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特許7122064引抜試験構造、地山補強構造の施工方法、引抜試験装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-10
(45)【発行日】2022-08-19
(54)【発明の名称】引抜試験構造、地山補強構造の施工方法、引抜試験装置
(51)【国際特許分類】
   E21D 20/00 20060101AFI20220812BHJP
   E02D 17/20 20060101ALI20220812BHJP
   E02D 5/80 20060101ALI20220812BHJP
【FI】
E21D20/00 W
E02D17/20 106
E02D5/80 103
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018108676
(22)【出願日】2018-06-06
(65)【公開番号】P2019210727
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2021-04-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000129758
【氏名又は名称】株式会社ケー・エフ・シー
(74)【代理人】
【識別番号】100109243
【弁理士】
【氏名又は名称】元井 成幸
(72)【発明者】
【氏名】池田 廉
(72)【発明者】
【氏名】横尾 敦
(72)【発明者】
【氏名】畝田 篤志
(72)【発明者】
【氏名】村上 和哉
(72)【発明者】
【氏名】間野 真至
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-003700(JP,A)
【文献】国際公開第2015/136681(WO,A1)
【文献】特開2002-054400(JP,A)
【文献】特開2018-009843(JP,A)
【文献】特開2001-133392(JP,A)
【文献】特開2000-265798(JP,A)
【文献】実開平05-092696(JP,U)
【文献】特開平11-201887(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 20/00
E02D 17/20
E02D 5/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地山に打設された第1のロックボルト及び前記第1のロックボルトとは別の第2のロックボルトと、
前記第1のロックボルトの前記地山の打設面から突出する第1の雄ねじに螺合され、第1の支圧板を前記打設面に略当接させるように螺入され、地山に残置されて地山補強構造を構成する通常ナットと、
前記第2のロックボルトの前記打設面から突出する第2の雄ねじに螺合され、前記第1の支圧板とは別の第2の支圧板を前記打設面に略当接させるように螺入され、地山に残置されて地山補強構造を構成する前記通常ナットとは異なる引抜試験対応ナットと、
前記引抜試験対応ナットの外周に配置され前記第2の支圧板に当接する略環状の角度調整台座と、
前記角度調整台座に配置された引く力を出力する引きシリンダージャッキである引抜力載荷ジャッキを備え、
前記引抜試験対応ナットが前記引抜力載荷ジャッキの連結具に嵌着自在な形状で形成され
前記引抜力載荷ジャッキが前記連結具を介して前記引抜試験対応ナットに嵌着されることを特徴とする引抜試験構造。
【請求項2】
前記引抜試験対応ナットに前記連結具の回転動作で前記連結具に嵌合自在な嵌合部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の引抜試験構造
【請求項3】
前記角度調整台座の受部に前記引抜力載荷ジャッキの角度調整球座を当接して、前記引抜力載荷ジャッキを前記角度調整台座に配置することを特徴とする請求項1又は2記載の引抜試験構造。
【請求項4】
第1のロックボルトを地山に打設し、前記地山の打設面から突出する前記第1のロックボルトの第1の雄ねじに地山に残置されて地山補強構造を構成する通常ナットを螺入して、前記打設面と前記通常ナットとの間に介在する第1の支圧板を前記打設面に略当接させると共に、前記第1のロックボルトとは別の第2のロックボルトを前記地山に打設し、前記打設面から突出する前記第2のロックボルトの第2の雄ねじに前記通常ナットとは異なる引抜試験対応ナットを螺入して、前記打設面と前記引抜試験対応ナットとの間に介在する前記第1の支圧板とは別の第2の支圧板を前記打設面に略当接させる第1工程と、
略環状の角度調整台座を前記引抜試験対応ナットの外周に配置し且つ前記第2の支圧板に当接させ、引く力を出力する引きシリンダージャッキである引抜力載荷ジャッキを前記角度調整台座に配置すると共に、前記引抜力載荷ジャッキの連結具に嵌着自在な形状の前記引抜試験対応ナットに前記連結具を嵌着し、前記引抜力載荷ジャッキにより前記連結具及び前記引抜試験対応ナットを介して前記第2のロックボルトに引抜力を載荷し、引抜試験を行う第2工程と、
前記引抜試験の完了後に、前記引抜試験対応ナットを地山補強構造を構成するように前記第2のロックボルトに螺合させたまま残置して前記連結具の嵌着状態を解除し、前記連結具及び前記引抜力載荷ジャッキを取り外す第3工程を備えることを特徴とする地山補強構造の施工方法。
【請求項5】
前記引抜力載荷ジャッキに、前記引抜力載荷ジャッキに入力される油圧の圧力を検出する圧力検出部と、引抜力が載荷された前記第2のロックボルトの変位を検出する変位検出部を内装すると共に、データ送信処理部を付設し、
前記第2工程において、前記データ送信処理部が、前記圧力検出部から取得した圧力のデータ若しくは前記圧力に対応する荷重のデータをデータ記録装置に無線送信すると共に、前記変位検出部から取得した前記第2のロックボルトの変位のデータを前記データ記録装置に無線送信することを特徴とする請求項記載の地山補強構造の施工方法。
【請求項6】
請求項1~3の何れかに記載の引抜試験構造に用いられる引抜試験装置であって
前記引抜力載荷ジャッキに内装され、前記引抜力載荷ジャッキに入力される油圧の圧力を検出する圧力検出部と、
