(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-10
(45)【発行日】2022-08-19
(54)【発明の名称】導電率計又は比抵抗計用の電極、当該電極を用いた導電率計及び比抵抗計
(51)【国際特許分類】
G01R 27/22 20060101AFI20220812BHJP
G01N 27/07 20060101ALI20220812BHJP
【FI】
G01R27/22 Z
G01N27/07
(21)【出願番号】P 2017241192
(22)【出願日】2017-12-15
【審査請求日】2020-11-16
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】592187534
【氏名又は名称】株式会社 堀場アドバンスドテクノ
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【氏名又は名称】齊藤 真大
(72)【発明者】
【氏名】市成 祐一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 理一郎
(72)【発明者】
【氏名】西谷 悠吾
【審査官】島田 保
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0321046(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0260738(US,A1)
【文献】特開2007-212324(JP,A)
【文献】特開2000-162168(JP,A)
【文献】米国特許第04883566(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0016440(US,A1)
【文献】特開平11-281604(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 27/00-27/32
G01N 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極本体と、
前記電極本体を貫通する被検液取込み流路と、
前記被検液取込み流路を形成する対向する内壁面に表面が露出するようにそれぞれ設けられた一対の電圧極と、
前記各内壁面に表面が露出するようにそれぞれ設けられた一対の電流極と
を有し、
前記一対の電流極のそれぞれが炭素系材料を含むものであり、
前記内壁面に露出する前記一対の電流極のそれぞれの表面の形状が有端帯状であ
り、
前記電極本体が柱状をなすものであり、
前記被検液取込み流路は前記電極本体の側周面を貫通するように形成されており、
前記一対の電圧極と前記一対の電流極は、これらの長手方向が前記電極本体の軸方向に平行になるように設けられ、かつ前記被検液取込み流路の貫通方向に沿って互いに隣り合うように設けられたものである、導電率計又は比抵抗計用の電極。
【請求項2】
前記一対の電流極を複数有し、
複数の前記一対の電流極の間に前記一対の電圧極が位置するように構成された、請求項1記載の導電率計又は比抵抗計用の電極。
【請求項3】
前記炭素系材料としてガラス状炭素が用いられている請求項1
又は2に記載の導電率計又は比抵抗計用の電極。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか記載の電極と、
前記電極からの出力信号を受信し、当該受信した出力信号に基づいて導電率を算出して出力する導電率算出器と、
を備える導電率計。
【請求項5】
請求項1~
3のいずれか記載の電極と、
前記電極からの出力信号を受信し、当該受信した出力信号に基づいて比抵抗を算出して出力する比抵抗算出器と、
を備える比抵抗計。
【請求項6】
電極本体と、
前記電極本体を貫通する被検液取込み流路と、
前記被検液取込み流路を形成する対向する内壁面に表面が露出するようにそれぞれ設けられた一対の電圧極と、
前記各内壁面に表面が露出するようにそれぞれ設けられた一対の電流極と
を有し、
前記一対の電流極のそれぞれが炭素系材料を含むものであり、
前記各内壁面において、前記電流極と前記電圧極は、それぞれ樹脂部材により囲まれており、
