(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-10
(45)【発行日】2022-08-19
(54)【発明の名称】印刷機
(51)【国際特許分類】
B41F 13/24 20060101AFI20220812BHJP
【FI】
B41F13/24 324
(21)【出願番号】P 2018098603
(22)【出願日】2018-05-23
【審査請求日】2021-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】714000460
【氏名又は名称】リョービMHIグラフィックテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】特許業務法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】甲賀 達也
【審査官】山本 一
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-183875(JP,A)
【文献】特開2007-176179(JP,A)
【文献】特開2004-148726(JP,A)
【文献】特開平04-371836(JP,A)
【文献】特開平07-299897(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0223394(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第10055278(DE,A1)
【文献】中国実用新案第201824618(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 13/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに周面を離間させて配設される版胴及び圧胴と、これら両胴間に配設されるゴム胴と、該ゴム胴を前記版胴に圧接させ、かつ、該ゴム胴を前記圧胴で搬送される枚葉紙を介して該圧胴に圧接させる胴入れ位置と、前記版胴及び前記圧胴から離間させる胴抜き位置と、前記ゴム胴を少なくとも前記版胴に対して該胴抜き位置よりもさらに離間させる退避位置と、に移動させるゴム胴駆動手段と、を備えて
おり、
回動中心部を有する回動部と前記ゴム胴を回転可能に支持する偏心軸受及び該回動部を連結する連結部とを備える回動リンクを備え、該回動部の回動中心部を中心とした回動を前記回動リンクを介して前記偏心軸受へ伝達することにより前記胴入れ位置から前記胴抜き位置及び前記退避位置に前記ゴム胴を移動させる構成であり、
前記ゴム胴駆動手段は、前記回動部を前記回動中心部を中心として回動させるために移動するアームを備えており、
前記アームは、前記回動部に連結される第1アームと、該第1アームの前記回動部とは反対側端と回動連結部によって回動自在に連結される第2アームを備えており、
前記ゴム胴駆動手段が前記ゴム胴を前記胴抜き位置に移動させるときは、前記第1アームと前記第2アームは直線状に並んでおり、前記ゴム胴を前記退避位置に移動させるときは、前記第1アームと前記第2アームは前記回動連結部における回動によって略くの字状に折れることを特徴とする印刷機。
【請求項2】
前記ゴム胴駆動手段は、前記ゴム胴を前記胴入れ位置と前記胴抜き位置との間で前記圧胴の回転にタイミングを合わせて前記アームを移動させる第1駆動手段と、該第1駆動手段とは別の退避用駆動手段を構成する第2駆動手段と、を備え、該第2駆動手段の駆動により前記第1アームと前記第2アームとが前記回動連結部で回動することで前記略くの字状に折れて前記ゴム胴を前記退避位置に移動させることを特徴とする請求項1に記載の印刷機。
【請求項3】
前記ゴム胴が前記胴抜き位置から前記退避位置へ移動する時に、該ゴム胴が前記版胴及び前記圧胴から離れる方向で、かつ、前記圧胴側に傾斜した軌跡を描きながら移動することを特徴とする請求項1又は2に記載の印刷機。
