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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-10
(45)【発行日】2022-08-19
(54)【発明の名称】積層セラミック電子部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20220812BHJP
【FI】
H01G4/30 311Z
H01G4/30 201N
H01G4/30 517
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018040793
(22)【出願日】2018-03-07
(65)【公開番号】P2019160834
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2021-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 陽輔
(72)【発明者】
【氏名】加藤 靖也
(72)【発明者】
【氏名】小林 譲二
(72)【発明者】
【氏名】木暮 利光
【審査官】菊地 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-209539(JP,A)
【文献】特開2017-135202(JP,A)
【文献】特開2018-056464(JP,A)
【文献】特開2017-157695(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に積層された複数のセラミック層と、前記複数のセラミック層の間に配置された複数の内部電極と、を有する容量形成部と、前記第1方向と直交する第2方向を向いた側面と、前記容量形成部を前記第1方向から覆うカバー部と、を有する積層体を作製し、
サイドマージンシートが表面に配置された弾性体に、前記積層体を、前記側面側から前記積層体の前記第2方向の厚みの1倍以上2倍以下押し込むことで、前記サイドマージンシートを打ち抜く
積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の積層セラミック電子部品の製造方法であって、
前記弾性体の静的せん断弾性率が、5MPa以下である
積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の積層セラミック電子部品の製造方法であって、
前記積層体は、前記第2方向を向いた第1及び第2側面を有し、
粘着性を有するテープによって前記第1側面が保持された前記積層体を前記第2側面側から前記弾性体に押し込むことで前記サイドマージンシートを打ち抜いて、打ち抜かれた前記サイドマージンシートを前記テープに接着させ、
前記テープを前記第2側面から剥がすことで前記打ち抜かれたサイドマージンシートを前記テープとともに回収する
積層セラミック電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイドマージン部が後付けされる積層セラミック電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
代表的な積層セラミック電子部品に積層セラミックコンデンサがある。近年、電子機器の小型化及び高性能化に伴い、積層セラミックコンデンサに対する大容量化の要望がますます強くなってきている。
【0003】
積層セラミックコンデンサを大容量化するために、サイドマージン部を後付けする技術が知られている。当該技術によれば、サイドマージン部を薄く作製できるため、内部電極の交差面積を広く確保でき、積層セラミックコンデンサの大容量化に寄与する。
【0004】
例えば、特許文献1には、セラミックグリーンシートが配置された弾性体に積層チップの側面を押し付けることにより、積層チップの側面にサイドマージン部を形成する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-209539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、弾性体への積層チップの押し込み量が少ない場合、セラミックグリーンシートを打ち抜くことができない。その一方で、押し込み量が多い場合、圧縮変形した弾性体の応力が積層チップの主面方向及び端面方向に強く働く。このため、弾性体から積層チップを引き戻す際に、貼り付けたセラミックグリーンシートが積層チップから剥がれたり、積層チップが保持部材から剥がれたりしてしまう問題が発生する。
【0007】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、安定してサイドマージン部を形成可能な積層セラミック電子部品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る積層セラミック電子部品の製造方法では、第1方向に積層された複数のセラミック層と、上記複数のセラミック層の間に配置された複数の内部電極と、を有する容量形成部と、上記第1方向と直交する第2方向を向いた側面と、上記容量形成部を上記第1方向から覆うカバー部と、を有する積層体が作製される。
