IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ミルボンの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-10
(45)【発行日】2022-08-19
(54)【発明の名称】毛髪用組成物及び毛髪処理方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/41 20060101AFI20220812BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20220812BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20220812BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20220812BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20220812BHJP
   A61K 8/55 20060101ALI20220812BHJP
   A61Q 5/12 20060101ALI20220812BHJP
【FI】
A61K8/41
A61K8/34
A61K8/86
A61K8/73
A61K8/81
A61K8/55
A61Q5/12
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017175228
(22)【出願日】2017-09-12
(65)【公開番号】P2019052097
(43)【公開日】2019-04-04
【審査請求日】2020-09-11
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】592255176
【氏名又は名称】株式会社ミルボン
(74)【代理人】
【識別番号】100111187
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 秀忠
(72)【発明者】
【氏名】山中 良介
(72)【発明者】
【氏名】前田 貴章
(72)【発明者】
【氏名】森崎 愛美
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-155034(JP,A)
【文献】Skinfood, South Korea,Moisture Egg Hair Pack,Mintel GNPD [online],2014年01月,Internet <URL:https://portal.mintel.com>,ID#2282088, [検索日:2022.1.14], 製品詳細, 製品情報
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/KOSMET(STN)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)~(E)成分が配合された毛髪用組成物であって、さらに下記(F)成分及び/又は下記(G)成分が配合された毛髪用組成物。
(A)成分:カチオン界面活性剤
(B)成分:高級アルコール
(C)成分:高重合ポリエチレングリコール
(D)成分:ヒアルロン酸及び/又はその塩
(E)成分:ヒドロキシアルキルセルロース及び/又はポリクオタニウム-53
(F)成分:リン酸トリアルキル
(G)成分:ヒドロキシプロピルデンプンリン酸及び/又はその塩
【請求項2】
前記(F)成分が配合されており、前記(F)成分の配合量が0.01質量%以上5質量%以下である請求項1に記載の毛髪用組成物。
【請求項3】
前記(G)成分が配合されており、前記(G)成分の配合量が0.01質量%以上5質量%以下である請求項1または2に記載の毛髪用組成物。
【請求項4】
洗い流されるトリートメントとして用いられる請求項1~のいずれか1項に記載の毛髪用組成物。
【請求項5】
請求項1~のいずれか1項に記載の毛髪用組成物を用いた毛髪処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪用組成物及び当該毛髪用組成物を用いた毛髪処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種の成分が配合された毛髪用組成物が毛髪の状態改善を目的として提供されている。上記の毛髪用組成物の一例として、高重合ポリエチレングリコールなどを含有するヘアコンディショニング組成物によって指通りが良くしなやかで柔軟性のある優れた仕上がりになる技術(特許文献1)や、ヒアルロン酸ナトリウム等のグリコサミノグリカン類などを含有する毛髪処理用組成物によって毛髪の状態改善(引っ張り強度の増加、毛髪のうるおい感の向上等)を行い、組成物の保存安定性を向上させる技術(特許文献2)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-72628号公報
