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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-10
(45)【発行日】2022-08-19
(54)【発明の名称】接合状態検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 25/72 20060101AFI20220812BHJP
   E04D 5/14 20060101ALI20220812BHJP
【FI】
G01N25/72 E
E04D5/14 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018065829
(22)【出願日】2018-03-29
(65)【公開番号】P2019174408
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2021-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000223403
【氏名又は名称】住ベシート防水株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】山地 貴志
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 信也
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-115549(JP,A)
【文献】特開平06-082404(JP,A)
【文献】特開平03-095451(JP,A)
【文献】特表2008-519980(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 25/72
E04D 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
躯体上に敷設され、該躯体に対する防水機能を有する防水シートと、前記防水シートの裏側に配置され、該防水シートと接合されることにより前記防水シートを前記躯体に対して固定する固定部材とを備えるシート防水構造の、前記防水シートと前記固定部材との接合状態を検査する方法であって、
前記防水シートに対して、前記防水シートの裏面側から風を吹き付ける吹き付け工程と、
前記防水シートの表側の温度分布を可視化して視認する温度分布視認工程と、を有し、
前記吹き付け工程では、前記防水シートに、前記防水シートを貫通する開口部を有する送風口と、前記防水シートを貫通する開口部を有する排気口と、を設け、
前記送風口を介して前記防水シートの表面側から裏面側に風を送り込み、前記防水シートの裏面側に風を吹き付け、前記排気口を介して前記防水シートの裏面側から表面側に風を排出することを特徴とする接合状態検査方法。
【請求項2】
前記温度分布視認工程では、前記防水シートを、前記固定部材との接合されている接合部と、該接合部以外の非接合部とに分けて視認可能であり、
前記接合部の形状が前記固定部材の平面視での形状に近似している場合に、前記接合状態が十分であると判断する請求項1に記載の接合状態検査方法。
【請求項3】
前記温度分布視認工程は、前記吹き付け工程と同じタイミングで行なわれるか、または、前記吹き付け工程終了後に行なわれる請求項1または2に記載の接合状態検査方法。
【請求項4】
前記吹き付け工程では、前記風の温度を季節に応じて変更する請求項1ないし3のいずれか1項に記載の接合状態検査方法。
【請求項5】
前記吹き付け工程では、前記風の温度を外気よりも低い温度とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の接合状態検査方法。
【請求項6】
前記吹き付け工程では、前記風の温度を外気よりも高い温度とする請求項ないしのいずれか1項に記載の接合状態検査方法。
【請求項7】
前記温度分布視認工程では、サーモグラフィを用いて前記温度分布を可視化する請求項1ないしのいずれか1項に記載の接合状態検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合状態検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建築物の高耐久化が求められるに伴って、多くの建築物の屋上やベランダ等において、防水シート(樹脂シート)を敷設施工したシート防水構造が採用されている。
【0003】
このシート防水構造では、例えば、床部の少なくとも一部を防水シートで覆う構成をなしているが、防水シートの床部(躯体)への固定は、複数の円盤状をなす固定ディスク(鋼板)を、所定の間隔で床部に固定ビス等を用いて固定し、さらに、これら固定ディスクにおいて、固定ディスクの上面と防水シートとの下面とを融着で接合することで、固定ディスクを介して床部と防水シートとが接合されることにより実施される。これにより、躯体に雨水等に対する防水が施されるとともに、風等に対して防水シートが引き剥がされることなく躯体に固定される。
