(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-10
(45)【発行日】2022-08-19
(54)【発明の名称】チップ部品の整列方法
(51)【国際特許分類】
H01G 13/00 20130101AFI20220812BHJP
【FI】
H01G13/00 331D
(21)【出願番号】P 2018059536
(22)【出願日】2018-03-27
【審査請求日】2021-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】若柳 秀謙
(72)【発明者】
【氏名】田中 翔太
(72)【発明者】
【氏名】中安 伸
(72)【発明者】
【氏名】古沢 暁
【審査官】菊地 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-007574(JP,A)
【文献】特開2017-054980(JP,A)
【文献】特開2017-057080(JP,A)
【文献】特開2008-091658(JP,A)
【文献】特開2018-098413(JP,A)
【文献】特開平10-284355(JP,A)
【文献】特開2012-124525(JP,A)
【文献】特開2017-010955(JP,A)
【文献】特開2003-142352(JP,A)
【文献】実開昭63-018832(JP,U)
【文献】特開平09-022810(JP,A)
【文献】特開2014-103195(JP,A)
【文献】特開平09-022845(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の凹部を有する非磁性体の治具を用いて複数のチップ部品を整列させる整列方法であって、
内部電極の積層方向に対向する一対の主面と、前記積層方向に直交する長手方向に対向する一対の端面と、前記積層方向及び前記長さ方向に直交する幅方向に対向し前記内部電極が露出する一対の側面と、を備えた各チップ部品を、
第1仕切りによって第1方向に形成された各凹部内に配置し、
前記複数のチップ部品が配置された前記治具上に、
前記第1仕切りに対応するように形成された第2仕切りを含み、かつ前記各凹部の開口を
それぞれ被覆する
複数の蓋部を有するカバー部材を
、各蓋部の前記第2仕切りが前記第1仕切り上に接するように配置することで、前記各チップ部品を収納する複数の閉空間を有する整列ケースを作製し、
磁石を前記整列ケースの前記第1方向を向いた表面に沿って移動させることにより、前記一対の側面が前記第1方向を向くように前記複数のチップ部品を整列させる
チップ部品の整列方法。
【請求項2】
請求項1に記載のチップ部品の整列方法であって、
前記閉空間は、前記各チップ部品が前記長手方向に平行な軸まわりに回転可能で前記幅方向に平行な軸まわりには回転不可能なサイズで構成される
チップ部品の整列方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のチップ部品の整列方法であって、
前記磁石は、前記第1方向に直交する第2方向に相互に対向する一対の端部と、前記一対の端部の間に位置する中間部と、を有し、前記第1方向及び第2方向に直交する第3方向に相互に対向するN極及びS極が形成され、
前記磁石を前記第3方向に沿って移動させることで、前記複数のチップ部品を整列させる
チップ部品の整列方法。
【請求項4】
請求項3に記載のチップ部品の整列方法であって、
前記磁石の前記中間部における前記第2方向に沿った寸法は、前記整列ケースの前記第2方向に沿った寸法以上の大きさを有する
チップ部品の整列方法。
【請求項5】
請求項3又は4に記載のチップ部品の整列方法であって、
前記磁石は、前記整列ケースから前記第3方向に離間した開始位置及び停止位置の間を前記第3方向に沿って移動する
チップ部品の整列方法。
【請求項6】
請求項5に記載のチップ部品の整列方法であって、
前記開始位置及び前記停止位置各々と前記整列ケースとの間の前記第3方向の距離は、前記磁石が前記整列ケース内の全てのチップ部品の姿勢に影響を与えない距離である
チップ部品の整列方法。
【請求項7】
請求項1から6のうちいずれか一項に記載のチップ部品の整列方法であって、
前記治具は、前記治具の前記カバー部材が配置される配置面に開口する第1吸引孔を有し、
前記第1吸引孔を介して前記カバー部材を前記治具に吸着させつつ、前記チップ部品を整列させる
チップ部品の整列方法。
【請求項8】
請求項1から7のうちいずれか一項に記載のチップ部品の整列方法であって、
前記治具は、前記各凹部の底面に開口する第2吸引孔を有し、
前記第2吸引孔を介して前記閉空間内を陰圧に維持しつつ、前記チップ部品を整列させる
チップ部品の整列方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層セラミックコンデンサ等の製造過程におけるチップ部品の整列方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、積層セラミックコンデンサの製造過程において、外部電極形成前のチップ部品の内部電極を一定の向きに揃える技術が知られていた。
【0003】
例えば、特許文献1には、チップ部品の平面寸法より大きな凹状のポケットにチップ部品を収容し、当該ポケットを備えた非磁性体のパレットの外側から磁石を移動することにより、内部電極の向きをポケットの底面と直交向きに整列する、チップ部品の向き整列方法が記載されている。この整列方法では、チップ部品の幅方向端部に露出する内部電極の引出し電極に磁力を作用させ、チップ部品をポケットの内部で吸引横転することで、チップ部品を整列させる。
【0004】
特許文献2には、電子部品チップを1個ずつ収容可能な複数個のキャビティが設けられた整列パレットを用意し、キャビティの下方に磁石を位置させ、整列パレットを揺動および/または振動させることによって、各キャビティ内に複数個の電子部品チップを振り込む、電子部品チップの取扱方法が記載されている。この取扱方法の電子部品チップを振り込む工程では、磁石が内部電極に磁力を及ぼすことによって、揺動および/または振動の際にも所定の向きの電子部品チップの姿勢が維持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-7574号公報
【文献】特開2003-142352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び2に記載の方法では、チップ部品がポケット(キャビティ)から飛び出したり、所望の方向に回転しないことがあり、チップ部品の整列効率を高めることが難しかった。
