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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-10
(45)【発行日】2022-08-19
(54)【発明の名称】コンクリート表面仕上げ用硬化促進剤
(51)【国際特許分類】
   C04B 22/14 20060101AFI20220812BHJP
   B28C 7/04 20060101ALI20220812BHJP
   C04B 24/30 20060101ALI20220812BHJP
   C04B 24/06 20060101ALI20220812BHJP
   C04B 103/10 20060101ALN20220812BHJP
【FI】
C04B22/14 A
B28C7/04
C04B24/30 B
C04B24/06 A
C04B103:10
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018115251
(22)【出願日】2018-06-18
(65)【公開番号】P2019218223
(43)【公開日】2019-12-26
【審査請求日】2021-05-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135758
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 高志
(72)【発明者】
【氏名】石井 泰寛
(72)【発明者】
【氏名】宮口 克一
【審査官】田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-042263(JP,A)
【文献】特開2000-281409(JP,A)
【文献】特開2014-152057(JP,A)
【文献】特開2007-069366(JP,A)
【文献】特開2001-322852(JP,A)
【文献】特開昭61-122146(JP,A)
【文献】国際公開第2019/244601(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00 - 32/02
B28C 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末の硫酸アルミニウム及び/又は粉末のカリウムミョウバンと、流動調整剤とを含み、
前記粉末の硫酸アルミニウム及び/又は粉末のカリウムミョウバンが70質量部以上95質量部以下であり、前記流動調整剤が5質量部以上30質量部以下であり、
前記流動調整剤が粉末のメラミン系化合物である粉末状のコンクリート表面仕上げ用硬化促進剤。
【請求項2】
粉末の硫酸アルミニウム及び/又は粉末のカリウムミョウバンと、流動調整剤とを含み、
前記粉末の硫酸アルミニウム及び/又は粉末のカリウムミョウバンが70質量部以上95質量部以下であり、前記流動調整剤が5質量部以上30質量部以下であり、
前記流動調整剤が粉末のメラミン系化合物とオキシカルボン酸及び/又はオキシカルボン酸との混合物である粉末状のコンクリート表面仕上げ用硬化促進剤。
【請求項3】
前記コンクリート表面仕上げ用硬化促進剤を混和したコンクリートの練り混ぜ完了から90分後のスランプ若しくはスランプフローが、前記コンクリート表面仕上げ用硬化促進剤を混和しない以外は同じ配合のコンクリートと比較して、前記スランプであれば±2cm、前記スランプローであれば±5cmとなる請求項1又は2に記載の粉末状のコンクリート表面仕上げ用硬化促進剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に、土木・建築分野等で使用されるコンクリートのコンクリート表面仕上げ用硬化促進剤に関する。なお、本発明のコンクリートとは、セメントペースト、モルタル、コンクリートを総称するものである。
【背景技術】
【0002】
建設業界は、いわゆる3K(危険、キツイ、汚い)作業が多い業界と言われている。国土交通省は、「国土交通白書」や「重点政策」の中で、新3K(給料がいい、休暇がとれる、希望がもてる)を目指すとし、建設業界の改革を掲げている。例えば、コンクリート工においても、「i-Construction」というキーワードの下、作業の効率化や、省力化・軽労化を推進していく方針である。その中で、施工現場の作業員の労働環境の改善と関連し、残業を減らすことが望まれている。
