(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-10
(45)【発行日】2022-08-19
(54)【発明の名称】移床式砂ろ過装置の固着砂層破砕方法、移床式砂ろ過装置および移床式砂ろ過装置の運転方法
(51)【国際特許分類】
B01D 29/66 20060101AFI20220812BHJP
B01D 24/46 20060101ALI20220812BHJP
B01D 24/00 20060101ALI20220812BHJP
【FI】
B01D29/38 540
B01D29/38 510B
B01D29/08 520A
B01D29/08 530C
B01D29/08 540A
(21)【出願番号】P 2018195671
(22)【出願日】2018-10-17
【審査請求日】2021-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000133032
【氏名又は名称】株式会社タクマ
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【氏名又は名称】沖中 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100097755
【氏名又は名称】井上 勉
(72)【発明者】
【氏名】奥山 雄二
(72)【発明者】
【氏名】奥田 正彦
(72)【発明者】
【氏名】土井 知之
【審査官】谷本 怜美
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-126408(JP,A)
【文献】実開昭56-095317(JP,U)
【文献】特開2014-069130(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 24/00-37/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ろ過槽にろ過砂を充填して形成されるろ過層に懸濁物質を含む原水を流入させることでその原水をろ過処理するとともに、ろ過処理に供された前記ろ過砂をエアリフトポンプによって上昇させながら洗浄し、洗浄した前記ろ過砂を前記ろ過層に戻すようにした移床式砂ろ過装置において、
前記原水を前記ろ過層へと流出させる複数本の原水分散板に合わせて配される複数のノズルから、前記原水に含まれる懸濁物質によって前記ろ過砂が固着して生成される固着砂層に向けて流体を噴射することを特徴とする移床式砂ろ過装置の固着砂層破砕方法。
【請求項2】
ろ過槽にろ過砂を充填して形成されるろ過層に懸濁物質を含む原水を流入させることでその原水をろ過処理するとともに、ろ過処理に供された前記ろ過砂をエアリフトポンプによって上昇させながら洗浄し、洗浄した前記ろ過砂を前記ろ過層に戻すようにした移床式砂ろ過装置において、
前記原水を前記ろ過層へと流出させる複数本の原水分散板に合わせて配される複数のノズルから、前記原水に含まれる懸濁物質によって前記ろ過砂が固着して生成される固着砂層に向けて流体を噴射する流体噴射器を備えることを特徴とする移床式砂ろ過装置。
【請求項3】
請求項2に記載の移床式砂ろ過装置の運転方法であって、
前記流体噴射器から前記固着砂層への流体の噴射でその固着砂層を破砕した後に、前記ろ過層への前記原水の流入を停止または排水量未満となるように調整した原水の流入量とした状態で、前記ろ過砂を前記エアリフトポンプによって上昇させながら洗浄しその洗浄したろ過砂を前記ろ過層に戻す動作を繰り返し連続的に行うことを特徴とする移床式砂ろ過装置の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ろ過砂により形成されるろ過層で懸濁物質を含む原水をろ過処理するとともに、ろ過処理に供されたろ過砂を洗浄後にろ過層に戻して再びろ過処理に供するように循環させる構成の移床式砂ろ過装置の固着砂層破砕方法、移床式砂ろ過装置および移床式砂ろ過装置の運転方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の従来の移床式砂ろ過装置として、例えば
図6(a)および(b)に示されるようなものがある(特許文献1参照)。この
図6(a)および(b)に示される移床式砂ろ過装置101は、ろ過槽102と、エアリフトポンプ103とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【0004】
ろ過槽102の内部には、ろ材としてのろ過砂が充填され、充填されたろ過砂によってろ過層104が形成されている。ろ過槽102の中心部には、原水流通路を有する二重管構造の筒体106に原水流出器107および案内シュート108がそれぞれ取着されてなる内部装置110が配設されている。
ここで、原水流出器107は、懸濁物質(SS)を含んだ被処理水としての原水をろ過層104内に流入させるためのものあり、三角または五角形状の断面で下面側が開放された複数本(本例では8本)の原水分散板111により構成されている。これら原水分散板111は、筒体106の周方向に等角度間隔で放射状に配置されて原水流通路と連通状態で筒体106の下端部に接合されている。
【0005】