【文献】特開2008-297294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、毛髪はヘアカラー等の化学的損傷や摩擦等の物理的損傷を受けることで、損傷による状態変化が生じ、特に毛先のまとまりが悪化することがあった。しかし、上記特許文献1、2の提案には、毛先のまとまりの向上についての開示はなく、毛先のまとまりを向上させる新たな技術の提案が望まれている。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑み、毛髪の毛先のまとまりを向上させた毛髪用組成物の提供を目的とする。また、当該毛髪用組成物を用いた毛髪処理方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等が鋭意検討を行った結果、カチオン界面活性剤((A)成分)、高級アルコール((B)成分)、高重合ポリエチレングリコール((C)成分)及びヒアルロン酸及び/又はその塩((D)成分)が配合された毛髪用組成物において、さらにヒドロキシアルキルセルロース及び/又はポリクオタニウム-53((E)成分)を配合すれば、毛髪の毛先のまとまりが向上するとの知見を得て、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明に係る毛髪用組成物は、下記(A)~(E)成分が配合された毛髪用組成物である。
(A)成分:カチオン界面活性剤
(B)成分:高級アルコール
(C)成分:高重合ポリエチレングリコール
(D)成分:ヒアルロン酸及び/又はその塩
(E)成分:ヒドロキシアルキルセルロース及び/又はポリクオタニウム-53
【0008】
本発明の毛髪用組成物に、リン酸トリアルキル((F)成分)が配合されることで、毛先のまとまりがより優れたものとなる。
【0009】
本発明の毛髪用組成物に配合される(F)成分の配合量は、例えば、0.01質量%以上5質量%以下である。
【0010】
本発明の毛髪用組成物に、ヒドロキシプロピルデンプンリン酸及び/又はその塩((G)成分)が配合されることで、毛髪表面のざらつきを低減できる。
【0011】
本発明の毛髪用組成物に配合される(G)成分の配合量は、例えば、0.01質量%以上5質量%以下である。
【0012】
本発明の毛髪用組成物は、例えば、洗い流されるトリートメントとして用いられるものである。
【0013】
本発明の毛髪用組成物を用いた毛髪処理方法によれば、処理後の毛髪における毛先のまとまりが向上する。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る毛髪用組成物によれば、毛髪の毛先のまとまりを向上させることができる。
また、本発明の毛髪用組成物を用いた毛髪処理方法は、処理後の毛髪における毛先のまとまりに優れる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、毛髪用組成物および毛髪用組成物を用いた毛髪処理方法について、例を挙げつつ具体的に説明するが、これらの記載は本発明を限定するものではない。
【0016】
本実施形態に係る毛髪用組成物は、カチオン界面活性剤((A)成分)、高級アルコール((B)成分)、高重合ポリエチレングリコール((C)成分)、ヒアルロン酸及び/又はその塩((D)成分)、並びに、ヒドロキシアルキルセルロース及び/又はポリクオタニウム-53((E)成分)と水が配合されたものである(水の配合量は、例えば60質量%以上)。
なお、「及び/又は」とは、両方或いはいずれか一方をいう。
【0017】
<(A)成分:カチオン界面活性剤>
本実施形態の毛髪用組成物は、(A)成分であるカチオン界面活性剤が1種又は2種以上配合されたものである。本実施形態の毛髪用組成物にカチオン界面活性剤が配合されることで、毛髪に柔軟性を与える。
【0018】
上記カチオン界面活性剤としては、例えば、モノ長鎖アルキル型4級アンモニウム塩、ジ長鎖アルキル型4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム型4級アンモニウム、アルコキシアルキルトリメチルアンモニウム塩、脂肪酸アミドアミン等が挙げられる。なお、上記「長鎖アルキル」とは、炭素数が8以上の直鎖状又は分枝状のアルキル基を意味し、その炭素数が16以上22以下であると皮膚への刺激の抑制や毛髪に優れた柔軟性を付与する点から好ましい。
