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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-10
(45)【発行日】2022-08-19
(54)【発明の名称】モーター制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 10/08 20060101AFI20220812BHJP
   B60K 6/48 20071001ALI20220812BHJP
   B60W 20/10 20160101ALI20220812BHJP
   B60K 6/547 20071001ALI20220812BHJP
   B60L 50/16 20190101ALI20220812BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20220812BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20220812BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20220812BHJP
【FI】
B60W10/08 900
B60K6/48 ZHV
B60W20/10
B60K6/547
B60L50/16
B60L3/00 S
H01M10/44 P
H01M10/48 301
H01M10/48 P
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018133014
(22)【出願日】2018-07-13
(65)【公開番号】P2020011530
(43)【公開日】2020-01-23
【審査請求日】2021-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】坂下 大樹
【審査官】佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-100473(JP,A)
【文献】特開2009-090735(JP,A)
【文献】特開平09-191582(JP,A)
【文献】国際公開第2017/104033(WO,A1)
【文献】特開2001-069602(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-20/50
B60K 6/20- 6/547
B60L 1/00-58/40
H01M 10/44-10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリーからの電力供給によりエンジンをアシストするモーターを制御するモーター制御装置であって、
前記バッテリーの温度であるバッテリー温度、ドライバーからの要求トルク、および、前記エンジンの回転数であるエンジン回転数を取得する取得部と、
前記モーターの出力するモータートルクが前記要求トルクと前記エンジン回転数とに応じて規定されたマップを用いて前記モータートルクを制御するトルク制御部とを備え、
前記トルク制御部は、
前記モータートルクが制限される制限開始温度よりも低い切替温度未満に前記バッテリー温度がある場合に第1マップを用いて前記モータートルクを制御し、
前記切替温度以上前記制限開始温度未満に前記バッテリー温度がある場合に前記要求トルクと前記エンジン回転数とに基づくアシスト領域が前記第1マップよりも大きく、かつ、前記アシスト領域に規定された最大トルクが前記第1マップのアシスト領域に規定された最大トルクよりも小さい第2マップを用いて前記モータートルクを制御し、
前記第1マップは、モーターパワーの最大値が第1最大パワーであり、かつ、前記バッテリー温度の温度上昇値を制限せずに燃料消費量が最小であるという条件のもとで実行された事前シミュレーションの結果に基づいて生成されたマップであり、
前記第2マップは、前記モーターパワーの最大値が前記第1最大パワーよりも小さい第2最大パワーであり、かつ、前記バッテリー温度の温度上昇値を制限したうえで燃料消費量が最小であるという条件のもとで実行された事前シミュレーションの結果に基づいて生成されたマップである
モーター制御装置。
【請求項2】
前記トルク制御部は、
前記バッテリー温度が前記制限開始温度以上の場合、前記バッテリー温度が高くなるほど前記第2マップのアシスト領域に規定された最大トルクよりも小さくなる制限トルクに前記モータートルクを制御する
請求項1に記載のモーター制御装置。
【請求項3】
前記取得部は、前記バッテリーを流れる充電電流、前記バッテリーの充電率、および、車両の速度である車速をさらに取得し、
前記モーター制御装置は、
設定期間の経過ごとに前記第1マップを生成する第1マップ生成部を有するマップ更新部と、
更新直前の設定期間に取得した前記要求トルク、前記エンジン回転数、前記車速、および、前記充電電流、ならびに、更新時における前記充電率に基づいて、当該設定期間における要求トルク平均値、要求トルク分散値、エンジン回転数平均値、エンジン回転数分散値、および、更新直後の設定期間において前記モーターへ供給可能な電力量を演算するデータ解析部とを備え、
前記第1マップ生成部は、
前記データ解析部の演算結果を入力値とする第1ニューラルネットワーク部と、
前記第1マップについて行った事前シミュレーションにより複数のシミュレーションパターンの各々について得られた第1最適化マップを保持し、前記第1ニューラルネットワーク部の出力値に基づいて前記第1最適化マップを補間することにより新たな第1マップを構築する第1マップ構築部とを有する
請求項1または2に記載のモーター制御装置。
【請求項4】
前記マップ更新部は、
前記設定期間の経過ごとに前記第2マップを生成する第2マップ生成部を有し、
前記第2マップ生成部は、
前記データ解析部の演算結果を入力値とする第2ニューラルネットワーク部と、
前記第2マップについて行った事前シミュレーションにより複数のシミュレーションパターンの各々について得られた第2最適化マップを保持し、前記第2ニューラルネットワーク部の出力値に基づいて前記第2最適化マップを補間することにより新たな第2マップを構築する第2マップ構築部とを有する
