(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-10
(45)【発行日】2022-08-19
(54)【発明の名称】連結システム及び逆止弁
(51)【国際特許分類】
F16K 15/18 20060101AFI20220812BHJP
B65D 25/42 20060101ALI20220812BHJP
【FI】
F16K15/18 D
B65D25/42 B
(21)【出願番号】P 2021079828
(22)【出願日】2021-05-10
【審査請求日】2022-06-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】710006932
【氏名又は名称】株式会社パックプラス
(74)【代理人】
【識別番号】100114764
【氏名又は名称】小林 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100178124
【氏名又は名称】篠原 英樹
(72)【発明者】
【氏名】中谷 友彰
【審査官】西井 香織
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-194245(JP,A)
【文献】実開平6-14578(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2009/0267011(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 15/00 - 15/20
B65D 25/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流れる流通路を内部に有する雄部材と、前記雄部材が挿入される導通路を内部に有する雌部材と、前記雌部材の前記導通路の開口部に設けられる逆止弁とを備える連結システムであって、
前記逆止弁は、前記雌部材の開口部を閉鎖または開放する栓部と、前記栓部の周囲に一体的に設けられ、流体が通過する通過孔を有する膜状弾性体と、前記膜状弾性体の周囲に一体的に設けられ、前記雌部材に取り付けられる取付部とを備え、
前記栓部は、前記雄部材の先端部を受けるための受け部が一体的に設けられ、該受け部に流体が流通するための一ないし複数の流通部が中央部から周端部に延びる態様で形成されており、
前記流通部は、前記受け部の中央部において互いに繋がった状態に形成され、
前記雄部材が前記雌部材に挿入される前の前記逆止弁の閉鎖時において、前記膜状弾性体が有する弾性力により前記栓部が前記雌部材の前記開口部を閉鎖する一方、
前記雄部材が前記雌部材に挿入される際の前記逆止弁の開放時において、前記雄部材により前記受け部が押されることにより、前記栓部が前記雌部材の前記開口部を開放するとともに、前記膜状弾性体が前記雌部材との間において流体が流入するための所定の大きさの流入空間を形成することを特徴とする連結システム。
【請求項2】
流体が流れる流通路を内部に有する雄部材と、前記雄部材が挿入される導通路を内部に有する雌部材と、前記雌部材の前記導通路の開口部に設けられる逆止弁とを備える連結システムであって、
前記逆止弁は、前記雌部材の開口部を閉鎖または開放する栓部と、前記栓部の周囲に一体的に設けられ、流体が通過する通過孔を有する膜状弾性体と、前記膜状弾性体の周囲に一体的に設けられ、前記雌部材に取り付けられる取付部とを備え、
前記栓部は、前記雄部材の先端部を受けるための受け部が一体的に設けられ、該受け部に流体が流通するための一ないし複数の流通部が中央部から周端部に延びる態様で形成されており、
前記流通部は、前記受け部の中央部から周端部に延びる線状に形成され、
前記雄部材が前記雌部材に挿入される前の前記逆止弁の閉鎖時において、前記膜状弾性体が有する弾性力により前記栓部が前記雌部材の前記開口部を閉鎖する一方、
前記雄部材が前記雌部材に挿入される際の前記逆止弁の開放時において、前記雄部材により前記受け部が押されることにより、前記栓部が前記雌部材の前記開口部を開放するとともに、前記膜状弾性体が前記雌部材との間において流体が流入するための所定の大きさの流入空間を形成することを特徴とする連結システム。
【請求項3】
前記流通部は、前記受け部の上面の中央部から周端部に延びる溝状に形成されている請求項1または請求項2に記載の連結システム。
【請求項4】
前記流通部は、前記受け部の中央部から周端部に延びる放射状に形成されている請求項1
または請求項2に記載の連結システム。
【請求項5】
前記膜状弾性体は、前記流通部の延長方向の位置に前記通過孔が形成されている請求項1