サイドマージンシートが表面に配置された弾性体に、上記積層体を、上記側面側から上記サイドマージンシートの上記第2方向の厚みの2倍以上、かつ、上記積層体の上記第2方向の厚みの2倍以下押し込むことで、上記サイドマージンシートが打ち抜かれる。
【0009】
上記製造方法によれば、サイドマージン部を打ち抜く際、積層体の押し込み量を適切な範囲とすることができる。これにより、安定してサイドマージン部を形成することが可能となる。
【0010】
上記弾性体の静的せん断弾性率が5MPa以下であってもよい。
この構成によれば、打ち抜きに充分な量のせん断力をサイドマージンシートに与えることができ、かつ、弾性体に積層体を適切に押し込むことができる。
【発明の効果】
【0011】
以上述べたように、本発明によれば、安定してサイドマージン部を形成可能な積層セラミック電子部品の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの斜視図である。
図2】上記積層セラミックコンデンサの図1のA-A'線に沿った斜視図である。
図3】上記積層セラミックコンデンサの図1のB-B'線に沿った断面図である。
図4】上記積層セラミックコンデンサの製造方法を示すフローチャートである。
図5】上記製造方法のステップS01で準備される積層体の斜視図である。
図6】上記製造方法のステップS02を示す積層体の端面側から見た図である。
図7】上記製造方法のステップS02の後の未焼成のセラミック素体の斜視図である。
図8】一般的な打ち抜き方法を示す積層体の端面側から見た図である。
図9】上記実施形態に係る打ち抜き方法を示す積層体の端面側から見た図である。
図10】上記実施形態に係る打ち抜き方法を示す積層体の端面側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
図面には、適宜相互に直交するX軸、Y軸、及びZ軸が示されている。X軸、Y軸、及びZ軸は全図において共通である。
【0014】
[積層セラミックコンデンサ10の全体構成]
図1~3は、本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10を示す図である。図2は、積層セラミックコンデンサ10の図1のA-A'線に沿った断面図である。図3は、積層セラミックコンデンサ10の図1のB-B'線に沿った断面図である。
【0015】
積層セラミックコンデンサ10は、セラミック素体11と、第1外部電極14と、第2外部電極15と、を備える。セラミック素体11は、典型的には、X軸方向を向いた2つの端面と、Y軸方向を向いた2つの側面と、Z軸方向を向いた2つの主面と、を有する。なお、セラミック素体11の形状はこのような形状に限定されない。例えば、セラミック素体11の各面は曲面であってもよく、セラミック素体11は全体として丸みを帯びた形状であってもよい。
【0016】
外部電極14,15は、セラミック素体11の端面を覆い、セラミック素体11を挟んでX軸方向に対向している。外部電極14,15は、セラミック素体11の端面から主面及び側面に延出している。これにより、外部電極14,15では、X-Z平面に平行な断面、及びX-Y平面に平行な断面がいずれもU字状となっている。なお、外部電極14,15の形状は、図1に示すものに限定されない。
【0017】
外部電極14,15は、電気の良導体により形成されている。外部電極14,15を形成する電気の良導体としては、例えば、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、錫(Sn)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銀(Ag)、金(Au)などを主成分とする金属又は合金が挙げられる。
【0018】
セラミック素体11は、誘電体セラミックスで形成され、積層体16と、サイドマージン部17と、を有する。積層体16は、X軸方向を向いた2つの端面と、Y軸方向を向いた2つの側面Sと、Z軸方向を向いた2つの主面と、を有し、X-Y平面に沿って延びる平板状の複数のセラミック層がZ軸方向に積層された構成を有する。サイドマージン部17は、積層体16の両側面Sに形成されている。
【0019】
積層体16は、容量形成部18と、カバー部19と、を有する。容量形成部18は、誘電体セラミックスに覆われた第1内部電極12及び第2内部電極13を有し、Z軸方向上下からカバー部19に被覆されている。
【0020】
内部電極12,13は、いずれもX-Y平面に沿って延びるシート状であり、Z軸方向に沿って交互に配置されている。つまり、内部電極12,13は、セラミック層を挟んでZ軸方向に対向している。第1内部電極12は、セラミック素体11の一方の端面に引き出され、第1外部電極14に接続されている。第2内部電極13は、セラミック素体11の他方の端面に引き出され、第2外部電極15に接続されている。
【0021】
