IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社カーメイトの特許一覧

特許7122131車両空調フィルタへの含浸材取付方法及び車両空調フィルタ用含浸材ユニット
<>
  • 特許-車両空調フィルタへの含浸材取付方法及び車両空調フィルタ用含浸材ユニット 図1
  • 特許-車両空調フィルタへの含浸材取付方法及び車両空調フィルタ用含浸材ユニット 図2
  • 特許-車両空調フィルタへの含浸材取付方法及び車両空調フィルタ用含浸材ユニット 図3
  • 特許-車両空調フィルタへの含浸材取付方法及び車両空調フィルタ用含浸材ユニット 図4
  • 特許-車両空調フィルタへの含浸材取付方法及び車両空調フィルタ用含浸材ユニット 図5
  • 特許-車両空調フィルタへの含浸材取付方法及び車両空調フィルタ用含浸材ユニット 図6
  • 特許-車両空調フィルタへの含浸材取付方法及び車両空調フィルタ用含浸材ユニット 図7
  • 特許-車両空調フィルタへの含浸材取付方法及び車両空調フィルタ用含浸材ユニット 図8
  • 特許-車両空調フィルタへの含浸材取付方法及び車両空調フィルタ用含浸材ユニット 図9
  • 特許-車両空調フィルタへの含浸材取付方法及び車両空調フィルタ用含浸材ユニット 図10
  • 特許-車両空調フィルタへの含浸材取付方法及び車両空調フィルタ用含浸材ユニット 図11
  • 特許-車両空調フィルタへの含浸材取付方法及び車両空調フィルタ用含浸材ユニット 図12
  • 特許-車両空調フィルタへの含浸材取付方法及び車両空調フィルタ用含浸材ユニット 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-10
(45)【発行日】2022-08-19
(54)【発明の名称】車両空調フィルタへの含浸材取付方法及び車両空調フィルタ用含浸材ユニット
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/12 20060101AFI20220812BHJP
   B60H 3/06 20060101ALI20220812BHJP
   B65D 83/00 20060101ALI20220812BHJP
   B65D 85/00 20060101ALI20220812BHJP
【FI】
A61L9/12
B60H3/06
B60H3/06 631
B65D83/00 F
B65D85/00 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018043364
(22)【出願日】2018-03-09
(65)【公開番号】P2019154656
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2021-01-28
(73)【特許権者】
【識別番号】391021226
【氏名又は名称】株式会社カーメイト
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100174609
【弁理士】
【氏名又は名称】関 博
(72)【発明者】
【氏名】田島 一希
(72)【発明者】
【氏名】恩本 吉一
【審査官】佐藤 正浩
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-504172(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/12
B60H 3/06
B65D 83/00
B65D 85/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続する山折り部と谷折り部から成るフィルタ面が平置き状態で取り付けられる車両空調フィルタへの含浸材取付方法であって、
前記フィルタの上面側に構成された前記山折り部をクリップで挟み込む事で、前記フィルタの上面側に構成された谷折り部に配置した揮発成分含浸材を保持する構成とし、
前記クリップは、一方の爪の内側に前記揮発成分含浸材が接触し、他方の爪の内側に前記山折り部が接触していることを特徴とする車両空調フィルタへの含浸材取付方法。
【請求項2】
前記一方の爪と前記他方の爪の間に前記山折り部を配置した後、前記爪の側方から前記揮発成分含浸材を挿入することを特徴とする請求項1に記載の車両空調フィルタへの含浸材取付方法。