前記引抜力載荷ジャッキに内装され、引抜力が載荷された前記第2のロックボルトの変位を検出する変位検出部と、
前記引抜力載荷ジャッキに付設されるデータ送信処理部と、
データ記録装置を備え、
前記データ送信処理部が、前記圧力検出部から取得した圧力のデータ若しくは前記圧力に対応する荷重のデータを前記データ記録装置に無線送信すると共に、前記変位検出部から取得した前記第2のロックボルトの変位のデータを前記データ記録装置に無線送信することを特徴とする引抜試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネルなどの地山に打設されるロックボルトで地山を支保する地山補強構造の施工方法、地山補強構造の施工に用いられる引抜試験装置、引抜試験構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、山岳トンネル等に地山に打設されたロックボルトが確実に地山に定着されていることを確認するため、ロックボルトの引抜試験が行われている。通常、このロックボルトの引抜試験は、ロックボルトの地山からの突出部分に支圧板を介してセンターホールジャッキを外挿し、センターホールジャッキの後側からロックボルトに試験用ナットを螺合し、油圧ゲージを読み取りながら油圧ポンプで1トン毎の段階載荷をロックボルトに対して施し、ダイヤルゲージでロックボルトの伸びを読み取ることによって行われる(非特許文献1参照)。
【0003】
また、図18図19に示す装置構成によって地山201に打ち込まれたロックボルト202の伸びを把握することも行われている。この装置構成では、ロックボルト202の外周にテンションバー203がネジ結合され、支圧板204がロックボルト202に外挿されて打設面205に接触するように配置される。更に、支圧板204に当接するようにして角度調整台座206がテンションバー203に外挿されると共に、先端に角度調整球座207が設けられているセンターホールジャッキ208がテンションバー203に外挿され、角度調整台座206で角度調整球座207を受けるようにしてセンターホールジャッキ208が配置される。
【0004】
そして、センターホールジャッキ208の角度調整球座207と逆側から、テンションバー203に測定板209、ワッシャー210が外挿されて試験用ナット211が螺合されると共に、センターホールジャッキ208にダイヤルゲージ212が取り付けられ、テンションバー203に対して固定されている測定板209にダイヤルゲージ212の測定子213が当接される。この装置構成により、油圧ポンプ214で油圧ゲージ215を読み取りながら加圧してセンターホールジャッキ208でテンションバー203、ロックボルト202に引抜力を載荷し、測定板209の変位をダイヤルゲージ212で測定することによってロックボルト202の伸びを認識する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】〔参考資料〕ロックボルトの引抜試験、[online]、平成30年3月12日検索、インターネット〈URL:http://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000622591.pdf〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、非特許文献1の引抜試験では、ロックボルトの引抜試験の完了後にセンターホールジャッキの後側の試験用ナットを外し、センターホールジャッキを取り外した後、ロックボルトに通常のナットを新たに螺合し直す必要がある。また、図18図19の装置構成による引抜試験でも、ロックボルト202の引抜試験の完了後に試験用ナット211、ワッシャー210、測定板209を外し、センターホールジャッキ208、角度調整台座206、テンションバー203を取り外した後、ロックボルト202に通常ナット216を新たに螺合し直す必要がある。そのため、試験用ナットの取り外しと通常ナットの取り付けによるナットの付け替えに手間がかかり、施工効率の低下を招いていた。
【0007】
本発明は上記課題に鑑み提案するものであって、ロックボルトの定着状態を確認して地山補強構造を構築することができると共に、ロックボルトに対する引抜試験の際に螺合される試験用ナットと通常ナットのナット付け替えを行う必要を無くし、施工性を向上することができる地山補強構造の施工方法、地山補強構造の施工に用いられる引抜試験装置、引抜試験構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の引抜試験構造は、地山に打設された第1のロックボルト及び前記第1のロックボルトとは別の第2のロックボルトと、前記第1のロックボルトの前記地山の打設面から突出する第1の雄ねじに螺合され、第1の支圧板を前記打設面に略当接させるように螺入され、地山に残置されて地山補強構造を構成する通常ナットと、前記第2のロックボルトの前記打設面から突出する第2の雄ねじに螺合され、前記第1の支圧板とは別の第2の支圧板を前記打設面に略当接させるように螺入され、地山に残置されて地山補強構造を構成する前記通常ナットとは異なる引抜試験対応ナットと、前記引抜試験対応ナットの外周に配置され前記第2の支圧板に当接する略環状の角度調整台座と、前記角度調整台座に配置された引く力を出力する引きシリンダージャッキである引抜力載荷ジャッキを備え、前記引抜試験対応ナットが前記引抜力載荷ジャッキの連結具に嵌着自在な形状で形成され、前記引抜力載荷ジャッキが前記連結具を介して前記引抜試験対応ナットに嵌着されることを特徴とする。