【請求項4】
前記退避位置は、版交換又はゴム胴洗浄あるいはそれら両方を行うための位置である請求項1~3のうちのいずれか1項に記載の印刷機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
かかる印刷機では、互いに周面を離間させて配設される版胴及び圧胴と、これら両胴間に配設されるゴム胴(ブランケット胴ともいう)とを備え、ゴム胴を版胴に圧接させ、かつ、ゴム胴を圧胴で搬送される枚葉紙を介して圧胴に圧接させる胴入れ位置とゴム胴を版胴及び圧胴から離間させる胴抜き位置との間でゴム胴を移動させることが行われている。
【0003】
そして、印刷時には、ゴム胴を胴抜き位置から胴入れ位置に移動させることにより、版胴のインキをゴム胴を介して圧胴で搬送される枚葉紙に転写して印刷を行う。また、印刷終了時(又は印刷開始前)や印刷中断時には、ゴム胴を胴入れ位置から胴抜き位置に移動させる。この胴抜き位置に移動させることにより、新しい版への交換やゴム胴の洗浄を行うことができる(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記胴抜き位置は、ゴム胴が版胴及び圧胴から僅かに離間する位置に設定されている。そのため、ゴム胴を胴抜き位置に移動させて版の交換を行う場合に、剛性のある版を版胴に巻き付けると、版胴の表面に対して版が浮き上がってしまい、ゴム胴に干渉する虞があり、改善の余地があった。
【0006】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、その目的は、版交換が安全に行える印刷機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る印刷機は、互いに周面を離間させて配設される版胴及び圧胴と、これら両胴間に配設されるゴム胴と、該ゴム胴を前記版胴に圧接させ、かつ、該ゴム胴を前記圧胴で搬送される枚葉紙を介して該圧胴に圧接させる胴入れ位置と、前記版胴及び前記圧胴から離間させる胴抜き位置と、前記ゴム胴を少なくとも前記版胴に対して該胴抜き位置よりもさらに離間させる退避位置と、に移動させるゴム胴駆動手段と、を備えていることを特徴としている。
【0008】
上記構成によれば、ゴム胴駆動手段によりゴム胴を胴抜き位置にして例えば印刷を中断している(待機状態の)場合には、ゴム胴を胴抜き位置から胴入れ位置に直ちに移動させて印刷を再開することができる。また、版を交換したい場合には、ゴム胴駆動手段によりゴム胴を少なくとも版胴に対して胴抜き位置よりもさらに離間させる退避位置に移動させることによって、版胴とゴム胴との離間距離が大きくなるため、版の交換時に、版胴の表面に対して版が浮き上がったとしても、ゴム胴に干渉することを防止することができる。
【0009】
また、本発明に係る印刷機は、回動中心部を有する回動部と前記ゴム胴を回転可能に支持する偏心軸受及び該回動部を連結する連結部とを備える回動リンクを備え、該回動部の回動中心部を中心とした回動を前記回動リンクを介して前記偏心軸受へ伝達することにより前記胴入れ位置から前記胴抜き位置及び前記退避位置に前記ゴム胴を移動させる構成であってもよい。
【0010】
上記のように、回動部の回動を回動リンクを介して偏心軸受へ伝達するだけで胴入れ位置から胴抜き位置及び退避位置にゴム胴を移動させることができるので、ゴム胴を移動させる構成を簡素にすることができる。
【0011】
また、本発明に係る印刷機は、前記ゴム胴が前記胴抜き位置から前記退避位置へ移動する時に、該ゴム胴が前記版胴及び前記圧胴から離れる方向で、かつ、前記圧胴側に傾斜した軌跡を描きながら移動する構成であってもよい。
【0012】
上記のように、ゴム胴が胴抜き位置から退避位置へ移動する時に、ゴム胴が版胴及び圧胴から離れる方向で、かつ、圧胴側に傾斜した軌跡を描きながら移動することによって、ゴム胴の移動を効率よく行いながらも、版交換時の版がゴム胴に干渉することを防止することができる。
【0013】