エアリフトポンプ103は、エアリフト管115と、圧力開閉式エアコンプレッサ116(以下、単に「コンプレッサ116」と称する。)とを備えて構成され、エアリフト管115の下端部には、コンプレッサ116からの圧縮空気(エアリフト空気)を供給する空気配管117が接続されている。この空気配管117に介設された開閉弁118を開くことにより、コンプレッサ116から空気配管117を介してエアリフト管115内にエアリフト空気が吹き込まれ、ろ過砂を水と共にエアリフト管115で上昇させながら攪拌して洗浄することができるようになっている。
【0006】
この移床式砂ろ過装置101においては、当該装置101の前段に配設された例えば最終沈殿池越流トラフ120からの原水が原水流入管121および原水流通路を介して原水流出器107に送り込まれ、複数(8本)の原水分散板111によってろ過層104の全域に均一に分散されるようになっている。そして、各原水分散板111から流出してろ過層104内に流れ込んだ原水は、ろ過層104を上部へと流れる間に含有SSがろ過砂に捕捉されてろ過処理される。このろ過処理によって汚濁したろ過砂は、ろ過槽102の底部からエアリフト管115によって水と共に汲み上げられ、汲み上げられる際にろ過砂が揉まれて捕捉したSSが剥離・洗浄され、洗浄されたろ過砂は再びろ過層104に戻される。このように、ろ過砂の循環と洗浄を連続的に行うことにより、ろ過性能を安定的に保つことができる。
【0007】
上記の移床式砂ろ過装置101において、ろ過層104内に流入する原水の含有SS濃度が高い場合(あくまでも設計値内で高いという場合)には、エアリフト管115内に吹き込むエアリフト空気量を増加させてろ過槽104内でのろ過砂の循環速度(循環量)を上げることにより、エアリフトポンプ115によるSSの排出量と、ろ過層104で捕捉されるSSの捕捉量とのバランスを保つことができる。
【0008】
しかし、極めて稀にではあるが、例えば最終沈殿池越流トラフ120の一斉清掃等が原因で、含有SS濃度が短時間に急激かつ極端に上昇(例えば、設計定格値の数十倍以上)した汚水がろ過層104内に流入した場合、エアリフトポンプ115によるSSの排出量よりも、ろ過層104で捕捉されるSSの捕捉量の方が多くなる。
このとき、ろ過層104における原水の流入箇所の近傍、つまり原水流出器107の各原水分散板111の下面側において、ろ過砂で捕捉したSSが堆積し、
図7(a)および(b)に示されるように、堆積したSSとろ過砂とが固着して固着砂層125が生成される場合がある。固着砂層125は次第に大きくなり、最終的には、原水分散板111と案内シュート108との間でアーチ構造を形成して遂にはろ過槽102と案内シュート108との間の通路が最も狭くなった部分126(以下、「狭路部126」と称する。)を塞ぐようなブリッジ現象が発生する。このブリッジ現象が発生すると、狭路部126を塞ぐように張り出した固着砂層125によってエアリフト管115の下端側に設けられた吸込み部115aに向かうろ過砂の流れが阻害されるため、ろ過砂がエアリフト管115の吸込み部115aに向けて落下することができなくなり、遂にはエアリフト管115で吸い上げられるろ過砂がなくなり、エアリフト管115は単に水の吸い上げを行うのみになる。
【0009】
このような状態では、原水分散板111と案内シュート108との間で形成されている固着砂層125は、移動せずにそのままであり、ろ過層104のろ過砂は循環せず、原水分散板111からろ過層104へと流入してくるSSは堆積し続けることになり、ろ過砂の循環・洗浄が不可能となる。また、SSの堆積によるろ過層104の圧力損失が上昇する。
【0010】
上記の移床式砂ろ過装置101では、原水分散板111と案内シュート108との間に生じた前述のブリッジ現象に起因して連続ろ過および連続洗浄が不可能となった状態を解消するために、当該装置101を一旦停止させ、ろ過槽102内のSSを含んだ水を排水し、全てのろ過砂をろ過槽102内から抜き取り、ブリッジ現象を生じさせている固着砂層125を除去するといった多大な労力を必要とする作業を行わなければならないという問題点がある。
【0011】
ところで、上記作業で抜き取ったろ過砂は、固着砂層125がある部分をほぐしたり、捕捉したSSを分離・洗浄したりする必要があるが、これらを移床式砂ろ過装置101の外部で行うためには、仮設タンク等で攪拌・水洗い等を行わなければならず、非常に手間がかかる。
【0012】
このため、ろ過層の復旧時間を最短にするために、新品のろ過砂をろ過槽102内に規定量投入しなければならない場合が多く、新品のろ過砂を投入する場合には、SSを含んだろ過砂の処分が必要であるが、例えばマルチモジュールタイプの移床式砂ろ過装置の場合、使用されるろ過砂が大量であるため、その処分費用も多大なものになるという問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、前述のような問題点に鑑みてなされたもので、ろ過層内に生成した固着砂層を破砕することができ、これによってろ過砂の循環を回復させてろ過性能を安定的に保つことができる移床式砂ろ過装置の固着砂層破砕方法、移床式砂ろ過装置および移床式砂ろ過装置の運転方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するために、第1発明による移床式砂ろ過装置の固着砂層破砕方法は、