これによれば、引抜試験対応ナットに引抜力載荷ジャッキの連結具を嵌着して引抜試験を行うことにより、ロックボルトの定着状態を確認して地山補強構造を構築することができると共に、第2のロックボルトに螺合され第2の支圧板を打設面に略当接させている引抜試験対応ナットを引抜試験後にそのまま残置して通常ナットと同様の機能を果たすナットとして用いることが可能となり、ロックボルトに対する引抜試験の際に螺合される試験用ナットと通常ナットのナット付け替えを行う必要を無くし、施工性を向上することができる。更に、引抜試験対応ナットを引抜力載荷ジャッキの連結具に嵌着自在な形状で形成することにより、ロックボルトから延長させるテンションバーの取付作業も不要となり、この点からも施工作業を簡略化して施工性を向上することが可能となると共に、引抜試験装置の部品点数を減らして施工コストも低減することも可能となる。また、引抜力載荷ジャッキを引きシリンダージャッキとすることにより、引抜力載荷ジャッキを軽量化、小型化し、引抜力載荷ジャッキの取付作業、取外作業を容易化することができる。従って、引抜力載荷ジャッキの周辺に設けられる角度調整台座等の引抜試験装置の他の構成部材や、引抜試験装置全体の設置作業、取外作業も容易化することができる。特に、トンネルの内周面にロックボルトが横向きや上向きに打設される場合に、これらの作業の容易化のメリットは顕著なものとなる。また、引抜力載荷ジャッキに要するコストを低減することができる。
【0009】
本発明の引抜試験構造は、前記引抜試験対応ナットに前記連結具の回転動作で前記連結具に嵌合自在な嵌合部が設けられていることを特徴とする。
これによれば、引抜力載荷ジャッキの連結具の回転動作で連結具を引抜試験対応ナットに簡単に嵌合し、又嵌合を解除することができ、連結具、引抜力載荷ジャッキの取付作業、取外作業を容易化することができる。従って、引抜力載荷ジャッキの周辺に設けられる角度調整台座等の引抜試験装置の他の構成部材や、引抜試験装置全体の設置作業、取外作業も容易化することができる。特に、トンネルの内周面にロックボルトが横向きや上向きに打設される場合に、これらの作業の容易化のメリットは顕著なものとなる。
【0010】
本発明の引抜試験構造は、前記角度調整台座の受部に前記引抜力載荷ジャッキの角度調整球座を当接して、前記引抜力載荷ジャッキを前記角度調整台座に配置することを特徴とする。
【0011】
本発明の地山補強構造の施工方法は、第1のロックボルトを地山に打設し、前記地山の打設面から突出する前記第1のロックボルトの第1の雄ねじに地山に残置されて地山補強構造を構成する通常ナットを螺入して、前記打設面と前記通常ナットとの間に介在する第1の支圧板を前記打設面に略当接させると共に、前記第1のロックボルトとは別の第2のロックボルトを前記地山に打設し、前記打設面から突出する前記第2のロックボルトの第2の雄ねじに前記通常ナットとは異なる引抜試験対応ナットを螺入して、前記打設面と前記引抜試験対応ナットとの間に介在する前記第1の支圧板とは別の第2の支圧板を前記打設面に略当接させる第1工程と、略環状の角度調整台座を前記引抜試験対応ナットの外周に配置し且つ前記第2の支圧板に当接させ、引く力を出力する引きシリンダージャッキである引抜力載荷ジャッキを前記角度調整台座に配置すると共に、前記引抜力載荷ジャッキの連結具に嵌着自在な形状の前記引抜試験対応ナットに前記連結具を嵌着し、前記引抜力載荷ジャッキにより前記連結具及び前記引抜試験対応ナットを介して前記第2のロックボルトに引抜力を載荷し、引抜試験を行う第2工程と、前記引抜試験の完了後に、前記引抜試験対応ナットを地山補強構造を構成するように前記第2のロックボルトに螺合させたまま残置して前記連結具の嵌着状態を解除し、前記連結具及び前記引抜力載荷ジャッキを取り外す第3工程を備えることを特徴とする。
これによれば、例えば第1、第2のロックボルトを打設する作業と併せて任意の時点で引抜試験を行うことや、第1、第2のロックボルトを打設する作業と並行して既に打設済みの別の第2のロックボルトに対して引抜試験を行うこと等が可能となり、引抜試験の作業や施工作業の自由度を高めることができる。また、引抜試験対応ナットに引抜力載荷ジャッキの連結具を嵌着して引抜試験を行うことにより、ロックボルトの定着状態を確認して地山補強構造を構築することができると共に、第2のロックボルトに螺合され第2の支圧板を打設面に略当接させている引抜試験対応ナットを引抜試験後にそのまま残置して通常ナットと同様の機能を果たすナットとして用いることが可能となり、ロックボルトに対する引抜試験の際に螺合される試験用ナットと通常ナットのナット付け替えを行う必要を無くし、施工性を向上することができる。更に、引抜試験対応ナットを引抜力載荷ジャッキの連結具に嵌着自在な形状で形成することにより、ロックボルトから延長させるテンションバーの取付作業も不要となり、この点からも施工作業を簡略化して施工性を向上することが可能となると共に、引抜試験装置の部品点数を減らして施工コストも低減することも可能となる。また、引抜力載荷ジャッキを引きシリンダージャッキとすることにより、引抜力載荷ジャッキを軽量化、小型化し、引抜力載荷ジャッキの取付作業、取外作業を容易化することができる。従って、引抜力載荷ジャッキの周辺に設けられる角度調整台座等の引抜試験装置の他の構成部材や、引抜試験装置全体の設置作業、取外作業も容易化することができる。特に、トンネルの内周面にロックボルトが横向きや上向きに打設される場合に、これらの作業の容易化のメリットは顕著なものとなる。また、引抜力載荷ジャッキに要するコストを低減することができる。
【0012】
本発明の地山補強構造の施工方法は、前記引抜力載荷ジャッキに、前記引抜力載荷ジャッキに入力される油圧の圧力を検出する圧力検出部と、引抜力が載荷された前記第2のロックボルトの変位を検出する変位検出部を内装すると共に、データ送信処理部を付設し、前記第2工程において、前記データ送信処理部が、前記圧力検出部から取得した圧力のデータ若しくは前記圧力に対応する荷重のデータをデータ記録装置に無線送信すると共に、前記変位検出部から取得した前記第2のロックボルトの変位のデータを前記データ記録装置に無線送信することを特徴とする。
これによれば、既存の引抜試験では油圧ゲージで油圧を読み取る作業者とロックボルトの変位を読み取る作業者の最低2人が必要であったのに対して、1人の作業者が油圧ポンプで引抜力を載荷し、データ記録装置に無線送信される圧力データ若しくは圧力データから生成されて無線送信される荷重データと、データ記録装置に無線送信される変位データから、同じ作業者が荷重と変位の関係情報を確認することができ、1人の作業者でも引抜試験を効率的且つ正確に行うことができる。また、その場で引抜試験の記録をデータ記録装置に記録し、保存することができる。また、データ送信処理部からデータ記録装置にデータが無線送信されることから、データ記録装置とデータ送信処理部を接続するための配線作業も不要である。また、引抜力載荷ジャッキに圧力検出部と変位検出部を内装することにより、別途に変位計等を設置する必要を無くし、引抜試験装置全体の設置作業、取外作業を容易化することができる。
