(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-10
(45)【発行日】2022-08-19
(54)【発明の名称】自動繊維配置機のための動的ヒータ制御
(51)【国際特許分類】
B29C 70/38 20060101AFI20220812BHJP
B29C 70/06 20060101ALI20220812BHJP
B64C 1/00 20060101ALI20220812BHJP
B64F 5/10 20170101ALI20220812BHJP
【FI】
B29C70/38
B29C70/06
B64C1/00 B
B64F5/10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017157030
(22)【出願日】2017-08-16
【審査請求日】2020-08-12
(32)【優先日】2016-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ムーア, ジェロン ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン, ブライス エー.
(72)【発明者】
【氏名】ペディーゴ, サミュエル エフ.
(72)【発明者】
【氏名】ゴーシュ, サヤタ
【審査官】田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-30296(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 70/38
B29C 70/06
B64C 1/00
B64F 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動繊維配置(AFP)機(100)によって積層板(150)をレイアップするための方法であって、
前記AFP機(100)は、
構成材料のトウ(152)を前記積層板上に分配するガイド(220)と、
前記トウが前記積層板上に分配される前に前記積層板を加熱するヒータ(212)と、
を備えるヘッド(200)を備え、
方法は、
レイアップの間に加熱表面が積層板表面の上を移動する経路に沿った複数の位置の各位置における
、前記AF
P機のヒータの前記加熱表面から、前記AFP機によってレイアップされている前記積層板の表面までの予測された距離を示す距離データを読み出すこと(606、608)と、
数値制御(NC)プログラムにしたがって前記積層板をレイアップするように、前記AFP機を案内すること(610)と、
レイアップの間に、前記経路内の前記ヒータの現在の位置を識別すること(612)と、
前記現在の位置において、前記AFP機の前記ヒータが移動する速度を決定すること(614)と、
前記ヒータの前記現在の位置を、前記予測された距離のうちの1つに関連付けすること(616)と、
前記現在の位置に関連付けされた前記予測された距離と、前記現在の位置における速度に基づいて、前記現在の位置におけるレイアップの間の前記ヒータへの電力の量を調節して(618)、前記積層板がトウを受け入れられる状態になるように前記積層板に熱を加えることと
を含む方法。
【請求項2】
前記ヒータの前記加熱表面を定義するデータを取得すること(602)と、
前記積層板表面を定義するデータを取得すること(602)と、
前記加熱表面が前記積層板表面の上を移動する前記経路を決定すること(604)と、
前記経路に沿った前記複数の位置の各位置における、前記加熱表面から前記積層板表面までの距離を予測すること(606)と、
前記予測された距離を前記距離データとしてメモリに記憶させることと
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記位置における前記加熱表面から前記積層板表面までの平均距離を識別することと、
前記平均距離に基づいて前記電力の量を選択することと
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記位置における前記加熱表面から前記積層板表面までの最短距離を識別することと、
前記最短距離に基づいて前記電力の量を選択することと
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記加熱表面と前記積層板表面との間の距離に関わらず、前記積層板表面に既定量の熱を加えるために前記電力の量の調節が実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記加熱表面と前記積層板表面との間の距離に関わらず、前記積層板表面を既定温度まで加熱するために前記電力の量の調節が実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
積層板(150)をレイアップする自動繊維配置(AFP)機(100)を備えるシステムであって、
前記AFP機(100)は、
構成材料のトウ(152)を前記積層板上に分配するガイド(220)と、
前記トウが前記積層板上に分配される前に前記積層板を加熱するヒータ(212)と
を備えるヘッド(200)と、
レイアップの間に加熱表面(400)が積層板表面の上を移動する経路(300)に沿った複数の位置の各位置において、前記ヒータの前記加熱表面から前記積層板の表面(156)までの予測された距離を示す距離データ(525)を読み出し、数値制御(NC)プログラムにしたがって前記積層板をレイアップするように前記AFP機を案内し、レイアップの間に前記経路内の前記ヒータの現在の位置(L1)を識別し、前記AFP機の前記ヒータが前記現在の位置において移動する速度を決定し、前記ヒータの前記現在の位置を前記予測された距離のうちの1つと関連付けし、前記現在の位置と関連付けられた前記予測された距離と、前記現在の位置における前記速度に基づいて、前記現在の位置におけるレイアップの間の前記ヒータへの電力の量を調節するコントローラ(500)と
を備え、
前記ヒータ(212)が、前記積層板がトウを受け入れられる状態になるように前記積層板に熱を加える、システム。
【請求項8】
パーツ設計ユニット(520)であって、
メモリ(520)と、