または請求項2に記載の連結システム。
【請求項6】
請求項1に記載の連結システムに用いられる逆止弁であって、
前記逆止弁は、前記雌部材の開口部を閉鎖する栓部と、前記栓部の周囲に一体的に設けられ、流体が通過する通過孔を有する膜状弾性体と、前記膜状弾性体の周囲に一体的に設けられ、前記雌部材に取り付けられる取付部とを備え、
前記栓部は、前記雄部材の先端部を受けるための受け部が一体的に設けられ、該受け部に流体が流通するための一ないし複数の流通部が中央部から周端部に延びる態様で形成され、
前記流通部は、前記受け部の中央部において互いに繋がった状態に形成されていることを特徴とする逆止弁。
【請求項7】
請求項2に記載の連結システムに用いられる逆止弁であって、
前記逆止弁は、前記雌部材の開口部を閉鎖する栓部と、前記栓部の周囲に一体的に設けられ、流体が通過する通過孔を有する膜状弾性体と、前記膜状弾性体の周囲に一体的に設けられ、前記雌部材に取り付けられる取付部とを備え、
前記栓部は、前記雄部材の先端部を受けるための受け部が一体的に設けられ、該受け部に流体が流通するための一ないし複数の流通部が中央部から周端部に延びる態様で形成され、
前記流通部は、前記受け部の中央部から周端部に延びる線状に形成されていることを特徴とする逆止弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装容器等に流体を充填または吐出する際に用いられる連結システムおよび逆止弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、インクなどの液体、複写機のトナーなどの粉体、あるいは何らかの気体などの流体を充填または吐出するための逆止弁の機能を有する様々な連結システムが知られている。このうち、本出願人は、2ピース構成にすることにより着脱が容易でしかも比較的安価なものにできるとともに、流体の漏れが少ない連結システムを提案している(特許文献1参照)。
【0003】
具体的には、この連結システムは、流体が流れる流通路を内部に有する雄部材と、雄部材が挿入される導通路を内部に有する雌部材と、雌部材の前記導通路の開口部に設けられる逆止弁とを備える。そして、この逆止弁は、雌部材の開口部を閉鎖する栓部と、該栓部の周囲に一体的に設けられ、流体が通過する通過孔を有する膜状弾性体と、膜状弾性体の周囲に一体的に設けられ、前記雌部材に取り付けられる取付部とを備え、該栓部には雄部材の先端部を受けるための受け部としての平面視十字状の凸部が設けられている(特許文献1の
図3参照)。
【0004】
これによれば、雄部材が雌部材に挿入される際の逆止弁の開放時において、雄部材により受け部が雌部材の開口部から押し出されることにより栓部が雌部材の開口部を開放することによって、雄部材の流通路と、逆止弁の膜状弾性体と雌部材の間の空間とが栓部の十字状凸部の間の扇状空間を介して連通状態になって、流体が逆止弁を介して流通することができる。このため、本連結システムを包装容器に適用した場合、流体を逆止弁を介して包装容器に充填したり、あるいは包装容器に充填された流体を逆止弁を介して外部に吐出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、連結システムにおいて雄部材により受け部の十字状凸部を押すことを何度も繰り返していると、該十字状凸部が次第に軸方向に潰れた状態となっていき、最終的には雄部材の先端部と栓部との間の隙間がなくなったり、あるいは極めて狭くなることによって、流体が受け部の十字状凸部の間の扇状空間を流通しにくくなり、結果として、包装容器における流体の充填不良や吐出不良を生じるという問題があった。
【0007】
なお、この問題に対しては、従来、雄部材の先端部に流体が通過し得る切り欠き状の隙間を形成する対策を施してきたが、切り欠き状の隙間を形成した雄部材の先端部がかえって鋭い形状となって、逆止弁の栓部や受け部に損傷を与えるという新たな問題が生じていた。
【0008】