前記各内壁面において、前記電流極を取り囲む樹脂部材と前記電圧極を取り囲む樹脂部材とが連なって
おり、
前記電極本体が柱状をなすものであり、
前記被検液取込み流路は前記電極本体の側周面を貫通するように形成されており、
前記一対の電圧極と前記一対の電流極は、これらの長手方向が前記電極本体の軸方向に平行になるように設けられ、かつ前記被検液取込み流路の貫通方向に沿って互いに隣り合うように設けられたものであることを特徴とする、導電率計又は比抵抗計用の電極。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流4電極式の、導電率計又は比抵抗計用の電極、当該電極を用いた導電率計及び比抵抗計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、交流4電極式の導電率計又は比抵抗計用の電極としては、例えば特許文献1に示すように、被検液取込み流路内に一対の電流極(電圧印加極)と一対の電圧極(電圧検出極)とが平面上に並べて配置されているものが知られている。このような導電率計又は比抵抗計用の電極は、被検液の流入出口を通って電極の外部へ漏れ出る電気力線が多い。そのため、使用条件によっては一対の電圧極間の電気力線の密度が大きく変化し、測定される導電率や比抵抗の値が大きく変化してしまい、正確に測定できない可能性がある。
【0003】
近時では、このような被検液取込流路外への電気力線の漏れを低減できる導電率計又は比抵抗計用の電極に対する要求が高まっており、それも製造が容易でかつ加工性にも優れた導電率計又は比抵抗計用の電極に対する要求が高まっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、外部への電気力線の漏れが少なく、しかも製造が容易でかつ加工性に優れた交流4電極式の導電率計又は比抵抗計用の電極を提供することを所期の課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明に係る導電率計又は比抵抗計用の電極は、電極本体と、前記電極本体を貫通する被検液取込み流路と、前記被検液取込み流路を形成する対向する内壁面に表面が露出するようにそれぞれ設けられた一対の電圧極と、前記各内壁面に表面が露出するようにそれぞれ設けられた一対の電流極とを有し、前記一対の電流極のそれぞれが炭素系材料を含むものであり、前記内壁面に露出する前記一対の電流極のそれぞれの表面の形状が有端帯状であることを特徴とする。
【0007】
このような構成であれば、一対の電流極が被検液取込流路を挟んで対向して設けられているので、一方の電流極から出た電気力線が電極本体を回り込むことなく直接他方の電流極に入りやすい。そのため、電極本体の外部へ漏れ出る電気力線を低減することができる。このため、本発明の電極を、例えば測定中に被検液が入ったビーカーの壁等に近づけたりしても、一対の電圧極の間に形成される電気力線の密度が大きく変化せず、測定した導電率や比抵抗が大きく変動しない。すなわち、測定場所を問わず精度の高い導電率測定や比抵抗測定を行うことができる。
【0008】
また、このような構成であれば、製造が容易でかつ加工性に優れた交流4電極式の導電率計又は比抵抗計用の電極を提供することができる。例えば、電流極の端面が有端帯状をなすものであって電圧極の周りを取り囲まないので、製造過程において電流極と電圧極とを筒状の型に入れて熱硬化性樹脂等の樹脂を流し込んだ場合に、電圧極と電流極との間に樹脂が容易に流れていき、この間に樹脂を容易に充填することができる。すなわち、電流極の形状を、例えば電圧極を取り囲むような円環状にする場合には、電圧極の周りを円環状の電流極が取り囲んでいるので、製造過程において電圧極と電流極との間に樹脂が充填されにくいという問題が生じ得るが、電流極の端面を前記したように有端帯状にすることで、このような問題も解消できる。
また、電流極の端面が有端帯状であるので、製造の際には例えば予め準備した板状の電流極を切削するだけでよいので、電流極自体の加工が容易である。そのため、製品の仕様に応じて電流極の面積等を容易に変更することができる。
なお、本発明でいう「有端帯状」とは、両端を有する帯状をなす形を意味し、例えば円環状のように外周と内周とを有するものを含まない。
