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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-10
(45)【発行日】2022-08-19
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23Q 7/04 20060101AFI20220812BHJP
   B23B 15/00 20060101ALI20220812BHJP
【FI】
B23Q7/04 M
B23B15/00 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018202180
(22)【出願日】2018-10-26
(65)【公開番号】P2020066118
(43)【公開日】2020-04-30
【審査請求日】2021-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000149066
【氏名又は名称】オークマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井口 憲二
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-144131(JP,A)
【文献】特開平06-079591(JP,A)
【文献】特開平05-008141(JP,A)
【文献】特開2017-154207(JP,A)
【文献】実開昭59-066547(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 7/04
B23Q 13/00
B23B 15/00
B25J 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットを有した工作機械であって、さらに、
前記ロボットに装着されるエンドエフェクタを保持するエフェクタ保持部を1以上有するストッカを備え、
前記ストッカは、前記工作機械の筐体内に収容可能であり、
前記ストッカは、少なくとも一部が、前記工作機械の加工室内、および、前記工作機械の外部である機外の双方に進出可能である、
ことを特徴とする工作機械。
【請求項2】
請求項に記載の工作機械であって、さらに、
前記ストッカを、前記加工室内および前記機外の一方にスライド可能に保持する第一スライド機構と、
前記第一スライド機構ごと前記ストッカを、前記加工室内および前記機外の双方にスライド可能に保持する第二スライド機構と、
を備える、ことを特徴とする工作機械。
【請求項3】
請求項に記載の工作機械であって、
前記第一スライド機構は、前記ストッカを機外にスライド可能に保持し、
前記第二スライド機構は、前記第一スライド機構および前記ストッカを機内にスライド可能に保持しており、
前記第一スライド機構を利用したスライドは、手動で行われ、
さらに、前記第一スライド機構によるスライドをロックまたはロック解除するロック機構を備える、
ことを特徴とする工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、ロボットとの連携に適した工作機械を開示する。
【背景技術】
【0002】
工作機械では、さらなる自動化、効率化が求められている。そこで、こうした要望を満たすために、工作機械と連携するロボットを設けることが提案されている。例えば、特許文献1には、工作機械の内部に、多関節ロボットを設け、この多関節ロボットに種々の作業を行なわせることが提案されている。こうした多関節ロボットの多くは、対象物に対して所定の作用を発揮するエンドエフェクタが取り付けられている。特許文献1では、このエンドエフェクタを、加工室の内部または外部に、複数種類、待機させておき、用途に応じて、ロボットに取り付けるエンドエフェクタを交換している。かかる構成とすることでロボットの汎用性をより向上できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-144131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、こうした交換用のエンドエフェクタを加工室の内部に待機させた場合、当然ながら、その分、加工室のスペースが制限されるという問題がある。そこで、加工室の空間確保のため、交換用エンドエフェクタを工作機械の近傍に待機させることも考えられる。しかし、この場合、工作機械の周辺で作業する作業者の作業性を悪化させる。
【0005】
そこで、工作機械からある程度離れた位置に、交換用のエンドエフェクタを置いておくことも考えられる。しかし、この場合、エンドエフェクタの交換をロボット自身が自動で