【0004】
また、シート防水構造を施工した後に、固定ディスクと防水シートとの接合状態を検査している。この検査方法としては、まず、固定ディスクの周辺を吸盤で引っ張り、固定ディスクと防水シートが接合していない部位を浮きあがらせることで接合の是非を判断している。
【0005】
しかしながら、この検査方法では検査を行う作業者の熟練の程度による判断がばらつく等の問題があった。また、吸盤で引っ張る作業はディスク1枚毎で実施しなければならないことから、検査面積が広い場合、検査に要する時間が膨大になる場合があった。
【0006】
これらの問題を解決するために、床部と防水シートとの間に気体を送り込んで、防水シートを床部から浮き上がらせる(例えば、特許文献1参照)。そして、防水シートの浮き上がり状態に応じて、固定ディスクと防水シートとが十分に接合されているか否かを判断している。
【0007】
しかしながら、この特許文献1に記載の検査方法では、例えば、防水シートの施工状態により、特に固定ディスクの周辺の床面と防水シートが空気を排除された状態で緩くくっついている場合、気体を送り込んでもシートが浮きあがらない時があり、誤った検査結果になる場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第5680263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、防水シートと固定部材との接合状態を正確に検査することができる接合状態検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的は、下記(1)~()の本発明により達成される。
(1) 躯体上に敷設され、該躯体に対する防水機能を有する防水シートと、前記防水シートの裏側に配置され、該防水シートと接合されることにより前記防水シートを前記躯体に対して固定する固定部材とを備えるシート防水構造の、前記防水シートと前記固定部材との接合状態を検査する方法であって、
前記防水シートに対して、前記防水シートの裏面側から風を吹き付ける吹き付け工程と、
前記防水シートの表側の温度分布を可視化して視認する温度分布視認工程と、を有し、
前記吹き付け工程では、前記防水シートに、前記防水シートを貫通する開口部を有する送風口と、前記防水シートを貫通する開口部を有する排気口と、を設け、
前記送風口を介して前記防水シートの表面側から裏面側に風を送り込み、前記防水シートの裏面側に風を吹き付け、前記排気口を介して前記防水シートの裏面側から表面側に風を排出することを特徴とする接合状態検査方法。
【0011】
(2) 前記温度分布視認工程では、前記防水シートを、前記固定部材との接合されている接合部と、該接合部以外の非接合部とに分けて視認可能であり、
前記接合部の形状が前記固定部材の平面視での形状に近似している場合に、前記接合状態が十分であると判断する上記(1)に記載の接合状態検査方法。
【0013】
) 前記温度分布視認工程は、前記吹き付け工程と同じタイミングで行なわれるか、または、前記吹き付け工程終了後に行なわれる上記(または(2)に記載の接合状態検査方法。
【0014】
) 前記吹き付け工程では、前記風の温度を季節に応じて変更する上記(ないし(3)のいずれかに記載の接合状態検査方法。
【0015】
) 前記吹き付け工程では、前記風の温度を外気よりも低い温度とする上記(ないし(3)のいずれかに記載の接合状態検査方法。
【0016】
) 前記吹き付け工程では、前記風の温度を外気よりも高い温度とする上記()ないし()のいずれかに記載の接合状態検査方法。
【0017】
) 前記温度分布視認工程では、サーモグラフィを用いて前記温度分布を可視化する上記(1)ないし()のいずれかに記載の接合状態検査方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、防水シートと固定部材との接合状態を正確に検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の接合状態検査方法を行なっている状態を示す平面図である。
図2図2は、図1に示す状態での防水シートの表側の温度分布を示す図である。
図3図3は、図2中の二点鎖線で囲まれた領域[A]のi-i線断面図である。
図4図4は、図2中の二点鎖線で囲まれた領域[B]のii-ii線断面図である。
図5図5は、図2中の二点鎖線で囲まれた領域[C]のiii-iii線断面図である。