請求項3に記載のモーター制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド自動車に搭載されるモーターを制御するモーター制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
動力源としてエンジンとモーターとを有するハイブリッド自動車が知られている。ハイブリッド自動車は、発進時といったエンジンの燃焼効率が低いときにモーターを駆動してエンジンをアシストすることにより燃費向上を図ることができる。こうしたモーターに電力を供給するバッテリーは、その温度であるバッテリー温度が過度に高くなると熱劣化が進行しやすくなる。そのため、例えば特許文献1には、バッテリー温度が所定の制限温度以上にあるときにモーターへの供給電力を制限することにより、すなわちモーターの出力を制限することによりバッテリー温度の過度な上昇を抑える技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-33154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された技術においては、バッテリー温度の過度な上昇を抑えることができるものの、例えば長い上り坂など、バッテリー温度が放電制限温度に到達しやすくなる状況下における燃費の向上を図るうえで改善の余地が残されている。
【0005】
本発明は、バッテリー温度の過度な上昇を抑えつつ燃費の向上を図ることのできるモーター制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するモーター制御装置は、バッテリーからの電力供給によりエンジンをアシストするモーターを制御するモーター制御装置であって、前記バッテリーの温度であるバッテリー温度、ドライバーからの要求トルク、および、前記エンジンの回転数であるエンジン回転数を取得する取得部と、前記モーターの出力するモータートルクが前記要求トルクと前記エンジン回転数とに応じて規定されたマップを用いて前記モータートルクを制御するトルク制御部とを備え、前記トルク制御部は、前記モータートルクが制限される制限開始温度よりも低い切替温度未満に前記バッテリー温度がある場合に第1マップを用いて前記モータートルクを制御し、前記切替温度以上前記制限開始温度未満に前記バッテリー温度がある場合に前記要求トルクと前記エンジン回転数とに基づくアシスト領域が前記第1マップよりも大きく、かつ、前記アシスト領域に規定された最大トルクが前記第1マップのアシスト領域に規定された最大トルクよりも小さい第2マップを用いて前記モータートルクを制御する。
【0007】
上記構成によれば、モータートルクを制御するマップが第1マップから第2マップに切り替えられると、アシスト時にバッテリーを流れる電流が小さくなることでバッテリーの発熱量を抑えることができ、また、アシスト頻度が高くなることでエンジンがモーターでアシストされる期間を長くすることができる。これにより、モーターでエンジンをアシストしつつも、バッテリー温度が制限開始温度未満にある状態、すなわちその時々の走行状態に応じたモータートルクに制御可能な状態に維持されやすくなる。その結果、バッテリー温度の過度な上昇を抑えつつ燃費の向上を図ることができる。
【0008】
上記構成のモーター制御装置において、前記トルク制御部は、前記バッテリー温度が前記制限開始温度以上の場合、前記バッテリー温度が高くなるほど前記第2マップのアシスト領域に規定されたトルクの最大値よりも小さくなる制限トルクに前記モータートルクを制御することが好ましい。
【0009】
上記構成によれば、バッテリー温度が制限開始温度を超えたとしても制限トルクにモータートルクが制御されるため、エンジンをモーターでアシストしつつバッテリー温度の過度な上昇をより確実に抑えることができる。
【0010】
上記構成のモーター制御装置において、前記取得部は、前記バッテリーを流れる充電電流、前記バッテリーの充電率、および、車両の速度である車速をさらに取得し、前記モーター制御装置は、設定期間の経過ごとに前記第1マップを生成する第1マップ生成部を有するマップ更新部と、更新直前の設定期間に取得した前記要求トルク、前記エンジン回転数、前記車速、および、前記充電電流、ならびに、更新時における前記充電率に基づいて、当該設定期間における要求トルク平均値、要求トルク分散値、エンジン回転数平均値、エンジン回転数分散値、および、更新直後の設定期間において前記モーターへ供給可能な電力量を演算するデータ解析部とを備え、前記第1マップ生成部は、前記データ解析部の演算結果を入力値とする第1ニューラルネットワーク部と、前記第1マップについて行った事前シミュレーションにより複数のシミュレーションパターンの各々について得られた第1最適化マップを保持し、前記第1ニューラルネットワーク部の出力値に基づいて前記第1最適化マップを補間することにより新たな第1マップを構築する第1マップ構築部とを有することが好ましい。
【0011】
上記構成によれば、更新直前の設定期間における走行状態に基づいて次の設定期間に用いられる第1マップが生成される。すなわち、直近の設定期間の走行状態に適した第1マップを用いて次の設定期間でモータートルクを制御することができる。これにより、バッテリー温度が切替温度未満である状態での燃費の向上の効果的に図ることができる。
【0012】
上記構成のモーター制御装置において、前記マップ更新部は、前記設定期間の経過ごとに前記第2マップを生成する第2マップ生成部を有し、前記第2マップ生成部は、前記データ解析部の演算結果を入力値とする第2ニューラルネットワーク部と、前記第2マップについて行った事前シミュレーションにより複数のシミュレーションパターンの各々について得られた第2最適化マップを保持し、前記第2ニューラルネットワーク部の出力値に基づいて前記第2最適化マップを補間することにより新たな第2マップを構築する第2マップ構築部とを有するとよい。
【0013】
上記構成によれば、第1マップだけでなく、第2マップについても更新直前の設定期間における走行状態に基づいて次の設定期間に用いられるマップが生成される。すなわち、直近の設定期間の走行状態に適した第2マップを用いて次の設定期間におけるモータートルクを制御することができる。これにより、バッテリー温度が切替温度以上制限開始温度未満にある状態での燃費の向上の効果的に図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】モーター制御装置の一実施形態を搭載したハイブリッド自動車の概略構成を模式的に示す機能ブロック図。
