IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社パイロットコーポレーションの特許一覧

<>
  • 特許-棒状芯繰出具 図1
  • 特許-棒状芯繰出具 図2
  • 特許-棒状芯繰出具 図3
  • 特許-棒状芯繰出具 図4
  • 特許-棒状芯繰出具 図5
  • 特許-棒状芯繰出具 図6
  • 特許-棒状芯繰出具 図7
  • 特許-棒状芯繰出具 図8
  • 特許-棒状芯繰出具 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-10
(45)【発行日】2022-08-19
(54)【発明の名称】棒状芯繰出具
(51)【国際特許分類】
   B43K 21/16 20060101AFI20220812BHJP
   B43K 21/22 20060101ALI20220812BHJP
   A45D 40/20 20060101ALI20220812BHJP
   B43K 21/027 20060101ALN20220812BHJP
【FI】
B43K21/16 L
B43K21/22 A
A45D40/20 D
B43K21/027 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018162108
(22)【出願日】2018-08-30
(65)【公開番号】P2020032644
(43)【公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】梶原 巧
【審査官】金田 理香
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-001154(JP,A)
【文献】特開2010-105170(JP,A)
【文献】特開2013-237162(JP,A)
【文献】特開2010-036391(JP,A)
【文献】実開平03-062887(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 21/00-21/26
24/00-24/18
27/00-27/12
A45D 40/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に沿って前後に延びる内孔を有する軸体と、棒状の芯を収容する芯タンクと当該芯を挟持するチャックと当該チャックに外設された締具と当該締具を後方で支持する筒状体とを有する芯繰出機構と、前記軸体の外側部に前後動自在に配設された操作体と、を備え、前記操作体の前後への摺動により前記芯が前方へ繰り出される棒状芯繰出具であって、
前記軸体内に、当該軸体に対する前記操作体の後方への相対移動を回転運動に変換する回転子を備え、
前記回転子の内方に、当該回転子に対して回動不能且つ摺動自在に係止した前記筒状体が配設され、前記筒状体は前記操作体と連動して前後に摺動するよう構成され、
前記筒状体の後方に、筆記時の筆圧が前記芯に掛かった際に前記筒状体の後退を制限するストッパーを配設すると共に、当該ストッパーは前記操作体の後方への移動に伴い前記筒状体の後退可否を切り替え可能に形成され、
前記チャックは前記軸体に対して回転自在に配設され、
前記操作体を前記軸体に対して後方へ相対移動した際に前記回転子が回転するよう構成すると共に、当該回転子の回転に連動して前記チャックが回転するよう構成したことを特徴とする棒状芯繰出具。
【請求項2】
前記操作体を後方へ相対移動する際、当該操作体の1段階目の後退で前記芯を回転させると共に前記筒状体の後退を制限している前記ストッパーが解除され、当該操作体の2段階目の後退で前記回転子と前記筒状体とが前記チャックに対して後退することで前記芯繰出機構が作動し、前記芯を前方へ繰出すよう構成したことを特徴とする請求項1に記載の棒状芯繰出具。
【請求項3】
前記軸体と前記筒状体との間に内孔を有する内部部材が配設され、前記内部部材に、当該内部部材と前記筒状体とが当接することで当該筒状体の後退を制限する前記ストッパーが形成され、
前記操作体の後退により前記回転子および前記筒状体が回転することで、当該筒状体と前記ストッパーとの当接状態が解除され、前記筒状体が前記内部部材に対して後退可能になるよう構成したことを特徴とする請求項1または2に記載の棒状芯繰出具。
【請求項4】