【0009】
さらに、電流極は炭素系材料を含むものであるので、優れた耐薬品性及び耐アルカリ性を発揮することができる。ここで「炭素系材料を含む」とは、電流極が炭素系材料のみから構成されていることや、電流極が炭素系材料と炭素系材料以外の材料との複合材料から構成されていることを意味する。
なおこの炭素系材料を含む電流極は製造の際に焼成を行う必要があるため、一般的には金属からなる電流極に比べて加工が難しい。しかしながら、上述のように、本発明の導電率計又は比抵抗計用の電極では、電流極の端面が有端帯状であるので電流極自体の加工が容易であるので、電流極として炭素系材料を含むものを適用することが可能である。
【0010】
なお本発明で言う「導電率」とは、JISで規定される「電気伝導率」を意味し、「比抵抗」とはJISで規定する「電気抵抗率」を意味する。
【0011】
上述した導電率計又は比抵抗計用の電極は、前記一対の電流極を複数有しており、複数の前記一対の電流極の間に前記一対の電圧極が位置するように構成されていることが好ましい。
このような構成であれば、複数の一対の電流極によって一対の電圧極を挟み込むようにすることで、一対の電圧極間を通る電気力線をより密にし、電極本体の外部への電気力線の漏れをより少なくすることができる。そのため、上記した測定中の導電率や比抵抗の変動をより小さくすることができる。
【0012】
また、電極本体が円柱状等の柱状をなすものであり、前記被検液取込み流路は前記電極本体の側周面を貫通するように形成されており、前記一対の電圧極と前記一対の電流極は、前記電極本体の軸方向に平行になるように設けられ、かつ前記被検液取込み流路の貫通方向に沿って互いに隣り合うように設けられたものであることが好ましい。
このような構成であれば、製造過程で筒状の型に樹脂を流し込んで電流極と電圧極とを固定する際に、電流極と電圧極との間に樹脂をより容易に流し込みやすくすることができる。また電流極と電圧極との間の気泡をより逃げやすくすることができる。
【0013】
上記炭素系材料の具体的な態様としては、ガラス状炭素を挙げることができる。
このようなものであれば、電流極自体の機械的強度を向上することができる。なお、上述のように、本発明の電流極は端面が有端帯状をなすものであるので、端面が円環状のものに比べて加工が容易である。そのため、ガラス状炭素等の硬い材料を適用することが可能である。
【0014】
本発明に係る導電率計又は比抵抗計用の電極はまた、電極本体と、前記電極本体を貫通する被検液取込み流路と、前記被検液取込み流路を形成する対向する内壁面に表面が露出するようにそれぞれ設けられた一対の電圧極と、前記各内壁面に表面が露出するようにそれぞれ設けられた一対の電流極とを有し、前記一対の電流極のそれぞれが炭素系材料を含むものであり、前記各内壁面において、前記電流極と前記電圧は、それぞれ樹脂部材により囲まれており、前記各内壁面において、前記電流極を取り囲む樹脂部材と前記電圧極を取り囲む樹脂部材とが連なっているものであってもよい。
このようなものであれば、上述した、内壁面に露出する一対の電流極のそれぞれの表面の形状が有端帯状である導電率計又は比抵抗計用の電極により得られる作用効果と同様の作用効果を奏し得る。
ここで、「電流極を取り囲む樹脂部材と前記電圧極を取り囲む樹脂部材とが連なっている」とは、電流極を取り囲む樹脂部材と前記電圧極を取り囲む樹脂部材とが、途切れることなく連続して繋がっていることを意味する。すなわち、製造過程において電流極と電圧極とを型に入れて熱硬化性樹脂等の樹脂を流し込んだ際に、電圧極と電流極との間に樹脂が流れていき、この間に樹脂が充填されたことを意味する。
【0015】
また、本発明にかかる導電率計は、上述した導電率計又は比抵抗計用の電極と、当該電極からの出力信号を受信し、この受信した出力信号に基づいて導電率を算出して出力する導電率算出器と、を備えることを特徴とする。
また、本発明に係る比抵抗計は、上述した導電率計又は比抵抗計用の電極と、当該電極からの出力信号を受信し、この受信した出力信号に基づいて比抵抗を算出して出力する比抵抗算出器と、を備えることを特徴とする。