行なうためには、ロボットの可動範囲を広げなければならない。通常、ロボットの可動範囲は、安全柵等で囲まれる必要があるため、この場合、非常に大きな安全柵が必要となり、大スペース、高コストとなってしまう。
【0006】
そこで、本明細書では、作業者およびロボットの作業性を低下させることなく、省スペースなエンドエフェクタ用ストッカを有した工作機械を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書で開示する工作機械は、ロボットを有した工作機械であって、さらに、前記ロボットに装着されるエンドエフェクタを保持するエフェクタ保持部を1以上有するストッカを備え、前記ストッカは、前記工作機械の筐体内に収容可能であり、前記ストッカは、少なくとも一部が、前記工作機械の加工室内、および、前記工作機械の外部である機外の双方に進出可能である、ことを特徴とする。
【0008】
かかる構成とすることで、加工室内や機外にエンドエフェクタのストッカを配置する必要がないため、作業者およびロボットの作業性を低下させることなく、省スペースを実現できる。
【0010】
加工室内および機外の双方に進出可能とすることで、ロボットおよび作業者の双方が、ストッカにアクセスできる。
【0011】
この場合、さらに、前記ストッカを、前記加工室内および前記機外の一方にスライド可能に保持する第一スライド機構と、前記第一スライド機構ごと前記ストッカを、前記加工室内および前記機外の双方にスライド可能に保持する第二スライド機構と、を備えてもよい。
【0012】
この場合、第二スライド機構は、第一スライド機構ごとストッカをスライド可能に保持する。換言すれば、第一スライド機構と第二スライド機構は、親子状に重なっている。かかる構成とすることで、ストッカを加工室および機外の双方にスライドさせる機構を小型化できる。
【0013】
この場合、前記第一スライド機構は、前記ストッカを機外にスライド可能に保持し、前記第二スライド機構は、前記第一スライド機構および前記ストッカを機内にスライド可能に保持しており、前記第一スライド機構を利用したスライドは、手動で行われ、さらに、前記第一スライド機構によるスライドをロックまたはロック解除するロック機構を備えてもよい。
【0014】
ロック機構を設けることで、ストッカを加工室内に進出させた際に、第一スライド機構がスライドすることを防止でき、加工室内におけるストッカの位置を安定させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本明細書に開示の工作機械によれば、作業者およびロボットの作業性を低下させることなく、省スペースが実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】ドアを開けた状態の工作機械の斜視図である。
図2】ドアを閉じた状態の工作機械の斜視図である。
図3】ストッカを収納した状態の加工室の斜視図である。
図4】ストッカを加工室内に進出させた状態の加工室の斜視図である。
図5】ストッカを機外に進出させた状態の斜視図である。
図6A】第一スライド機構の概略構成を示す図である。
図6B】第一スライド機構の概略構成を示す図である。
図7A】第二スライド機構の概略構成を示す図である。
図7B】第二スライド機構の概略構成を示す図である。
図8A図6AにおけるK-K線での断面図である。
図8B図6AにおけるK-K線での断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して工作機械10の構成について説明する。図1図2は、工作機械10の斜視図であり、図1は、前面ドア16を開けた状態を、図2は、前面ドア16を閉めた状態を示している。また、図3図4は、加工室18内の要部拡大図であり、図3は、ストッカ38を収容した状態を、図4は、ストッカ38を加工室18内に引き出した様子を示している。また、図5は、ストッカ38を機外に引き出した様子を示している。
【0018】
工作機械10は、ワーク100を所要の形状または寸法に加工する機械である。この工作機械10としては、切削加工機(例えば旋盤、フライス盤等)、研削加工機(例えば、研削盤、表面仕上げ盤等)、鍛造加工機、特殊加工機(放電加工機、超音波加工機)等の加工機、および、これら加工機を組み合わせた複合加工機が該当する。本例では、工作機械10をターニングセンタとして説明する。
【0019】
工作機械10は、ワーク100に対する加工を実行する加工室18を有している。この加工室18の壁面および天面は、内装カバー14で覆われている。また、加工室18の底面は、後述する刃物台等の移動を許容するテレスコカバーで覆われている。加工室18の前面には、開口部が設けられている。図示例では、工作機械10の前面から天面にかけて広がる開口部が、工作機械10の幅方向略中央に設けられている。