前記AFP機を案内するための前記NCプログラムを生成し、前記加熱表面が前記積層板表面の上を移動する前記経路を決定し、前記経路に沿った前記複数の位置の各位置における前記加熱表面から前記積層板表面までの距離を予測し、前記予測された距離を前記距離データとしてメモリに記憶させるプロセッサ(522)と
を備えるパーツ設計ユニット(520)
を更に備える、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記コントローラが、前記位置における前記加熱表面から前記積層板表面までの平均距離を識別し、前記平均距離に基づいて前記電力の量を選択する、請求項7に記載のシステム。
【請求項10】
前記コントローラが、前記位置における前記加熱表面から前記積層板表面までの最短距離を識別し、前記最短距離に基づいて前記電力の量を選択する、請求項7に記載のシステム。
【請求項11】
前記コントローラが、前記加熱表面と前記積層板表面との間の距離に関わらず前記積層板表面に既定量の熱を加えるために、前記電力の量を調節する、請求項7に記載のシステム。
【請求項12】
前記コントローラが、前記加熱表面と前記積層板表面との間の距離に関わらず前記積層板表面を既定温度まで加熱するために、前記電力の量を調節する、請求項7に記載のシステム。
【請求項13】
前記AFP機は更に、前記積層板上にトウを圧密化する圧密化ローラ(230)を備える、請求項7に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複合材料製造の分野に関し、より具体的には自動繊維配置(AFP)機に関する。
【背景技術】
【0002】
構成材料(例:炭素繊維強化ポリマー(CFRP))の多層積層板を任意の様々な形状に成形して、硬化させ、複合部品を形成することができる。複合部品の製造を促進するために、例えばAFP機等のロボットを用いることができる。例えば、AFP機は、構成材料のトウの一又は複数の層をレイアップして積層板を形成し、その後硬化させることができる。
【0003】
AFP機の動作は、トウのレイアップが続いているときにAFP機の動きを操作する数値制御(NC)プログラムによって案内されうる。AFP機は、単一コース(course)(例えば、積層板を通過する一回運転)で一度に複数のトウを積層板上に分配することができ、AFP機は、NCプログラムからの命令に応じて、コース内で個々のトウを開始する又は終了することができる。
【0004】
AFP機によって置かれているトウが下の積層板に適切に付着するようにするために、AFP機のヒータにより積層板を加熱する。積層板を加熱することにより、トウが所望の留め具合で積層板に適切に付着するようになる。しかしながら、複合部品の設計者は加熱プロセスを改善し、積層板の過熱及び/又は加熱不足の可能性を減らすシステム及び装置を追求し続ける。
【発明の概要】
【0005】
本書に記載される実施形態は、ヒータから下の積層板までの距離と、AFP機のエンドエフェクタ/ヘッドが移動する速度に基づいて、APF機のヒータに印加される電力の量を動的に調節する。これにより、レイアップの間にAFP機のヘッドによって実施される動作に関わらず、積層板が所望の温度に到達するようになる/所望の熱の量を受けるようになる。この技術は特に、AFP機が複雑な形状を有する積層板をレイアップする環境において有益である。
【0006】
一実施形態は、レイアップの間に加熱表面が積層板表面の上を移動する経路に沿った複数の位置の各位置において、自動繊維配置(AFP)機のヒータの加熱表面からAFP機によってレイアップされる積層板の表面までの予測された距離を示す距離データを読み出すことを含む方法である。本方法はまた、数値制御(NC)プログラムにしたがって積層板をレイアップするようにAFP機を案内することと、レイアップの間に経路内のヒータの現在の位置を識別することと、AFP機のヒータが現在の位置において移動する速度を決定することと、ヒータの現在の位置を予測された距離のうちの1つと関連付けすることと、現在の位置と関連付けられた予測された距離と、現在の位置における速度に基づいて、現在の位置におけるレイアップの間のヒータへの電力の量を調節することとも含む。
【0007】
別の実施形態は、積層板をレイアップする自動繊維配置(AFP)機を備えるシステムである。AFP機は、構成材料のトウを積層板上に分配するガイドを備えるヘッドと、トウが積層板上に分配される前に積層板を加熱するヒータとを含む。AFP機は更に、レイアップの間に加熱表面が積層板表面の上を移動する経路に沿った複数の位置の各位置において、ヒータの加熱表面から積層板の表面までの予測された距離を示す距離データを読み出し、数値制御(NC)プログラムにしたがって積層板をレイアップするようにAFP機を案内し、レイアップの間に経路内のヒータの現在の位置を識別し、AFP機のヒータが現在の位置において移動する速度を決定し、ヒータの現在の位置を予測された距離のうちの1つと関連付けし、現在の位置と関連付けられた予測された距離と、現在の位置における速度に基づいて、現在の位置におけるレイアップの間のヒータへの電力の量を調節するコントローラを含む。
【0008】
別の実施形態は、少なくとも1つのセンサから距離データを取得することと、距離データに基づいて自動繊維配置(AFP)機のヒータの加熱表面からある位置においてAFP機によってレイアップされている積層板の表面までの距離を決定することと、積層板の上のヒータの速度を決定することと、その位置における距離と速度に基づいて、ヒータへの電力の量を調節することとを含む方法である。
【0009】
別の実施形態は、AFP機を含むシステムである。AFP機は、構成材料のトウを積層板上に分配するガイドと、トウが積層板上に分配される前に積層板の表面を加熱するヒータと、距離データを提供する少なくとも1つのセンサとを備えるヘッドを含む。AFP機は更に、数値制御(NC)プログラムにしたがって積層板をレイアップするようにAFP機を案内し、AFP機のヒータがレイアップの間に移動する速度を決定し、少なくとも1つのセンサからの距離データに基づいて、ある位置における加熱表面から積層板表面までの距離を決定し、位置における距離と速度に基づいてヒータへの電力の量を調節するコントローラを含む。
【0010】
他の例示的な実施形態(例えば、上述の実施形態に関連する方法及びコンピュータ可読媒体)が、後述される。上述の特徴、機能、及び利点は、様々な実施形態において単独で実現することが可能である、又は更に別の実施形態において組み合わせることが可能であるが、これらの実施形態は、以下の説明及び添付図面を参照することによって更に詳細に理解することができる。