また、本発明に係る印刷機は、前記退避位置が、版交換又はゴム胴洗浄あるいはそれら両方を行うための位置であってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ゴム胴を少なくとも版胴に対して胴抜き位置よりもさらに離間させる退避位置に移動させることによって、版交換が安全に行える印刷機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】ゴム胴を胴入れ位置にした状態の印刷機の要部の側面図である。
【
図2】ゴム胴を胴抜き位置にした状態の印刷機の要部の側面図である。
【
図3】ゴム胴を退避位置にした状態の印刷機の要部の側面図である。
【
図4】(a)は
図1の要部の拡大図、(b)は
図2の要部の拡大図、(c)は
図3の要部の拡大図である。
【
図6】
図5でVI線で囲まれた部分の拡大図である。
【
図7】ゴム胴を移動させるための別の構成を示す印刷機の要部の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の印刷機の要部を、図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1には、互いに周面を離間させて上下に配設される版胴1及び圧胴2と、これら両胴間に配設されるゴム胴(ブランケット胴ともいう)3と、ゴム胴3を胴入れ位置、胴抜き位置、退避位置の3つの位置に移動させるためのゴム胴駆動手段4とを備えている。なお、
図1では、版胴1にインキを供給するインキ供給機構を、省略するとともに、枚葉紙(図示せず)に印刷する1つの印刷ユニットのみを図示している。また、版胴1には、画像が形成された図示しない版が巻回されており、ゴム胴3の退避位置で新たな版の交換を行う。また、版胴1とゴム胴3は、略同一の直径を有し、圧胴2は、版胴1の直径の略2倍の直径を有しているが、これらの寸法に限らない。
【0018】
ゴム胴3は、印刷機の左右の両横側に配設される一対のフレーム(図示せず)に偏心軸受5を介して回転可能に支持されている。そして、偏心軸受5の外周部の1か所に突出している突出片5Aに後述する連結部18が連結され、この連結部18をゴム胴駆動手段4の駆動により押し引きすることによって、ゴム胴3を胴入れ位置、胴抜き位置、退避位置の3つの位置に移動させることができる。このゴム胴3の胴入れ位置から退避位置への移動は、胴入れ位置→胴抜き位置→退避位置の順になり、また、ゴム胴3の退避位置から胴入れ位置への移動は、退避位置→胴抜き位置→胴入れ位置の順になる。
【0019】
胴入れ位置は、
図1及び
図4(a)に示すように、ゴム胴3を版胴1に圧接させ、かつ、ゴム胴3を圧胴2で搬送される枚葉紙(図示せず)を介して圧胴2に圧接させる位置である。ここでは、ゴム胴3は、版胴1に圧接した後、圧胴2に圧接するようなタイミングの構成となっているが、版胴1及び圧胴2に同時に圧接する構成であってもよい。
【0020】
胴抜き位置は、
図2及び
図4(b)に示すように、版胴1及び圧胴2からゴム胴3を離間させる位置である。この胴抜き位置では、印刷中断時(待機状態時)や印刷開始前に位置させ、印刷の再開時や開始時に迅速に胴抜き位置から胴入れ位置に移動できるように僅かに離れた位置に設定されている。
【0021】
退避位置は、
図3及び
図4(c)に示すように、ゴム胴3を版胴1に対して胴抜き位置よりもさらに離間させる位置である。この退避位置では、版交換時に版との接触をより確実に防止するために、圧胴2からの距離よりも版胴1からの離間距離が長くなるようにゴム胴3を移動させる。ここでは、版胴1からゴム胴3までの離間距離は、胴抜き位置(
図4(b)参照)の版胴1からゴム胴3までの離間距離G1よりも退避位置(
図4(c)参照)の版胴1からゴム胴3までの離間距離G3の方が長くなっているが、圧胴2からゴム胴3までの離間距離は、胴抜き位置(
図4(b)参照)の圧胴2からゴム胴3までの離間距離G2よりも退避位置(