【0020】
工作機械10には、この開口部を開閉自在に覆う前面ドア16が設けられている。本例で、前面ドア16は、開口部全体を覆えるように、工作機械10の前面から天面にかけて延びる略L字形状となっている。また、前面ドア16は、幅方向片側にスライドするスライドドアである。この前面ドア16を閉鎖することで加工室18が外部から閉鎖され、オペレータの安全性が確保される。この前面ドア16は、オペレータによって手動で開閉される他、制御装置によって自動でも開閉される。
【0021】
加工室18内には、ワーク100を保持する主軸12や、工具を保持する刃物台(図示せず)、ワーク100の他端を支持する心押台(図示せず)等が設置されている。なお、刃物台および心押台は、いずれも、図2では、操作パネル22の背後にある外装カバー15で隠れて見えていない。
【0022】
主軸12は、ワーク100を回転可能に保持する。この主軸12の先端面には、当該ワーク100を把持するチャック13等が設けられている。また、主軸12の背後(図2の紙面左側)には、当該主軸12を回転駆動させる駆動機構である主軸台が設けられている。この主軸台は、内装カバー14および外装カバー15で構成される工作機械10の筐体の内部に収容されており、外部からは視認できない。
【0023】
工作機械10の前面には、操作パネル22も設けられている。操作パネル22は、オペレータからの操作指示を受け付ける入力装置として機能するもので、例えば、複数のボタンや、キーボード、タッチパネルなどを有している。この操作パネル22は、前面ドア16等と干渉しない位置に設けられており、前面ドア16を閉鎖した状態でも、当該操作パネル22の操作が可能となっている。なお、ここでは、工作機械10に取り付けられた操作パネル22を例示したが、操作パネル22の一部または全部は、工作機械10から分離されていてもよい。例えば、工作機械10と無線通信可能な情報端末(例えばスマートフォン、タブレットなど)を、操作パネル22として使用してもよい。操作パネル22を介して入力されたオペレータの指示は、制御装置に送られる。制御装置は、このオペレータ指示に応じて、工作機械10、および、必要であれば、後述のロボット34の駆動を制御する。
【0024】
工作機械10には、さらに、当該工作機械10と連携して駆動するロボット34が設けられている。図1では、ロボット34として、主軸12の近傍に設けられたロボット34を図示している。このロボット34は、関節を介して接続された複数のアームを有した多関節ロボットである。ただし、ロボット34の形態は、これに限定されず、適宜、変更されてもよい。したがって、ロボット34は、他の形態のロボット、例えば、パラレルリンクロボットや直動ロボット等でもよい。また、ロボット34の設置位置は、加工室18内にアクセスできるのであれば、他の位置に設置されてもよい。例えば、ロボット34は、加工室18内の他の壁面や、刃物台、心押台等に設置されてもよい。また、ロボット34は、加工室18の外部に設置されてもよい。
【0025】
ロボット34は、1以上のエンドエフェクタ36が取り付けられている。エンドエフェクタ36は、対象物に働きかけるための要素であれば、特に限定されない。したがって、エンドエフェクタ36は、例えば、対象物を保持する保持機構であってもよい。保持の形式は、一対の部材で対象物を把持するハンド形式でもよいし、対象物を吸引保持する形式でもよいし、磁力等を利用して保持する形式等でもよい。図1には、ハンド形式のエンドエフェクタ36を例示している。また、別の形態として、エンドエフェクタ36は、対象物を押圧する押圧機構としてもよい。例えば、エンドエフェクタ36を、ワーク100に押し当てられて、当該ワーク100の振動を抑制するローラ等としてもよい。
【0026】
また、別の形態として、エンドエフェクタ36は、例えば、対象物への接触の有無を検知する接触センサや、対象物までの距離を検知する距離センサ、対象物の振動を検知する振動センサ、対象物から付加される圧力を検知する圧力センサ、対象物の温度を検知するセンサ等とすることができる。これらセンサでの検知結果は、各関節の駆動量から算出されるエンドエフェクタ36の位置情報と関連付けて記憶され、解析される。例えば、エンドエフェクタ36が、接触センサの場合、制御装置は、対象物への接触を検知したタイミングと、そのときの位置情報と、に基づいて、対象物の位置や形状、動きを解析する。
【0027】