【0011】
ここで本開示の幾つかの実施形態を、例示としてのみ、添付図面を参照して説明する。全ての図面において、同じ参照番号は同じエレメント又は同じタイプのエレメントを表す。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】例示的な実施形態における材料のトウをレイアップするAFP機を示す図である。
【
図2】例示的な実施形態におけるロボットのエンドエフェクタの拡大図である。
【
図3】例示的な実施形態における構成材料のトウをレイアップしているエンドエフェクタの斜視図である。
【
図4】例示的な実施形態におけるヒータの側面図である。
【
図5】例示的な実施形態における積層板をレイアップするAFP機 のブロック図である。
【
図6】例示的な実施形態におけるヒータから積層板までの距離を示す既定の情報に基づいて、ヒータへの電力を動的に調節する方法を示すフロー図である。
【
図7】例示的な実施形態におけるヒータから積層板までの距離を示すセンサ入力に基づいて、ヒータへの電力を動的に調節する方法を示すフロー図である。
【
図8】例示的な実施形態における積層板までの距離を測定しているヒータの側面図である。
【
図9】例示的な実施形態における電力プロファイルについての定義を示す表である。
【
図10】例示的な実施形態における様々な温度及び距離についての電力プロファイルを示すグラフである。
【
図11】例示的な実施形態における様々な温度及び距離についての電力プロファイルを示すグラフである。
【
図12】例示的な実施形態における航空機の製造及び保守方法のフロー図である。
【
図13】例示的な実施形態における航空機のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面及び下記の記載により、本開示の特定の例示的実施形態が示される。従って、当業者は、本明細書に明示的に記載又は図示されていない様々な装置を考案して本開示の原理を具現化することができるが、それらは本開示の範囲に含まれることを理解されたい。更に、本明細書に記載のいかなる実施例も、本開示の原理の理解を助けるためのものであり、具体的に記載された実施例や諸条件を限定しないものとして理解されるべきである。結果として、本開示は、下記の具体的な実施形態又は実施例に限定されず、特許請求項の範囲及びその均等物によって限定される。
【0014】
図1は、例示的な実施形態における支持体170に装着されたAFP機100を示す図である。AFP機100は、構成材料のトウ152をレイアップして硬化させ、複合部品を形成することができる任意のシステム又は装置を備える。AFP機100は、レイアップの間に(例えば同時に)硬化性構成材料(例:CFRP)のトウ152を分配する、エンドエフェクタ/ヘッド200を含む。トウ152は、硬化されて1つのモノシリック複合部品を形成する一または複数の材料層を含む積層板150を形成するようにレイアップされる。この実施形態では、積層板150は、航空機の胴体セクションを含み、回転ホルダー160によって適所に保持される。
【0015】
AFP機100が積層板150上にトウ152をレイアップするように動作するときは、AFP機100は、軸X166に沿って積層板150に向かって/積層板150からまっすぐに、軸Y164に沿って上向き/下向きに垂直に、及び/又は軸Z162に沿って横に移動しうる。本書で使用するように、ヘッド200がひと「振り」する間にAFP機100が複数のトウ152を同時にレイアップするときに、これらのトウ122はまとめて1つの「コース」と称される。連続して配置される一連のコースは、層と称されうる。積層板150に層が追加されると、出来上がった複合部品の強度が有益に向上する。
【0016】
例えば胴体のセクション等の大きな積層板150の材料をレイアップすることは、時間のかかる複雑なプロセスである。トウ152を迅速に、また効率的にレイアップできるようにするために、AFP機100の動作はNCプログラムで制御される。一実施形態では、NCプログラムは、AFP機100を位置調整する/再配置する、ヘッド200を動かす、及び積層板150上にトウ152をレイアップするために、コースごとに命令を送る。このように、NCプログラムの命令を実施することによって、AFP機100は積層板を組み立てて硬化させ、複合部品を形成する。
【0017】
図2は、
図1の図面矢印2によって示す、AFP機100のヘッド200の拡大前面図である。
図2に示すように、ヘッド200は、トウ152を積層板150に適切に留める/付着させるために、積層板150に熱を加えるヒータ210を含む。ヒータ210は、積層板150上に熱を放射するために、加熱エレメント212(例:電流の印加に応じて、熱放射/赤外線放射を生成する電気抵抗フィラメント)に電力を加える。この実施形態では、ヒータ210には、トウ152がレイアップされている間に図示したヘッドの方向にヒータ210が進むときにヒータ210から積層板150までの距離を測定するセンサ240が付属する。
図2は更に、ヘッド200が一または複数のトウ152を分配するためのガイド220、及び積層板150上にトウ152を圧密化する圧密化ローラ230を含むところを示す。
【0018】
図3は、例示的な実施形態のヘッド200によって積層板150上にトウ152を配置しているところを示す斜視図である。具体的には、
図3は、
図2の図面矢印3によって示される図である。
図3に示すように、ヘッド200は、センサ240と、ヒータ210(加熱エレメント212を含む)と、ガイド220と、圧密化ローラ230とを含む。ヘッド200は、経路300に沿って積層板150上を図示したヘッド方向に進み、積層板150上に圧密化するためのトウ152をレイアップする。ヘッド200はコースの間に複数のトウ152を同時に分配し、圧密化ローラ230はトウ152を積層板150の表面156上に押し付けて、層154を形成する。