【0013】
本発明の地山補強構造の施工方法は、前記データ送信処理部が防水ケースに収容されていることを特徴とする。
これによれば、漏水の多い山岳トンネルや雨天に屋外で施工する場合にも、防水ケースでデータ送信処理部に水が浸入することを防止し、安定して引抜試験の実施やデータ記録を行うことができる。
【0014】
本発明の引抜試験装置は、本発明の引抜試験構造に用いられる引抜試験装置であって前記引抜力載荷ジャッキに内装され、前記引抜力載荷ジャッキに入力される油圧の圧力を検出する圧力検出部と、前記引抜力載荷ジャッキに内装され、引抜力が載荷された前記第2のロックボルトの変位を検出する変位検出部と、前記引抜力載荷ジャッキに付設されるデータ送信処理部と、データ記録装置を備え、前記データ送信処理部が、前記圧力検出部から取得した圧力のデータ若しくは前記圧力に対応する荷重のデータを前記データ記録装置に無線送信すると共に、前記変位検出部から取得した前記第2のロックボルトの変位のデータを前記データ記録装置に無線送信することを特徴とする。
これによれば、既存の引抜試験では油圧ゲージで油圧を読み取る作業者とロックボルトの変位を読み取る作業者の最低2人が必要であったのに対して、1人の作業者が油圧ポンプで引抜力を載荷し、データ記録装置に無線送信される圧力データ若しくは圧力データから生成されて無線送信される荷重データと、データ記録装置に無線送信される変位データから、同じ作業者が荷重と変位の関係情報を確認することができ、1人の作業者でも引抜試験を効率的且つ正確に行うことができる。また、その場で引抜試験の記録をデータ記録装置に記録し、保存することができる。また、データ送信処理部からデータ記録装置にデータが無線送信されることから、データ記録装置とデータ送信処理部を接続するための配線作業も不要である。また、引抜力載荷ジャッキに圧力検出部と変位検出部を内装することにより、別途に変位計等を設置する必要を無くし、引抜試験装置全体の設置作業、取外作業を容易化することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ロックボルトの定着状態を確認して地山補強構造を構築することができると共に、ロックボルトに対する引抜試験の際に螺合される試験用ナットと通常ナットのナット付け替えを行う必要を無くし、施工性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明による実施形態の地山補強構造の縦断説明図。
図2】実施形態の地山補強構造の要部断面図。
図3】(a)は実施形態の地山補強構造に用いられる引抜試験対応ナットの正面図、(b)は同図(a)のA-A線断面図。
図4】(a)は実施形態の地山補強構造を施工する際に用いられる引抜力載荷ジャッキの連結具の正面図、(b)は同図(a)のB-B線断面図。
図5】(a)は引抜試験対応ナットの斜視図、(b)は引抜力載荷ジャッキの連結具の斜視図。
図6】引抜試験対応ナットと引抜力載荷ジャッキの連結具を嵌着する動作を説明する斜視説明図。
図7】(a)~(c)は引抜試験対応ナットと引抜力載荷ジャッキの連結具を嵌着する動作を説明する正面説明図、(d)は同図(c)のC-C線拡大断面図。
図8】ロックボルトに螺合された引抜試験対応ナットと引抜力載荷ジャッキの連結具の取付を説明する斜視分解説明図。
図9】(a)~(c)は引抜試験対応ナットが螺合されたロックボルトに引抜試験を行い、引抜試験装置を取り外して引抜試験対応ナットを残置する施工手順を説明する断面説明図。
図10】引抜試験対応ナットが螺合されたロックボルトに引抜試験装置を設置した状態を示す説明図。
図11】引抜試験対応ナットが螺合されたロックボルトに引抜試験装置を設置した状態における引きシリンダージャッキの周辺を示す一部断面拡大側面図。
図12】引抜試験対応ナットが螺合されたロックボルトに引抜試験装置を設置した状態における引きシリンダージャッキの周辺を示す拡大断面図。
図13】引抜試験装置におけるデータ記録装置のブロック図。
図14】(a)は実施形態の地山補強構造に用いられる別例の引抜試験対応ナットの斜視図、(b)は別例の引抜力載荷ジャッキの連結具の斜視図。
図15】別例の引抜試験対応ナットと別例の引抜力載荷ジャッキの連結具を嵌着する動作を説明する斜視説明図。
図16】ロックボルトに螺合された別例の引抜試験対応ナットと別例の引抜力載荷ジャッキの連結具の取付を説明する斜視分解説明図。
図17】変形例の引きシリンダージャッキを用いた場合における図12に対応する拡大断面図。
図18】従来のロックボルトの引抜試験装置を示す説明図。
図19】(a)~(c)は従来のロックボルトの引抜試験装置でロックボルトに引抜試験を行い、引抜試験装置を取り外して通常のナットを螺合し直す施工手順を説明する一部断面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
〔実施形態の地山補強構造及びその施工方法、引抜試験構造
本発明による実施形態の地山補強構造として、トンネルの地山101を補強する構造を図1及び図2に示す。この地山補強構造では、地山101のトンネル空間102側の内周面に吹付コンクリート103が設けられ、吹付コンクリート103の内周面が地山101の打設面に相当するロックボルト1a、1bの打設面104になっている。吹付コンクリート103及び地山101には打設面104と略直交するようにして穿孔105が形成され、穿孔105にロックボルト1a、1bが打設されていると共にセメントモルタル系定着材等の定着材106が充填されている。尚、図1中の107は二次覆工コンクリートである。
【0018】
地山101及び吹付コンクリート103に打設された第1のロックボルトに相当するロックボルト1a及び第2のロックボルトに相当するロックボルト1bは、それぞれ後端部に後端面から穿孔105の内部に達する長さで雄ねじ11a、11bが形成されている。本実施形態における第1、第2のロックボルトに相当するロックボルト1a、1bは形状、構造、サイズ的には同一の棒状部材であるが、異なる形状、構造或いはサイズの部材とすることも可能である。