また、別の形態として、エンドエフェクタ36は、加工を補助するための流体を出力する装置でもよい。具体的には、エンドエフェクタ36は、切粉を吹き飛ばすためのエアや、工具またはワーク100を冷却するための冷却用流体(切削油や切削水等)を放出する装置でもよい。また、エンドエフェクタ36は、ワーク100造形のためエネルギまたは材料を放出する装置でもよい。したがって、エンドエフェクタ36は、例えば、レーザやアークを放出する装置でもよいし、積層造形のために材料を放出する装置でもよい。さらに別の形態として、エンドエフェクタ36は、対象物を撮影するカメラでもよい。この場合、カメラで得た映像を操作パネル22等に表示してもよい。
【0028】
また、エンドエフェクタ36が働きかける対象物は、加工に関与するものであれば、特に限定されない。したがって、対象物は、主軸12に保持されているワーク100でもよいし、刃物台に保持される工具でもよい。また、対象物は、工具およびワーク100以外のもの、例えば、加工室18内に飛散した切粉や、ワーク100に組み付けられる部品、工作機械10の構成部品(主軸12のチャック13等)でもよい。
【0029】
本例において、ロボット34は、こうしたエンドエフェクタ36を、適宜、交換できるようになっている。例えば、ロボット34でワーク100搬送する際には、当該ロボット34にハンド機構のエンドエフェクタ36を取り付け、当該ロボット34で加工中の工具温度をセンシングする際には、当該ロボット34に温度センサのエンドエフェクタ36を取り付けることができる。このようにエンドエフェクタ36を交換可能とすることで、ロボット34の汎用性をより向上できる。
【0030】
このエンドエフェクタ36の交換のために、本例の工作機械10には、エンドエフェクタストッカ(以下、単に「ストッカ」と呼ぶ)38が設けられている。ストッカ38は、エンドエフェクタ36を保持する保持部39を1以上有した収納部材である。本例では、このストッカ38を、工作機械10の筐体内に内蔵している。
【0031】
図3図4は、このストッカ38周辺の斜視図であり、図3は、ストッカ38を収納した状態を、また、図4は、ストッカ38を加工室18内に引き出した状態をそれぞれ示している。また、図5は、工作機械10の外部(以下「機外」と呼ぶ)にストッカ38を引き出した状態を示す斜視図である。図3図4に示すように、本例では、ストッカ38は、主軸台を収容している筐体内に内蔵されており、主軸台より後方に位置している。このストッカ38は、後述するスライド機構により、工作機械10の幅方向にスライド可能となっており、加工室18内および機外の双方に進出可能となっている。以下では、ストッカ38のスライド方向のうち、加工室18内に進出する方向を第二方向、機外に進出する方向を第一方向と呼ぶ。また、ストッカ38が筐体20内に収容された状態を「収容状態」と呼ぶ。
【0032】
ストッカ38には、1以上(図示例では3つ)の保持部39が設けられており、各保持部39は、エンドエフェクタ36を保持可能となっている。本例では、保持部39は、エンドエフェクタ36を吊り下げ保持する構成となっている。
【0033】
こうした保持部39は、ロボット34がエンドエフェクタ36を自動的に交換できるような構成であることが望ましい。例えば、通常、ロボット34およびエンドエフェクタ36には、それぞれ、両者を連結するための連結部が設けられている。保持部39は、ストッカ38を引き出した際にエンドエフェクタ36側の連結部40(図5では穴)が外部に露出するような姿勢で、エンドエフェクタ36を保持してもよい。かかる構成とすれば、ロボット34を駆動することで、ロボット34側の連結部とエンドエフェクタ36側の連結部40とを容易に連結することができる。保持部39には、保持したエンドエフェクタ36の脱離を許容または規制するクランプ機構を有してもよい。かかる構成とすることで、エンドエフェクタ36の意図しない脱離を防止できる。
【0034】
また、このクランプ機構の駆動を、エンドエフェクタ36の交換作業と連携させてもよい。例えば、ロボット34からエンドエフェクタ36を取り外す場合、ロボット34は、現在装着されているエンドエフェクタ36を保持部39に引っ掛ける。その後、ロボット34は連結部の連結を解除したうえで、保持部39から離れる。このとき、クランプ機構をオンにして、エンドエフェクタ36を保持部39にクランプしておけば、当該エンドエフェクタ36が、ロボット34につられて動かず、エンドエフェクタ36の取り外しを確実に行なうことができる。本例では、こうした保持部39を、スライド方向に三つ並べている。ただし、保持部39の個数や配置は、適宜、変更されてもよい。
【0035】
