.75±0.58である。2つの株のor-1遺伝子発現レベルは同等であるが、Pc124-2菌株のアフラトキシンの収量は66.5±4.93ng/mLであり、Pc34-1によって生成されたアフラトキシンの量は19.69±2.27ng/mLである。さらに、CY1、CY2、Pg28-1およびPc321-1-3株はアフラトキシンを検出できなかった。しかし、アスペルギルス毒素産生は、Pg28-1とPc321-1-3で発現されたor-1遺伝子レベルは、アフラトキシンを産生するいくつかの菌株よりもさらに高い。
【0064】
しかし、アスペルギルス・フラバスの毒性の結果を評価するために使用されるアフラトキシン産生量とor-1遺伝子発現レベルの比率はより信頼できる。アスペルギルス・フラバス株の毒性とor-1遺伝子発現レベル、およびAFT/or-1間の相関関係をさらに調査するため、菌株毒素産生量を縦軸とし、or-1遺伝子発現の対数とAFT/or-1の比率を横軸として図を作成した。アフラトキシンの収量とor-1遺伝子発現の相関を図6-Aに示す。線形回帰の方程式は、y=36.37x-196.21であり、相関係数R=0.693である。また、アフラトキシンの収量とAFT/or-1の比率の相関関係を図6-Bに示す。線形回帰の方程式は、y=10.14x-16.20であり、相関係数R=0.979である。アフラトキシンの収量は、AFT/or-1比と非常に良好な相関関係がある。
【0065】
したがって、本発明は、アスペルギルス・フラバス株の毒性の同定方程式は次のとおりである。
y=10.14x-16.20
ここで、XはAFT/or-1を表し、Yは毒性である。
高毒素産生株によると、毒素産生量>150 ng/mLであり、中程度の毒素産生:50<毒素産生量<150ng/mLであり、低毒素産生:毒素産生量<50ng/mLであり、非毒素産生:0であり、そして、次に回帰式に従って毒性同定の範囲を計算する。
高毒素産生株:AFT/Nor-1>16.4;
中程度の毒素産生株:6.5<AFT/Nor-1<16.4;
低毒素産生株:0<AFT/Nor-1<6.5;
非毒素産生株:AFT/Nor-1=0。
【0066】
AFT/Nor-1(毒素産生量とor-1転写量の比率)による毒性の同定と安定性の検証
II.AFT/Nor-1(毒素産生量とor-1転写量の比率)による毒性の同定結果の安定性の検証
AFT/Nor-1の比率による毒性の同定結果の安定性をさらに検証するため、5つのアスペルギルス・フラバス株を、グループ内およびグループ間のアフラトキシン産生量とor-1遺伝子転写量を実験的に分析した。グループ内の実験では、同日に5つの複製が並行して設定され、5つの複製の平均値が、前記バッチ菌株的毒素産生量およびor-1遺伝子転写量とする。グループ間の実験には3つの異なる日付が設定され、各日付はバッチであり、合計3つのバッチが設定された。結果を表6に示す。
【0067】
【表6】
【0068】
表から、培養の異なるバッチによって検出されたアフラトキシン産生の量とnor-1遺伝子転写量が異なることが分かる。233-1株を例にとると、3つのバッチで検出されたアフラトキシンの収量はそれぞれ10.07、19.69、および25.32 ng/mLであり、異なるバッチのグループ間の差の係数は42.00%である。さらに、IT-2、Pg56-1-2、N200および233-1菌株によって生成されたアフラトキシンの量は、異なるバッチのグループ間の差の係数は17.00%を超えた。単独で生成されたアフラトキシンの量から菌株の毒性を評価することは信頼できないことがわかる。同じ分析で、異なるバッチのグループ間のnor-1遺伝子の転写量により、nor-1遺伝子の転写量の差も大きいことを発見した。また、nor-1遺伝子の転写量のみから菌株の毒性を評価することは信頼できないことも証明した。一方、AFT/nor-1比のグループ間の差異係数は13%未満であり、安定性が向上している。
【0069】
要約すると、アフラトキシン毒素産生菌株の毒性を同定および評価するために本発明で提案された方法、すなわちAFT/nor-1比の同定は、アフラトキシン毒素産生菌株の毒性を同定および評価するためのより正確で信頼できる方法である。