【0007】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、チップ部品を効率よく整列させることが可能なチップ部品の整列方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係るチップ部品の整列方法は、複数の凹部を有する非磁性体の治具を用いて複数のチップ部品を整列させる整列方法である。
内部電極の積層方向に対向する一対の主面と、上記積層方向に直交する長手方向に対向する一対の端面と、上記積層方向及び上記長さ方向に直交する幅方向に対向し上記内部電極が露出する一対の側面と、を備えた各チップ部品が、第1方向に形成された各凹部内に配置される。
上記複数のチップ部品が配置された上記治具上に、上記各凹部の開口を被覆するカバー部材を配置することで、上記各チップ部品を収納する複数の閉空間を有する整列ケースが作製される。
磁石を上記整列ケースの上記第1方向を向いた表面に沿って移動させることにより、上記一対の側面が上記第1方向を向くように上記複数のチップ部品が整列される。
【0009】
上記整列方法では、磁石が第1方向に直交する向きに積層された内部電極に作用することで、当該磁石の移動に伴ってチップ部品が回転する。これにより、内部電極が第1方向に平行な向きとなり、側面が第1方向を向くようにチップ部品が整列される。
チップ部品が配置される治具上にカバー部材が配置されることで、チップ部品は閉空間内で回転する。これにより、チップ部品が磁石の移動に伴って治具の外に飛散したり、他の凹部内に入り込んだりする不具合を防止することができる。したがって、チップ部品の整列効率を高めることができる。
【0010】
さらに、上記閉空間は、上記各チップ部品が上記長手方向に平行な軸まわりに回転可能で上記幅方向に平行な軸まわりには回転不可能なサイズで構成されてもよい。
これにより、チップ部品の幅方向に平行な軸まわりの回転を規制することができる。したがって、端面が第1方向を向くことを防止でき、より確実に側面が第1方向を向くようにチップ部品を整列させることができる。
【0011】
具体的に、上記磁石は、上記第1方向に直交する第2方向に相互に対向する一対の端部と、上記一対の端部の間に位置する中間部と、を有し、上記第1方向及び第2方向に直交する第3方向に相互に対向するN極及びS極が形成され、
上記磁石を上記第3方向に沿って移動させることで、上記複数のチップ部品を整列させてもよい。
上記磁石により、第2方向に平行な軸まわりに回り込むような方向の磁束が形成され、当該磁石の移動によって、複数のチップ部品に対して第2方向に平行な軸まわりに回転する向きの磁力が及ぼされる。これにより、複数のチップ部品の回転方向を制御し、より効率よく整列させることができる。
【0012】
この場合、上記磁石の上記中間部における上記第2方向に沿った寸法は、上記整列ケースの上記第2方向に沿った寸法以上の大きさを有してもよい。
上記磁石の中間部は、第2方向に平行な軸まわりに回り込むように揃った向きの磁束を形成する。上記構成の磁石が第3方向に沿って移動することで、整列ケースの第2方向に沿った幅全体に上記揃った向きの磁束を作用させることができる。したがって、整列効率をさらに高めることができる。
【0013】
また、上記磁石は、上記整列ケースから上記第3方向に離間した開始位置及び停止位置の間を上記第3方向に沿って移動してもよい。
これにより、上記磁石が整列ケースの第3方向全体にわたって移動することになり、整列ケースの第3方向に沿った長さ全体に上記揃った向きの磁束を作用させることができる。
【0014】
さらにこの場合、上記開始位置及び上記停止位置各々と上記整列ケースとの間の上記第3方向の距離は、上記磁石が上記整列ケース内の全てのチップ部品の姿勢に影響を与えない距離とすることができる。
これにより、整列ケースの第3方向全体にわたって上記磁石の影響を均一に与えることができる。したがって、チップ部品の回転不足等を防止し、より確実にチップ部品を整列させることができる。
【0015】
上記治具は、上記治具の上記カバー部材が配置される配置面に開口する第1吸引孔を有し、
上記第1吸引孔を介して上記カバー部材を上記治具に吸着させつつ、上記チップ部品を整列させてもよい。
これにより、整列中にカバー部材が治具から外れて、チップ部品が凹部の外方に飛散することを防止することができる。
【0016】
上記治具は、上記各凹部の底面に開口する第2吸引孔を有し、
上記第2吸引孔を介して上記閉空間内を陰圧に維持しつつ、上記チップ部品を整列させてもよい。
これにより、磁石によって回転し、側面が第1方向を向いたチップ部品を底面に吸着させ、チップ部品の姿勢をより安定させることができる。したがって、整列効率をさらに高めることができる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によれば、チップ部品を効率よく整列させることが可能なチップ部品の整列方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る積層セラミックコンデンサの斜視図である。
【
図2】上記積層セラミックコンデンサの
図1のA-A'線に沿った断面図である。
【
図3】上記積層セラミックコンデンサの
図1のB-B'線に沿った断面図である。
【
図4】上記積層セラミックコンデンサの製造方法を示すフローチャートである。
【
図5】上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す斜視図である。
【
図6】上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す斜視図である。
【
図7】上記積層セラミックコンデンサの製造過程における、セラミック素体(チップ部品)の整列方法を示すフローチャートである。
【
図8】上記セラミック素体の整列過程を示す平面図である。
【
図9】上記セラミック素体の整列過程を示す、
図8のC-C'線に沿った断面図である。
【
図10】上記セラミック素体の整列過程を示す断面図である。
【
図11】上記セラミック素体の整列過程を示す断面図である。
【
図12】上記セラミック素体の整列過程を示す断面図である。
【
図13】上記セラミック素体の整列過程を示す断面図である。
【
図14】上記セラミック素体の整列過程を示す平面図である。
【
図15】上記セラミック素体の整列過程を示す断面図である。
