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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-10
(45)【発行日】2022-08-19
(54)【発明の名称】燃料供給装置
(51)【国際特許分類】
   B67D 7/32 20100101AFI20220812BHJP
   F16K 47/02 20060101ALI20220812BHJP
   F16K 15/06 20060101ALN20220812BHJP
【FI】
B67D7/32 J
F16K47/02 B
F16K15/06
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018179957
(22)【出願日】2018-09-26
(65)【公開番号】P2019099273
(43)【公開日】2019-06-24
【審査請求日】2021-04-01
(31)【優先権主張番号】P 2017230070
(32)【優先日】2017-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000110099
【氏名又は名称】トキコシステムソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊東 直人
【審査官】北村 一
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-167400(JP,A)
【文献】米国特許第05099870(US,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0077635(KR,A)
【文献】独国特許出願公開第102010011861(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B67D 7/00-99/00
F16K 15/00-15/20
F16K 39/00-51/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体内に設けられ、送液手段が設けられた本体内燃料供給路と、
前記装置本体から延設された燃料供給ホースを含む本体外燃料供給路を介して前記本体内燃料供給路と連通接続され、燃料補給対象に対する燃料の吐出及び吐出停止を行う開閉弁を備えた燃料供給ノズルと、
前記本体外燃料供給路に設けられ、前記燃料供給ホースに所定値以上の引張力が作用した場合に分離して前記燃料供給ノズルに対する燃料供給路を遮断する安全継手と
記安全継手又は前記安全継手よりも下流側の前記本体外燃料供給路に設けられ、前記燃料供給ノズルの開閉弁の閉弁により前記燃料供給ノズル側の燃料で生じた圧力上昇が前記安全継手の分離部内を含む上流側の燃料供給路へ伝播するのを阻止する補助弁機構と、を備え、
前記補助弁機構は、前記補助弁機構の下流側の燃料の圧力が前記補助弁機構の上流側の燃料の圧力よりも高いときに閉弁する逆止弁を有し、前記逆止弁には、閉弁状態で、当該高くなっている前記燃料供給ノズル側の燃料の圧力を前記逆止弁よりも上流側へ逃がす圧力逃がし機構が設けられており、
前記安全継手は、分離可能に構成された上流側継手弁部及び下流側継手弁部を有し、前記下流側継手弁部は、前記上流側継手弁部と分離したときに前記燃料供給路を遮断する弁体を有する燃料供給装置。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料供給装置であって、
前記上流側継手弁部と前記下流側継手弁部とは、係合部材により一体的に連結されている燃料供給装置。
【請求項3】
請求項2に記載の燃料供給装置であって、
前記圧力逃がし機構は、
前記逆止弁の上流側と下流側とを連通し、その内径が変化する段付き貫通孔である燃料供給装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の燃料供給装置であって、
前記補助弁機構が前記安全継手に設けられている場合、前記補助弁機構は、前記安全継手と一体的に形成されている燃料供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、給油所等の燃料供給施設において使用され、例えば車輌の燃料タンク等へガソリンや軽油等の燃料を補給する燃料供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料供給施設の一例としての給油所では、そのサービス形態に応じて給油所係員又は顧客自身が作業者として給油装置(燃料供給装置)を操作して、車輌に対する給油作業(燃料供給作業)を行う。その際、作業者は、給油装置本体のノズル掛けに収納され、給油ホース(燃料供給ホース)に接続された給油ノズル(燃料供給ノズル)を取り出して車輌の給油口に装着する。そして、給油ノズルのノズルレバーを開弁操作してノズル本体内の主弁(開閉弁)を開弁することにより、車輌の燃料タンク(燃料補給対象)に対する燃料吐出を開始する。その後、所望量の燃料補給が完了すると、作業者は、ノズルレバーを閉弁操作して給油ノズルからの燃料吐出を終了させ、給油ノズルを給油装置本体のノズル掛けに収納する。また、給油装置には、給油ホースの途中に安全継手が設けられており、給油ノズルが車両の給油口に挿入された状態で車輌が出車した場合、安全継手が分離し、内蔵された弁機構が閉弁することによって、給油ホースの破断等で燃料を流出させてしまうことを防止できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-167400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、給油ノズルからの燃料吐出を終了させる際、給油ノズルのノズルレバーをいきなり閉弁操作したり給油ノズルに備えられた自動閉弁機構が作動して、給油ノズルからの燃料吐出が急停止させられると、今まで吐出されていた燃料流体が給油ノズルで急激にせき止められることによって、給油ノズルまでの燃料供給路内で給油ノズルを起点とした瞬間的かつ急激な圧力上昇が発生する。
【0005】
この給油ノズルを起点として瞬間的かつ急激に上昇した圧力は、給油ノズルから上流側の燃料供給路に伝搬するので、給油作業の都度、このような給油ノズルによる燃料吐出の急停止が頻繁に繰り返されることによって、安全継手にも上昇した圧力が急激に作用することとなり、安全継手の耐久寿命が短くなってしまう問題があった。
