(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-10
(45)【発行日】2022-08-19
(54)【発明の名称】粘着剤、粘着シート、粘着シートの製造方法、および画像表示装置
(51)【国際特許分類】
C09J 175/04 20060101AFI20220812BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20220812BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20220812BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20220812BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20220812BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20220812BHJP
【FI】
C09J175/04
C09J11/06
C09J7/38
B32B27/00 M
B32B27/40
G09F9/00 302
G09F9/00 313
(21)【出願番号】P 2018209124
(22)【出願日】2018-11-06
【審査請求日】2021-06-25
(73)【特許権者】
【識別番号】390029458
【氏名又は名称】ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115255
【氏名又は名称】辻丸 光一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100129137
【氏名又は名称】中山 ゆみ
(74)【代理人】
【識別番号】100154081
【氏名又は名称】伊佐治 創
(72)【発明者】
【氏名】藤本 竜治
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-545656(JP,A)
【文献】特開2007-332234(JP,A)
【文献】特開2018-58952(JP,A)
【文献】特開2016-23261(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
B32B 27/00,27/40
G09F 9/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基を有するウレタンプレポリマー(A)と、非イオン性スルホン酸エステル(B)と、
架橋剤(C)とを含
み、前記架橋剤(C)がポリイソシアネートであることを特徴とする粘着剤。
【請求項2】
前記ウレタンプレポリマー(A)が、ポリオールとイソシアネートとの付加物である請求項1記載の粘着剤。
【請求項3】
基材の少なくとも一方の面に粘着層が形成された粘着シートであって、前記粘着層が、請求項1
または2記載の粘着剤から形成された粘着層であることを特徴とする粘着シート。
【請求項4】
前記基材の、前記粘着層が形成される粘着層形成面に、請求項1
または2記載の粘着剤を塗工する塗工工程と、
前記塗工工程後、前記粘着層形成面上において前記粘着剤を加熱する加熱工程とを含む、
請求項
3記載の粘着シートの製造方法。
【請求項5】
画像表示面に、画像表示装置の保護シートが貼付された画像表示装置であって、
前記保護シートが請求項
3記載の粘着シートであることを特徴とする画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤、粘着シート、粘着シートの製造方法、および画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
粘着剤およびそれを用いた粘着シートは、産業上の種々の分野において広範に用いられている。具体的な用途としては、例えば、ガラス等の表面に貼付して用いる保護フィルム等がある。前記ガラスとしては、例えば、携帯電話、スマートフォン、自動車、建物等の窓ガラスが挙げられる。
【0003】
粘着剤には、例えば、アクリル樹脂系粘着剤、ゴム系粘着剤、ウレタン粘着剤等がある。これらの中で、ウレタン粘着剤は、貼付した後に剥離できる性質(以下、再剥離性という)や粘着剤層と被着体の界面に気泡等を巻き込み難い性質(以下、濡れ性という)等の特性に優れるため、広く用いられている(特許文献1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、表面保護用の粘着シート等に用いられる粘着剤には、再剥離性、濡れ性に加え、耐被着体汚染性が必要とされている。これは、プラスチック、ガラス等の表面に粘着剤が貼られた製品を、長時間にわたり輸送や保管を行う場合があるためである。ここで、耐被着体汚染性とは、粘着シートが貼付された製品が高温高湿条件下に長時間置かれても、粘着シートを剥離した際に被着体に対する粘着剤由来の汚染が起こらないことをいう。なお、粘着剤が貼られる材料(被着体)の種類や、製品が長時間放置される環境によって汚染の度合いは異なるため、必要とされる耐被着体汚染性も異なる。また、汚染の原因として考えられるものは、粘着剤に由来する糊残り以外に、被着体の材質に由来する変質汚染が含まれる。
【0006】
そこで、本発明は、再剥離性、濡れ性、高温高湿下での耐被着体汚染性を満足することが可能な粘着剤、粘着シート、粘着シートの製造方法、および画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の粘着剤は、水酸基を有するウレタンプレポリマー(A)と、非イオン性スルホン酸エステル(B)とを含むことを特徴とする。
【0008】
本発明の粘着シートは、基材の少なくとも一方の面に粘着層が形成された粘着シートであって、前記粘着層が、本発明の粘着剤から形成された粘着層であることを特徴とする。
【0009】
本発明の粘着シートの製造方法は、前記基材の、前記粘着層が形成される粘着層形成面に、本発明の粘着剤を塗工する塗工工程と、前記塗工工程後、前記粘着層形成面上において前記粘着剤を加熱する加熱工程とを含む、本発明の粘着シートを製造する方法である。
【0010】
本発明の画像表示装置は、画像表示面に、画像表示装置の保護シートが貼付された画像表示装置であって、前記保護シートが本発明の粘着シートであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、再剥離性、濡れ性、高温高湿下での耐被着体汚染性を満足することが可能な粘着剤、粘着シート、粘着シートの製造方法、および画像表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について、例を挙げて説明する。ただし、本発明は、以下の説明により限定されない。
【0013】
本発明の粘着剤は、例えば、前記ウレタンプレポリマー(A)が、ポリオールとイソシアネートとの付加物であってもよい。
【0014】
本発明の粘着剤は、例えば、さらに架橋剤(C)を含み、前記架橋剤(C)がポリイソシアネートであってもよい。
【0015】
本発明の粘着剤は、例えば、基材の少なくとも一方の面に粘着層を形成して粘着シートを製造するための粘着剤であってもよい。また、本発明の粘着シートにおいて、前記基材は、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリオレフィン等の基材であってもよい。
【0016】
本発明において、「脂肪族基」は、特に限定されず、例えば、飽和でも不飽和でもよく、環状構造を含んでいなくても含んでいてもよい。前記脂肪族基は、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基等が挙げられる。
【0017】
本発明において、「アルキル」は、例えば、直鎖状または分枝状のアルキルを含む。前記アルキルの炭素数は、特に制限されず、例えば、1~30であり、好ましくは、1~18、3~16または4~12である。前記アルキルは、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基およびtert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基等が挙げられる。アルキル基から誘導される基や原子団(アルコキシ基等)についても同様である。アルキル基を構造中に含む基(アルキルアミノ基、アルコキシ基等)、または、アルキル基から誘導される基(ハロアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アミノアルキル基、アルカノイル基等)においても同様である。
【0018】
本発明において、「アルケニル」は、例えば、直鎖状または分枝状のアルケニルを含む。前記アルケニルは、前記アルキルにおいて、1個または複数の二重結合を有するもの等が挙げられる。前記アルケニルの炭素数は、特に制限されず、例えば、前記アルキルと同様であり、好ましくは2~12または2~8である。前記アルケニルは、例えば、ビニル、1-プロペニル、2-プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、1,3-ブタジエニル、3-メチル-2-ブテニル等が挙げられる。