【
図16】上記セラミック素体の整列過程を示す断面図である。
【
図17】上記セラミック素体の整列過程を示す断面図である。
【
図18】上記セラミック素体の整列過程を示す断面図である。
【
図19】上記セラミック素体の整列過程を示す断面図である。
【
図20】本発明の第2実施形態に係る整列装置の断面図である。
【
図21】本発明の第3実施形態に係る未焼成の積層チップ(チップ部品)の斜視図である。
【
図22】上記未焼成の積層チップの製造過程を示す斜視図である。
【
図23】上記未焼成の積層チップを用いて形成された未焼成のセラミック素体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0020】
<第1実施形態>
[積層セラミックコンデンサ10の構成]
図1~3は、本発明の第1実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10を示す図である。
図1は、積層セラミックコンデンサ10の斜視図である。
図2は、積層セラミックコンデンサ10の
図1のA-A'線に沿った断面図である。
図3は、積層セラミックコンデンサ10の
図1のB-B'線に沿った断面図である。
なお、図には、適宜相互に直交するx軸、y軸、及びz軸が示されている。これらの3軸は、積層セラミックコンデンサ10及び後述するセラミック素体11の姿勢を示す座標軸である。
【0021】
積層セラミックコンデンサ10は、セラミック素体11と、第1外部電極14と、第2外部電極15と、第3外部電極16と、第4外部電極17と、を具備する3端子型の積層セラミックコンデンサである。セラミック素体11は、本実施形態におけるチップ部品として構成される。
【0022】
なお、チップ部品は、平板状の内部電極と誘電体層とがz軸方向に交互に積層されており、x軸方向に長手を有する略直方体状の部品であって、少なくとも短手方向であるy軸方向に向いた面から内部電極が露出しているものとする。
【0023】
積層セラミックコンデンサ10では、例えば、外部電極14,15がスルー電極として構成され、外部電極16,17がグランド電極として構成される。外部電極14,15を端面外部電極14,15とも称し、外部電極16,17を側面外部電極16,17とも称する。
【0024】
セラミック素体11は、x軸方向に対向する2つの端面11a,11bと、y軸方向に対向する2つの側面11c,11dと、z軸方向に対向する2つの主面11e,11fと、を有する。セラミック素体11の各面を接続する稜部は面取りされているが、これに限定されない。なお、
図1では外部電極14,15,16,17に覆われたセラミック素体11の構成を破線で示している。
【0025】
セラミック素体11は、x軸方向に長手を有する。x軸方向におけるセラミック素体11の長さ寸法Lは、セラミック素体11のy軸方向における幅寸法W及びz軸方向における高さ寸法Tよりも大きい。また、幅寸法W及び高さ寸法Tは、実質的に同一であり、幅寸法Wに対する高さ寸法Tの差が10%以下である。
なお、長さ寸法Lは、セラミック素体11のx軸方向に沿った寸法のうち、最も大きい寸法とする。同様に、幅寸法W及び高さ寸法Tも、それぞれ、セラミック素体11のy軸方向及びz軸方向に沿った寸法のうち、最も大きい寸法とする。
【0026】
端面外部電極14,15は、x軸方向に相互に対向し、端面11a,11bを覆うように形成される。端面外部電極14,15は、いずれも後述する第1内部電極12に接続され、同一の極性を有する。
【0027】
側面外部電極16,17は、y軸方向に相互に対向し、セラミック素体11の側面11c,11dにそれぞれ設けられる。側面外部電極16,17は、それぞれ一方の主面11eから他方の主面11fまでz軸方向に延びる帯状に形成される。側面外部電極16,17は、いずれも後述する第2内部電極13に接続され、同一の極性を有するともに、端面外部電極14,15とは異なる極性を有する。
【0028】
外部電極14,15,16,17は、電気の良導体により形成されている。外部電極14,15,16,17を形成する電気の良導体としては、例えば、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、錫(Sn)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銀(Ag)、金(Au)などを主成分とする金属又は合金が挙げられる。
【0029】
セラミック素体11は、積層部18と、カバー部19と、を有する。積層部18は、内部電極12,13がセラミック層20を介してz軸方向に交互に積層された構成を有する。カバー部19は、積層部18のz軸方向上下面をそれぞれ覆っている。
【0030】
第1内部電極12は、セラミック素体11のx軸方向全長にわたって延びる帯状に形成される。第1内部電極12は、端面11a,11bに露出する引出部12a,12bを含み、引出部12a,12bを介して端面外部電極14,15に接続される。
【0031】
第2内部電極13は、セラミック素体11のx-y平面内の中央部に形成される。第2内部電極13は、側面11c,11dに露出する引出部13a,13bを含み、引出部13a,13bにより側面外部電極16,17に接続される。なお、第1内部電極12のy軸方向の幅寸法と引出部13a,13bを除く第2内部電極13のy軸方向の幅寸法はほぼ同一に形成される。
【0032】
このような構成により、積層セラミックコンデンサ10では、端面外部電極14,15と側面外部電極16,17の間に電圧が印加されると、第1内部電極12と第2内部電極13との間の複数のセラミック層20に電圧が加わる。これにより、積層セラミックコンデンサ10では、端面外部電極14,15と側面外部電極16,17との間の電圧に応じた電荷が蓄えられる。
【0033】
セラミック層20では、容量を大きくするため、高誘電率の誘電体セラミックスにより形成される。高誘電率の誘電体セラミックスとしては、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO3)に代表される、バリウム(Ba)及びチタン(Ti)を含むペロブスカイト構造の材料が挙げられる。
【0034】
なお、セラミック層20は、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)系、チタン酸カルシウム(CaTiO3)系、チタン酸マグネシウム(MgTiO3)系、ジルコン酸カルシウム(CaZrO3)系、チタン酸ジルコン酸カルシウム(Ca(Zr,Ti)O3)系、ジルコン酸バリウム(BaZrO3)系、酸化チタン(TiO2)系などで構成してもよい。
