(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-10
(45)【発行日】2022-08-19
(54)【発明の名称】電離放射線硬化性樹脂組成物、及びこれを用いたガスバリア層の保護膜、並びに、これらを用いた積層ガスバリア性フィルム
(51)【国際特許分類】
C08F 2/46 20060101AFI20220812BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20220812BHJP
B32B 27/16 20060101ALI20220812BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20220812BHJP
C08L 33/04 20060101ALI20220812BHJP
【FI】
C08F2/46
B32B27/00 B
B32B27/16 101
B32B27/20 Z
C08L33/04
(21)【出願番号】P 2017236867
(22)【出願日】2017-12-11
【審査請求日】2020-09-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000125978
【氏名又は名称】株式会社きもと
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100118991
【氏名又は名称】岡野 聡二郎
(72)【発明者】
【氏名】千葉 弘之介
【審査官】宮内 弘剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-143550(JP,A)
【文献】特開2013-043384(JP,A)
【文献】特開2016-185705(JP,A)
【文献】特開2018-080251(JP,A)
【文献】特開2012-171291(JP,A)
【文献】特開2007-290369(JP,A)
【文献】特開2011-200780(JP,A)
【文献】特開2012-172110(JP,A)
【文献】特開2007-016145(JP,A)
【文献】特開平06-256444(JP,A)
【文献】特開2017-105877(JP,A)
【文献】特開平01-168772(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F2/00-2/60
B32B1/00-43/00
C09D1/00-10/00
C09D101/00-201/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸価が120(mgKOH/g)以上400(mgKOH/g)以下であり且つ分子量が80~900の粘着促進剤と、
電離放射線硬化性マトリックス形成材料(但し、前記粘着促進剤に該当するものは除く。)と、
無機充填剤と、
を少なくとも含有し、
前記粘着促進剤が、カルボキシル基を含有する単官能(メタ)アクリレート、カルボキシル基を含有する単官能ウレタン(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイル基を有するスルホン酸エステル、及び(メタ)アクリロイル基を有するリン酸エステルよりなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記無機充填剤が、シリカを含有し、
前記粘着促進剤が、前記粘着促進剤及び前記電離放射線硬化性マトリックス形成材料の合計100質量部に対して、
1.5~20質量%含まれ、
前記電離放射線硬化性マトリックス形成材料が、前記粘着促進剤及び前記電離放射線硬化性マトリックス形成材料の合計100質量部に対して、80~98.5質量%含まれ、
硬化後の硬化物の乾燥質量1g当たりの酸価が20(mgKOH/g)以上50(mgKOH/g)以下である、
ガスバリア層保護膜用電離放射線硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記シリカの含有割合が、固形分の総量に対して、合計で35質量%以上、80質量%以下である、
請求項1に記載のガスバリア層保護膜用電離放射線硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
硬化後の前記硬化物の乾燥質量1g当たりの前記酸価が20(mgKOH/g)以上45(mgKOH/g)以下である、
請求項1又は2に記載のガスバリア層保護膜用電離放射線硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載のガスバリア層保護膜用電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物からなる、
ガスバリア層の保護膜。
【請求項5】
ガスバリア層、及び前記ガスバリア層上に設けられた保護層を少なくとも備え、
前記保護層は、
請求項1又は2に記載のガスバリア層保護膜用電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物であり、
前記保護層は、乾燥質量1g当たりの酸価が20(mgKOH/g)以上50(mgKOH/g)以下である、
積層ガスバリア性フィルム。
【請求項6】
前記ガスバリア層が、水蒸気バリア層である、
請求項5に記載の積層ガスバリア性フィルム。
【請求項7】
前記ガスバリア層は、1×10
-1g/m
2・day未満の水蒸気透過率(MOCON法、JIS K7129準拠、40℃及び90%RH)を有する、
請求項6に記載の積層ガスバリア性フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電離放射線硬化性樹脂組成物、及びこれを用いたガスバリア層の保護膜、並びに、これらを用いた積層ガスバリア性フィルム等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プラスチック基板やフィルムの表面に、酸化珪素、窒化珪素、酸窒化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム等の無機化合物の薄膜を形成することによりガスバリア性を付与したガスバリア性フィルムが知られている。この種のガスバリア性フィルムは、水蒸気や酸素等のガスによる物品の変質を防止するために、例えば食品、化粧品、医薬品等の物品の密封包装容器において使用されてきた。
【0003】
近年、このような水蒸気や酸素等の透過を防ぐガスバリア性フィルムが、光電変換素子や太陽電池(PV)の他、電子ペーパーや液晶ディスプレイ(LCD)や有機ELディスプレイ(OELD)等のフラットパネルディスプレイ(FPD)等の電子デバイスの分野においても利用されつつある。これらの電子デバイスは水分等の影響を特に受けやすく、液晶層や発光層の性能劣化が引き起こされ易いことから、これらの電子デバイスの保護に用いられるガスバリア性フィルムには、食品や医薬品等の密封包装に使用されるガスバリア性フィルムに比べて、より高いガスバリア性(遮断性)が求められる。
【0004】
この種のガスバリア性フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の基材上に、ガスバリア層として酸化珪素等の無機化合物の無機薄膜や熱硬化性樹脂等の有機薄膜を形成したものが広く知られている。ガスバリア層の形成方法としては、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法等の物理気相成長法(PVD:Physical Vapor Deposition)、減圧化学気相成長法、プラズマ化学気相成長法等の化学気相成長法(CVD:Chemical Vapor Deposition)、各種コーティング法等が知られている。
【0005】
また、酸化珪素等の無機化合物膜のガスバリア層は、比較的に硬く脆いため、ガスバリア層の傷の発生を防止し或いは溶剤等によるガスバリア層の剥離を防止し、又は取扱性を向上させる等の観点から、ガスバリア層上に保護層がさらに設けられる場合がある。例えば、有機ELディスプレイ等に使用される場合、ガスバリア層上に保護層を設け、さらにこの保護層上に透明導電膜を形成し、エッチング等でパターニングして回路が構成される。