図2】バッテリー温度ごとのモータートルクの最大値の一例を模式的に示す図。
図3】各設定区間で用いられるマップを説明するための図。
図4】ハイブリッドECUにおけるモータートルクの制御に関する構成の一例を示す機能ブロック図。
図5】制御モード選択処理の手順の一例を示すフローチャート。
図6】第1マップの一例を模式的に示す図。
図7】第2マップの一例を模式的に示す図。
図8】(a)第1マップ生成部の一例を示す機能ブロック図、(b)第2マップ生成部の一例を示す機能ブロック図。
図9】(a)事前シミュレーションの概要を模式的に示す図、(b)シミュレーションパターンと最適化マップとの関係の一例を示す図、(c)第1ニューラルネットワーク部による学習態様の一例を模式的に示す図。
図10】第1ニューラルネットワーク部の構成の一例を模式的に示す図。
図11】要求トルクパターンとモーターパワーとの関係の一例を示す図であり、(a)は第1制御モードについて示す図、(b)は第2制御モードについて示す図、(c)は制限モードについて示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1図11を参照して、モーター制御装置の一実施形態について説明する。
図1に示すように、ハイブリッド自動車である車両10は、動力源としてエンジン11とモータージェネレーター(以下、M/Gという)12とを備えている。エンジン11の回転軸13とM/G12の回転軸14とは、クラッチ15で断接可能に接続されている。M/G12の回転軸14は、トランスミッション16および駆動軸17などを介して駆動輪18に接続されている。
【0016】
エンジン11は、例えば複数の気筒を有するディーゼルエンジンであり、各気筒において燃料が燃焼することにより回転軸13を回転させるトルクを発生させる。エンジン11が発生させたトルクは、クラッチ15が接続状態にあるときに、M/G12の回転軸14、トランスミッション16、および、駆動軸17を介して駆動輪18に伝達される。
【0017】
M/G12は、インバーター21を介してバッテリー20に電気的に接続されている。バッテリー20は、充放電可能な二次電池であり、互いに電気的に接続された複数のセルで構成されている。M/G12は、バッテリー20に蓄電された電力がインバーター21を介して供給されることにより、回転軸14を回転させてエンジン11をアシストするモーターとして機能する。M/G12がモーターとして機能する際に発生させるモータートルクTmは、トランスミッション16および駆動軸17を介して駆動輪18に伝達される。また、M/G12は、例えばアクセルオフ時における回転軸14の回転を利用して発電した電力をインバーター21を介してバッテリー20に蓄電するジェネレーターとして機能する。M/G12がジェネレーターとして機能する際に発生させる制動トルクである回生トルクTrは、モーター回転数Nmごとに設定された最大回生トルクTrmax以下の範囲において制御可能である。
【0018】
トランスミッション16は、M/G12の回転軸14が有するトルクを変速し、その変速したトルクを駆動軸17を介して駆動輪18に伝達する。トランスミッション16は、複数の変速比Rtを設定可能に構成されている。
【0019】
インバーター21は、M/G12をモーターとして機能させる場合、バッテリー20からの直流電圧を交流電圧に変換してM/G12に電力を供給する。また、インバーター21は、M/G12をジェネレーターとして機能させる場合、M/G12からの交流電圧を直流電圧に変換してバッテリー20に供給し、バッテリー20を充電する。
【0020】
車両10においては、これらM/G12、インバーター21、および、バッテリー20を高圧系部品として高圧電気回路25が構成されている。以下では、インバーター21からM/G12に電力が供給されているときにバッテリー20に流れる電流を放電電流といい、インバーター21からバッテリー20に電力が供給されているときにバッテリー20に流れる電流を充電電流という。
【0021】
また、図2に示すように、バッテリー20は、その温度であるバッテリー温度TmpBについて、モータートルクTmの最大値が異なる3つの領域に分類される。第1領域A1は、バッテリー温度TmpBが切替温度TmpB1未満の領域であり、モータートルクTmの最大値として第1最大トルクTm1が規定される領域である。第2領域A2は、バッテリー温度TmpBが切替温度TmpB1以上制限開始温度TmpB2未満の領域であり、モータートルクTmの最大値として第1最大トルクTm1よりも小さい第2最大トルクTm2が規定される領域である。制限領域A3は、制限開始温度TmpB2以上の温度である制限温度で構成される領域である。制限領域A3は、制限開始温度TmpB2よりもバッテリー温度TmpBが高くなるほど第2最大トルクTm2よりも小さくなる制限トルクTm3が規定される領域である。制限トルクTm3の最小値は、最低制限トルクTm4である。
【0022】
上述したエンジン11、クラッチ15、インバーター21、および、トランスミッション16などは、車両10を統括制御する制御装置30に制御される。
制御装置30は、ハイブリッドECU31、エンジンECU32、インバーターECU33、バッテリーECU34、トランスミッションECU35、情報ECU37などで構成されており、各ECU31~37は、例えばCAN(Control Area Network)を介して互いに接続されている。
【0023】
各ECU(Electronic Control Unit)31~37は、プロセッサ、メモリ、入力インターフェース、および、出力インターフェース等がバスを介して互いに接続されたマイクロコントローラーを中心に構成されている。各ECU31~37は、車両10の状態に関する情報である状態情報を入力インターフェースを介して取得し、その取得した状態情報、および、メモリに格納された制御プログラムや各種のデータに基づいて各種の処理を実行する。
【0024】