ろ過槽にろ過砂を充填して形成されるろ過層に懸濁物質を含む原水を流入させることでその原水をろ過処理するとともに、ろ過処理に供された前記ろ過砂をエアリフトポンプによって上昇させながら洗浄し、洗浄した前記ろ過砂を前記ろ過層に戻すようにした移床式砂ろ過装置において、
前記原水に含まれる懸濁物質によって前記ろ過砂が固着して生成される固着砂層に向けて流体を噴射することを特徴とするものである。
【0015】
次に、第2発明による移床式砂ろ過装置は、
ろ過槽にろ過砂を充填して形成されるろ過層に懸濁物質を含む原水を流入させることでその原水をろ過処理するとともに、ろ過処理に供された前記ろ過砂をエアリフトポンプによって上昇させながら洗浄し、洗浄した前記ろ過砂を前記ろ過層に戻すようにした移床式砂ろ過装置において、
前記原水に含まれる懸濁物質によって前記ろ過砂が固着して生成される固着砂層に向けて流体を噴射する流体噴射器を備えることを特徴とするものである。
【0016】
次に、第3発明による移床式砂ろ過装置の運転方法は、
第2発明に係る移床式砂ろ過装置の運転方法であって、
前記流体噴射器から前記固着砂層への流体の噴射でその固着砂層を破砕した後に、前記ろ過層への前記原水の流入を停止または排水量未満となるように調整した原水の流入量とした状態で、前記ろ過砂を前記エアリフトポンプによって上昇させながら洗浄しその洗浄したろ過砂を前記ろ過層に戻す動作を繰り返し連続的に行うことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
第1発明の移床式砂ろ過装置の固着砂層破砕方法および第2発明の移床式砂ろ過装置によれば、原水に含まれる懸濁物質(SS)によってろ過砂が固着して生成される固着砂層に向けて流体が噴射されるので、ろ過層内に生成した固着砂層を破砕することができ、これによってろ過砂の循環を回復させてろ過性能を安定的に保つことができる。
【0018】
また、第3発明の移床式砂ろ過装置の運転方法によれば、噴射した流体による固着砂層の破砕後に、SSがろ過水側へ混入した場合、ろ過層への原水流入停止または排水量未満となるように調整した原水の流入量とし、流体噴射による固着層破砕後、流体噴射を停止する状態を継続することにより、SSは徐々に沈降しろ過層まで沈降する。
この間ろ過層はエアリフトポンプによる連続洗浄によりSS除去されるので、流体を噴射することによって、ろ過層から吹き上げられたSSはろ過水側に残ることがなく、排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る移床式砂ろ過装置を示す模式図で、(a)は横断面図、(b)は縦断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の第2の実施形態に係る移床式砂ろ過装置を示す模式図で、(a)は横断面図、(b)は縦断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の第3の実施形態に係る移床式砂ろ過装置を示す模式図で、(a)は横断面図、(b)は縦断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の第4の実施形態に係る移床式砂ろ過装置を示す模式図で、(a)は横断面図、(b)は縦断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の第5の実施形態に係る移床式砂ろ過装置を示す模式図で、(a)は横断面図、(b)は縦断面図である。
【
図6】
図6は、従来の移床式砂ろ過装置の正常な状態を示す模式図で、(a)は横断面図、(b)は縦断面図である。
【
図7】
図7は、従来の移床式砂ろ過装置のろ過砂循環不良の状態を示す模式図で、(a)は横断面図、(b)は縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明による移床式砂ろ過装置の固着砂層破砕方法、移床式砂ろ過装置および移床式砂ろ過装置の運転方法の具体的な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0021】
〔第1の実施形態〕
図1には、本発明の第1の実施形態に係る移床式砂ろ過装置を示す模式図で、(a)には横断面図が、(b)には縦断面図がそれぞれ示されている。
【0022】
<移床式砂ろ過装置の概略説明>
図1に示される移床式砂ろ過装置1Aは、ろ過槽2とエアリフトポンプ3とを備え、ろ過槽2にろ材としてのろ過砂が充填されて形成されるろ過層4に、懸濁物質(SS)を含んだ被処理水としての原水を上向きに流すことでその原水をろ過処理するとともに、ろ過処理に供されたろ過砂をエアリフトポンプ3で上昇させながら洗浄し、洗浄したろ過砂をろ過層4に戻すように構成されている。
【0023】
<ろ過槽の説明>
ろ過槽2は、上下方向に延びる筒状胴部5と、この筒状胴部5の下端側に一体的に連設される漏斗状底部6とからなり、ろ過層4を形成するろ過砂が筒状胴部5の上下方向中間位置から漏斗状底部6に亘って充填されている。なお、ろ過槽2内におけるろ過層4の上面から筒状胴部5の上端部位置に至る部分には、ろ過層4でろ過処理された後のろ過水によって処理水層7が形成されている。
【0024】