図3に更に、トウ152を分配するガイド220の前方を行くヒータ210を示す。このため、ヒータ210は、積層板150がトウ152を受け入れられる状態になるように、(例えば、トウ152を直接加熱する代わりに)積層板150に熱214を加える。これにより、積層板150が所望の温度まで加熱されやすくなり、大きな利益がもたらされる。積層板150に加えられたこの熱は次に、トウ152が積層板150と接触した後、また積層板150上に圧密化された後に、トウ152が所望の温度に加熱される助けとなりうる。同時に、ヒータ210がトウ152と圧密化ローラ230の前方を行くことから、トウ152は圧密化ローラ230と接触する前には加熱されないようになる。上記の結果、トウ152が積層板150の代わりに圧密化ローラ230に付着する、望ましくないことが起きる可能性がある。
【0019】
図4は、
図3の図面矢印4によって示すヒータ210の側面図である。
図4に、これを介してヒータ210から積層板150上に熱が放射される、加熱表面400(例えばガラス又はプラスチック面)を示す。この実施形態では、加熱表面400は、ヒータ210の最下部の平面であるが、加熱表面400は、これを通してヒータ210から積層板150に放射熱が伝達されるいずれかの任意の形状の表面を含みうる。
図4に、積層板150の非均一表面156においては、ヒータ210の加熱表面400と積層板150の表面156との間の距離が変動しうることを示す。これは、ヒータ210が
図4に示すように完全に平らに/水平に保持されたとしても、同じことが言える。したがって、ヒータ210を点/位置157において表面156からの距離D1に示したが、ヒータ210は、点/位置158において表面156からもっと短い距離D2にある。これにより、放射熱が距離の二乗関数だけ低下するため、問題になる。したがって、ヒータ210が一定量の熱を加えながら、一定速度で移動して積層板150を通過した場合、点158が過熱する、又は点157が加熱不足になる。AFP機100は、過熱又は加熱不足を減らすために、ヒータ210への電力の量を動的に変動させることによって、この懸案事項に有益に対処する。
【0020】
図5は、AFP機100とともに用いられうる別の構成要素を示すブロック図である。具体的には、
図5に、AFP機100が、メモリ504内のNCプログラム505にしたがって、AFP機100の動作を管理するコントローラ500を含みうることを示す。例えば、コントローラ500のプロセッサ502は、AFP機100の運動学的連鎖510においてアクチュエータ514(例えば回転又は拡張アクチュエータ)の動作を案内するために、NCプログラム505の命令を用いうる。コントローラ500は、命令をアクチュエータ514に送信し、アクチュエータ514からフィードバックを受信するために、インターフェース(I/F)506(例えばイーサネットケーブル、ユニバーサルシリアルバス(USB)ケーブル、米国電気電子学会(IEEE)IEEE 802.11無線プロトコルを用いた送受信機等)を用いうる。このように、トウを分配する、あるいはヘッド200を再配置して新たなコースを開始するために、コントローラ500によって積層板150を通過するようにヘッド200を移動させて、剛性本体512の位置が変更されうる。コントローラ500は例えば、カスタム回路として、プログラムされた命令を実行するプロセッサとして、又はこれらの何らかの組み合わせとして実装され得る。
【0021】
図5に更に、AFP機100が支持体170によって保持されるところを図解し、センサ240と、トウ152を分配するガイド220と、トウ152を圧密化するローラ230とを示す。加熱エレメント212及び加熱表面400も
図5に示す。
図5に更に、トウ152の複数の層154、及び表面156を含む積層板150を示す。
【0022】
パーツ設計ユニット520も
図5に示す。パーツ設計ユニット520は、硬化されて複合部品を形成する積層板150をレイアップするためのレイアップ命令を生成する。パーツ設計ユニット520は、例えばNCプログラム505等のNCプログラムを生成するために用いることができる。パーツ設計ユニット520は、積層板150の表面156の形状(例えば、積層板150に各層が形成された後/される時の積層板150の表面形状)へのアクセスを有する。レイアップの間の積層板150の形状の推測的な知識を前提として、パーツ設計ユニット520は、ヘッドが積層板150上に(例えば層ごとに)トウ152をレイアップする複数の位置の各位置における、ヒータ210から表面156までの距離を予測しうる。パーツ設計ユニット520はしたがって、経路に沿った各位置における加熱表面400と積層板表面156との間の一または複数の予測された距離(例えば、平均予測距離、最長予測距離、及び/又は最短予測距離)を示す距離データ525を生成しうる。
図5に示すように、パーツ設計ユニット520は、プロセッサ522、メモリ524、及びインターフェース(I/F)526(例えば、イーサネット又は無線インターフェース)を含む。
【0023】
AFP機100の動作の例示的な詳細を、
図6~7に関して説明する。具体的には、
図6に、ヒータ210への電力を調整するために既定の距離データを用いる方法を示し、
図7に、ヒータ210への電力を調整するために(例えばセンサ240からの)未処理のセンサデータを用いる方法を示す。
図6において、複合部品は、NCプログラム505の一連の命令として設計されていると仮定する。一式の命令の各命令には、ヘッド200の開始位置、ヘッド200の向き/角度、向きによって示される方向にヘッド200を介して移動するコース、ヘッド200がコースに沿って進むときに、どこでトウ152を分配及び/又は切断すべきかを示す情報が示される。
【0024】
図6は、例示的な実施形態においてヒータ210から積層板150までの距離を示す既定情報に基づいて、ヒータ210への電力を動的に調節する方法600を示すフロー図である。つまり、方法600は、AFP機100を案内するためのNCプログラム(例えばNCプログラム505)に付与された命令に基づいて、ヒータ210から積層板150の表面156までの距離を予測的に決定する。
【0025】
方法600のステップを
図1の(及び
図5に更に示す)AFP機100を参照して説明したが、当業者は方法600が他のシステムで実施され得ることを理解するであろう。本明細書に記載のフロー図のステップは、網羅的なものではなく、図示していない他のステップを含んでもよい。本明細書に記載のステップはまた、他の順序で実施することも可能である。
【0026】