ハイブリッドECU31は、各ECU32~37が出力した各種の状態情報を入力インターフェースを介して取得する。例えば、ハイブリッドECU31は、エンジンECU32からの信号に基づき、要求トルク取得部としてドライバーからの要求トルクTdrvを取得するとともに回転数取得部としてエンジン11の回転軸13の回転数であるエンジン回転数Neを取得する。ハイブリッドECU31は、インバーターECU33からの信号に基づき、M/G12の回転軸14の回転数であるモーター回転数Nmのほか、温度取得部としてM/G12の温度であるモーター温度TmpMおよびインバーター21の温度であるインバーター温度TmpIを取得する。ハイブリッドECU31は、バッテリーECU34からの信号に基づき、バッテリー電圧のほか、充電率取得部としてやバッテリー20の充電率SOCを取得するとともに温度取得部としてバッテリー20の温度であるバッテリー温度TmpBを取得する。ハイブリッドECU31は、トランスミッションECU35からの信号に基づき、クラッチ15の断接状態、トランスミッション16における変速比Rtなどを取得する。ハイブリッドECU31は、情報ECU37からの信号に基づき、車速取得部として車速vを取得する。
【0025】
ハイブリッドECU31は、取得した情報に基づいて各種制御信号を生成し、その生成した制御信号を出力インターフェースを介して各ECU32~37に出力する。ハイブリッドECU31は、エンジン11への指示トルクであるエンジン指示トルクTerefを演算し、その演算したエンジン指示トルクTerefを示す制御信号をエンジンECU32に出力する。ハイブリッドECU31は、M/G12に対する指示トルクであるモーター指示トルクTmrefを演算し、その演算したモーター指示トルクTmrefを示す制御信号をインバーターECU33に出力する。ハイブリッドECU31は、クラッチ15の断接を指示する制御信号、および、トランスミッション16における変速比Rtを指示する制御信号をトランスミッションECU35に出力する。
【0026】
エンジンECU32は、エンジン回転数Neおよびアクセルペダル51のアクセル開度ACCを取得するとともに、ハイブリッドECU31から入力されたエンジン指示トルクTerefの分のトルクが回転軸13に作用するように燃料噴射量や噴射タイミングなどを制御する。エンジンECU32は、アクセル開度ACCおよびエンジン回転数Neなどに基づいてドライバーからの要求トルクTdrvを演算し、その演算した要求トルクTdrvをハイブリッドECU31に出力する。
【0027】
インバーターECU33は、モーター回転数Nm、モーター温度TmpM、および、インバーター温度TmpIを取得するとともに、ハイブリッドECU31から入力されたモーター指示トルクTmrefの分のトルクが回転軸14に作用するようにインバーター21を制御する。インバーターECU33は、M/G12に取り付けられた複数のモーター温度センサーの検出値を取得し、その取得した検出値のうちで最も高い温度をモーター温度TmpMとして取得する。インバーターECU33は、インバーター21に取り付けられた複数のインバーター温度センサーの検出値を取得し、その取得した検出値のうちで最も高い温度をインバーター温度TmpIとしてハイブリッドECU31に出力する。
【0028】
バッテリーECU34は、バッテリー20の充放電電流を監視し、該充放電電流の積算値に基づいてバッテリー20の充電率SOCを演算する。バッテリーECU34は、バッテリー20の充放電電流Iのほか、バッテリー電圧やバッテリー温度TmpBを取得する。バッテリーECU34は、バッテリー20に取り付けられた複数のバッテリー温度センサーの検出値を取得し、その取得した検出値のうちで最も高い温度をバッテリー温度TmpBとしてハイブリッドECU31に出力する。
【0029】
トランスミッションECU35は、ハイブリッドECU31からのクラッチ15の断接要求に応じてクラッチ15の断接を制御する。また、トランスミッションECU35は、ハイブリッドECU31からの変速比Rtを示す制御信号に基づいてトランスミッション16の変速比Rtを制御する。
【0030】
情報ECU37は、情報取得部53の構成要素である各種センサーからの信号に基づいて各種情報を取得し、その取得した情報をハイブリッドECU31に出力する。例えば、情報ECU37は、車速センサーからの信号に基づく車両10の車速vを取得し、その取得した車速vをハイブリッドECU31に出力する。
【0031】
図3図4を参照して、ハイブリッドECU31によるモータートルクTmの制御態様の概要について説明する。まず、図3を参照して、ハイブリッドECU31が実行するモータートルクTmの制御に関する基本的な概念について説明する。
【0032】
図3に示すように、ハイブリッドECU31は、設定期間T1にて取得した状態情報を解析し、その解析結果に基づいて設定期間T2でのモータートルクTmの制御に用いるマップを生成する。また、ハイブリッドECU31は、設定期間T2にて取得した状態情報を解析し、その解析した結果に基づいて設定期間T3でのモータートルクTmの制御に用いるマップを生成する。このようにハイブリッドECU31は、kを1以上の整数とするとき、設定期間Tkにて取得した状態情報の解析結果に基づいてマップを生成し、その生成したマップを用いて設定期間T(k+1)でのモータートルクTmの制御を行う。
【0033】
なお、この設定期間Tkは、車両の使用状況および道路の環境に応じて設定することが好ましい。例えば、長距離輸送に用いられる大型の貨物自動車など、高速道路を主に走行する車両であれば、道路環境のばらつきが小さいため数分程度の時間であってもよい。また例えば、小型の貨物自動車など、市街地を主に走行する車両であれば、道路環境のばらつきが大きいため数十秒程度の時間であってもよい。また、設定期間Tkは、予め定めた時間であってもよいし、実際の走行状態に基づいて変更される時間であってもよい。例えば、設定期間Tkは、道路環境のばらつきが大きくアクセル開度の変化が大きい場合は短く、道路環境のばらつきが小さくアクセル開度の変化が小さい場合は長くなるように変更されてもよい。
【0034】
図4に示すように、モータートルクTmの制御に関し、ハイブリッドECU31は、プログラムの実行により機能する各種機能部として、データ解析部61、マップ更新部62、および、トルク制御部63を有している。
【0035】
データ解析部61は、設定期間Tkの各時刻に取得した解析対象の状態情報に基づいて当該設定期間Tkにおける複数の特徴量を演算し、その演算した複数の特徴量を解析結果情報としてマップ更新部62に出力する。
【0036】
