IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ テクノポリマー株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-10
(45)【発行日】2022-08-19
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂組成物およびその成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 33/10 20060101AFI20220812BHJP
   C08L 51/04 20060101ALI20220812BHJP
   C08K 5/17 20060101ALI20220812BHJP
【FI】
C08L33/10
C08L51/04
C08K5/17
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018219572
(22)【出願日】2018-11-22
(65)【公開番号】P2020084011
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】396021575
【氏名又は名称】テクノUMG株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】熱田 裕之
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-346237(JP,A)
【文献】特開2005-132987(JP,A)
【文献】特開2012-52054(JP,A)
【文献】特表2015-537090(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L1/00-101/14
C08K3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル酸エステル単量体および芳香族ビニル単量体を含むビニル系単量体混合物(m1)を重合して得られる(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)と、
分子量が200~1800であるヒンダートアミン系化合物(C)と、
250~300nmに最大吸収波長を有する紫外線吸収化合物(D)と、
を含む熱可塑性樹脂組成物であって、
前記熱可塑性樹脂組成物は、ゴム状重合体(b1)の存在下にビニル系単量体混合物(m2)をグラフト重合して得られるグラフト共重合体(B)を含んでいてもよく、
前記ビニル系単量体混合物(m1)の総質量に対して、前記(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有量が50質量%以上80質量%未満であり、前記芳香族ビニル単量体の含有量が12~39質量%であり、
前記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)および前記グラフト共重合体(B)の合計100質量部に対して、前記ヒンダートアミン系化合物(C)の含有量が0.4~1.8質量部であり、前記紫外線吸収化合物(D)の含有量が0.1~1.6質量部であり、かつ前記ヒンダートアミン系化合物(C)および前記紫外線吸収化合物(D)の含有量の合計が2.0質量部以下である、熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
前記グラフト共重合体(B)は、前記ゴム状重合体(b1)20~80質量%の存在下に、前記ビニル系単量体混合物(m2)20~80質量%(ただし、前記ゴム状重合体(b1)と前記ビニル系単量体混合物(m2)との合計を100質量%とする)をグラフト重合して得られ、グラフト率が10~150%であり、
前記ゴム状重合体(b1)は、ジエン系ゴム状重合体、アクリル系ゴム状重合体、オレフィン系ゴム状重合体およびシリコーン系ゴム状重合体からなる群より選択される少なくとも1種であり、
前記ビニル系単量体混合物(m2)は、当該ビニル系単量体混合物(m2)の総質量に対して、芳香族ビニル単量体65~82質量%と、シアン化ビニル単量体18~35質量%とを含む、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)の割合が50~90質量%であり、前記グラフト共重合体(B)の割合が10~50質量%(ただし、前記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)と前記グラフト共重合体(B)との合計を100質量%とする)である、請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
前記ビニル系単量体混合物(m1)は、N-置換マレイミド単量体をさらに含み、前記ビニル系単量体混合物(m1)の総質量に対して、前記N-置換マレイミド単量体の含有量が1質量%以上9質量%未満である、請求項1~3のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物を用いた、成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂組成物およびその成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂材料からなる成形品には、直射日光に曝されても変色しにくいという耐候性が要求される。