【0035】
カバー部19も、誘電体セラミックスによって形成されている。カバー部19を形成する材料は、絶縁性セラミックスであればよいが、セラミック層20と同様の誘電体セラミックスを用いることによりセラミック素体11における内部応力が抑制される。
【0036】
内部電極12,13は、電気の良導体であって、強磁性体により形成されている。内部電極12,13を形成する材料としては、例えばニッケル(Ni)を主成分とする金属又は合金が挙げられる。
【0037】
なお、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10の構成は、
図1~3に示す構成に限定されない。例えば、内部電極12,13の枚数は、積層セラミックコンデンサ10に求められるサイズや性能に応じて、適宜決定可能である。
【0038】
[積層セラミックコンデンサ10の製造方法]
図4は、積層セラミックコンデンサ10の製造方法を示すフローチャートである。
図5及び6は積層セラミックコンデンサ10の製造過程を模式的に示す図である。以下、積層セラミックコンデンサ10の製造方法について、
図4に沿って、
図5及び6を適宜参照しながら説明する。
【0039】
(ステップS11:未焼成のセラミック素体111作製)
ステップS11では、積層部18を形成するための第1セラミックシート101及び第2セラミックシート102と、カバー部19を形成するための第3セラミックシート103と、を
図5に示すように積層することで、未焼成のセラミック素体111を作製する。
【0040】
セラミックシート101,102,103は、誘電体セラミックスを主成分とする未焼成の誘電体グリーンシートとして構成される。セラミックシート101,102,103は、例えば、ロールコーターやドクターブレードなどを用いてシート状に成形される。セラミックシート101,102,103の厚さは適宜調整可能である。
【0041】
図5に示すように、第1セラミックシート101には第1内部電極12に対応する未焼成の第1内部電極112が形成され、第2セラミックシート102には第2内部電極13に対応する未焼成の第2内部電極113が形成されている。第3セラミックシート103には内部電極は形成されていない。
【0042】
内部電極112,113は、導電性ペーストをセラミックシート101,102に塗布することによって形成することができる。導電性ペーストの塗布には、例えばスクリーン印刷法やグラビア印刷法を用いることができる。
【0043】
図5に示すように、第1セラミックシート101及び第2セラミックシート102を交互にz軸方向に積層した積層体のz軸方向上下に、第3セラミックシート103が積層される。これにより、未焼成のセラミック素体111が作製される。
【0044】
未焼成のセラミック素体111は、セラミックシート101,102,103を圧着することにより一体化される。セラミックシート101,102,103の圧着には、例えば、静水圧加圧や一軸加圧などが用いられる。
【0045】
なお、以上では1つのセラミック素体11に相当する未焼成のセラミック素体111について説明したが、実際には、個片化されていない大判のシートとして構成された積層シートが形成され、セラミック素体111ごとに個片化される。
【0046】
(ステップS12:焼成)
ステップS12では、ステップS11で得られた未焼成のセラミック素体111を焼結させることにより、
図1~3及び
図6に示すセラミック素体11を作製する。これにより、セラミックシート101,102の積層体に対応する積層部18と、セラミックシート103の積層体に対応するカバー部19と、が形成される。焼成は、例えば、還元雰囲気、又は低酸素分圧雰囲気で行うことができる。なお、未焼成のセラミック素体111を焼成した後、バレル研磨等で面取りしてもよい。
【0047】
図6に示すように、セラミック素体11では、端面11a,11bに第1内部電極12が露出しており、側面11c,11dに第2内部電極13が露出している。
【0048】
(ステップS13:外部電極14,15,16,17形成)
ステップS13では、セラミック素体11に外部電極14,15,16,17を形成する。外部電極14,15,16,17は、セラミック素体11に導電性ペーストを塗布し、当該導電性ペーストを焼き付けることにより形成される。
【0049】
セラミック素体11への導電性ペーストの塗布には、例えば、ローラ塗布機やディップ塗布機などの塗布装置を用いることができる。
導電性ペーストの焼き付けは、例えば、還元雰囲気、又は低酸素分圧雰囲気で行うことができる。
【0050】
図1を参照し、端面外部電極14,15は、端面11a,11bを覆うように形成される。端面11a,11bへの導電性ペーストの塗布は、典型的には、セラミック素体11を治具により保持し、端面11a,11bを鉛直方向に向けた姿勢に維持して行われる。この際、生産効率の観点からは、複数のセラミック素体11を上記姿勢に整列させ、これらのセラミック素体11に対し同時に処理を行うことが好ましい。
【0051】
端面11a,11bは、長手方向であるx軸方向に延びる側面11c,11d及び主面11e,11fよりも面積が小さい。このため、端面11a,11bのみが挿入可能なサイズの開口を有する治具にセラミック素体11を挿入することで、比較的容易に上記姿勢で整列させることができる。
【0052】
一方、側面外部電極16,17は、側面11c,11dの第2内部電極113が露出している領域に設けられる。側面11c,11dへの導電性ペーストの塗布も、複数のセラミック素体11を側面11c,11dが鉛直方向に向いた姿勢に整列させることが好ましい。
【0053】
しかし、側面11c,11dはx軸方向に長手を有する面であるため、端面11a,11bよりも大きく、かつ主面11e,11fとは同一又は近いサイズである。このため、側面11c,11dが挿入可能な開口を有する治具にセラミック素体11を挿入するだけでは、いずれの面も開口側に向く可能性がある。したがって、側面11c,11dのみを選択的に鉛直方向に向けることは難しい。
【0054】
そこで、本実施形態では、以下のような整列方法により、側面11c,11dが一定方向に向くように複数のセラミック素体11を整列させることができる。
【0055】
[セラミック素体11の整列方法]
図7は、セラミック素体11の整列方法を示すフローチャートである。