本発明は、流体が雄部材の流通路と雌部材の外部との間を確実に流通することができるとともに、雄部材による受け部の潰れや損傷を軽減または防止することができ、ひいては包装容器等における流体の充填や吐出を安定的に繰り返して行うことが可能な連結システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために、流体が流れる流通路を内部に有する雄部材と、前記雄部材が挿入される導通路を内部に有する雌部材と、前記雌部材の前記導通路の開口部に設けられる逆止弁とを備える連結システムであって、前記逆止弁は、前記雌部材の開口部を閉鎖または開放する栓部と、前記栓部の周囲に一体的に設けられ、流体が通過する通過孔を有する膜状弾性体と、前記膜状弾性体の周囲に一体的に設けられ、前記雌部材に取り付けられる取付部とを備え、前記栓部は、前記雄部材の先端部を受けるための受け部が一体的に設けられ、該受け部に流体が流通するための一ないし複数の流通部が中央部から周端部に延びる態様で形成されており、前記雄部材が前記雌部材に挿入される前の前記逆止弁の閉鎖時において、前記膜状弾性体が有する弾性力により前記栓部が前記雌部材の前記開口部を閉鎖する一方、前記雄部材が前記雌部材に挿入される際の前記逆止弁の開放時において、前記雄部材により前記受け部が押されることにより、前記栓部が前記雌部材の前記開口部を開放するとともに、前記膜状弾性体が前記雌部材との間において流体が流入するための所定の大きさの流入空間を形成することを特徴とする。
【0010】
これによれば、逆止弁の開放時において、雄部材の流通路と、逆止弁と雌部材の間の流入空間とが逆止弁の受け部の流通部を介して連通するとともに、逆止弁と雌部材の間の流入空間と、雌部材の外部とが逆止弁の膜状弾性体の通過孔を介して連通するため、流体は雄部材の流通路と雌部材の外部との間を逆止弁を介して確実に流通することができる。
【0011】
また、逆止弁の受け部は、従来の逆止弁の受け部に比べて、雄部材の先端部との接触面積が大きくなって、雄部材の先端部を全体的に広く受ける構造であるため、雄部材による受け部の潰れや損傷を軽減または防止することができる。
【0012】
また、前記流通部は、前記受け部の上面の中央部から周端部に延びる溝状に形成されているのが好ましい。これによれば、逆止弁の開放時において、流体が、雄部材の流通路と流入空間の間を逆止弁の受け部の流通部を介して、スムーズに流通することができる。
【0013】
また、前記流通部は、前記受け部の中央部から周端部に延びる放射状に形成されているのが好ましい。これによれば、逆止弁の開放時において、流体が、雄部材の流通路と流入空間の間を逆止弁の受け部の流通部を介して、よりスムーズに流通することができる。
【0014】
また、前記流通部は、前記受け部の中央部において互いに繋がった状態に形成されているのが好ましい。これによれば、逆止弁の開放時において、流体が、雄部材の流通路と流入空間の間を逆止弁の受け部の流通部を介して、より一層スムーズに流通することができる。
【0015】
また、前記流通部は、前記受け部の中央部から周端部に延びる線状に形成されているのが好ましい。これによれば、逆止弁の開放時において、流体が、雄部材の流通路と流入空間の間を逆止弁の受け部の流通部を介して、より一層スムーズに流通することができる。
【0016】
前記膜状弾性体は、前記流通部の延長方向の位置に前記通過孔が形成されているのが好ましい。これによれば、逆止弁の開放時において、流体が、雄部材の流通路と流入空間の間を逆止弁の受け部の流通部を介して、より一層スムーズに流通することができる。
【0017】
また、本発明は、上記の連結システムに用いられる逆止弁であって、前記逆止弁は、前記雌部材の開口部を閉鎖する栓部と、前記栓部の周囲に一体的に設けられ、流体が通過する通過孔を有する膜状弾性体と、前記膜状弾性体の周囲に一体的に設けられ、前記雌部材に取り付けられる取付部とを備え、前記栓部は、前記雄部材の先端部を受けるための受け部が一体的に設けられ、該受け部に流体が流通するための一ないし複数の流通部が中央部から周端部に延びる態様で形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、逆止弁の開放時において、雄部材の流通路と、逆止弁と雌部材の間の流入空間とが逆止弁の受け部の流通部を介して連通するとともに、逆止弁と雌部材の間の流入空間と、雌部材の外部とが逆止弁の膜状弾性体の通過孔を介して連通するため、流体は雄部材の流通路と雌部材の外部との間を逆止弁を介して確実に流通することができる。
【0019】
また、逆止弁の受け部は、従来の逆止弁の受け部に比べて、雄部材の先端部との接触面積が大きくなって、雄部材の先端部を全体的に広く受ける構造であるため、雄部材による受け部の潰れや損傷を軽減または防止することができる。
【0020】
よって、例えば本連結システムを包装容器に適用した場合、本連結システムにより包装容器における流体の充填や吐出を安定的に繰り返して行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施形態に係る連結システムの雌部材と逆止弁の斜視図である。
【
図2】
図1の連結システムにおける雄部材の挿入前の状態を示す断面斜視図である。
【
図3】
図1の連結システムにおける雄部材の挿入後の状態を示す断面斜視図である。