【0019】
上記モノ長鎖アルキル型4級アンモニウム塩としては、例えば、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、臭化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ステアロキシプロピルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、メチル硫酸アルキルトリメチルアンモニウム塩(メチル硫酸ベヘニルトリメチルアンモニウムなど)等が挙げられる。
【0020】
上記ジ長鎖アルキル型4級アンモニウム塩としては、例えば、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ジココイルジメチルアンモニウム、塩化ジセチルジメチルアンモニウム、塩化ジアルキル(C12-18)ジメチルアンモニウム(ジアルキルの後の括弧内の数値は、アルキルの炭素数を意味している)などが挙げられる。
【0021】
上記ベンザルコニウム型4級アンモニウムとしては、例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウムなどが挙げられる。
【0022】
上記アルコキシアルキルトリメチルアンモニウム塩としては、塩化ステアロキシプロピルトリメチルアンモニウムなどが挙げられる。
【0023】
上記脂肪酸アミドアミンとしては、ミリスチン酸ジメチルアミノプロピルアミド、パルミチン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ベヘン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ミリスチン酸ジエチルアミノエチルアミド、パルミチン酸ジエチルアミノエチルアミド、ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド、ベヘン酸ジエチルアミノエチルアミド、ミリスチン酸ジエチルアミノプロピルアミド、パルミチン酸ジエチルアミノプロピルアミド、ステアリン酸ジエチルアミノプロピルアミド、ベヘン酸ジエチルアミノプロピルアミド等が挙げられる。
【0024】
カチオン界面活性剤の配合量は、毛髪に優れた柔軟性を与える観点から、0.5質量%~4質量%が好ましく、1質量%~3.5質量%がより好ましく、1.5質量%~3質量%がさらに好ましい。
【0025】
<(B)成分:高級アルコール>
本実施形態の毛髪用組成物は、(B)成分である高級アルコールが1種又は2種以上配合されたものである。本実施形態の毛髪用組成物に高級アルコールが配合されることで、毛髪にしっとりとした感触を付与できる。
【0026】
本実施形態の高級アルコールとは、炭素数が12以上22以下の1価アルコールを意味する。
上記炭素数が12以上22以下の1価アルコールの具体例としては、例えば、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコールなどの直鎖状の飽和アルコール;イソステアリルアルコール、オクチルドデカノールなどの分岐状の飽和アルコール;オレイルアルコールなどの不飽和アルコール;などが挙げられる。
【0027】
高級アルコールの配合量は、毛髪へのしっとりとした感触の付与が優れたものとなる観点から、2質量%~12質量%が好ましく、3質量%~10質量%がより好ましく、3.5質量%~9質量%がさらに好ましい。
【0028】
<(C)成分:高重合ポリエチレングリコール>
本実施形態の毛髪用組成物は、(C)成分の高重合ポリエチレングリコール(以下において、「ポリエチレングリコール」を「PEG」と称することがある。)が1種又は2種以上配合されたものである。本実施形態の毛髪用組成物に高重合ポリエチレングリコールが配合されることで、毛髪の指通りを向上できる。
【0029】
本実施形態における高重合ポリエチレングリコールは、次に示す式(1)で表される酸化エチレンの重合体であり、nの平均値(以下、平均重合度と表す)が2000以上のものを意味する。
【化1】
【0030】
本実施形態の高重合ポリエチレングリコールの平均重合度は、例えば、2000以上120000以下である。
【0031】