図8~19はセラミック素体11の整列過程を模式的に示す図である。以下、積層セラミックコンデンサ10の整列方法について、
図7に沿って、
図8~19を適宜参照しながら説明する。
なお、
図8~19には、相互に直交するX軸、Y軸、及びZ軸が示されている。X軸方向及びY軸方向は後述する治具100の平面方向、Z軸方向は治具100の厚さ方向を示す。X軸方向は、後述する磁石400の移動方向を示す。
また、必要に応じて、セラミック素体11の姿勢を示すx軸、y軸及びz軸も示している。
【0056】
(ステップS21:治具100の準備)
ステップS21では、複数のセラミック素体11を整列させるために用いる治具100を準備する。
【0057】
図8は、治具100を示す平面図、
図9は、治具100の
図8のC-C'線に沿った断面図である。
治具100は、Z軸方向に向いた外面100a及び上面100bを有し、全体としてX-Y平面に延びる平板状に構成される。典型的には、治具100は、Z軸方向が鉛直方向を向くように配置される。外面100aは、Z軸下方に向いた治具100の外側底面として構成される。上面100bは、後述するカバー部材200が配置される配置面として構成される。
【0058】
治具100は、金属又は非金属の非磁性体で構成される。これにより、治具100が後述する磁石400により磁化されることを防止でき、セラミック素体11の挙動を安定させることができる。
【0059】
治具100は、上面100bから外面100aに向かってZ軸方向にそれぞれ形成された複数の凹部110を有する。複数の凹部110は、X軸方向及びY軸方向にそれぞれ配列される。
【0060】
各凹部110は、各セラミック素体11を配置することが可能なポケットとして構成される。各凹部110は、X軸方向及びY軸方向に沿って格子状に配置された仕切り120によって区画されている。仕切り120のZ軸方向上方に向いた面は、上面100bを構成する。なお、治具100における凹部110の数は、図示の例に限定されない。
【0061】
凹部110は、底面110aと開口110bとを有する。開口110bは、上面100bに形成され、セラミック素体11を挿入可能に構成される。
【0062】
底面110aは、Z軸方向に向いた平坦面であり、X軸方向に沿った2辺及びY軸方向に沿った2辺からなる長方形状の平面形状を有する。底面110aは、セラミック素体11の各面よりも大きく、凹部110に配置されたセラミック素体11が回転できるサイズであればよい。
【0063】
また、図示した底面110aの長辺はY軸方向に平行であり、短辺はX軸方向に平行であるが、これに限定されない。例えば、底面110aの長辺がX軸方向に平行でもよいし、短辺がY軸方向に平行でもよい。
【0064】
図10は、
図9の部分拡大図である。
凹部110のZ軸方向に沿った深さ寸法D11は、セラミック素体11の幅寸法Wよりも小さく構成される。この構成により、側面11c,11dをZ軸方向に向けた姿勢に整列された場合、側面11c,11dの一方が開口110bから突出することとなり、その後の工程における取り扱い性を高めることができる。
【0065】
凹部110の深さ寸法D11は、凹部110の周囲を取り囲む上面100bから、凹部110の底面110aまでのZ軸方向に沿った寸法とする。上面100bが曲面である場合の深さ寸法D11は、凹部110周囲の上面100bのうち、Z軸方向に最も高い位置における上記寸法とする。なお、上記構成に限定されず、凹部110の深さ寸法D11は幅寸法Wより大きくてもよい。
【0066】
(ステップS22:凹部110内へのセラミック素体11の配置)
ステップS22では、複数のセラミック素体11を治具100の凹部110内にそれぞれ配置する。セラミック素体11は、各凹部110に1個ずつ配置される。
【0067】
図11は、ステップS22を示す断面図であって、
図9と同様の位置の断面を示す。
ステップS22では、セラミック素体11を治具100上にランダムに振り込み、治具100に振動及び傾斜の少なくとも一方を付与する。振動は、
図11に示すようにいずれの方向に付与してもよい。傾斜は、
図11の白抜き矢印に示すように、Y軸まわりに付与してもよいし、その他の軸まわりに付与してもよい。
【0068】
これにより、短時間で多くのセラミック素体11を凹部110内に配置することができる。さらに、振動や傾斜によって各セラミック素体11の姿勢を不安定にすることにより、セラミック素体11を重心が低く安定した姿勢にすることができる。つまり、各セラミック素体11を、主面11e,11f又は側面11c,11dがZ軸方向に向いた姿勢で配置することができる。
【0069】
また、治具100上に振り込まれたセラミック素体11のうち、凹部110内に配置されなかったセラミック素体11は、ステップS23の前に除去される。
【0070】
(ステップS23:カバー部材200配置)
ステップS23では、各凹部110の開口110bを被覆するカバー部材200を治具100上に配置する。これにより、
図12に示すように、各セラミック素体11を収容する閉空間Sを有する整列ケース300が作製される。
【0071】
カバー部材200も、Z軸方向に向いた外面200a及び下面200bを有し、治具100と同様に全体としてX-Y平面に延びる平板状に構成される。カバー部材200は、金属又は非金属の非磁性体で構成される。これにより、治具100と同様にカバー部材200が磁化されることを防止できる。
【0072】
外面200aは、カバー部材200の外側表面として構成される。カバー部材200の外面200aと治具100の外面100aとにより、整列ケース300のZ軸方向を向いた表面が構成される。
【0073】
カバー部材200は、各凹部110の開口110bをそれぞれ被覆する複数の蓋部210を有する。各蓋部210は、各凹部110とZ軸方向に対向するように形成される。
【0074】
各蓋部210は、治具100の仕切り120に対応する格子状の仕切り220によって区画されている。仕切り220をZ軸方向から見た平面形状は、仕切り120をZ軸方向から見た平面形状と略同一である。仕切り220のZ軸方向下方に向いた面は、カバー部材200の下面200bを構成する。各蓋部210は、下面200bからZ軸方向上方に向かって形成された凹状の構造を有する。各蓋部210には、底面110aと略同一な平面形状を有する天面210aが形成される。
【0075】
カバー部材200の下面200bが治具100の上面100bに配置されることで、各凹部110の開口110bが、Z軸方向から各蓋部210によって塞がれる。したがって、凹部110及び蓋部210により略直方体状の閉空間Sが形成される。