【0006】
このような保護層が設けられた積層ガスバリア性フィルムとして、特許文献1には、基材フィルムと、該基材フィルムの少なくとも一方の面に設けられた平滑表面を有するバリア性蒸着層と、該バリア性蒸着層に積層された平滑表面を有する耐酸性の保護層と、を備え、酸素透過率が0.1cc/m2/day・atm以下であり、水蒸気透過率が0.1g/m2/day以下であり、前記バリア性蒸着層はインジウム亜鉛酸化物からなり、該インジウム亜鉛酸化物におけるインジウム(In)と亜鉛(Zn)の原子比は、In/(In+Zn)が0.5~0.8の範囲であり、前記保護層の耐酸性は、塩酸:硝酸:水の体積混合比が1:0.08:1である酸化インジウム錫エッチング液によるエッチング速度が0.01μm/分以下となるものであることを特徴とするガスバリアフィルムが記載されている。
【0007】
また、特許文献2には、プラスチックフィルムからなる基材の少なくとも片面上に、主にインジウムセリウム系酸化物からなるガスバリア層が形成され、さらにその上に保護層が設けられてなり、当該保護層がエッチングからガスバリア層を保護可能な層であることを特徴とするガスバリア性フィルムが記載されている。
【0008】
しかしながら、これら特許文献1及び2に記載のガスバリア性フィルムは、エネルギー線硬化性樹脂組成物とガスバリア層との密着性に劣り、未だ改善の余地が大きかった。
【0009】
かかる問題を解決するために、特許文献3では、基材と、前記基材の少なくとも一方の面に設けたガスバリア層と、前記ガスバリア層上に設けた保護層とを有し、前記保護層が、(A)芳香環含有ウレタン(メタ)アクリレート、(B)カルボキシル基含有(メタ)アクリレート、及び(C)多官能(メタ)アクリレートを含有し、乾燥質量1g当たりの酸価が80mgKOH/g以上130mgKOH/g以下であるエネルギー線硬化性樹脂組成物を用いて形成されたことを特徴とするガスバリアフィルムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特許第4414748号
【文献】特許第4617583号
【文献】特許第5752438号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところが、特許文献3では、比較的に高酸化の保護層を用いているため、例えば無機系ガスバリア層の腐食や劣化を引き起こし易く、さらには高温高湿環境下に曝されるとガスバリア層への密着性が低下し易い等の問題があった。
【0012】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、密着性及び耐久性に優れるガスバリア性フィルムを実現可能な電離放射線硬化性樹脂組成物、及びこれを用いたガスバリア層の保護膜、並びに、これらを用いた密着性及び耐久性に優れる積層ガスバリア性フィルム等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した。その結果、所定の粘着促進剤を含有する電離放射線硬化性樹脂組成物を用いて比較的に低酸化の保護層を形成することで、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下に示す種々の具体的態様を提供する。
【0014】
[1]酸価が120(mgKOH/g)以上400(mgKOH/g)以下であり且つ分子量が80~900の粘着促進剤と、電離放射線硬化性マトリックス形成材料(但し、前記粘着促進剤に該当するものは除く。)と、無機充填剤と、を少なくとも含有し、前記粘着促進剤が、前記粘着促進剤及び前記電離放射線硬化性マトリックス形成材料の合計100質量部に対して、1~25質量%含まれ、
硬化後の硬化物の乾燥質量1g当たりの酸価が20(mgKOH/g)以上50(mgKOH/g)以下である、電離放射線硬化性樹脂組成物。
【0015】
[2]前記粘着促進剤が、カルボキシル基を含有する単官能(メタ)アクリレート、カルボキシル基を含有する単官能ウレタン(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイル基を有するスルホン酸エステル、及び(メタ)アクリロイル基を有するリン酸エステルよりなる群から選択される少なくとも1種である、[1]に記載の電離放射線硬化性樹脂組成物。
[3]ケトン系溶剤をさらに含有する、[1]又は[2]に記載の電離放射線硬化性樹脂組成物。
【0016】
[4][1]~[3]のいずれか一項に記載の電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物からなる、ガスバリア層の保護膜。
【0017】
[5]ガスバリア層、及び前記ガスバリア層上に設けられた保護層を少なくとも備え、前記保護層は、[1]~[3]のいずれか一項に記載の電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物であり、前記保護層は、乾燥質量1g当たりの酸価が20(mgKOH/g)以上50(mgKOH/g)以下である、積層ガスバリア性フィルム。
[6]前記ガスバリア層が、水蒸気バリア層である、[5]に記載の積層ガスバリア性フィルム。
[7]前記ガスバリア層は、1×10-1g/m2・day未満の水蒸気透過率(MOCON法、JIS K7129準拠、40℃及び90%RH)を有する、[6]に記載の積層ガスバリア性フィルム。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、密着性及び耐久性に優れるガスバリア性フィルムを実現可能な電離放射線硬化性樹脂組成物、及びこれを用いたガスバリア層の保護膜を提供することができ、また、密着性及び耐久性に優れるガスバリア性フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1実施形態の積層ガスバリア性フィルムを模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。また、図面の寸法比率は、図示の比率に限定されるものではない。但し、以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、本明細書において、例えば「1~100」との数値範囲の表記は、その上限値「1」及び下限値「100」の双方を包含するものとする。また、他の数値範囲の表記も同様である。また、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味し、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を意味する。その他の表現、例えば(メタ)アクリロイル等の表現も同様である。
【0021】
(第1実施形態)
<積層ガスバリア性フィルム>
図1は、本発明の第1実施形態の積層ガスバリア性フィルム100を模式的に示す断面図である。本実施形態の積層ガスバリア性フィルム100は、基材11と、この基材11の一方の主面11a側に設けられた樹脂層21と、この樹脂層21の一方の主面21a側に設けられたガスバリア層31と、このガスバリア層31の一方の主面31a側に設けられた保護層41と、を少なくとも備えている。この積層ガスバリア性フィルム100は、基材11、樹脂層21、ガスバリア層31、及び保護層41が少なくともこの順に積層された積層構造(4層構造)を有する。
【0022】
ここで本明細書において、「基材11の一方の主面11a側に設けられた樹脂層21」とは、
図1に示すように基材11の表面(例えば主面11a)に樹脂層21が直接載置された態様のみならず、基材11の表面と樹脂層21との間に任意の層(例えばプライマー層、接着層、アンカー層等)が介在した態様を包含する意味である。また、他の同様の記載についても同趣旨である。
【0023】
<基材>