データ解析部61は、要求トルクTdrv、エンジン回転数Ne、充電電流Ic、バッテリー20の充電率SOC、および、車速vを解析対象の状態情報として取得する。データ解析部61は、設定期間Tkの各時刻にて取得した要求トルクTdrv、エンジン回転数Ne、および、車速vに基づいて、要求トルク平均値Tdaveと要求トルク分散値Tdvarとを特徴量として演算する。データ解析部61は、設定期間Tkの各時刻にて取得したエンジン回転数Ne、要求トルクTdrv、および、車速vに基づいて、エンジン回転数平均値Neaveとエンジン回転数分散値Nevarとを特徴量として演算する。データ解析部61は、設定期間Tkの各時刻にて取得した充電電流Icと充電率SOCとに基づいて、設定期間T(k+1)にてバッテリー20に供給可能な電力量である供給可能電力量Pbを特徴量として演算する。データ解析部61は、これら要求トルク平均値Tdave、要求トルク分散値Tdvar、エンジン回転数平均値Neave、エンジン回転数分散値Nevar、および、供給可能電力量Pbを解析結果情報としてマップ更新部62に出力する。
【0037】
マップ更新部62は、データ解析部61の解析結果情報に基づき、要求トルクTdrvとエンジン回転数Neとに応じてモータートルクTmが規定されるマップを生成する。
マップ更新部62は、バッテリー温度TmpBが第1領域A1にあるときに使用されるマップである第1マップM1(図6参照)を生成する第1マップ生成部67を有している。また、マップ更新部62は、バッテリー温度TmpBが第2領域A2にあるときに使用されるマップである第2マップM2(図7参照)を生成する第2マップ生成部69を有している。第1マップ生成部67および第2マップ生成部69についての詳しい説明は後述する。マップ更新部62は、第1マップ生成部67が生成した第1マップM1と第2マップ生成部69が生成した第2マップM2とをトルク制御部63に出力する。マップ更新部62は、こうした第1マップM1および第2マップM2を設定期間Tkごとにトルク制御部63に出力することにより第1マップM1および第2マップM2を更新する。
【0038】
トルク制御部63は、要求トルクTdrv、バッテリー温度TmpB、ならびに、設定期間Tkごとにマップ更新部62が生成した第1および第2マップM1,M2などに基づいてモータートルクTmを制御する。
【0039】
図5図7を参照して、トルク制御部63によるモータートルクTmの制御態様について説明する。トルク制御部63は、モータートルクTmを制御する制御モードを選択するモード選択処理を繰り返し実行する。そしてトルク制御部63は、要求トルクTdrv、エンジン回転数Ne、および、モード選択処理で選択した制御モードに基づいてモータートルクTmを演算する。
【0040】
図5に示すように、制御モード選択処理にてトルク制御部63は、バッテリー温度TmpBを取得し、その取得したバッテリー温度TmpBが制限開始温度TmpB2未満であるか否かを判断する(ステップS101)。バッテリー温度TmpBが制限開始温度TmpB2未満である場合(ステップS101:YES)、トルク制御部63は、バッテリー温度TmpBが切替温度TmpB1未満であるか否かを判断する(ステップS102)。
【0041】
バッテリー温度TmpBが切替温度TmpB1未満である場合(ステップS102:YES)、すなわちバッテリー温度TmpBが第1領域A1(図2参照)に属する場合、トルク制御部63は、第1マップM1を用いてモータートルクTmが制御される第1制御モードを選択して(ステップS103)一連の処理を一旦終了する。第1制御モードは、バッテリー温度TmpBにかかわらず燃費の向上を最優先にしてモータートルクTmが制御される燃費優先モードである。
【0042】
バッテリー温度TmpBが切替温度TmpB1以上である場合(ステップS102:NO)、すなわちバッテリー温度TmpBが第2領域A2(図2参照)に属する場合、トルク制御部63は、第2マップM2を用いてモータートルクTmが制御される第2制御モードを選択して(ステップS104)一連の処理を一旦終了する。第2制御モードは、バッテリー温度TmpBの上昇を抑えつつも燃費の向上が図られるようにモータートルクTmが制御されるバランスモードである。このようにトルク制御部63は、バッテリー温度TmpBが制限開始温度TmpB2未満である場合(ステップS101:YES)、切替温度TmpB1を基準としてモータートルクTmの制御に用いるマップを第1マップM1と第2マップM2とに切り替えるように構成されている。
【0043】
バッテリー温度TmpBが制限開始温度TmpB2以上である場合(ステップS101:NO)、すなわちバッテリー温度TmpBが制限領域A3(図2参照)に属する場合、ハイブリッドECU31は、制限モードを選択して(ステップS105)一連の処理を一旦終了する。制限モードは、バッテリー温度TmpBの上昇を抑えることを最優先としてモータートルクTmが制御される温度優先モードである。
【0044】
図6に示すように、第1制御モードに対応する第1マップM1は、最大要求トルクTdrvX以下の要求トルクTdrvと最大エンジン回転数NeX以下のエンジン回転数Neとに応じた各位置に対して第1最大トルクTm1以下のモータートルクTmが規定されるマップである。第1マップM1において、0よりも大きいモータートルクTmが規定された領域がアシスト領域である。第1マップM1は、アシスト領域以外の領域(エンジン回転数Neが低い領域および高い領域、ならびに、要求トルクTdrvが低い領域および高い領域)にモータートルクTmとして0が規定される。また、エンジン11をM/G12でアシストして燃費を向上させるうえでは、エンジン11が燃焼効率の低い状態、とくに加速状態にあるときに高いモータートルクTmでエンジン11がアシストされることが好ましい。そのため、第1マップM1のアシスト領域のうちでエンジン11が加速状態にある加速領域には、比較的高いモータートルクTm、例えばアシスト領域におけるモータートルクTm(0は除く)の平均値よりも大きいモータートルクTmが規定される。すなわち第1マップM1は、アシスト領域が小さくM/G12によるアシスト頻度の低いマップである。トルク制御部63は、要求トルクTdrvとエンジン回転数Neとに応じて第1マップM1から選択したトルクにモータートルクTmを制御する。
【0045】