一方の端面側の第1内部電極12間のセラミック層は、第2内部電極13と第1外部電極14との絶縁性を確保するエンドマージンとして機能する。同様に、他方の端面側の第2内部電極13間のセラミック層は、第1内部電極12と第2外部電極15との絶縁性を確保するエンドマージンとして機能する。
【0022】
このような構成により、積層セラミックコンデンサ10では、第1外部電極14と第2外部電極15との間に電圧が印加されると、第1内部電極12と第2内部電極13との間の複数のセラミック層に電圧が加わる。これにより、積層セラミックコンデンサ10では、第1外部電極14と第2外部電極15との間の電圧に応じた電荷が蓄えられる。
【0023】
また、容量形成部18では、外部電極14,15が設けられたX軸方向両端面以外の面がサイドマージン部17及びカバー部19によって覆われている。したがって、容量形成部18では、サイドマージン部17及びカバー部19によってその周囲が保護され、内部電極12,13の絶縁性が確保される。
【0024】
セラミック素体11では、内部電極12,13間の各セラミック層の容量を大きくするため、高誘電率の誘電体セラミックスが主成分として用いられる。高誘電率の誘電体セラミックスとしては、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO)に代表される、バリウム(Ba)及びチタン(Ti)を含むペロブスカイト構造の材料が挙げられる。
【0025】
なお、セラミック層の主成分は、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)系、チタン酸カルシウム(CaTiO)系、チタン酸マグネシウム(MgTiO)系、ジルコン酸カルシウム(CaZrO)系、チタン酸ジルコン酸カルシウム(Ca(Zr,Ti)O)系、ジルコン酸バリウム(BaZrO)系、酸化チタン(TiO)系等で構成してもよい。
【0026】
内部電極12,13は、電気の良導体により形成されている。内部電極12,13を形成する電気の良導体としては、典型的にはニッケル(Ni)が挙げられ、この他にも銅(Cu)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銀(Ag)、金(Au)等を主成分とする金属又は合金が挙げられる。
【0027】
なお、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10は、積層体16及びサイドマージン部17を備えていればよく、その他の構成について適宜変更可能である。例えば、第1及び第2内部電極12,13の枚数は、積層セラミックコンデンサ10に求められるサイズや性能に応じて、適宜決定可能である。
【0028】
[積層セラミックコンデンサ10の製造方法]
図4は、積層セラミックコンデンサ10の製造方法を示すフローチャートである。図5~7は積層セラミックコンデンサ10の製造過程を示す図である。以下、積層セラミックコンデンサ10の製造方法について、図4に沿って、図5~7を適宜参照しながら説明する。
【0029】
(ステップS01:積層体準備)
ステップS01では、積層体116を準備する。図5は、積層体116の斜視図である。積層体116は、内部電極112,113が適宜パターニングされた、複数の未焼成の誘電体グリーンシートが積層されて構成されている。これにより、積層体116には、内部電極112,113の間に配置された複数の未焼成のセラミック層を有する未焼成の容量形成部118と、カバー部119とが形成されている。
【0030】
(ステップS02:サイドマージン部形成)
ステップS02では、ステップS01で準備された積層体116の側面Sに未焼成のサイドマージン部117を設けることにより、未焼成のセラミック素体111を作製する。サイドマージン部117の形成には、打ち抜き法を用いる。つまり、打ち抜き法では、積層体116の側面でサイドマージンシート117sを打ち抜くことで、サイドマージン部117を形成する。
【0031】
図6(a)~(c)は、積層体116の側面Sでサイドマージンシート117sを打ち抜く方法を示す図である。まず、図6(a)に示すように、粘着性を有するテープTで一方の側面Sを保持した積層体116の他方の側面Sを、平板状の弾性体200の上に配置されたサイドマージンシート117sに対向させる。本実施形態では、弾性体200は保持部材300によって保持されており、保持部材300はY軸方向に沿って移動可能に構成されている。
【0032】
サイドマージンシート117sは、未焼成のサイドマージン部117を形成するための大判の誘電体グリーンシートとして構成される。サイドマージンシート117sの厚みによって、図2,3に示す積層セラミックコンデンサ10のサイドマージン部17のY軸方向の厚みを調整可能である。サイドマージンシート117sは、例えば、ロールコーターやドクターブレードを用いてシート状に成形することにより、厚みを正確に制御可能である。
【0033】