【0003】
コンクリート工では、コンクリートを打設した後、表面仕上げを行う。この表面仕上げの良否はコンクリートのひび割れや強度に影響し、最終的にはコンクリート構造物の耐久性にまで影響する。コンクリートの表面仕上げとしては、金属ゴテや木ゴテやプラスティック製のコテや硬質ゴム製のコテ等で平滑にするコテ仕上げ、表面仕上げ用のバイブレータ等で平滑にするバイブレータ仕上げ等が挙げられるが、主にコテを用いて行われる。
このコテ等による表面仕上げについて、最終の表面仕上げ作業の開始時はブリーディングが引き始めた時機が最適な時期とされており、その時機までは作業を行えない。その時機はコンクリートの凝結始発時間の直前であるため、特に外気温の低い寒冷期におけるコンクリート打設では、何時間もの間、左官職人が待機しているのが現状である。この待機時間が、作業効率の低下を招き、残業につながるケースが多く見受けられる。
【0004】
コンクリートの凝結硬化を促進して凝結始発までの待機時間を短縮する目的で、凝結促進剤をコンクリートに添加する方法、例えば、硫酸アルミニウムを添加する方法(特許文献1、特許文献2)も考えられるが、この場合だと、運搬中にコンクリートのコンシステンシーが低下し、打設時の作業性が著しく悪くなり、施工が上手くいかず、施工欠陥を招くおそれもあった。
【0005】
また、速硬セメントなどに凝結促進剤と凝結調整剤を併用することで工期短縮を図る既往の技術では凝結調整剤を使用している(特許文献3)。しかし、この場合だと、寒冷期の現場打設において凝結調整剤はコンクリートの凝結を遅延させる可能性があるため、コテによる表面仕上げまでの作業時間を遅らせてしまうおそれがあった。
【0006】
コンクリートの表面仕上げの工程に関して、表面仕上げ機を使用する方法(特許文献4)、荒均しをして養生マットを併用する方法(特許文献5)、樹脂フィルムを用いてコテ仕上げする方法(特許文献6)、コンクリート表面からろ過マットを介して真空脱気する方法(特許文献7)、不織布シートを用いる方法(特許文献8および9)などが知られている。しかし、特別な機材や資材を用いる必要があったり、余計な工程や仕上げに特別な技術を要するなど手間がかかったりするなどの課題があった。
さらに、コテによる表面仕上げに関して、ポリマーディスパージョン(特許文献10)、界面活性剤(特許文献11)や水性養生剤(特許文献12)などの表面仕上げ剤を併用することで特別な資機材を必要としない技術が開発されてきた。しかし、これらの表面仕上げ剤ではコンクリート表面のコテ仕上げの品質を向上できるが、コテ仕上げが可能となる時間までの短縮までは不可能であり、工程の短縮は不可能であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】仏国特許第2031950号
【文献】特開平08-48553号公報
【文献】特開平5-321463号公報
【文献】特許第2044653号公報
【文献】特開平06-172060号公報
【文献】特開平10-018566号公報
【文献】特許第03398716号公報
【文献】特開2000-015619号公報
【文献】特許第5830051号公報
【文献】特許第1887894号公報
【文献】特許第4574316号公報
【文献】特開2014-173246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のようにこれまでのコンクリートの表面仕上げ工程に対する技術では、耐久性を高めるために特別な資機材や手間がかかるものであり、加えてコンクリート打設から表面仕上げ(特にコテ仕上げ)が可能となる時間の短縮までは不可能であり、その結果、工程の短縮は不可能であった。また、広範囲にわたる表面仕上げ作業を施すために十分な時間を確保できる、いわゆる表面仕上げ性(コテ仕上げの場合はコテ仕上げ性)を有することも重要である。
そこで、本発明は、良好な表面仕上げ性を確保するとともに、寒冷期であってもコンクリート打設から表面仕上げが可能となる時間までの短縮が可能なコンクリート表面仕上げ用硬化促進剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は上記課題を解決すべく検討を行なったところ、硫酸アルミニウム及び/又はカリウムミョウバンと流動調製剤とを特殊な範囲で組みあわせることで、良好なコテ仕上げ性を確保するとともに、寒冷期であってもコンクリート打設からコテ仕上げが可能となる時間までの短縮が可能なコンクリート表面仕上げ用硬化促進剤が得られることを見出した。すなわち、本発明は下記のとおりである。