前記回転子の後方に、当該回転子を前記軸体に対して前方へ弾発する弾発部材を備え、前記回転子と前記弾発部材との間にリング状のワッシャーを配設したことを特徴とする請求項1ないし3の何れか1項に記載の棒状芯繰出具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作体を操作することにより棒状の芯を前方へ繰出すと共に芯を回転可能な棒状芯繰出具に関する。
【背景技術】
【0002】
軸筒の内部に、シャープペンシル用の芯、色鉛筆、クレヨン、あるいは固形糊、口紅、アイライナー、アイシャドウまたはリップクリームなど棒状の芯を収容し、該芯の先端部を軸筒より繰り出して先端開口部から当該芯を突出させた状態で紙面などへの筆記や塗布を行なう棒状芯繰出具はよく知られている。
【0003】
前述した棒状芯繰出具は、芯の繰り出し動作を行い、軸筒内に配設した芯繰出ユニットを作動させて該軸筒の先端開口部から該芯を突出させて使用するものである。
また、棒状芯繰出具は軸筒の先端から突出した芯で筆記や塗布するものであるため、筆記や塗布を続けると、芯が片減りして筆跡や塗布した際の描線が芯径より幅広になってしまう問題がある。この問題を解決する手段として、例えば、シャープペンシルでは、特許文献1に開示のように、軸筒内に芯の狭持・解放を行うチャックが配置され、軸筒の後部ないし側部に配置されたノック体を操作することにより、芯の繰り出しと芯を回転させることができ、これにより筆記時の芯の片減りと折損を防止することができる構造が知られている。
【0004】
この特許文献1のシャープペンシルは、ノック部材の押圧操作により芯タンク及び摺動子を移動させ、その摺動子の移動により回転子を回転させ、更に、回転子の回転により芯タンク及び当該芯タンクに固定されたチャックを回転させるよう構成することで、芯の回転と前方へ繰出しとが可能な構造となっている。
【0005】
しかしながら、特許文献1の構造では、使用者の任意のタイミングでノック部材を押圧操作することで芯の繰り出しと芯の回転動作を行うことができるが、操作部となるノック部材が軸筒の後端または側部にあるため、後端にある場合は筆記時に芯を回転させたい場合、シャープペンシルを持ち替えてからノック体を操作する必要があり手間が掛かるという問題があり、ノック部材が軸筒の側部にある場合は、筆記時の体勢のままでもノック体の操作は可能になるものの、筆記時にノック部材に指が触れてしまうと使用者の意図に反して芯が回転したり繰り出し操作がされてしまい。使用者の意に反して筆跡に変化が出たり芯の折損が発生する虞があった。また、ノック部材に触れながら筆記すると、チャックが開いた状態で筆記することとなり、筆圧に耐えられずに芯もぐりが発生する虞があった。
【0006】
一方、特許文献2には筆記時の筆圧により軸筒に対して芯が後退することで、芯を回転させつつ芯を繰出すことが可能なメカニカルペンシルが開示されている。
この特許文献2のメカニカルペンシルは、軸筒又は先部材内に、芯の後退を阻止するチャックユニットと、芯を保持する機能を有する摺動ユニットが配置され、摺動ユニットの外周に鋸歯状の連なる溝が形成され、その鋸歯状の連なる溝と係合する突起を有する回転子の回転により、前記摺動ユニットが前後動し、且つ、その摺動ユニットの前後動の距離が間欠的に異なり、複数回の筆記圧の付加と解除によって、芯を繰り出すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平11-048680号公報
【文献】国際公開第2012/014832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2の構造では、軸筒を保持して筆記することにより芯が後退することで芯の回転と芯の繰り出しを自動的に行ってくれるが、芯の繰り出しは芯の後退動作が複数回行われるたびに1回勝手に行われるため、必要なときに芯を繰出してくれない場合や必要の無いときに勝手に芯を繰出してしまう虞があった。また、芯の回転や繰り出し動作は筆記時の筆圧により芯が後退することで行われる。このため、筆記時に必ず芯が沈む動作を伴うことで、使用者によってはその筆記感に違和感や不快さを感じる場合があった。
【0009】
本発明は、前記問題を鑑みてなされたものであって、筆記時に芯が沈むことがなく、筆記時の体勢のまま使用者の任意のタイミングで芯の回転動作を誤動作することなく実施できる棒状芯繰出具を提供することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、
「1.長手方向に沿って前後に延びる内孔を有する軸体と、棒状の芯を収容する芯タンクと当該芯を挟持するチャックと当該チャックに外設された締具と当該締具を後方で支持する筒状体とを有する芯繰出機構と、前記軸体の外側部に前後動自在に配設された操作体と、を備え、前記操作体の前後への摺動により前記芯が前方へ繰り出される棒状芯繰出具であって、