図7に示すように、第2制御モードに対応する第2マップM2は、最大要求トルクTdrvX以下の要求トルクTdrvと最大エンジン回転数NeX以下のエンジン回転数Neとに応じた各位置に対して第1最大トルクTm1よりも小さい第2最大トルクTm2以下のモータートルクTmが規定されるマップである。第2マップM2は、第1マップM1よりもアシスト領域が大きくM/G12によるアシスト頻度の高いマップである。また、第2マップM2は、加速領域に規定されたモータートルクTmの平均値および分散値が第1マップM1のそれよりも小さいマップである。このように第2マップM2は、第1マップM1よりもモータートルクTmの最大値が小さくアシスト頻度が高いマップである。トルク制御部63は、要求トルクTdrvとエンジン回転数Neとに応じて第2マップM2から選択したトルクにモータートルクTmを制御する。
【0046】
制限モードにおいて、トルク制御部63は、バッテリー温度TmpBに応じた制限トルクTm3を最大値としてモータートルクTmを制御する。バッテリー温度TmpBが制限開始温度TmpB2よりも高い場合、バッテリー温度TmpBが高くなるほど最低制限トルクTm4に向けて第2最大トルクTm2よりも小さくなるトルクである。トルク制御部63は、要求トルクTdrvが制限トルクTm3よりも大きい場合にはモータートルクTmを制限トルクTm3に制御し、要求トルクTdrvが制限トルクTm3以下である場合には要求トルクTdrvそのものにモータートルクTmを制御する。
【0047】
各制御モードにおいて、トルク制御部63は、バッテリー温度TmpBに基づくモータートルクTmをモーター指示トルクTmrefとしてインバーターECU33に出力し、要求トルクTdrvからモータートルクTmを差し引いた分のトルクをエンジン指示トルクTerefとしてエンジンECU32に出力する。
【0048】
次に、図8図10を参照して、第1マップ生成部67および第2マップ生成部69について説明する。
図8(a)に示すように、第1マップ生成部67は、プログラムの実行により機能する各種機能部として、第1ANN部71と第1マップ構築部72とを有している。また図8(b)に示すように、第2マップ生成部69は、プログラムの実行により機能する各種機能部として、第2ANN部73と第2マップ構築部74とを有している。なお、第1マップ生成部67および第2マップ生成部69は、ANN(Artificial Neural Network:人工ニューラルネットワーク)を構築する際の条件が異なるだけで基本的な構造は同じである。そのため、第1マップ生成部67について詳しく説明し、第2マップ生成部69についての詳しい説明は省略する。
【0049】
図9(a)に示すように、第1ANN部71および第2ANN部73は、ハイブリッドECU31に実装されるまえの事前シミュレーションの結果に基づき構築される。事前シミュレーションは、各種制約条件のほか、各種条件が設定された数百程度のシミュレーションパターン#111~#1ij(i,jは、1以上の整数)をシミュレーション装置75に入力することにより実施される。制約条件は、エンジン11の最小エンジントルクやM/G12の最大モータートルクなどに関する条件である。シミュレーションパターン#111~#1ijは、設定期間Tkにおける要求トルクTdrvのトルクパターンTdrv#1~Tdrv#i、設定期間Tkにおける供給可能電力量Pb#1~Pb#j、および、モーターパワーPmの最大値で構成されている。シミュレーション装置75は、ハイブリッドECU31が搭載される車種に対するダイナミックプログラミング手法により各シミュレーションパターン#111~#1ijについてシミュレーションを実施する。そしてシミュレーション装置75は、燃料消費量が最小となる最適化マップを各シミュレーションパターン#111~#1ijごとに得る。最適化マップは、要求トルクTdrvとエンジン回転数Neとに応じた各位置に対してモータートルクTmが規定されたマップである。
【0050】
図9(b)に示すように、シミュレーション装置75は、第1ニューラルネットワーク部である第1ANN部71に関連して、モーターパワーPmの最大値が第1最大パワーPm1、および、燃料消費量が最小という条件のもとバッテリー温度TmpBを考慮することなくシミュレーションを行う。シミュレーション装置75は、こうしたシミュレーションを通じて第1最適化マップM#111~M#1ijをシミュレーションパターン#111~#1ijごとに生成する。第1最適化マップM#111~M#1ijに規定されるモータートルクTmは第1最大トルクTm1以下である。
【0051】
図9(c)に示すように、第1最適化マップM#111~M#1ijが得られると、各シミュレーションパターン#111~#1ijの特徴量(要求トルク平均値Tdave、要求トルク分散値Tdvar、エンジン回転数平均値Neave、エンジン回転数分散値Nevar、および、供給可能電力量)を入力、第1最適化マップM#111~M#1ijを出力として第1ANN部71に学習させる。
【0052】
図10に示すように、学習後の第1ANN部71において、入力層を構成する各ノードは、設定期間Tkの特徴量を変数とする活性化関数を有している。中間層および出力層を構成する各ノードは、1つまえの層の各ノードにおける演算値と各接続エッジに設定された重みの値とを変数とする活性化関数を有している。出力層を構成する各ノードは、それぞれ第1最適化マップM#111~M#1ijに対応している。第1ANN部71は、上記学習を通じて、各シミュレーションパターン#111~#1ijにおける特徴量と同じ値の特徴量が入力されたときに各シミュレーションパターン#111~#1ijに対応する第1最適化マップM#111~M#1ijが出力されるように各ノードの活性化関数および各接続エッジの重みが設定される。
【0053】
図8(a)に示すように、第1マップ構築部72は、シミュレーション装置75に生成された第1最適化マップM#111~M#1ijを保持している。そして、第1マップ構築部72は、第1ANN部71の出力値に基づいて、モーターパワーPmが第1最大パワーPm1まで許容された第1最適化マップM#111~M#1ijを内挿補間あるいは外挿補間したマップを第1マップM1として構築する。第1マップM1は第1最大パワーPm1以下のモーターパワーPm、すなわち第1最大トルクTm1以下のモータートルクTmでM/G12を駆動させるマップである。
【0054】