基材11は、樹脂層21、ガスバリア層31、及び保護層41を支持する部材である。かかる基材11としては、これらの層を支持可能なものである限り、公知のものを用いることができ、その種類は特に限定されない。寸法安定性、及び機械的強度等の観点から、一般的には合成樹脂フィルムやガラス等が好ましく用いられる。さらに軽量化等の観点から、合成樹脂フィルムがより好ましく用いられる。
【0024】
基材11として用いる合成樹脂としては、例えばエチレン、ポリプロピレン、ブテン等の単独重合体又は共重合体等のポリオレフィン樹脂等のポリオレフィン系樹脂;環状オレフィンポリマー(COP)、環状オレフィンコポリマー(COC)等の非晶質ポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂;ナイロン6、ナイロン12、共重合ナイロン等のポリアミド系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリスチレン系樹脂;ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン)系樹脂;ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)等のポリビニルアルコール系樹脂;ポリイミド系樹脂;ポリエーテルイミド系樹脂;トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂;(メタ)アクリル酸エステル等のアクリル系樹脂;ポリエーテルスルホン系樹脂;ポリエーテルエーテルケトン系樹脂;ポリ塩化ビニル、塩化ビニリデン-塩化ビニル共重合体、塩化ビニリデン-アクリロニトリル共重合体、塩化ビニリデン-アクリル共重合体等のポリ塩化ビニル系樹脂;ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)等の含フッ素樹脂等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらの中でも、基材11としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂フィルムが好適である。とりわけ、一軸又は二軸延伸フィルム、特に二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルムは、機械的強度及び寸法安定性に優れるため、特に好ましい。また、耐熱用途には、一軸又は二軸延伸ポリイミドフィルムが特に好ましい。これらは1種を単独で用いることができ、また2種以上を組み合わせて用いることもできる。また、複数の層からなる多層フィルムであってもよい。
【0025】
基材11の透明度は、特に限定されないが、例えばタッチパネル等の電子デバイス用途においては、光学透明であることが好ましい。このとき、基材11の全光線透過率は、80%以上が好ましく、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上である。なお、樹脂層21や上述した任意の層との密着性を向上させる等の観点から、必要に応じて、基材11の表面にプラズマ処理、コロナ放電処理、火炎処理、遠紫外線照射処理、アンカー処理、薬品処理等の各種公知の表面処理を行うこともできる。例えばアンカー処理としては、ポリエステル系脂、イソシアネート系、ウレタン系、アクリル系、エチレンビニルアルコール系、ビニル変性系、エポキシ系、変性スチレン系、変性シリコーン系のアンカーコート剤を塗布してアンカーコート層を設けることで、基材11とガスバリア層31との密着性を向上されることができる。また、耐久性や耐候性等を向上させるために、基材11に紫外線吸収剤や光安定剤を含有させてもよい。
【0026】
基材11の厚みは、要求性能及び用途に応じて適宜設定でき、特に限定されない。軽量化及び薄膜化の観点、さらに取扱性や機械的強度等を考慮すると、基材11の厚みは、一般的には5~500μmが好ましく、より好ましくは10~300μmである。
【0027】
基材11として用いられる樹脂フィルムは、用途や要求特性に応じて選択することが好ましく、例えば、食品や化学薬品等の包装には、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ナイロン等がコストの観点から好ましく、電子部材や光学部材等には、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、非晶質ポリオレフィン樹脂等のそれ自身も高いガスバリア性を有する樹脂フィルムを用いることが好ましい。
【0028】
<樹脂層>
樹脂層21は、基材11の表面平滑性及び表面硬度を高めるためのものである。このように表面平滑な樹脂層21を設けることで、この樹脂層21の上面側に設けられるガスバリア層31及び保護層41の平滑性を高めることができ、これにより積層ガスバリア性フィルム100全体のガスバリア性を向上させることができる。
【0029】
樹脂層21としては、各種公知のものを用いることができ、その種類は特に限定されない。一般的には、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂等の薄膜から構成される。熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂としては、飽和又は不飽和のポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、アクリルウレタン系樹脂、ポリエステルアクリレート系樹脂、ポリウレタンアクリレート系樹脂、エポキシアクリレート系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、セルロース系樹脂、アセタール系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂、シリコーン系樹脂等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、電離放射線硬化性樹脂、有機-無機ハイブリッド電離放射線硬化性樹脂等の樹脂薄膜も好ましく用いることができる。これらの詳細説明は、後述する保護層41において行うため、ここでは省略する。
【0030】
樹脂層21の厚みは、要求性能及び用途に応じて適宜設定でき、特に限定されない。軽量化及び薄膜化の観点、さらに取扱性や機械的強度等を考慮すると、樹脂層21の厚みは、一般的には0.5~50μmが好ましく、より好ましくは1~10μmである。
【0031】
<ガスバリア層>
ガスバリア層31は、基材11側に配置される保護対象(例えば、光電変換素子、太陽電池、電子ペーパーや液晶ディスプレイ(LCD)や有機ELディスプレイ(OELD)等のフラットパネルディスプレイ(FPD)等の電子デバイス等)が、酸素や水蒸気に触れて性能劣化するのを防止するために設けられるものである。このガスバリア層31のバリア性は、保護対象の種類や要求性能及び用途等に応じて適宜設定でき、特に限定されない。
【0032】
例えばフレキシブル基材用途において、ガスバリア層31の酸素透過率は、1×10-1cc/m2・day・atm未満が好ましく、より好ましくは1×10-2cc/m2・day・atm以下である。なお、本明細書において、酸素透過率は、JIS K7129に準拠し、酸素透過率測定装置を用いてMOCON法により40℃及び90%RHの条件下で測定した値を意味する。
【0033】
また同様に、フレキシブル基材用途において、ガスバリア層31の水蒸気透過率は、1×10-1g/m2・day未満が好ましく、より好ましくは1×10-2g/m2・day以下である。なお、本明細書において、水蒸気透過率は、JIS K7129に準拠し、水蒸気透過率測定装置を用いてMOCON法により40℃及び90%RHの条件下で測定した値を意味する。このように水蒸気透過率の高いガスバリア層(以降において「水蒸気ガスバリア層」とも称する。)は、一般的には無機薄膜から構成されることが多く、無機薄膜は比較的に硬く脆いのみならず、従来用いられていた保護膜との密着性に劣るものが多い。したがって、このような無機薄膜からなる水蒸気ガスバリア層をガスバリア層31として用いた場合に、本発明による作用効果が顕著に現れやすい傾向にある。