図6図6は、本発明の接合状態検査方法の各工程のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の接合状態検査方法を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明の接合状態検査方法を行なっている状態を示す平面図である。図2は、図1に示す状態での防水シートの表側の温度分布を示す図である。図3は、図2中の二点鎖線で囲まれた領域[A]のi-i線断面図である。図4は、図2中の二点鎖線で囲まれた領域[B]のii-ii線断面図である。図5は、図2中の二点鎖線で囲まれた領域[C]のiii-iii線断面図である。図6は、本発明の接合状態検査方法の各工程のタイミングチャートである。なお、以下では、説明の都合上、図3図5中の上側を「上(または上方)」、下側を「下(または下方)」と言う。
【0022】
図1に示すように、躯体1000が有する床部101は、シート防水構造10によって、防水処理が施されている。シート防水構造10は、防水シート(シート)11と、複数の固定ディスク9とを備えている。さらに、クロスシートを備えることもできる。クロスシートは、後述する断熱材と防水シート11の間に設置することができ、防水シート11の可塑剤が断熱材に移行するのを防ぐ役割を果たす。
【0023】
床部101は、躯体1000に設置された鉄筋コンクリート(RC)や発泡軽量コンクリート(ALC)、断熱材を備えることもできる。
【0024】
防水シート11は、床部101(躯体1000)上に敷設され、床部101の防水処理を要する部分を覆うものである。これにより、床部101に対する防水機能を発揮することができる。
【0025】
防水シート11は、例えば樹脂材料で構成され、その樹脂材料としては、特に限定されないが、例えば、ポリ塩化ビニルのような塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、塩化ビニル系樹脂であることが好ましい。これにより、防水シート11の溶剤溶着性や熱融着性、その他耐熱性(耐火性)を優れたものとすることができる。なお、塩化ビニル系樹脂としては、塩化ビニルを含む重合体、すなわちオリゴマー、プレポリマーおよびポリマーであれば特に限定されないが、例えば、塩化ビニルの単量重合体、または塩化ビニルと、酢酸ビニル、エチレン、もしくはプロピレン等との共重合体、およびこれらの2種以上の重合体の混合物等が挙げられる。
【0026】
防水シート11の厚さは、0.5mm以上4.0mm以下であるのが好ましく、1.0mm以上2.5mm以下であるのがより好ましい。
【0027】
固定ディスク9は、防水シート11の裏側に配置され、防水シート11を床部101(躯体1000)に対して固定する固定部材である。この固定ディスク9は、床部101上に間隔を置いて配置されている(図1参照)。図3図5に示すように、固定ディスク9は、円板状をなすディスク部材91と、ディスク部材91の上面を覆う樹脂層92とで構成されている。
【0028】
ディスク部材91は、例えば、鋼材、ステンレス鋼等のような各種金属材料で構成されている。
【0029】
また、ディスク部材91の中心部には、ビス12が挿通する挿通孔911が貫通して形成されている。固定ディスク9は、挿通孔911を挿通したビス12を介して床部101に固定される。
【0030】
なお、ディスク部材91の直径は、特に限定されないが、20mm以上150mm以下程度であるのが好ましく、40mm以上100mm以下程度であるのがより好ましい。また、ディスク部材91の厚さは、特に限定されないが、0.1mm以上3mm以下程度であるのが好ましく、0.3mm以上1.5mm以下程度であるのがより好ましい。
【0031】
樹脂層92は、ディスク部材91の上面を覆うコート層である。樹脂層92を構成する樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニルのような塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、アクリル系樹脂、ABS等の熱可塑性樹脂が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、ポリ塩化ビニルであるのが好ましい。これにより、樹脂層92と防水シート11とを溶着により接合した際、互いの密着性を向上させることができる。そして、この接合(融着)により、防水シート11は、床部101に対して固定される。また、樹脂層92を構成する樹脂として、ポリ塩化ビニルを用いた場合、このポリ塩化ビニルは、溶剤溶着性や熱融着性に優れるため、前記効果をより顕著に発揮させることができるとともに、固定ディスク9の腐食をより確実に防止することができる。
【0032】
なお、樹脂層92の厚さは、特に限定されないが、0.03mm以上であるのが好ましく、0.05mm以上0.3mm以下であるのがより好ましい。これにより、防水シート11が風で煽られることに起因して、樹脂層92に応力が作用したとしても、この樹脂層92において亀裂や破断が生じるのを的確に抑制することができる。