次に、図6(b)に示すように、積層体116の側面Sをサイドマージンシート117sに押し込み、積層体116をサイドマージンシート117sとともに弾性体200に沈みこませる。このとき、サイドマージンシート117sは、弾性体200から加わるせん断力によって、積層体116に押圧された領域のみが切り離される。
【0034】
そして、図6(c)に示すように、積層体116を弾性体200から離間するように移動させると、サイドマージンシート117sにおける積層体116の側面Sに貼り付いた部分のみが弾性体200から離間する。これにより、積層体116の側面Sにサイドマージン部117が形成される。
【0035】
続いて、積層体116を保持するテープTを別のテープTに張り替えることにより、積層体116のY軸方向の向きを反転させる。そして、サイドマージン部117が形成されていない積層体116の反対側の側面Sにも、上記と同様の要領でサイドマージン部117を形成する。本実施形態では、積層体116の押し込み量を調整することで、安定してサイドマージンシート117sを打ち抜くことができる。その詳細な方法については後述する。
【0036】
ステップS02により、積層体116の両側面Sに、サイドマージン部117が形成された未焼成のセラミック素体111が得られる。図7は、未焼成のセラミック素体111の斜視図である。未焼成のセラミック素体111では、内部電極112,113が露出した積層体116の側面Sがサイドマージン部117によって覆われている。
【0037】
なお、図6及び図8~10では、テープT上に積層体116が3つ配置されているが、積層体116はX-Y平面に沿って等間隔に複数個並んでおり、その数及び間隔は適宜変更可能である。また、積層体116は、典型的にはテープT上に矩形に並んでいるが、並び方はこれに限られない。
【0038】
(ステップS03:焼成)
ステップS03では、ステップS02で得られた未焼成のセラミック素体111を焼成することにより、図1~3に示す積層セラミックコンデンサ10のセラミック素体11を作製する。つまり、ステップS03によって、積層体116が積層体16になり、サイドマージン部117がサイドマージン部17になる。
【0039】
ステップS03における焼成温度は、未焼成のセラミック素体111の焼結温度に基づいて決定することができる。例えば、チタン酸バリウム(BaTiO)系材料を用いる場合には、焼成温度は1000~1300℃程度とすることができる。また、焼成は、例えば、還元雰囲気下、又は低酸素分圧雰囲気下において行うことができる。
【0040】
(ステップS04:外部電極形成)
ステップS04では、ステップS03で得られたセラミック素体11のX軸方向両端部に外部電極14,15を形成することにより、図1,3に示す積層セラミックコンデンサ10を作製する。ステップS04における外部電極14,15の形成方法は、公知の方法から任意に選択可能である。
【0041】
また、外部電極14,15は、未焼成のセラミック素体111と同時焼成してもよい。即ち、ステップS02の後に未焼成のセラミック素体111のX軸方向両端部に未焼成の外部電極を形成し、ステップS03で未焼成のセラミック素体111と同時に焼成することで外部電極14,15を形成することも可能である。
【0042】
以上の製造方法により、積層セラミックコンデンサ10が作製される。
【0043】
[サイドマージンシート117sの打ち抜き方法の詳細]
ステップS02において、積層体116の側面Sでサイドマージンシート117sを打ち抜くことにより、積層体116の側面Sにサイドマージン部117を形成する方法について詳細に説明する。なお、積層体116の他方の側面Sについても、一方の側面Sと同様にサイドマージン部117を形成可能である。
【0044】
一般に、弾性体を用いてサイドマージン部を後付けする方法では、積層体の押し込み量が少なすぎると、弾性体によるせん断力が足りないためにサイドマージンシートが切り離されず、適切にサイドマージンシートを打ち抜くことができない。これにより、サイドマージンシートの打ち抜き不良が発生する。このため、積層体の押し込み量を充分に多くする必要がある。
【0045】
しかし、積層体の押し込み量が多すぎる場合にも不具合が発生する。図8(a)は、弾性体200への積層体116の押し込み量が多すぎる状態を示す図である。また、図8(b)は、図8(a)の状態から積層体116を引き抜いた状態を示す図である。
【0046】
積層体116の押し込み量が多すぎると、図8(a)に示すように、圧縮変形した弾性体200の応力(復元力)が積層体116の主面方向及び端面方向に強く働く。この状態で、弾性体200から積層体116を引き抜くと、図8(b)に示すように、積層体116の側面に貼り付けたサイドマージン部117が剥離してしまったり(図中左の積層体116)、サイドマージン部117がズレてしまったり(図中中央の積層体116)、テープTから積層体116が引き剥がされてしまったり(図中右の積層体116)することがある。
【0047】
よって、上記のように打ち抜き量が極端な場合では、製造過程においてサイドマージンシートの打ち抜き不良や剥離等が発生するため、製品の歩留まりが低下する問題が生じる。
【0048】