前記軸体内に、当該軸体に対する前記操作体の後方への相対移動を回転運動に変換する回転子を備え、
前記回転子の内方に、当該回転子に対して回動不能且つ摺動自在に係止した前記筒状体が配設され、前記筒状体は前記操作体と連動して前後に摺動するよう構成され、
前記筒状体の後方に、筆記時の筆圧が前記芯に掛かった際に前記筒状体の後退を制限するストッパーを配設すると共に、当該ストッパーは前記操作体の後方への移動に伴い前記筒状体の後退可否を切り替え可能に形成され、
前記チャックは前記軸体に対して回転自在に配設され、
前記操作体を前記軸体に対して後方へ相対移動した際に前記回転子が回転するよう構成すると共に、当該回転子の回転に連動して前記チャックが回転するよう構成したことを特徴とする棒状芯繰出具。
2.前記操作体を後方へ相対移動する際、当該操作体の1段階目の後退で前記芯を回転させると共に前記筒状体の後退を制限している前記ストッパーが解除され、当該操作体の2段階目の後退で前記回転子と前記筒状体とが前記チャックに対して後退することで前記芯繰出機構が作動し、前記芯を前方へ繰出すよう構成したことを特徴とする前記1項に記載の棒状芯繰出具。
3.前記軸体と前記筒状体との間に内孔を有する内部部材が配設され、前記内部部材に、当該内部部材と前記筒状体とが当接することで当該筒状体の後退を制限する前記ストッパーが形成され、
前記操作体の後退により前記回転子および前記筒状体が回転することで、当該筒状体と前記ストッパーとの当接状態が解除され、前記筒状体が前記内部部材に対して後退可能になるよう構成したことを特徴とする前記1項または2項に記載の棒状芯繰出具。
4.前記回転子の後方に、当該回転子を前記軸体に対して前方へ弾発する弾発部材を備え、前記回転子と前記弾発部材との間にリング状のワッシャーを配設したことを特徴とする前記1項ないし3項の何れか1項に記載の棒状芯繰出具。」である。

【0011】
本発明の棒状芯繰出具によれば、操作体が軸体の外側部に配置してあるため、筆記時の状態のまま持ち替えることなく、任意のタイミングで操作体を移動させることでチャックとチャックに狭持されている芯を回転させることができる。また、その動作は軸体に対して操作体を後方へ移動することにより行っており、一方で、筆記時に軸体を把持している手には筆圧を筆記先端側にかけるために前方側に力が掛かっている。このため、筆記時に指が操作体に接触しても操作体には後方への力が殆ど掛かることがなく、操作体が後方へ移動することはないことから、誤動作により使用者の意に反して芯が回転されることを防止することができる。更に、操作体を筆記時には前進しないよう構成した場合、操作体が筆記時の指の支えになることから筆記し易くなる効果を奏する。
また、筒状体の後方に配置したストッパーにより筒状体の後退を制限することで、筆記記時の筆圧により、芯を介してチャックに後方への負荷が掛かった際、筒状体によりチャックの後退が支持されるため、チャックによる芯の狭持力を超えない範囲で芯の後退を防止することができる。更に、操作体の後方への移動に連動して、ストッパーによる筒状体の後退可否を切り替えることができるため、チャックに外設した締具を支持する筒状体を後退させることでチャックから締具が外れて芯を一時的に解放状態にすることができる。
【0012】
また、本発明において、回転子を回転する手段は、操作体の後退に合わせて回転子が回転すればその手段は特に限定されることはないが、例えば、軸体の内部に、操作体と連動して前後に摺動すると共に後カムを後部に備えた摺動カムを形成し、回転子を摺動カムの後方且つチャックの外方に設け、軸体の内面に、回転子の前カムと係止し回転子の回転を制限する内カムを形成し、操作体の後方への移動により、摺動カムが後退して回転子の前カムと軸体内面の内カムとの係止状態を解除すると共に、摺動カムの後カムと回転子の前カムとがカム嵌合することにより、回転子が軸体に対して一方向に回転するよう構成してもよい。この構成の場合、回転子の前カムが軸体の内カムとが離間した後は、回転カムの回転を一時的に止めることができるため、回転カムが回転しない状態で操作体の後方への移動ができ、芯の回転動作を途中で止めることができる。
【0013】
また、操作体を後方へ移動する際、操作体の1段階目の後退で芯が回転すると共に筒状体の後退を制限しているストッパーを解除し、操作体の2段階目の後退で筒状体を後退させることで芯が前方へ繰り出されるよう構成することが好ましく、この場合、芯の回転動作と繰出動作とが分けられ、操作体の後退動作を1段階でとめることで芯の回転のみを行うことができる。このため、芯を回転させる際に不用意に芯が繰り出されることがなく、筆記時の芯折れを防止することができる。