【請求項3】
連続する山折り部と谷折り部からなる車両空調フィルタの厚み内に収まる高さを備えた棒状の揮発成分含浸材と、
前記揮発成分含浸材と、前記揮発成分含浸材を配置した谷折り部に隣接する山折り部とを共に、前記揮発成分含浸材の配置側面から挟持するクリップと、を有し、
前記揮発成分含浸材は、少なくとも一方の端部に、揮発成分材料を含浸させない持ち手部を有することを特徴とする車両空調フィルタ用含浸材ユニット。
【請求項4】
前記クリップは、前記揮発成分含浸材を保持する保持部と、少なくとも前記山折り部を挟持する爪を有することを特徴とする請求項に記載の車両空調フィルタ用含浸材ユニット。
【請求項5】
前記揮発成分含浸材は、指定開放端部に前記持ち手部が位置するように配置して密閉容器に封止されて保管されていることを特徴とする請求項3または4に記載の車両空調フィルタ用含浸材ユニット。
【請求項6】
前記揮発成分含浸材の長手方向に沿った側面には、前記谷折り部の断面形状に沿った非並行面が形成されていることを特徴とする請求項乃至のいずれか1項に記載の車両空調フィルタ用含浸材ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両空調フィルタに対し、消臭成分や、抗菌成分、あるいは芳香成分を含浸させた含浸材を取り付ける方法、および取り付け対象とする含浸材ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
車両空調フィルタに対して消臭成分や、抗菌成分、あるいは芳香成分を付与する手段としては、大別して、フィルタ自体にその機能を持たせる手段と、フィルタにその機能を有するものを備え付けるという手段が知られている。
【0003】
フィルタ自体に消臭や抗菌、芳香といった機能を持たせる手段としては、例えば特許文献1に開示されているようなものが知られている。特許文献1に開示されているフィルタは、フィルタを構成する不織布を複数の層で構成している。そして、層間に消臭成分材料等を挟み込む事で、フィルタ自体に消臭成分材料を担持させ、フィルタ自体に消臭機能を持たせるというものである。
【0004】
一方、フィルタに消臭や芳香といった機能を有するものを備え付ける手段としては、例えば特許文献2や、非特許文献1に開示されているようなものが知られている。特許文献2に開示されている技術は、凹状部を備えた容器に芳香成分材料を配置した芳香素材をフィルタにおける通風の上流側に位置する面に配置するというものである。芳香素材の配置は、フィルタの外周に位置する縁(枠部)を利用した貼付、あるいは掛け止めによって成される。
【0005】
また、非特許文献1に開示されている技術は、抗菌成分を備えたユニットをフィルタにおける通風の下流側に配置し、上流側からフィルタ素材ごとクリップで挟み込むことで、フィルタに対してユニットを固定するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-137801号公報
【文献】特表2017-522964号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】Valeo[ウェブサイト]、[日本のアフターマーケット]、[平成30年3月5日検索]、インターネット<URL:http://www.valeo.co.jp/about-valeo-in-japan/aftermarket-in-japan/aftermarket-in-japan-wasabi-d-air.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献、非特許文献に開示されている技術は、いずれも消臭、抗菌、芳香といった効果を奏するものであると考えられる。しかし、それぞれ次のような問題がある。例えば、特許文献1に開示されているフィルタの場合、消臭成分の機能維持期間は、フィルタの機能維持期間よりも短い。このため、消臭成分の機能を確保するためには、フィルタ自体の機能には問題無いにも関わらず、フィルタを交換する必要が生じる。
【0009】
特許文献2に開示されている芳香素材は、フィルタ表面に配置するタイプである。このため、フィルタ面と枠部の高さ(厚み)が同じフィルタの場合、芳香剤の配置によりフィルタの取り付けが困難となる場合が生じる。
【0010】
