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  • 特許-アルカリ電池 図1
  • 特許-アルカリ電池 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-10
(45)【発行日】2022-08-19
(54)【発明の名称】アルカリ電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/184 20210101AFI20220812BHJP
   H01M 50/186 20210101ALI20220812BHJP
   H01M 50/107 20210101ALI20220812BHJP
   H01M 50/533 20210101ALI20220812BHJP
   H01M 50/548 20210101ALI20220812BHJP
   H01M 50/559 20210101ALI20220812BHJP
   H01M 50/545 20210101ALI20220812BHJP
   H01M 4/75 20060101ALI20220812BHJP
【FI】
H01M50/184 D
H01M50/186
H01M50/107
H01M50/533
H01M50/548 201
H01M50/559
H01M50/545
H01M4/75 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018009971
(22)【出願日】2018-01-24
(65)【公開番号】P2019129071
(43)【公開日】2019-08-01
【審査請求日】2020-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000237721
【氏名又は名称】FDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】後藤 聡希
(72)【発明者】
【氏名】國谷 繁之
(72)【発明者】
【氏名】山崎 龍也
【審査官】福井 晃三
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-135242(JP,A)
【文献】特開2015-176655(JP,A)
【文献】国際公開第2014/034017(WO,A1)
【文献】特開2013-054859(JP,A)
【文献】特開2017-117670(JP,A)
【文献】特表2016-517145(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/10-50/198
H01M 50/50-50/598
H01M 4/64- 4/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極合剤と、負極ゲルと、セパレーターと電解液とが、底部が正極をなす有底筒体状の電池ケース内に収容され、負極集電子が接続された負極端子板とガスケットとにより前記底部の反対側の端となる開口が封じられているアルカリ電池であって、
前記負極集電子は、前記負極端子板に固定され前記底部側が開放されて前記負極端子板側に窪む環状溝部と、前記環状溝部に囲まれた内側の部位が前記底部側に延出している軸部と、を有し、前記軸部の延出している端側が、前記負極ゲル中に挿入されており、
前記ガスケットは、合成樹脂製の成型材でなり、前記負極集電子の前記軸部が圧入される中空部を備えた管部と、前記管部の外周から前記負極端子板の周縁と前記開口との間を封止して前記電池ケース内を隔てる隔壁部と、を有し、
前記管部の前記負極端子板側の端は、前記環状溝部に嵌入されていることを特徴とするアルカリ電池。
【請求項2】
請求項1に記載のアルカリ電池において、
前記軸部の外径は、前記管部の内径より大きく、前記管部の外径は前記環状溝部の径より大きいことを特徴とするアルカリ電池。
【請求項3】
請求項2に記載のアルカリ電池において、
前記環状溝部の内径は、前記管部の外径に対して1%以上小さく形成されていることを特徴とするアルカリ電池。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のアルカリ電池において、
前記環状溝部の底と前記管部の前記負極端子板側の端との間には、シール剤が充填されていることを特徴とするアルカリ電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、アルカリ電池に関する。
【背景技術】
【0002】
アルカリ電池としては、例えば、有底筒状の金属製電池缶、環状に成形された正極合剤、この正極合剤の内側に配設された有底円筒状のセパレーター、セパレーターの内側に充填される負極ゲル、この負極ゲル中に挿入された金属製の負極集電子、皿状の金属製負極端子板、封口用のガスケットなどにより構成されるアルカリ電池が知られている(例えば、特許文献1参照)。このアルカリ電池は、電池ケースを兼ねる電池缶が、正極合剤に直接接触することにより正極集電体を兼ね、電池缶の底面には正極端子が形成されている。
【0003】