尚、本発明における操作体は、軸体の外側部に配設され、且つ、操作可能な大きさであれば特に限定されることはなく、外側部の1部に突出するよう形成してもよく、外側部に沿って覆設するように形成してもよい。
【0014】
また、内部部材に設けるストッパーは、操作体の後退動作に連動して回転子と筒状体とが回転することで筒状体とストッパーとの当接状態が解除されるよう構成してもよく、この場合、ストッパー構造により筒状体の回転動作と後退動作とを切り分けることができることから、芯の回転と芯の繰り出し動作とを別々に行うことができる。
【0015】
更に、弾発部材と回転子との間にワッシャーを配設してもよく、この場合、操作体の後退動作により回転子が回転する際、ワッシャーにより回転子の回転が弾発部材に伝わる捻転力を防ぐことで、弾発部材に負荷が掛からず、弾発部材の破損や弾発力が変化することが防止できるため好ましい。
また、回転子が回転した際にワッシャーが同時に回転しないようワッシャーと回転子との間で発生する接触抵抗が小さくなるよう構成することがより好ましい。尚、接触抵抗を小さくする手段としては、ワッシャーに複数の突起部を設けて回転子との接触面積を減らしてもよく、接触部の表面粗さが小さくなるよう磨き加工を施して滑りやすくしてもよく、更に、ワッシャーと回転子との間にシリコンオイルやグリースなどの潤滑油、またはモリブデンなどの固形潤滑剤を塗布して接触抵抗が小さくなるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、筆記時に芯が沈むことがなく、筆記時の体勢のまま使用者の任意のタイミングで芯の回転動作を誤動作させることなく実施できる棒状芯繰出具を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施例1の加圧式筆記具の縦断面図である。
図2図1の加圧式筆記具の要部を拡大した拡大縦断面図である。
図3図2におけるX-X線の拡大断面図である。
図4】軸体内の主な部品を分解した分解図である。(一部分解せずに表示)
図5図2の状態から操作体を後退(1段階目の後退動作)した状態の要部を拡大した拡大縦断面図である。
図6図5におけるY-Y線の拡大断面図である。
図7図5の状態から更に操作体を後退(2段階目の後退動作)した状態の要部を拡大した拡大縦断面図である。
図8図7におけるZ-Z線の拡大断面図である。
図9】操作体を後方へ移動させる際の軸体(前軸)の内カムと摺動カムの後カムと回転子の前カムの関係を示す展開図であり、図9(A)は操作体を動かす前(図2)の静止状態を示しており、図9(B)は操作体を一段階後方へ移動した状態(図5)を示しており、図9(C)は操作体を二段階後方へ移動した状態(図7)を示しており、図9(D)は、操作体を基の位置(図2)まで戻した状態を示した図である。
【0018】
次に図面を参照しながら、本発明の棒状芯繰出具をシャープペンシルを用いて詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
また、本実施例では、軸体の長手方向において、前筒体がある方を前方と表現し、その反対側を後方と表現する。更に、軸体の軸径方向において、チャックがある方を内方と表現し、その反対側を外方と表現する。
尚、説明を分かりやすくするために、図面中の同様の部材、同様の部分については同じ符号を付してある。
【0019】
実施例1
図1は実施例1のシャープペンシル1(棒状芯繰出具)の縦断面図であり、図2は要部を拡大した拡大縦断面図であり、図3図2のX-X線における断面図であり、図4は軸体6内に配置される各部品の分解図(一部は分解せずに表示)である。図1及び図2に示すように、シャープペンシル1は、筒状に形成された前軸2と、前軸2の後部に螺着された中軸3と、中軸2の内径部に螺着され後方に配置された後軸4と、前軸2の前部に螺合された前筒体5とで軸体6が構成され、後軸4の後部には後筒体7を介して消しゴム8が装着され、前軸2の外側部には前軸2(軸体6)に対して前後動自在に係止された操作体9を備え、前筒体5の前端開口部5aには、内部にスライダーユニット10を備えた先口部材11が前後動自在に配設され、先口部材11の後部にはチャックユニット22を螺着して構成してある。
【0020】