【
図4】逆止弁の(a)底側斜視図、(b)上側斜視図、(c)上側平面図、(d)断面図である。
【
図5】連結システムにおける雄部材の挿入過程の状態を示す断面正面図である。
【
図6】連結システムにおける雄部材の挿入後の状態を示す拡大断面図である。
【
図7】本発明の他の実施形態に係る連結システムにおける逆止弁の変形例を示す上側平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明に係る連結システムを包装容器に用いた一の実施形態について
図1~
図6を参照しつつ説明する。
【0023】
本連結システムは、
図1~
図3に示すように、ノズル状の雄部材1と、雄部材1が挿入される導通路20を有する雌部材2と、雌部材2の導通路20の開口部20bに設けられる弾性力を有する逆止弁3とを備える。
【0024】
前記雄部材1は、
図3に示すように、流体が軸方向に流通して先端部から流出する流通路10を有し、円筒状の径大の第1の雄本体部11と、円筒状の径小の第2の雄本体部12と、第1の雄本体部11と第2の雄本体部12の間に設けられたテーパ状のショルダー部13とを備える。
【0025】
前記雌部材2は、
図1および
図2に示すように、内部を軸方向に貫通する導通路20を有し、軸方向に延びる雌本体部21と、雌本体部21の下方に設けられた環状の座部22と、雌本体部21と座部22の間に設けられたショルダー部23とを備える。この雌部材2は、後述するように包装容器の合成樹脂製のシート材に溶着される。
【0026】
前記導通路20は、雌部材2の上方端に設けられた挿入口20aから、雌部材2の下方端に設けられた開口部20bまで雌部材2の内部を軸方向に貫通するとともに、雌本体部21、ショルダー部23、座部22の内径に応じて次第に径小となるように形成されており、雄部材1が挿入された際に雄部材1(主に第1の雄本体部11およびショルダー部13)の外面に当接するものとなされている。
【0027】
前記雌本体部21は、下部に平面視ひし形状の溶着部21aが設けられており、該溶着部21aの両側面において包装容器の合成樹脂製のシート材が溶着されることにより、雌本体部21の下方が包装袋の内部となされている。また、雌本体部21は、基端部に2個の環状のリブ21bが形成されており、流体の充填時においてリブ21bの間に治具が掛けられるようになっている。
【0028】
前記座部22は、雌部材2の開口部20bの周囲に設けられた環状の壁部材であって、基端部に径方向内側に窪んだ凹部22aが形成されている。この凹部22aは、後述するように逆止弁3の取付部33が取り付けられる。
【0029】
前記ショルダー部23は、全体としてテーパ状に形成されており、前記雄部材1が雌部材2の導通路20に挿入された際、雄部材1のショルダー部13が当接することにより雄部材1の挿入時のストッパーとして機能する。
【0030】
前記逆止弁3は、ゴムやエラストマーなどの弾性体から構成されており、
図4に示すように、雌部材2の開口部20bを閉鎖または開放する栓部31と、栓部31の周囲に一体的に設けられた膜状弾性体32と、膜状弾性体32の周囲に一体的に設けられた取付部33とを備える。
【0031】
前記栓部31は、逆止弁3の内側に膨らんだ半球面状に形成された弾性体であり、直径が雌部材2の開口部20bの内径よりもやや大きくなるように形成されている。これにより、逆止弁3の閉鎖時において、
図2に示すように、栓部31が雌部材2の開口部20bに嵌り込んだ状態となって、雌部材2の開口部20bを完全に閉鎖する一方、逆止弁3の開放時において、
図3に示すように、栓部31が雄部材1により押し出された状態となって、雌部材2の開口部20bを開放する。
【0032】
また、前記栓部31は、頂上部において受け部34が段階的に設けられている。この受け部34は、雌部材2の開口部20bの内径よりもやや小さい直径の平面視円形台であって、流体が流通するための4本の線状の流通部34aが形成されている。本実施形態では、この流通部34aは、受け部34の上面の中央部から周端部にかけて放射状に延びる溝状に形成されている。
【0033】
これにより、逆止弁3の閉鎖時において、
図2に示すように、受け部34が雌部材2の開口部20bの内部に配置された状態となる一方、逆止弁3の開放時において、
図3に示すように、受け部34が雌部材2の開口部20bの下方に配置される。このため、逆止弁3が開放時において、雄部材1の流通路10と、膜状弾性体32と雌部材2の座部22の間の所定の流入空間35とが受け部34の流通部34aを介して連通するため、流体は雄部材1の流通路10と流入空間35の間を流通することができる。