図4(c)参照)の圧胴2からゴム胴3までの離間距離G4の方が短くなっている。
【0022】
前記3つの位置に移動させた時のゴム胴3の移動軌跡を
図5及び
図6に示している。特に
図5でわかりにくい部分(
図5においてVI線で囲まれた部分)、つまりゴム胴3の中心の移動軌跡を
図6の拡大図で示している。
図6のゴム胴3の胴入れ位置(
図5の実線参照)の回転中心3Aから胴抜き位置(
図5の1点鎖線参照)の回転中心3Bまでは、略水平方向に移動して版胴1及び圧胴2から離間し、胴抜き位置の回転中心3Bから退避位置(
図5の2点鎖線参照)の回転中心3Cまでは、ゴム胴3が版胴1及び圧胴2から離れる方向で、かつ、圧胴2側に傾斜した軌跡(
図6では、離れる方向に下向きとなる円弧軌跡)を描きながら移動する。したがって、ゴム胴3が圧胴2との距離を大きく変えずに、版胴1からより一層遠ざかるように移動することができ、ゴム胴3の移動を効率よく行いながらも、版交換時の版がゴム胴3に干渉することを防止することができる。
図5及び
図6において、上方に一点鎖線で示す右下がり傾斜直線L1は、版胴1の回転中心1Aから版胴1とゴム胴3との接触点であるニップポイントN1とゴム胴3の胴入れ位置での回転中心3Aを結んだ線である。また、下方に一点鎖線で示す右上がり傾斜直線L2は、圧胴2の中心(図示せず)から圧胴2とゴム胴3との接触点であるニップポイントN2とゴム胴3の胴入れ位置での回転中心3Aを結んだ線である。また、
図6の5Bは、偏心軸受5の支点である。
【0023】
ゴム胴駆動手段4は、ゴム胴3を胴入れ位置と胴抜き位置との間で圧胴2の回転にタイミングを合わせて移動させる第1駆動手段6と、ゴム胴3を胴抜き位置と退避位置との間で移動させる第1駆動手段6とは別の退避用駆動手段を構成する第2駆動手段7とを備えている。
【0024】
第1駆動手段6は、
図1に示すように、圧胴2と同軸で回転するように2段重ねで付設された形状の異なる2枚のカム8,9と、これらカム8,9にバネ(図示せず)等によって当接するように付勢され軸10を支点として揺動自在にそれぞれ付設される2個のカムフォロワ11,12と、カムフォロワ11,12の近傍に付設される略三日月状の爪13と、爪13の中心に一端(基端)が連結され、軸10を支点として回動自在なレバー14と、レバー14の他端(先端)に連結されるアーム15と、アーム15のレバー14側とは反対側端部が連結される回動リンク16とを備えている。
図1に、ゴム胴3の回転中心3Aと、偏心軸受5の支点5Bを示している。
【0025】
爪13には、アクチュエータとしてのエアシリンダ17が連結されており、爪13をどちらかのカムフォロワ11,12の当接部11a(一方のカムフォロワ11のみ図示)に当接するようにエアシリンダ17を伸縮駆動する。アーム15は、回動リンク16に連結される第1アーム15Aと、レバー14に一端が連結され他端が第1アーム15Aに回動自在に連結される第2アーム15Bとを備えている。そして、第2駆動手段7の駆動により第1アーム15Aと第2アーム15Bとが回動連結部15Cで相対的に回動することでアーム15が回動連結部15Cで略くの字状に折れる(中折れする)ように構成されている。これによって、回動連結部15Cが下方に移動し、第1アーム15Aが後述の回動部19を反時計回りに回動させる。回動リンク16は、ゴム胴3の偏心軸受5の突出片5Aに枢支連結される連結部18と連結部18の基端部が枢支連結され回動中心部19Aを有する回動部19とを備えている。したがって、回動リンク16の回動中心部19Aを中心とした回動を連結部18を介してゴム胴3へ伝達することにより、胴入れ位置から胴抜き位置及び退避位置にゴム胴3を移動させる。なお、レバー14の一方側への回動時に当接してレバー14の一方側への回動角を制限するストッパー部20及びレバー14の他方側への回動時に当接してレバー14の他方側への回動角を制限するストッパー部21を備えている。
【0026】