また、図1及び図2に示すように、軸体6の内方には、頭部12aが3分割された黄銅製のチャック12が配設してある。そして、チャック12の頭部12aを覆うように筒状の締具13が外嵌され、締具13の後部に当接するように筒状の筒状体14を配設してある。
更に、チャック12の頭部12aの外周部は前方へ向って拡径するようにテーパ状に形成してあり、頭部12aに締具13を外嵌している状態では、頭部12aの内周部でシャープペンシル用の芯15を狭持するよう構成してある。そして、チャック12の頭部12aに締具13を外嵌していない状態では、頭部12aが互いに離間して開くように形成してあり、その状態では頭部12aで芯15の狭持が解除されるよう構成してある。
【0021】
図2に示すように、筒状体14の前部外周部には雄螺子部14aが形成してある。また、図3及び図4に示すように、筒状体14の後部外周部には外方へ向って周状に突出する後部外段部14eが形成してあり、後部外段部14eには更に外方へ向って突出し軸方向に沿って延びるレール部14bが軸心を挟んで対象に2箇所形成してある。
また、筒状体14の後部内周部には軸方向に沿って延びる後方内溝部14cが周方向に4箇所均等配置されるように形成してある。
【0022】
また、チャック12の後部には連結体16を圧入装着してあり、連結体16の後部には筒状の芯タンク17を圧入装着してある。更に、筒状体14の内段14dと連結体16の前端部との間にチャックスプリング18を張架してあり、チャックスプリング18により連結体16およびチャック12を後方へ弾発してある。
尚、連結具16の中間部には外方へ向って突出する突起部16aを形成してある。
【0023】
更に、図2に示すように、筒状体14の雄螺子部14aと先口部材11の後部内周部に形成した雌螺子部11aとを着脱自在に螺着してあり、先口部材11の内部にはその先端部が前端開口部11bから突出し、先口部材11に対して前後動自在に挿入されたスライダーユニット10が配設してある。
【0024】
スライダーユニット10について詳述すると、スライダーユニット10はステンレス製のパイプで形成された先端パイプ19とPOM製のスライド部材20とニトリルゴムで形成され芯15を軽い力で保持(本実施例では10g程度)する芯保持部材21とで構成してあり、先端パイプ19をスライド部材20の前部内孔に圧入固定し、芯保持部材21をスライド部材20の後部内孔に圧入して一体化してある。
尚、スライダーユニット10は前述したように先口部材11の内部に前後動自在に挿入され、芯15を芯保持部材21で保持した際、その芯保持力より先口部材11の内孔とスライド部材20の外周部との嵌合力の方が強くなるよう調整してある。
また、スライダーユニット10の前進はスライド部材20の後端鍔部が先口部材11の内段に当接することで制限されるよう構成してある。
【0025】
ここで、チャック12と締具13と筒状体14と連結体16と芯タンク17とチャックスプリング18とでチャックユニット22が構成され、チャックユニット22と先口部材11とスラーダーユニット10とで芯繰出機構29が構成される。
【0026】
また、図1から図4に示すように、筒状体14の外方には筒状体14に対して筒状の摺動カム23が前後動自在に装着してある。また、摺動カム23の外周部には外方へ向って突出する突状部23aが形成してあり、突状部23aを、前軸2の側面に内外を貫通すると共に前端部から軸方向に沿って後方へ延びるように形成したスリット部2aに挿入することで、摺動カム23を前軸2に対して前後動自在且つ回動不能に係止してある。
更に、摺動カム23の後端部には軸周方向に延び前方及び後方に向って交互に傾斜する後カム23bを形成してある。そして、前軸2の内面には、摺動カム23の後カム23bと同様のカム部となる内カム2bが内周面に沿って後方側にカム斜面2dが配置されるように形成してあり、後カム22bと内カム2bとが軸周方向に約半位相分(本実施例では約45°)ずれた状態で形成してある。
尚、摺動カム23の前端は、前筒体5の後端に当接することで図1の状態では、前進できないようにしてある。
【0027】
操作体9は前述したように前軸2の側部に配設され、操作体9の前軸2の側端側には後部からスリット状に延びる係止部9aが形成してある。そして、摺動カム23の突状部23aの側部に形成した被係止部23cと操作体9の係止部9aとを圧入により係止することで操作体9と摺動カム23とを着脱不能に一体化してある。
また、操作体9の前部は、後方へ向って徐々に突出するように形成したテーパ部9bを設けてあり、テーパ部9bに複数本の連続した凸部を形成することで、テーパ部9bを指で触れた際に滑り難くしてある。