ステップ602において、パーツ設計ユニット520は次に、加熱表面400と積層板表面156とを定義するデータを取得する(ステップ602)。加熱表面400と積層板表面156を定義するデータは、(例えば、コンピュータ支援設計(CAD)ファイルによって示すような)これらの特徴の三次元(3D)モデルを含みうる。この情報に基づいて、パーツ設計ユニット520は、積層板150をレイアップする方法を定義する、あるいはそうでなければ、レイアップの間に加熱表面400と積層板表面156が共有空間/共有座標系内をどのように移動するかを特定するNCプログラムを生成しうる。パーツ設計ユニット520は更に、レイアップの間に加熱表面400が積層板表面156を通過してたどる経路(例えば経路300)を識別しうる(ステップ604)。経路は、ヒータ210が(例えばコースに対応する)積層板表面156を通過して移動するときの、複数の位置におけるヒータ210の位置を定義しうる。経路が既知であれば、パーツ設計ユニット520は、ヘッド200の経路に沿った複数の位置の各位置における、レイアップの間の加熱表面400から積層板表面156までの距離をプログラムで予測する。例えば、多層積層板では、パーツ設計ユニット520は、層をレイアップするためにヘッド200が移動する各コースにおける経路を識別し、各経路に沿った複数の位置の各位置における加熱表面400と積層板表面156との間の一または複数の距離を予測しうる。この距離情報は次に、レイアッププロセスの間ずっと、加熱表面400と積層板表面156との間の距離(例えば平均距離、最短距離、最長距離)がどのくらいになるかを予測的に決定するために、パーツ設計ユニット520によって集められうる。これは
図5において、距離データ525と称される。
【0027】
パーツ設計ユニット520が、AFP機100によって使用されるNCプログラム505を生成した後に、及び/又は距離データ525を取得した後に、AFP機100のコントローラ500はNCプログラム505と距離データ525とを読み出して、両方をメモリ504に記憶させる(ステップ608)。コントローラ500は更に、NCプログラム505にしたがって積層板150を組み立てるために、ヘッド200を再配置するようにアクチュエータ514を案内し、表面156上にトウ152をレイアップするようにヘッド200を案内する(ステップ610)。各層がレイアップされると、積層板150のサイズが大きくなる。
【0028】
経路に沿った複数の位置の各位置において積層板表面156の温度が所望の温度範囲(例えば、下限と上限の間の温度)に達するように動的に制御するために、コントローラ500はレイアップの間に経路内のヒータ200の現在の位置を識別する(ステップ612)。経路に沿った現在の位置は、命令を完了することにおけるAFP機100の進行具合を示す、アクチュエータ514からのフィードバックに加えて、AFP機100によって実施されるNCプログラム505からの命令に基づいて決定されうる。次にコントローラ500は、(レイアップの間に)ヒータ210が現在の位置において積層板表面156を通過して移動する速度を決定する(ステップ614)。ヒータ210によって積層板表面156に加えられる熱の量は、加熱表面400と積層板表面156との間の距離と、積層板表面156の上に加熱表面400がとどまる時間の二乗関数である。したがって、現在の位置でのヒータ210の速度を(例えばアクチュエータ514、ヘッド200からの入力、及び/又はNCプログラム505の命令によって示すように)決定することによって、コントローラ500は、積層板156の位置に加えられる熱の量を調整しうる。ヒータ210の速度は変動しうることに留意されたい。つまり、ヘッド200は、効率的な方法で移動しながらレイアッププロセスを促進するために、コースを開始したときは低速で開始し、最大速度まで増加し、その後コースの終わりで減速しうる。レイアップの間、コントローラ500は、経路内のヒータ210の現在の位置を、ステップ606からの予測された距離のうちの1つに関連付けする(ステップ616)。このように、コントローラ500は、NCプログラム505によって定義される経路内のヒータ210の位置に基づいて、加熱表面400から積層板表面156までの距離を決定する。
【0029】
加熱表面400から積層板表面156までの距離と、レイアップの間にヒータ210が移動する速度との両方に基づいて、ヒータ210によって積層板表面156のある位置に加えられる熱流束の量が決定されうる。したがって、レイアップの間、コントローラ500は、現在の位置と、現在の位置での速度に関連づけられた予測された距離に基づいて、ヒータ210への電力の量(例えば、ヒータ210に印加される電力の量又はヒータ210によって熱として放射される電力の量)を選択する(ステップ616)。例えば、このステップは、距離及び速度に基づく電力の既定値を含む加熱プロファイルにアクセスすることが伴いうる。別の実施例において、このステップは、式に基づいて、ヒータ210に印加される電力を動的に計算することが伴いうる。更に、積層板150を加熱する基準には、望ましい温度の範囲、及び上限と下限が示されうる。
【0030】
積層板150の一部が高温になりすぎた場合、積層板150が固化し始め、(例えば、積層板150が熱硬化性樹脂を含む実施形態において)局所的に硬化してしまうため、望ましくない。したがって、コントローラ500は、積層板150のいかなる部分も上限温度を超えないようにするために、加熱表面400と積層板表面156との間の最短距離(例えば最短の経路の距離)によって、ヒータ210によって加えられる電力の量を制限しうる。これにより積層板表面156の他の部分が、所望の下限温度未満のまま保たれることになっても、これを実施することは可能である。ヒータ210が経路に沿って進むときにステップ612~616を引き続き繰り返すことができ、これにより表面156が複数の位置の各位置で均一に加熱され、トウがレイアップされたときに留められやすくなりうる。
【0031】
図7に、ヒータ210によって積層板150に加えられる熱の量を動的に調節するための代替方法700を示す。具体的には、方法700は、ヘッド200が、ヒータ210と積層板150との間の距離を追跡するためのセンサ240を含む実施形態に注目する。この実施形態においては、AFP機100がNCプログラム505にしたがってトウ152を能動的にレイアップしていると仮定する。ヘッド200が、コントローラ500によって設定された所望の(及び変動する)速度でNCプログラム505によって定義された経路に沿って移動し続けるときに、コントローラ500がセンサ240から距離データを取得する。この実施形態では、距離データは、ヘッド200が移動する経路に沿った特定位置におけるセンサ240から積層板表面156までの一または複数の距離の測定を含む。例えば