このような導電率計や比抵抗計であれば、上述した導電率計又は比抵抗計用の電極により得られる作用効果と同様の作用効果を奏し得る。
【発明の効果】
【0016】
このように構成した本発明によれば、外部への電気力線の漏れが少なく、しかも製造が容易でかつ加工性に優れた交流4電極式の導電率計又は比抵抗計用の電極を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施形態の導電率計の構成を模式的に示す図。
【
図2】同実施形態の電極の電流極及び電圧極の構成を模式的に示す図。
【
図4】同実施形態の電極の製造過程を模式的に示す図。
【
図5】他の実施形態の電極の電流極及び電圧極の構成を模式的に示す図。
【
図6】他の実施形態の電極の電流極及び電圧極の構成を模式的に示す図。
【
図7】他の実施形態の電極の被検液取込み流路の構成を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下に説明する導電率計は本発明の技術思想を具体化するためのものであって、特定的な記載がない限り、本発明を以下のものに限定しない。また、一の実施形態において説明する内容は、他の実施形態にも適用可能である。また、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張していることがある。
【0019】
本実施形態に係る導電率計100は、例えば半導体プロセスで用いられる材料液や洗浄液などの被検液の導電率を測定する交流4電極式のものである。
具体的にこの導電率計100は、
図1に示すように、被検液に浸けられる電極1(導電率電極ともいう)と、当該電極1にケーブルCLを介して電気的に接続された導電率計本体2(本発明の「導電率算出器」に相当)と、を備えたものである。
以下、各部について説明する。
【0020】
電極1は、
図1に示すように、ボディ11(本発明の「電極本体」に相当)と、ボディ11を貫通して形成された被検液取込み流路12と、当該被検液取込み流路12を挟むようにして設けられた複数の電流極14と、電流極14と同様に当該被検液取込み流路12を挟むようにして設けられた複数の電圧極15とを具備するものである。
【0021】
ボディ11は、複数の電流極14及び複数の電圧極15を収容して保持するものである。このボディ11は細長い円柱状をなすものであり、絶縁性が高い材料から構成されている。ここでは、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂により構成されている。
【0022】
被検液取込み流路12は、導電率測定する被検液をボディ11内に取り込むためのものである。この被検液取込み流路12は、ボディ11の先端部近傍において、ボディ11の軸方向に垂直な方向に、ボディ11の側周面111を貫通するように形成されており、ボディ11の軸方向に平行な断面における断面形状が長孔状をなすものである。
図3に示すように、この被検液取込み流路12は、ボディ11の軸方向に平行な対向する2つの内壁面121、122によって形成されている。
なお、ここでいう「ボディの側周面を貫通する」とは、ボディ11の軸方向に垂直な方向に被検液が流体連通できるように被検液取込み流路12が形成されることを意味する。
【0023】
図2及び
図3に示すように、ボディ11内には、被検液取込み流路12を挟んで2枚の矩形板状の電子基板131、132が収容されており、これに複数の電流極14及び複数の電圧極15が取り付けられている。この電子基板131及び132の端面には、複数の電流極14及び複数の電圧極15と電気的に接続するリード線が接続されており、これらのリード線は、電極1の基端部からケーブルCLとして延び、導電率計本体2に接続されている。
【0024】
複数の電流極14は、被検液取込み流路12内に電界を生じさせて、被検液取込み流路12内にある被検液に電流を流すためのものである。具体的にこの複数の電流極14はそれぞれ、プラスチックフォームドカーボンからなる矩形板状のものであり、上述の内壁面121、122に有端帯状の表面が露出するようにボディ11に設けられている。
図2に示すように、各電流極14は、長手方向が、ボディ11の軸方向に平行になるようにそれぞれ設けられている。
【0025】
図2及び