尚、本実施例では、操作体9と摺動カム23とを別体で形成後、装着しているため、個々の部品としては形成し易く、組み立ても容易なものとなった。
【0028】
また、図1から図3に示すように、筒状体14の後部外方には筒状体14を囲うように筒状の回転子24が配設してあり、回転子24は前軸2に対して回動可能に配設されると共に内周部には軸方向に沿って延びる溝状部24aが軸心を挟んで対象に2箇所形成してある。更に、溝状部24aには筒状体14のレール部14bを挿入することで、回転子24を筒状体14に対して回動不能且つ前後動可能に係止してある。
尚、回転子24の前端部には軸周方向に延び前方及び後方に向って交互に傾斜する前カム24bを形成してあり、前カム24bを前軸2の内カム2b及び摺動カム23の後カム23bの双方とカム嵌合するよう構成してある。
【0029】
図1から図4に示すように、筒状体14と軸体6の内段となる中軸3の前端3aとの間には、後部に鍔部25aが形成された内部部材25を配設してある。この内部部材25の鍔部25aには更に外方へ向って突出する係止突起25bが形成してあり、係止突起25bを前軸2の後部内周部に形成した凹状部2cに係止することで内部部材25を前軸2(軸体6)に対して回動不能に係止して固定してある。
また、内部部材25の前部外周部には、軸方向に沿って延びる前部レール部25cを形成してあり、筒状体14が回転した際に前部レール部25cと筒状体14の後方内溝部14cの位置が合うと、後方内溝部14c内に前部レール部25cが挿入することで、筒状体14の後方への移動の可否が切り替わるストッパー26として機能するよう構成してある。
【0030】
更に、回転子の後方にはリング状に形成されたワッシャー27が配設してあり、ワッシャー27の前端面には前方へ向って突出し回転子24の後端部と当接する外側突起27aを同軸径上に3箇所均等配置してある。
尚、外側突起27aの前端部は回転子24の後端面と当接した際に滑り易いくなるように半円状に形成して接触面積を更に小さくしてあると共に表面の接触抵抗が減るよう表面粗さが小さくなるよう形成してある。
【0031】
また、ワッシャー27の後端面と内部部材25の鍔部25aとの間には弾発部材としてコイルスプリング28を張架してあり、コイルスプリング28によりワッシャー27を介して回転子24を前方へ弾発してある。
【0032】
次に、後筒体7について詳述すると、図1に示すように、後筒体7の前部外周面には外方へ向って突出する前部外方突起7aが形成してあり、前部外方突起7aを後軸4の後部外周面に形成した係止孔4aに係止することで、後軸4と後筒体7とを着脱不能に係止してある。
また、後筒体7の前部内孔部には前方へ向って縮径する漏斗状の傾斜部7bを形成してあり、後筒体7の前部は芯タンク17に近接するよう配置することで、後筒体7の後部から挿入した芯が傾斜部7bによって軸中心に誘導され、芯タンク17内に入るよう構成してある。
【0033】
また、後筒体7の後部には内段部が形成され、内段部に消しゴム8を着脱自在に装着してある。
尚、後筒体7の代わりに消しゴムを繰出すことが可能な公知の消しゴム繰り出しユニットを装着してもよく、使用時に後軸4の後端部が閉じられていれば、サインペンやマーカー、ボールペン等の筆記具や替芯ケース等を装着してもよい。
【0034】
次に、図2及び図5から図9を用いて、図2の状態のシャープペンシル1の操作体9を操作することで、芯15が回転し、更に芯15が前方へ繰出される状態を説明する。
図2の状態から、シャープペンシル1を把持し、コイルスプリング28の弾発力に抗して指で操作体9を後方へ移動(1段階目の後退動作)させると、操作体9と共に操作体9に係止されている摺動カム23も後方へ移動する。この際、摺動カム23の後カム23bと前軸2の内カム2bと回転子24の前カム24bの関係は図9(A)の状態から図9(B)の状態へ移行する。詳述すると、摺動カム23が後退することで摺動カム23の後カム23bとカム嵌合している回転子24の前カム24bが押されて回転子24が後方へ移動するが、回転子24の前カム24bと前軸2の内カム2bとが同時にカム嵌合しているため、回転子24は後退しつつ前カム24bと内カム2bとの間に生じた隙間分のみ摺動カム23のカム斜面23dに沿って図9(A)の左方向(軸後方から視て時計周り方向)へ回転する。そして、前軸2の内カム2bと回転子24の前カム24bとが完全に離れると、図9(B)の位置までカム斜面23dに沿って回転子24が回転する。そして、回転子24が回転すると、回転子24と回動不能に係止している筒状体14も同方向に同時に回転し、筒状体14と螺合している先口部材11と、先口部材11に装着されているスライダーユニット10が回転する。