ストッカ38の加工室18側の一端には、シャッタ30が固着されている。ストッカ38が収納状態のとき、このシャッタ30は、図3に示すように加工室18の内装カバー14と連なり、加工室18の内壁を構成する。そして、ストッカ38が加工室18内に引き出されるとき、このシャッタ30は、ストッカ38とともに移動する。
【0036】
図5に示すように、外装カバー15のうち、ストッカ38のすぐ左側には、機外ドア32が設けられている。この機外ドア32は、手動または自動で開閉される。この機外ドア32を開けることで、ストッカ38に機外からアクセスが可能となる。そして、機外ドア32を開けた状態になれば、作業者は、ストッカ38を機外に引き出すことができる。
【0037】
工作機械10には、このストッカ38をスライド移動させるために、2種類のスライド機構が設けられている。これについて図6A図6B図7A図7B図8A図8B、を参照して説明する。図6A図6Bは、第一スライド機構42の構成を説明する概略図である。また、図7A図7Bは、第二スライド機構44の構成を説明する概略図である。さらに、図8A図8Bは、図6AのK-K線での概略断面図である。
【0038】
第一スライド機構42は、図6図8に示すように、ストッカ38を機外に(すなわち第一方向に)スライド可能に保持する。この第一スライド機構42は、ストッカ38に固着された第一ベース板50と、当該第一ベース板50に支持体52を介して連結されたガイドシャフト51と、当該ガイドシャフト51を摺動可能に保持するガイドブロック53と、当該ガイドブロック53が固着されたブロックベース54と、を備えている。第一ベース板50は、スライド方向に長尺な平板であり、その長尺方向両端には、一対の支持体52が裏面側に突出するように固着されている。第一ベース板50の裏側には、当該第一ベース板50と平行な方向に延びるガイドシャフト51が配置されている。このガイドシャフト51の両端は、第一ベース板50に固着された一対の支持体52により保持されている。
【0039】
ガイドブロック53は、ガイドシャフト51が挿通可能なガイド孔が形成されたブロック状部材である。ガイドシャフト51が、このガイド孔内を摺動することで、第一ベース板50および当該第一ベース板50に固着されたストッカ38が、スライド移動できる。このガイドブロック53は、ブロックベース54に固着されている。また、このガイドブロック53には、第一ベース板50のスライド移動をロックするロックレバー70が取り付けられているが、これについては、後述する。また、第一ベース板50の左端には、ユーザにより把持されるハンドル56が設けられており(図5参照)、ユーザは、このハンドル56を把持してストッカ38を機外において進退させることができる。
【0040】
第二スライド機構44は、図7図8に示すように、第一スライド機構42ごとストッカ38を、加工室18内(第二方向)にスライド可能に保持する。この第二スライド機構44は、ブロックベース54に固着されたスライダ60と、当該スライダ60のスライド移動をガイドするガイドレール62と、ガイドレール62が固着された第二ベース板64と、筐体内に固着されたエアシリンダ66と、を備えている。エアシリンダ66の伸縮シャフトの先端は、シャッタ30に固着されており、エアシリンダ66が伸縮することで、シャッタ30が、加工室18内において進退する。また、このシャッタ30は、図示しない連結部材を介して、ブロックベース54に機械的に連結されている。そのため、シャッタ30の進退に伴い、ブロックベース54が、ガイドレール62に沿ってスライド移動できるようになっている。なお、本例では、ストッカ38を第二方向へスライドさせるアクチュエータとして、エアシリンダ66を例示しているが、他のアクチュエータ、例えば、モータや油圧シリンダ等を用いてもよい。また、アクチュエータを設けず、ロボット34を用いて、シャッタ30を進退(第二スライド機構44を進退)させてもよい。
【0041】
なお、第二ベース板64には、スライダ60と当接することで、当該スライダ60の可動範囲を規制するストッパ68a,68bが2つ設けられている。第一ストッパ68aは、ガイドレール62の右端(加工室18寄り端部)近傍に設けられており、ストッカ38が、加工室18内に完全に進出した際に、スライダ60と当接することで、更なる進出を規制する。第二ストッパ68bは、ガイドレール62の左端(機外寄り端部)近傍に設けられており、ストッカ38が、筐体内に完全に収納された際に、スライダ60と当接することで、更なる後退を規制する。
【0042】
第一スライド機構42の可動範囲は、ガイドシャフト51の両端を支持する支持体52が、ガイドブロック53に当接することで規制される。また、第一スライド機構42は、第二スライド機構44と異なり、手動で引き出すことを想定している。そのため、第一スライド機構42は、そのままでは、制約を受けることなく、容易にスライドする。この場合において、エアシリンダ66を伸張させて、ストッカ38を、第一スライド機構42ごと、加工室18内に進出させると、第一スライド機構42が第二スライド機構44に対してスライドしてしまい、ストッカ38の位置が安定しないおそれがある。