図8(b)に示すように、第2マップ生成部69の有する第2ニューラルネットワーク部である第2ANN部73について、シミュレーション装置75は、燃費に関する条件に加えて、モーターパワーPmの最大値が第1最大パワーPm1よりも小さい第2最大パワーPm2という条件のもとで各シミュレーションパターン#111~#1ijのシミュレーションを実施する。そしてシミュレーション装置75は、その最適化マップである第2最適化マップM#211~M#2ijをシミュレーションパターン#111~#1ijごとに得る。このシミュレーションにおいては、例えば、バッテリー温度TmpBの温度上昇値についての条件が設けられてもよい。こうした条件としては、例えば、温度上昇値が切替温度TmpB1と制限開始温度TmpB2との差以下であるという条件や温度上昇値が30℃以下であるという条件などが挙げられる。こうした条件が設けられることにより、バッテリー温度TmpBの過度な上昇をより確実に抑えることができる。
【0055】
第2ANN部73においては、シミュレーションパターン#111~#1ijの特徴量と同じ値の特徴量が入力されたときに第2最適化マップM#211~M#2ijが出力されるように各ノードの活性化関数および各接続エッジの重みが設定される。また、シミュレーション装置75は、トルクパターンおよび供給可能電力量が同じであるシミュレーションパターンについては、M/G12によるアシスト量(仕事量)が同じとなるように第1最適化マップと第2最適化マップとを構成することが好ましい。第2最大パワーPm2(<Pm1)のもとで得られた第2最適化マップM#211~M#2ijは、第1最大トルクTm1よりも小さい第2最大トルクTm2以下のモータートルクTmによって構成される。また、第2最適化マップM#211~M#2ijは、第1最適化マップM#111~M#1ijよりもモーターパワーPmの最大値が小さいという条件のもとで燃料消費量が最小となるマップである。そのため、第2最適化マップM#211~M#2ijは、第1最適化マップM#111~M#1ijよりもM/G12の出力に自由度が少ないため、第1最適化マップM#111~M#1ijよりもアシスト頻度が多くなるマップである。
【0056】
第2マップ構築部74は、シミュレーション装置75に生成された第2最適化マップM#211~M#2ijを保持している。そして、第2マップ構築部74は、第2ANN部73の出力値に基づいて、モーターパワーPmが第2最大パワーPm2に制限されたシミュレーションから得られた第2最適化マップM#211~M#2ijを内挿補間あるいは外挿補間したマップを第2マップM2として構築する。第2マップM2は、第1最大パワーPm1よりも小さい第2最大パワーPm2以下のモーターパワーPm、すなわち第1最大トルクTm1よりも小さい第2最大トルクTm2以下のモータートルクTmでM/G12を駆動させるマップである。また第2マップM2は、第1マップM1よりもM/G12を駆動する頻度の高いマップである。
【0057】
図11を参照して、上述した構成のハイブリッドECU31の作用について、ある設定期間Tkにおけるトルクパターンを第1制御モード、第2制御モード、および、制限モードで車両10を走行させた場合を例にとって説明する。
【0058】
なお、単位時間におけるM/G12によるアシスト量は、その単位時間にバッテリー20がM/G12に供給した電力量、すなわちバッテリー20を流れる電流値に比例する。また、バッテリー20の発熱量は、バッテリー20を流れる電流値の自乗に比例する。そのため、例えば、設定期間Tkにおいてバッテリー20からM/G12に対して同じ電力量が供給されたとしても、その設定期間Tkのうちで電力供給期間が占める割合が小さいほど、すなわち設定期間TkにおけるモーターパワーPmの分散値が大きいほど当該設定期間TkにおけるM/G12の発熱量は大きくなる。
【0059】
図11(a)に示すように、第1制御モードは、燃費の向上を最優先とする制御モードであり、低温領域である第1領域A1にバッテリー温度TmpBが属する場合(TmpB<TmpB1)に選択される。第1制御モードにおいて、ハイブリッドECU31は、モーターパワーPmが第1最大パワーPm1まで許容されたアシスト頻度の低い第1マップM1を用いてモータートルクTmを制御する。そのため、エンジン11の燃焼効率が低い条件が満たされる期間においてモーターパワーPmが集中的に高くなる。すなわち、第1制御モードは、アシスト時にバッテリー20を流れる電流が大きいためにバッテリー20の発熱量が大きい一方で、M/G12によるエンジン11のアシストを最も効率よく実行することができる制御モードである。
【0060】
図11(b)に示すように、第2制御モードは、バッテリー温度TmpBの上昇を抑えつつも燃費の向上が図られる制御モードであり、中温領域である第2領域A2にバッテリー温度TmpBが属する場合(TmpB1≦TmpB<TmpB2)に選択される。第2制御モードにおいて、ハイブリッドECU31は、モーターパワーPmが第2最大パワーPm2(<Pm1)に制限されたアシスト頻度の高い第2マップM2を用いてモータートルクTmを制御する。そのため、第2制御モードは、第2最大パワーPm2以下のモーターパワーPmでエンジン11を第1制御モードよりも長期間を連続的にアシストするとともに、図11(a)に示した第1制御モードと略等しい仕事量の分だけエンジン11をアシストする。このように第2制御モードは、アシスト時にバッテリー20を流れる電流が第1制御モードよりも小さいことでバッテリー温度TmpBの上昇を抑えつつ、連続的なエンジン11のアシストによりM/G12の仕事量が第1制御モードと同程度となる制御モードである。
【0061】
図11(c)に示すように、制限モードは、バッテリー温度TmpBの上昇を抑えることを最優先にエンジン11をアシストする制御モードであり、高温領域である制限領域A3にバッテリー温度TmpBが属する場合(TmpB2<TmpB)に選択される。制限モードにおいて、要求トルクTdrvがバッテリー温度TmpBに応じた制限トルクTm3以下の場合にはM/G12のモータートルクTmが要求トルクTdrvとなるモーターパワーPmに設定される。一方、要求トルクTdrvがバッテリー温度TmpBに応じた制限トルクTm3を上回る場合にはM/G12のモータートルクTmが制限トルクTm3となるモーターパワーPm3に設定される。制限モードは、モータートルクTmを制限トルクTm3に制限することでエンジン11を連続的にアシストしつつ、バッテリー温度TmpBの上昇を第2制御モードよりも効果的に抑えることができる制御モードである。
【0062】
本実施形態の作用及び効果について説明する。