【0034】
ガスバリア層31としては、当業界で公知のものを適用することができ、その種類は特に限定されない。上述した好ましいガスバリア性を有する種々の無機薄膜が当業界で知られており、これらをガスバリア層31として用いることができる。具体的には、銅や銀等の金属、アルミニウムやチタン等の軽金属、ケイ素等の半金属、又はこれらの化合物(金属化合物、無機化合物)を含むガスバリア層(以下、単に「無機系ガスバリア層」とも称する。)が好ましく用いられる。これらの中でも、酸素や水蒸気等の透過率及びコスト等の観点から、無機化合物からなるガスバリア層がより好ましい。
【0035】
ガスバリア層31は、金属、金属化合物ないしは無機化合物の薄膜として構成することができる。ここで、金属化合物や無機化合物としては、例えば、ケイ素、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、ジルコニウム、ホウ素、ハフニウム、バリウム、亜鉛、スズ、チタン、セレン、インジウム等の酸化物、窒化物、炭化物、酸化窒化物、酸化炭化物、窒化炭化物、及びそれらに他の金属(スズ、亜鉛、ガリウム、アンチモン等)がドープされたもの等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらの中でも、酸化珪素、酸化窒化珪素、酸化炭化珪素等の珪素系無機酸化物、インジウム・スズ酸化物(ITO)、インジウム・ガリウム・亜鉛酸化物(IGZO)、インジウム・ガリウム酸化物(IGO)、ガリウム・亜鉛酸化物(GZO)、亜鉛・スズ酸化物(ZTO)、インジウム・亜鉛・スズ酸化物(IZTO)、インジウム・ガリウム・亜鉛・スズ酸化物(IGZTO)、アンチモン・スズ酸化物(ATO)がより好ましく用いられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、ガスバリア層31の形成方法としては、当業界で公知の方法を適用でき、特に限定されない。例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、プラズマCVD法、イオンアシスト法、スプレー法、スピンコート法等が挙げられる。また、ガスバリア層31は、光学透明であることが好ましく、これにより積層ガスバリア性フィルム100全体を透明なものとすることが可能となり、例えば上述したFPD用途に好適に用いることができる。
【0036】
ガスバリア層31の厚みは、構成する材料、要求性能及び用途に応じて適宜設定でき、特に限定されない。軽量化及び薄膜化の観点、さらに取扱性や機械的強度等を考慮すると、ガスバリア層31の厚みは、一般的には5~500nmであることが好ましく、より好ましくは20~300nmである。なお、ガスバリア層31は、上述した金属、金属化合物、無機化合物からなる無機物層を1層のみで形成してもよいが、かかる無機物層を複数積層してもよく、また、無機物層と樹脂からなる有機層とを交互に積層して設けてもよい。いずれの場合においても、少なくともガスバリア層31の無機物層(無機系ガスバリア層)と保護層41とが隣接していることが好ましい。これにより、ガスバリア層31と保護層41との密着性が高められる傾向にある。
【0037】
<保護層>
保護層41は、ガスバリア層31を保護するための膜(保護膜)である。このように保護層41を設けることで、ガスバリア層31における傷の発生、ガスバリア層31の一部破損或いは一部剥離が抑制されるとともに、積層ガスバリア性フィルム100全体の取扱性が高められる。
【0038】
本実施形態において、保護層41は、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物から構成されており、その酸価は、乾燥質量1g当たり20(mgKOH/g)以上50(mgKOH/g)以下である。なお、酸価は、JIS K 0070に準じ、水酸化カリウム標準液による中和滴定法により測定される値を意味する。保護層41の酸価が20(mgKOH/g)以上50(mgKOH/g)以下であることにより、ガスバリア層31と保護層41の密着性に優れるのみならず、耐久性にも優れる積層ガスバリア性フィルム100を実現することができる。密着性及び耐久性のバランスの観点から、保護層41の酸価は乾燥質量1g当たり20(mgKOH/g)以上45(mgKOH/g)以下が好ましく、20(mgKOH/g)以上40(mgKOH/g)以下がより好ましい。
【0039】
(電離放射線硬化性樹脂組成物)
上記の酸価を有する保護層41は、所定の電離放射線硬化性樹脂組成物を硬化させることにより得ることができる。本実施形態では、電離放射線(紫外線若しくは電子線)の照射により架橋硬化して保護層41のマトリックス(樹脂膜)を形成する樹脂材料(以降において、「電離放射線硬化性マトリックス形成材料」と称する場合がある。)とともに、酸価が120(mgKOH/g)以上400(mgKOH/g)以下であり且つ分子量が80~900の粘着促進剤と無機充填剤(後述する有機無機マトリックス形成材料中の無機成分、及び/又は、外添する無機充填剤の双方を含む。)とを少なくとも含有する電離放射線硬化性樹脂組成物を用いることにより、保護層41の酸価を調整している。以下、各成分について詳述する。
【0040】
電離放射線硬化性マトリックス形成材料としては、光カチオン重合可能な光カチオン重合性樹脂、光重合性プレポリマー若しくは光重合性モノマー等(以降において、「電離放射線硬化性マトリックス形成材料」と称する場合がある。)の1種又は2種以上を混合したものを使用することができる。但し、本明細書において、酸価が120(mgKOH/g)以上400(mgKOH/g)以下であり且つ分子量が80~900の粘着促進剤に該当するものは、この電離放射線硬化性マトリックス形成材料からは除かれる。
【0041】
光カチオン重合性樹脂の具体例としては、ビスフェノール系エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等のエポキシ系樹脂やビニルエーテル系樹脂等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0042】
光重合性プレポリマーは、一般的に、カチオン重合型とラジカル重合型に大別される。カチオン重合型の光重合性プレポリマーとしては、エポキシ系樹脂やビニルエーテル系樹脂等が挙げられる。エポキシ系樹脂としては、例えばビスフェノール系エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等が挙げられる。ラジカル重合型の光重合性プレポリマーとしては、アクリル系プレポリマー(硬質プレポリマー)が挙げられる。光重合性プレポリマーは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、光重合性プレポリマーとしては、1分子中に2個以上のアクリロイル基を有し、架橋硬化することにより3次元網目構造となるアクリル系プレポリマーが好ましく使用される。具体的には、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、ポリフルオロアルキル(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート等の各種(メタ)アクリレート類等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらの光重合性プレポリマーは単独でも使用可能であるが、架橋硬化性を向上させ保護層41の硬度をより向上させる観点からに、光重合性モノマーをさらに加えることが好ましい。
【0043】