耐候性に優れた樹脂組成物として、例えば特許文献1には、モノマー成分としてメチルメタクリレートを80質量%以上含むアクリル樹脂100質量部に対して、特定のトリアジン系紫外線吸収剤を0.1~8質量部含有する樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-117782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コストダウンや軽量化等を目的として薄肉な成形品を製造したり、複雑な形状や大型の成形品を製造したりする場合には、射出成形で成形品を製造する場合が多いことから、樹脂組成物には流動性に優れることが求められる。
また、成形品を成形する際の温度は高温であるため、成形時に樹脂組成物からガス状の揮発性物質が発生し、それが金型に付着・堆積して成形品の外観不良を引き起こすことがある。そのため、樹脂組成物には成形時にガスが発生しにくいことも求められる。
しかしながら、特許文献1に記載の樹脂組成物は流動性を満足するものではない。また、特許文献1に記載の樹脂組成物は必ずしも成形時のガス発生を充分に抑制するものではなく、成形品に外観不良が生じることがある。
【0005】
本発明は、流動性に優れ、成形時のガス発生が少ない上に、耐候性に優れる成形品が得られる熱可塑性樹脂組成物およびその成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の態様を包含する。
[1](メタ)アクリル酸エステル単量体および芳香族ビニル単量体を含むビニル系単量体混合物(m1)を重合して得られる(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)と、
分子量が200~1800であるヒンダートアミン系化合物(C)と、
250~300nmに最大吸収波長を有する紫外線吸収化合物(D)と、
を含む熱可塑性樹脂組成物であって、
前記熱可塑性樹脂組成物は、ゴム状重合体(b1)の存在下にビニル系単量体混合物(m2)をグラフト重合して得られるグラフト共重合体(B)を含んでいてもよく、
前記ビニル系単量体混合物(m1)の総質量に対して、前記(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有量が50質量%以上80質量%未満であり、前記芳香族ビニル単量体の含有量が12~39質量%であり、
前記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)および前記グラフト共重合体(B)の合計100質量部に対して、前記ヒンダートアミン系化合物(C)の含有量が0.4~1.8質量部であり、前記紫外線吸収化合物(D)の含有量が0.1~1.6質量部であり、かつ前記ヒンダートアミン系化合物(C)および前記紫外線吸収化合物(D)の含有量の合計が2.0質量部以下である、熱可塑性樹脂組成物。
[2]前記グラフト共重合体(B)は、前記ゴム状重合体(b1)20~80質量%の存在下に、前記ビニル系単量体混合物(m2)20~80質量%(ただし、前記ゴム状重合体(b1)と前記ビニル系単量体混合物(m2)との合計を100質量%とする)をグラフト重合して得られ、グラフト率が10~150%であり、
前記ゴム状重合体(b1)は、ジエン系ゴム状重合体、アクリル系ゴム状重合体、オレフィン系ゴム状重合体およびシリコーン系ゴム状重合体からなる群より選択される少なくとも1種であり、
前記ビニル系単量体混合物(m2)は、当該ビニル系単量体混合物(m2)の総質量に対して、芳香族ビニル単量体65~82質量%と、シアン化ビニル単量体18~35質量%とを含む、前記[1]の熱可塑性樹脂組成物。
[3]前記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)の割合が50~90質量%であり、前記グラフト共重合体(B)の割合が10~50質量%(ただし、前記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)と前記グラフト共重合体(B)との合計を100質量%とする)である、前記[1]または[2]の熱可塑性樹脂組成物。
[4]前記ビニル系単量体混合物(m1)は、N-置換マレイミド単量体をさらに含み、前記ビニル系単量体混合物(m1)の総質量に対して、前記N-置換マレイミド単量体の含有量が1質量%以上9質量%未満である、前記[1]~[3]のいずれかの熱可塑性樹脂組成物。
[5]前記[1]~[4]のいずれかの熱可塑性樹脂組成物を用いた、成形品。
【発明の効果】
【0007】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、流動性に優れ、成形時のガス発生が少ない上に、耐候性に優れる成形品が得られる。
また、本発明の成形品は、耐候性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、以下の説明において、「成形品」とは、本発明の熱可塑性樹脂組成物を成形してなるものである。
また、本発明において、「(メタ)アクリル酸」は、「アクリル酸」および「メタクリル酸」の総称である。
【0009】
「熱可塑性樹脂組成物」
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、以下に示す(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)と、ヒンダートアミン系化合物(C)と、紫外線吸収化合物(D)とを含む。熱可塑性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内で、必要に応じて、以下に示すグラフト共重合体(B)、他の熱可塑性樹脂、添加剤の少なくとも1種を含んでいてもよい。