【0006】
本開示は、上述した課題を鑑み、ノズルを起点として瞬間的かつ急激に上昇した圧力を安全継手へ伝搬させないようにした燃料供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る燃料供給装置は、上述した課題を解決するために、装置本体内に設けられ、送液手段が設けられた本体内燃料供給路と、装置本体から延設された燃料供給ホースを含む本体外燃料供給路を介して本体内燃料供給路と連通接続され、燃料補給対象に対する燃料の吐出及び吐出停止を行う開閉弁を備えた燃料供給ノズルと、本体外燃料供給路に設けられ、燃料供給ホースに所定値以上の引張力が作用した場合に分離して燃料供給ノズルに対する燃料供給路を遮断する安全継手と、を備えた燃料供給装置であって、安全継手又は安全継手よりも下流側の本体外燃料供給路に設けられ、燃料供給ノズルの開閉弁の閉弁により燃料供給ノズル側の燃料で生じた圧力上昇が安全継手の分離部内を含む上流側の燃料供給路へ伝播するのを阻止する補助弁機構を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、燃料供給装置において、燃料供給ノズルを起点とした瞬間的かつ急激な圧力上昇が発生しても、安全継手又は安全継手より下流側の燃料供給路に設けた補助弁機構の作動によって、上昇した圧力を安全継手の分離部内を含む上流側の燃料供給路に伝播させないので、安全継手の耐久寿命が延び、燃料供給装置自体のメンテナンス間隔を延ばすことができ、メンテナンス費用の低減もはかれる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】燃料供給装置の一実施の形態としての、給油所に設けられた給油装置の一実施例の全体構成図である。
図2】給油装置に設けられる補助弁機構の構成断面図である。
図3図2に示した補助弁機構の、給油ノズルからの油液吐出状態の構成断面図である。
図4】安全継手と補助弁機構とが一体的に形成されたホース継手ユニットの構成断面図である。
図5図4に示したホース継手ユニットの、給油ノズルからの油液吐出状態の構成断面図である。
図6図4に示したホース継手ユニットの、安全継手が分離した際の構成断面図である。
図7図4に示したホース継手ユニットの変形例の構成断面図である。
図8図4に示したホース継手ユニットの別の変形例の構成断面図である。
図9図8に示したホース継手ユニットにおける補助弁機構部分の拡大構成断面図である。
図10図8に示したホース継手ユニットの、給油ノズルからの油液吐出状態の構成断面図である。
図11図8に示したホース継手ユニットの、給油ノズルを起点とした瞬間的かつ急激な圧力上昇が発生した際の構成断面図である。
図12図8に示したホース継手ユニットの、安全継手が分離した際の構成断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示に係る燃料供給装置について、給油所に設けられた給油装置を例に、図面に基づき説明する。
【0011】
図1は、燃料供給装置の一実施の形態としての、給油所に設けられた給油装置の一実施例の全体構成図である。
【0012】
給油装置1は、給油装置本体(給油装置筐体)10と、給油装置本体10から導出された給油ホース20と、給油ホース20の先端に設けられた給油ノズル30とを有する。
【0013】
給油装置本体10内には、ポンプモータ11により駆動されるポンプ12と、給油ノズル30から車輌の燃料タンク等の燃料補給対象に吐出された油量を計測する流量計13が備えられている。流量計13には、単位量毎の油液の流れに対応した流量パルスを生成する流量発信器15が付設されている。
【0014】
この場合、ポンプ12は、通常、流入口と流出口とが備えられた一の筐体ユニットに、空気分離器、フィルタ等のポンプ付設機器とともに一体的に設けられ、ポンプユニットとして構成されている。ポンプユニットは、上流側(流入口の地下貯油タンク側)から下流側(流出口の流量計13側)へ、ストレーナ、流入側逆止弁、ポンプ12、空気分離器、フィルタ、流出側逆止弁が順次配置された構成になっている。加えて、ポンプユニットには、空気分離器の流出側とポンプ12の流入側(吸い込み側)との間を連通するように気液分離器が配置され、フィルタの流出側とポンプ12の流入側(吸い込み側)との間を連通するように、リリーフ弁を備えたリリーフ通路が設けられた構成になっている。
【0015】
ポンプ12の吸込口は、吸込口配管14、及び図示せぬ地中配管を介して、図示せぬ地下貯油タンク内と連通接続されている。ポンプ12の吐出口は、流量計13の流入口に連通接続されている。流量計13の流出口は、流出口配管16を介して、給油ホース20の基端側が他方に接続されたスイベル継手17と連通接続されている。
【0016】
これにより、図示の給油装置1においては、吸込口配管14、ポンプ12、流量計13、流出口配管16によって、給油ノズル30に対する本体内燃料供給路が構成され、給油ホース20によって、給油ノズル30に対する給油装置1の本体外燃料供給路が構成されている。
【0017】
給油ホース20の途中には、後述の補助弁機構を有するホース継手ユニット21が設けられ、給油ホース20は、本体側ホース部分22とノズル側ホース部分23とに分かれている。なお、図示の例では、ホース継手ユニット21を給油ホース20の途中に設けた実施例を示したが、ホース継手ユニット21の配設位置はこれに限定されず、給油ホース20の基端や先端に設けられていてもよい。
【0018】
給油ノズル30は、給油ホース20の先端側に連通接続され、ノズル本体32内の図示せぬ主弁を操作レバー31の操作に応動して開閉できる。ノズル本体32内には、給油した液面が吐出パイプ33の先端側に到達したら、操作レバー31の開弁操作状態に関わらず、主弁を閉弁して吐出パイプ33からの油液の吐出を停止させる自動閉弁機構が内蔵されている。
【0019】
給油ノズル30は、給油作業に用いられていない待機時は、給油装置本体10に備えられたノズル収納部(ノズル掛け)18に収納されている。ノズル収納部18には、給油ノズル30の取り出し及び収納を検出するノズルスイッチ19が設けられている。
【0020】
一方、給油装置本体10には、給油ノズル30を操作して車輌の燃料タンク等に給油された給油量等の給油情報を表示する給油情報表示器41が、その表示面を給油装置本体10外に臨ませて設けられている。
【0021】