【0019】
本発明において、「アルキニル」は、例えば、直鎖状または分枝状のアルキニルを含む。前記アルキニルは、前記アルキルにおいて、1個または複数の三重結合を有するもの等が挙げられる。前記アルキニルの炭素数は、特に制限されず、例えば、前記アルキルと同様であり、好ましくは2~12または2~8である。前記アルキニルは、例えば、エチニル、プロピニル、ブチニル等が挙げられる。前記アルキニルは、例えば、さらに、1個または複数の二重結合を有してもよい。
【0020】
本発明において、「芳香環」または「芳香族基」は、例えば、アリール、ヘテロアリールおよびアリールアルキルを含む。また、「環状構造」は、例えば、前記芳香環、シクロアルキル、橋かけ環式炭化水素基、スピロ炭化水素基、シクロアルケニルを含む。
【0021】
本発明において、「アリール」は、例えば、単環芳香族炭化水素基および多環芳香族炭化水素基を含む。前記単環芳香族炭化水素基は、例えば、フェニル等が挙げられる。前記多環芳香族炭化水素基は、例えば、1-ナフチル、2-ナフチル、1-アントリル、2-アントリル、9-アントリル、1-フェナントリル、2-フェナントリル、3-フェナントリル、4-フェナントリル、9-フェナントリル等が挙げられる。好ましくは、例えば、フェニル、1-ナフチルおよび2-ナフチル等のナフチル等が挙げられる。
【0022】
本発明において、「ヘテロアリール」は、例えば、単環芳香族複素環式基および縮合芳香族複素環式基を含む。前記ヘテロアリールは、例えば、フリル(例:2-フリル)、チエニル(例:2-チエニル)、ピロリル(例:1-ピロリル)、イミダゾリル(例:1-イミダゾリル)、ピラゾリル(例:1-ピラゾリル)、トリアゾリル(例:1,2,4-トリアゾール-1-イル)、テトラゾリル(例:1-テトラゾリル)、オキサゾリル(例:2-オキサゾリル)、イソキサゾリル(例:3-イソキサゾリル)、チアゾリル(例:2-チアゾリル)、チアジアゾリル、イソチアゾリル(例:3-イソチアゾリル)、ピリジル(例:2-ピリジル)、ピリダジニル(例:3-ピリダジニル)、ピリミジニル(例:2-ピリミジニル)、フラザニル(例:3-フラザニル)、ピラジニル(例:2-ピラジニル)、オキサジアゾリル(例:1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)、ベンゾフリル(例:2-ベンゾ[b]フリル)、ベンゾチエニル(例:2-ベンゾ[b]チエニル)、ベンズイミダゾリル(例:1-ベンゾイミダゾリル)、ジベンゾフリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、キノキサリル(例:2-キノキサリニル)、シンノリニル(例:3-シンノリニル)、キナゾリル(例:2-キナゾリニル)、キノリル(例:2-キノリル)、フタラジニル(例:1-フタラジニル)、イソキノリル(例:1-イソキノリル)、プリル、プテリジニル(例:2-プテリジニル)、カルバゾリル、フェナントリジニル、アクリジニル(例:1-アクリジニル)、インドリル(例:1-インドリル)、イソインドリル、フェナジニル(例:1-フェナジニル)またはフェノチアジニル(例:1-フェノチアジニル)等が挙げられる。
【0023】
本発明において、「シクロアルキル」は、例えば、環状飽和炭化水素基であり、炭素数は、特に限定されないが、例えば、3~24または3~15である。前記シクロアルキルは、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、橋かけ環式炭化水素基、スピロ炭化水素基等が挙げられ、好ましくは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、橋かけ環式炭化水素基等が挙げられる。
【0024】
本発明において、「橋かけ環式炭化水素基」は、例えば、ビシクロ[2.1.0]ペンチル、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル、ビシクロ[2.2.2]オクチルおよびビシクロ[3.2.1]オクチル、トリシクロ[2.2.1.0]ヘプチル、ビシクロ[3.3.1]ノナン、1-アダマンチル、2-アダマンチル等が挙げられる。
【0025】
本発明において、「スピロ炭化水素基」は、例えば、スピロ[3.4]オクチル等が挙げられる。
【0026】
本発明において、「シクロアルケニル」は、例えば、環状の不飽和脂肪族炭化水素基を含み、炭素数は、例えば、3~24または3~7である。前記環状の不飽和脂肪族炭化水素基は、例えば、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル等が挙げられ、好ましくは、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル等である。前記シクロアルケニルは、例えば、環中に不飽和結合を有する橋かけ環式炭化水素基およびスピロ炭化水素基も含む。
【0027】
本発明において、「アリールアルキル」は、例えば、ベンジル、2-フェネチル、およびナフタレニルメチル等が挙げられ、「シクロアルキルアルキル」は、例えば、シクロヘキシルメチル、アダマンチルメチル等が挙げられ、「ヒドロキシアルキル」は、例えば、ヒドロキシメチルおよび2-ヒドロキシエチル等が挙げられる。
【0028】
また、本発明において、「置換基」または「さらなる置換基」としては、特に限定されないが、例えば、カルボキシ、ハロゲン、ハロゲン化アルキル(例:CF3、CH2CF3、CH2CCl3)、ニトロ、ニトロソ、シアノ、アルキル(例:メチル、エチル、イソプロピル、tert-ブチル)、アルケニル(例:ビニル)、アルキニル(例:エチニル)、シクロアルキル(例:シクロプロピル、アダマンチル)、シクロアルキルアルキル(例:シクロヘキシルメチル、アダマンチルメチル)、シクロアルケニル(例:シクロプロペニル)、アリール(例:フェニル、ナフチル)、アリールアルキル(例:ベンジル、フェネチル)、ヘテロアリール(例:ピリジル、フリル)、ヘテロアリールアルキル(例:ピリジルメチル)、ヘテロシクリル(例:ピペリジル)、ヘテロシクリルアルキル(例:モルホリルメチル)、アルコキシ(例:メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ)、ペルフルオロアルキル(例:CF3),ハロゲン化アルコキシ(例:OCF3)、アシル、アルケニルオキシ(例:ビニルオキシ、アリルオキシ)、アリールオキシ(例:フェニルオキシ)、アルキルオキシカルボニル(例:メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、tert-ブトキシカルボニル)、アリールアルキルオキシ(例:ベンジルオキシ)、アミノ[アルキルアミノ(例:メチルアミノ、エチルアミノ、ジメチルアミノ)、アシルアミノ(例:アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ)、アリールアルキルアミノ(例:ベンジルアミノ、トリチルアミノ)、ヒドロキシアミノ)、アルキルアミノアルキル(例:ジエチルアミノメチル)、スルファモイル、オキソ等を含む。
【0029】
本発明において、「アルコキシ」は、例えば、前記アルキル-O-基を含み、例えば、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、およびn-ブトキシ等が挙げられ、「アルコキシアルキル」は、例えば、メトキシメチル等が挙げられ、「アミノアルキル」は、例えば、2-アミノエチル等が挙げられる。
【0030】
本発明において、「アシル」は、特に限定されないが、例えば、ホルミル、アセチル、プロピオニル、イソブチリル、バレリル、イソバレリル、ピバロイル、ヘキサノイル、シクロヘキサノイル、ベンゾイル、エトキシカルボニル、等が挙げられる。アシル基を構造中に含む基(アシルオキシ基、アルカノイルオキシ基等)においても同様である。また、本発明において、アシル基の炭素数にはカルボニル炭素を含み、例えば、炭素数1のアルカノイル基(アシル基)とはホルミル基を指すものとする。
【0031】
本発明において、「ハロゲン」とは、任意のハロゲン元素を指すが、例えば、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素が挙げられる。
【0032】
本発明において、「ペルフルオロアルキル」は、特に限定されないが、例えば、炭素数1~30の直鎖または分枝アルキル基から誘導されるペルフルオロアルキル基が挙げられる。前記「ペルフルオロアルキル」は、より具体的には、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチルおよびtert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、イコシル等の基から誘導されるペルフルオロアルキル基が挙げられる。ペルフルオロアルキル基を構造中に含む基(ペルフルオロアルキルスルホニル基、ペルフルオロアシル基等)においても同様である。
【0033】
また、本発明において、前述した各種基が、ヘテロ環であるか、またはヘテロ環を含む場合は、「炭素数」には、前記ヘテロ環を構成するヘテロ原子数も含むものとする。
【0034】