【0019】
ロックボルト1aの打設面104から突出する雄ねじ11aには挿通穴21aを通して第1の支圧板に相当する支圧板2aが外挿され、ロックボルト1bの打設面104から突出する雄ねじ11bには挿通穴21bを通して第2の支圧板に相当する支圧板2bが外挿されている。本実施形態における第1、第2の支圧板に相当する支圧板2a、2bは形状、構造、サイズ的には同一の板状部材であり、角ワッシャー等が支圧板2a、2bとして用いられるが、異なる形状、構造或いはサイズの部材とすることも可能である。
【0020】
ロックボルト1aの打設面104から突出する雄ねじ11aには通常の六角ナット等の通常ナット3が螺合され、支圧板2aを打設面104に略当接させるようして螺入されている。また、ロックボルト1bの打設面104から突出する雄ねじ11bには通常ナット3とは異なる引抜試験対応ナット4が螺合され、支圧板2bを打設面104に略当接させるようして螺入されている。
【0021】
引抜試験対応ナット4は、後述する引抜力載荷ジャッキ6の連結具5に嵌着自在な形状で形成されているものであり、図2図3及び図5図8に示すように、全長に亘って螺子穴42が形成されている基体41を有し、基体41の後部43に半径方向に突出する略扇状の羽部44が設けられている。羽部44は対応する位置に一対で設けられ、一対の羽部44・44が互いに逆側に突出するようにして形成されている。それぞれの羽部44の前面には前方に突出する突起45が所定位置に局所的に形成されており、本例における突起45は羽部44の前面の端近傍に形成され、一方の羽部44の突起45と他方の羽部44の突起45は対応する位置に設けられている。
【0022】
また、連結具5は、図4図8に示すように、略円筒形の基体51の後寄り部分に螺子穴52が形成されていると共に、基体51の前寄り部分に鍵穴形状の取付穴53が形成されている。取付穴53の後部54は円形の中空になっており、後部54の径は引抜試験対応ナット4の羽部44の弧状外周縁を延長した円の径よりも僅かに大きく形成されていると共に、中空の後部54の軸方向の厚さは羽部44の厚さよりも僅かに大きく形成されている。
【0023】
取付穴53の前部55は、引抜試験対応ナット4の羽部44を有する後部43に対応する略相似形状で形成されており、略扇状の突出部56が内方に突出して形成され、一対の突出部56・56が対向配置されている。それぞれの突出部56の後面には引抜試験対応ナット4の突起45に対応する形状と大きさの嵌合孔57が所定位置に局所的に形成されており、本例における嵌合孔57は突出部56の後面の端近傍に形成され、一方の突出部56の嵌合孔57と他方の突出部56の嵌合孔57は対応する位置に設けられていると共に、一対の嵌合孔57・57は引抜試験対応ナット4の一対の突起45・45に対応する位置に設けられている。前部55の突出部56がない部分は後部54と同一径で形成され、後部54と連続する形状になっている。
【0024】
引抜試験対応ナット4に連結具5を嵌着する際には、図6及び図7に示すように、略相似形の取付穴53の前部55と引抜試験対応ナット4の後部43の形状を合わせるようにして、引抜試験対応ナット4の後部43側から連結具5を外挿し、取付穴53に引抜試験対応ナット4の大部分が内挿されるようにする。そして、連結具5を回転して突出部56・56と引抜試験対応ナット4の羽部44・44が重なるようにしていき、連結具5の一対の嵌合孔57・57の位置と引抜試験対応ナット4の一対の突起45・45の位置が合うまで回転する(図7の太線矢印参照)。一対の嵌合孔57・57の位置と一対の突起45・45の位置が合うと、嵌合孔57・57と突起45・45がそれぞれ嵌合され、嵌合孔57と突起45の嵌合により連結具5と引抜試験対応ナット4が嵌着される。この嵌着は、一対の嵌合孔57・57の位置と一対の突起45・45の位置をずらすように連結具5を回転することで簡単に取り外すことが可能であり、着脱が自在である。
【0025】
即ち、本例の引抜試験対応ナット4には 連結具5の回転動作で連結具5に嵌合自在な嵌合部として突起45が設けられ、引抜試験対応ナット4が引抜力載荷ジャッキ6の連結具5に嵌着自在な形状で形成されており、換言すればキーとなる引抜試験対応ナット4の突起45が連結具5の嵌合孔57に嵌着自在にキー嵌合される構成になっている。尚、本例では嵌合部に相当する突起45と嵌合部が嵌合する被嵌合部に相当する嵌合孔57を一対で2個ずつ設けているが、それぞれ3個以上の複数個を所定間隔を開けて設ける構成としても良く、又、それぞれ1個ずつ設ける構成とすることも可能である。
【0026】
更に、引抜試験を行う際に引抜試験対応ナット4に連結具5を嵌着する場合には、図8及び図9(a)に示すように、ロックボルト1bに外挿された支圧板2bを打設面104に略当接させるように螺合されている引抜試験対応ナット4に対し、略環状の角度調整台座7を外周に配置する。角度調整台座7には支圧板2b側に磁石71が円周方向に所定間隔を開けて複数設けられており、磁性材の支圧板2bに着脱自在に磁着される(図9(b)参照)。また、角度調整台座7には、支圧板2b側とは逆側に、引抜力載荷ジャッキ6の先端部に設けられている角度調整球座61を受ける略テーパ面状の受部72が形成されている。
【0027】
その後、引抜力載荷ジャッキ6の先端部の内側に取り付けられている連結具5を引抜試験対応ナット4の後部43側から外挿し、引抜力載荷ジャッキ6及び連結具5を回転して連結具5と引抜試験対応ナット4を嵌着すると共に、角度調整台座7の受部72に引抜力載荷ジャッキ6の角度調整球座61を当接し、引抜試験装置を構成する引抜力載荷ジャッキ6を配置する。ここで角度調整球座61は角度調整台座7に角度調整可能に当接する構造であり、この角度調整により、打設面104に凹凸があってもロックボルト1b、引抜試験対応ナット4、連結具5、引抜力載荷ジャッキ6は中心軸が合うようにして設置することが可能である。
【0028】