【0033】
ところで、作業者(施工業者)は、防水シート11と各固定ディスク9とを接合したつもりであっても、その接合が不十分となっている場合がある。また、防水シート11は、透明性を有さず、不透明なものである。そのため、防水シート11と各固定ディスク9とが十分に接合されているか否かについては、目視だけでは分かりづらい。
【0034】
そこで、本発明の接合状態検査方法により、防水シート11と各固定ディスク9とが十分に接合されているか否かを確認することができる。以下、この検査方法について説明する。
【0035】
なお、接合作業を行なった後の防水シート11と固定ディスク9との状態は、例えば、3つ状態が考えられる。
【0036】
図3に示す状態は、防水シート11と固定ディスク9の樹脂層92と境界が分からない程度に、防水シート11と固定ディスク9とが十分に接合された状態となっている。
【0037】
図4に示す状態は、防水シート11と固定ディスク9とは、一部が接合されているものの、残りの部分は、接合が不十分である状態となっている。この原因としては、例えば、防水シート11と固定ディスク9とを溶着する溶剤量が不十分だったり、溶着時に貼り合わせるために手等で押さえるときの圧力が不十分だったり、押し時間が短すぎる等があげられる。
【0038】
図5に示す状態は、防水シート11と固定ディスク9とは、全く接合されておらず、隙間GPが形成された状態となっている。この原因としては、例えば、この箇所(固定ディスク9上)での接合をし忘れてしまったこと等が挙げられる。
【0039】
以下では、防水シート11が固定ディスク9と接合されている部分を「接合部111」と言い、接合部111以外の部分を「非接合部112」と言う。
【0040】
本発明の接合状態検査方法は、防水シート11と各固定ディスク9との接合状態を検査する方法である。この検査方法は、温度分布視認工程と、判断工程とを有し、これらの工程をこの順に行なって(開始して)いく(図6参照)。
【0041】
接合部111と非接合部112の間に温度差を生じる主な条件としては、日照、気温、防水シート11と固定ディスク9との間の接合の有無である。
【0042】
温度分布は、防水シート11の表面を測定することから、防水シート11の表面側から受ける日照や気温の影響を大きく受ける。防水シート11が設置されている屋上(床部101)等では、設備等の状況で変化はするが、一定の範囲で日照や気温は、ほぼ一定とみなせるため、防水シート11と固定ディスク9との間の接合の有無の差を温度差で検出することが可能になる。
【0043】
人為的に防水シート11の表面の温度差を発生させるため、防水シート11に風を吹きつけたり、防水シート11の表面と異なる温度を有する物体を防水シート11に接触させ、この物体を取り除き、しばらく放置した後、防水シート11の温度分布を調べることも有効である。
【0044】
前者は、日照や気温の代わりに防水シート11の表面に風による温度を作用させ、日照や気温の効果を人為的に狙ったものであり、後者は、防水シート11の表面の温度を物体の接触したところを同じにして、物体を取り除いた後の放熱速度、または加熱速度(日照や気温による)の差により、防水シート11と固定ディスク9との間の接合の有無を温度分布で検出を行なうことができる。放熱速度、または、加熱速度は、防水シート11と固定ディスク9との間の接合の有無の差で変わるためである。
【0045】
実際の検査現場では、後者は、温度の異なる物体を屋根(床部101)の面積に相当する分量を準備しなくてはならず、実施が困難である。前者の風を吹きつける方が送風機や温調機を準備すればよいため好ましい。
【0046】
前述したように、防水シート11は、樹脂材料で構成されている。また、固定ディスク9のディスク部材91は、金属材料で構成されており、床部101に接している。従って、防水シート11の表面温度は、接合部111と非接合部112とで異なる。これにより、次工程の温度分布視認工程では、接合部111と非接合部112との温度分布を視認することができる。これにより、図2に示すように、温度分布視認工程で、防水シート11を、接合部111と非接合部112とに分けて確実に視認することができる。
【0047】
本発明は風を吹き付けて、接合部111と非接合部112と間に顕著な温度差が生じるのを促進することができる。以下、風を吹き付ける工程を「吹き付け工程」と言う。
【0048】
風の吹き付ける方向は、防水シート11の表面側からでも裏面側からでもよいが、表側から吹きつけた方が防水シート11に風を吹きつけるための開口部を設けずに済むため、検査後に開口部を閉じ忘れて漏水する等のミスを防止することができることから好ましい。
【0049】