<内部装置の説明>
ろ過層4の中心部には、内部装置10が配設されている。この内部装置10は、主に、原水流出器11、筒体12および案内シュート13により構成されている。
【0025】
原水流出器11は、ろ過層4の上下方向の案内シュート13の上部に埋め込まれるように配されている。この原水流出器11は、三角または五角形状の断面で下面側が開放された複数本(本例では8本)の原水分散板15により構成されている。これら原水分散板15は、筒体12の周方向に等角度間隔で放射状に配置されて後述する原水流通路18と連通状態で筒体12の下端部に接合され、これら原水分散板15から原水が均一にろ過層4へと流出するようになっている。
筒体12は、原水流出器11の上方に向かって真っ直ぐに延びる内管17および外管18よりなる二重管構造体であり、外管18には、上端側が閉鎖され下端側が各原水分散板15に繋がる原水流通路が形成されている。この原水流通路には、移床式砂ろ過装置1Aの前段に配設された例えば最終沈殿池越流トラフ20からの原水が原水流入管21を介して送り込まれるようになっている。
案内シュート13は、原水流出器11の下側に位置するように筒体12の下端に一体的に接合されており、原水流出器11の下方に向かって末広がりの傘形状部材からなり、ろ過槽2内のろ過砂が均一に下向きに移動するように案内する役目をする。
【0026】
<エアリフトポンプの説明>
エアリフトポンプ3は、筒体12の内管17の内部を通してろ過槽2の中心部に配されてろ過槽2の上部から下部に亘って延びるエアリフト管25と、このエアリフト管25に対する圧縮空気(エアリフト空気)の供給源としての圧力開閉式エアコンプレッサ26(以下、単に「コンプレッサ26」という。)とを備えて構成されている。
【0027】
エアリフト管25の下端部には、コンプレッサ26からのエアリフト空気を供給するエアリフト空気配管27が接続されている。このエアリフト空気配管27には、その管路を開閉しその管路内を流れるエアリフト空気の流量を調節する開閉弁28が介設されており、この開閉弁28を開くことにより、コンプレッサ26からエアリフト空気配管27を介してエアリフト管25内にエアリフト空気が吹き込まれ、ろ過砂を水と共にエアリフト管25で上昇させながら攪拌して洗浄することができるようになっている。
【0028】
<ろ過処理の説明>
移床式砂ろ過装置1Aにおいては、最終沈殿池越流トラフ20からの原水が原水流入管21、原水流通路18を介して原水流出器11に送り込まれ、複数(8本)の原水分散板15によってろ過層4の全域に均一に分散されるようになっている。そして、各原水分散板15から流出してろ過層4内に流れ込んだ原水は、ろ過層4を上部へと流れる間に含有SSがろ過砂に捕捉されてろ過処理され、ろ過処理後のろ過水は、ろ過槽2の上部に設けられた集水トラフ29から図示されないろ過水流出管を介して次の処理装置(図示省略)へと送られる。
【0029】
<汚濁ろ過砂の洗浄・循環・分離処理の説明>
上記のろ過処理において、ろ過層4で原水をろ過することによってろ過砂は汚濁されるが、この汚濁したろ過砂は、ろ過槽2の底部からエアリフト管25によって水と共に汲み上げられ、その際にエアリフト管25内でろ過砂が揉まれて捕捉したSSが剥離される。エアリフト管25で汲み上げられたろ過砂と水は、内部装置10の上端部に装着された分離器30へと導入されて分離処理される。
分離器30で分離処理されたろ過砂は、ラビリンス通路を備えたサンドウォッシャー31でろ過水と対向流で洗浄されて再びろ過層4へ戻される。このように、ろ過砂の循環と洗浄を連続的に行うことにより、ろ過性能を安定的に保つことができる。
分離器30で分離処理された水は、多量のSSを含んでおり、洗浄排水としてオリフィスプレート32の孔から洗浄排水管33を介して装置外へと排出される。
【0030】
ところで、ろ過層4において、原水分散板15と案内シュート13との間の部分には、後述するような原因で固着砂層35が生成することがあり、しかも、ろ過槽2の漏斗状底部6の内壁面と、案内シュート13の下端側外周縁との間の部分は、原水分散板15と案内シュート13との間のろ過砂がエアリフト管25の下端側に設けられている吸込み部25aに向けて流れる際の通路中で最も狭くなる部分36(以下、「狭路部36」と称する。)であり、原水分散板15と案内シュート13との間で生成した固着砂層35が成長してその狭路部36を塞ぐようなことになると、エアリフト管25の吸込み部25aに向かうろ過砂の流れが著しく阻害されることになる。
そこで、第1の実施形態の移床式砂ろ過装置1Aには、原水分散板15の下方の狭路部36に向けて、流体(本例では圧縮空気)を噴射する流体噴射器50が装備されている。
【0031】
<流体噴射器の説明>
流体噴射器50は、ろ過槽2の漏斗状底部6の外側にその漏斗状底部6を取り囲むように配置される環状空気配管(環状流体配管)51と、複数(8本)の原水分散板15の配置に合わせてろ過槽2の漏斗状底部6の周方向に等角度間隔でその漏斗状底部6と環状空気配管51との間に配される複数(8個)の噴射ノズル52とを備えて構成されている。
各噴射ノズル52は、その先端側に設けられた噴射口を各原水分散板15の下方の狭路部36に向けて斜め上向となるようにその先端部がろ過槽2の漏斗状底部6の壁に貫通状態で装着される一方、その基端部が環状空気配管51と連通接続されている。