また、本発明において、置換基等に異性体が存在する場合は、特に断らない限り、どの異性体でもよい。例えば、「ナフチル基」という場合は、1-ナフチル基でも2-ナフチル基でもよく、「プロピル基」という場合は、n-プロピル基でもイソプロピル基でもよい。
【0035】
また、本発明の粘着シートは、前述のとおり、基材の少なくとも一方の面に粘着層が形成された粘着シートであって、前記粘着層が、本発明の粘着剤から形成された粘着層であることを特徴とする。本発明の粘着シートは、画像表示装置の画像表示面に貼付することにより、前記画像表示面の保護シートとして用いられる粘着シートであることが好ましい。
【0036】
本発明による粘着シートの製造方法は、前述のとおり、前記基材の、前記粘着層が形成される粘着層形成面に、本発明の粘着剤を塗工する塗工工程と、前記塗工工程後、前記粘着層形成面上において前記粘着剤を加熱する加熱工程とを含む、本発明の粘着シートを製造する方法である。前記塗工工程において、本発明の粘着剤が架橋剤(C)を含まない場合は、本発明の粘着剤を、架橋剤(C)とともに塗工することが好ましい。
【0037】
以下、本発明の実施形態について、さらに具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の実施形態に限定されない。
【0038】
[1.粘着剤]
前述のとおり、本発明の粘着剤は、水酸基を有するウレタンプレポリマー(A)(以下、「成分(A)」という場合がある。)と、非イオン性スルホン酸エステル(B)(以下「成分(B)」という場合がある。)とを含むことを特徴とする。
【0039】
[1-1.水酸基を有するウレタンプレポリマー(A)]
ウレタンプレポリマー(A)は、前述のとおり、水酸基を有するウレタンプレポリマーである。
【0040】
ウレタンプレポリマー(A)は、例えば、ポリオールおよびポリイソシアネートから合成されるポリウレタンポリオールであってもよい。なお、本発明において、「ウレタンプレポリマー」は、ポリウレタンのプレポリマーをいう。本発明において、「ポリウレタンポリオール」は、ポリウレタンのプレポリマーであって、水酸基を複数有するプレポリマーをいう。また、本発明において「プレポリマー」は、重合または架橋が途中まで進行した状態のポリマーであって、さらに重合または架橋を進行させることが可能なポリマーをいう。本発明において「ポリウレタンのプレポリマー」は、重合または架橋が途中まで進行した状態のポリウレタンであって、さらに重合または架橋を進行させたポリウレタンに変換可能なポリウレタンをいう。前記「ポリウレタンのプレポリマー」は、例えば、水酸基またはイソシアネート基を複数有することにより、さらに重合または架橋を進行させたポリウレタンに変換可能である。本発明において「ポリウレタンポリイソシアネート」は、特に断らない限り、イソシアネート基を複数(例えば、分子の両末端に)有することにより、さらに重合または架橋を進行させたポリウレタンに変換可能な、ポリウレタンのプレポリマーをいう。ただし、本発明において、ウレタンプレポリマー(A)は、前述のとおり、水酸基を有するウレタンプレポリマーである。また、本発明において、「ポリオール」は、1分子中に、水酸基(好ましくは、アルコール性水酸基およびフェノール性水酸基の少なくとも一方)を、複数(2または3以上)有する有機化合物をいう。「ポリイソシアネート」は、1分子中に、イソシアナト基(-N=C=O、イソシアネート基ともいう)を、複数(2または3以上)有する有機化合物(多官能イソシアネート)をいう。
【0041】
ウレタンプレポリマー(A)の水酸基価は、特に限定されないが、例えば、1mgKOH/g以上または10mgKOH/g以上であってもよく、例えば、50mgKOH/g以下、30mgKOH/g以下または25mgKOH/g以下であってもよい。ウレタンプレポリマー(A)の水酸基価は、例えば、1~50mgKOH/g、1~30mgKOH/g、10~30mgKOH/gまたは10~25mgKOH/gであってもよい。ウレタンプレポリマー(A)の水酸基価が前記所定の範囲内であると、例えば、粘着シートにおいて、良好な架橋密度の粘着層が得易く、濡れ性がより向上する。
【0042】
なお、ウレタンプレポリマー(A)の水酸基価の測定方法は、特に限定されないが、例えば、下記の方法により測定できる。
【0043】
[水酸基価の測定方法]
樹脂の水酸基価(OHV)は、JIS K1557-1:2007に準拠した測定法で測定することができる。具体的には、測定対象の樹脂(例えばウレタンプレポリマー(A))1gを無水酢酸でアセチル化し、中和するために要した水酸化カリウムのmg数を前記樹脂の水酸基価[mgKOH/g]とする。
【0044】
ウレタンプレポリマー(A)は、例えば、前述のとおり、ポリオールとイソシアネートとの付加物であってもよい。前記イソシアネートは、例えば、ポリイソシアネートであってもよい。ウレタンプレポリマー(A)は、例えば、前記ポリオールと前記イソシアネートとを反応させて製造することができる。また、ウレタンプレポリマー(A)の水酸基価の調整は、例えば、前記反応時における前記ポリオールの分子量を調整する方法、前記ポリオールの水酸基の官能基数を調整する方法、前記ポリオールと前記イソシアネートの配合比率を調整する方法等の、公知の方法により行うことができる。なお、前記ポリオールおよび前記イソシアネートの種類等は、後述の「2.粘着剤の製造方法」において、本発明の粘着剤の製造方法の例示とともに述べる。
【0045】
ウレタンプレポリマー(A)の原料である前記ポリオール1分子中の水酸基の官能基数は、特に限定されないが、例えば2~4であり、特に好ましくは3である。前記ポリオールの分子量(数平均分子量)も、特に限定されないが、例えば、1000~15000、1000~6000、または2000~5000であってもよい。前記ポリオールは、ポリエーテルポリオールを含むことが好ましい。例えば、前記ポリオールが、3官能の(1分子中に3個の水酸基を含む)ポリエーテルポリオールを含み、かつ、水酸基価が10~170mgKOH/gであることが好ましい。なお、ポリオールの水酸基価はウレタンプレポリマーの測定方法と同様の方法で測定できる。これにより、例えば、適度な架橋密度の粘着層が得やすい、低接着力で濡れ性が良好となる、粘着シートを加熱しても接着力が過度に上昇しない、粘着シートを被着体から剥離する際に粘着層の被着体への残留を抑制できる、等の効果が得られる。また、前記ポリオールは、例えば、ポリエーテルポリオールに加え、ポリエステルポリオール等を含んでいてもよい。
【0046】
ウレタンプレポリマー(A)の原料である前記ポリオールと前記イソシアネートとのNCO/OH比は、特に限定されないが、例えば、0.4以上または0.5以上であってもよく、例えば、0.9以下、0.7以下または0.6以下であってもよい。前記NCO/OH比は、例えば、0.4~0.9、0.4~0.7、0.4~0.6、0.5~0.9、0.5~0.7または0.5~0.6の範囲であってもよい。なお、前記NCO/OH比は、前記ポリオールおよび前記イソシアネートの全量中におけるイソシアネート基のモル数を水酸基のモル数で除算した値である。
【0047】
本発明の粘着剤の全質量中におけるウレタンプレポリマー(A)の含有率は、特に限定されないが、例えば、20~80質量%、30~70質量%、または40~60質量%であってもよい。
【0048】
[1-2.非イオン性スルホン酸エステル(B)]
非イオン性スルホン酸エステル(B)は、特に限定されず、例えば、芳香族スルホン酸エステルでもよいし、非芳香族スルホン酸エステルであってもよい。前記非芳香族スルホン酸エステルは、例えば、脂肪族スルホン酸エステルであってもよい。また、非イオン性スルホン酸エステル(B)は、一種類のみ用いても複数種類併用してもよい。
【0049】
なお、本発明において、「非イオン性」は、例えば、イオン性官能基を有しないか、または、有していても粘着剤の通常の使用条件下でイオン化しないことを意味する。前記イオン性官能基は、例えば、カルボキシ基、フェノール性水酸基等が挙げられる。
【0050】
非イオン性スルホン酸エステル(B)は、例えば、下記化学式(I)で表されるスルホン酸エステルであってもよい。
【0051】
【0052】
前記化学式(I)中において、R1は、脂肪族基または芳香族基である。R1において、前記脂肪族基は、特に限定されないが、例えば前述のとおりであり、例えば、アルキル基またはアルケニル基であり、例えば、炭素数1~18の直鎖もしくは分枝アルキル基、または炭素数1~18の直鎖もしくは分枝アルケニル基である。R1において、前記芳香族基は、特に限定されないが、例えば前述のとおりであり、例えばアリール基であり、例えばフェニル基である。また、前記芳香族基は、例えば、1または複数の置換基を有していても有していなくてもよく、前記置換基は、複数の場合は同一でも異なっていてもよい。
【0053】
前記化学式(I)中において、R2は、脂肪族基または芳香族基である。R2において、前記脂肪族基は、特に限定されないが、例えば前述のとおりであり、例えば、アルキル基またはアルケニル基であり、例えば、炭素数1~18の直鎖もしくは分枝アルキル基、または炭素数1~18の直鎖もしくは分枝アルケニル基である。R2において、前記芳香族基は、特に限定されないが、例えば前述のとおりであり、例えばアリール基であり、例えばフェニル基である。R2において、前記脂肪族基または前記芳香族基は、さらなる置換基を有していても有していなくてもよい。前記さらなる置換基は、1でも複数でもよく、複数の場合は同一でも異なっていてもよい。前記さらなる置換基は、特に限定されないが、例えば、前述の置換基でもよいし、または、前記化学式(I)中のR1-SO3-と同様の基であってもよい。