また、給油装置本体10内には、ノズルスイッチ19からのノズル取り出し/収納検出信号に基づきポンプモータ11の駆動/停止を制御し、流量発信器15からの流量パルスに基づき燃料補給対象に対する給油量を演算し、給油情報表示器41に表示したりして、給油装置1の各部を作動制御する給油制御装置40が設けられている。
【0022】
そして、作業者は、図示の給油装置1を用いて、燃料補給対象に対する給油作業を次のようにして行う。
【0023】
作業者は、給油ノズル30をノズル収納部18から取り出し、その吐出パイプ33を燃料補給対象の給油口に挿入し、操作レバー31を開弁操作してノズル本体内の主弁を開弁して、燃料補給対象に対する燃料吐出を開始する。その際、ポンプモータ11すなわちポンプ12は、ノズルスイッチ19からのノズル取り出し検出信号の出力に基づき、給油制御装置40によって送液駆動される。また、燃料補給対象に対する給油ノズル30からの燃料吐出量すなわち給油量は、流量発信器15からの流量パルス出力に基づき、給油制御装置40によって演算され、給油情報表示器41に表示される。燃料補給対象に対する給油ノズル30からの燃料吐出は、作業者による操作レバー31の閉弁操作により、又は自動閉弁機構の作動によりノズル本体内の主弁を閉弁して、中断又は終了される。作業者は、燃料補給対象に対する所望量の給油を終了したならば、自動閉弁機構の作動により操作レバー31が閉弁操作されていない場合は操作レバー31を閉弁操作してから、給油ノズル30をノズル収納部18に収納する。給油制御装置40は、ノズルスイッチ19からのノズル収納検出信号の出力に基づき、ポンプモータ11すなわちポンプ12の送液駆動を停止させる。
【0024】
図2は、本実施例の給油装置1において、ホース継手ユニット21に含まれる補助弁機構の構成断面図である。
図3は、図2に示した補助弁機構の、給油ノズルからの油液吐出状態の構成断面図である。
【0025】
補助弁機構50は、図示の例では、弁座部51aが形成された弁座部材51と、弁体54が変位可能に装着される弁体支持部材52と、弁体54が支持された弁体支持部材52を弁座部材51に対して固定保持する保持部材53とを有して構成されている。
【0026】
弁座部材51は、貫通孔51cが形成された筒状ケーシングを有し、その孔軸方向に沿った一端側の内周部分が補助弁機構50の一端側の外部接続部51dとなり、孔軸方向に沿った他端側の内周部分が保持部材53の被装着部51eとなっている。また、孔軸方向に沿った外部接続部51dと被装着部51eとの間の貫通孔内周部分には、外部接続部51d側から被装着部51eに向かって、環状の弁座部51a、弁体支持部材52の被当接段部51bが順次形成された構成になっている。
【0027】
弁体支持部材52は、弁座部材51の被装着部51e側から弁座部材51の貫通孔51c内に挿設可能な筒状ケーシングを有して形成されている。その貫通孔52cの軸部分には、弁体54の弁軸54aが挿入されて、弁軸54aを摺動可能に案内支持する案内筒部52aが、筒状ケーシングの内周面から立設された脚部52bによって、弁体54の弁軸54aが環状の弁座部51aと同軸になるように支持された構成になっている。弁体支持部材52は、一端側の環状端面が、弁座部材51の被当接段部51bとの係合部52dとなり、他端側の環状端面が、保持部材53との被当接部52eとなっている。
【0028】
保持部材53は、貫通孔53cが形成された筒状ケーシングを有し、その孔軸方向に沿った一端側の外周部分は、弁座部材51の被装着部51eに対する装着部53aとなり、孔軸方向に沿った他端側の外周部分は、補助弁機構50の他端側の外部接続部53bとなっている。
【0029】
弁体54は、弁体支持部材52によってその弁軸54aを案内支持されて、弁座部51aに対して離着座可能に、弁座部材51の貫通孔51c内に収容される。弁体54には、弁体支持部材52の案内筒部52aと脚部52bとの接合部との間に、ばね部材55が縮設されている。そして、弁体54は、このばね部材55によって、常時、着座方向に付勢されている。
【0030】
本実施例の場合、ばね部材55の付勢力の大きさは、例えば、前述した本体内燃料供給路から補助弁機構50の一端側である外部接続部51dへ油液の送液が行われている場合は、弁体54が弁座部51aから離座して開弁し、本体内燃料供給路から補助弁機構50の外部接続部51dへ油液の送液が行われていない場合は、弁体54が弁座部51aに着座して閉弁し得る付勢力の大きさに設定されている。
【0031】
これにより、図示の例では、補助弁機構50は、前述した本体内燃料供給路から油液の送液が行われている場合は、図3に示すように、補助弁機構50の弁体54上流側である外部接続部51dと弁体54下流側である外部接続部53bとの間の流路が連通し、一方、本体内燃料供給路から油液の送液が行われていない場合は、図2に示すように、補助弁機構50の外部接続部51d・53b間の流路を遮断するようになっている。
【0032】
また、弁体54には、弁体54が弁座部51aに着座した閉弁状態であっても、弁体54の外部接続部51d側と外部接続部53b側との間を流量を絞った小流量で連通する圧力逃がし通路56が貫通形成されている。なお、この圧力逃がし通路56については、図示の例では、弁体54に形成したが、弁体54の上流側である外部接続部51d側と下流側である外部接続部53b側との間を小流量で連通する構成であれば、弁座部51aの弁座面や弁座部材51の周壁部内に形成すること等も可能である。
【0033】
このような補助弁機構50を含むホース継手ユニット21は、その外部接続部51dに本体側ホース部分22を液密に連通接続し、その外部接続部53bにノズル側ホース部分23を液密に連通接続して、給油ホース20の途中若しくは端部(先端)に配設される。
【0034】
次に、上述したように構成された補助弁機構50が含まれるホース継手ユニット21が設けられた給油装置1における、給油作業時における補助弁機構50の作用について説明する。
【0035】
作業者が、給油ノズル30をノズル収納部18から取り出し、ポンプ12が送液駆動され、本体内燃料供給路を介して本体外燃料供給路である給油ホース20に対して油液の送液が開始されると、補助弁機構50の弁体54が外部接続部51d側からの油液の流れ(送液)を受けてばね部材55の付勢力に抗して弁座部51aから離座する。これにより、補助弁機構50の外部接続部51d・53b間の流路が連通し、給油ノズル30への油液の送液が開始される。
【0036】