光重合性モノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート等)の単官能(メタ)アクリレート類;1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジアクリレート等の2官能(メタ)アクリレート類;ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリメチルプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等の3官能以上の(メタ)アクリレート類;スチレン、α-メチルスチレン等のスチレン系モノマー類、(メタ)アクリルアミド等の不飽和カルボン酸アミド、(メタ)アクリル酸-2-(N,N-ジエチルアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸-2-(N,N-ジベンジルアミノ)エチル等の不飽和酸の置換アミノアルコールエステル類、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸トリアクリレート(例えばトリス-(2-ヒドロキシエチル)-イソシアヌル酸エステル(メタ)アクリレート等)、3-フェノキシ-2-プロパノイルアクリレート、1,6-ビス(3-アクリロキシ-2-ヒドロキシプロピル)-ヘキシルエーテル等の多官能性化合物、及びトリメチロールプロパントリチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラチオグリコレート等の分子中に2個以上のチオール基を有するポリチオール化合物等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、ガスバリア層31に対する密着性をさらに向上する等の観点から、水酸基を有する多官能(メタ)アクリレートが好ましい。
【0044】
これらの中でも、光重合性モノマーとしては、水酸基を有しカルボン酸基を有さない多官能(メタ)アクリレートが好ましく用いられる。このような多官能(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、グリセリンジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ブチレンオキサイド変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ブチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ブチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ブチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0045】
ここで、電離放射線硬化性樹脂組成物は、紫外線照射によって硬化させる場合には、いわゆる紫外線硬化性樹脂(組成物)(以降において、「UV硬化性樹脂(組成物)」と称する場合がある。)として用いることができる。この場合、紫外線硬化性樹脂(組成物)は、上述した光カチオン重合性樹脂、光重合性プレポリマー若しくは光重合性モノマーの他、光重合開始剤、増感剤(例えば、紫外線増感剤)、光重合促進剤等の助剤をさらに含有することが好ましい。
【0046】
光重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーケトン、ベンゾイン、ベンジルメチルケタール、ベンゾイルベンゾエート、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-(4-(メチルチオ)フェニル)-2-(4-モルフォリニル)-1-プロパン、α-アシルオキシムエステル、チオキサンソン類等の他に、芳香族スルホニウムイオン、芳香族オキソスルホニウムイオン、芳香族ヨードニウムイオン等のオニウムと、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアンチモネート、ヘキサフルオロアルセネート等の陰イオンとからなるオニウム塩類、スルホン酸エステル、有機金属錯体等が挙げられるが、これらに特に限定されない。また、紫外線増感剤としては、n-ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ-n-ブチルホスフィン等が挙げられるが、これらに特に限定されない。また、光重合促進剤は、硬化時の空気による重合障害を軽減させ硬化速度を速めることができるものであり、例えば、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、p-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル等が挙げられるが、これらに特に限定されない。硬化助剤は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0047】
これら助剤の含有量は、所望性能に応じて適宜設定でき、特に限定されないが、一般的には、電離放射線硬化性樹脂組成物の固形分総量に対して、合計で0.1~10質量%が好ましく、より好ましくは0.5~5質量%である。
【0048】
また、必要に応じて、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂に光硬化性不飽和基を導入した反応性樹脂を用いることもできる。ここで用いる熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、セルロース系樹脂、アセタール系樹脂、ビニル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられるが、これらに特に限定されない。また、熱硬化性樹脂としては、例えば、ポリエステルアクリレート系樹脂、ポリウレタンアクリレート系樹脂、エポキシアクリレート系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂、シリコーン系樹脂等が挙げられるが、これらに特に限定されない。熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂に導入する光硬化性不飽和基は、好ましくは電離放射線硬化性不飽和基である。その具体例としては、(メタ)アクリロイル基、スチリル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性不飽和結合及びエポキシ基等が挙げられる。より好ましくは(メタ)アクリロイル基である。
【0049】
上述した反応性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、特に限定されないが、硬化の過程で電離放射線硬化性樹脂の流動を抑制しや易い等の観点から、45℃以上が好ましく、より好ましくは80℃以上、さらに好ましくは90℃以上である。なお、ここでいうTgは、樹脂Aの硬化前のものである。また、反応性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、同様の観点から、70,000以上が好ましく、より好ましくは80,000以上である。なお、重量平均分子量(Mw)の値は、例えば、示差屈折率検出器(RID)を装備したゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)によって、化合物の分子量分布を測定して、得られたクロマトグラム(チャート)から、標準ポリスチレンを検量線として、算出することができる。
【0050】
また、上記の電離放射線硬化性樹脂組成物として、電離放射線(紫外線若しくは電子線)の照射により架橋硬化して電離放射線硬化性有機無機ハイブリッド樹脂を形成する材料(以降において、「有機無機マトリックス形成材料」と称する場合がある。)を用いることもできる。ここで、電離放射線硬化性有機無機ハイブリッド樹脂とは、ガラス繊維強化プラスチック(FRP)に代表される昔からの複合体と異なり、有機物と無機物の混ざり方が緊密であり、また分散状態が分子レベルかそれに近いもので、電離放射線の照射により、無機成分と有機成分とが反応して、被膜を形成することができるものである。保護層41が電離放射線硬化性有機無機ハイブリッド樹脂を含むことにより、ガスバリア層31との密着性がより一層高められる傾向にある。なお、無機成分を含む有機無機マトリックス形成材料を用いる場合、本実施形態の電離放射線硬化性樹脂組成物は、上述したとおり、有機無機マトリックス形成材料の無機成分を、無機充填剤として含むものとして取り扱う。