非特許文献1に開示されているユニットは、フィルタの一方の面に配置したユニットをフィルタの他方の面からクリップで固定する取り付け形態である。このため、取付状態の確認がし辛いと共に、水平配置のフィルタにおいては、下面に配置した部材(ユニット、あるいはクリップ)が、手の届かない車内に脱落する危険性がある。
【0011】
そこで本発明では、上記問題を解決し、フィルタと別体の含浸材であり、フィルタの厚みへの影響、及び脱落の危険性が無い車両空調フィルタへの含浸材取付方法及び車両空調フィルタ用含浸材ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するための車両空調フィルタへの含浸材取付方法は、連続する山折り部と谷折り部から成るフィルタ面が平置き状態で取り付けられる車両空調フィルタへの含浸材取付方法であって、前記フィルタの上面側に構成された前記山折り部をクリップで挟み込む事で、前記フィルタの上面側に構成された谷折り部に配置した揮発成分含浸材を保持することを特徴とする。
【0013】
また、上記のような特徴を有する車両空調フィルタへの含浸材取付方法において、前記クリップは、一方の爪の内側に前記揮発成分含浸材が接触し、他方の爪の内側に前記山折り部が接触しているようにすると良い。このような特徴を有することによれば、揮発成分含浸材と山折り部とが密接した状態で、1つのクリップに挟持されることとなる。これにより、取付状態の安定化を図ることができる。
【0014】
また、上記のような特徴を有する車両空調フィルタへの含浸材取付方法において、前記クリップは、一方の爪と他方の爪双方の内側に前記山折り部が接触し、2つの山折り部の間に前記揮発成分含浸材が配置されているようすることもできる。このような特徴を有する事によれば、連続する山折り部と谷折り部によって構成される蛇腹の間隔が狭い場合や、フィルタを構成する素材が薄手である場合であっても、クリップの形状を変える事なく対応することができる。
【0015】
また、上記のような特徴を有する車両空調フィルタへの含浸材取付方法では、前記一方の爪と前記他方の爪の間に前記山折り部を配置した後、前記爪の側方から前記揮発成分含浸材を挿入するようにすることが望ましい。このような特徴を有する事によれば、クリップを広げる事なく揮発成分含浸材の取り付けを行う事ができる。よって、クリップを広げるための持ち手部を無くす事ができ、フィルタ上面からの突出部を生じさせない。
【0016】
また、上記目的を達成するための車両空調フィルタ用含浸材ユニットは、連続する山折り部と谷折り部からなる車両空調フィルタの厚み内に収まる高さを備えた棒状の揮発成分含浸材と、前記揮発成分含浸材と、前記揮発成分含浸材を配置した谷折り部に隣接する山折り部とを共に、前記揮発成分含浸材の配置側面から挟持するクリップと、を有することを特徴とする。
【0017】
また、上記のような特徴を有する車両空調フィルタ用含浸材ユニットにおいて前記クリップは、前記揮発成分含浸材を保持する保持部と、少なくとも前記山折り部を挟持する爪を有する構成とすると良い。このような特徴を有する事によれば、揮発成分含浸材の保持と、取付状態の安定化の双方の効果を奏することができる。
【0018】
また、上記のような特徴を有する車両空調フィルタ用含浸材ユニットにおいて前記揮発成分含浸材は、少なくとも一方の端部に、揮発成分材料を含浸させない持ち手部を有する構成とすると良い。このような特徴を有する事によれば、揮発成分含浸材を取り扱う際、手などの把持部に揮発成分材料が付着する事を防ぐことができる。
【0019】
また、上記のような特徴を有する車両空調フィルタ用含浸材ユニットにおいて前記揮発成分含浸材は、指定開放端部に前記持ち手部が位置するように配置して密閉容器に封止されて保管される構成とすることができる。このような特徴を有する事によれば、揮発成分含浸材の使用可能状態を長期的に維持する事が可能となる。また、密閉容器から揮発成分含浸材を取り出す際、手などの把持部に揮発成分含浸材料が付着することを防ぐことができる。
【0020】
さらに、上記のような特徴を有する車両空調フィルタ用含浸材ユニットでは、前記揮発成分含浸材の長手方向に沿った側面に、前記谷折り部の断面形状に沿った非並行面が形成されている構成とすることが望ましい。このような特徴を有する事によれば、フィルタの谷部へ揮発成分含浸材の収まりを良好にする事ができる。また、平板状に形成する場合に比べて揮発成分含浸材の体積を大きくする事ができ、揮発成分材料の含浸量を増やすことができる。