表面から風を吹きつける効果を増大させるため、防水シート11の上にさらにシート(このシートを「カバーシート」と言う)を被せ、このカバーシートと防水シート11との間に風を吹きつけてもよい。これにより、風の影響を受ける防水シート11の範囲が広がり、より短時間で風を吹きつける効果をえることができる。
【0050】
その後、カバーシートを取り除き、温度分布視認工程に入るが、カバーシートを取り除いた直後で視認してもよいし、カバーシートを取り除き、数分程度時間をおいてから測定するもの可能である。
【0051】
カバーシートを取り除いた後で、気温や日照により防水シート11の表面は加熱、または、冷却されるが、接合部111と非接合部112の間には、冷却速度または加熱速度に差があり、結合部111と非結合部112との間に顕著な温度差が生じる場合がある。
【0052】
防水シート11の裏面側から風を吹きつけることも可能である。この場合防水シート11の裏面側に風を吹き付けるための開口部を防水シート11の表面側に設置する。この場合、できるだけ広い範囲の防水シート11に風を行き渡したいため、風を送り込む送風口と風を排出する排気口の少なくとも2箇所の開口部が必要である。
【0053】
その他の条件は、防水シート11の表面側から風を吹きつけるものと同じであるが、防水シート11の表面にカバーシートを設置しなくてもよいのが、防水シート11の裏面側に風を吹きつける方法の利点である。カバーシートを設置する場合、カバーシートを設置する時間とカバーシートが風で飛ばされないようにする安全処置が必要となる。
【0054】
なお、風の温度を季節に応じて変更してもよい。例えば、夏季には、風を外気よりも温度が低い冷風とし、冬季には、風を外気よりも温度が高い温風としてもよい。これにより、季節に関わらず、接合部111と非接合部112と間の温度差を十分に生じさせることができる。
【0055】
[1]温度分布可視化工程
温度分布視認工程は、風が送り込まれた防水シート11の表側の温度分布を可視化して視認する工程である。
【0056】
この温度分布視認工程では、例えば、サーモグラフィ(サーモビューワ)を用いて温度分布を可視化する。サーモグラフィを介して防水シート11を観察することにより、例えば図2に示すように、防水シート11の表側の温度分布、すなわち、接合部111と非接合部112とが濃淡により表示される。これにより、接合部111と非接合部112とを確実に視認することができる。そして、その結果に応じて、次工程の判断工程で、どの固定ディスク9が防水シート11と十分に接合され、どの固定ディスク9での接合が不十分であるのかを判断することができる。
【0057】
なお、温度分布視認工程は、吹き付け工程と同じタイミングで行なわれるか、または、吹き付け工程終了後に行なわれるのが好ましい。これにより、接合部111と非接合部112と間に十分な温度差が生じている状態を継続して維持することができる。
【0058】
[2]判断工程
判断工程は、防水シート11と各固定ディスク9とが十分に接合されているか否かを判断する工程である。この判断は、例えば、作業者が行なう。
【0059】
接合部111の形状が固定ディスク9の平面視での形状、すなわち、円形に近似している場合に、当該固定ディスク9での接合状態が十分であると判断する。
【0060】
例えば、図2に示すように、領域[A]で囲まれた固定ディスク9では、接合部111が円形の影として映っている。この場合、当該固定ディスク9での接合状態が十分であると判断する。領域[B]で囲まれた固定ディスク9では、接合部111が半円形の影として映っている。この場合、当該固定ディスク9での接合状態が不十分であると判断する。領域[C]で囲まれた固定ディスク9では、接合部111の影が映っていない。この場合も、当該固定ディスク9での接合状態が不十分であると判断する。
【0061】
以上のような各工程を経ることにより、検査を行なう作業者の熟練の程度によらず、防水シート11と固定ディスク9との接合状態を正確に検査することができる。
【0062】
そして、領域[B]や領域[C]で囲まれた固定ディスク9に対して、再度接合作業を行なう。これにより、当該各固定ディスク9での接合が十分な状態となる。その結果、全固定ディスク9で防水シート11が確実に接合されたシート防水構造10を施工することができる。
【0063】
以上、本発明の接合状態検査方法を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0064】
また、温度分布視認工程では、前記実施形態ではサーモグラフィを用いていたが、これに限定されず、例えば、赤外線放射温度計を用いてもよい。
【符号の説明】
【0065】
9 固定ディスク
91 ディスク部材
911 挿通孔
92 樹脂層
10 シート防水構造
11 防水シート
111 接合部
112 非接合部
12 ビス
101 床部
1000 躯体
GP 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6