【0043】
そこで、第二スライド機構44には、そのスライドをロックするロック機構が設けられている。ロック機構は、ガイドブロック53に連結されたロックレバー70を有している。ロックレバー70は、図8に示すように、ガイドブロック53から立脚する支持軸80に取り付けられており、スライド方向と平行な軸周りに揺動可能なレバーである。第一ベース板50には、支持軸80が挿通する貫通孔が形成されており、第一ベース板50は、支持軸80に沿って厚み方向に進退可能となっている。
【0044】
ロックレバー70の基端は、揺動中心に対して偏心した略円形のカムとなっている。そのため、ロックレバー70の基端とガイドブロック53との間隙dは、ロックレバー70の揺動に応じて変化する。より具体的には、ロックレバー70の先端を上方に向けた場合、間隙dは、第一ベース板50の肉厚と同じか僅かに小さく、ロックレバー70の先端を下方に向けた場合、間隙dは、第一ベース板50の肉厚より大きくなる。
【0045】
ロックレバー70が、図8Aに示すように、その先端が下方に向く解除姿勢をとると、間隙dが、第一ベース板50の肉厚より大きくなるため、第一ベース板50とガイドブロック53との間には、微小な隙間が形成される。その結果、第一ベース板50は、ガイドブロック53に対してスライド可能となる。一方、ロックレバー70が、図8Bに示すように、その先端が上方に向くロック姿勢をとると、間隙dは、第一ベース板50の肉厚と同じか僅かに小さくなるため、当該ロックレバー70の先端は、第一ベース板50に当接し、これを押圧することになる。そして、これにより第一ベース板50が、ガイドブロック53側に撓んで、第一ベース板50がガイドブロック53に当接する。その結果、第一ベース板50とガイドブロック53との間の摩擦が増加し、第一ベース板50のスライド移動が規制される。
【0046】
なお、第一ベース板50には、ロック姿勢になったロックレバー70が重力により下方に落下するのを防止するために、ロックレバー70と係合する第二のレバーを設けてもよい。また、ロックレバー70の姿勢を検知するセンサを設けておき、その検知結果に応じて、各種動作を制御してもよい。例えば、ロックレバー70が解除された状態のままでは、第二スライド機構44による加工室18内へのスライドを禁止するようにしてもよい。また、機外ドア32にも、その開閉を検知するセンサを設けておき、ロックレバー70が解除された状態のまま、機外ドア32の閉鎖が検知された場合には、何らかのアラームを出力するようにしてもよい。また、センサではなく、機械的構造により、ロックレバー70のロック忘れを防止してもよい。例えば、機外ドア32に、下向き姿勢のロックレバー70に干渉する部材を設けておき、ロックレバー70が下向き姿勢のままでは、機外ドア32が機械的に閉鎖できないようにしてもよい。
【0047】
次に、こうした工作機械10の使用の流れについて、エンドエフェクタ36の取り扱いを中心に説明する。工作機械10を用いてワーク100を加工する際には、必要に応じて、ロボット34を利用する。このロボット34の汎用性を広げるために、本例では、予め、ストッカ38に、エンドエフェクタ36をセットしておく。エンドエフェクタ36のセットは、ユーザにより行われる。
【0048】
具体的には、ユーザは、まず、外装カバー15の機外ドア32を開ける。続いて、この時点でロックレバー70は、ロック姿勢になっているため、ユーザは、当該ロックレバー70を180度回転させて、解除姿勢にする。これにより、第一ベース板50が、ガイドブロック53から離間して、ストッカ38の第一方向(機外)への引き出しが可能になる。この状態になれば、ユーザは、ハンドル56を把持して、ストッカ38を、機外へと引き出す。
【0049】
ストッカ38が機外に露出すれば、ユーザは、当該ストッカ38の保持部39に、交換用のエンドエフェクタ36をセットする。エンドエフェクタ36がセットできれば、続いて、ユーザは、ストッカ38を筐体20内に押し戻す。ストッカ38が、筐体20内に完全収容された収容状態になれば、ユーザは、ロックレバー70をロック姿勢になるように、180度回転させたうえで、機外ドア32を閉鎖する。
【0050】
ストッカ38にエンドエフェクタ36がセットされれば、工作機械10によるワーク100の加工が開始可能となる。このワーク100の加工を補助するために、必要に応じて、ロボット34が利用される。例えば、ワーク100を主軸12にセットするために、当該ワーク100をロボット34で搬送することがある。この場合、ロボット34には、ワーク100を保持できるエンドエフェクタ36、例えば、ハンド機構等が装着されなければならない。