【0076】
各閉空間Sは、内部に1つのセラミック素体11を収容可能であって、セラミック素体11のy軸まわりの回転が可能なサイズを有する。
図12の閉空間Sには、一例として、内部電極12,13がX軸方向と平行で、主面11e,11fがZ軸方向を向いた姿勢のセラミック素体11が配置されている。
【0077】
(ステップS24:整列)
ステップS24では、整列ケース300内の複数のセラミック素体11を、磁石400を用いて側面11c,11dがZ軸方向を向くように整列させる。
【0078】
図13は、ステップS23を示す断面図であって、
図9と同様の位置の断面を示す。
図14は、整列ケース300及び磁石400を示すZ軸方向から見た平面図である。
整列ケース300及び磁石400は、本実施形態の整列装置500を構成する。
【0079】
ステップS24では、整列ケース300の表面(外面100a,200a)に沿ってX軸方向に磁石400を移動させる。
図13及び
図14の白抜き矢印は、磁石400の移動方向を示す。
図13は、磁石400を外面100aに沿って移動させる例を示す。
【0080】
磁石400は、X軸方向に相互に対向するN極410及びS極420を有し、Y軸方向に延びる直方体状に構成される。磁石400は、
図14に示すように、Y軸方向に相互に対向する一対の端部440と、上記一対の端部440の間に位置する中間部430と、を有する。
【0081】
中間部430は、Z軸方向から見た場合に揃った向きの磁力線で表される磁束F1を形成する。磁束F1は、Z軸方向から見た場合にX軸方向に平行な向きであって、Y軸まわりに回転する向きの磁束線で表される。
【0082】
端部440は、Z軸方向から見た場合にX軸方向とは異なる向きの磁力線で表される磁束F2を形成する。端部440は、N極410及びS極420の双方を含むY軸方向に向いた面を含むため、Z軸方向から見た場合に揃った向きの磁力線とはならない。
【0083】
これらの磁束F1,F2による磁場の強さ(磁束密度)は、磁石400から離れるに従い弱くなる。このため、セラミック素体11の姿勢に影響を与える強さの磁場が形成される範囲は、磁石400の周囲から所定の距離以内の範囲となる。当該範囲内の領域を磁束影響領域Mとする。
【0084】
図15~17は、
図13の部分拡大図であって、磁石400による磁束F1が作用した場合の閉空間S内のセラミック素体11の挙動の一例を示す図である。
【0085】
図15は、磁石400による磁束F1が作用する前の状態を示す。
図15のセラミック素体11は、内部電極12,13がX軸方向と平行で、主面11e,11fがZ軸方向に向いた姿勢で、凹部110に配置されている。
【0086】
磁束F1は、N極410からS極420に向かって、Y軸まわりに回り込む磁力線で表される。磁石400がセラミック素体11に接近することで、磁束F1が通りやすい側面11c,11dの引出部13a,13b及びそれを含む第2内部電極13が磁化される。
【0087】
そして、
図16に示すように、磁石400がセラミック素体11を通過するに伴い、X軸方向及びZ軸方向の成分を有する磁束F1の影響を受けて、第2内部電極13がY軸まわりに回転するモーメントを受ける。
【0088】
さらに、Z軸方向に略平行な磁束F1が通過することで、磁化された引出部13a,13bが底面110aに吸着される。したがって、
図17に示すように、磁石400が通過した後のセラミック素体11は、側面11c,11dがZ軸方向を向いた姿勢となる。
【0089】
なお、磁束F1が作用する前から側面11c,11dがZ軸方向を向いているセラミック素体11については、磁石400の接近時に、Z軸方向に平行な磁束F1によって引出部13a,13bが磁化する。このため、側面11c,11dの一方が凹部110の底面110aに吸着され、セラミック素体11の姿勢が拘束される。したがって、磁石400の通過後も側面11c,11dがZ軸方向を向いた姿勢が維持される。
【0090】
このように、ステップS24では、磁石400の形成する磁束F1によって、側面11c,11dがZ軸方向を向くようにセラミック素体11を回転させることができる。これにより、複数のセラミック素体11を容易に、かつ短時間で整列させることができる。
【0091】
また、カバー部材200を備えた整列ケース300を用いることで、閉空間S内でセラミック素体11を回転させることができる。これにより、セラミック素体11の動きを規制することができ、セラミック素体11が回転時に凹部110の外方に飛散することを防止できる。
【0092】
さらに、カバー部材200によって、整列ケース300に振動を与えながら磁石400を移動させることができる。これにより、セラミック素体11の凹部110外への飛散を防止しつつ、セラミック素体11の回転を促すことができる。
【0093】
加えて、カバー部材200によって、凹部110の深さ寸法D11の設計自由度が高まる。すなわち、凹部110の深さ寸法D11をセラミック素体11の幅寸法Wよりも小さく設計することができる。これにより、ステップS24の後、凹部110から側面11c,11dの一方が突出した状態にすることができ、上述のようにセラミック素体11の取り扱い性を高めることができる。
【0094】
また、ステップS23におけるセラミック素体11の姿勢や配置によっては、ステップS24において、第2内部電極13よりも引出部12a,12bを含む第1内部電極12が強く磁化される可能性がある。第1内部電極12が強く磁化された場合、セラミック素体11がy軸まわりに回転するモーメントを受ける。仮にy軸まわりの回転を許容すると、端面11a,11bがZ軸方向を向いた姿勢となり、側面11c,11dがZ軸方向を向いた姿勢とはならない。
【0095】
そこで、閉空間Sを、セラミック素体11がx軸まわりには回転可能であり、かつy軸まわりには回転不可能なサイズで構成することにより、セラミック素体11のy軸まわりの回転を規制することができる。
【0096】
図18は、閉空間S内のセラミック素体11がy軸まわりに回転しようとしている態様を示す図である。
セラミック素体11がy軸まわりに回転不可能なサイズで閉空間Sを構成することで、天面210aに、セラミック素体11の3面が交わる角部Pが当たる。これにより、セラミック素体11が、角部Pのみで閉空間Sの内面に支持された不安定な姿勢となる。このような姿勢にすることで、磁化された第2内部電極13が受けるモーメントの影響が大きくなり、セラミック素体11がx軸まわりに回転することができる。
【0097】
さらに、