【0034】
また、逆止弁3の受け部34は、従来の逆止弁3の受け部34に比べて、雄部材1の先端部との接触面積が大きくなって、雄部材1の先端部を全体的に広く受ける構造であるため、連結システムを繰り返して使用した場合であっても、雄部材1により軸方向に潰れることを軽減または防止することができる。
【0035】
なお、本実施形態では、前記各流通部34aは、栓部31の上面に達する深さに形成されているため、流体が流通部34aをより一層スムーズに流通することができる。
【0036】
前記膜状弾性体32は、栓部31の周囲に一体的に設けられた薄い環状の弾性体であって、流体が通過するための4個の通過孔32aが等間隔に形成されている。この膜状弾性体32は、逆止弁3が雌部材2の座部22に取り付けられた際、自己の有する弾性力に抗してやや伸長状態に変形している。これにより、逆止弁3の閉鎖時において、
図2に示すように、膜状弾性体32と雌部材2の座部22が接近した状態となる一方、逆止弁3の開放時において、
図3に示すように、栓部31が雄部材1により押し出されるのに伴って下方にさらに伸長状態に変形することにより膜状弾性体32と雌部材2の座部22が離間した状態となり、膜状弾性体32と雌部材2の座部22の間に流体が流入するための所定の大きさの流入空間35が形成される。
【0037】
なお、膜状弾性体32の厚みは、流体や粉体の性状や圧力などに応じて適宜設計される。また、通過孔32aの形状や大きさも設計事項であるが、通過孔32aを大きくすると膜状弾性体32が変形した際に生じる応力も小さくなる。
【0038】
前記取付部33は、逆止弁3を雌部材2の座部22に取り付けるための弾性体であって、膜状弾性体32の周囲から上方に立設する円筒状の側面部33aと、側面部33aの上端部から径方向内側に屈曲する平面視環状の引掛部33bとを備える。
【0039】
また、取付部33は、側面部33aの内径が雌部材2の座部22の外径よりもやや小さく形成され、かつ側面部33aの内面高さが雌部材2の座部22の先端部から凹部22aの下面までの高さよりもやや低くなるように形成されている。これにより、逆止弁3が雌部材2の座部22に取り付けられた際、引掛部33bが雌部材2の座部22の凹部22aに嵌りこむ態様で掛止されるとともに、側面部33aが弾性力に抗して伸長状態に変形しながら座部22の外周面に密着状態に当接するため、逆止弁3を雌部材2の座部22に抱きかかえる態様で確実に取り付けることができる。
【0040】
次に、本連結システムにおける流体の充填時および吐出時の動作について、
図5および
図6を参照しつつ説明する。
【0041】
流体の充填時または吐出時において、
図5に示すように、雄部材1を雌部材2の導通路20の挿入口20aから開口部20bまで挿入していくと、雄部材1の先端部が逆止弁3の受け部34に到達する。そして、雄部材1の先端部が逆止弁3の受け部34に当接した状態で雄部材1をさらに挿入していくと、逆止弁3の栓部31が雌部材2の開口部20bを開放する。
【0042】
このとき、
図5(b)に示すように、逆止弁3の膜状弾性体32が下方に伸長状態に変形することにより、膜状弾性体32と雌部材2の座部22が離間した状態となり、膜状弾性体32と雌部材2の座部22の間に流体が流入するための所定の大きさの流入空間35が形成される。
【0043】
また、同じく
図5(b)に示すように、逆止弁3の栓部31が雌部材2の開口部20bを開放することにより、受け部34が雌部材2の開口部20bの下方で露出した状態となり、雄部材1の流通路10と流入空間35が受け部34の流通部34aを介して連通するとともに、流入空間35と雌部材2の外部(包装容器の内部)が膜状弾性体32の通過孔32aを介して連通する。
【0044】
而して、雌部材2が設けられた包装容器に流体を充填する際、逆止弁3の開放時において、
図6(下方に向いた矢印)に示すように、雄部材1の流通路10を流れてきた流体が逆止弁3の受け部34の流通部34aを流通して、逆止弁3の膜状弾性体32と雌部材2の間の流入空間35に流入したあと、逆止弁3の膜状弾性体32の通過孔32aから包装容器の内部に流出するため、流体を包装容器の内部に確実に充填することができる。
【0045】
また、雌部材2が設けられた収容容器から流体を吐出する際、逆止弁3の開放時において、
図6(上方に向いた矢印)に示すように、包装容器の内部の流体が逆止弁3の膜状弾性体32の通過孔32aから逆止弁3の膜状弾性体32と雌部材2の間の流入空間35に流入したあと、逆止弁3の受け部34の流通部34aを流通して、雄部材1の流通路10に流出するため、包装容器内の流体を外部に吐出することができる。
【0046】