【0051】
上記の有機無機マトリックス形成材料の無機成分としては、シリカ、チタニア等の金属酸化物が挙げられるが、好ましくはシリカである。シリカとしては、表面に光重合反応性を有する感光性基が導入された反応性シリカが挙げられる。例えば、母体となる粉体状シリカあるいはコロイダルシリカに対し、分子中に下記一般式(1)及び(2)で表わされる基、加水分解性シリル基、及び重合性不飽和基の4つの基を有する化合物が、加水分解性シリル基の加水分解反応によって、シリルオキシ基を介して化学的に結合しているものを用いることができる。
【0052】
【化1】
(式(1)中、Xは-NH-、酸素原子又は硫黄原子を表し、Yは酸素原子又は硫黄原子を表し、但し、Xが酸素原子のとき、Yは硫黄原子である。)
【0053】
【0054】
加水分解性シリル基としては、例えば、アルコキシリル基、アセトキシリル基等のカルボキシリレートシリル基、クロシリル基等のハロゲン化シリル基、アミノシリル基、オキシムシリル基、ヒドリドシリル基等が挙げられるが、これらに特に限定されない。重合性不飽和基としては、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニル基、プロペニル基、ブタジエニル基、スチリル基、エチニイル基、シンナモイル基、マレート基、アクリルアミド基等が挙げられるが、これらに特に限定されない。
【0055】
反応性シリカの平均粒子径D50は、所望性能に応じて適宜設定でき、特に限定されないが、好ましくは1nm以上、10μm以下、より好ましくは100nm未満、さらに好ましくは10nm以下である。平均粒子径D50が所定範囲の反応性シリカを使用することによって、保護層41への高い密着性や、保護層41の高い透明性を維持し易い傾向にある。なお、反応性シリカの平均粒子径D50は、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えば、島津製作所社:SALD-7000等)で測定されるメディアン径を意味する。
【0056】
有機無機ハイブリッド樹脂中の無機成分の含有割合は、所望性能に応じて適宜設定でき、特に限定されないが、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上であり、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。無機成分の含有割合が上記の好ましい範囲内にあることで、保護層41の透明性を維持しつつガスバリア層31と保護層41との密着性を良好にし易い傾向にある。
【0057】
有機無機ハイブリッド樹脂中の有機成分としては、上述した無機成分(好ましくは反応性シリカ)と重合可能な重合性不飽和基を有する化合物(例えば、分子中に2個以上の重合性不飽和基を有する多価不飽和有機化合物、または分子中に1個の重合性不飽和基を有する単価不飽和有機化合物等)が挙げられる。
【0058】
多価不飽和有機化合物としては、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、多価不飽和有機化合物としては、カルボン酸基を有さない多官能(メタ)アクリレート類が好ましく用いられる。
【0059】
単価不飽和有機化合物としては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-メトキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、単価不飽和有機化合物としては、カルボン酸基を有さない単官能(メタ)アクリレート類が好ましく用いられる。
【0060】
有機無機ハイブリッド樹脂中での無機成分の含有割合は、所望性能に応じて適宜設定でき、特に限定されないが、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%であり、好ましくは65質量%以下、より好ましくは40質量%以下である。有機成分の含有割合が上記の好ましい範囲内にあることで、保護層41の透明性を維持しつつガスバリア層31と保護層41との密着性を良好にし易い傾向にある。
【0061】
(粘着促進剤)
粘着促進剤は、ガスバリア層31への密着性を向上させるものである。本実施形態では、酸価が120(mgKOH/g)以上400(mgKOH/g)以下であり且つ分子量が80~900の粘着促進剤を用いている。ここで、粘着促進剤の酸価は、130(mgKOH/g)以上380(mgKOH/g)以下が好ましく、より好ましくは140(mgKOH/g)以上360(mgKOH/g)以下である。また、粘着促進剤の分子量は、80~750が好ましく、より好ましくは80~600である。
【0062】
粘着促進剤としては、カルボキシル基を含有する単官能(メタ)アクリレート、カルボキシル基を含有する単官能ウレタン(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイル基を有するスルホン酸エステル、(メタ)アクリロイル基を有するリン酸エステルが好ましく用いられ、カルボキシル基を含有する単官能(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイル基を有するリン酸エステルがより好ましい。これらは、酸価及び分子量が上述した範囲内にある限り、いずれであっても好適に用いることができる。なお、これらは上述した酸価及び分子量を有する限り、上述した電離放射線硬化性マトリックス形成材料には該当しないものとする。このような酸価及び分子量を有する粘着促進剤として、各種市販品を用いることができる。具体的には、Sartmer社製のCD9050、東亞合成社製のM-5300、M-5400、ダイセル・オルネクス社製のβ-CEA、日本化薬社製のKAYAMER PM-2,同PM-21、城北化学社製のJPA-514等が挙げられる。
【0063】
電離放射線硬化性樹脂組成物中の粘着促進剤の含有割合は、所望性能に応じて適宜設定でき、特に限定されないが、粘着促進剤及び電離放射線硬化性マトリックス形成材料の合計100質量部に対して、1~25質量%が好ましく、より好ましくは1.5~20質量%であり、さらに好ましくは2~15質量%である。粘着促進剤の含有割合が上記の好ましい範囲内にあることで、ガスバリア層31に対する密着性及び経時的な密着性(耐久性)に優れる保護層41が得られ易い傾向にある。また同様に、電離放射線硬化性樹脂組成物中の電離放射線硬化性マトリックス形成材料の含有割合は、所望性能に応じて適宜設定でき、特に限定されないが、粘着促進剤及び電離放射線硬化性マトリックス形成材料の合計100質量部に対して、75~99質量%が好ましく、より好ましくは80~98.5質量%であり、さらに好ましくは85~98質量%である。
【0064】
(無機充填剤)
電離放射線硬化性樹脂組成物(及びその硬化物となる保護層41)は、上述した各成分とともに、無機充填剤を含んでいる。無機充填剤を含有することにより、ガスバリア層31への密着性がより高められる傾向にある。ここで無機充填剤としては、上述したとおり、有機無機マトリックス形成材料の無機成分、これとは別に外添される無機充填剤(以降において、「外添無機充填剤」と称する場合がある。)の双方が包含される。有機無機マトリックス形成材料の無機成分については、既に説明したとおりである。一方、外添無機充填剤としては、例えばシリカ、アルミナ、タルク、クレイ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化ジルコニウム等の無機粒子が挙げられるが、その種類は特に限定されない。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、電離放射線硬化性マトリックス形成材料として無機成分を含む有機無機マトリックス形成材料を用いる場合であっても、本実施形態の電離放射線硬化性樹脂組成物は、有機無機マトリックス形成材料の無機成分とは別に、外添無機充填剤をさらに含有していてもよい。