本実施形態の高重合ポリエチレングリコール(高重合PEG)としては、例えば、平均重合度2000の高重合PEG(表示名称:PEG-2M)、平均重合度5000の高重合PEG(表示名称:PEG-5M)、平均重合度7000の高重合PEG(表示名称:PEG-7M)、平均重合度9000の高重合PEG(表示名称:PEG-9M)、平均重合度14000の高重合PEG(表示名称:PEG-14M)、平均重合度20000の高重合PEG(表示名称:PEG-20M)、平均重合度23000の高重合PEG(表示名称:PEG-23M)、平均重合度45000の高重合PEG(表示名称:PEG-45M)、平均重合度65000の高重合PEG(表示名称:PEG-65M)、平均重合度90000の高重合PEG(表示名称:PEG-90M)、平均重合度115000の高重合PEG(表示名称:PEG-115M)等が挙げられる。
【0032】
上記高重合ポリエチレングリコールの配合量は、毛髪の指通りの向上に優れる観点から、0.1質量%~2.5質量%が好ましく、0.2質量%~2質量%がより好ましく、0.3質量%~1.5質量%がさらに好ましい。
【0033】
<(D)成分:ヒアルロン酸及び/又はその塩>
本実施形態の毛髪用組成物は、(D)成分であるヒアルロン酸及び/又はその塩が1種又は2種以上配合されたものである。上記ヒアルロン酸及び/又はその塩は、グルクロン酸とN-アセチル-D-グルコサミンが結合したムコ多糖又はその塩であり、毛髪用組成物にヒアルロン酸及び/又はその塩を配合すれば、毛髪に厚み感(コーティングされたような感触)を付与できる。
【0034】
上記ヒアルロン酸の塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられる。
【0035】
ヒアルロン酸及び/又はその塩は、例えば、その1質量%水溶液の粘度が15000mPa・s以上30000mPa・s以下のものを用いることができる。なお、それら1質量%水溶液の粘度については、B型粘度計を用いて、25℃、M4ローター、12rpmの条件で測定開始から60秒後の値が採用される。
【0036】
上記ヒアルロン酸及び/又はその塩の配合量は、毛髪への厚み感の付与が優れたものとなる観点から、0.0005質量%~0.3質量%が好ましく、0.001質量%~0.1質量%がより好ましく、0.003質量%~0.05質量%がさらに好ましい。
【0037】
<(E)成分:ヒドロキシアルキルセルロース及び/又はポリクオタニウム-53>
本実施形態の毛髪用組成物は、(E)成分であるヒドロキシアルキルセルロース及び/又はポリクオタニウム-53が配合されたものである。本実施形態の毛髪用組成物に(E)成分が配合されることで、毛先のまとまりが向上する。
上記ヒドロキシアルキルセルロースは、セルロースのヒドロキシアルキルエーテルである。上記ポリクオタニウム-53は、アクリル酸、アクリルアミド及びメタクリルアミドプロピルトリモニウムクロリドからなる4級アンモニウム塩の共重合体である。
【0038】
上記ヒドロキシアルキルセルロースとしては、例えば、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)などが挙げられる。
【0039】
ヒドロキシアルキルセルロースは、例えば、その1質量%水溶液の粘度が1000mPa・s以上3000mPa・s以下のものを用いることができる。なお、それら1質量%水溶液の粘度については、B型粘度計を用いて、25℃、M3ローター、12rpmの条件で測定開始から60秒後の値が採用される。
【0040】
上記(E)成分の配合量は、毛先のまとまりの向上がより優れたものとなる観点から、0.005質量%~2質量%が好ましく、0.01質量%~1.5質量%がより好ましく、0.03質量%~1質量%がさらに好ましい。
【0041】
(任意成分)
本実施形態の毛髪用組成物に配合される上記(A)~(E)成分以外の任意成分は、公知の毛髪用組成物成分から、この毛髪用組成物の用途、目的に応じて適宜に選定される。
上記の任意成分としては、例えば、アニオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤、低級アルコール、多価アルコール、糖類、エステル油、油脂、脂肪酸、炭化水素、ロウ、シリコーン、高分子化合物、アミノ酸、動植物抽出物、微生物由来物、無機化合物、香料、防腐剤、金属イオン封鎖剤、紫外線吸収剤などが挙げられる。
なお、本実施形態の毛髪用組成物に、任意成分として、リン酸トリアルキル((F)成分)、ヒドロキシプロピルデンプンリン酸及び/又はその塩((G)成分)から選ばれる1種又は2種以上の成分を配合すると良い。
【0042】
<(F)成分:リン酸トリアルキル>
本実施形態の毛髪用組成物には、任意に、(F)成分であるリン酸トリアルキルが配合されたものとすると良い。
本実施形態の毛髪用組成物にリン酸トリアルキルを配合したものを毛髪に用いれば、毛先のまとまりがより優れたものとなる。
【0043】