次に、本実施形態の地山補強構造を施工する手順について説明する。本実施形態の地山補強構造を施工する際には、地山101及び吹付コンクリート103に形成した穿孔105内に、図示省略するセメントモルタル等の所定時間の経過で硬化する定着材106を注入し、穿孔105内に第1のロックボルトに相当するロックボルト1aを打ち込み、定着材106で定着されるようにしてロックボルト1aを地山101及び吹付コンクリート103に打設する。そして、ロックボルト1aの打設面104から突出するロックボルト1aの雄ねじ11aに、第1の支圧板に相当する支圧板2aの外挿、通常ナット3の螺入を順に行い、通常ナット3の螺入により、打設面104と通常ナット3との間に介在する支圧板2aを打設面104に略当接させる(図2参照)。
【0029】
また、ロックボルト1aが打ち込まれる穿孔105とは別に形成した穿孔105内に上記と同様の定着材を注入し、穿孔105内に第2のロックボルトに相当するロックボルト1bを打ち込み、定着材106で定着されるようにしてロックボルト1bを地山101及び吹付コンクリート103に打設する。そして、ロックボルト1bの打設面104から突出するロックボルト1bの雄ねじ11bに、第2の支圧板に相当する支圧板2bの外挿、通常ナット3とは異なる引抜試験対応ナット4の螺入を順に行い、引抜試験対応ナット4の螺入により、打設面104と引抜試験対応ナット4との間に介在する支圧板2bを打設面104に略当接させる(図2参照)。
【0030】
その後、上述の如く、引抜試験対応ナット4に対し、略環状の角度調整台座7を外周に配置し、引抜力載荷ジャッキ6に取り付けられた連結具5を引抜試験対応ナット4の後部43側から外挿し、引抜力載荷ジャッキ6及び連結具5を回転して連結具5と引抜試験対応ナット4を嵌着すると共に、引抜試験装置を構成する引抜力載荷ジャッキ6を配置する(図7図12参照)。
【0031】
本実施形態における引抜力載荷ジャッキ6は、油圧シリンダーで引く力を出力する単動式の引きシリンダージャッキであり、図示例では、略部分球面状の角度調整球座61が先端部に設けられているシリンダー本体62と、シリンダー本体62に内装され、油圧の入力で後退するプランジャー63と、プランジャー63の後側に設けられ、後退したプランジャー63を初期位置に戻す戻りスプリング64を備えるスプリング戻し形の引きシリンダージャッキになっている。プランジャー63の前端部には雄ねじ631が形成されており、雄ねじ631と連結具5の螺子穴52の雌ねじを螺合することにより、連結具5が引抜力載荷ジャッキ6の先端部の内側に取り付けられている。また、引抜力載荷ジャッキ6は、図10に示すように、油圧ホース65を介して引抜力載荷ジャッキ6を油圧駆動する油圧ポンプ66に接続される。図示例の油圧ポンプ66は充電式の携帯型電動油圧ポンプになっている。
【0032】
この引抜力載荷ジャッキ6には、引抜力載荷ジャッキ6に入力される油圧の圧力を検出する圧力検出部81と、引抜力が載荷されたロックボルト1bの変位を検出する変位検出部82が内装されていると共に、データ送信処理部83が付設されている。データ送信処理部83は、アクリル板等で構成される防水ケース84に収容され、データ送信処理部83に水が浸入しないように防水処理が図られている。
【0033】
データ送信処理部83は、ロックボルト1bに引抜力が載荷された際に、圧力検出部81から取得した圧力のデータからこの圧力に対応する荷重のデータを生成し、荷重のデータをデータ記録装置9に略リアルタイム等で無線送信すると共に、変位検出部82から取得したロックボルト1bの変位のデータをデータ記録装置9に略リアルタイム等で無線送信するようになっている。尚、データ送信処理部83は、前述の荷重のデータの生成、送信に代え、圧力検出部81から取得した圧力のデータをデータ記録装置9に略リアルタイム等で無線送信する構成とすることも可能である。
【0034】
データ送信処理部83からデータが無線送信されるデータ記録装置9は、例えばスマートフォン、携帯情報端末或いはパーソナルコンピューター等で構成され、図13に示すように、CPU等の制御部91、メモリやハードディスク等の記憶部92、タッチパネル、キーボード、マウス等の入力部93、タッチパネル、液晶ディスプレイ等の画像表示部94、無線通信インターフェイスの通信部95を備える。記憶部92には、オペレーションシステムやデータ送信処理部83から受信したデータを処理する引抜試験処理プログラム等のアプリケーションプログラムを格納するプログラム格納部921と、データ送信処理部83から受信したデータや引抜試験処理プログラムで生成したデータを記憶するデータ格納部922が設けられている。
【0035】
そして、油圧ポンプ66に接続され、データ送信処理部83が付設された引抜力載荷ジャッキ6や、データ記録装置9で引抜試験装置を構成した状態において、油圧ポンプ66で引抜力載荷ジャッキ6を油圧駆動し、引抜力載荷ジャッキ6により連結具5及び引抜試験対応ナット4を介して第2のロックボルトに相当するロックボルト1bに引抜力を載荷し、引抜試験を行う(図9(a)、図10図12参照)。
【0036】
この引抜試験中には、例えば圧力検出部81が引抜力載荷ジャッキ6に入力される油圧の圧力を継続して検出し、CPU等の制御部やプログラム格納部及びデータ格納部を有する記憶部を備えるデータ送信処理部83に検出された圧力のデータが継続して入力され、データ送信処理部83は、入力される圧力のデータからこの圧力に対応する荷重のデータを継続して生成し、生成した荷重のデータをデータ記録装置9に略リアルタイム等で継続して無線送信する。これと同時に、変位検出部82が引抜力の載荷で発生したロックボルト1bの変位を継続して検出し、データ送信処理部83に検出された変位のデータが継続して入力され、データ送信処理部83は、入力される変位のデータをデータ記録装置9に略リアルタイム等で継続して無線送信する。データ記録装置9は、データ送信処理部83から略リアルタイム等で継続して荷重のデータ及び変位のデータを受信し、荷重のデータ及び変位のデータをそれぞれデータ格納部922に格納すると共に、荷重と変位の関係を示すグラフ等の荷重と変位の関係情報を生成し、画像表示部94に表示する。
【0037】