図19を参照し、閉空間Sの寸法を以下のように規定することで、セラミック素体11の不要な動きを規制し、整列効率をより高めることができる。
【0098】
閉空間SのZ軸方向に沿った高さ寸法D12は、整列対象であるセラミック素体11の幅寸法Wの1.2~1.5倍とすることができる。なお、高さ寸法D12は、凹部110の深さ寸法D11と、蓋部210のZ軸方向に沿った高さ寸法とを加算した寸法とする。蓋部210のZ軸方向に沿った高さ寸法は、蓋部210の周囲を取り囲む仕切り220の下面である下面200bから、蓋部210の天面210aまでのZ軸方向に沿った寸法とする。
【0099】
また、閉空間SのX軸方向に沿った幅寸法D13は、端面11a,11bの対角線の寸法Diの1.1~1.2倍とすることができる。なお、閉空間Sの幅寸法D13は、X軸方向に最も長い部分におけるX軸方向に沿った寸法とする。
【0100】
このように、セラミック素体11を整列ケース300内に収容することで、閉空間Sによってセラミック素体11の回転方向が規制される。したがって、ステップS24前のセラミック素体11の姿勢や配置によらず、セラミック素体11を側面11c,11dがZ軸方向を向くように整列させることができ、整列効率を高めることができる。
【0101】
一方、ステップS22でセラミック素体11を凹部110にランダムに振り入れた場合、ステップS23におけるセラミック素体11の姿勢や配置にバラツキが生じる。このため、凹部110内のセラミック素体11の配置の偏り等により、一方向の磁石400の移動のみではセラミック素体11の回転が規制される可能性がある。
【0102】
そこで、磁石400をX軸方向に往復移動することで、一方向の磁石400の移動のみではセラミック素体11が回転できない場合でも、逆方向の磁石400の移動によって回転を促すことができる。これにより、セラミック素体11の整列効率をより高めることができる。
【0103】
整列装置500を構成する整列ケース300及び磁石400の寸法は限定されないが、整列効率を高める観点から、以下のような寸法とすることができる。
【0104】
図14を参照し、例えば、磁石400のY軸方向に沿った寸法D22は、整列ケース300のY軸方向の寸法D24よりも大きく構成される。このような磁石400を用いることで、1つの磁石400の一方向の移動により、整列ケース300内の多くのセラミック素体11を整列させることができ、整列効率を高めることができる。
【0105】
さらに整列効率を高める観点から、磁束F1を形成する磁石400の中間部430の寸法を整列ケース300のY軸方向の寸法D24よりも大きく構成することができる。
【0106】
磁石400の端部440によって形成される磁束F2は、磁化された内部電極12,13に対し、磁束F1とは異なる向きの磁力を与える。これにより、磁束F2が作用する位置の凹部110に配置されたセラミック素体11は、側面11c,11dがZ軸方向に向いた姿勢にならない可能性がある。
【0107】
このため、中間部430のY軸方向寸法D21を整列ケース300のY軸方向寸法D24よりも大きくすることで、一方向の移動によって、整列ケース300の全ての閉空間Sに対して磁束F1のみを作用させることができる。したがって、磁石400の移動を例えば一往復に抑えることができ、セラミック素体11の整列効率をより高めることができる。
【0108】
一方、磁石400の移動開始位置を整列ケース300上に設定すると、当該開始位置のX軸方向後方に位置する凹部110(閉空間S)に収容されたセラミック素体11の整列が難しくなる。また、磁石400の移動停止位置を整列ケース300上に設定すると、当該停止位置のX軸方向前方に位置する凹部110(閉空間S)に収容されたセラミック素体11の整列が難しくなる。
【0109】
そこで、ステップS24における磁石400の移動開始位置及び移動停止位置を、整列ケース300からX軸方向に離間した位置に設定することができる。これにより、整列ケース300のX軸方向全体にわたって磁石400を通過させることができる。
【0110】
さらに整列効率を高めるためには、磁石400の移動開始位置及び移動停止位置を、磁束F1によってセラミック素体11の姿勢に影響を与えることができる磁束影響領域Mの外側に設定すればよい。
図15~17で説明したように、閉空間S内のセラミック素体11は、磁石400が接近して磁束F1の影響を受けると磁化し、Y軸まわりに回り込んだ磁束F1の通過に伴って回転する。このため、整列ケース300内の全ての凹部110(閉空間S)に対し、磁束影響領域Mを確実に通過させることで、磁石400による磁場の影響を、整列ケース300内の全てのセラミック素体11に対して均一に与えることができる。
【0111】
<第2実施形態>
整列装置500は、第1実施形態の構成に限定されない。
例えば、
図20に示すような整列装置800を用いてもよい。
なお、以下の実施形態において、第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0112】
図20は、整列装置800の断面図であり、
図13に対応する図である。
整列装置800は、整列ケース700と、整列ケース700の表面に沿ってX軸方向に移動する磁石400と、を備える。
整列ケース700は、治具600と、カバー部材200と、を有する。整列ケース700は、Z軸方向が重力方向に一致するように設置されている。
【0113】
治具600は、治具100と同様に、下面(外面)600aと、上面600bと、各セラミック素体11を配置することが可能な凹部610と、を有する。凹部610は、底面610aと開口110b(
図20において図示せず)とを有し、第1実施形態と同様の寸法で構成される。
【0114】
治具600は、さらに、上面600bに開口する第1吸引孔620と、底面610aに開口する第2吸引孔630と、を有する。吸引孔620,630は、それぞれ上面600b及び底面610aからZ軸方向下方に延びて図示しないエア吸引装置に接続されることが可能に構成される。
【0115】
第1吸引孔620は、カバー部材200を重力方向であるZ軸方向下方に吸引することが可能に構成される。つまり、ステップS24の整列工程において、第1吸引孔620を介してカバー部材200を治具600に吸着させることができる。これにより、カバー部材200が治具600から外れることを防止し、整列中にセラミック素体11が閉空間Sの外方に飛散することを防止できる。
【0116】