【発明の効果】
【0021】
上記のような特徴を有する車両空調フィルタへの含浸材取付方法及び車両空調フィルタ用含浸材ユニットによれば、フィルタと別体の含浸材でありながら、フィルタの厚みへの影響が殆ど無く、その厚みに関わらず取り付けを行う事ができる。また、フィルタと別体の構成としながらも、例えばフィルタの下面側へ構成部材が落下するといった虞が無い。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】第1実施形態に係る含浸材ユニットの構成を示す分解斜視図である。
図2】フィルタに対する含浸材ユニットの取り付け方を説明するための斜視図である。
図3】フィルタの上面側に構成された山折り部にクリップを配置した状態を示す断面図である。
図4】山折り部をクリップの他方の爪側へ偏らせた状態を示す断面図である。
図5】クリップの一方の爪とフィルタの山折り部との間に形成された隙間に揮発成分含浸材を挿入した状態を示す図である。
図6】フィルタの上面側に含浸材ユニットを取り付けた状態を示す斜視図である。
図7】揮発成分含浸材を保管する密閉容器と、密閉容器内での揮発成分含浸材の配置形態を示す斜視図である。
図8】第1実施形態に係る含浸材ユニットにおけるクリップの変形例を示す正面構成図である。
図9】第1実施形態に係る含浸材ユニットにおけるクリップの変形例を示す側面構成図である。
図10】第1実施形態に係る含浸材ユニットにおけるクリップの変形例を示す側面構成図であり、持ち手部を分離した状態を示す。
図11】第2実施形態に係る含浸材ユニットの構成を示す斜視図である。
図12】第3実施形態に係る含浸材ユニットの構成を示す斜視図である。
図13】第3実施形態に係る含浸材ユニットの変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の車両空調フィルタへの含浸材取付方法及び車両空調フィルタ用含浸材ユニットに係る実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。まず、図1を参照して、第1実施形態に係る車両空調フィルタ用含浸材ユニットについて説明する。
【0024】
[第1実施形態]
本実施形態に係る車両空調フィルタ用含浸材ユニット(以下、単に含浸材ユニット10と称す)は、揮発成分含浸材12と、クリップ16を基本として構成されている。揮発成分含浸材12は、消臭や抗菌、あるいは芳香といった機能を成す揮発成分材料を含浸させた素材である。母材としては、前述のような機能を成す揮発成分材料を含浸させる事ができる空隙等を有する素材であれば良く、例えば多孔質樹脂や、紙、多孔質あるいは成分置換が可能な鉱物などを採用する事ができる。
【0025】
本実施形態に係る揮発成分含浸材12は、棒状部材により構成されており、長手方向の一方の端部に持ち手部14を備えている。持ち手部14は、揮発成分材料が含浸しない素材により構成されている。持ち手部14を把持して揮発成分含浸材12を取り扱う事により、揮発成分材料が手などに付着することを防ぐ事ができるからである。
【0026】
また、本実施形態に係る揮発成分含浸材12は、長手方向と直交する方向の断面形状を台形としている(例えば図5参照)。詳細を後述するフィルタ40の谷折り部46の断面形状(谷折り部46から山折り部44にかけての傾斜面)に沿った非並行面12aを、長手方向に沿った側面に備える構成とすることで、谷折り部46への収容性を向上させることができるからである。また、断面形状を台形状とすることで、揮発成分含浸材12を平板状に形成する場合に比べ、揮発成分含浸材12の体積を大きくすることができる。これにより、揮発成分材料の含浸量を増やす事ができ、機能の持続性や効能を高めることが可能となる。
【0027】
また、本実施形態に係る揮発成分含浸材12は、持ち手部14を配置した端部と反対側の端部(先端側端部)に、テーパ部12bを形成している。テーパ部12bを備える事により、詳細を後述するクリップ16に対する挿入を容易化することができる。
【0028】