その後、作業者が給油ノズル30の操作レバー31を開弁操作するまでは、ノズル本体32内の主弁は閉弁したままなので、ポンプ吐出側の本体内燃料供給路内及び給油ホース20内の液圧は、所定圧力(例えば、ポンプ12のリリーフ圧)まで徐々に上昇することになる。この所定圧力に本体外燃料供給路である給油ホース20内全体の圧力に達するまでは、補助弁機構50の弁体54は、本体内燃料供給路内からの油液の流れの圧力を受けているので、補助弁機構50の外部接続部51d・53b間の流路は連通したままである。
【0037】
そして、作業者が給油ノズル30の操作レバー31を開弁操作して給油ノズル30からの燃料吐出が開始されると、補助弁機構50に対して下流側である給油ノズル30側の燃料供給路内の液圧が下がり給油ホース20内全体の圧力も下がるが、補助弁機構50の弁体54は、本体内燃料供給路内からの油液の流れの圧力を受けるので、給油ノズル30からの燃料吐出中は、補助弁機構50の外部接続部51d・53b間の流路は連通したままである。
【0038】
一方、燃料補給対象に対する所望量の給油が行われ、作業者がそれまで開弁操作していた給油ノズル30の操作レバー31を燃料吐出量の絞り操作を経ずに閉弁操作したり、給油ノズル30に備えられた自動閉弁機構が作動して、給油ノズル30からの燃料吐出が急停止させられると、今まで吐出されていた燃料流体が給油ノズル30で急激にせき止められることによって、給油ノズル30を起点とした瞬間的かつ急激な圧力上昇が発生する。そして、この瞬間的かつ急激な圧力上昇は、燃料供給路内を給油ノズル30側から上流側の本体内燃料供給路側に向かって、本体外燃料供給路である給油ホース20内を伝播しようとする。
【0039】
このような瞬間的かつ急激な圧力上昇が補助弁機構50の外部接続部53bから伝播されると、補助弁機構50の弁体54は、その急激な圧力上昇とばね部材55の付勢力とを受けることにより、弁座部51aに即座に着座し、補助弁機構50の外部接続部51d・53b間の流路を遮断する。これにより、本体内燃料供給路を含む、補助弁機構50に対して上流側の燃料供給路内に、この給油ノズル30を起点とした瞬間的かつ急激な圧力上昇が伝播されてしまうことを防止できる。
【0040】
これにより、このような給油ノズル30を起点とした瞬間的かつ急激な圧力上昇が発生しても、給油ノズル30と本体内燃料供給路との間の燃料供給路に設けた、すなわち実施例では給油ホース20の途中に設けた補助弁機構50の作動によって、補助弁機構50よりも上流側の燃料供給路に設けられた構成部材(例えば、配管接続部のシール部材等)や構成機器内の部品(例えば、スイベル継手17内のシール部材や、流量計13やポンプ12のパッキン等)の強度の劣化や損傷を抑制して、これら構成部材や構成機器からの油漏れも防止できる。この結果、上流側の燃料供給路の構成部材や構成機器内の部品の耐久寿命が延び、給油装置1自体のメンテナンス間隔を延ばすことができ、メンテナンス費用の低減もはかれる。
さらに、補助弁機構50は、本体外燃料供給路である給油ホース20に設けられているので、本体内燃料供給路である流出口配管16に補助弁機構50を設けるよりも、ノズル30を起点とした瞬間的かつ急激に上昇した圧力が燃料供給路内に影響する範囲を小さくすることができる。また、補助弁機構50が本体外燃料供給路に設けられているので、作業員による補助弁機構50の設置、取り外しも容易に行うことができる。
【0041】
加えて、補助弁機構50の作動により、外部接続部53b側の燃料供給路、すなわちノズル側ホース部分23に閉じ込められた給油ノズル30を起点とした瞬間的かつ急激な圧力上昇は、その後、給油ノズル30が長時間、開弁されなくとも、補助弁機構50の弁体54に備えられた圧力逃がし通路56を介して、補助弁機構50の外部接続部51d・53b間は小流量ながら油液が流通できるようになっているので、補助弁機構50よりも上流側の燃料供給路に対して徐々に解放される。これにより、補助弁機構50の遮断によってノズル側ホース部分23に閉じ込められた、給油ノズル30を起点とした瞬間的かつ急激な圧力上昇を起こした油液は、その後の周囲環境温度の上昇等によってさらに圧力上昇を起こすこともなくなり、補助弁機構50よりも下流側の構成機器内の部品(例えば、ノズル側ホース部分23と給油ノズル30とを接続するエルボ継手34のシール部材や、給油ノズル30本体内に備えられたシール部材等)の強度の劣化や損傷も抑制することができる。
【0042】
次に、本実施例の給油装置1において、ホース継手ユニット21が補助弁機構50と安全継手60とを含む構成の実施例、すなわち補助弁機構50と安全継手60とを一体化して構成されたホース継手ユニット21について、図4図6に基づき説明する。なお、技術理解を容易にするため、その補助弁機構50については、図2及び図3に示した構成の補助弁機構50を適用し、補助弁機構50の構成についての重複する説明は省略する。
【0043】
図4は、安全継手と補助弁機構とが一体的に形成されたホース継手ユニットの構成断面図である。
図5は、図4に示したホース継手ユニットの、給油ノズルからの油液吐出状態の構成断面図である。
図6は、図4に示したホース継手ユニットの、安全継手が分離した際の構成断面図である。
【0044】
安全継手60は、上流側の本体内燃料供給路を含む、本体側ホース部分22側に収容された油液の流出を防止する上流側継手弁部61と、ノズル側ホース部分23側に収容された油液の流出を防止する下流側継手弁部62とを、図4並びに図5に示すように、液密に一体的に接続した構成になっている。また、図示の例では、安全継手60は、その下流側継手弁部62に、補助弁機構50が一体的に接続された構成になっている。
【0045】
安全継手60の上流側継手弁部61は、貫通孔61cが形成された筒状ケーシングを有し、その孔軸方向に沿った一端側の内周部分が、安全継手60の一端側の外部接続部61aとなり、孔軸方向に沿った他端側の外周部分が下流側継手弁部62に対する装着部61bとなっている。また、貫通孔61cの孔軸方向に沿った装着部61b側の孔内には、孔軸方向に沿った一端側から他端側に向かって、ボール弁体61dの収容部61e、この収容部61eに収容されたボール弁体61dが離着座する弁座部61fが順次形成された構成になっている。そして、収容部61e内のボール弁体61dは、貫通孔61c内の収容部61eと外部接続部61aとの境界段部に一端側が支持され、他端側がボール弁体61dに係合しているばね部材61gの付勢力によって、弁座部61fに対する着座方向に、常時、付勢されている構成になっている。