以下、各成分の詳細について説明する。
【0010】
<(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)>
(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)(以下、単に「共重合体(A)ともいう)は、(メタ)アクリル酸エステル単量体および芳香族ビニル単量体を含むビニル系単量体混合物(m1)を重合して得られる共重合体である。
すなわち、共重合体(A)は、少なくとも(メタ)アクリル酸エステル単量体と芳香族ビニル単量体との共重合体であり、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位と芳香族ビニル単量体単位とを含む。
ビニル系単量体混合物(m1)は、成形品が要求される物性に応じて、N-置換マレイミド単量体や、(メタ)アクリル酸エステル単量体、芳香族ビニル単量体およびN-置換マレイミド単量体以外の単量体(以下、「他の単量体」ともいう)を含んでいてもよい。
【0011】
なお、共重合体(A)においては、(メタ)アクリル酸エステル単量体および芳香族ビニル単量体などがどのように重合しているか、特定することは必ずしも容易ではない。すなわち、共重合体(A)をその構造または特性により直接特定することが不可能であるか、またはおよそ実際的でないという事情(不可能・非実際的事情)が存在する。したがって、本発明においては、共重合体(A)は「(メタ)アクリル酸エステル単量体および芳香族ビニル単量体を含むビニル系単量体混合物(m1)を重合して得られるもの」と規定することがより適切とされる。
【0012】
((メタ)アクリル酸エステル単量体)
(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸i-プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸i-ブチル、アクリル酸t-ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸オクチル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、アクリル酸デシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ペンチル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル等のアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸i-プロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸i-ブチル、メタクリル酸t-ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸イソアミル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸-2-エチルヘキシル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル等のメタクリル酸エステルなどが挙げられる。これらの中でも、成形品の表面硬度および発色性が高まる観点から、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルが好ましく、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルがより好ましい。
これらの(メタ)アクリル酸エステル単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0013】
(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有量は、ビニル系単量体混合物(m1)の総質量に対して、50質量%以上80質量%未満であり、60~79質量%が好ましく、70~78質量%がより好ましい。(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有量が上記下限値以上であれば、成形品の耐候性が高まる。(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有量が上記上限値未満であれば、芳香族ビニル単量体をビニル系単量体混合物(m1)中に充分に配合できるので、熱可塑性樹脂組成物の流動性を良好に維持できる。
【0014】
(芳香族ビニル単量体)
芳香族ビニル単量体としては、例えばスチレン、α-メチルスチレン、o-,m-またはp-メチルスチレン、ビニルキシレン、p-t-ブチルスチレン、エチルスチレンなどが挙げられる。これらの中でも、熱可塑性樹脂組成物の流動性がより向上するとともに、成形品の発色性および耐衝撃性が向上する観点から、スチレン、α-メチルスチレンが好ましく、スチレンがより好ましい。
これらの芳香族ビニル単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