クリップ16は、揮発成分含浸材12をフィルタ40に取り付けるための要素である。クリップ16は、一対の爪(一方の爪18と他方の爪20の双方を示す)と、一対の爪18,20の基端側を連結する連結部22から成るコ字状を成している。一対の爪18,20は、基端側に比べて先端側の配置幅が狭まるように傾倒して構成されており、先端には、互いに対向する方向に延設された反し18a,20aが備えられている。このような構成とすることで、挟み込み時に一対の爪18,20が拡開された場合には、挟持効果を奏することができる。また、爪の先端に反し18a,20aを設ける事により、フィルタ40に対する掛かりを持つ事ができ、抜け止め効果を奏することとなる。ここで、連結部22から反し18a,20aまでの距離D図4参照)を揮発成分含浸材12の高さD図5参照)に合わせ、揮発成分含浸材12を保持可能な構成とすることで、挟持状態(組付状態)の安定化を図ることができる。
【0029】
このような構成の揮発成分含浸材12とクリップ16のうち、少なくとも揮発成分含浸材12は、保管時には図7に示すような密閉容器30に封止されている。不使用時(保管時)には、揮発成分材料の拡散を防ぎ、使用可能状態を維持する必要があるからである。密閉容器30を、図7に示すような袋状とした場合、揮発成分含浸材12は、その持ち手部14が、密閉容器30の指定開放端部32側に位置するように収納される。このような収納形態とすることで、使用者は、密閉容器30の開封を行った後、持ち手部14以外に触れる事なく揮発成分含浸材12を取り出すことができるからである。
【0030】
[取り付け]
次に、上記のような構成の含浸材ユニット10のフィルタ40への取り付けについて説明する。ここで、含浸材ユニット10を取り付けるフィルタ40は、図2から図6に示すように、連続する山折り部44と谷折り部46によって構成する蛇腹構造のフィルタ面42を構成し、蛇腹の形成方向と直交する端面には、側壁部48を有する。フィルタ面は、不織布等により形成されており、蛇腹状に折り込む事により、平面状態に比べて表面積を広げることができ、通気効率の向上を図ることができる。なお、本実施形態において、含浸材ユニット10を取り付けるフィルタ40は、フィルタ面42が平置き状態(例えば水平)で取り付けられることを前提としている。よって、以下の説明では、フィルタ40の一方の面を上面、他方の面を下面と称する。
【0031】
本実施形態に係る含浸材ユニット10は、まず、図3に示すように、フィルタ40の上面側に形成された1つの山折り部44を一対の爪18,20が跨ぐように、クリップ16をフィルタ面42に被せる。次に、クリップ16の内側に位置している山折り部44を一方の爪18または他方の爪20側に偏らせる(本実施形態では一例として、他方の爪20側に偏らせることとする)。山折り部44を他方の爪20側に偏らせた事により、図4に示すように、一方の爪18と山折り部44との間の隙間が拡開される。
【0032】
一方の爪18と山折り部44との間の隙間を拡開させた後、図5に示すように、隙間に揮発成分含浸材12を挿入する。揮発成分含浸材12の挿入は、クリップ16の断面方向、すなわち、一対の爪18,20の配置方向と直交する方向から行う。ここで、揮発成分含浸材12は、非並行面が、谷折り部46(2つの山折り部44の間に形成される谷部)の傾斜に倣う方向を向いた状態となるようにする。揮発成分含浸材12の配置方向をこのように定める事で、クリップ16へのスライド挿入が可能となると共に、楔形状により、クリップ16からの脱落を防ぐことができる。このようにして、揮発成分含浸材12をスライド挿入することで、クリップ16に設けた一対の爪18,20を故意に拡開させる事無く揮発成分含浸材12を保持させることが可能となる。
【0033】
また、このような挟持状態では、一方の爪18の反し18aが揮発成分含浸材12をホールドし、他方の爪20の反し20aがフィルタ40に掛かることとなる。このため、クリップ16は、揮発成分含浸材12の保持効果と、フィルタ40に対する抜け止め効果の双方を発揮することができる。
【0034】
[効果]
上記のようにして、含浸材ユニット10をフィルタ40へ取り付けることによれば、含浸材ユニット10の構成部材である揮発成分含浸材12と、クリップ16の双方をフィルタ40の上面側に配置した状態で取り付けを実現することができる。このため、構成部材がフィルタ40の下面側へ脱落する虞が無い。また、揮発成分含浸材12と、クリップ16の双方をフィルタの上面側に配置することで、取り付け時の視認性が良好となり、取り付け不良を防ぐことができる。