更に、チャック12はチャックスプリング18により後方へ弾発されているため、チャック12の頭部12aは締具13を介して筒状体14の前端部に押圧されている。このため、チャック12と締具13とチャック12に狭持している芯15とがチャック12と共に同方向に回転する。つまり、回転子24の回転に伴って芯繰出機構29が芯15と共に軸体6に対して回転する。尚、前述したように、前軸2の内カム2bと摺動カム23の後カム23bは半位相分ずれているため、図5及び図9(B)の状態では芯15は図2の状態から半位相分(本実施例では約45°)のみ回転した状態となる。
尚、図5の状態まで回転子24が回転すると、同時に回転した筒状体14の後方内溝部14cと内部部材25の前部レール部25cとの軸周方向における位置が合致し、図6に示すように、後方内溝部14c内に前部レール部25cが挿入可能な状態となる。
また、回転子24が回転する際、回転子24とコイルスプリング28との間にワッシャー27を配置してあるため、回転子24が回転した際にワッシャー27が滑ることでコイルスプリング28に捻転力が伝わることがなく、コイルスプリング28が捻られて破損または弾発力が変化することを防止することができた。
【0035】
ここで更に、操作体9を後方へ移動(2段階目の後退動作)させると、摺動カム24の後カム23bと筒状体14の後部外段部14eの前部とが当接し、コイルスプリング28及びチャックスプリング18の弾発力に抗して筒状体14は内部部材25の前部レール部25cに沿って後方へ移動する。
この際、筒状体14の後退に伴い芯繰出機構29は全体で後退しようとするが、連結体16の突起部16aの後端と内部部材25の前端とが当接することで、連結体16と共に連結体16に装着されているチャック12と芯タンク17とチャック12に狭持されている芯15とが同時に後退を停止し、芯繰出機構29を構成するその他の構成部品は後方へ移動する。そして、先口部材11が後退することで当該先口部材11の内段11cと締具13の前端が当接すると、先口部材11に押されて締具13も後退する。これによりチャック12の頭部12aから締具13が外れると、締具13が後方へ移動した分、チャック12の3つの頭部12aは拡径して互いに間隔を開いた図7図8及び図9(C)の状態となり、チャック12による芯15の狭持状態が解除される。
尚、スライダーユニット10も芯保持部材21により芯15を保持しているため芯15と共にその場に留まろうとするが、スライド部材20の外段部が先口部材11の内段と当接することで先口部材11と共に後方へ移動する。このとき芯保持部材21は軽い力(約10g程度)でしか芯15を保持していないため、芯保持部材20は芯15の表面を滑るように移動し、芯15にダメージを与えることはない。
【0036】
ここで、操作体9に対する後方への押圧(操作体9の後退状態)を解除すると、コイルスプリング28及びチャックスプリング18の弾発力で筒状体14及び先口部材11が前進する。この際、チャック12は芯15を狭持しておらず、前述したように芯保持部材21の芯保持力より先口部材11の内孔とスライド部材20の外周部との嵌合力の方が強くなるよう調整してあるため、スライダーユニット10は芯15を保持したまま先口部材11と共に前進し、芯15をチャック12から前方へ相対的に引き出す。そして、筒状体14に押されて前進した締具13がチャック12の頭部12aを再び締め付け、芯保持部材21の芯保持力をチャック12の芯狭持力が越えると芯15の前方への相対的な移動が停止される。
更に筒状体14が前進し、筒状体14の後方内溝部14cから内部部材25の前部レール部25cが抜けると、回転子24と前軸2及び摺動カム23とのカム嵌合は図9(C)の状態から図9(B)の状態に戻り、更に摺動カム23が前進して、摺動カム23の後カム23bと回転子24の前カム24bとの当接状態が外れると、その隙間分回転子24は前軸2の内カムのカム斜面2dに沿って図の左側(軸後方から視て時計周り方向)に回転し、最終的にノック前の図1の状態まで戻ったときには、図9(D)のように回転子24は前軸2の内カム2bの1位相分回転した状態となり、同時に芯15も1位相分(本実施例では約90°)回転した状態となる。
尚、本発明において1回の芯回転動作で回転する角度は、回転後にすぐに片減りしないよう60°以上に設定することが好ましい。
また、スライダーユニット10は芯保持部材21の芯保持力より先口部材9の内孔とスライド部材20の外周部との嵌合力の方が強くなるよう調整してあるため、芯15の前進が止まった後も先口部材11と共に前進を続けノック前の図2の位置まで前進する。このため、芯15は回転しつつ前方へ繰出された状態となる。