第2吸引孔630は、重力方向であるZ軸方向下方に向かって閉空間S内の空気を吸引し、閉空間S内を陰圧に維持することができる。これにより、磁石400によって側面111c,111dがZ軸方向を向くように回転したセラミック素体11を底面110aに吸着させることができ、セラミック素体11の姿勢をより安定させることができる。なお、第2吸引孔630の数や配置、形状は特に限定されない。
【0117】
吸引孔620,630の数や配置、形状は特に限定されない。例えば、第1吸引孔620は、治具600周縁部の上面600bに形成されていてもよいし、凹部610間の上面600bに形成されていてもよい。第2吸引孔630は、各凹部610に1個ずつ形成されていてもよいし、各凹部610に複数形成されていてもよい。
【0118】
本実施形態では、治具600(整列ケース700)のZ軸方向下側、すなわち外面600a側に吸引装置が配置されるため、磁石400は、カバー部材200の上面(外面)200aに沿ってX軸方向に移動される。これによっても、第1実施形態と同様に、セラミック素体11に対し、Z軸方向から見た場合に揃った向きの磁力線で表される磁束F1を作用させることができる。
【0119】
したがって、上記構成の整列装置800により、複数のセラミック素体11をより確実に整列させることができる。
【0120】
<第3実施形態>
上述の実施形態では、3端子型の積層セラミックコンデンサ10のセラミック素体11をチップ部品として説明したが、これに限定されない。
本発明は、例えば、未焼成の内部電極とセラミックグリーンシートが積層された未焼成の積層チップをチップ部品として適用することができる。
【0121】
図21は、未焼成の積層チップ216を示す斜視図である。
積層チップ216は、未焼成の第1内部電極212及び第2内部電極213が未焼成のセラミック層214を介してz軸方向に交互に積層された未焼成の積層体218と、積層体218のz軸方向上下を覆う未焼成のカバー部219と、を備える。積層チップ216は、本実施形態のチップ部品として構成される。
【0122】
積層チップ216は、x軸方向に対向する2つの端面216a,216bと、y軸方向に対向する2つの側面216c,216dと、z軸方向に対向する2つの主面216e,216fと、を有する。側面216c,216dからは、内部電極212,213が露出している。端面216aからは、第1内部電極212が露出しており、端面216bからは、第2内部電極213が露出している。
【0123】
未焼成の積層チップ216は、
図22に示す大判の積層シート204を、x軸方向及びy軸方向に沿った所定の切断線に沿って切断することで形成される。
【0124】
積層シート204では、未焼成の第1内部電極212が形成された未焼成の第1セラミックシート201と、未焼成の第2内部電極213が形成された未焼成の第2セラミックシート202と、がz軸方向に交互に積層されている。セラミックシート201,202の積層体は、未焼成の積層体218に対応する。
【0125】
内部電極212,213は、いずれもy軸方向に沿った帯状のパターンで形成され、当該帯状のパターンがx軸方向に相互に離間して複数配列されている。但し、内部電極212,213は、x軸方向に1素子分ずつずれてパターニングされている。
【0126】
また、セラミックシート201,202の積層体のz軸方向上下には、内部電極が形成されていないセラミックシート203が積層されている。セラミックシート203が積層された領域は、未焼成のカバー部219に対応する。
【0127】
積層シート204は、第1実施形態の未焼成のセラミック素体111と同様に圧着される。圧着された積層シート204を、x軸方向に沿って所定の位置で切断し、y軸方向に沿って一方の内部電極212,213が形成されていない位置で切断することにより、
図21に示す積層チップ216を形成することができる。
【0128】
続いて、積層チップ216の両側面216c,216dに、セラミックシートの貼付やセラミックスラリーの塗布によって未焼成のサイドマージン部217が形成される。これにより、
図23に示す未焼成のセラミック素体211が形成される。
【0129】
サイドマージン部217の形成工程においては、生産効率の面から、内部電極212,213が露出した側面216c,216dを鉛直方向に向けた姿勢で、複数の積層チップ216を整列させることが好ましい。
そこで、第1実施形態で説明したステップS21~S24の整列方法を適用して、積層チップ216を整列させることができる。
【0130】
つまり、治具100の凹部110に各積層チップ216を配置し、治具100上にカバー部材200を配置することで、積層チップ216が収容された整列ケース300を作製する。そして、整列ケース300の表面に沿って磁石400を移動させることで、側面216c,216dがZ軸方向を向くように積層チップ216を整列させる。
【0131】
これにより、側面216c,216dがZ軸方向を向いた同一の姿勢の複数の積層チップ216に対してサイドマージン部117を形成する工程を行うことができ、生産効率を高めることができる。
【0132】
そして、この未焼成のセラミック素体211を焼成し、x軸方向両端面に外部電極を形成することで、一般的な2端子型の積層セラミックコンデンサが作製される。
【0133】
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0134】
例えば、第1実施形態では3端子型の積層セラミックコンデンサのセラミック素体をチップ部品として説明したが、側面に複数の外部電極が形成される多端子型の積層セラミックコンデンサでも適用することができる。
【0135】
また、積層セラミックコンデンサの製造方法として、未焼成のセラミック素体を焼成し、その後外部電極を形成すると説明したが、これに限定されない。例えば、未焼成のセラミック素体に導電性ペーストを塗布し、セラミック素体と外部電極とを同時に焼成することもできる。この場合、未焼成のセラミック素体をチップ部品として、本発明の整列方法を適用することができる。
【0136】
また、整列装置500の各寸法は上述に限定されず、チップ部品のサイズや積層セラミックコンデンサの製造規模に応じて適宜設定することができる。
【符号の説明】
【0137】
10…積層セラミックコンデンサ
11…セラミック素体(チップ部品)
12,13,212,213…内部電極
216…未焼成の積層チップ(チップ部品)
11a,11b,216a,216b…端面
11c,11d,216c,216d…端面
11e,11f,216e,216f…端面
100…治具
200…カバー部材
300…整列ケース
400…磁石
500…整列装置