【0054】
前記化学式(I)で表されるスルホン酸エステルは、例えば、下記化学式(II)で表されるスルホン酸エステルであってもよい。
【0055】
【0056】
前記化学式(II)中において、Arは、芳香族基である。前記芳香族基は、特に限定されないが、例えば前述のとおりであり、例えばアリール基である。また、前記芳香族基は、例えば、1または複数の置換基を有していても有していなくてもよく、前記置換基は、複数の場合は同一でも異なっていてもよい。
【0057】
前記化学式(II)中において、R2は、前記化学式(I)と同じである。
【0058】
前記化学式(I)で表されるスルホン酸エステルは、例えば、下記化学式(III)で表されるスルホン酸エステルであってもよい。
【0059】
【0060】
前記化学式(III)中において、R2は、前記化学式(I)と同じである。
【0061】
前記化学式(III)中において、R3は、置換基であり、存在しても存在しなくてもよく、存在する場合は1でも複数でもよく、複数の場合は同一でも異なっていてもよい。
【0062】
非イオン性スルホン酸エステル(B)の具体例としては、例えば、p-トルエンスルホン酸メチル、p-トルエンスルホン酸エチル、p-トルエンスルホン酸n-オクチル、p-トルエンスルホン酸フェニル、メタンスルホン酸エチル、1,3-ビス(トシルオキシ)プロパン等が挙げられる。
【0063】
非イオン性スルホン酸エステル(B)の含有率は、特に限定されないが、ウレタンプレポリマー(A)の全質量に対し、例えば、0.1質量%以上、0.3質量%以上、0.5質量%以上、または1質量%以上でもよく、例えば、25質量%以下、13質量%以下、8質量%以下、または5質量%以下でもよい。なお、前記「ウレタンプレポリマー(A)の全質量」は、不純物(例えば、ウレタンプレポリマー(A)を溶液、エマルション等の形態で用いる場合の溶媒等)を除いたウレタンプレポリマー(A)のみの全質量をいう。耐被着体汚染性の観点からは、非イオン性スルホン酸エステル(B)が少なすぎないことが好ましい。また、非イオン性スルホン酸エステル(B)の加水分解生成物が製品安定性を悪化させたり、粘着シートに加工する際に架橋反応を阻害したりする現象を抑制する観点からは、非イオン性スルホン酸エステル(B)が多すぎないことが好ましい。
【0064】
[1-3.架橋剤(C)]
本発明の粘着剤は、前述のとおり、さらに、架橋剤(C)を含み、前記架橋剤(C)がポリイソシアネートであってもよい。なお、本発明において、「ポリイソシアネート」は、前述のとおり、1分子中に、イソシアネート基(イソシアナト基ともいう)すなわち(-N=C=O)を複数(2または3以上)有する有機化合物(多官能イソシアネート)をいう。
【0065】
本発明の粘着剤が、架橋剤(C)として前記ポリイソシアネートを含む場合、その含有量は、特に限定されないが、例えば、前記ポリウレタンポリオールの水酸基モル量に対して、前記ポリイソシアネートのイソシアネート基が0.5~5倍または1~4倍のモル量であってもよい。
【0066】
架橋剤(C)において、前記ポリイソシアネートとしては、特に限定されない。前記ポリイソシアネートは、例えば、後述の「2.粘着剤の製造方法」において例示する、ウレタンプレポリマー(A)の合成に用いるポリイソシアネートと同様でもよく、また、例えば、トリメチロールプロパンアダクト体、水と反応したビュウレット体、イソシアヌレート環を有する三量体等でもよく、一種類のみ用いても複数種類併用してもよい。
【0067】
[1-4:他の成分]
本発明の粘着剤は、前述のとおり、前記成分(A)および(B)を含む。前記成分(C)(架橋剤(C))は、前述のとおり、含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。また、本発明の粘着剤は、前記成分(A)~(C)以外の他の成分を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。例えば、本発明の粘着剤は、前記他の成分として、さらに、溶媒、可塑剤、酸化防止剤、架橋防止剤、充填剤、着色剤、紫外線吸収剤、消泡剤、光安定剤、レベリング剤、帯電防止剤等を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。それらの種類等は、特に限定されないが、例えば、一般的な粘着剤と同様またはそれに準じてもよい。
【0068】
前記帯電防止剤は、特に限定されないが、例えば、イオン性化合物であってもよい。前記イオン性化合物は、塩基性を示しうるイオン性化合物およびイオン性スルホン酸エステル化合物以外であることが好ましい。前記イオン性化合物としては、具体的には、例えば、塩化物、過塩素酸塩、酢酸塩、硝酸塩、より具体的には塩化リチウム、過塩素酸リチウム、過塩素酸ナトリウム、酢酸カリウム、トリフルオロ酢酸リチウム、硝酸リチウム等が挙げられる。
【0069】
前記可塑剤としては、例えば、カルボン酸エステル等が挙げられる。前記カルボン酸エステルとしては、特に限定されないが、例えば、特開2011-190420号公報、特開2015-151429号公報、特開2016-186029号公報に記載のカルボン酸エステル等であってもよい。前記カルボン酸エステルは、例えば、後述の実施例におけるカルボン酸エステル等であってもよい。前記可塑剤の含有率は、特に限定されないが、ウレタンプレポリマー(A)の全質量に対し、例えば、1質量%以上、3質量%以上、5質量%以上、または10質量%以上でもよく、例えば、150質量%以下、100質量%以下、75質量%以下、または60質量%以下でもよい。前記「ウレタンプレポリマー(A)の全質量」は、前述のとおり、不純物(例えば、ウレタンプレポリマー(A)を溶液、エマルション等の形態で用いる場合の溶媒等)を除いたウレタンプレポリマー(A)のみの全質量をいう。粘着シートの基材(例えばPETフィルム等)に対する粘着剤の密着性向上の観点からは、可塑剤が多いことが好ましい。一方、粘着剤の凝集力が低下しすぎて被着体から粘着シートを剥離する際に接着力が大きく上昇したり、被着体に粘着剤が残留したりする現象を抑制する観点からは、可塑剤が多すぎないことが好ましい。
【0070】
前記紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、例えば、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系等の紫外線吸収剤が挙げられる。前記消泡剤としては、特に限定されないが、例えば、シリコーン系、鉱物油系等の消泡剤が挙げられる。前記光安定剤としては、特に限定されないが、例えば、ヒンダードアミン系等の光安定剤が挙げられる。前記帯電防止剤としては、無機塩類、有機塩類等のイオン性化合物、ノニオン性界面活性剤等の非イオン性化合物が挙げられる。前記溶媒、前記酸化防止剤および前記架橋防止剤については、特に限定されないが、例えば、後述の「2.粘着剤の製造方法」において、本発明の粘着剤の製造方法の例示とともに説明するとおりである。
【0071】
また、本発明の粘着剤は、酸性成分を含んでいても含んでいなくてもよいが、酸性成分の含有率がなるべく小さいことが好ましい。粘着剤中の酸性成分の含有量が多すぎなければ、例えば、粘着剤の粘度が経時的に上昇する、粘着剤を基材(例えばPETフィルム等)に塗工する際に粘着剤の架橋反応を阻害する、粘着剤が塗工機等の金属部に触れると金属を腐食させてしまう等の問題を抑制することができる。非イオン性スルホン酸エステル(B)は加水分解の速度が遅く、酸性成分を発生しにくいので、本発明の粘着剤は、そのような問題を生じにくい。
【0072】
[2.粘着剤の製造方法]
本発明の粘着剤の製造方法は、前記成分(A)および(B)を用いること以外は特に限定されず、例えば、一般的な粘着剤の製造方法を参考にしてもよく、例えば、前記特許文献1等を参考にしてもよい。以下、主に、ウレタンプレポリマー(A)が、ポリオールおよびポリイソシアネートから合成されるポリウレタンポリオールである場合の製造方法について、例を挙げて説明する。
【0073】
まず、反応容器に、ポリオール、ポリイソシアネート、溶媒、および、必要に応じ触媒を入れ、加熱撹拌しながら反応を行う。前記ポリオールの使用量は、特に限定されないが、製造後の粘着剤の質量に対し、例えば20~80質量%、または40~60質量%である。前記ポリイソシアネートの使用量は、特に限定されないが、製造後の粘着剤の質量に対し、例えば0.5~10質量%、または1~5質量%である。前記溶媒の使用量は、特に限定されないが、製造後の粘着剤の質量に対し、例えば10~50質量%、または20~40質量%である。前記触媒は、使用しなくてもよいが、反応のスムーズな進行の観点から、使用することが好ましい。前記触媒を使用する場合、その使用量は、特に限定されないが、製造後の粘着剤の質量に対し、例えば0.001~0.1質量%である。前記反応の反応温度は、特に限定されないが、例えば30~80℃、または40~60℃である。前記反応の反応時間は、特に限定されないが、例えば0.5~15hr、0.5~4hr、または1~3hrである。このようにして、ポリウレタンポリオール(ウレタンプレポリマー(A))含有組成物を合成できる。