第2駆動手段7は、略L字形状の固定部材22に基端部が水平軸Y回りで回動自在に取り付けられるガイド部材23と、ガイド部材23の先端部と固定部材22の下端部の右端とに取り付けられるアクチュエータとしての伸縮自在なエアシリンダ24とを備えている。このエアシリンダ24の伸縮により、ガイド部材23を
図1及び
図2で示す右上がりの傾斜姿勢と
図3に示す水平姿勢とに姿勢変更させることができる。そして、ガイド部材23を傾斜姿勢から水平姿勢に姿勢変更することによって、前述したようにアーム15を回動連結部15Cで折る(中折れする)ことができる。
【0027】
ガイド部材23には、ゴム胴3を胴入れ位置と胴抜き位置とに移動させる時にアーム15の回動連結部15Cの移動を案内する直線状の長孔23Aが形成されている。この長孔23Aを回動連結部15Cが移動することによって、アーム15が回動連結部15Cで折れることがなく、直線上に移動することができる。また、ガイド部材23には、
図3に示すゴム胴3の退避位置において、アーム15の回動連結部15Cが長孔23Aの右側へ不測に移動して胴抜き位置側へゴム胴3が移動することを規制するための規制機構25を設けている。規制機構25は、ガイド部材23に水平軸Z回りに揺動自在に取り付けられ回動連結部15Cと当接して回動連結部15Cの位置を規制する規制部材26と、規制部材26を回動連結部15Cに当接するように付勢する付勢手段としてのコイルスプリング27とを備えている。
【0028】
図1に、ゴム胴3が胴入れ位置に移動した状態を示している。この場合、カムフォロワ11がカム9に押されて時計回りに揺動されて、爪13を押す。これにより、レバー14が時計回りに回動され、アーム15が右斜め上方に移動する。アーム15の上方移動により回動部19が時計回りに回動され、連結部18が左斜め上方に押し上げられて、偏心軸受5を支点5Bを中心に反時計回りに回動させ、ゴム胴3が版胴1に圧接(接触)するとともに圧胴2に枚葉紙(図示せず)を介して圧接(接触)する。なお、レバー14が一方のストッパー部20に当接することによって、ゴム胴3の回動幅が正確に制限され、ゴム胴3を胴入れ位置に精度良く位置させることができる。
図1に、ゴム胴3の回転中心3Aと、偏心軸受5の支点5Bを示している。
【0029】
図2に、ゴム胴3が胴抜き位置に移動した状態を示している。この場合、カムフォロワ12がカム8に押されて反時計回りに揺動されて、爪13を押す。これにより、レバー14が反時計回りに回動され、アーム15が左斜め下方に移動する。アーム15の移動により回動リンク16が反時計回りに回動され、連結部18が右斜め下方に引っ張られて、偏心軸受5を時計回りに回動させ、ゴム胴3が版胴1及び圧胴2から離間する。なお、この場合も、レバー14が他方のストッパー部21に当接することによって、ゴム胴3の回動幅が正確に制限され、ゴム胴3を胴抜き位置に精度良く位置させることができる。
図1に、移動したゴム胴3の回転中心3Bと、偏心軸受5の支点5Bを示している。
【0030】
図3に、ゴム胴3が退避位置に移動した状態を示している。この場合、
図2のゴム胴3の胴抜き位置において、伸長状態のエアシリンダ24を短縮作動させることによって、ガイド部材23が傾斜姿勢から水平姿勢に姿勢変更し、アーム15が回動連結部15Cで折れる(中折れする)。これにより、回動リンク16が反時計回りに更に回動され、連結部18が右斜め下方に引っ張られて、偏心軸受5を時計回りに更に回動し、ゴム胴3が版胴1から更に離間する。なお、回動連結部15Cが規制部材26に当接しているので、回動連結部15Cが長孔23Aの右側へ移動することが規制され、偏心軸受5が反時計回りに回動されて胴抜き位置側へ移動することが制限される。
【0031】
前記のように、ゴム胴3を退避位置にすることによって、版交換が安全に行えるので、例えば版交換を行いつつ、ゴム胴3を高速回転させてゴム胴3の洗浄作業を行うことができる。よって、版交換作業とゴム胴3の洗浄作業を同時に行えるので、例えば新たな印刷を行う前の準備時間の短縮化を図ることができる。
【0032】