【0046】
一方、下流側継手弁部62は、貫通孔62cが形成された筒状ケーシングを有し、その孔軸方向に沿った一端側の内周部分が、上流側継手弁部61の装着部61bの被装着部62aとなり、孔軸方向に沿った他端側の外周部分が、安全継手60の他端側の外部接続部62bとなり、補助弁機構50の一端側の外部接続部51dに対して液密に装着可能となっている。また、貫通孔62cの孔軸方向に沿った被装着部62aよりも他端側の孔内には、孔軸方向に沿った一端側から他端側に向かって、ボール弁体62dが離着座する弁座部62e、ボール弁体62dの収容部62fが順次形成された構成になっている。そして、収容部62f内のボール弁体62dは、外部接続部62b側の貫通孔62c内に形成された段部に他端側が支持され、一端側がボール弁体62dに係合しているばね部材62gの付勢力によって、弁座部62eに対する着座方向に、常時、付勢されている構成になっている。
【0047】
そして、上流側継手弁部61と下流側継手弁部62とは、上流側継手弁部61の装着部61bを下流側継手弁部62の被装着部62aに液密に嵌合させ、それによりシェアピン63により抜け止め係止がなされ、一体的に連結されている。また、この上流側継手弁部61と下流側継手弁部62との接続に当たっては、上流側継手弁部61と下流側継手弁部62との孔軸に対して垂直な対抗面間に、上流側継手弁部61のボール弁体61dを収容部61e内の弁座部61fから離れた場所にばね部材61gの付勢力に抗して位置させ、下流側継手弁部62のボール弁体62dを収容部62f内の弁座部62eから離れた場所にばね部材62gの付勢力に抗して位置させる係合部材64が挟持され、配置された構成になっている。上流側継手弁部61と下流側継手弁部62との接続状態で、上流側継手弁部61の貫通孔61c、下流側継手弁部62の貫通孔62cは、継手流路を形成する。安全継手60は、ボール弁体61d、弁座部61fを備えた上流側継手弁とボール弁体62d、弁座部62eを備えた下流側継手弁との間の継手流路部分で、上流側継手弁部61と下流側継手弁部62とに分離できる構成になっている。
【0048】
その上で、安全継手60の外部接続部62bには、補助弁機構50の外部接続部51dが装着されて、安全継手60と補助弁機構50とが一体的に形成されたホース継手ユニット21が構成されている。そして、図1に示した給油装置1では、ホース継手ユニット21における安全継手60の外部接続部61aは本体側ホース部分22と接続され、ホース継手ユニット21における補助弁機構50の外部接続部53bはノズル側ホース部分23と接続され、ホース継手ユニット21は、給油ホース20の途中に配設された構成になっている。加えて、補助弁機構50は、本体外燃料供給路において、安全継手60よりも下流側に設けられた構成になっている。なお、補助弁機構50と一体化される安全継手60の具体的構成は、上記した構成に限定されるものではなく、例えば、特開昭50-145923号に記載のような構成であってもよい。
【0049】
本実施例の給油装置1によれば、補助弁機構50は、前述した本体内燃料供給路から油液の送液が行われている場合は、図5に示すように、補助弁機構50の弁体54上流側である外部接続部51dと弁体54下流側である外部接続部53bとの間の流路が連通し、一方、本体内燃料供給路から油液の送液が行われていない場合は、図4に示すように、補助弁機構50の外部接続部51d・53b間の流路を遮断するようになっている。
【0050】
また、安全継手60は、ノズル側ホース部分23に所定値以上の引張力が作用してシェアピン63が破断され、上流側継手弁部61と下流側継手弁部62との連結が解除されない限りは、両継手弁部61、62の結合状態は保持され、上流側継手弁部61のボール弁体61dと下流側継手弁部62のボール弁体62dは共に、係合部材64によって開弁状態が保持され、安全継手60は、油液が流通可能になっている。
【0051】
この状態において、給油ノズル30を起点とした瞬間的かつ急激な圧力上昇が発生しても、給油ホース20の途中に設けたホース継手ユニット20の補助弁機構50が作動して、その外部接続部51d・53b間の流路を遮断する。これにより、安全継手60や本体内燃料供給路を含む、補助弁機構50に対して上流側の燃料供給路内に、この給油ノズル30を起点として瞬間的かつ急激に上昇した圧力が伝播されてしまうことを防止できる。
【0052】
したがって、瞬間的かつ急激に上昇した圧力が安全継手60に作用することにより、安全継手60の耐久年数が短くなってしまうのを防止できる。具体的には、瞬間的かつ急激に上昇した圧力が安全継手60に繰り返し作用することにより、安全継手60が、本来、作動する設定値以下の普段の作業時の引張力で誤動作してしまう(例えば、シェアピン63の経年劣化が促進される等して、給油ノズル30が車両の給油口に挿入された状態で車輌が出車してしまった場合のような異常事態でないにも係わらず、安全継手60の上流側継手弁部61と下流側継手弁部62とが分離してしまう)ことを防止できる。また、係合部材64が変形してしまう等によって各継手弁部61、62の弁開度が変化し、安全継手60内での燃料の流れが悪くなるのを防止できる。
【0053】
さらには、上流側の燃料供給路に設けられた構成部材(例えば、配管接続部のシール部材等)や構成機器内の部品(例えば、スイベル継手17内のシール部材や、流量計13やポンプ12のパッキン等)の強度の劣化や損傷を抑制して、これら構成部材や構成機器からの油漏れも防止できる。この結果、上流側の燃料供給路の構成部材や構成機器内の部品の耐久寿命が延び、給油装置1自体のメンテナンス間隔を延ばすことができ、メンテナンス費用の低減もはかれる。
【0054】
また、ノズル側ホース部分23に所定値以上の引張力が作用した場合は、給油ホース20が破断する前に、安全継手60は、ノズル側ホース部分23に所定値以上の引張力が作用してシェアピン63が破断し、上流側継手弁部61と下流側継手弁部62との連結が図6に示すように解除され、係合部材64が外れ、上流側継手弁部61のボール弁体61dと下流側継手弁部62のボール弁体62dは共に閉弁する。これにより、給油ホース20の破断による油液の流出を防止できる。
【0055】
図7は、図4に示したホース継手ユニットの変形例の構成断面図である。
【0056】