【0010】
[1] 硫酸アルミニウム及び/又はカリウムミョウバンと、流動調整剤とを含み、
前記硫酸アルミニウム及び/又はカリウムミョウバンが70質量部以上95質量部以下であり、前記流動調整剤が5質量部以上30質量部以下であるコンクリート表面仕上げ用硬化促進剤。
[2] 前記流動調整剤がメラミン系化合物、オキシカルボン酸、及びオキシカルボン酸塩の少なくともいずれかである[1]に記載のコンクリート表面仕上げ用硬化促進剤。
[3] コンクリート1mに対して4kg/m混和し、コンクリートの打ち込み直後からコテ仕上げが可能となるまでの時間が、環境温度5℃において8時間以下、環境温度20℃において4時間以下である[1]又は[2]に記載のコンクリート表面仕上げ用硬化促進剤。
[4] 前記コンクリート表面仕上げ用硬化促進剤を混和したコンクリートの練り混ぜ完了から90分後のスランプ若しくはスランプフローが、前記コンクリート表面仕上げ用硬化促進剤を混和しない以外は同じ配合のコンクリートと比較して、前記スランプであれば±2cm、前記スランプローであれば±5cmとなる[1]~[3]のいずれかに記載のコンクリート表面仕上げ用硬化促進剤。
【発明の効果】
【0011】
本発明のコンクリート表面仕上げ用硬化促進剤を使用すると、良好な表面仕上げ性を確保できるとともに、寒冷期であってもコンクリート打設から表面仕上げが可能となる時間までの短縮が可能となる。その結果、左官職人の業務効率化につながり、建設現場の効率を向上できるといった効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、本明細書で使用する「部」や「%」は特に規定のない限り質量基準である。また、以下では表面仕上げの好ましい一例として、コテ仕上げを挙げて説明するが、他の表面仕上げについても同様なことがいえる。
【0013】
本発明のコンクリート表面仕上げ用硬化促進剤は、コテ仕上げのような表面仕上げが可能となる時間を短縮することが可能なため、左官職人の業務効率化につながる。通常、コンクリートを打設後、左官職人がブリーディングの発生が収まってから、最終仕上げを行うまでに、待機時間が半日以上にもおよぶ場合が多く、この待機時間が建設現場の効率を損なっていた。
本発明のコンクリート表面仕上げ用硬化促進剤を用いることで、最終コテ仕上げを実施するまでの時間を短縮することが可能となり、建設現場の施工効率を向上させることが可能となる。
【0014】
本発明のコンクリート表面仕上げ用硬化促進剤は硫酸アルミニウム及び/又はカリウムミョウバンと流動調整剤とを含む。これらの割合は、硫酸アルミニウム及び/又はカリウムミョウバンが70部以上95部以下であり、流動調整剤が5部以上30部以下であり、好ましくは、硫酸アルミニウム及び/又はカリウムミョウバンが80部以上95部以下であり、流動調整剤が5部以上15部以下である。
硫酸アルミニウム及び/又はカリウムミョウバンが70部未満で、流動調整剤が30部を超えると、コンクリートの打ち込み直後からコテ仕上げが可能となるまでの時間の短縮効果がみられなくなる場合がある。硫酸アルミニウム及び/又はカリウムミョウバンが95部を超え、流動調整剤が5部未満であると、精度の高いコテ仕上げ性が得られなくなる場合がある。
【0015】
また、コンクリート表面仕上げ用硬化促進剤中の硫酸アルミニウム及び/又はカリウムミョウバンと流動調整剤との合計は、85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。85%以上であることで、建設現場におけるコテ仕上げの施工効率をより向上させることができる。
なお、硫酸アルミニウム及び/又はカリウムミョウバンと流動調整剤以外には、減水剤、高性能減水剤、AE減水剤、高性能AE減水剤、流動化剤、消泡剤、増粘剤、防錆剤、防凍剤、収縮低減剤、凝結調整剤、ビニロン繊維、アクリル繊維、及び炭素繊維等の繊維状物質、セメント混和用ポリマーディスパージョン、ハイドロタルサイト等のアニオン交換体等のうちの1種又は2種以上を、本発明の目的を実質的に阻害しない範囲で使用することが可能である。