尚、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0033】
前記実施形態では、カム8,9を用いてゴム胴3を胴入れ位置及び胴抜き位置に移動させ、胴抜きから退避位置に第2駆動手段7を構成するエアシリンダ(油圧シリンダや伸縮式の電動モータ等のアクチュエータでもよい)24を用いて移動させるようにしたが、
図7に示すように、4段階に伸縮するように3つの作動室33A,33B,33Cを備える3段式のエアシリンダ33を用いてゴム胴3を胴入れ位置(実線参照)、胴抜き位置(1点鎖線参照)、退避位置(2点鎖線参照)に移動させるようにしてもよい。各作動室33A…の軸方向両端部には、エアを吸排気するパイプ34,35を備えている。パイプ34,35にはホース36の一端が接続され、ホース36の他端がバルブ(図示せず)に接続され、バルブにはエア供給装置(図示せず)が接続される。具体的には、基端部が枢着された3段式のエアシリンダ33のロッド33Rの先端部を回動リンク16の回動部19に連結し、回動リンク16の連結部18を偏心軸受5の突出片5Aに連結している。したがって、
図7では、実線に示すように、3段式のエアシリンダ33のロッド33Rを4段に最大伸長させてゴム胴3を胴入れ位置に位置させた状態を示している。また、3段式のエアシリンダ33のロッド33Rを最大伸長から一段短縮させて圧胴2とゴム胴3の間を離間させ、更にもう一段短縮させてゴム胴3を胴抜き位置に位置させることができる(1点鎖線参照)。また、3段式のエアシリンダ33のロッド33Rを最大伸長から最短伸長まで短縮させてゴム胴3を退避位置に位置させることができる(2点鎖線参照)。なお、3段式のエアシリンダ33の代わりに伸縮式の電動モータを用いてもよい。この場合、電動モータの3つの伸縮位置を検出手段(例えば非接触式のセンサ)により検出し、それら検出手段の検出情報に基づいて精度よくロッド33Rの先端を位置させるように制御部により駆動制御することが必要になる。
【0034】
また、前記実施形態では、退避位置においてゴム胴3と圧胴2との距離よりもゴム胴3と版胴1との距離の方が長くなるようにゴム胴3を移動させたが、胴抜き位置よりも離間させることができる位置に移動できるのであれば、ゴム胴3と圧胴2との距離よりもゴム胴3と版胴1との距離の方が短くなるようにゴム胴3を移動させてもよいし、いずれの距離も同一になるようにゴム胴3を移動させてもよい。
【0035】
また、前述の実施形態では、ゴム胴3が胴抜き位置から退避位置へ移動する時に、ゴム胴3が版胴1及び圧胴2から離れる方向に下向きとなる円弧軌跡を描きながら移動したが、ゴム胴3が水平方向に直線的に移動する又は斜め下方に直線移動するように構成してもよい。
【0036】
また、前述の実施形態では、ゴム胴3を版胴1に対して胴抜き位置よりもさらに離間する構成であったが、ゴム胴3を版胴1及び圧胴2に対して胴抜き位置よりもさらに離間する構成であってもよい。また、参考例として、ゴム胴3を圧胴2に対して胴抜き位置よりもさらに離間する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0037】
1…版胴、1A…回転中心、2…圧胴、3…ゴム胴、3A,3B,3C…回転中心、4…ゴム胴駆動手段、5…偏心軸受、5A…突出片、5B…支点、6…第1駆動手段、7…第2駆動手段、8,9…カム、10…軸、11,12…カムフォロワ、11a…当接部、13…爪、14…レバー、15…アーム、15A…第1アーム、15B…第2アーム、15C…回動連結部、16…回動リンク、17…エアシリンダ、18…連結部、19…回動部、19A…回動中心部、20,21…ストッパー部、22…固定部材、23…ガイド部材、23A…長孔、24…エアシリンダ、25…規制機構、26…規制部材、27…コイルスプリング、33…エアシリンダ、33A,33B,33C…作動室、33R…ロッド、34,35…パイプ、36…ホース、G1,G2,G3,G4…離間距離、L1,L2…傾斜直線、N1,N2…ニップポイント、Y…水平軸、Z…水平軸