上記リン酸トリアルキルは、リン酸と炭素数が12以上22以下の1価アルコールとのトリエステルである。
リン酸トリアルキルとしては、例えば、リン酸とセタノールのトリエステル(表示名称:リン酸トリセチル)、リン酸とオレイルアルコールのトリエステル(表示名称:リン酸トリオレイル)、リン酸とステアリルアルコールのトリエステル(表示名称:リン酸トリステアリル)等が挙げられる。
【0044】
上記(F)成分の配合量は、「毛先のまとまり」に優れる点から、0.01質量%~5質量%が好ましく、0.03質量%~3質量%がより好ましく、0.05質量%~2質量%がさらに好ましい。
【0045】
<(G)成分:ヒドロキシプロピルデンプンリン酸及び/又はその塩>
本実施形態の毛髪用組成物には、任意に、(G)成分であるヒドロキシプロピルデンプンリン酸及び/又はその塩が配合されたものとすると良い。
本実施形態の毛髪用組成物にヒドロキシプロピルデンプンリン酸及び/又はその塩を配合したものを毛髪に用いれば、毛髪表面のざらつきを低減できる。
【0046】
上記ヒドロキシプロピルデンプンリン酸及び/又はその塩は、リン酸とデンプンとのジエステルのヒドロキシプロピルエーテル又はその塩を意味する。ヒドロキシプロピルデンプンリン酸の塩の例としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩、トリエタノールアミン塩、トリエチルアミン塩等の有機アミン塩類;リジン塩、アルギニン塩等の塩基性アミノ酸塩;が挙げられる。
【0047】
上記(G)成分の配合量は、「毛髪表面のざらつきの低減」に優れる点から、0.01質量%~5質量%が好ましく、0.05質量%~4質量%がより好ましく、0.1質量%~3質量%がさらに好ましい。
【0048】
(剤型)
本実施形態に係る毛髪用組成物の剤型は、特に限定されず、例えば、液状、乳液状、ローション状、クリーム状、ワックス状、ゲル状が挙げられる。クリーム状であれば、毛髪への塗布を行い易い。
【0049】
上記剤型の形態は、特に限定されないが、例えばO/W型エマルジョン、W/O/W型エマルジョン、W/O型エマルジョンの形態とすることができる。
【0050】
(粘度)
本実施形態の毛髪用組成物の粘度は、特に限定されないが、例えば、10000mPa・s以上40000mPa・s以下である。なお、上記粘度は、B型粘度計を使用し、適宜なローターを用いて、25℃でローター回転数12rpmとして計測したときの、計測開始から60秒後の値を意味している。
【0051】
(pH)
毛髪用組成物のpHは、特に限定されないが、例えば、4~7である。なお、pHの値は25℃における測定値が採用される。
【0052】
(用途)
本実施形態に係る毛髪用組成物の用途は、例えば、トリートメント(例えば、リンス、コンディショナー、洗い流すトリートメント、多剤式トリートメントの一構成剤、パーマの前処理のためのトリートメント、パーマの後処理のためのトリートメント、カラーリングの前処理のためのトリートメント、カラーリングの後処理のためのトリートメント、ブリーチの前処理のためのトリートメント、ブリーチの後処理のためのトリートメント)が挙げられる。
【0053】
(製造方法)
使用時の剤型に応じた公知の毛髪用組成物の製法を採用すれば、本発明の毛髪用組成物を製造できる。
【0054】
(使用方法)
本実施形態に係る毛髪用組成物の使用方法は、シャンプーで洗浄した後の濡れた毛髪に塗布し、塗布した直後又は塗布し一定時間放置した後に洗い流して用いることができる。
【実施例
【0055】
以下、実施例に基づき本発明を詳述するが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるものではない。
【0056】
(毛髪用組成物の調製)
実施例1~10及び比較例1~16の毛髪用組成物(トリートメント)を、表1~3に示す成分と水と混合してそれぞれ調製した。これら、実施例1~10と比較例1~16の毛髪用組成物は、いずれもクリーム状のO/W型エマルジョンであった。
【0057】
(実施例1、2、比較例1~16)
上記で調製した実施例1、2、比較例1~16の毛髪用組成物(トリートメント)を用いて、次に示す毛髪処理及び評価を行った。
【0058】
(毛髪処理)
染毛処理が施され、毛先にダメージを受けている同一人物の日本人毛髪から、根元から毛先までの長さを約20cmにそろえた5.0gの毛束を複数作成した。
上記毛束を0.5gの評価用シャンプーで洗浄し、温水ですすいだ後、濡れた各毛束に対して表1、2に示す実施例又は比較例の毛髪用組成物(トリートメント)をそれぞれ0.5g塗布した。その後、塗布したトリートメントを温水で洗い流し、ドライヤーで毛束を乾燥させた。