【0065】
外添無機充填剤の平均粒子径D50は、所望性能に応じて適宜設定でき、特に限定されないが、好ましくは1nm以上、10μm以下である。かかる範囲内であることにより、保護層41への高い密着性や、保護層41の高い透明性が維持され易い傾向にある。保護層41への高い密着性が得られ易い等の観点からは、より好ましくは100nm未満、さらに好ましくは10nm以下である。一方、外添無機充填剤を後述する凹凸付与剤としても機能させる場合には、その平均粒子径D50は、特に限定されないが、好ましくは0.1μm以上であり、より好ましくは0.5μm以上、8μm以下であり、さらに好ましくは、1μm以上、5μm以下である。なお、外添無機充填剤の平均粒子径D50は、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えば、島津製作所社:SALD-7000等)で測定されるメディアン径を意味する。なお、平均粒子径が100nm未満の外添無機充填剤及び/又は上述した有機無機マトリックス形成材料の無機成分と、平均粒子径が0.1μm以上の外添無機充填剤とを併用することもできる。
【0066】
電離放射線硬化性樹脂組成物(及びその硬化物となる保護層41)中の無機充填剤の含有割合は、所望性能に応じて適宜設定でき、特に限定されないが、固形分の総量に対して、合計で10質量%以上、80質量%以下が好ましく、より好ましくは合計で20質量%以上、75質量%以下である。
【0067】
(凹凸付与剤)
電離放射線硬化性樹脂組成物(及びその硬化物となる保護層41)は、上述した各成分の他に、必要に応じて、保護層41の表面に凹凸形状を付与するための、樹脂系粒子からなる凹凸付与剤をさらに含んでいてもよい。樹脂系粒子としては、例えばアクリル系樹脂粒子、シリコーン系樹脂粒子、ナイロン系樹脂粒子、スチレン系樹脂粒子、ポリエチレン系樹脂粒子、ベンゾグアナミン系樹脂粒子、ウレタン系樹脂粒子等が挙げられるが、その種類は特に限定されない。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0068】
凹凸付与剤の平均粒子径D50は、特に限定されないが、好ましくは0.1μm以上、10μm以下であり、より好ましくは0.5μm以上、8μm以下であり、さらに好ましくは、1μm以上、5μm以下である。なお、凹凸付与剤の平均粒子径D50は、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えば、島津製作所社:SALD-7000等)で測定されるメディアン径を意味する。なお、平均粒子径が100nm未満の外添無機充填剤及び/又は上述した有機無機マトリックス形成材料の無機成分と、平均粒子径が0.1μm以上の凹凸付与剤とを併用することもできる。
【0069】
(その他の成分)
なお、電離放射線硬化性樹脂組成物(及びその硬化物となる保護層41)は、必要に応じて、当業界で公知の各種添加剤を含有していてもよい。各種添加剤としては、表面調整剤、滑剤、着色剤、顔料、染料、蛍光増白剤、難燃剤、抗菌剤、防カビ剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、可塑剤、レベリング剤、流動調整剤、消泡剤、分散剤、貯蔵安定剤、架橋剤、シランカップリング剤、マット剤等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0070】
好ましい電離放射線硬化性樹脂組成物の具体的態様としては、(X)上述した粘着促進剤と、電離放射線硬化性マトリックス形成材料と、シリカ等の無機充填剤とを少なくとも含有する電離放射線硬化性樹脂組成物、(Y)上述した粘着促進剤と、有機無機マトリックス形成材料(無機成分として無機充填剤を含む)とを少なくとも含有する電離放射線硬化性樹脂組成物、(Z)上述した粘着促進剤と、有機無機マトリックス形成材料(無機成分として無機充填剤を含む)と、有機無機マトリックス形成材料中の無機成分とは別の外添無機充填剤と、を少なくとも含有する電離放射線硬化性樹脂組成物等が挙げられる。
【0071】
保護層41は、上述した電離放射線硬化性樹脂組成物を硬化させることにより得ることができ、その形成方法は、当業界で公知の方法を適用でき、特に限定されない。例えば、上述した電離放射線硬化性樹脂組成物を溶媒に溶解乃至は分散させた塗布液を調製し、この塗布液をガスバリア層31上に付与し、硬化させることで、保護層41を形成することができる。このときの塗布方法としては、従来公知の塗布方法を適用することができ、特に限定されない。例えばドクターコート法、ディップコート法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法、ブレードコート法、エアナイフコート法、キスコート法、スプレーコート法、スピンコート法等が例示される。
【0072】
また、溶媒としては、水;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のエーテル系溶剤;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶剤、並びにこれらの混合溶媒等、当業界で公知のものを用いることができる。これらの中でも、ケトン系溶媒、ケトン系溶媒を含む混合溶媒が好ましく用いられる。このように塗布された塗膜に、必要に応じて電離放射線処理、熱処理、及び/または加圧処理等を行うことにより、保護層41を製膜することができる。なお、保護層41は、この基材11の他方の主面11b側にも設けることもでき、この場合、積層ガスバリア性フィルム100の両表面が保護層41を有する態様となるため、取扱性に優れたものとなる。
【0073】
電離放射線照射において使用する光源は、特に限定されない。例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、中圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、電子線加速器等を用いることができる。また、このときの照射量も、使用する光源の種類や出力性能等に応じて適宜設定でき、特に限定されない、紫外線の照射量は、一般的には積算光量100~6,000mJ/cm2程度が目安とされる。
【0074】
また、熱処理において使用する熱源も、特に限定されない。接触式及び非接触式のいずれであっても好適に使用することができる。例えば、遠赤外線ヒーター、短波長赤外線ヒーター、中波長赤外線ヒーター、カーボンヒーター、オーブン、ヒートローラ等を用いることができる。熱処理における処理温度は、特に限定されないが、一般的には50~200℃であり、好ましくは50~180℃、より好ましくは60~150℃である。
【0075】
保護層41の厚みは、構成する材料、要求性能及び用途に応じて適宜設定でき、特に限定されない。軽量化及び薄膜化の観点、さらに取扱性や機械的強度等を考慮すると、保護層41の厚みは、一般的には0.01~20μmが好ましく、より好ましくは0.5~15μm、さらに好ましくは1~10μmである。なお、保護層41は、1層のみで形成してもよいが、複数積層して形成してもよく、また、ガスガリア層31と保護層41とを交互に複数積層して設けてもよい。
【0076】
<作用>
本実施形態の積層ガスバリア性フィルム100は、ガスバリア層31上に、粘着促進剤を用いた密着性に優れる保護層41が設けられており、しかも従来技術に対して比較的に低酸化の保護層41を実現しているため、ガスバリア層31の腐食や劣化等が生じさせ難く、また、高温高湿環境下に曝されてもガスバリア層31への密着性の低下が抑制されたものとなっている。そのため、本実施形態の積層ガスバリア性フィルム100は、高温高湿の過酷な保存環境或いは使用環境でも、長期間にわたって性能を維持することができる。そのため、本実施形態の積層ガスバリア性フィルム100は、食品、化粧品、医薬品等の物品の密封包装のみならず、光電変換素子、太陽電池(PV)、電子ペーパー、液晶ディスプレイ(LCD)、有機ELディスプレイ(OELD)等のフラットパネルディスプレイ(FPD)等の電子デバイスの分野における高性能なガスバリア性フィルムとして好適に用いることができる。