このように、本連結システムによれば、流体が雄部材1の流通路10と雌部材2の外部との間を確実に流通することができるとともに、雄部材1による受け部34の潰れや損傷を軽減または防止することができるため、本連結システムを包装容器に適用した場合、包装容器における流体の充填や吐出を安定的に繰り返して行うことが可能となる。
【0047】
なお、本実施形態では、前記流通部34aは、4本に形成したが、
図7(a)(b)に示すように、その他の本数に形成してもよい。
【0048】
また、前記流通部34aは、受け部34の中央部から周端部に延びる線状に形成したが、
図7(c)(d)(e)に示すように、線状以外の形状に形成してもよい。
【0049】
また、前記流通部34aは、受け部34の中央部から周端部に延びる放射状に形成したが、放射状に形成しなくてもよい。
【0050】
また、前記流通部34aは、受け部34の中央部において互いに繋がった状態に形成したが、
図7(f)に示すように、互いに繋がっていない状態に形成してもよい。但し、この場合、流体が流通部34aを流通するためには、流通部34aの中央部側の端部が雄部材1の流通路10の内側に配置される必要がある。
【0051】
また、前記流通部34aは、受け部34の上面において溝状に形成したが、
図7(g)に示すように、受け部34の内部を通過する孔状に形成してもよい。この場合、受け部34の中央部に流通部34aに連通する連通孔34bが形成される。
【0052】
また、前記膜状弾性体32は、
図7(h)に示すように、流通部の延長方向の位置に前記通過孔32aが形成されてもよい。
【0053】
また、各流通部34aは、受け部34の上面に少なくとも到達する深さに形成したが、所望の流体の流量によっては受け部34の上面に到達しない深さに形成してもよい。
【0054】
また、前記栓部31は、逆止弁3の内側に膨らんだ半球面状に形成したが、その他の形状に形成してもよいし、逆止弁3の内側に膨らまずに膜状弾性体32の厚さ程度に薄く形成してもよい。
【0055】
また、前記栓部31と受け部34は、段階的な輪郭形状に形成したが、曲線的または直線的に連続する輪郭形状に形成してもよい。要は、逆止弁3が、その輪郭形状にかかわらず、雄部材1の先端部を受けるための受け部34と、雌部材2の開口部20bを閉鎖または開放する栓部31として機能する構造を有していればよい。
【0056】
また、前記受け部34は、雌部材2の開口部20bの下方で露出するまで雄部材1に押されるものとしたが、逆止弁3の栓部31が雌部材2の開口部20bを開放した場合に流体が流通可能であれば、必ずしも雌部材2の開口部20bから露出しなくてもよい。
【0057】
また、前記雄部材1の流通路10を流れてきた流体を逆止弁3を介して包装容器内に充填するものとしたが、流体を包装容器のその他の箇所から直接充填してもよい。
【0058】
また、本連結システムを包装容器に適用した場合について説明したが、その他の装置や器具などに適用してもよい。
【0059】
以上、図面を参照して本発明の実施形態を説明したが、本発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示された実施形態に対して、本発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0060】
1…雄部材
10…流通路
11…第1の雄本体部
12…第2の雄本体部
13…ショルダー部
2…雌部材
20…導通路
20a…挿入口
20b…開口部
21…雌本体部
21a…溶着部
21b…リブ
22…座部
22a…凹部
23…ショルダー部
3…逆止弁
31…栓部
32…膜状弾性体
32a…通過孔
33…取付部
33a…側面部
33b…引掛部
34…受け部
34a…流通部
35…流入空間
【要約】
【課題】本発明は、流体を雄部材の流通路と雌部材の外部との間を確実に流通させることができるとともに、雄部材による受け部の潰れや損傷を軽減または防止することができる連結システムを提供することを目的とする。
【解決手段】流体が流れる流通路10を有する雄部材1と、雄部材1が挿入される導通路20を有する雌部材2と、雌部材2の導通路20の開口部20bに設けられる逆止弁3とを備える。逆止弁3は、雌部材2の開口部20bを閉鎖または開放する栓部31と、栓部の周囲に一体的に設けられ、流体が通過する通過孔32aを有する膜状弾性体32と、膜状弾性体32の周囲に一体的に設けられ、雌部材2に取り付けられる取付部33とを備える。栓部31は、雄部材1を受けるための受け部34が一体的に設けられ、受け部34に流体が流通するための複数の線状流通部34aが形成されている。
【選択図】
図3