【0059】
なお、毛髪処理に用いた評価用シャンプーは、下記濃度とした成分を水と配合した液状のものである。
・ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム(2E.O.) 9質量%
・ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸ナトリウム(4.5E.O.) 1質量%
・ラウロイルメチル-β-アラニンナトリウム 1質量%
・ラウリン酸アミドプロピルベタイン 2質量%
・ミリスタミドプロピルベタイン 2質量%
・ポリオキシプロピレン(1)ヤシ油脂肪酸モノイソプロパノールアミド 3質量%
【0060】
(評価方法)
「毛先のまとまり」の評価方法は、上記毛髪処理後の毛束を用いて、毛束の根元部分を持ち上げ毛先部分を鉛直方向に垂らし、根元から毛先に向かって毛束に指を通して毛束を整えた際の毛先(毛束の先端部分から約5cm)の状態を目視により評価した。
評価パネラー3名に、基準とした毛束に比べて、「毛先が広がらずにまとまっている」、又は、「毛先の広がりの状態が基準と同等」、又は、「毛先が広がってまとまっていない」のいずれかを回答させて、下記の評価基準に従って評点を付けた。
【0061】
(評価基準:毛先のまとまり)
○ :基準とした毛束と比べて、毛先が広がらずにまとまっていると2名以上が回答した。
同等:基準とした毛束と比べて、毛先の広がりの状態が基準と同等と2名以上が回答した。
× :基準とした毛束と比べて、毛先が広がってまとまっていないと2名以上が回答した。
【0062】
(評価結果)
下記表1、表2に、水と配合した成分と共に、実施例1、2、比較例1~16の毛髪用組成物(トリートメント)の評価結果を示す。
なお、下記表1、表2における各成分の数値は質量%であり、「-」の表記は未配合であることを表す。
【0063】
【表1】
【0064】
【表2】
【0065】
表1、2の結果から、(E)成分であるヒドロキシアルキルセルロース及び/又はポリクオタニウム-53が未配合の比較例1に比べて、ヒドロキシエチルセルロースが配合された実施例1及びポリクオタニウム-53が配合された実施例2はいずれも毛先のまとまりに優れることが理解できる。また、上記(E)成分以外の比較成分を配合した比較例2~16は、各比較成分が未配合の比較例1に比べて、毛先のまとまりに劣ることが理解できる。
【0066】
(実施例3~10)
上記で調製した実施例3~10の毛髪用組成物(トリートメント)を用いて、毛髪処理及び評価を行った。なお評価は、「毛先のまとまり」と「ざらつきのなさ」について行った。
【0067】
(毛髪処理及び評価)
上述した実施例1、2、比較例1~16と同様の毛髪処理により、実施例3~10を用いた毛髪処理を行った。
「毛先のまとまり」の評価については、上述した実施例1、2、比較例1~16と同様の評価方法と評価基準により行った。
「ざらつきのなさ」の評価については、上記毛髪処理後の毛束を用いて、根元から毛先に向かって毛束に指を通した際の毛髪表面にざらつきがない感触(毛髪表面が平滑に整っているような感触)を、パネラー3名で基準とした毛束と比べて、毛髪表面のざらつきが「ない」、又は、「基準と同等」、又は、「ある」のいずれかを回答させて、下記の評価基準に従って評点を付けた。
【0068】
(評価基準:ざらつきのなさ)
○ :基準とした毛束と比べて、毛髪表面のざらつきがないと2名以上が回答した。
同等:基準とした毛束と比べて、毛髪表面のざらつきが基準と同等と2名以上が回答した。
× :基準とした毛束と比べて、毛髪表面のざらつきがあると2名以上が回答した。

(評価結果)
下記表3に、水と配合した成分と共に、実施例3~10の毛髪用組成物(トリートメント)の評価結果を示す。
なお、下記表3における各成分の数値は質量%であり、「-」の表記は未配合であることを表す。
【0069】
【表3】
【0070】
表3の結果から、(F)成分(リン酸トリアルキル)が未配合の実施例3に比べて、リン酸トリセチルが配合された実施例4は、毛先のまとまりに優れることが理解できる。また、上記(G)成分が未配合の実施例3に比べて、ヒドロキシプロピルデンプンリン酸が配合された実施例5~7は、ざらつきのなさに優れることが理解できる。
ここで、上記(F)成分と上記(G)成分以外の成分であるカオリンが配合された実施例8、パントテン酸カルシウムが配合された実施例9、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット(60E.O.)が配合された実施例10は、それらの成分が未配合の実施例3に比べて、ざらつきのなさと毛先のまとまりに劣ることが理解できる。