図8に示すように、距離D1、D2、及びD3を決定するために、各センサ240によって距離が取得されうる。距離データは、ある時間にわたって経路300に沿った複数の位置(例:L1、L2,L3)の各位置において取得することができ、各位置における距離データを処理して、各測定距離を、加熱表面400と積層板表面156との間の距離に変換することができる。例えば、センサ240が加熱表面400からずれている、あるいは特定の方法で角度をなす場合、コントローラ500は距離データを変換して、加熱表面400と積層板表面156との間の距離を正確に示すことができる。
【0032】
この距離データは更に、加熱表面400と積層板表面156との間の平均距離(例:中間又は中央)、最短距離、及び/又は最長距離を決定するために、コントローラ500によって解析され及び/又は処理されうる。コントローラ500は更に、例えばアクチュエータ514からの入力及び/又はNCプログラム505の命令に基づいて、ヒータ210が積層板150を通過して移動する速度を決定する(ステップ706)。その後、コントローラ500は、速度及び距離に基づいてヒータ210への電力の量を選択する(ステップ708)。このプロセスは、
図6のステップ616と同様のやり方で実施されうる。
【0033】
方法600及び700を用いて、加熱されている積層板の表面形状の変化を考慮するために、AFP機のヒータによって加えられる熱の量が有益に動的に調整されうる。これにより、積層板に対するヒータの距離と速度が徐々に変化する状況においても、積層板が均一に加熱されるようになる。これによりさらに、硬化が局所的に始まる時点まで積層板150が過熱されることをなくすことができる。
【実施例】
【0034】
以下の実施例において、追加のプロセス、システム及び方法を、AFP機100によって用いられうる電力/加熱プロファイルに照らして説明する。具体的には、
図9~11は、
図2の加熱エレメント212への電力の量を調整するために用いられうる電力プロファイルを示す実施例である。したがって、本明細書に記載される電力プロファイルは、コントローラ500が、加熱表面400と積層板表面156との間の距離に関わらず、積層板150に既定の熱の量を加える、あるいは積層板150を既定温度まで加熱する電力の量を選択するように、コントローラ500によって用いられうる。
【0035】
図9に、例示的な実施形態の電力プロファイル(910、920)を示す。具体的には、
図9に、各電力プロファイル(910、920)がヒータ210の異なる速度範囲に関連付けられ、各電力プロファイル(910、920)が加熱表面400から積層板表面156までの距離に基づいて、ヒータ210に供給される電力の量の既定値を含む実施形態を示す。
【0036】
図10~11は、例示的な実施形態の、様々な温度及び距離における電力プロファイルを示すグラフである。
図10の電力プロファイル1000は、加熱表面400と、積層板表面156との間の長距離に対応する。電力プロファイル1000は、
図9に示す電力プロファイルとは電力プロファイル1000が複数の区分線形関数1010及び1020を含むところが異なっており、各区分線形関数は、種々の所望のターゲット温度に対応し、速度の関数に基づくものであるプロファイル1000は更に、ヒータ210の速度に基づく遮断領域を含み、特定の速度レベル未満では、ヒータ210に電力が供給されないようになっている。これにより、低速では、ヒータ210は積層板150を硬化させる累計量の熱を加えることはない。
図10と同様に、
図11に、加熱表面400と積層板表面156との間の短距離に対応し、区分関数1110及び1120を更に含む電力プロファイル1100を示す。
図11の遮断領域は、大きな速度範囲に対応し、更に、線形関数1110及び1120は急こう配を呈し、これにより電力は速度の関数としてより急速に増加する。別の実施形態では、積層板150が意図せずに硬化することを防ぐために、加熱表面400から積層板表面156までの最短距離に基づいて、ヒータ210への電力が選択される/(例えば所望のレベル未満に)制限される。このように、加熱エレメント212に供給される電力は、加熱表面400と積層板表面156との間の最短距離に基づいて制限されうる。
【0037】
本開示の実施形態は、図面を更に具体的に参照しながら、
図12に示す航空機の製造及び保守方法1200、及び
図13に示す航空機1202に照らして説明され得る。製造前の段階では、例示的な方法1200は、航空機1202の仕様及び設計1204と、材料の調達1206とを含み得る。製造段階では、航空機1202の、構成要素及びサブアセンブリの製造1208とシステムインテグレーション1210とが行われる。その後、航空機1202は、認可及び納品1212を経て、運航1214に供され得る。顧客による運航中、航空機1202には、(改造、再構成、改修なども含み得る)定期的な整備及び保守1216が予定されている。本明細書で具現化される装置及び方法は、製造及び保守方法1200(例えば、仕様及び設計1204、材料の調達1206、構成要素及びサブアセンブリの製造1208、システムインテグレーション1210、認可及び納品1212、運航1214、整備及び保守1216)及び/又はいずれかの好適な航空機1202の構成要素(例えば、機体1218、システム1220、内装1222、推進1224、電気1226、油圧1228、環境1230)のいずれかの一または複数の好適な段階に用いられうる。
【0038】
方法1200の各プロセスは、システムインテグレータ、第三者、及び/またはオペレータ(例えば顧客)によって実施され、または実行され得る。本明細書の目的のために、システムインテグレータとは、限定しないが、任意の数の航空機製造者及び主要システムの下請業者を含んでもよく、第三者とは、限定しないが、任意の数のベンダー、下請業者、及び供給業者を含んでもよく、オペレータとは、航空会社、リース会社、軍事団体、サービス機関などであってもよい。
【0039】