環状空気配管51には、エアリフト空気配管27から分岐する分岐空気配管43が接続されている。この分岐空気配管43には、その管路を開閉しその管路内を流れる圧縮空気の流量を調節する開閉弁44が介設されており、この開閉弁44を開くことにより、コンプレッサ26からエアリフト空気配管27および分岐空気配管43を介して環状空気配管51内に圧縮空気が送り込まれ、この環状空気配管51内に送り込まれた圧縮空気が噴射ノズル52の噴射口から原水分散板15の下方の狭路部36に向けて噴射される。
なお、ここで述べたように、コンプレッサ26からの圧縮空気を分岐空気配管43を介して流体噴射器50から噴射するような態様に限定されるものではなく、コンプレッサ26とは別に独立に設けられる圧縮空気供給源(例えばコンプレッサ26と同様のもの)からの圧縮空気を流体噴射器50から噴射するようにしても良い。
また、本例では、開閉弁44が、後述する制御器45からの信号により開閉する構造のものを採用したが、これに限定されるものではなく、手動にて開閉する構造のものを採用しても良い。
【0032】
<制御手段の説明>
開閉弁44には、その弁の開閉動作を制御する制御器45が付設されている。この制御器45には、タイマ制御回路46が組み込まれている。この制御器45は、タイマ制御回路46によるタイマ設定時間Tsを超えたときに、開閉弁44に向けて弁開作動信号を送信し開閉弁44を開いて流体噴射器50を作動させ、流体噴射器50を所定時間だけ作動させたら開閉弁44に向けて弁閉作動信号を送信し開閉弁44を閉じて流体噴射器50の作動を停止させ、かつタイマ制御回路46によるタイマ設定時間Tsをリセットして再度カウントを開始する。
【0033】
以上に述べたように構成される移床式砂ろ過装置1Aにおいて、各原水分散板15から流出してろ過層4内に流入する原水の含有SS濃度が高い場合(あくまでも設計値内で高いという場合)には、エアリフト管25内に吹き込むエアリフト空気量を増加させてろ過槽2内でのろ過砂の循環速度(循環量)を上げることにより、エアリフトポンプ3によるSSの排出量と、ろ過層4で捕捉されるSSの捕捉量とのバランスを保つことができる。
【0034】
しかし、極めて稀にではあるが、例えばN(N:自然数)日おきに定期的に行われる最終沈殿池越流トラフ20の一斉清掃等が原因で、含有SS濃度が短時間に急激かつ極端に上昇(例えば、設計定格値の数十倍以上)した汚水がろ過層4内に流入した場合、エアリフトポンプ3によるSSの排出量よりも、ろ過層4で捕捉されるSSの捕捉量の方が多くなる。
このとき、ろ過層4における原水の流入箇所の近傍、つまり各原水分散板15の下面側において、ろ過砂で捕捉したSSが堆積し、堆積したSSとろ過砂とが固着して固着砂層35が生成される場合がある。固着砂層35は次第に大きくなり、最終的には、原水分散板15と案内シュート13との間でアーチ構造を形成して遂には原水分散板15の下方の狭路部36を塞ぐようなブリッジ現象が発生する。このブリッジ現象が発生すると、特に原水分散板15の下方の狭路部36を塞ぐように張り出した固着砂層35によってエアリフト管25の吸込み部25aに向かうろ過砂の流れが阻害されるため、ろ過砂がエアリフト管25の吸込み部25aに向けて落下することができなくなり、遂にはエアリフト管25で吸い上げられるろ過砂がなくなり、エアリフト管25は単に水の吸い上げを行うのみになる。
【0035】
このような状態では、ろ過層4内において原水分散板15と案内シュート13との間で形成されている固着砂層35は、移動せずにそのままであり、ろ過層4のろ過砂は循環せず、原水分散板15からろ過層4へと流入してくるSSは堆積し続けることになり、ろ過砂の循環・洗浄が不可能となる。また、SSの堆積によるろ過層4の圧力損失が上昇する。
【0036】
<固着砂層破砕動作の説明>
第1の実施形態の移床式砂ろ過装置1Aにおいては、原水分散板15と案内シュート13との間に生じた前述のブリッジ現象に起因して連続ろ過および連続洗浄が不可能となった状態を解消するために、制御器45から開閉弁44に向けて弁開作動信号を送信し開閉弁44を開いて流体噴射器50を作動させる。流体噴射器50が作動されると、コンプレッサ26からエアリフト空気配管27および分岐空気配管43を経て環状空気配管51内に送り込まれた圧縮空気が噴射ノズル52の噴射口から原水分散板15の下方の狭路部36に向けて噴射される。
【0037】
これにより、原水分散板15と案内シュート13との間でブリッジ現象を呈している固着砂層35において、原水分散板15の下方の狭路部36を塞ぐように張り出した張出部分35aがほぐされ、遂にはその噴射された圧縮空気によって破砕される。破砕された固着砂層35(35a)は、エアリフト管25の吸込み部25aに向けて落下され、エアリフト管25によってろ過水と共に汲み上げられ、汲み上げられる際に揉まれてSSが剥離・洗浄され、洗浄されたろ過砂は再びろ過層4に戻される。原水分散板15と案内シュート13との間に残された固着砂層35の残部35bは、原水分散板15と案内シュート13との間から案内シュート13の案内によって原水分散板15の下方の狭路部36へと落下され、この狭路部36において噴射ノズル72から噴射される圧縮空気で順次破砕される。こうして、原水分散板15と案内シュート13との間で生成した固着砂層35の全てが破砕されてブリッジ現象が完全に解消されることになる。