【実施例】
【0077】
以下、本実施形態を実施例及び比較例を用いてさらに具体的に説明する。但し、本発明は、これらにより何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における好ましい上限値又は好ましい下限値としての意味をもつものであり、好ましい範囲は前記した上限又は下限の値と、下記実施例の値又は実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。
【0078】
〔実施例1〕
まず、厚み125μmの両面が易接着処理された基材(透明ポリエステルフィルム、東洋紡績社製、コスモシャインA4300)の一方の主面に、下記処方の塗布液aを塗布し、乾燥した後、紫外線を照射し、厚み3μmの樹脂層を形成した。
【0079】
<塗布液a>
・光重合性プレポリマー 140質量部
(電離放射線硬化性マトリックス形成材料)
(デソライトZ7503:JSR社製、固形分50質量%、無機充填剤であるシリカ含量38質量%)
・熱可塑性樹脂 70質量部
(アクリディックA166:DIC社製、固形分45質量%、ガラス転移温度49℃)
・光重合開始剤 0.8質量部
(イルガキュア651:チバ・ジャパン社製)
・希釈溶剤(メチルエチルケトン) 230質量部
【0080】
次に、得られた積層基材の樹脂層上に、真空下(5×10-5torr)でのスパッタリング法により、厚み100nm、JIS K7129準拠による水蒸気透過率が1×10-1g/m2・day未満の、ZTO(酸化亜鉛スズ)膜からなるガスバリア層を製膜した。
【0081】
次いで、上記のガスバリア層上に、下記の塗布液b1(電離放射線硬化性樹脂組成物)をバーコート法により塗布し、乾燥させた。その後、循環式熱風乾燥機を用いて80℃の熱処理を行い、次いで高圧水銀灯を用いてUV照射処理(積算光量:1000mJ/cm2)を行って、ガスバリア層上に厚み1.5μmの及び酸価25mgKOH/gの保護層を形成することで、実施例1の積層ガスバリア性フィルムを得た。
【0082】
<塗布液b1>
・光重合性プレポリマー 50質量部
(有機無機マトリックス形成材料)
(KZ6445A:荒川化学工業社製、オプスター(登録商標)、固形分50質量%、無機成分であるナノシリカ含量30質量%)
・粘着促進剤 0.8質量部
(M5400:東亞合成社製、フタル酸モノヒドロキシエチルアクリレート、酸価205mgKOH/g、分子量260g、固形分100質量%)
・希釈溶剤(メチルエチルケトン) 78質量部
【0083】
〔実施例2〕
塗布液b1に代えて下記の塗布液b2を用いる以外は、実施例1と同様に行い、ガスバリア層上に厚み1.5μmの及び酸価27mgKOH/gの保護層を形成することで、実施例2の積層ガスバリア性フィルムを得た。
【0084】
<塗布液b2>
・光重合性プレポリマー 50質量部
(有機無機マトリックス形成材料)
(KZ6445A:荒川化学工業社製、オプスター(登録商標)、固形分50質量%、無機成分であるナノシリカ含量30質量%)
・粘着促進剤 1.3質量部
(M5400:東亞合成社製、フタル酸モノヒドロキシエチルアクリレート、酸価205mgKOH/g、分子量260g、固形分100質量%)
・希釈溶剤(メチルエチルケトン) 78質量部
【0085】
〔実施例3〕
塗布液b1に代えて下記の塗布液b3を用いる以外は、実施例1と同様に行い、ガスバリア層上に厚み1.5μmの及び酸価39mgKOH/gの保護層を形成することで、実施例3の積層ガスバリア性フィルムを得た。
【0086】
<塗布液b3>
・光重合性プレポリマー 50質量部
(有機無機マトリックス形成材料)
(KZ6445A:荒川化学工業社製、オプスター(登録商標)、固形分50質量%、無機成分であるナノシリカ含量30質量%)
・粘着促進剤 1.9質量部
(M5400:東亞合成社製、フタル酸モノヒドロキシエチルアクリレート、酸価205mgKOH/g、分子量260g、固形分100質量%)
・希釈溶剤(メチルエチルケトン) 78質量部
【0087】
〔比較例1〕
塗布液b1に代えて下記の塗布液b4を用いる以外は、実施例1と同様に行い、ガスバリア層上に厚み1.5μmの及び酸価17mgKOH/gの保護層を形成することで、比較例1の積層ガスバリア性フィルムを得た。
【0088】
<塗布液b4>
・光重合性プレポリマー 50質量部
(有機無機マトリックス形成材料)
(KZ6445A:荒川化学工業社製、オプスター(登録商標)、固形分50質量%、無機成分であるナノシリカ含量30質量%)
・光重合開始剤 2.2質量部
(イルガキュア651:チバ・ジャパン社製)
・希釈溶剤(メチルエチルケトン) 78質量部
【0089】
〔比較例2〕
塗布液b1に代えて下記の塗布液b5を用いる以外は、実施例1と同様に行い、ガスバリア層上に厚み1.5μmの及び酸価21mgKOH/gの保護層を形成することで、比較例2の積層ガスバリア性フィルムを得た。
【0090】
<塗布液b5>
・光重合性プレポリマー 50質量部
(電離放射線硬化性マトリックス形成材料)
(紫光UV-1700B:日本合成化学社製、固形分100質量%)
・光重合開始剤 1.5質量部
(イルガキュア651:チバ・ジャパン社製)
・粘着促進剤 4.0質量部
(M5400:東亞合成社製、フタル酸モノヒドロキシエチルアクリレート、酸価205mgKOH/g、分子量260g、固形分100質量%)
・希釈溶剤(メチルエチルケトン) 200質量部
【0091】
〔実施例4〕
塗布液b1に代えて下記の塗布液b6を用いる以外は、実施例1と同様に行い、ガスバリア層上に厚み1.5μmの及び酸価21mgKOH/gの保護層を形成することで、実施例4の積層ガスバリア性フィルムを得た。
【0092】
<塗布液b6>
・光重合性プレポリマー 50質量部
(電離放射線硬化性マトリックス形成材料)
(紫光UV-1700B:日本合成化学社製、固形分100質量%)
・光重合開始剤 1.5質量部
(イルガキュア651:チバ・ジャパン社製)
・粘着促進剤 4.0質量部
(M5400:東亞合成社製、フタル酸モノヒドロキシエチルアクリレート、酸価205mgKOH/g、分子量260g、固形分100質量%)
・外添無機充填剤 125質量部
(ナノシリカ、MEK-ST-40:日産化学社製、固形分40%)
・希釈溶剤(メチルエチルケトン) 300質量部
【0093】
[密着性の評価]
得られた実施例1~4及び比較例1及び2の積層ガスバリア性フィルムについて、密着性、及び耐湿熱試験後の密着性の評価を行った。ここでは、JIS K5400:1990における碁盤目テープ法に基づき、積層ガスバリア性フィルムの保護層に切り込みを入れ、基盤目の剥離試験を行い、100個の基盤目に対して、剥離した基盤目の数をカウントした。なお、経時密着性については、85℃,85%RHの条件で500時間放置した後に評価を行った。結果を表1に示す。
【0094】
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明の電離放射線硬化性樹脂組成物及び積層ガスバリア性フィルム等は、密着性に優れるのみならず、ガスバリア層の腐食や劣化等が生じさせ難く、また、高温高湿環境下に曝されてもガスバリア層への密着性の低下が抑制されたものなので、例えば食品、化粧品、医薬品等の物品の密封包装分野のみならず、光電変換素子、太陽電池(PV)、電子ペーパー、液晶ディスプレイ(LCD)、有機ELディスプレイ(OELD)等のフラットパネルディスプレイ(FPD)等の電子デバイスの分野等において、広く且つ有効に利用可能である。
【符号の説明】
【0096】
100 ・・・積層ガスバリア性フィルム
11 ・・・基材
11a・・・主面
11b・・・主面
21 ・・・樹脂層
21a・・・主面
31 ・・・ガスバリア層
31a・・・主面
41 ・・・保護層