図13に示すように、例示的な方法1200によって製造された航空機1202は、複数のシステム1220及び内装1222を備えた機体1218を含み得る。高レベルのシステム1220の例には、推進システム1224、電気システム1226、油圧システム1228、及び環境システム1230のうちの一又は複数が含まれる。任意の数の他のシステムが含まれてよい。航空宇宙産業の例を示したが、本発明の原理は、自動車産業などの他の産業にも適用されうる。
【0040】
上述したように、本明細書中で具現化される装置及び方法は、製造及び保守方法1200の任意の一又は複数の段階において用いられうる。例えば、製造段階1208に対応する構成要素又はサブアセンブリは、航空機1202の運航期間中に製造される構成要素又はサブアセンブリと類似の方法で作製又は製造されうる。また、一又は複数の装置の実施形態、方法の実施形態、又はそれらの組み合わせは、例えば、航空機1202の組立てを実質的に効率化するか、又は航空機1202のコストを削減することにより、製造段階1208及び1210で利用されうる。同様に、装置の実施形態、方法の実施形態、或いはそれらの組み合わせのうちの一又は複数を、航空機1202の運航中に、例えば限定しないが、整備及び保守1216に利用することができる。例えば、本明細書に記載される技術及びシステムは、ステップ1206、1208、1210、1214、及び/又は1216で使用され、及び/又は機体1218及び/又は内装1222において使用されうる。これらの技術及びシステムは、例えば、推進1224、電気1226、油圧1228、及び/又は環境1230を含むシステム1220に対してさえも用いることが可能である。
【0041】
一実施形態では、AFP機100は、構成要素及びサブアセンブリの製造1208の間に、硬化されて機体の一部からなる複合部品を形成する積層板をレイアップする。この構成部品は次に、システムインテグレーション1210において組み立てられて航空機が形成され、その後摩耗によりこの部品が使用不能となるまで運航1214において用いられうる。その後、整備及び保守1216において、部品が廃棄され、AFP機100によってレイアップされた新たに製造された部品に置き換えられうる。ヒータ210は、AFP機100によって実施されるレイアップを促進するために、構成要素及びサブアセンブリの製造1208の間ずっと用いられうる。
【0042】
図示され、又は本明細書に記載される様々な制御エレメント(例えば、電気部品又は電子部品)のうちの任意のものが、ハードウェア、プロセッサが実装するソフトウェア、プロセッサが実装するファームウェア、又はこれらの何らかの組み合わせとして実装され得る。例えば、あるエレメントは専用ハードウェアとして実装され得る。専用ハードウェアエレメントは、「プロセッサ」、「コントローラ」、又は同様の何らかの専門用語で称されうる。プロセッサによって提供される場合、単一の専用プロセッサによって、単一の共有プロセッサによって、又はそのうちの幾つかが共有となりうる複数の個別のプロセッサによって機能が提供されうる。更に、「プロセッサ」又は「コントローラ」という用語の明示的な使用は、ソフトウェアの実行が可能なハードウェアのみを表わすと解釈されるべきでなく、限定するものではないが、デジタル信号プロセッサ(DSP)ハードウェア、ネットワークプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、もしくは他の回路、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、ソフトウェア記憶用のリードオンリメモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、不揮発性ストレージ、ロジックもしくは何らかの他の物理的ハードウェアコンポーネントもしくはモジュールなどを黙示的に含みうる。
【0043】
また、制御エレメントは、そのエレメントの機能を実施するためにプロセッサ又はコンピュータによって実行可能な命令として実装されうる。命令の幾つかの例は、ソフトウェア、プログラムコード、及びファームウェアである。命令は、そのエレメントの機能を実施するようにプロセッサに指示するためにプロセッサによって実行されるときに動作可能である。命令は、プロセッサが読むことができる記憶装置に記憶されうる。記憶装置の幾つかの例は、デジタルもしくはソリッドステートメモリ、磁気ディスク及び磁気テープなどの磁気記憶媒体、ハードドライブ、又は光学式可読デジタルデータ記憶媒体である。
【0044】
本発明はまた、特許請求の範囲と混同すべきではない下記の条項にも表される。
【0045】
A1.方法であって、
レイアップの間に加熱表面が積層板表面の上を移動する経路に沿った複数の位置の各位置における、自動繊維配置(AFP)機のヒータの加熱表面から、AFP機によってレイアップされている積層板の表面までの予測された距離を示す距離データを読み出すこと(606,608)と、
数値制御(NC)プログラムにしたがって積層板をレイアップするように、AFP機を案内すること(610)と、
レイアップの間に、経路内のヒータの現在の位置を識別すること(612)と、
現在の位置において、AFP機のヒータが移動する速度を決定すること(614)と、
ヒータの現在の位置を、予測された距離のうちの1つに関連付けすること(616)と、
現在の位置に関連付けされた予測された距離と、現在の位置における速度に基づいて、現在の位置における、レイアップの間のヒータへの電力の量を調節すること(618)と
を含む方法。
【0046】
A2.ヒータの加熱表面を定義するデータを取得すること(602)と、
積層板表面を定義するデータを取得すること(602)と、
加熱表面が積層板表面の上を移動する経路を決定すること(604)と、
経路に沿った複数の位置の各位置における、加熱表面から積層板表面までの距離を予測すること(606)と、
予測された距離を距離データとしてメモリに記憶させることと
を更に含む、段落A1に記載の方法も提供される。
【0047】
A3.ある位置における加熱表面から積層板表面までの平均距離を識別することと、
平均距離に基づいて電力の量を選択することと
を更に含む、段落A1に記載の方法も提供される。
【0048】
A4.その位置における加熱表面から積層板表面までの最短距離を識別することと、
最短距離に基づいて電力の量を選択することと
を更に含む、段落A1に記載の方法も提供される。
【0049】
A5.加熱表面と積層板表面との間の距離に関わらず、積層板表面に既定量の熱を加えるために電力の量の調節が実施される、段落A1に記載の方法も提供される。