(1)ハイブリッドECU31は、バッテリー温度TmpBが切替温度TmpB1以上制限開始温度TmpB2未満にあるとき、第1制御モードよりもモータートルクTmの最大値が小さくアシスト頻度の高い第2制御モードでモータートルクTmを制御する。第1制御モードにおいては、モーターパワーPmが第1最大パワーPm1まで許容されたシミュレーションの結果に基づく第1マップM1でM/G12が駆動される。第2制御モードにおいては、モーターパワーPmが第2最大パワーPm2(<Pm1)以下に制限されたシミュレーションの結果に基づく第2マップM2でM/G12が駆動される。こうしたシミュレーションの結果に基づくマップでモータートルクTmが制御されることにより、第2制御モードにおいては、第1制御モードよりもバッテリー20での発熱量が小さくなりM/G12によってエンジン11がアシストされる時間が増えることとなる。すなわち、ハイブリッドECU31は、バッテリー温度TmpBが第1領域A1にあるときは燃費を優先する第1制御モードでモータートルクTmを制御し、バッテリー温度TmpBが第2領域A2にあるときはバッテリー温度TmpBの上昇抑制および燃費についてのバランスがとれた第2制御モードでモータートルクTmを制御する。その結果、バッテリー温度TmpBの過度な上昇を抑えつつ燃費の向上を図ることができる。
【0063】
(2)バッテリー温度TmpBの過度な上昇が抑えられることでバッテリー20の長寿命化を図ることもできる。
(3)バッテリー温度TmpBが制限開始温度TmpB2未満である時間が多くなることでバッテリー温度TmpBに起因してバッテリー20の充電電流が制限される頻度も少なくすることができる。その結果、回生による充電効率を高めることができ、結果として燃費の向上につなげることができる。
【0064】
(4)トルク制御部63は、バッテリー温度TmpBが制限開始温度TmpB2以上である場合には、モータートルクTmを制限トルクTm3に制御する。こうした構成によれば、バッテリー温度TmpBが制限開始温度TmpB2を超えた場合にバッテリー温度TmpBの低下を優先させつつエンジン11をアシストするようにモータートルクTmを制御することができる。その結果、バッテリー温度TmpBの過度な上昇をより確実に抑えつつ、燃費の向上を図ることができる。
【0065】
(5)第1マップ生成部67は、第1ANN部71の出力値に基づいて第1マップ構築部72が第1最適化マップM#111~M#1ijを内挿補間あるいは外挿補間することにより、更新直前の設定期間Tkでの特徴量に基づく最適化マップである第1マップM1を構築する。これにより、第1マップ生成部67は、更新直前の設定期間Tkにおける特徴量に応じた最適なマップを第1マップM1として生成することができる。また、第1マップ生成部67は、事前シミュレーションの結果に基づいて得られた数百程度の第1最適化マップM#111~M#1ijから膨大な特徴量パターンの各々に応じた最適化マップを生成することができる。そのため、第1マップ生成部67は、これら数百程度の第1最適化マップM#111~M#1ijを保持するだけでよく、膨大な特徴量パターンの各々に応じた最適化マップを保持する必要がない。そのため、様々なパターンについての最適化マップの生成を可能にしつつ、第1マップ生成部67に必要となる容量を抑えることができる。なお、こうした作用効果は第2マップ生成部69についても同様である。
【0066】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・ハイブリッドECU31は、バッテリー温度TmpBに加えて、モーター温度TmpMおよびインバーター温度TmpIを取得可能に構成されている。こうした構成においてハイブリッドECU31は、モーター温度TmpMがモーター適正温度を超えている場合、または、インバーター温度TmpIがインバーター適正温度を超えている場合にも第2マップM2に基づいてモータートルクTmを制御してもよい。この場合、図5に示したフローチャートのステップS101の処理においては、バッテリー温度TmpBに加えてモーター温度TmpMやインバーター温度TmpIについても判断がなされる。これにより、バッテリー温度TmpBの過度な上昇に加えて、M/G12やインバーター21の過度な温度上昇を抑えつつ燃費の向上を図ることができる。
【0067】
・マップ更新部62は、例えば、データ解析部61の解析結果に基づいて第1最適化マップM#111~M#1ijのなかから適切なマップを選択することにより第1マップM1を更新する構成であってもよい。また、マップ更新部62は、第1マップM1のみを更新する構成であってもよい。
【0068】
・マップ更新部62は、例えば、データ解析部61の解析結果に基づいて第2最適化マップM#211~M#2ijのなかから適切なマップを選択することにより第2マップM2を更新する構成であってもよい。また、マップ更新部62は、第2マップM2のみを更新する構成であってもよい。
【0069】
・ハイブリッドECU31は、バッテリー温度TmpBが制限開始温度TmpB2以上であるときにM/G12によるエンジン11のアシストが停止する構成であってもよい。
・ハイブリッドECU31は、切替温度TmpB1を基準に第1マップM1と第2マップM2とが切り替えられる構成であればよい。そのため、ハイブリッドECU31は、第1マップM1および第2マップM2の各々を1以上保持している構成であってもよい。
【符号の説明】
【0070】
M1…第1マップ、M2…第2マップ、10…車両、11…エンジン、12…モータージェネレーター、13,14…回転軸、15…クラッチ、16…トランスミッション、17…駆動軸、18…駆動輪、20…バッテリー、21…インバーター、25…高圧電気回路、30…制御装置、31…ハイブリッドECU、32…エンジンECU、33…インバーターECU、34…バッテリーECU、35…トランスミッションECU、37…情報ECU、51…アクセルペダル、53…情報取得部、61…データ解析部、62…マップ更新部、63…トルク制御部、67…第1マップ生成部、69…第2マップ生成部、71…第1ANN部、72…第1マップ構築部、73…第2ANN部、74…第2マップ構築部、75…シミュレーション装置。
図1
図2
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図5
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図11