【0038】
<作用効果の説明>
第1の実施形態の移床式砂ろ過装置1Aによれば、原水分散板15の下方の狭路部36を塞ぐように張り出した固着砂層35の張出部分35aがその狭路部36に向けて噴射された圧縮空気によって破砕されるので、原水分散板15の下方の狭路部36を通ってエアリフト管25の吸込み部25aに向かうろ過砂の流れを元に戻すことができ、これによってろ過砂の循環を回復させてろ過性能を安定的に保つことができる。
したがって、従来の移床式砂ろ過装置101において、固着砂層125のブリッジ現象に起因して連続ろ過および連続洗浄が不可能となった状態を解消するために、当該装置101を一旦停止させ、ろ過槽102内のSSを含んだ水を排水し、全てのろ過砂をろ過槽102内から抜き取り、ブリッジ現象を生じさせている固着砂層125を除去するといった多大な労力を必要とする作業を行う必要がなくなり、当該装置101の外部でのろ過砂洗浄を行う必要がなくなり、新品のろ過砂を全量投入(手配)する必要がなくなり、SSを含んだろ過砂の処分も必要がなくなる。
【0039】
ここで、流体噴射器50による圧縮空気の噴射によって処理水層7側に吹き上げられたSSが処理水層7側に混入するのを防ぐために、以下のような運転を実施するのがよい(後述する第2~第5の実施形態についても同様)。
すなわち、予め原水の供給を止めて各原水分散板15からの原水の流出を停止させ、ろ過層4への原水の流入を停止、あるは排水量未満となるように調整した原水の流入量としておく。所定時間経過させてSSをろ過層4上に沈降させる。ブリッジ現象が解消されたろ過層4は、エアリフトポンプ3の作動でろ過砂が循環可能な状態となっているため、原水のろ過層4への流入を停止、あるは排水量未満となるように調整した原水の流入量とした状態で、ろ過砂をエアリフトポンプ3によって上昇させながら洗浄しその洗浄したろ過砂をろ過層4に戻す動作を繰り返し連続的に行う。これにより、全てのろ過砂が循環し、全てのSSは分離器30、オリフィスプレート32および洗浄排水管33を介して装置外へと排出されることになり、ろ過層4から吹き上げられたSSが処理水層7側に混入するのを防ぐことができる。
【0040】
さらに、固着砂層35によるブリッジ現象の一因である最終沈殿池越流トラフ20の一斉清掃がN(N:自然数)日おきに定期的に行われることが決まっており、固着砂層35によるブリッジ現象がN日おきに起きる可能性が高いことが予測されている場合には、制御器45のタイマ制御回路46によるタイマ設定時間Tsを24N時間として、定期的(N日おき)に流体噴射器50を作動させる「ブリッジ現象防止運転」を自動的に実施するようにしてもよい。こうすることにより、ブリッジ現象の発生を未然に防ぐことができる。なお、流体噴射器50から噴射する流体として圧縮空気を採用した場合には、噴射ノズル52に繋がる環状空気配管51内にろ過水の侵入が考えられ(後述する環状空気配管56,管体71についても同様)、長期的にはろ過水が腐敗する恐れがあるが、上記のように定期的に流体噴射器50を作動させることによって、環状空気配管51内のろ過水が入れ替えられるので、環状空気配管51内でろ過水が長期間留まることがなくなり、ろ過水の腐敗を未然に防ぐことができる。
また、移床式砂ろ過装置1Aの通常運転時においても、タイマ設定時間Tsを適当なn時間として、一定間隔時間(n時間)ごとに流体噴射器50を作動させる「ブリッジ現象予防運転」を自動的に実施するようにしてもよい。こうすることにより、ブリッジ現象の元となる固着砂層35の発生を未然に防ぐことができ、ブリッジ現象の発生を予防することができる。
なお、これらブリッジ現象防止運転やブリッジ現象予防運転を、後述する第2~第5の実施形態のものについても実施するのがよいのは言うまでもない。
【0041】
〔第2の実施形態〕
図2には、本発明の第2の実施形態に係る移床式砂ろ過装置を示す模式図で、(a)には横断面図が、(b)には縦断面図がそれぞれ示されている。なお、第2の実施形態において、先の第1の実施形態と同一または同様のものについては、図に同一符号を付すに留めてその詳細な説明を省略することとし、以下においては、第2の実施形態に特有の部分を中心に説明することとする(後述する第3の実施形態および第5の実施形態についても同様)。
【0042】
第2の実施形態の移床式砂ろ過装置1Bにおいて設けられている流体噴射器55は、傘形状部材からなる案内シュート13の下端部位置でその案内シュート13の内側に周壁面に沿うように全周に亘って配されて分岐空気配管43を介してエアリフト空気配管27に接続される環状空気配管(環状流体配管)56と、複数(8本)の原水分散板15の配置に合わせて案内シュート13の周方向に等角度間隔でその案内シュート13と環状空気配管56との間に配される複数(8個)の噴射ノズル57とを備えて構成されている。
各噴射ノズル57は、その先端側に設けられた噴射口を各原水分散板15と案内シュート13との間で狭路部36のやや上方位置に向けて斜め上向となるようにその先端部が案内シュート13の壁に貫通状態で装着される一方、その基端部が環状空気配管56と連通接続されている。
【0043】