【0050】
A6.加熱表面と積層板表面との間の距離に関わらず、積層板表面を既定温度まで加熱するために電力の量の調節が実施される、段落A1に記載の方法も提供される。
【0051】
本発明のさらなる態様によれば、下記が提供される。
【0052】
B1.システムであって、
積層板(150)をレイアップする自動繊維配置(AFP)機(100)を備え、
AFP機(100)は、
ヘッド(200)であって、
構成材料のトウ(152)を積層板上に分配するガイド(220)と、
トウが積層板上に分配される前に積層板を加熱するヒータ(212)と
を備えるヘッド(200)と、
レイアップの間に加熱表面が積層板表面の上を移動する経路(300)に沿った複数の位置の各位置において、ヒータの加熱表面(400)から積層板の表面(156)までの予測された距離を示す距離データ(525)を読み出し、数値制御(NC)プログラムにしたがって積層板をレイアップするようにAFP機を案内し、レイアップの間に経路内のヒータの現在の位置(L1)を識別し、AFP機のヒータが現在の位置において移動する速度を決定し、ヒータの現在の位置を予測された距離のうちの1つと関連付けし、現在の位置と関連付けられた予測された距離と、現在の位置における速度に基づいて、現在の位置におけるレイアップの間のヒータへの電力の量を調節するコントローラ(500)と
を備える、システム。
【0053】
B2.パーツ設計ユニット(520)であって、
メモリ(520)と、
AFP機を案内するためのNCプログラムを生成し、加熱表面が積層板表面の上を移動する経路を決定し、経路に沿った複数の位置の各位置における加熱表面から積層板表面までの距離を予測し、予測された距離を距離データとしてメモリに記憶させるプロセッサ(522)と
を備えるパーツ設計ユニット(520)
を更に備える、段落B1に記載のシステムも提供される。
【0054】
B3.コントローラが、その位置における加熱表面から積層板表面までの平均距離を識別し、平均距離に基づいて電力の量を選択する、段落B1に記載のシステムも提供される。
【0055】
B4.コントローラが、その位置における加熱表面から積層板表面までの最短距離を識別し、最短距離に基づいて電力の量を選択する、段落B1に記載のシステムも提供される。
【0056】
B5.コントローラが、加熱表面と積層板表面との間の距離に関わらず積層板表面に既定量の熱を加えるために、電力の量を調節する、段落B1に記載のシステムも提供される。
【0057】
B6.コントローラが、加熱表面と積層板表面との間の距離に関わらず積層板表面を既定温度まで加熱するために、電力の量を調節する、段落B1に記載のシステムも提供される。
【0058】
B7.AFP機は更に、積層板上にトウを圧密化する圧密化ローラ(230)を備える、段落B1に記載のシステムも提供される。
【0059】
本発明のさらなる態様によれば、下記が提供される。
【0060】
C1.方法であって、
少なくとも1つのセンサから距離データを取得すること(702)と、
距離データに基づいて、ある位置における自動繊維配置(AFP)機のヒータの加熱表面からAFP機によってレイアップされている積層板の表面までの距離を決定すること(704)と、
積層板の上のヒータの速度を決定すること(706)と、
その位置における距離及び速度に基づいてヒータへの電力の量を調節すること(708)と
を含む方法。
【0061】
C2.距離データに基づいて、その位置における加熱表面から積層板表面までの平均距離を識別することと、
平均距離に基づいて電力の量を選択することと
を更に含む、段落C1に記載の方法も提供される。
【0062】
C3.距離データに基づいて、その位置における加熱表面から積層板表面までの最短距離を識別することと、
最短距離に基づいて電力の量を選択することと
を更に含む、段落C1に記載の方法も提供される。
【0063】
C4.加熱表面と積層板表面との間の距離に関わらず、積層板表面に既定量の熱を加えるために電力の量の調節が実施される、段落C1に記載の方法も提供される。
【0064】
C5.加熱表面と積層板表面との間の距離に関わらず、積層板表面を既定温度まで加熱するために電力の量の調節が実施される、段落C1に記載の方法も提供される。
【0065】
本発明のさらなる態様によれば、下記が提供される。
【0066】
D1.AFP機(100)を備えるシステムであって、
AFP機(100)は、
ヘッド(200)であって、
構成材料のトウ(152)を積層板(150)上に分配するガイド(220)と、
トウが積層板上に分配される前に積層板の表面(156)を加熱するヒータ(212)と、
距離データを提供する少なくとも1つのセンサ(240)と
を備えるヘッド200と、
数値制御(NC)プログラムにしたがって積層板をレイアップするようにAFP機を案内し、レイアップの間にAFP機のヒータが移動する速度を決定し、少なくとも1つのセンサからの距離データに基づいて、ある位置における加熱表面から積層板表面までの距離を決定し、その位置における距離と速度に基づいてヒータへの電力の量を調節するコントローラ(500)と
を備える、システム。
【0067】
D2.コントローラが、距離データに基づいてその位置における加熱表面から積層板表面までの平均距離を識別し、平均距離に基づいて電力の量を調節する、段落D1に記載のシステムも提供される。
【0068】
D3.コントローラが、距離データに基づいてその位置における加熱表面から積層板表面までの最短距離を識別し、最短距離に基づいて電力の量を選択する、段落D1に記載のシステムも提供される。
【0069】
D4.コントローラが、加熱表面と積層板表面との間の距離に関わらず積層板表面を既定温度まで加熱するために、電力の量を調節する、段落D1に記載のシステムも提供される。
【0070】
D5.コントローラが、加熱表面と積層板表面との間の距離に関わらず積層板を既定温度まで加熱するために、電力の量を調節する、段落D1に記載のシステムも提供される。
【0071】
D6.積層板上にトウを圧密化する圧密化ローラ(230)を更に備える、段落D1に記載のシステムも提供される。
【0072】
特定の実施形態が本明細書に記載されたが、本開示の範囲はそれら特定の実施形態に限定されるものではない。本開示の範囲は、下記の特許請求の範囲及びその全ての均等物によって規定されるものである。