【0074】
なお、前記ポリウレタンポリオール含有組成物の合成においては、例えば、(1)ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、触媒、ポリイソシアネートを全量フラスコに仕込む方法、および、(2)ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、触媒をフラスコに仕込んでポリイソシアネ-トを滴下して添加する方法が可能である。(1)の方が簡便であるが、(2)の方が反応を制御しやすいため、必要に応じて使い分けることが可能である。
【0075】
さらに、合成した前記ポリウレタンポリオール含有組成物に、成分(B)を加え、均一になるまで撹拌する。このとき、必要に応じ、成分(C)(架橋剤(C))を加えてもよい。また、必要に応じ、成分(A)~(C)以外の他の成分を加えてもよい。前記他の成分は、例えば、溶媒を含んでいてもよく、また、前述のように、酸化防止剤、架橋防止剤、カルボン酸エステル等を含んでいてもよい。このようにして、本発明の粘着剤を得ることができる。
【0076】
架橋剤(C)において、前記ポリイソシアネートとしては、特に限定されないが、以下において例示する、ポリウレタンポリオール(ウレタンプレポリマー(A))含有組成物の合成に用いるポリイソシアネートと同様でもよく、また、例えば、トリメチロールプロパンアダクト体、水と反応したビュウレット体、イソシアヌレート環を有する三量体等でもよく、一種類のみ用いても複数種類併用してもよい。架橋剤(C)において、前記ポリイソシアネートの使用量は、特に限定されないが、例えば、ウレタンプレポリマー(A)の水酸基のモル量に対して、前記ポリイソシアネートのイソシアネート基が0.5~5倍または1~4倍のモル量、または前記ポリウレタンポリイソシアネートのイソシアネート基のモル量に対して、前記ポリオールの水酸基が0.5~5倍または1~4倍のモル量が好ましい。
【0077】
前記溶媒は、使用しなくてもよいが、本発明の粘着剤を構成する各成分のスムーズな混合の観点から、使用することが好ましい。前記触媒を使用する場合、その使用量は、特に限定されないが、製造後の粘着剤の質量に対し、例えば0.001~0.1質量%、または0.01~0.05質量%である。前記酸化防止剤は、使用しなくてもよいが、使用することが好ましい。前記酸化防止剤を使用する場合、その使用量は、特に限定されないが、製造後の粘着剤の質量に対し、例えば0.05~1質量%、または0.1~0.6質量%である。前記脂肪酸エステルを使用する場合、その使用量は、特に限定されないが、製造後の粘着剤の質量に対し、例えば5~50質量%、または10~30質量%である。
【0078】
以下、ポリウレタンポリオール(ウレタンプレポリマー(A))含有組成物の合成について、さらに詳しく説明する。
【0079】
ウレタンプレポリマー(A)の原料である前記ポリオールは、特に限定されず、例えば、二官能(一分子中に水酸基を二個有する)でも三官能以上(一分子中に水酸基を三個以上有する)でもよいが、三官能以上であることが好ましく、三官能であることが特に好ましい。また、前記ポリオールは、一種類のみ用いても複数種類併用してもよい。前記ポリオールは、特に限定されないが、例えば、ポリエステルポリオールおよびポリエーテルポリオールの一方または両方でもよい。
【0080】
前記ポリエステルポリオールとしては、特に限定されず、例えば、公知のポリエステルポリオールでもよい。前記ポリエステルポリオールの酸成分としては、例えば、テレフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸等が挙げられる。前記ポリエステルポリオールのグリコール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ブチレングリコール、1,6-ヘキサングリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3’-ジメチロールヘプタン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ブチルエチルペンタンジオール等が挙げられる。前記ポリエステルポリオールのポリオール成分としては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。その他、ポリカプロラクトン、ポリ(β-メチル-γ-バレロラクトン)、ポリバレロラクトン等のラクトン類を開環重合して得られるポリエステルポリオール等も挙げられる。
【0081】
前記ポリエステルポリオールの分子量は、特に限定されず、低分子量から高分子量まで使用可能である。好ましくは数平均分子量が500~5,000のポリエステルポリオールを用いる。数平均分子量が500以上であれば、反応性が高過ぎてゲル化することを防止しやすい。また、数平均分子量が5,000以下であれば、反応性の低下、および、ポリウレタンポリオール自体の凝集力の低下を防止しやすい。前記ポリエステルポリオールは、使用しても使用しなくてもよいが、使用する場合の使用量は、例えば、前記ポリウレタンポリオールを構成するポリオール中10~90モル%、または10~50モル%であってもよい。
【0082】
また、前記ポリエーテルポリオールは、特に限定されず、例えば、公知のポリエーテルポリオールであってもよい。具体的には、前記ポリエーテルポリオールは、例えば、水、またはプロピレングリコール、エチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン等の低分子量ポリオールを開始剤として用いて、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン等のオキシラン化合物を重合させることにより得られるポリエーテルポリオールであってもよい。さらに具体的には、前記ポリエーテルポリオールは、例えば、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の官能基数が2以上のものであってもよい。前記ポリエーテルポリオールの分子量は特に限定されず、低分子量から高分子量まで使用可能である。例えば、数平均分子量が1,000~15,000のポリエーテルポリオールを用いてもよい。数平均分子量が1,000以上であれば、反応性が高過ぎてゲル化することを防止しやすい。また、数平均分子量が15,000以下であれば、反応性の低下、および、ポリウレタンポリオール自体の凝集力の低下を防止しやすい。前記ポリエーテルポリオールは、使用しても使用しなくてもよいが、使用する場合の使用量は、例えば、前記ポリウレタンポリオールを構成するポリオール中20~100モル%、または20~80モル%であってもよい。
【0083】
前記ポリエーテルポリオールは、必要に応じ、その一部を、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ブチルエチルペンタンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等のグリコール類、エチレンジアミン、N-アミノエチルエタノールアミン、イソホロンジアミン、キシリレンジアミン等の多価アミン類に置き換えて併用してもよい。
【0084】
前述のとおり、前記ポリオールは、二官能(一分子中に水酸基を二個有する)のポリエーテルポリオールでもよいが、三官能以上(一分子中に水酸基を三個以上有する)であることが好ましい。特に、数平均分子量が1,000~15,000であり、かつ三官能以上のポリオールを一部もしくは全部用いることにより、更に粘着力と再剥離性のバランスがとりやすくなる。数平均分子量が1,000以上であれば、三官能以上のポリオールの反応性が高過ぎてゲル化することを防止しやすい。また、数平均分子量が15,000以下であれば、三官能以上のポリオールの反応性の低下、および、ポリウレタンポリオール自体の凝集力の低下を防止しやすい。例えば、数平均分子量が2,500~3,500で三官能以上のポリオールを一部もしくは全部用いてもよい。
【0085】
ウレタンプレポリマー(A)の原料である前記ポリイソシアネート(有機ポリイソシアネート化合物)としては、特に限定されないが、例えば、公知の芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート等が挙げられる。また、ポリイソシアネートは、一種類のみ用いても複数種類併用してもよい。
【0086】
前記芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-トルイジンジイソシアネート、2,4,6-トリイソシアネートトルエン、1,3,5-トリイソシアネートベンゼン、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’,4”-トリフェニルメタントリイソシアネート等が挙げられる。
【0087】
前記脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0088】