図3に示すように、この複数の電流極14は、被検液取込み流路12を挟んで対向する一対の電流極14a(以下、「第1電流極対」と記載する)と、一対の電流極14b(以下、「第2電流極対」と記載する)とを有している。この第1電流極対14aと第2電流極対14bは、被検液取込み流路12の貫通方向に沿って平行に設けられている。
【0026】
複数の電圧極15は、被検液取込み流路12内にある被検液に生じる電位差を検出するためのものである。具体的にこの複数の電流極15は、前記電流極14同様に、それぞれプラスチックフォームドカーボンからなる矩形板状のものであり、上述の内壁面121、122に有端帯状の表面が露出するようにボディ11に設けられている。各電流極15は、長手方向が、ボディ11の軸方向に平行になるようにそれぞれ設けられている。
この複数の電圧極15は、被検液取込み流路12を挟んで対向する一対の電圧極15a(以下、「電圧極対」と記載する)を有している。
【0027】
本実施形態の電極1では、
図2及び
図3に示すように、第1電流極対14aと第2電流極対14bの間に電圧極対15aが位置するように構成されている。具体的には、第1電流極対14aと電圧極対15aと第2電流極対14bとが、間に絶縁性の樹脂(ボディ11の一部)を挟んでこの順に、被検液取込み流路12が貫通する方向に沿って等間隔で隣り合うように設けられている。
【0028】
より具体的には、被検液取込み流路12を形成する一方の内壁面121側では、第1電流極対14aの一方の第1電流極141aと第2電流極対14bの一方の第2電流極141bとの間に、電圧極対15aの一方の電圧極151aが絶縁性の樹脂を介して挟まれるように構成されている。
さらに具体的には、第1電流極141aと第2電流極141bと電圧極151aは、それぞれ、絶縁性の樹脂によって周りを囲まれており、この第1電流極141aと第2電流極141bと電圧極151aを取り囲んでいる絶縁性の樹脂が、連なるように(すなわち、連続して繋がるように、又は連通するように)構成されている。
なお、一方の第1電流極141aと一方の第2電流極141bとは、電子基板131を介して電気的に接続されている。
【0029】
被検液取込み流路12を形成する他方の内壁面122側では、第1電流極対14aの他方の第1電流極142a、第2電流極対14bの他方の第2電流極142b及び電圧極対15aの他方の電圧極152aが、前述した第1電流極141a、第2電流極141b及び電圧極151aと同様の構成を有するように、設けられている。
【0030】
図3に示すように、一方の第1電流極141aと、一方の第2電流極141bと、一方の電圧極151aは、内壁面121と同一平面上にそれぞれの表面が露出するように(すなわち、内壁面121に面一になるように)、ボディ11に設けられている。
同様に、他方の第1電流極142a、他方の第2電流極142b、及び他方の電圧極152aも、内壁面122と同一平面上にそれぞれの表面が露出するように(すなわち、内壁面122に面一になるように)、ボディ11に設けられている。
【0031】
導電率計本体2は、電極1からの出力信号を受信し、この受信した出力信号に基づいて被検液の導電率を算出して、算出した導電率をディスプレイ21に表示するものである。
【0032】
具体的に導電率計本体2は、ハードウェア構成として、CPU、A/D変換器、記憶装置、入力手段、ディスプレイ21、更には交流電源や演算増幅器等からなる測定回路等を一体的に備えたものである。そして前記CPUや必要に応じてその周辺機器が、記憶装置に格納されたプログラムに基づいて動作することにより、例えば、電極1が被検液に浸漬した状態で、第1電流極対14a及び第2電流極対14bに流れる電流値及び電圧極対15a間に生じる電位差に基づいて、被検液の導電率を算出できるように構成されている。
【0033】
具体的には、第1電流極対14a及び第2電流極対14bによって被検液中に電流を流し、電圧極対15aによって被検液中の電位差を測定するように構成されている。そして、前記電位差の値に対する電流値の比(電流値/電圧値)を用いて、被検液の導電率を算出するように構成されている。なお、被検液の導電率は温度によって変化するので、この導電率計本体2は、25℃における導電率の推定値を算出するように温度補償できるように構成されている。具体的には、内壁面121上には図示しないサーミスタが設けられており、導電率計本体2は、このサーミスタから得られる温度情報に基づいて導電率を温度補償できるように構成されている。