図7に示したホース継手ユニット21は、図4に示したホース継手ユニット21について安全継手60の下流側継手弁部62のボール弁体62dを無くして、補助弁機構50の弁体54が安全継手60の下流側継手弁部62のボール弁体62dを兼用する構成としたものである。この場合、補助弁機構50は、ノズル側ホース部分23に所定値以上の引張力が作用してシェアピン63が破断し、上流側継手弁部61と下流側継手弁部62との連結が解除された場合にも、ばね部材55の付勢力により弁体54が閉弁し、給油ホース20の破断による油液の流出も防止できる。
【0057】
なお、図7に示した例では、ホース継手ユニット21は、安全継手60の下流側継手弁部62を有する構成としたが、補助弁機構50の外部接続部51dを下流側継手弁部62の被装着部62aとして構成することで、下流側継手弁部62自体を無くし、補助弁機構50及び安全継手60を含むホース継手ユニット21の小型化をはかることができる。
【0058】
図8は、図4に示したホース継手ユニットの別の変形例の構成断面図である。
図9は、図8に示したホース継手ユニットにおける共用弁機構部分の拡大構成断面図である。
【0059】
図8に示したホース継手ユニット21は、図4に示したホース継手ユニット21において、補助弁機構50の圧力逃がし通路56に、安全継手60の非分離状態で給油ノズル30側の燃料の圧力が安全継手60の分離部側の燃料の圧力よりも高いときに両者の差圧を減少させるように開弁する調整弁が設けた構成に該当する。
【0060】
加えて、図8に示したホース継手ユニット21は、図4に示したホース継手ユニット21において、図7に示したホース継手ユニット21の場合と同様に、安全継手60の下流側継手弁部62のボール弁体62dを無くして、補助弁機構50の弁体54が安全継手60の下流側継手弁部62のボール弁体62dを兼用した構成に該当する。
【0061】
図8において、ホース継手ユニット21は、上流側継手弁部71と、下流側継手弁部72とを、液密にかつ分離可能に、一体的に接続した構成になっている。そして、上流側継手弁部71は、図4に示した安全継手60の上流側継手弁部61として機能し、下流側継手弁部72は、図4に示した安全継手60の下流側継手弁部61として機能するとともに、さらに図4に示した補助弁機構50としても機能する構成になっている。したがって、上流側継手弁部71と下流側継手弁部72との接続部は、図4に示した安全継手60の分離部に該当する。
【0062】
その結果、ホース継手ユニット21は、上流側継手弁部71と下流側継手弁部72とが分離された状態で、上流側継手弁部71は、上流側の本体内燃料供給路を含む、本体側ホース部分22側に収容された油液の流出を防止し、下流側継手弁部72は、ノズル側ホース部分23側に収容された油液の流出を防止する。また、ホース継手ユニット21は、上流側継手弁部71と下流側継手弁部72とが接続されている状態、すなわち安全継手60としての非分離状態で、下流側継手弁部72は、給油ノズル30を起点と発生した瞬間的かつ急激な圧力上昇が上流側の燃料供給路へ伝播するのを阻止する。
以下、このホース継手ユニット21について、詳細に説明する。
【0063】
ホース継手ユニット21の上流側継手弁部71は、貫通孔71cが形成された筒状ケーシングを有し、その孔軸方向に沿った一端側の内周部分が、ホース継手ユニット21の一端側の外部接続部71aとなり、孔軸方向に沿った他端側の外周部分が下流側継手弁部72に対する装着部71bとなっている。また、貫通孔71cの孔軸方向に沿った装着部71b側の孔内には、孔軸方向に沿った一端側から他端側に向かって、ボール弁体71dの収容部71e、この収容部71eに収容されたボール弁体71dが離着座する弁座部71fが順次形成された構成になっている。そして、収容部71e内のボール弁体71dは、貫通孔71c内の収容部71eと外部接続部71aとの境界段部に一端側が支持され、他端側がボール弁体71dに係合しているばね部材71gの付勢力によって、弁座部71fに対する着座方向に、常時、付勢されている構成になっている。
【0064】
一方、ホース継手ユニット21の下流側継手弁部72は、中間部に装着部71bよりも径が小さい境界部72cを有する段付き貫通孔が形成された筒状ケーシングを有し、その境界部72cを挟んで、孔軸方向に沿った一端側の内周部分が、上流側継手弁部71の装着部71bが装着される装着孔72aとなっており、他端側の内周部分が、図4に示した安全継手60の下流側継手弁部62と補助弁機構50を兼ねる共用弁機構80が設けられる収容部72bになっている。
【0065】
そして、ホース継手ユニット21の上流側継手弁部71と下流側継手弁部72とは、上流側継手弁部71の装着部71bを下流側継手弁部72の装着孔72aに液密に嵌合させて、シェアピン73により抜け止め係止がなされ、一体的に連結されている。また、この上流側継手弁部71と下流側継手弁部72との接続に当たっては、上流側継手弁部71と下流側継手弁部72との孔軸に対して垂直な対抗面間に、上流側継手弁部71のボール弁体71dを収容部71e内の弁座部71fから離れた場所にばね部材71gの付勢力に抗して位置させる係合部材74が挟持され、配置された構成になっている。なお、係合部材74は、図4図5に示した係合部材64と同様な形状構成である。図8では、係合部材74は、図4図5に示した係合部材64が90°回転した姿勢状態で、図面上に表れている。
【0066】
共用弁機構80は、図示の例では、弁体84が変位可能に装着される弁体支持部材82と、弁体84が支持された弁体支持部材82を下流側継手弁部72の収容部72bに対して固定保持する保持部材83とを有して構成され、弁座部81は下流側継手弁部72の境界部72cの他端側の開放縁部によって構成されている。
【0067】
弁体支持部材82は、下流側継手弁部72の他端側から段付き貫通孔の収容部72b内に挿設可能な筒状ケーシングを有して形成されている。その筒状ケーシングの軸部分には、弁体84の弁軸84aが挿入されて、弁軸84aを摺動可能に案内支持する案内筒部82aが、筒状ケーシングの内周面から立設された脚部82bによって支持されている。これにより、案内筒部82aに支持された弁体84の弁軸84aは、下流側継手弁部72の境界部72cにより形成された環状の弁座部81と同軸になるように支持され、案内筒部82aの周りには複数の貫通流路82cが形成された構成になっている。弁体支持部材82は、一端側の環状端面が、下流側継手弁部72の収容部72bの内周面に形成された被当接段部72dとの係合部82dとなり、他端側の環状端面が、保持部材83との被当接部82eとなっている。
【0068】