第2の実施形態の移床式砂ろ過装置1Bにおいても、第1の実施形態の移床式砂ろ過装置1Aと同様に、原水分散板15と案内シュート13との間に生じた前述のブリッジ現象に起因して連続ろ過および連続洗浄が不可能となった状態を解消するために、制御器45から開閉弁44に向けて弁開作動信号を送信し開閉弁44を開いて流体噴射器55を作動させる。流体噴射器55が作動されると、コンプレッサ26からエアリフト空気配管27および分岐空気配管43を経て環状空気配管56内に送り込まれた圧縮空気が噴射ノズル57の噴射口から原水分散板15と案内シュート13との間で狭路部36のやや上方位置に向けて噴射される。
【0044】
これにより、原水分散板15と案内シュート13との間でブリッジ現象を呈している固着砂層35において、原水分散板15の下方の狭路部36を塞ぐように張り出した張出部分35aがほぐされ、遂にはその噴射された圧縮空気によって破砕される。したがって、第3の実施形態の移床式砂ろ過装置1Bによっても、第1の実施形態の移床式砂ろ過装置1Aと同様の作用効果を得ることができる。
【0045】
〔第3の実施形態〕
図3には、本発明の第3の実施形態に係る移床式砂ろ過装置を示す模式図で、(a)には横断面図が、(b)には縦断面図がそれぞれ示されている。
【0046】
第3の実施形態の移床式砂ろ過装置1Cにおいて設けられている流体噴射器60は、傘形状部材からなる案内シュート13の下端部位置でその案内シュート13の内側に周壁面に沿うように全周に亘って環状に形成されて分岐空気配管43を介してエアリフト空気配管27に接続される環状流体溜り室61と、複数(8本)の原水分散板15の配置に合わせて案内シュート13の周方向に等角度間隔でその案内シュート13の下端部位置に配される複数(8個)の噴射ノズル62とを備えて構成されている。
環状流体溜り室61は、下方に進むに従って内径および外径が共に小さくなり軸方向の長さが径寸法に対して極端に短い逆円錐台状のテーパ筒状部材63を案内シュート13の下端部内壁面に固着することでそのテーパ筒状部材63と案内シュート13の下端部内壁面とによって区画形成されるものであり、下方には開放されている。
各噴射ノズル62は、その先端側に設けられた噴射口を各原水分散板15と案内シュート13との間で狭路部36のやや上方位置に向けて斜め上向となるようにその先端部が案内シュート13の壁に貫通状態で装着される一方、その基端部が環状流体溜り室61と連通接続されている。なお、案内シュート13に噴射ノズル62を装着する構成に代えて、案内シュート13に噴射口として機能する開口を穿設する構成を採用してもよい。
【0047】
第3の実施形態の移床式砂ろ過装置1Cにおいても、第1の実施形態の移床式砂ろ過装置1Aと同様に、原水分散板15と案内シュート13との間に生じた前述のブリッジ現象に起因して連続ろ過および連続洗浄が不可能となった状態を解消するために、制御器45から開閉弁44に向けて弁開作動信号を送信し開閉弁44を開いて流体噴射器60を作動させる。流体噴射器60が作動されると、コンプレッサ26からエアリフト空気配管27および分岐空気配管43を経て環状流体溜り室61内に送り込まれた圧縮空気が噴射ノズル62の噴射口から原水分散板15と案内シュート13との間で狭路部36のやや上方位置に向けて噴射される。
【0048】
これにより、原水分散板15と案内シュート13との間でブリッジ現象を呈している固着砂層35において、原水分散板15の下方の狭路部36を塞ぐように張り出した張出部分35aがほぐされ、遂にはその噴射された圧縮空気によって破砕される。したがって、第3の実施形態の移床式砂ろ過装置1Cによっても、第1の実施形態の移床式砂ろ過装置1Aと同様の作用効果を得ることができる。
【0049】
〔第4の実施形態〕
図4には、本発明の第4の実施形態に係る移床式砂ろ過装置を示す模式図で、(a)には横断面図が、(b)には縦断面図がそれぞれ示されている。なお、この第4の実施形態において、先の第3の実施形態と同一または同様のものについては、図に同一符号を付すに留めてその詳細な説明を省略することとし、以下においては、第4の実施形態に特有の部分を中心に説明することとする。
【0050】
第4の実施形態の移床式砂ろ過装置1Dにおいて設けられている流体噴射器65は、第3の実施形態の移床式砂ろ過装置1Cにおいて設けられている流体噴射器60おける複数の噴射ノズル62を省略し、環状流体溜り室61のみで構成されたものである。
この流体噴射器65においては、開閉弁44を開くことにより、コンプレッサ26からエアリフト空気配管27および分岐空気配管43を介して環状空気溜り室61に圧縮空気が送り込まれ、この環状空気溜り室61内に送り込まれた圧縮空気がその環状空気溜り室61の下方に開放された面から一旦下方に向けて噴出された後に案内シュート13の全周に亘ってその径方向外側から上方に反転して狭路部36の上方に向けて噴出される。
なお、
図4(b)に示されるように、案内シュート13の下端部内壁に固着されるテーパ筒状部材63が、案内シュート13の下端から下方に突出するように長く形成されているので、環状空気溜り室61からその下方に噴出された圧縮空気が案内シュート13の内側に入り込まないようになっている。