【0016】
本発明でいう硫酸アルミニウムとは、一般式Al(SO・nHOで表され、式中のnは0~18の範囲にある。硫酸アルミニウムとしては、無水硫酸アルミニウム、及び様々な数の結晶水の硫酸アルミニウムが存在するが、本発明ではいずれのものも使用可能である。また、硫酸アルミニウム18水塩を、例えば、105℃で24時間乾燥させた乾燥硫酸アルミニウムも使用可能である。
【0017】
硫酸アルミニウムは粉末であることが好ましく、その平均粒径は限定されるのではないが、通常、500μm以下が好ましく、325μm以下がより好ましい。硫酸アルミニウムの平均粒径が500μmを以下であることで、コテ仕上げ性が良好となったり、コテ仕上げ後のブリーディングが収まりやすくなったりする。
【0018】
本発明でいうカリウムミョウバンとは、ミョウバンの一種で、カリウムイオン、水和アルミニウムイオン及び硫酸イオンを含む複塩である。一般式AlK(SO・nHOで表され、式中のnが0~12のいずれのものも使用可能である。
【0019】
カリウムミョウバンは粉末であることが好ましく、その平均粒径は限定されるのではないが、通常、500μm以下が好ましく、325μm以下がより好ましい。カリウムミョウバンの平均粒径が500μmを以下であることで、コテ仕上げ性が良好となったり、コテ仕上げ後のブリーディングが収まりやすくなったりする。
なお、平均粒径の測定は、堀場製作所社製、レーザ回折/散乱式粒度分布計により測定したものである。
【0020】
硫酸アルミニウム及びカリウムミョウバンのうち、本発明では硫酸アルミニウムが好ましく、なかでも、無水硫酸アルミニウムがより好ましい。硫酸アルミニウムであれば、寒冷期におけるコテ仕上げ開始時間の短縮が可能で、かつ作業性が良好な範囲でコテ仕上げ時間を確保することができる。また、硫酸アルミニウムの無水物であれば、水の影響による急激な硬化を良好に防ぎ、実用的なコテ仕上げ時間を確保することができる。
【0021】
本発明に使用される流動調整剤とは、硫酸アルミニウム及び/又はカリウムミョウバンによるコンクリートの急激な凝結・硬化作用をある程度緩慢にすることでコンクリートの適切な流動性を維持しながら均一な凝結・硬化を実現し、コンクリート打設からコテ仕上げが可能となる時間までの短縮を可能とする混和剤をいう。
【0022】
流動調整剤としては、メラミン系化合物、オキシカルボン酸、及びオキシカルボン酸塩の少なくともいずれかであることが好ましい。
メラミン系化合物としては粉末のメラミン系化合物が好ましく、メチロールメラミン縮合物、メラミンスルホン酸塩、メラミンスルホン酸塩ホルマリン縮合物等が挙げられる。具体的には、日本シーカ(株)製の製品名「シーカメントFF」等が使用可能である。
【0023】
オキシカルボン酸としては、酒石酸、クエン酸、グルコン酸等が挙げられ、また、オキシカルボン塩としては、上記オキシカルボン酸の塩等が挙げられる。これらは1種類のみ、又は2種類以上を混和させてもよい。
【0024】
上記の中で特に、メラミン系化合物は、セメント粒子の表面に付着することで、コンクリートに分散性を付与する材料であり、硫酸アルミニウム及び/又はカリウムミョウバンとセメント組成物との混合性が良好になり、本発明の効果がより発揮されやすくなる。
【0025】
したがって、流動調整剤としてはメラミン系化合物が好ましいが、コテ仕上げが可能となるまでの時間の短縮効果の観点からは、メラミン系化合物とオキシカルボン酸及び/又はオキシカルボン酸塩との混合物が好ましい。このときのメラミン系化合物とオキシカルボン酸及び/又はオキシカルボン酸塩との質量比は、[メラミン系化合物]:[オキシカルボン酸及び/又はオキシカルボン酸塩]=40:60~95:5であることが好ましく、80:20~90:10であることがより好ましい。
また、メラミン系化合物と組み合わせるオキシカルボン酸としては、本発明の効果をより高める観点から、酒石酸であることが好ましい。
【0026】
本発明のコンクリート表面仕上げ用硬化促進剤は、コンクリート1mに対して2~10kg/mの範囲で使用することが好ましく、4~8kg/mがより好ましい。2kg/m以上であることで、コンクリートの打ち込み直後からコテ仕上げが可能となるまでの時間の短縮効果が得られやすくなる。10kg/m以下とすることでコンクリートの打ち込み直後からコテ仕上げが可能となるまでの時間の短縮効果が得られやすくなり、コンクリートの流動性保持性を良好に維持することができる。