【0034】
次に、上述した本実施形態の電極1の製造方法について説明する。なお、説明を簡略にするため、リード線の接続等の工程についての説明を省略している。
【0035】
本実施形態の電極1の製造方法では、樹脂を充填するための有底筒状の型41と、2枚の板状の電子基板131、132と、3枚の厚板状のプラスチックフォームドカーボン板43a、43b、43cと、を準備する。この厚板状のプラスチックフォームドカーボン板43a及び43cは、加工された後に電流極14になるものであり、板状の電流極14を厚み方向に伸ばしたような形状をなすものである。同様に、厚板状のプラスチックフォームドカーボン板43bは、加工された後に電圧極15になるものである。このような3枚の厚板状のプラスチックフォームドカーボン板43a~43cを、等間隔を空けて並列するように、2枚の板状の電子基板131、132の間に挟んで固定する。そしてこれを、
図4の(a)に示すように、3枚の厚板状のプラスチックフォームドカーボン板43a~43が並んで立つような姿勢で筒状の型41内にセットし、型41の開放端からエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を流し込む。その後加熱する等によりエポキシ樹脂を硬化させることで、内側に電子基板131、132及びプラスチックフォームドカーボン板43a、43b、43cを収容して保持するボディ11が形成される。
【0036】
ボディ11を筒状の型41から取り出した後、
図4の(b)に示すように、ボディ11を切削して、ボディ11の側周面を貫通する被検液取込み流路12を形成する。より具体的には、3枚のプラスチックフォームドカーボン板43a~43cを、ボディ11の半径方向に打ち抜くようにしてボディ11を切削して、被検液取込み流路12を形成する。このようにして、被検液取込み流路12の内壁面と面一となる露出表面を有する複数の電流極14及び複数の電圧極15とを備える電極1を得ることができる。
【0037】
このように構成した本実施形態の導電率計100によれば、一方の第1電流極141a及び第2電流極141bが、被検液取込流路12を挟んで、他方の第1電流極142a及び第2電流極142bとそれぞれ対向しているので、一方の第1電流極141a及び第2電流極141bから出た電気力線が、ボディ11を回り込むことなく、他方の第2電流極及び第2電流極に直接入りやすい。さらに、第1電流極対14aと第2電流極対14bによって電圧極対15aを挟み込むように構成されているので、電圧極対15aの間を通る電気力線の密度が高くなっている。これらの構成により、本実施形態の電極1では、ボディ11の外部へ漏れ出る電気力線が少なくなっており、例えば測定中に被検液が入ったビーカーの壁に近づけたりしても、電圧極対15aの間に形成される電気力線の密度が大きく変化せず、導電率が大きく変動しない。そのため、ビーカー内での測定場所を問わず精度の高い導電率測定を行うことができる。
【0038】
また、電極1が有する電流極141a及び141b(142a及び142b)の端面が有端帯状をなすものであって電圧極151a(152a)の周りを取り囲んでおらず、さらに、電流極141a及び141b(142a及び142b)と電圧極151a(152a)とが、それらの長手方向がボディ11の軸方向に平行になるように互いに隣り合うように設けられているので、製造過程において筒状の型41に熱硬化性樹脂を流し込んで固定する場合に、電圧極141a及び141b(142a及び142b)と電流極151a(152a)との間に熱可塑性樹脂が容易に流れていき、この間に容易に充填することができる。
【0039】
また、電流極141a及び141b(142a及び142b)の端面が有端帯状であるので加工が容易であり、製品の仕様に応じて電流極141a及び141b(142a及び142b)の面積等を容易に変更することができる。
【0040】