負極端子板は、フランジ状の縁がある皿状をなし、電池缶の開口にガスケットを介してかしめられて電池缶が封口されている。負極端子板の下面には負極ゲル中に挿入されている棒状の負極集電子の一方の端が溶接されており、負極集電子の他方の端側から、ほぼ円盤状をなすガスケットの中央に設けられ円筒状をなすボス部の中空部に圧入されている。ガスケットは、ボス部の外周から円盤の周縁に至る膜状の隔壁部によって電池缶における発電要素の収納空間が密閉されて、電池缶の内部が仕切られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-80574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アルカリ電池のガスケットは、樹脂材料が電解液を吸収して脆化することに起因して亀裂が生じ、その亀裂からアルカリ電池が漏液に至る、という場合もあるが、ガスケットに割れや亀裂がなくても、上記のようにガスケットの中央ボス部に負極集電子を圧入して挿通している場合には、負極集電子とボス部との界面における電解液の這い上がり(クリープ)現象によって漏液に至る場合がある。
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、より漏液しにくいアルカリ電池を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために本発明のアルカリ電池は、正極合剤と、負極ゲルと、セパレーターと電解液とが、底部が正極をなす有底筒体状の電池ケース内に収容され、負極集電子が接続された負極端子板とガスケットとにより前記底部の反対側の端となる開口が封じられているアルカリ電池であって、
前記負極集電子は、前記負極端子板に固定され前記底部側が開放されて前記負極端子板側に窪む環状溝部と、前記環状溝部に囲まれた内側の部位が前記底部側に延出している軸部と、を有し、前記軸部の延出している端側が、前記負極ゲル中に挿入されており、
前記ガスケットは、合成樹脂製の成型材でなり、前記負極集電子の前記軸部が圧入される中空部を備えた管部と、前記管部の外周から前記負極端子板の周縁と前記開口との間を封止して前記電池ケース内を隔てる隔壁部と、を有し、
前記管部の前記負極端子板側の端は、前記環状溝部に嵌入されていることを特徴とするアルカリ電池である。
【0007】
かかるアルカリ電池において、
前記軸部の外径は、前記管部の内径より大きく、前記管部の外径は前記環状溝部の外径より大きいことを特徴とする。
【0008】
かかるアルカリ電池において、
前記環状溝部の内径は、前記管部の外径に対して1%以上小さく形成されていることを特徴とする。
【0009】
かかるアルカリ電池において、
前記環状溝部の底と前記管部の前記負極端子板側の端との間には、シール剤が充填されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、より漏液しにくいアルカリ電池を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態にかかるアルカリ電池の構造を示す図である。
図2図2は、封口体の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施例について、以下に添付図面を参照しつつ説明する。
本発明の一実施形態に係るアルカリ電池は、図1に示すように、上述した従来の円筒形アルカリ電池と同様に、有底筒状の金属製電池缶2、環状に成形された正極合剤3、この正極合剤3の内側に配設された有底円筒状のセパレーター4、亜鉛合金を含んでセパレーター4の内側に充填される負極ゲル5、この負極ゲル5中に挿入された金属製の負極集電子6、皿状の金属製負極端子板7、封口用のガスケット20を有している。この構造において、正極合剤3、セパレーター4、負極ゲル5が、電解液の存在下でアルカリ電池1の発電要素を形成する。
【0013】
以下の説明においては、アルカリ電池において、有底筒状の電池缶2の底側を下とし、負極端子板7側を上として上下の方向を示すものとする。
【0014】
電池缶2は、電池ケースを兼ねるとともに、正極合剤3に直接接触することにより、正極集電体を兼ねている。また、電池缶2の底面には正極端子8が形成されている。負極端子板7は、フランジ状の縁7aを全周に有する円形皿状をなしており、伏せた状態で電池缶2の上端に形成されている開口にガスケット20を介してかしめられている。
【0015】
負極ゲル5中に挿入された棒状の軸部6aを有する負極集電子6は、その上端が皿状の負極端子板7の下面に溶接され上下方向に沿うように固定されている。なお、負極端子板7、負極集電子6およびガスケット20は、封口体としてあらかじめ一体に組み合わせられており、ガスケット20が電池缶2の開口縁部と負極端子板7におけるフランジ状の縁7aとの間に挟持されて電池缶2が封口される。また、電池缶2の周囲には熱収縮フィルムからなる外装ラベル9が被装されている。
【0016】
図2に示すように、封口体を構成する負極集電子6は、上下方向に沿って配置される軸部6aと、軸部6aの上端に設けられる円盤状の円盤端部6bと、円盤端部6bの外周縁部から垂設された環状壁部6cと、を有している。軸部6aと、円盤端部6bと、環状壁部6cとは、軸部6aを上下に貫く軸を中心として同心に形成されており、環状壁部6cは、内周面が軸部6aの外周面と間隔を空けるとともに、軸部6aを取り囲むように設けられている。このため、軸部6aの周りには、円盤端部6bを底とし、下方に開放された環状溝部6dが設けられている。また、負極集電子6は、円形皿状をなす負極端子板7とも同心に配置され、円盤端部6bが、負極端子板7に溶着されている。