【0070】
明らかに、上記の実施例は、明確な説明のための単なる例であり、実施形態を限定することを意図していない。当業者にとって、上記の説明に基づいて、他の変更または異なる形態の変更を行うことができる。ここにすべての実施方法を列挙する必要はなく、不可能である。したがって、導入された明らかな変更または改変は、依然として本発明の保護範囲内である。
【0071】
(付記)
(付記1)
アフラトキシンの収量およびNor-1遺伝子転写量を測定することにより、アフラトキシンの収量とNor-1遺伝子転写の比率を取得し、アフラトキシンの収量とNor-1遺伝子転写の比率に基づき、アフラトキシン毒素産生菌株毒素産生能力を同定および評価する、ことを特徴とする、アフラトキシン毒素産生菌株の毒性を同定および評価する方法。
【0072】
(付記2)
前記アフラトキシンの収量を測定するための方法では、アスペルギルス・フラバス株を培養し、アスペルギルス・フラバス菌の胞子を振とう培養し、培養後、濾液を濾過し、濾液中のアフラトキシンの濃度を測定する、ことを特徴とする、付記1に記載のアフラトキシン毒素産生菌株の毒性を同定および評価する方法。
【0073】
(付記3)
前記アスペルギルス・フラバス株の培養に使用する培地はCDA培地であり、培養条件は、28℃、湿度90%で10日間の培養であり、
前記アスペルギルス・フラバス菌の胞子の振とう培養に使用される培地は、ジャガイモデキストロース液体培地であり、培養条件は、28℃、200rpmで96時間の振とう培養である、ことを特徴とする、付記1に記載のアフラトキシン毒素産生菌株の毒性を同定および評価する方法。
【0074】
(付記4)
免疫親和性精製-高速液体クロマトグラフィーの標準的な方法では、前記アスペルギルス・フラバス菌の胞子振とう培養後の濾液中のアフラトキシンの濃度を測定する、ことを特徴とする、付記1に記載のアフラトキシン毒素産生菌株の毒性を同定および評価する方法。
【0075】
(付記5)
前記Nor-1遺伝子転写量を測定するための方法では、アスペルギルス・フラバス株を培養し、アスペルギルス・フラバス菌の胞子を振とう培養し、培養後、アスペルギルス・フラバス菌の菌糸ペレットを濾過し、乾燥後乾燥菌を取得し、従来のNor-1遺伝子転写量を測定するための方法で、乾燥菌中Nor-1遺伝子転写量を測定する、ことを特徴とする、付記1に記載のアフラトキシン毒素産生菌株の毒性を同定および評価する方法。
【0076】
(付記6)
前記アフラトキシンの収量およびNor-1遺伝子転写量は、同期検出RT-PCRによって得られ、前記同期検出RT-PCRは、
免疫反応段階において、アフラトキシンモノクローナル抗体1C11コーティング量が一定量である条件下で、異なる濃度のアフラトキシン標準品を使用して、アフラトキシンに対する抗イディオタイプナノ抗体を表面に提示するファージと、アフラトキシンモノクローナル抗体への結合をめぐって競合し、免疫競合反応が終了すると、アフラトキシンモノクローナル抗体に結合されたアフラトキシンに対する抗イディオタイプナノ抗体を表面に提示するファージが溶出し、異なる濃度のアフラトキシン標準品は異なる溶出量のアフラトキシンに対する抗イディオタイプナノ抗体を表面に提示するファージに対応し、溶出液中のファージは、PCR加熱プロセス中にDNA分子を放出し、放出されたDNA分子をRT-PCR反応中の増幅ターゲットとして、前記キットを使用して各溶出液それぞれにRT-PCR増幅反応をかけ、増幅反応が完了すると、異なるCt値が得られ、アフラトキシンの濃度の対数値を横軸とし、Ct値を縦軸として回帰分析を実行し、アフラトキシンの定量Sタイプの標準曲線を得る、アフラトキシン定量のSタイプの標準曲線の確立の工程(1)と、
nor-1遺伝子DNA断片Tq-nor1の既知のコピー数のサンプルを異なるコピー数に連続希釈し、そして、前記キットを使用して各コピー数Tq-nor1それぞれに同期RT-PCR増幅反応をかけ、増幅反応が完了すると、異なるCt値が得られ、Tq-nor1コピー数の対数値を横軸とし、Ct値を縦軸として回帰分析を実行し、nor-1遺伝子転写量の定量標準曲線を得る、Nor-1遺伝子転写量のRT-PCR標準曲線の確立の工程(2)と、