保持部材83は、貫通孔83cが形成された筒状ケーシングを有し、その孔軸方向に沿った一端側の外周部分は、下流側継手弁部72の収容部72bの内周面に形成された被装着部72gに対する装着部83aとなり、孔軸方向に沿った他端側の外周部分は、ホース継手ユニット21の他端側の外部接続部83bとなっている。
【0069】
弁体84は、弁体支持部材82によってその弁軸84aを案内支持されて、弁座部81に対して離着座可能に、下流側継手弁部72の収容部72b内に収容される。弁体84には、弁体支持部材82の案内筒部82aと脚部82bとの接合部との間に、ばね部材85が縮設されている。そして、弁体84は、このばね部材85によって、常時、着座方向に付勢されている。
【0070】
図示の例では、ばね部材85の付勢力の大きさは、例えば、前述した本体内燃料供給路からホース継手ユニット21の上流側継手弁部71へ油液の送液が行われている場合は、弁体84が弁座部81から離座して開弁し、本体内燃料供給路からホース継手ユニット21の上流側継手弁部71へ油液の送液が行われていない場合は、弁体84が弁座部81に着座して閉弁し得る付勢力の大きさに設定されている。
【0071】
加えて、図示の例では、図4に示した安全継手60の下流側継手弁部62と補助弁機構50を兼ねる共用弁機構80には、弁体84の上流側と下流側とを連通する圧力逃がし通路91と、この圧力逃がし通路91に設けられた調整弁92とを含む圧力逃がし機構90が設けられている。
【0072】
図8及び9に示す例では、圧力逃がし通路91は、弁体支持部材82に形成された弁体支持部材通路部91aと、弁体84に形成された弁体通路部91bとを連通した構成になっている。弁体通路部91bは、弁体84に弁軸84aの延設方向に沿って形成された貫通孔により構成され、貫通孔は、弁体84の、下流側継手弁部72の境界部72cに臨む側の孔部分が弁軸84a側の孔部分よりも大径になった段付き貫通孔になっている。
【0073】
弁体通路部91bの、段部を含む段付き貫通孔の大径部は、調整弁収容部91cを形成し、調整弁92が設けられている。調整弁92は、段部に設けられた弁座リング92aと、弁座リングに離着座可能なボール弁体92bと、弁座リング92aに着座する方向にボール弁体92bを付勢するばね部材92cと、ばね部材92cを介してボール弁体92bを調整弁収容部91c内に支持する支持部材92dとからなり、止め輪92eによって調整弁収容部91c内からの抜け止めがなされ、調整弁収容部91c内に保持されている。
【0074】
調整弁92は、ホース継手ユニット21の下流側のノズル側ホース部分23内の油液の液圧が、上流側の本体側ホース部分22内の油液の液圧に対し、ばね部材92cの付勢力に基づき設定される所定値以上高くなると、ボール弁体92bが弁座リング92aから離座して開弁する。これにより、ホース継手ユニット21の下流側のノズル側ホース部分23内の液圧が高い油液が、弁体支持部材通路部91a及び弁体通路部91bからなる圧力逃がし通路91を介して小量ずつ適宜時間をかけて、液圧の低い上流側の本体側ホース部分22内に流通開放される。また、調整弁92は、ホース継手ユニット21の下流側のノズル側ホース部分23内の油液と上流側の本体側ホース部分22内の油液との差圧が所定値よりも小さくなると、ボール弁体92bが弁座リング92aに着座して閉弁する。なお、図示の実施例では、圧力逃がし通路91を弁体支持部材通路部91aと支持部材通路部91aとに分けて構成したが、圧力逃がし通路91を、図2に示した圧力逃がし通路56のように弁体支持部材通路部91aだけで構成することも、下流側継手弁部72の周壁部に弁体84の下流側と上流側とを連通するように形成すること等も可能である。また、調整弁92の構成も、ボール弁体92bを用いた図示の構成に限定されるものではない。
【0075】
次に、本実施例の給油装置1において、ホース継手ユニット21が共用弁機構80を有する構成の実施例について、図8、9とともに図10~12に基づき説明する。
図10は、図8に示したホース継手ユニットの、給油ノズルからの油液吐出状態の構成断面図である。
図11は、図8に示したホース継手ユニットの、給油ノズルを起点とした瞬間的かつ急激な圧力上昇が発生した際の構成断面図である。
図12は、図8に示したホース継手ユニットの、安全継手が分離した際の構成断面図である。
【0076】
図1に示した給油装置1では、ホース継手ユニット21における上流側継手弁部71の外部接続部71aは本体側ホース部分22と接続され、下流側継手弁部72の外部接続部83b、すなわち下流側継手弁部72の収容部72bに設けられた共用弁機構80の保持部材83の外部接続部83bはノズル側ホース部分23と接続され、ホース継手ユニット21は、給油ホース20の途中に配設された構成になっている。
【0077】
本実施例の給油装置1によれば、共用弁機構80は、前述した本体内燃料供給路から油液の送液が行われている場合は、図10に示すように弁体84が弁座部81から離座して開弁し、下流側継手弁部72の段付き貫通孔からなる流路を連通する。一方、共用弁機構80は、本体内燃料供給路から油液の送液が行われていない場合は、図8に示すように弁体84が弁座部81に着座して閉弁し、下流側継手弁部72の段付き貫通孔からなる流路を遮断するようになっている
【0078】
また、ホース継手ユニット21は、ノズル側ホース部分23に所定値以上の引張力が作用してシェアピン73が破断され、上流側継手弁部71と下流側継手弁部72との連結が解除されない限りは、両継手弁部71、72の結合状態は保持され、上流側継手弁部71のボール弁体71dは、係合部材74によって開弁状態が保持され、本体内燃料供給路から油液の送液が行われている場合は、ノズル側ホース部分23に油液が流通可能になっている。
【0079】
この本体内燃料供給路から油液の送液が行われている状態において、給油ノズル30を起点とした瞬間的かつ急激な圧力上昇が発生しても、給油ホース20の途中に設けたホース継手ユニット20の共用弁機構80が作動して、図11に示すように弁体84を弁座部81に着座させて閉弁し、下流側継手弁部72の段付き貫通孔からなる流路を遮断する。これにより、本体内燃料供給路を含む、共用弁機構80に対して上流側の燃料供給路内には、この給油ノズル30を起点として瞬間的かつ急激に上昇した圧力が安全継手60に伝播されてしまうことを防止できる。
【0080】