【0035】
また、揮発成分含浸材12の高さDをクリップ16を構成する一対の爪18,20の高さ(連結部22から反し18a,20aまでの距離D)に合わせた棒状に形成し、フィルタ40の谷折り部46(2つの山折り部44の間に形成される谷部)に配置可能な構成とすることで、取付状態においてフィルタ40の上面への突出部が生じない構成としている。このため、フィルタ40の厚みhが薄い場合であっても取り付けを可能とし、フィルタ40自体の車両への着脱にも支障を生じさせることがない。
【0036】
[変形例1]
上記実施形態では、含浸材ユニット10をフィルタ40へ取り付けた際、一方の爪18の内側に揮発成分含浸材12が当接し、他方の爪20の内側にフィルタ40の山折り部44が当接している状態となる旨記載した。しかしながら、一方の爪18の内側と他方の爪20の内側の双方に、それぞれ個別の山折り部44を当接させ、2つの山折り部44の間にできる隙間に揮発成分含浸材12を配置する構成としても良い。このような取付状態とした場合であても、構成部材の脱落防止、取り付け時の視認性確保、およびフィルタ40の着脱良好性の確保といった効果を奏することができるからである。
【0037】
また、このような取り付け方法を採用する場合、連続する山折り部44と谷折り部46によって構成される蛇腹の間隔が狭い場合や、フィルタ40を構成する素材が薄手である場合であっても、クリップ16の形状を変える事なく取り付けを実施することができるようになる。
【0038】
[変形例2]
また、上記実施形態では、フィルタ40への含浸材ユニット10の取り付けについて、クリップ16を配置した後、揮発成分含浸材12をスライド挿入する旨記載した。しかしながら、含浸材ユニット10の取り付けは、フィルタ40の谷折り部46に揮発成分含浸材12を配置した後、クリップ16による挟持を行うようにしても良い。
【0039】
このような工程で、含浸材ユニット10の取り付けを行う場合、例えば図8から図10に示すような形態のクリップ16を採用すると良い。なお、図8は、クリップの正面形態を示す図であり、図9はクリップの側面形態を示す図である。また、図10は、クリップから力点となる持ち手部24を取り外した状態を示す図である。
【0040】
このようなクリップ16を採用する場合、揮発成分含浸材12を谷折り部46に配置した後、持ち手部24の上端を矢印Aで示す方向に押圧することで、一方の爪18と他方の爪20の先端が矢印Bで示す方向に拡開する。一方の爪18と他方の爪20を拡開させた状態でフィルタ40の山折り部44と揮発成分含浸材12を挟み込み、持ち手部24の押圧を解除することで、一対の爪18,20の先端の拡開も解除され、挟持・固定状態が生じることとなる。
【0041】
クリップ16による挟持が完了した後、持ち手部24の基端を矢印Cで示す方向へ押圧することで、一方の爪18と他方の爪20それぞれと、持ち手部24との係合を解除することが可能となり、図10に示すように、持ち手部24を分離することができる。持ち手部24を分離させることで、取付状態において、フィルタ40の上面への突出部が無くなり、上記実施形態と同様な効果を奏することが可能となる。
【0042】
[変形例3]
上記実施形態では、フィルタ40に対して含浸材ユニット10を1つ配置するように記載した。しかしながら、本実施形態に係る含浸材ユニット10は、フィルタ40に許容される取り付けスペースが存在する限りにおいて、単一のフィルタ40に複数の含浸材ユニット10を取り付けることができる。このように、フィルタ40に対する含浸材ユニット10の取り付け数を変化させた場合には、芳香や消臭、抗菌といった機能の効力を調整することができる。
【0043】
また、含浸材ユニット10を複数取り付ける場合において、それぞれの揮発成分含浸材12に含浸されている揮発成分材料の効能を変化させても良い。すなわち、異なる香り成分の揮発成分材料を含浸させた揮発成分含浸材12を組み合わせて配置することもできるし、芳香作用を持つ揮発成分材料を含浸させた揮発成分含浸材12と、抗菌作用を持つ揮発成分材料を含浸させた揮発成分含浸材12とを組み合わせて配置しても良い。このような取り付け形態とした場合には、複合的な芳香や、効果を得る事が可能となる。
【0044】