前記芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、ω,ω’-ジイソシアネート-1,3-ジメチルベンゼン、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジメチルベンゼン、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼン、1,4-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,3-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0089】
前記脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
【0090】
また、一部の上記ポリイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、水と反応したビュウレット体、イソシアヌレート環を有する三量体等も併用することができる。
【0091】
前記ポリイソシアネートとしては、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート)等が好ましい。
【0092】
前記触媒としては、特に限定されず、例えば、公知の触媒を使用することができる。前記触媒としては、例えば、3級アミン系化合物、有機金属系化合物等が挙げられる。
【0093】
前記3級アミン系化合物としては、例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン-7(DBU)等が挙げられる。
【0094】
前記有機金属系化合物としては、錫系化合物、非錫系化合物を挙げることができる。前記錫系化合物としては、例えば、ジブチル錫ジクロライド、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジブロマイド、ジブチル錫ジマレエート、ジブチル錫ジラウレート(DBTDL)、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫スルファイド、トリブチル錫スルファイド、トリブチル錫オキサイド、トリブチル錫アセテート、トリエチル錫エトキサイド、トリブチル錫エトキサイド、ジオクチル錫オキサイド、ジオクチル錫ジラウレート、トリブチル錫クロライド、トリブチル錫トリクロロアセテート、2-エチルヘキサン酸錫等が挙げられる。前記非錫系化合物としては、例えば、ジブチルチタニウムジクロライド、テトラブチルチタネート、ブトキシチタニウムトリクロライドなどのチタン系、オレイン酸鉛、2-エチルヘキサン酸鉛、安息香酸鉛、ナフテン酸鉛などの鉛系、2-エチルヘキサン酸鉄、鉄アセチルアセトネートなどの鉄系、安息香酸コバルト、2-エチルヘキサン酸コバルトなどのコバルト系、ナフテン酸亜鉛、2-エチルヘキサン酸亜鉛などの亜鉛系、ナフテン酸ジルコニウム等が挙げられる。
【0095】
これらの触媒を使用する場合、例えば、ポリエステルポリオールとポリエーテルポリオールの2種類のポリオールが存在する系では、その反応性の相違により、単独の触媒の系ではゲル化したり、反応溶液が濁るという問題が生じやすい。そのような場合は、例えば、二種類以上の触媒を併用することにより、反応速度、触媒の選択性等が制御可能となり、これらの問題を解決することができる。その組み合わせとしては、例えば、3級アミン/有機金属系、錫系/非錫系、錫系/錫系等が用いられるが、好ましくは錫系/錫系、更に好ましくはジブチル錫ジラウレートと2-エチルヘキサン酸錫の組み合わせである。その配合比は、特に限定されないが、例えば、質量比で2-エチルヘキサン酸錫/ジブチル錫ジラウレートが1未満であり、例えば0.2~0.6であってもよい。配合比(質量比)が1未満であれば、触媒活性のバランスによるゲル化を防止しやすい。これらの触媒使用量は、特に限定されないが、例えば、ポリオールと有機ポリイソシアネートの総量に対して0.01~1.0質量%または0.01~0.2質量%である。
【0096】
前記触媒を使用する場合、前記ポリウレタンポリオール合成の反応温度は、例えば、100℃未満、または40℃~60℃であってもよい。100℃未満であれば、反応速度および架橋構造の制御がしやすく、所定の分子量を有するポリウレタンポリオールが得やすい。
【0097】
また、前記触媒を使用しない(無触媒)場合、前記ポリウレタンポリオール合成の反応温度は、例えば、100℃以上、または110℃以上であってもよい。また、無触媒下では、前記ポリウレタンポリオール合成の反応時間は、例えば、3時間以上である。
【0098】
ウレタンプレポリマー(A)合成に用いる前記溶媒は、特に限定されず、例えば、公知の溶媒を使用できる。前記溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル等のエステル、トルエン、キシレン等の炭化水素等が挙げられる。ポリウレタンポリオールの溶解性、溶媒の沸点等の点から、トルエンが特に好ましい。
【0099】
また、前記酸化防止剤としては、特に限定されないが、例えば、フェノール系、イオウ系等の酸化防止剤が挙げられる。
【0100】
なお、本発明において、ウレタンプレポリマー(A)の分子量、分子量分散度等は、特に限定されない。ウレタンプレポリマー(A)の数平均分子量は、ウレタンプレポリマー(A)の製造原料として使用したポリイソシアネートおよびポリオールそれぞれの分子量、ならびに、前記ポリイソシアネートと前記ポリオールとの反応比(NCO/OH当量比)が定まれば理論的に算出できる(特開2017-025147号公報)。
【0101】
[3.粘着シートおよびその製造方法、用途等]
つぎに、本発明の粘着シートおよびその製造方法、用途等について、例を挙げて説明する。
【0102】
本発明の粘着シートは、前述のとおり、基材の少なくとも一方の面に粘着層が形成された粘着シートであって、前記粘着層が、本発明の粘着剤から形成された粘着層であることを特徴とする。その製造方法は、特に限定されないが、例えば、本発明の製造方法(本発明の粘着シートの製造方法)により製造することができる。
【0103】
本発明の粘着シートの製造方法は、前述のとおり、前記基材の、前記粘着層が形成される粘着層形成面に、本発明の粘着剤を塗工する塗工工程と、前記塗工工程後、前記粘着層形成面上において前記粘着剤を加熱する加熱工程とを含む、本発明の粘着シートを製造する方法である。以下、主に、ウレタンプレポリマー(A)が、ポリオールおよびポリイソシアネートから合成されるポリウレタンポリオールを含む場合の、本発明の粘着シートの製造方法について、例を挙げて説明する。
【0104】
すなわち、まず、前記基材の、前記粘着層が形成される粘着層形成面に、本発明の粘着剤を塗工する(塗工工程)。前記基材は、特に限定されず、例えば、プラスチック、ポリウレタン、紙、金属箔などが挙げられるが、プラスチックが好ましい。前記プラスチックとしては、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PC(ポリカーボネート)等が挙げられる。
【0105】
前記基材の形状も特に限定されず、例えば、シート、フィルム、発泡体等が挙げられる。前記基材は、製造後の粘着シートの取扱いやすさ、保存のしやすさ等の観点から、例えば、巻き取り可能な長尺のテープ状であることが好ましい。
【0106】
また、前記基材は、例えば、必要に応じて、前記基材の粘着層形成面に、易接着処理を施した基材であってもよい。前記易接着処理は、特に限定されないが、具体的には、例えば、コロナ放電を処理する方法、アンカーコート剤を塗布する方法等が挙げられる。
【0107】
本発明の粘着剤が、架橋剤(C)を含まない場合は、例えば、前記塗工工程に先立ち、架橋剤(C)を混合することが好ましい。架橋剤(C)がポリイソシアネートを含む場合、前記ポリイソシアネートとしては、特に限定されないが、前記「2.粘着剤の製造方法」で例示したポリイソシアネート、および、トリメチロールプロパンアダクト体、水と反応したビュウレット体、イソシアヌレート環を有する三量体等が挙げられ、一種類のみ用いても複数種類併用してもよい。また、架橋剤(C)の使用量については、例えば、前述のとおりである。さらに、本発明の粘着剤と架橋剤(C)とを混合しやすくする目的、または前記基材に塗工しやすくする目的等で、前記塗工工程に先立ち、さらに溶媒を混合してもよい。前記溶媒の種類等は、特に限定されないが、例えば、前記「2.粘着剤の製造方法」で例示した溶媒と同様であり、一種類のみ用いても複数種類併用してもよい。
【0108】
前記塗工工程における塗工方法は、特に限定されず、公知の方法でもよい。前記塗工方法としては、例えば、ロールコーター法、コンマコーター法、ダイコーター法、リバースコーター法、シルクスクリーン法、グラビアコーター法等が挙げられる。
【0109】
また、前記塗工工程における前記粘着剤の塗工量(塗布量)は、特に限定されないが、製造される粘着シートにおける粘着層の厚みが、例えば、1~50μm、5~30μm、7~20μm、または10~15μmとなるようにする。
【0110】
さらに、前記塗工工程後、前記粘着層形成面上において前記粘着剤を加熱する(加熱工程)。なお、以下において、前記加熱工程を、後述する第2の加熱工程と区別するために「第1の加熱工程」ということがある。前記加熱工程(第1の加熱工程)における加熱温度は、特に限定されないが、例えば、60℃以上、60℃を超える温度、90℃以上、または90℃を超える温度であり、または100℃以上、または130℃以上である。前記加熱温度の上限値は、特に限定されないが、例えば、150℃以下である。