【0027】
本発明のコンクリート表面仕上げ用硬化促進剤は、コンクリート1mに対して4kg/m混和(好ましくは、2~10kg/m混和)し、コンクリートの打ち込み直後からコテ仕上げが可能となるまでの時間が、環境温度5℃において8時間以下、環境温度20℃において4時間以下であることが好ましい。環境温度5℃において8時間以下、環境温度20℃において4時間以下であることで、良好なコテ仕上げ表面を確保できるとともに、コンクリート打設からコテ仕上げが可能となる時間までの短縮を可能とする。
【0028】
コンクリートの打ち込み直後からコテ仕上げが可能となるまでの時間が、環境温度5℃において、2~8時間であることがより好ましい。また、環境温度20℃においては、1~4時間であることがより好ましい。
【0029】
本発明のコンクリート表面仕上げ用硬化促進剤は、あらゆるコンクリートに使用可能であり、セメントの種類に影響されるものではない。セメントとしては、例えば、普通、早強、超早強、低熱、及び中庸熱等の各種ポルトランドセメントや、これらポルトランドセメントに、高炉スラグ、フライアッシュ又はシリカを混合した各種混合セメント、石灰石粉末や高炉徐冷スラグ微粉末などを混合したフィラーセメント、都市ゴミ焼却灰や下水汚泥焼却灰を原料として製造された環境調和型セメント(エコセメント)を挙げることができる。入手の容易さからポルトランドセメントが好ましく、普通ポルトランドセメントが最も好ましい。
【0030】
本発明の対象となるコンクリートに使用する骨材は、特に限定されるものではないが、天然に産出する骨材、人工的に製造した骨材で粒度調整されたものであればよい。
【0031】
本発明では、各材料の混合方法は特に限定されるものではなく、それぞれの材料を施工時に混合してもよいし、あらかじめその一部、あるいは全部を混合しておいても差し支えない。混合装置としては、既存の如何なる装置も使用可能であり、例えば傾動ミキサ、オムニミキサ、ヘンシェルミキサ、V型ミキサ、プロシェアミキサ、及びナウターミキサ等が挙げられる。
【0032】
以上のようなコンクリート表面仕上げ用硬化促進剤は、当該コンクリート表面仕上げ用硬化促進剤を混和したコンクリートの練り混ぜ完了から90分後のスランプ若しくはスランプフローが、コンクリート表面仕上げ用硬化促進剤を混和しない同じ配合のコンクリートと比較して、スランプであれば±2cm、スランプローであれば±5cmとなることが好ましい。かかるスランプ若しくはスランプフローであれば、良好なコテ仕上げ表面を確保できるとともに、コンクリート打設からコテ仕上げが可能となる時間までの短縮が可能となる。上記スランプであれば±1.5cm、スランプローであれば±3cmとなることがより好ましい。
【実施例
【0033】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0034】
(実施例1)
単位セメント量310kg/m、単位水量170.5kg/m、s/a=43%、空気量4.5±1.5%、スランプ12±2.5cm、減水剤添加率:セメント×1.0%のコンクリートを、50Lの2軸ミキサを用いて調製した。
【0035】
コンクリートの調製に使用した材料は下記のとおりである。
・セメント:普通ポルトランドセメント、市販品、ブレーン比表面積3200cm/g。
・粗骨材:砕石、密度2.64g/cm
・細骨材:海砂を洗浄したもの。塩化物含有量0.02%。密度2.62g/cm
・水:水道水
・減水剤:リグニン系減水剤、GCP株式会社製
【0036】
さらに下記の材料(無機化合物及び流動調整材)を用いて各種混合比率を下記表1に記載のとおりに調整して、コンクリート用のコンクリート表面仕上げ用硬化促進剤を作製した。作製したコンクリート表面仕上げ用硬化促進剤を、コンクリート1mに対して6kg/m混和し、各計測を実施した。
なお、コンクリート練り上げが完了した2軸ミキサ内にコンクリート表面仕上げ用硬化促進剤を投入して30秒混和した。試験は全て5℃の恒温室内にて行った。
【0037】
(1)無機化合物
無機化合物A:硫酸アルミニウム無水塩 試薬
無機化合物B:硫酸アルミニウム乾燥品 試薬
無機化合物C:硫酸アルミニウム18水塩(粉末)、平均粒径325μm、市販品