したがって、瞬間的かつ急激に上昇した圧力がホース継手ユニット20の分離部を含む上流側継手弁部71に作用することにより、ホース継手ユニット20の安全継手60としての耐久年数が短くなってしまうのを防止できる。具体的には、瞬間的かつ急激に上昇した圧力がホース継手ユニット20の分離部を含む上流側継手弁部71に繰り返し作用することにより、安全継手60としてのホース継手ユニット20が、本来、作動する設定値以下の普段の作業時の引張力で誤動作してしまう(例えば、シェアピン63の経年劣化が促進される等して、給油ノズル30が車両の給油口に挿入された状態で車輌が出車してしまった場合のような異常事態でないにも係わらず、その上流側継手弁部61と下流側継手弁部62とが分離してしまう)ことを防止できる。また、係合部材74が変形してしまう等によって各継手弁部61の弁開度が変化し、ホース継手ユニット21内での燃料の流れが悪くなるのを防止できる。
【0081】
さらには、上流側の燃料供給路に設けられた構成部材(例えば、配管接続部のシール部材等)や構成機器内の部品(例えば、スイベル継手17内のシール部材や、流量計13やポンプ12のパッキン等)の強度の劣化や損傷を抑制して、これら構成部材や構成機器からの油漏れも防止できる。この結果、上流側の燃料供給路の構成部材や構成機器内の部品の耐久寿命が延び、給油装置1自体のメンテナンス間隔を延ばすことができ、メンテナンス費用の低減もはかれる。
【0082】
そして、給油ノズル30を起点とした瞬間的かつ急激な圧力上昇がホース継手ユニット20の共用弁機構80によって上流側に伝搬防止されることに伴って圧力が上昇する、共用弁機構80の下流側のノズル側ホース部分23の液圧は、共用弁機構80に設けられた圧力逃がし機構90によって、圧力逃がし通路91を介して小量ずつ適宜時間をかけて、液圧の低い上流側の本体側ホース部分22内に流通開放される。
【0083】
したがって、給油ノズル30を起点とした瞬間的かつ急激な圧力上昇によって上昇した共用弁機構80の下流側のノズル側ホース部分23の液圧も、徐々に減圧されるようになっており、圧力上昇状態のまま維持され続けるわけではないので、結果的に、下流側の燃料供給路に設けられた構成部材(例えば、配管接続部のシール部材等)や構成機器内の部品(例えば、給油ノズル30内のシール部材やパッキン等)の強度の劣化や損傷を抑制することも可能になる。
【0084】
また、ノズル側ホース部分23に所定値以上の引張力が作用した場合は、給油ホース20が破断する前に、ホース継手ユニット20は、ノズル側ホース部分23に所定値以上の引張力が作用してシェアピン73が破断し、上流側継手弁部71と下流側継手弁部72との連結が図12に示すように解除され、係合部材74が外れ、上流側継手弁部71のボール弁体71dと下流側継手弁部72の弁体84は共に閉弁する。これにより、給油ホース20の破断による油液の流出を防止できる。
【0085】
加えて、上流側継手弁部71に対して分離された下流側継手弁部72では、圧力逃がし機構90の調整弁92が、ボール弁体92bがばね部材92cの付勢力を受けて弁座リング92aに着座して圧力逃がし通路91の連通を遮断するので、ノズル側ホース部分23の油液の圧力逃がし通路91を介しての漏出も防ぐことができる。
【0086】
本開示に係る燃料供給装置は、図1に示した地上設置式の給油装置に限らず、例えば懸垂式の給油装置等、各種燃料の燃料供給装置に適用に可能である。また、補助弁機構50や圧力逃がし機構90等の具体的構成も、燃料供給ノズルを起点とした瞬間的かつ急激な圧力上昇の伝搬を阻止できる構成であれば、上述した実施例の具体的構成に限定されない。
【0087】
なお、上記図4図7を用いた説明では、補助弁機構50は、安全継手60と接続された構造であったが、これに限らず、安全継手60より下流側のノズル側ホース部分23の途中や先端に接続されて設けてもよいことはもちろんである。
【符号の説明】
【0088】
1 給油装置、
10 給油装置本体(給油装置筐体)、 11 ポンプモータ、 12 ポンプ、
13 流量計、 14 吸込口配管、 15 流量発信器、 16 流出口配管、
17 スイベル継手、 18 ノズル収納部、 19 ノズルスイッチ、
20 給油ホース、 21 ホース継手ユニット、 22 本体側ホース部分、
23 ノズル側ホース部分、 30 給油ノズル、 31 操作レバー、
32 ノズル本体、 33 吐出パイプ、 34 エルボ継手、
40 給油制御装置、 41 給油情報表示器、 50 補助弁機構、
51 弁座部材、 51a 弁座部、 51b 被当接段部、 51c 貫通孔、
51d 外部接続部、 51e 被装着部、 52 弁体支持部材、
52a 案内筒部、 52b 脚部、 52c 係合部、 52d 被当接部、
53 保持部材、 53a 装着部、 53b 外部接続部、 53c 貫通孔、
54 弁体、 54a 弁軸、 55 ばね部材、 56 圧力逃がし通路、
60 安全継手、 61 上流側継手弁部、 61a 外部接続部、
61b 装着部、 61c 貫通孔、 61d ボール弁体、 61e 収容部、
61f 弁座部、 61g ばね部材、 62 下流側継手弁部、
62a 被装着部、 62b 外部接続部、 62c 貫通孔、
62d ボール弁体、 62e 弁座部、 62f 収容部、 62g ばね部材、
63 シェアピン、 64 係合部材、 71 上流側継手弁部、
71a 外部接続部、 71b 装着部、 71c 貫通孔、 71d ボール弁体、
71e 収容部、 71f 弁座部、 71g ばね部材、 72 下流側継手弁部、
72a 装着孔、 72b 収容部、 72c 境界部、 72d 被当接段部、
73 シェアピン、 74 係合部材、 80 共用弁機構、 81 弁座部、
82 弁体支持部材、 82a 案内筒部、 82b 脚部、 82c 貫通流路、
82d 係合部、 82e 被当接部、 83 保持部材、 83a 装着部、
83b 外部接続部、 83c 貫通孔、 84 弁体、 84a 弁軸、
85 ばね部材、 90 圧力逃がし機構、 91 圧力逃がし通路、
91a 弁体支持部材通路部、 91b 弁体通路部、 91c 調整弁収容部、
92 調整弁、 92a 弁座リング、 92b ボール弁体、 92c ばね部材、
92d 支持部材、 92e 止め輪。
図1
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図3
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図5
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図12