【0037】
尚、操作体9の後方への押圧動作を1段階目の後退動作で中止し、操作体9への押圧を解除した場合、図5の状態から図2の状態に戻り、芯15は前方への繰り出されることはなく、芯15を前軸2の内カム2bの1位相分(約90°)回転した状態となる。
このため、本実施例では1段階目のノック動作でノックをやめることで芯15を前方へ繰出すことなく回転させることができるため、芯15を回転させたいときに不必要に芯15を繰出さないようにできることから芯15の繰り出し過剰による芯15の折損を防止することができる。更に、芯の回転動作は操作体9の後方への押圧動作により行われるため、筆記時に指が操作体9に接触しても指には筆記するために軸体6の前方側に力をかけていることから操作体9に後方への力が掛かることは殆どない。このため、使用者の意に反して筆記時に芯15が回転することや芯が前方へ繰り出されることがなく、筆記時にチャック12の頭部12aが開くことにより芯15が後方へ沈むことを防止できる。
また、操作体9を摺動カム23に着脱不能に係止しているため、筆記状態である図1の状態では操作体9に前方への力が掛かっても前進することはない。このため、筆記時において、操作体9が軸体6を把持した際の支えになることから、力を掛けても滑り難く、筆記し易くなる効果を奏する。
【0038】
また、操作体9の後退動作を1段階目で確実に止めることができるように、操作体9の位置により1段階目の後退範囲と2段階目の後退範囲が判るように軸体6や操作体9に目印を設けてもよく、操作体9の後退時の感触の変化で1段階目から2段階目に入ったことが判るようにしてもよい。本実施例の場合は、操作体9の後退が1段階目から2段階目にはいると、チャックスプリング18の弾発力分、操作体9を後方へ移動させるのに必要な押圧力が増えるため後退時の感触の変化で2段階目に入ったことを認識できるよう構成すると共に、回転子24の前カム24bが前軸2の内カム2bから摺動カム23の後カム23bに完全に移動した際に発生する前カム24bと後カム23bとの接触音と、接触音が発生した際に軸体6を把持している手に伝わる微弱な振動と、が同時に使用者に伝わるようにしてあるため2段階目に入ったことをより認識し易いよう構成してある。
【0039】
更に、本実施例では、ストッパー26の解除手段を操作体9の後方への移動に伴い筒状体が回転することで解除されるよう構成しているため、ストッパー26の解除に回転子24の回転運動を利用できることから、最も好ましい形態であるが、他の例として、図示はしないが、筒状体の後方に当該筒状体の後退を防ぐストッパーとなる壁体を設け、操作体の後方への移動に連動して壁体が軸方向に対して直交する方向に移動するよう構成することでストッパーが外れるよう構成してもよく、特に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の棒状芯繰出具は、シャープペンシルや色鉛筆、クレヨンなどの筆記具に限定されること無く、口紅、アイライナー、アイシャドウ、リップクリームなどの化粧用品や医療用器具などに広く使用可能である。
【符号の説明】
【0041】
1…シャープペンシル(棒状芯繰出具)、
2…前軸、2a…横孔部、2b…内カム、2c…凹状部、2d…カム斜面、
3…中軸、3a…前端、
4…後軸、4a…係止孔、
5…前筒体、5a…面端開口部、
6…軸体、
7…後筒体、7a…前部外方突起、7b…傾斜部、
8…消しゴム、
9…操作体、9a…係止部、9b…テーパ部、
10…スライダーユニット、
11…先口部材、11a…雌螺子部、11b…前端開口部、11c…内段、
12…チャック、12a…頭部、
13…締具、
14…筒状体、14a…雄螺子部、14b…レール部、14c…後方内溝部、
14d…内段、14e…後部外段部
15…芯、
16…連結体、16a…突起部、
17…芯タンク、
18…チャックスプリング、
19…先端パイプ、
20…スライド部材、
21…芯保持部材、
22…チャックユニット、
23…摺動カム、23a…突状部、23b…後カム、23c…被係止部、
23d…カム斜面、
24…回転子、24a…溝状部、24b…前カム、
25…内部部材、25a…鍔部、25b…係止突起、25c…前部レール部、
26…ストッパー、
27…ワッシャー、27a…外側突起、
28…コイルスプリング、
29…芯繰出機構。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9