無機化合物D:カリウムミョウバン12水塩(粉末)、平均粒径305μm、市販品
【0038】
(2)流動調整材
流動調整剤A:粉末メラミン系化合物、シーカメントFF(シーカ株式会社製)
流動調整剤B:酒石酸、試薬
流動調整剤C:グルコン酸ナトリウム、試薬
【0039】
「試験方法」
コテ仕上げ時間:30cm×30cm×10cmの型枠を24個準備してコンクリートを充填し、コンクリート打設から1時間ごとに1つずつ金コテでコンクリート表面のコテ仕上げを行った。コテ仕上げから24時間後のコンクリート表面の状況を確認し、(1)コンクリート表面が平滑であること、(2)コンクリート型枠上端から沈下が見られないことの2つの条件を満たすコテ仕上げに適した、コンクリートの打ち込み直後からコテ仕上げが可能となるまでの最短時間を測定した。
当該時間は、8時間以内であることが作業効率等の観点から好ましい。
【0040】
コンクリートの流動保持性:コンクリートの打ち込み直後から90分時点でのコンクリート表面仕上げ用硬化促進剤を混和しないコンクリートのスランプもしくはスランプフロー値を0とした場合の、各条件のコンクリート表面仕上げ用硬化促進剤を混和したコンクリートのスランプもしくはスランプフロー値として評価した。
【0041】
圧縮強度:φ10×20cmの型枠に充てんしたコンクリートについて、JISA1108「コンクリートの圧縮強度試験方法」に準拠して材齢24時間強度を測定した。各条件のコンクリート表面仕上げ用硬化促進剤を混和したコンクリートの圧縮強度は、コンクリート表面仕上げ用硬化促進剤を混和しないコンクリートを100として評価した。
【0042】
コンクリート表面の目視観察:コテ仕上げに適した時間にコテ仕上げを行ったコンクリート表面を観察し、コンクリート表面に白華物が見られないものを○、白華物が見られるものを×として評価した。
【0043】
コンクリートのコテ仕上げ性:広範囲にわたるコテ仕上げ作業を施すために十分な時間を確保できるかどうかを評価するために、コテ仕上げをするために最適な状態になるまでの時間に至ってから30分経過後に、30cm×30cm×20cm型枠に打設したコンクリートの表面をコテで仕上げ、(1)コテ仕上げができること、(2)コンクリート表面が目視で確認した際にあばたや気泡や仕上げのムラが無く、平滑であること、という2つの条件を満たしたものをコテ仕上げ性の高いものとして○、(1)は満たすが(2)については平滑性に若干のムラがあるものを△、(1)及び(2)のどちらも満たせないものは全て×とした。○、△であれば、コテ仕上げ性が合格レベルである。
上記の各試験の結果を表1、表2に併記した。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
表1より、本発明のコンクリート表面仕上げ用硬化促進剤は,5℃環境において、練り上げ直後のコンクリートがスランプ12±2.5cmのコンクリートに対して、コテ仕上げ可能な時間を大幅に短縮し、コンクリートの流動性にも悪影響を与えず、圧縮強度も増進することがわかる。
【0047】
表2より、本発明のコンクリート表面仕上げ用硬化促進剤は、5℃環境において、コンクリート表面も良好な状態で仕上げが可能となり,コテ仕上げの作業時間を十分確保できることがわかる。
【0048】
「実施例2」
試験を20℃恒温室内において行ったこと以外は、実施例1と同様に試験を行った。試験結果を表3、表4に示す。
【0049】
【表3】
【0050】
【表4】
【0051】
表3より、本発明のコンクリート表面仕上げ用硬化促進剤は、20℃環境において、練り上げ直後のコンクリートがスランプ12±2.5cmのコンクリートに対して、コテ仕上げ可能な時間を大幅に短縮し、コンクリートの流動性にも悪影響を与えず、圧縮強度も増進することがわかる。
【0052】
表4より、本発明のコンクリート表面仕上げ用硬化促進剤は、20℃環境において、コンクリート表面も良好な状態で仕上げが可能となり、コテ仕上げの作業時間を十分確保できることがわかる。
【0053】
(実施例3)
混和する対象となるコンクリートを下記のようなスランプフローが65cmの高流動コンクリートとしたこと以外は、実施例1と同様の評価を行った。試験結果を表5、表6に示す。
【0054】
水結合材比=40%、単位セメント量300kg/m、単位フライアッシュ量220kg/m、s/a=50%、スランプフロー65cm、空気量=5%、減水剤添加率:結合材×1.5%の高流動コンクリート。