【0111】
粘着シートの保存時、取扱い時等に、前記粘着層が前記基材の端からはみ出すことを防止するためには、前記加熱工程における加熱温度を、なるべく高くすることが好ましい。前記加熱温度をなるべく高くすることにより、例えば、本発明の粘着剤と架橋剤(C)との架橋(硬化)反応が十分に進行しやすいため、前記はみ出しを防止できると推測される。ただし、このメカニズムは推測であって、本発明を何ら限定しない。
【0112】
一般的に、粘着剤を基材に塗工した後の加熱温度が高すぎると、前記粘着層の、前記基材に対する密着性が低下するおそれがある。一方、本発明の粘着剤によれば、例えば、高温で加熱しても、前記基材に対する密着性が良好であり、かつ、前記基材に対するハジキおよびはみ出しを防止できる。
【0113】
また、前記加熱工程(第1の加熱工程)における加熱時間は、特に限定されないが、例えば、塗工した前記粘着剤の乾燥(溶媒の除去)が十分であり、かつ、前記基材が熱により損傷しない程度の時間が好ましい。具体的な前記加熱時間は、前記溶媒および前記基材の種類等にもよるが、例えば30~240秒、または60~180秒である。
【0114】
さらに、本発明による粘着シートの製造方法において、前記加熱工程(第1の加熱工程)後に、前記加熱工程よりも低い温度で加熱する第2の加熱工程を含むことが好ましい。前記第2の加熱工程は、行っても行わなくてもよいが、これを行うことにより、前記基材の端からの粘着層のはみ出しを、さらに効果的に防止できる。前記第2の加熱工程において起こる現象は不明であるが、例えば、粘着層の硬化(架橋)がさらに進行していると推測される。ただし、この推測は、本発明を何ら限定しない。前記第2の加熱工程における加熱温度は、特に限定されないが、例えば30~50℃、または35~45℃である。また、前記第2の加熱工程における加熱時間は、特に限定されないが、例えば24~120hr、または48~96hrである。
【0115】
本発明の粘着シートの用途は、特に限定されないが、前述のとおり、画像表示装置の画像表示面に貼付することにより、前記画像表示面の保護シートとして用いることが好ましい。また、この用途に用いる場合、例えば、前記基材が透明であることが、より好ましい。
【0116】
本発明の画像表示装置は、前述のとおり、画像表示面に、前記画像表示装置の保護シートが貼付された画像表示装置であって、前記保護シートが、本発明の粘着シートであることを特徴とする。前記画像表示装置としては、特に限定されないが、例えば、携帯電話、スマートフォン、タブレット型コンピューター等が挙げられる。ただし、本発明の粘着シートの用途は、画像表示装置用に限定されず、例えば、自動車、建物等の窓ガラスの保護シートとしても用いることができる。また、本発明の粘着シートは、例えば、ガラスに限定されず、透明導電膜としてガラス基板上に加工されたITO(Indium Tin Oxide、酸化インジウムスズ)用の保護シートとしても用いることができる。さらに、本発明の粘着シートの用途は、これらに限定されず、例えば、一般的な粘着シート、粘着フィルム、粘着テープ等と同様の用途に広く使用可能である。本発明の粘着シートは、例えば、湿熱下に暴露されても剥離後に被着体を汚染することがなく、濡れ性に優れ、かつ、粘着剤と基材との密着性に優れるため、前述のとおり広い用途に使用できる。また、本発明の粘着剤の用途も、特に本発明の粘着シートのみに限定されず、例えば、一般的な粘着剤と同様の用途に広く使用可能である。
【0117】
本発明の粘着シートの形態も特に限定されないが、例えば、保管時には、前記粘着層上にセパレータを貼付して前記粘着層を保護し、使用(例えば、画像表示装置等への貼付)直前に前記セパレータを剥離することが好ましい。また、例えば、本発明の粘着シートが、巻き取り可能な長尺のテープ状であり、巻き取って保管することが好ましい。本発明の粘着テープによれば、例えば、巻き取り時、および保管時等において、前記粘着層が粘着テープの端からはみ出すことを防止できる。
【実施例】
【0118】
以下、本発明の実施例について説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0119】
以下の実施例および比較例において使用した原料名(化合物名)と、その製品名(商品名)および製造元とを、下記表1にまとめて示す。
【0120】
【0121】
[合成例1]
以下の手順に従い、ウレタンプレポリマー(A)を合成し、ウレタンプレポリマー(A)溶液を調製した。
【0122】
撹拌機、還流冷却管、温度計を備えたセパラブルフラスコに、グリセリンPO・EO、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエン、DBTDLを仕込み、撹拌しながら60℃で3時間反応を行った。反応後の内容物のNCO基を、赤外分光光度計(IR)を用いて測定したところ、NCO基の残留は確認できなかった。これにより、ウレタンプレポリマー(A)の合成が完了していることが確認できた。そして、この内容物を40℃以下まで冷却し、酸化防止剤および酢酸エチルを加え、ウレタンプレポリマー(A)溶液とした。この溶液を、以下の実施例および比較例に用いた。なお「グリセリンPO・EO」はグリセリンのプロピレンオキシドおよびエチレンオキシド付加物を表す。「DBTDL」はジブチルスズジラウレートを表す。
【0123】
[合成例2]
グリセリンPO・EOに代えてグリセリンPOを用いたこと以外は合成例1と同様にしてウレタンプレポリマー(A)を合成し、ウレタンプレポリマー(A)溶液を調製した。なお、「グリセリンPO」はグリセリンのプロピレンオキシド付加物を表す。
【0124】
[合成例3]
ポリオールとして、グリセリンPO・EOに加えてプルロニック型ポリオールを併用したこと以外は合成例1と同様にしてウレタンプレポリマー(A)を合成し、ウレタンプレポリマー(A)溶液を調製した。なお、「プルロニック型ポリオール」はポリプロピレングリコールのエチレンオキシド付加物を表す。
【0125】
[合成例4]
ポリオールとして、グリセリンPO・EOに加えてポリプロピレングリコールを併用したこと以外は合成例1と同様にしてウレタンプレポリマー(A)を合成し、ウレタンプレポリマー(A)溶液を調製した。
【0126】
[合成例5]
ヘキサメチレンジイソシアネートに代えて4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートを用いたこと以外は合成例1と同様にしてウレタンプレポリマー(A)を合成し、ウレタンプレポリマー(A)溶液を調製した。
【0127】
[合成例6]
ポリオールとして、グリセリンPOの分子量を4,000に変更したものを使用したこと以外は合成例5と同様にしてウレタンプレポリマー(A)を合成し、ウレタンプレポリマー(A)溶液を調製した。
【0128】
[合成例7]
ポリオールとして、グリセリンPOの分子量を10,000に変更したものを使用したこと以外は合成例2と同様にしてウレタンプレポリマー(A)を合成し、ウレタンプレポリマー(A)溶液を調製した。
【0129】
前記合成例1~7におけるウレタンプレポリマー(A)の合成およびウレタンプレポリマー(A)溶液の調製で用いた各成分の成分量(質量部)を、下記表2にまとめて示す。
【0130】
【0131】
[実施例1]
合成例1のウレタンプレポリマー溶液100質量部(固形分として60質量部)にp-トルエンスルホン酸メチル(非イオン性スルホン酸エステル(B))3質量部およびヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(架橋剤(C)、旭化成株式会社社、商品名デュラネートTKA-100)6質量部を配合し、よく撹拌したものを実施例1の粘着剤(塗工液)とした。
【0132】
[実施例2]
合成例1のウレタンプレポリマー溶液に代えて合成例2のウレタンプレポリマー溶液を用いたこと以外は実施例1と同様にして粘着剤を製造した。
【0133】
[実施例3]
合成例1のウレタンプレポリマー溶液に代えて合成例3のウレタンプレポリマー溶液を用いたこと以外は実施例1と同様にして粘着剤を製造した。
【0134】
[実施例4]
合成例1のウレタンプレポリマー溶液に代えて合成例4のウレタンプレポリマー溶液を用いたこと以外は実施例1と同様にして粘着剤を製造した。
【0135】
[実施例5]
合成例1のウレタンプレポリマー溶液に代えて合成例5のウレタンプレポリマー溶液を用いたこと以外は実施例1と同様にして粘着剤を製造した。
【0136】
[実施例6]
合成例1のウレタンプレポリマー溶液に代えて合成例6のウレタンプレポリマー溶液を用いたこと以外は実施例1と同様にして粘着剤を製造した。
【0137】
[実施例7]
合成例1のウレタンプレポリマー溶液に代えて合成例7のウレタンプレポリマー溶液を用いたこと以外は実施例1と同様にして粘着剤を製造した。
【0138】
[実施例8]
p-トルエンスルホン酸メチル(非イオン性スルホン酸エステル(B))の添加量を1質量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして粘着剤を製造した。
【0139】
[実施例9]