尚、データ送信処理部83が圧力のデータをそのままデータ記録装置9に送信する構成では、例えばデータ送信処理部83は、入力される圧力のデータをデータ記録装置9に略リアルタイム等で継続して無線送信すると共に、入力される変位のデータをデータ記録装置9に略リアルタイム等で継続して無線送信する。データ記録装置9は、データ送信処理部83から略リアルタイム等で継続して荷重のデータ及び変位のデータを受信し、受信する圧力のデータからこの圧力に対応する荷重のデータを継続して生成し、生成した荷重のデータ及び変位のデータをそれぞれデータ格納部922に格納すると共に、荷重と変位の関係を示すグラフ等の荷重と変位の関係情報を生成し、画像表示部94に表示する。
【0038】
引抜試験の完了後には、図9(b)、(c)に示すように、引抜試験対応ナット4を第2のロックボルトに相当するロックボルト1bに螺合させたまま残置して連結具5の嵌着状態を解除し、連結具5、引抜力載荷ジャッキ6、角度調整台座7を取り外す。連結具5の引抜試験対応ナット4からの嵌着状態の解除は、連結具5を回転して嵌合部に相当する突起45と嵌合部が嵌合する被嵌合部に相当する嵌合孔57との嵌合を解除し、連結具5の突出部56が引抜試験対応ナット4の羽部44がない部分に配置されるまで回転し、連結具5の取付穴53から引抜試験対応ナット4が離脱するようにして連結具5を取り外すことにより行う。
【0039】
そして、引抜試験によってロックボルト1bが変位し、支圧板2bが打設面104から離れてしまった場合には、引抜試験対応ナット4を打設面104側に螺入して打設面104と引抜試験対応ナット4との間に介在する支圧板2bを打設面104に略当接させるようにし、地山補強構造が構築される(図2参照)。
【0040】
本実施形態によれば、引抜試験対応ナット4に引抜力載荷ジャッキ6の連結具5を嵌着して引抜試験を行うことにより、ロックボルト1b、1aの定着状態を確認して地山補強構造を構築することができると共に、ロックボルト1bに螺合され支圧板2bを打設面104に略当接させている引抜試験対応ナット4を引抜試験後にそのまま残置して通常ナット3と同様の機能を果たすナットとして用いることが可能となり、ロックボルト1bに対する引抜試験の際に螺合される試験用ナットと通常ナットのナット付け替えを行う必要を無くし、施工性を向上することができる。更に、引抜試験対応ナット4を引抜力載荷ジャッキ6の連結具5に嵌着自在な形状で形成することにより、ロックボルト1bから延長させるテンションバーの取付作業も不要となり、この点からも施工作業を簡略化して施工性を向上することが可能となると共に、引抜試験装置の部品点数を減らして施工コストも低減することも可能となる。
【0041】
また、引抜試験対応ナット4に連結具5の回転動作で連結具5に嵌合自在な嵌合部である突起45を設けることにより、連結具5を引抜試験対応ナット4に簡単に嵌合し、又嵌合を解除することができ、連結具5、引抜力載荷ジャッキ6の取付作業、取外作業を容易化することができる。従って、引抜力載荷ジャッキ6の周辺に設けられる角度調整台座7等の引抜試験装置の他の構成部材や、引抜試験装置全体の設置作業、取外作業も容易化することができる。特に、トンネルの内周面の打設面104にロックボルト1a、1bが横向きや上向きに打設される場合に、これらの作業の容易化のメリットは顕著なものとなる。
【0042】
また、本実施形態の地山補強構造の施工方法によれば、ロックボルト1a、1bを打設する作業と併せて任意の時点で引抜試験を行うことや、ロックボルト1a、1bを打設する作業と並行して既に打設済みの別のロックボルト1bに対して引抜試験を行うこと等が可能となり、引抜試験の作業や施工作業の自由度を高めることができる。
【0043】
また、引抜力載荷ジャッキ6を引きシリンダージャッキとすることにより、引抜力載荷ジャッキ6を軽量化、小型化し、引抜力載荷ジャッキ6の取付作業、取外作業を容易化することができる。従って、引抜力載荷ジャッキ6の周辺に設けられる角度調整台座7等の引抜試験装置の他の構成部材や、引抜試験装置全体の設置作業、取外作業も容易化することができる。特に、トンネルの内周面の打設面104にロックボルト1a、1bが横向きや上向きに打設される場合に、これらの作業の容易化のメリットは顕著なものとなる。更に、引抜力載荷ジャッキ6に要するコストを低減することができる。
【0044】
また、データ送信処理部83が荷重若しくは圧力のデータと変位のデータをデータ記録装置9に略リアルタイム等で無線送信することにより、既存の引抜試験では油圧ゲージで油圧を読み取る作業者とロックボルトの変位を読み取る作業者の最低2人が必要であったのに対して、1人の作業者が油圧ポンプ66で引抜力を載荷し、略リアルタイム等でデータ記録装置9に無線送信される荷重若しくは圧力データと変位データに基づき同じ作業者が荷重と変位の関係情報を確認することができ、1人の作業者でも引抜試験を効率的且つ正確に行うことができる。また、その場で引抜試験の記録をデータ記録装置9に記録し、保存することができる。また、データ送信処理部83からデータ記録装置9にデータが無線送信されることから、データ記録装置9とデータ送信処理部83を接続するための配線作業も不要である。また、引抜力載荷ジャッキ6に圧力検出部81と変位検出部82を内装することにより、別途に変位計等を設置する必要を無くし、引抜試験装置全体の設置作業、取外作業を容易化することができる。
【0045】
また、データ送信処理部83を防水ケース74に収容することにより、漏水の多い山岳トンネルや雨天に屋外で施工する場合にも、データ送信処理部83に水が浸入することを防止し、安定して引抜試験の実施やデータ記録を行うことができる。
【0046】
〔本明細書開示発明の包含範囲〕
本明細書開示の発明は、発明として列記した各発明、実施形態の他に、適用可能な範囲で、これらの部分的な内容を本明細書開示の他の内容に変更して特定したもの、或いはこれらの内容に本明細書開示の他の内容を付加して特定したもの、或いはこれらの部分的な内容を部分的な作用効果が得られる限度で削除して上位概念化して特定したものを包含する。そして、本明細書開示の発明には下記変形例や追記した内容も含まれる。
【0047】