<その他の実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0041】
前記実施形態の電極1では、複数の電流極14は、2つの電流極対14a及び14bを有しているものであったがこれに限定されない。他の実施形態では、複数の電流極14は1つの電流極対14aのみを有していてもよい。また、3つ以上の電流極対を有していてもよい。
【0042】
前記実施形態の電極1では、複数の電流極14がいずれも、内壁面121又は122に露出する面が両端に角を有する長方形状をなす有端帯状のものであったが、これに限定されない。他の実施形態では、
図5に示すように、これらの露出面の形状が、両端が丸みを帯びた形状や楕円形状等をなす有端帯状のものであってもよい。また、これらの露出面の形状は、直線状の有端帯状に限らず、
図6に示すように、U字型なす有端帯状のものであってもよい。
【0043】
前記実施形態の電極1では、複数の電流極14と複数の電圧極15はいずれも、プラスチックフォームドカーボンからなるものであったがこれに限定されない。例えば、グラファイトやガラス状炭素、導電性ダイヤモンド等のその他の炭素系材料からなるものであってもよい。また、グラファイトの表面にガラス状炭素やその他の炭素系材料を形成したものであってもよい。また、炭素系材料とその他の材料とを組み合わせた複合材料からなるものであってもよい。これらのものが電極1の用途や仕様に応じて適宜選択されてよい。
【0044】
前記実施形態の被検液取込み流路12は、内壁面によって周囲を囲まれており、ボディ11の軸方向に平行な断面における断面形状が長孔状をなすものであったが、これに限定されない。他の実施形態の被検液取込み流路12は、例えば
図7に示すように、ボディ11の軸方向先端に開口を有するものであってもよい。
なお、前記実施形態のように、被検液取込み流路12が内壁面によって周囲を囲まれているものであれば、長期間使用することによる内壁面121及び内壁面122間の距離の変動を抑制でき、測定精度の低下を効果的に防止できるので好ましい。
【0045】
前記実施形態の電極1は、導電率計本体2に接続されて被検液の導電率を測定するために用いられていたが、これに限定されない。他の実施形態では、比抵抗を算出する比抵抗計本体に接続されて、被検液の比抵抗を測定するのに用いられてもよい。また、導電率と比抵抗の両方を測定できる電気特性測定計に接続されて、被検液の導電率と比抵抗の両方を測定するために用いられてもよい。
【0046】
前記実施形態の導電率計100では、電極1と導電率計本体2とが別体として設けられていたが、これに限らない。他の実施形態では、電極1に導電率計本体2が取り付けられて、電極1と導電率計本体2とが一体的に構成されていてもよい。
また、前記実施形態においてディスプレイ21は導電率計本体2に設けられていたが、これに限らず、電極1に一体的に設けられていてもよい。また、導電率計本体2が算出した導電率が、パソコン、タブレット、スマートフォン、その他のポータブル機器等の外部機器に無線乃至有線で送信され、その外部機器が有するディスプレイに表示するように構成してもよい。従って、電極1又は導電率計本体2にディスプレイを必ずしも設ける必要はない。
また、導電率計本体2の機能を、前記した外部機器に持たせてもよい。この場合には、当該外部機器に所定のアプリケーションをインストールすることにより、電極1からの出力信号を受信し、この受信した出力信号に基づいて被検液の導電率を算出して、算出した導電率、外部機器が有するディスプレイに表示するように構成されてよい。この所定のアプリケーションはプログラムとしてユーザに提供されてもよく、このプログラムは、光ディスク、半導体メモリ等の記録媒体に記録されて提供されてもよいし、ネットワークを介してダウンロードされて提供されてもよい。
【0047】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0048】
100・・・導電率計
1 ・・・電極
11 ・・・ボディ(電極本体)
12 ・・・被検液取込み流路
121、122・・・内壁面
14a・・・第1電流極対(一対の電流極)
14b・・・第2電流極対(一対の電流極)
15 ・・・一対の電圧極
2 ・・・導電率計本体(導電率算出器)