非イオン性スルホン酸エステル(B)として、p-トルエンスルホン酸メチルに代えて同じ質量のp-トルエンスルホン酸エチルを用いたこと以外は実施例1と同様にして粘着剤を製造した。
【0140】
[実施例10]
p-トルエンスルホン酸エチル(非イオン性スルホン酸エステル(B))の添加量を1質量部に変更したこと以外は実施例9と同様にして粘着剤を製造した。
【0141】
[実施例11]
非イオン性スルホン酸エステル(B)として、p-トルエンスルホン酸メチルに代えて同じ質量のp-トルエンスルホン酸n-オクチルを用いたこと以外は実施例1と同様にして粘着剤を製造した。
【0142】
[実施例12]
p-トルエンスルホン酸n-オクチル(非イオン性スルホン酸エステル(B))の添加量を1質量部に変更したこと以外は実施例11と同様にして粘着剤を製造した。
【0143】
[実施例13]
非イオン性スルホン酸エステル(B)として、p-トルエンスルホン酸メチルに代えて同じ質量の1,3-ビス(トシルオキシ)プロパンを用いたこと以外は実施例8と同様にして粘着剤を製造した。
【0144】
[実施例14]
下記化学式(1001)で表されるカルボン酸エステル(nは平均12)30質量部をさらに配合したこと以外は実施例8と同様にして粘着剤を製造した。
【0145】
【0146】
[実施例15]
p-トルエンスルホン酸メチル(非イオン性スルホン酸エステル(B))の添加量を0.5質量部に変更したこと以外は実施例14と同様にして粘着剤を製造した。
【0147】
[実施例16]
p-トルエンスルホン酸メチル(非イオン性スルホン酸エステル(B))の添加量を0.25質量部に変更したこと以外は実施例14と同様にして粘着剤を製造した。
【0148】
[実施例17]
下記化学式(1010)で表されるカルボン酸エステル(nは平均10)30質量部をさらに配合したこと以外は実施例8と同様にして粘着剤を製造した。
【0149】
【0150】
[実施例18]
実施例14のヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(架橋剤(C)、旭化成株式会社、商品名 デュラネートTKA-100)6質量部に代えて、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体(旭化成株式会社、商品名 デュラネート24A-100)6質量部を用いたこと以外は実施例14と同様にして粘着剤を製造した。
【0151】
[実施例19]
実施例14のヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(架橋剤(C)、旭化成株式会社、商品名 デュラネートTKA-100)6質量部に代えて、ヘキサメチレンジイソシアネートの2官能型(旭化成株式会社、商品名 デュラネートD101)7質量部を用いたこと以外は実施例14と同様にして粘着剤を製造した。
【0152】
[実施例20]
実施例14のヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(架橋剤(C)、旭化成株式会社、商品名 デュラネートTKA-100)6質量部に代えて、トルエンジイソシアネートのアダクト体(東ソー株式会社、商品名 コロネートL)10質量部を用いたこと以外は実施例14と同様にして粘着剤を製造した。
【0153】
[実施例21]
実施例14のヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(架橋剤(C)、旭化成株式会社、商品名 デュラネートTKA-100)6質量部に代えて、ヘキサメチレンジイソシアネートの無黄変タイプ(東ソー株式会社、商品名 コロネートHL)11質量部を用いたこと以外は実施例14と同様にして粘着剤を製造した。
【0154】
[実施例22]
実施例14のヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(架橋剤(C)、旭化成株式会社、商品名 デュラネートTKA-100)6質量部に代えて、キシリレンジイソシアネートのアダクト体(三井化学株式会社、商品名 タケネートD-110N)12質量部を用いたこと以外は実施例14と同様にして粘着剤を製造した。
【0155】
[実施例23]
実施例14のヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(架橋剤(C)、旭化成株式会社、商品名 デュラネートTKA-100)6質量部に代えて、イソホロンジイソシアネートのアダクト体(三井化学株式会社、商品名 タケネートD-140N)13質量部を用いたこと以外は実施例14と同様にして粘着剤を製造した。
【0156】
[実施例24]
実施例14のヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(架橋剤(C)、旭化成株式会社、商品名 デュラネートTKA-100)6質量部に代えて、トルエンジイソシアネートのイソシアヌレート体(三井化学株式会社、商品名 タケネートD-262)18質量部を用いたこと以外は実施例14と同様にして粘着剤を製造した。
【0157】
[比較例1]
p-トルエンスルホン酸メチル(非イオン性スルホン酸エステル(B))を配合しなかったこと以外は実施例1と同様にして粘着剤を製造した。
【0158】
[比較例2]
前記化学式(1010)で表されるカルボン酸エステル(nは平均10)1質量部をさらに配合したこと以外は比較例1と同様にして粘着剤を製造した。
【0159】
[比較例3]
前記化学式(1010)で表されるカルボン酸エステル(nは平均10)30質量部をさらに配合したこと以外は比較例1と同様にして粘着剤を製造した。
【0160】
以上のようにして製造した実施例および比較例の粘着剤について、下記の方法により、接着力(剥離力)、濡れ性、および耐被着体汚染性を評価した。それらの結果を、下記表3および4にまとめて示す。
【0161】
1.接着力
接着力の評価には、厚み50μmのPETフィルム上に塗工液(粘着剤)を塗工して製造した粘着シートを試料として用いた。23℃×湿度50%RHの環境下で、前記試料を25mm幅にカットし、被着体(ガラス板)に2kgローラー3往復の荷重で貼り合わせた。これを1時間養生後、前記試料の一端をオートグラフで180°方向に300mm/分の速度で引き剥がしたときの剥離力(N/25mm)を接着力とした。粘着シートとしての剥離力は再剥離性の観点からは、この接着力(剥離力)が過剰に大きくないことが好ましく、0.1N/25mm以下であることが好ましい。
【0162】
2.濡れ性
濡れ性の評価には、厚み50μmのPETフィルム上に塗工液を塗工して製造した粘着シートを試料として用いた。前記試料を5cm×10cmにカットし、45°傾けた状態で前記試料の幅5cmの一辺のみをガラス板に接触させた。その後、手を離し、前記試料全面がガラス板に接触する(ガラス板を濡らす)のに要した時間(秒)を濡れ性の評価とした。前記時間(秒)が短いほど、前記ガラス板に対する濡れ性(密着性)が高いことになる。濡れ性が高いほど、被着体(本実施例では前記ガラス板)に対し、素早く貼り合わせることができる。濡れ性は10秒/10cm以下であることが好ましい。
【0163】
3.耐被着体汚染性
耐被着体汚染性の評価には、厚み50μmのPETフィルム上に塗工液を塗工して製造した粘着シートを試料として用いた。前記試料を4cm×10cmにカットし、ガラス板またはPETフィルムに粘着シートを貼り合わせた。これを80℃×湿度80%RHの恒温恒湿器内に72時間静置した後、さらに23℃×湿度50%RHの環境下に1時間静置した。次に粘着シートをガラス板またはPETフィルムから剥離し、粘着シートが貼り合わされていた部分のガラス表面の白色汚染の状態を目視評価し、これを耐被着体汚染性の評価結果とした。なお、白色汚染の状態は暗室で白色光を照射して評価した。
(耐被着体汚染性の評価結果)
◎:ガラス表面に白色汚染物は全くみられなかった。
○:ガラス表面の一部に点状の白色汚染物がみられた。
△:ガラス表面にまだら状に白色汚染物がみられた。
×:ガラス表面の全面に白色汚染物がみられた。
【0164】
【0165】
【0166】
表3および4に示したとおり、成分(A)~(C)を全て含む実施例1~24の粘着剤は、接着力(再剥離性)、濡れ性、および耐被着体汚染性の全てが良好であった。すなわち、実施例1~24の粘着剤は、再剥離性と、濡れ性と、耐被着体汚染性の全てを同時に満足することが可能であった。これに対し、非イオン性スルホン酸エステル(B)を含まない比較例1~3の粘着剤は、接着力(再剥離性)および濡れ性は良好であったものの、耐被着体汚染性が、実施例と比較して劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0167】
以上、説明したとおり、本発明によれば、再剥離性、濡れ性、高温高湿下での耐被着体汚染性を満足することが可能な粘着剤、粘着シート、粘着シートの製造方法、および画像表示装置を提供することができる。本発明の粘着剤、粘着シートおよび粘着シートの製造方法は、例えば、携帯電話、スマートフォン、自動車、建物等の窓ガラスの保護シートとして用いることができる。また、本発明は、これに限定されず、様々な用途において広範に使用可能であり、例えば、一般的な粘着剤、粘着シートおよび粘着シートの製造方法が使用される分野に広く適用可能である。