例えば本発明における引抜試験対応ナットの連結具に嵌着自在な形状は、引抜試験対応ナット4の突起45を有する形状に限定されず適宜であり、例えば図14図16に示す引抜試験対応ナット4mの形状としてもよい。引抜試験対応ナット4mは、全長に亘って螺子穴42mが形成されている基体41mを有し、基体41mの全長に亘って半径方向に突出する略扇状の羽部43mが設けられている。羽部43mは対応する位置に一対で設けられ、一対の羽部43m・43mが互いに逆側に突出するようにして形成されている。
【0048】
羽部43mの外周面には嵌合溝44mが周方向に形成され、引抜試験対応ナット4mの長さ方向に間隔を開けて複数個(図示例では2個)設けられている。嵌合溝44mは、羽部43mの一方の側端面で開放するように形成されていると共に、羽部44mの他方の側端面に達しない位置まで形成されており、引抜試験対応ナット4mの長さ方向に並ぶ複数の嵌合溝44mは開放側が揃うように形成されている。また、一方の羽部43mの嵌合溝44mの開放側と、他方の羽部43mの嵌合溝44mの開放側は、周方向で同じ向きになっている。
【0049】
引抜試験対応ナット4mに嵌着される連結具5mには、略円筒形の基体51mの後寄り部分に螺子穴52mが形成されていると共に、基体51mの前寄り部分に取付穴53mが形成され、取付穴53mの径は引抜試験対応ナット4mの羽部43mの弧状外周縁を延長した円の径よりも僅かに大きく形成されている。取付穴53mの内周面の対向位置には、嵌合溝44mと略対応する長さの突条54mが周方向に形成され、連結具5mの長さ方向に嵌合溝44mに対応する間隔を開けて嵌合溝44mに対応する複数個(図示例では2個)の突条54mが設けられている。
【0050】
引抜試験対応ナット4mに連結具5mを嵌着する際には、引抜試験対応ナット4mの羽部43mがない部分と連結具5mの突条54mがある部分が対応するようして、引抜試験対応ナット4mの後側から連結具5mを外挿し、取付穴53mに引抜試験対応ナット4mの大部分が内挿されるようにする。そして、連結具5mを回転して連結具5mの突条54mを引抜試験対応ナット4mの嵌合溝44mの開放側から嵌め込み、突条54mと嵌合溝44mを嵌着する(図15の太線矢印参照)。この嵌着は、連結具5mを逆方向に回転して突条54mと嵌合溝44mの嵌合を外すことで解除することが可能であり、着脱自在である。
【0051】
即ち、別例の引抜試験対応ナット4mには、連結具5mの回転動作で連結具5mに嵌合自在な嵌合部として嵌合溝44mが設けられ、これに対応する被嵌合部として連結具5mの突条54mが設けられている。別例の引抜試験対応ナット4m、別例の連結具5mも、上記実施形態の引抜試験対応ナット4、連結具5と同様に用いることが可能である(図16参照)。
【0052】
また、連結具5、引抜力載荷ジャッキ6の変形例として、図17に示すように、基体51の外周面から回り止めピン58nを突設させた連結具5nとすると共に、シリンダー本体62の内周面で軸方向に延びて角度調整球座61で開放されるガイド溝67nが設けられた引抜力載荷ジャッキ6nとしてもよい。この変形例では、回り止めピン58nがガイド溝67nに係合されて連結具5nの回り止めとなり、連結具5nの螺子穴52とプランジャー63の雄ねじ631との螺着状態が確実に維持されると共に、連結具5nが引抜力載荷ジャッキ6nの着脱不能に一体化された部品となる。他方で、連結具5、5mのようにプランジャー63の雄ねじ631との螺着だけで連結具とプランジャー63との固定状態を得る構成によれば、連結具が着脱自在であることから、多様な形状の引抜試験対応ナットに対応した連結具を柔軟に取り付けることが可能であり、引抜試験、施工の自由度を高めることができる。
【0053】
また、本発明の地山補強構造は、上記実施形態のトンネルの補強構造以外の地山補強構造として用いることが可能である。また、本発明における第1、第2のロックボルト、第1、第2の支圧板はそれぞれ同一構成のものとする他、それぞれ異なる構成のものとすることも可能である。また、本発明における地山の打設面には、地山の内周に設けられた吹付コンクリート等の打設面の他、地山が直接露出する打設面も含まれる。また、本発明における引抜力載荷ジャッキには、適用可能な範囲で引きシリンダージャッキ以外の適宜のものを用いることが可能であり、例えば押し引きを油圧で行う複動式のシリンダージャッキとすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、例えばトンネル等に地山補強構造を構築する際に利用することができる。
【符号の説明】
【0055】
1a、1b…ロックボルト 11a、11b…雄ねじ 2a、2b…支圧板 21a、21b…挿通穴 3…通常ナット 4…引抜試験対応ナット 41…基体 42…螺子穴 43…後部 44…羽部 45…突起 4m…引抜試験対応ナット 41m…基体 42m…螺子穴 43m…羽部 44m…嵌合溝 5…連結具 51…基体 52…螺子穴 53…取付穴 54…後部 55…前部 56…突出部 57…嵌合孔 5m…連結具 51m…基体 52m…螺子穴 53m…取付穴 54m…突条 5n…連結具 58n…回り止めピン 6…引抜力載荷ジャッキ 61…角度調整球座 62…シリンダー本体 63…プランジャー 631…雄ねじ 64…戻りスプリング 65…油圧ホース 66…油圧ポンプ 6n…引抜力載荷ジャッキ 67n…ガイド溝 7…角度調整台座 71…磁石 72…受部 81…圧力検出部 82…変位検出部 83…データ送信処理部 84…防水ケース 9…データ記録装置 91…制御部 92…記憶部 921…プログラム格納部 922…データ格納部 93…入力部 94…画像表示部 95…通信部 101…地山 102…トンネル空間 103…吹付コンクリート 104…打設面 105…穿孔 106…定着材 107…二次覆工コンクリート 201…地山 202…ロックボルト 203…テンションバー 204…支圧板 205…打設面 206…角度調整台座 207…角度調整球座 208…センターホールジャッキ 209…測定板 210…ワッシャー 211…試験用ナット 212…ダイヤルゲージ 213…測定子 214…油圧ポンプ 215…油圧ゲージ 216…通常ナット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
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図17
図18
図19