アスペルギルス・フラバス菌の胞子を振とう培養し、培養後、菌株培養液とアスペルギルス・フラバス菌糸ペレットを濾過し、菌株培養液を一定の倍数に希釈した後、工程(1)の前記免疫反応中のアフラトキシン標準品の代わりに免疫競合反応に関与し、競合反応後、1C11に結合したファージを溶出し、溶出液中のV2-5ファージを同期RT-PCR増幅反応における定量アフラトキシンの増幅テンプレートとし、さらに、アスペルギルス・フラバス菌糸ペレットを乾燥した後、トータルRNAを抽出し、cDNAに逆転写し、前記cDNAを特定の倍数に希釈して、同期RT-PCR増幅反応でNor-1遺伝子を増幅するためのテンプレートとする、アスペルギルス・フラバス株培養工程(3)と、
前記ファージから放出されたDNA分子と前記cDNAをテンプレートとして、同期RT-PCR増幅反応を実行し、増幅反応が完了すると、2つのCt値が取得され、2つのCt値それぞれをアフラトキシンの定量Sタイプの標準曲線とnor-1遺伝子転写量の定量標準曲線に代入し、換算してアフラトキシンの濃度和nor-1遺伝子転写量を取得し、それにより、アフラトキシンの収量とNor-1遺伝子転写量の比率を決定する、工程(4)とを備える、ことを特徴とする、付記1に記載のアフラトキシン毒素産生菌株の毒性を同定および評価する方法。
【0077】
(付記7)
前記アフラトキシンに対する抗イディオタイプナノ抗体を表面に提示するファージは、ファージVHH 2-5であり、前記アフラトキシンモノクローナル抗体はアフラトキシンモノクローナル抗体1C11である、ことを特徴とする、付記6に記載のアフラトキシン毒素産生菌株の毒性を同定および評価する方法。
【0078】
(付記8)
前記同期RT-PCR増幅反応の反応システムにおいて、上流および下流プライマーであるPh-F、Ph-R、Tq-nor1-F、Tq-nor1-Rの最終濃度は、300~400nMであり、蛍光プローブであるPh-probeとTq-probeの最終濃度は、200~400nMであり、DNAポリメラーの最終投与量は0.5U~1.0Uであり、MgClの最終濃度は1mM~2mMであり、dNTPsの最終濃度は、200μM~400μMである、ことを特徴とする、付記6に記載のアフラトキシン毒素産生菌株の毒性を同定および評価する方法。
【0079】
(付記9)
前記同期RT-PCR増幅反応の反応システムには、ユニバーサルプローブqPCRプレミックス5μLと、Ph-F 0.1μL、Ph-R 0.1μLと、Ph-probe 0.1μLと、ファージテンプレート2μLと、Tq-nor1-F 0.1μLと、Tq-nor1-R 0.1μLと、Tq-probe 0.1μLと、Nor-1遺伝子テンプレート1μLと、DNAポリメラーゼ 0.2μLと、MgCl 0.8μL、dNTPs 0.2μLとが含まれ、HOを加えて10μLを構成する、ことを特徴とする、付記6に記載のアフラトキシン毒素産生菌株の毒性を同定および評価する方法。
【0080】
(付記10)
前記アフラトキシン毒素産生菌株の毒性はYと定義され、アフトキシンの収量とNor-1遺伝子転写量(AFT/Nor-1)の比率はXと定義され、アスペルギルス・フラバス株の毒性の同定が確立される方程式は、
Y=10.14X-16.20であり、
高毒素産生株によると、毒素産生量>150ng/mLであり、中程度の毒素産生によると、50<毒素産生量<150ng/mLであり、低毒素産生によると、毒素産生量<50ng/mLであり、非毒素産生によると、0であり、毒性同定範囲を計算するための方程式に代入すると、高毒素産生株がAFT/Nor-1>16.4であり、中程度の毒素産生株が6.5<AFT/Nor-1<16.4であり、低毒素産生株が0<AFT/Nor-1<6.5であり、非毒素産生株がAFT/Nor-1=0である、ことを特徴とする、付記1に記載のアフラトキシン毒素産生菌株の毒性を同定および評価する方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【配列表】
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