フライアッシュ:JIS A 6201「コンクリート用フライアッシュ」に規定されるフライアッシュI種。四国電力株式会社製
減水剤:ポリカルボン酸塩系高性能AE減水剤、GCP株式会社製
【0055】
【表5】
【0056】
【表6】
【0057】
表5より、本発明のコンクリート表面仕上げ用硬化促進剤は、5℃環境において、練り上げ直後のコンクリートがスランプフロー65cmとなる高流動コンクリートに対して、コテ仕上げ可能な時間を大幅に短縮し、コンクリートの流動性にも悪影響を与えず、圧縮強度も増進することがわかる。
【0058】
表6より,本発明のコンクリート表面仕上げ用硬化促進剤は、5℃環境において、練り上げ直後のコンクリートがスランプフロー65cmとなる高流動コンクリートに対して、コンクリート表面も良好な状態で仕上げが可能となり、コテ仕上げの作業時間を十分確保できることがわかる。
【0059】
「実施例4」
試験を20℃恒温室内において行ったこと以外は、実施例3と同様の評価を行った。試験結果を表7、表8に示す。
【0060】
【表7】
【0061】
【表8】
【0062】
表7より、本発明のコンクリート表面仕上げ用硬化促進剤は、20℃環境において、練り上げ直後のコンクリートがスランプフロー65cmとなる高流動コンクリートに対して、コテ仕上げ可能な時間を大幅に短縮し、コンクリートの流動性にも悪影響を与えず、圧縮強度も増進することがわかる。
No.7-27(No.8-27)及びNo.7-28(No.8-28)では、コテ仕上げ可能な時間が短縮され、コテ仕上げ性も良好であったが、スランプフローが大きすぎ、また、圧縮強度も低いため実用的でないものであった。
【0063】
表8より、本発明のコンクリート表面仕上げ用硬化促進剤は、20℃環境において、練り上げ直後のコンクリートがスランプフロー65cmとなる高流動コンクリートに対して、コンクリート表面も良好な状態で仕上げが可能となり、コテ仕上げの作業時間を十分確保できることがわかる。
【0064】
「実施例5」
コンクリート表面仕上げ用硬化促進剤を構成する無機化合物と流動調整剤との配合、及びコンクリート表面仕上げ用硬化促進剤の使用量を表9、表10に示すように変化したこと以外は実施例1と同様に行った。結果を表9、表10に併記した。
【0065】
【表9】
【0066】
【表10】
【0067】
表9より、本発明のコンクリート表面仕上げ用硬化促進剤は、5℃環境において、添加量を変えても、練り上げ直後のコンクリートがスランプ12cmのコンクリートに対して、コテ仕上げ可能な時間を大幅に短縮し、コンクリートの流動性にも悪影響を与えず、圧縮強度も増進することがわかる。
【0068】
表10より、本発明のコンクリート表面仕上げ用硬化促進剤は、5℃環境において、添加量を変えても、コンクリート表面も良好な状態で仕上げが可能となり,コテ仕上げの作業時間を十分確保できることがわかる。
【0069】
「実施例6」
試験を20℃恒温室内においてコンクリート表面仕上げ用硬化促進剤の添加量を表11、表12に示すように変化したこと以外は実施例5と同様に行った。結果を表11、表12に併記した。
【0070】
【表11】
【0071】
【表12】
【0072】
表11より、本発明のコンクリート表面仕上げ用硬化促進剤は、20℃環境において、添加量を変えても、練り上げ直後のコンクリートがスランプ12cmのコンクリートに対して、コテ仕上げ可能な時間を大幅に短縮し、コンクリートの流動性にも悪影響を与えず、圧縮強度も増進することがわかる。
【0073】
表12より、コンクリート表面仕上げ用硬化促進剤は、20℃環境において、添加量を変えても、コンクリート表面も良好な状態で仕上げが可能となり,コテ仕上げの作業時間を十分確保できることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明のコンクリート表面仕上げ用硬化促進剤は,低温環境においてコテ仕上げ可能な時間を大幅に短縮し、コンクリート表面も良好な状態で仕上げが可能となり、コンクリートの流動性にも悪影響を与えず、圧縮強度も増進する。特に低温環境でコンクリート打設からコテ仕上げ開始までの待機時間を大きく短縮できるため、土木、建築分野に好適であり、左官職人の業務効率化につながり、建設現場の効率を向上できるといった効果を奏する。