【0017】
ガスケット20は、円盤の周囲に上方に立設する壁面(以下、外周部)20aが巡るほぼカップ状をなし、円盤の中心には、負極集電子6の軸部6aが圧入される中空部20bを備えた円筒状の管部としてのボス部20cが設けられている。ボス部20cの外周から円盤の周縁となる外周部20aに至る膜状の隔壁部20dには同心円状の凹凸が形成されている。電池缶2の内部は、隔壁部20dによって発電要素の収納空間が密閉されて、電池缶2の内部が上下に仕切られている。
【0018】
ガスケット20は、シール剤21が充填された環状溝部6dに上端部20eが挿入されて、負極端子板7及び負極集電子6とあらかじめ一体に組み合わされている。このとき、軸部6aの外径d1は、ボス部20cの内径D1より大きく、ボス部20cの外径D2は環状溝部6dの内径d2より大きく形成されているので、軸部6aは、ボス部20cの中空部20bに圧入されており、ボス部20cは環状溝部6dに圧入されている。このため、ボス部20cの上端部20eが環状溝部6dに、より隙間なく嵌入されている。嵌入されたボス部20cの上端部20eと、環状溝部6dの底をなす円盤端部6bとの間は、シール剤21により封止されている。
【0019】
このように、負極端子板7、負極集電子6およびガスケット20は、封口体としてあらかじめ一体に組み合わせられており、ガスケット20の外周部20aが、電池缶2の開口縁部と負極端子板7の縁との間に挟持された状態でかしめられることで、電池缶2が気密シールされる。
【0020】
本実施形態のアルカリ電池1によれば、ボス部20cの負極端子板7側の端は、環状溝部6dに嵌入されている。このため、本実施形態のアルカリ電池1は、ボス部20cの中空部20bと負極集電子6の軸部6aとの間を液密に封止するだけでなく、ボス部20cと環状溝部6dの円盤端部6b及び環状壁部6cの間においても液密に封止している。このため、ボス部20cの中空部20bに負極集電子6の軸部6aが圧入されているだけの場合より、より確実に漏液を防止することが可能である。
【0021】
本実施形態のアルカリ電池1は、軸部6aの外径d1が、ボス部20cの中空部20bの内径D1より大きく、ボス部20cの外径D2が、環状溝部6dの内径d2より大きく形成されているので、軸部6aとボス部20cの中空部20bとを、及び、ボス部20cと環状壁部6cとを確実に圧入して漏液を防止することが可能である。
【0022】
また、環状溝部6dの底をなす円盤端部6bとボス部20cの負極端子板7側の端との間には、シール剤21が充填されているので、ボス部20cと負極集電子6との間からの漏液をさらに確実に防止することが可能である。このとき、シール剤21は、環状溝部6dに充填されて、環状溝部6dの開口がボス部20cに塞がれているので、シール剤21を円盤端部6bとボス部20cの負極端子板7側の端との間に留まらせることが可能である。このためシール剤21の塗りむらや、シール剤21の広がりによるシーリング効果の低下を防止することが可能である。
【0023】
本発明のアルカリ電池1における漏液の防止効果の確認実験の結果を以下に示す。
アルカリ電池1における漏液の防止効果の確認実験は、アルカリ電池LR6を60℃90%R.H.の環境で100日間保存し、負極クリープ(ボス部と負極集電子の界面から電解液の這い上がり)の発生数を調査した。このとき、環状壁部6cを有していない従来の負極集電子を備えたアルカリ電池(サンプル1)、環状溝部6dの内径d2とボス部20cの外径D2とがほぼ等しいアルカリ電池(サンプル2)、環状溝部6dの内径d2がボス部20cの外径D2に対して1%小さなアルカリ電池(サンプル3)を用いて調査した。このとき、サンプル2、サンプル3については、ボス部20cの外径D2を変えることなく、環状溝部6dの内径d2のみを相違させている。
【0024】
表1に、各サンプルについての負極クリープによる漏液発生率(%)を示した。
【表1】
【0025】
表1に示したように、サンプル2では、環状溝部6dが存在することでまたシール剤21が環状溝部6d内に保持されるようになり、従来例であるサンプル1と比較して漏液発生率が減少した。サンプル3では、圧入状態となっていることからさらに漏液発生率が減少した。このように、環状溝部6dの内径d2を、ボス部20cの外径D2に対して1%以上小さく形成しておくと、漏液をより確実に防止することが可能である。
【0026】
上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0027】
1 アルカリ電池、2 電池缶、3 正極合剤、4 セパレーター、5 負極ゲル、
6 負極集電子、6a 軸部、6b 円盤端部、6c 環状壁部、6d 環状溝部、
7 負極端子板、7a 負極端子板の縁、8 正極端子、9 外装ラベル、
20 ガスケット、20a 外周部、20b 中空部、20c ボス部、
20d 隔壁部、20e 上端部、21 シール剤、D1 ボス部の内径、
D2 ボス部の外径、d1 軸部の外径、d2 環状溝部の内径
図1
図2