さらに、揮発成分の効力や機能維持期間については、揮発成分含浸材12の体積(揮発成分材料の含浸量)と、揮発成分含浸材12の表面積(揮発成分材料の揮発効率)に依存する。このため、揮発成分含浸材12の長さを変化させて体積を増減させたり、表面形状を変化(凹凸やスリットを設ける等)させて表面積を増減させる事によりその効力や機能維持期間を調整しても良い。
【0045】
[第2実施形態]
次に、図11を参照して、第2実施形態に係る含浸材ユニット10Aについて説明する。本実施形態に係る含浸材ユニット10Aは、揮発成分含浸材12とクリップ16を有し、揮発成分含浸材12には、持ち手部14を備えるという点で、第1実施形態に係る含浸材ユニット10と一致する。一方で、フィルタ40への取り付けに関し、持ち手部14をクリップ16へ係合させる事により成すという点で第1実施形態に係る含浸材ユニット10と異なる。
【0046】
本実施形態では、持ち手部14におけるクリップ16との対向側面に、ジョイント溝14aが形成されており、クリップ16の対向側面には、ジョイントキー16aが形成され、フィルタ40を挟持したクリップ16に対して、持ち手部14をジョイント接続可能な構成としている。
【0047】
含浸材ユニット10をこのような構成とした場合であっても、フィルタ40の上面側に構成された山折り部44をクリップで挟み込む事で、フィルタ40の上面側に構成された谷折り部46に配置した揮発成分含浸材12を保持するという点に変わりは無く、また、上記実施形態と同様な効果を奏する事ができる事により、本発明の一部とみなすことができる。なお、本実施形態では、持ち手部14にジョイント溝14aを形成し、クリップ16にジョイントキー16aを形成する旨記載した。しかしながら、持ち手部14にジョイントキーを形成し、クリップ16にジョイント溝を形成する構成としても、その機能に変わりは無い。また、このような構成の含浸材ユニット10Aは、実質的に、クリップ16が、揮発成分含浸材12を保持する保持部と、山折り部44を挟持する爪を備えている事と相違が無い。
【0048】
[第3実施形態]
次に、図12を参照して、第3実施形態に係る含浸材ユニット10Bについて説明する。本実施形態に係る含浸材ユニット10Bは、持ち手部14に、上記実施形態におけるクリップ16の機能を持たせた事を特徴としている。
【0049】
具体的には、本実施形態に係る持ち手部14は、持ち手部14の側方に、フィルタ40の山折り部44を挟持可能な爪14b1を備えたクリップ部14bを設ける構成としている。このような構成のクリップ部14bは、持ち手部14本体の側面と爪14b1との間に形成される空隙に、フィルタ40の山折り部44を挟持可能な構成としている。
【0050】
含浸材ユニット10Bをこのような構成とした場合であっても、フィルタ10の上面側に構成された山折り部44をクリップ(クリップ部14b)で挟み込む事で、フィルタ40の上面側に構成された谷折り部46に配置した揮発成分含浸材12を保持するという点に変わりは無く、また、上記実施形態と同様な効果を奏する事ができる事より、本発明の一部とみなすことができる。また、このような構成の含浸材ユニット10Bは、持ち手14が爪14b1を備え、クリップとしての役割を担うこととしているが、実質的に、クリップが、揮発成分含浸材12を保持する保持部と、山折り部44を挟持する爪を備えている事と相違が無い。
【0051】
[変形例1]
上記説明では、第3実施形態に係る含浸材ユニット10Bは、持ち手部14の一方の側方のみにクリップ部14bを備える構成としていた。しかし、本実施形態に係る含浸材ユニット10Bは、図13に示すように、持ち手部14の両側にクリップ部14bを備える構成としても良い。このような構成とした場合であっても、その機能を満たす事が可能だからである。
【符号の説明】
【0052】
10,10A,10B………含浸材ユニット、12………揮発成分含浸材、12a………非並行面、12b………テーパ部、14………持ち手部、14a………ジョイント溝、14b………クリップ部、14b1………爪、16………クリップ、18………一方の爪、18a………反し、20………他方の爪、20a………反し、22………連結部、24………持ち手部、30………密閉容器、32………指定開放端部、40………フィルタ、42………フィルタ面、44………山折り部、46………谷折り部、48………側壁部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13