そこで、本実施形態では、ステップS02において、サイドマージンシート117sが配置された弾性体200に対して、積層体116の押し込み量Dが適切な量に設定されている。以下、本実施形態のサイドマージンシート117sの打ち抜き方法について説明する。図9(a)は、弾性体200に積層体116を押し込む寸前の状態を示す図である。また、図9(b)は、弾性体200に積層体116を適切な押し込み量で押し込んだ状態を示す図である。
【0049】
本実施形態において、積層体116の押し込み量Dとは、サイドマージンシート117sが配置された弾性体200に、積層体116をY軸方向に沿って押し込んだときの、積層体116のY軸方向の変位である。具体的に、積層体116の弾性体200側を向いた側面Sがサイドマージンシート117sに接触した状態(図9(a)の状態)から押し込み後(図9(b)の状態)までの、当該側面SのY軸方向の変位を押し込み量Dとする。即ち、押し込み量Dは、弾性体200を保持する保持部材300及び当該側面S間の距離によって規定される。
【0050】
図9(a)に示すように、弾性体200に積層体116を押し込む寸前の状態では、サイドマージンシート117sと、積層体116の弾性体200側の側面Sとが接触している。このときの保持部材300及び当該側面S間の距離をDとし、押し込み量Dの基準値とする。従って、このときの押し込み量Dは0となる。
【0051】
次に、図9(b)に示すように、弾性体200に積層体116を押し込んだ状態では、弾性体200側の側面Sが保持部材300に近づく。このときの保持部材300及び当該側面S間の距離をDとすると、押し込み量Dは、D=D-Dで表すことができる。
【0052】
本実施形態では、押し込み量Dは、サイドマージンシート117sのY軸方向の厚みの2倍以上、かつ、積層体116のY軸方向の厚みの2倍以下となっている。押し込み量Dを、サイドマージンシート117sのY軸方向の厚みの2倍以上とすることにより、サイドマージンシート117sに、打ち抜きに充分な量のせん断力を加えることができる。これにより、サイドマージンシート117sを適切に打ち抜くことができる。
【0053】
また、押し込み量Dを、積層体116のY軸方向の厚みの2倍以下とすることにより、積層体116の主面及び端面に働く、圧縮変形した弾性体200による応力を軽減することができる。これにより、サイドマージン部117や積層体116の剥離を防止することができる。
【0054】
つまり、上記の各条件を満たすことで、積層体116の側面Sに安定してサイドマージン部117を形成することが可能となる。
【0055】
本実施形態では、弾性体200の静的せん断弾性率は、5MPa以下とすることが好ましい。弾性体200の静的せん断弾性率を5MPa以下とすることで、弾性体200に積層体116を適切に押し込むことができる。
【0056】
なお、図9(b)の状態においても、圧縮変形した弾性体200の応力が積層体116の主面方向及び端面方向に働いているが、弾性体200が大きく圧縮変形していないため、その力は弱くなる。このため、積層体116及び貼り付けたサイドマージンシート117sが剥がれるおそれがない。
【0057】
図10(a)は、積層体116間のサイドマージンシート117sがテープTに接するまで押し込んだ状態を示す図である。また、図10(b)は、図10(a)の状態から積層体116を引き抜いた状態を示す図である。
【0058】
図10(a)に示すように、積層体116間のサイドマージンシート117sがテープTに接するまで押し込んだ状態であっても、押し込み量Dがサイドマージンシート117sのY軸方向の厚みの2倍以上、かつ、積層体116のY軸方向の厚みの2倍以下となっていれば、図10(b)に示すように問題なく打ち抜くことができる。
【0059】
図10(b)において、テープTに接着されたサイドマージンシート117sは、積層体116を別のテープTに移し替える際に回収することができる。よって、上記のようなサイドマージンシート117sの打ち抜き方法によれば、サイドマージン部117を安定して形成可能であり、かつ、打ち抜き後のサイドマージンシート117sの残留を防止することが可能である。
【0060】
[その他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。
【0061】
例えば、上記実施形態では積層セラミック電子部品の一例として積層セラミックコンデンサ10について説明したが、本発明は積層セラミック電子部品全般に適用可能である。このような積層セラミック電子部品としては、例えば、チップバリスタ、チップサーミスタ、積層インダクタなどが挙げられる。
【符号の説明】
【0062】
10…積層セラミックコンデンサ
11,111…セラミック素体
12,13,112,113…内部電極
16,116…積層体
17,117…サイドマージン部
117s…サイドマージンシート
18,118…容量形成部
19,119…カバー部
200…弾性体
300…保持部材
S…側面
T…テープ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10