第3の実施形態の移床式砂ろ過装置1Cでは、噴射ノズル62の配置によって原水分散板15の下方の固着砂層35を主として破砕するのに対して、第4の実施形態の移床式砂ろ過装置1Dによれば、案内シュート13の全周に亘ってその径方向外側から上方に反転して狭路部36の上方に向けて圧縮空気が噴出されるので、噴射ノズル62の配置にとらわれずに、案内シュート13の周辺の固着砂層35の全体を均一に破砕することができ、ろ過層4内全体のブリッジ現象を解消することができる。
【0051】
〔第5の実施形態〕
図5には、本発明の第5の実施形態に係る移床式砂ろ過装置を示す模式図で、(a)には横断面図が、(b)には縦断面図がそれぞれ示されている。
【0052】
第5の実施形態の移床式砂ろ過装置1Eにおいて設けられている流体噴射器70は、ろ過槽2の上方から原水分散板15の付近を通過して原水分散板15の下方の狭路部36の近傍まで延びる管体71と、この管体71の下端部に装着され、原水分散板15の下方の狭路部36に臨ませた噴射口を有する噴射ノズル72とを備えて構成されている。管体71の上端部には、エアリフト空気配管27から分岐する分岐空気配管43が接続されている。
【0053】
第5の実施形態の移床式砂ろ過装置1Eにおいても、第1の実施形態の移床式砂ろ過装置1Aと同様に、原水分散板15と案内シュート13との間に生じた前述のブリッジ現象に起因して連続ろ過および連続洗浄が不可能となった状態を解消するために、制御器45から開閉弁44に向けて弁開作動信号を送信し開閉弁44を開いて流体噴射器70を作動させる。流体噴射器70が作動されると、コンプレッサ26からエアリフト空気配管27および分岐空気配管43を経て環状空気配管71内に送り込まれた圧縮空気が噴射ノズル72の噴射口から原水分散板15の下方の狭路部36に向けて噴射される。
【0054】
これにより、原水分散板15と案内シュート13との間でブリッジ現象を呈している固着砂層35において、原水分散板15の下方の狭路部36を塞ぐように張り出した張出部分35aがほぐされ、遂にはその噴射された圧縮空気によって破砕される。したがって、第5の実施形態の移床式砂ろ過装置1Eによっても、第1の実施形態の移床式砂ろ過装置1Aと同様の作用効果を得ることができる。
【0055】
以上、本発明の移床式砂ろ過装置の固着砂層破砕方法、移床式砂ろ過装置および移床式砂ろ過装置の運転方法について、複数の実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、各実施形態に記載した構成を適宜組み合わせる等、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【0056】
例えば、上記各実施形態において、流体噴射器50,55,60,65,70から噴射される流体を圧縮空気から圧力水とする態様もあり得る。
第1の実施形態の移床式砂ろ過装置1Aに適用した場合を代表例として説明すると、
図1において符号80が付された二点鎖線の四角枠で囲まれた部分に示されるように、水槽81に貯留されている水をポンプ82で吸い上げ、ポンプ82と環状空気配管51とを繋ぐ水配管83の途中に介設された開閉弁84の開弁作動により、ポンプ82からの圧力水を水配管83および環状空気配管51を介して噴射ノズル52の噴射口から狭路部36に向けて噴射する構成を採用することができる。ここでは、環状空気配管(環状流体配管)51は、環状水配管の役目をする。
【0057】
また、上記各実施形態においては、エアリフトポンプ3のエアリフト空気の供給源であるコンプレッサ26からの圧縮空気を利用して流体噴射器50,55,60,65,70から破砕用の圧縮空気を噴射するようにした例を示したが、そのコンプレッサ26とは別に圧縮空気供給源(例えばコンプレッサ26と同様のもの)を独立に設け、この別途独立に設けられた圧縮空気供給源からの圧縮空気を流体噴射器50,55,60,65,70から噴射する態様もあり得る。
【0058】
また、第1~第3の実施形態および第5の実施形態において、流体噴射器50,55,60,70における噴射ノズル52,57,62,72の噴射口には、ろ過砂が侵入しないように、ろ過砂の粒径よりも目の細かい金網もしくはウエッジワイヤー等のろ過砂逆流防止手段を設けておくのが好ましい。
【0059】
また、上記各実施形態の移床式砂ろ過装置1A~1Eを複数基一纏めにした構成のマルチモジュール型のろ過装置においても、上記各実施形態にいて適用された流体噴射装置50,55,60,65,70を同様にして設けることができるのは言うまでもない。この場合、流体用配管は、コンクリート槽に埋め込まれることになるので、柱もしくは側壁の中に埋め込み、流体を供給できる場所まで延長しておくのがよい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の移床式砂ろ過装置の固着砂層破砕方法、移床式砂ろ過装置および移床式砂ろ過装置の運転方法は、ろ過層内に生成した固着砂層を破砕することができ、これによってろ過砂の循環を回復させてろ過性能を安定的に保つことができるという特性を有していることから、下水・上水、一般排水等の水処理の用途に好適に用いることができ、産業上の利用可能性が大である。
【符号の説明】
【0061】
1A~1E 移床式砂ろ過装置
2 ろ過槽
3 エアリフトポンプ
4 ろ過層
11 原水流出器
13 案内シュート
15 原水分散板
25 エアリフト管
35 固着砂層
50,55,60,65,70 流体噴射器