【0051】
ロボット34にエンドエフェクタ36を装着する際、制御装置は、スライド機構に取り付けられたエアシリンダ66を駆動して、スライダ60を、第二方向にスライド移動させる。これにより、ストッカ38が、第一スライド機構42ごと、加工室18内に進出する。この状態になれば、制御装置は、ロボット34を駆動して、ロボット34の連結部を、保持部39に保持されているエンドエフェクタ36の連結部まで移動させ、両連結部を接続させる。ロボット34は、その連結部にエンドエフェクタ36が装着されれば、ストッカ38から離間して、所定の待機位置で待機する。その間に制御装置は、エアシリンダ66を駆動して、スライダ60を筐体内にスライド移動させ、ストッカ38を、第一スライド機構42ごと、筐体内に収納させる。ストッカ38が筐体内に収納されることで、加工室18内のスペースが広がり、ワーク100の加工やロボット34の移動等のために十分なスペースが確保できる。
【0052】
ロボット34は、ハンド機構のエンドエフェクタ36が装着されれば、当該エンドエフェクタ36を利用してワーク100を把持し、当該ワーク100を主軸12にセットする。その状態になれば、制御装置は、工具を用いてワーク100の加工を開始する。このとき、加工中のワーク100の振動を抑制するために、ワーク100をローラで押さえたい要望がある。かかる要望を満たすために、ロボット34に、ローラタイプのエンドエフェクタ36を装着し、当該エンドエフェクタ36でワーク100を押さえることが考えられる。
【0053】
そこで、この場合には、ワーク100の加工開始に先立って、ロボット34のエンドエフェクタ36を交換する。具体的には、エアシリンダ66を駆動して、ストッカ38を加工室18内に進出させる。制御装置は、まず、ロボット34に現時点で装着されているハンド機構のエンドエフェクタ36を、空の保持部39にセットさせ、ロボット34からハンド機構のエンドエフェクタ36を離脱させる。続いて、制御装置は、ロボット34の連結部を、ローラタイプのエンドエフェクタ36の連結部に移動して、接続させ、ロボット34に、ローラタイプのエンドエフェクタ36を装着させる。この状態になれば、制御装置は、再び、エアシリンダ66を駆動して、ストッカ38を筐体20内に収容する。以降、エンドエフェクタ36の交換を行いながら、ワーク100の加工を行う。
【0054】
以上の説明から明らかな通り、本明細書では、工作機械10の筐体内に収納可能なエンドエフェクタ36のストッカ38を設けている。筐体内に収納することで、当該ストッカ38が、ロボット34や作業者の作業を邪魔しないため、ロボット34および作業者の作業性が向上する。また、エンドエフェクタ36は、加工室18内および機外の双方に進出可能であるため、ロボット34および作業者のいずれもが、エンドエフェクタ36にアクセスでき、作業者によるエンドエフェクタ36のセットや、ロボット34によるエンドエフェクタ36の交換が容易に行なえる。さらに、本明細書では、第一スライド機構42に、そのスライド移動を制限するロック機構(ロックレバー70)を設けているため、ストッカ38の第一方向(機外側)へのスライド移動を容易に制限できる。
【0055】
なお、これまで説明した構成は、一例であり、少なくとも工作機械10の筐体内に収容可能なストッカ38を有するのであれば、その他の構成は、適宜、変更されてもよい。例えば、本例では、ストッカ38をスライド移動する構成としているが、スライド移動に換えて、旋回移動する構成としてもよい。また、ストッカ38の形状やスライド方向、設置位置等も適宜、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0056】
10 工作機械、12 主軸、13 チャック、14 内装カバー、15 外装カバー、16 前面ドア、18 加工室、20 筐体、22 操作パネル、30 シャッタ、32 機外ドア、34 ロボット、36 エンドエフェクタ、38 ストッカ、39 保持部、40 連結部、42 第一スライド機構、44 第二スライド機構、50 第一ベース板、51 ガイドシャフト、52 支持体、53 ガイドブロック、54 ブロックベース、56 ハンドル、60 スライダ、62 ガイドレール、64 第二ベース板、66 エアシリンダ、68a 第一ストッパ、68b 第二ストッパ、70 ロックレバー、80 支持軸、100 ワーク。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B