芳香族ビニル単量体の含有量は、ビニル系単量体混合物(m1)の総質量に対して、12~39質量%であり、13~35質量%が好ましく、15~30質量%がより好ましい。芳香族ビニル単量体の含有量が上記下限値以上であれば、熱可塑性樹脂組成物の流動性が高まる。芳香族ビニル単量体の含有量が上記上限値以下であれば、(メタ)アクリル酸エステル単量体をビニル系単量体混合物(m1)中に充分に配合できるので、成形品の耐候性を良好に維持できる。
【0016】
(N-置換マレイミド単量体)
N-置換マレイミド単量体としては、例えばN-メチルマレイミド、N-エチルマレイミド、N-n-プロピルマレイミド、N-i-プロピルマレイミド、N-n-ブチルマレイミド、N-i-ブチルマレイミド、N-t-ブチルマレイミド等のN-置換アルキルマレイミド;N-シクロヘキシルマレイミド等のN-置換シクロアルキルマレイミド;N-フェニルマレイミド、N-(2-メチルフェニル)マレイミド、N-(4-ヒドロキシフェニル)マレイミド、N-クロロフェニルマレイミド等のN-置換アリールマレイミド;N-アラルキルマレイミドなどが挙げられる。これらの中でも、成形品の耐熱性がより向上、耐衝撃性も向上する観点から、N-アリールマレイミドが好ましく、N-フェニルマレイミドがより好ましい。
これらのN-置換マレイミド単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
N-置換マレイミド単量体の含有量は、ビニル系単量体混合物(m1)の総質量に対して、1質量%以上9質量%未満が好ましく、3~8.5質量%がより好ましく、5~8質量%がさらに好ましい。N-置換マレイミド単量体の含有量が上記下限値以上であれば、成形品の耐熱性が向上する。N-置換マレイミド単量体の含有量が上記上限値未満であれば、熱可塑性樹脂組成物の流動性を良好に維持できる。
【0018】
(他の単量体)
他の単量体としては、(メタ)アクリル酸エステル単量体および芳香族ビニル単量体と共重合可能であれば特に制限されないが、例えばシアン化ビニル単量体、酸基含有単量体などが挙げられる。
シアン化ビニル単量体単量体としては、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられる。
酸基含有単量体としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸などが挙げられる。
これらの他の単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
他の単量体の含有量は、ビニル系単量体混合物(m1)の総質量に対して、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。他の単量体の含有量が上記上限値以下であれば、本発明の効果が発現されやすくなる。
【0020】
(共重合体(A)の製造方法)
共重合体(A)は、例えば塊状重合、溶液重合、塊状懸濁重合、懸濁重合、乳化重合、ミニエマルション重合等の公知の方法により製造される。これらの中でも、共重合体(A)の粒子径を制御しやすい観点では乳化重合、ミニエマルション重合が好ましく、成形品の耐熱性が高くなる観点では懸濁重合、塊状重合が好ましい。
【0021】
乳化重合法による共重合体(A)の製造方法としては、例えば、反応器内にビニル系単量体混合物(m1)と乳化剤と重合開始剤と連鎖移動剤とを仕込み、加熱して重合し、共重合体(A)を含む水性分散体から析出法によって共重合体(A)を回収する方法が挙げられる。
乳化剤としては、通常の乳化重合用乳化剤(アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルケニルコハク酸ジカリウム、ロジン酸カリウム等)が挙げられる。
重合開始剤としては、例えばアゾ重合開始剤、光重合開始剤、無機過酸化物、有機過酸化物、有機過酸化物と遷移金属と還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤などが挙げられる。
連鎖移動剤としては、例えばオクチルメルカプタン、n-またはt-ドデシルメルカプタン、n-ヘキサデシルメルカプタン、n-またはt-テトラデシルメルカプタン等のメルカプタン類;α-メチルスチレンダイマー;テルペン類などが挙げられる。
析出法としては、水性分散体に析出剤を添加し、加熱、撹拌した後、析出剤を分離し、析出した共重合体(A)を水洗、脱水、乾燥する方法が挙げられる。析出剤としては、例えば硫酸、酢酸、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム等の水溶液が挙げられる。
【0022】
懸濁重合法による共重合体(A)の製造方法としては、例えば、反応器内にビニル系単量体混合物(m1)と懸濁分散剤と分散助剤と重合開始剤と連鎖移動剤とを仕込み、加熱して重合し、冷却、洗浄、濾過、乾燥して共重合体(A)を回収する方法が挙げられる。
懸濁分散剤としては、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸塩等のアニオン系水溶性高分子;ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン等のノニオン系水溶性高分子;硫酸バリウム、第三リン酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の水難溶性無機塩などが挙げられる。
分散助剤としては、カルボン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸エステルナトリウムなどが挙げられる。
重合開始剤および連鎖移動剤としては、乳化重合法で用いる重合開始剤および連鎖移動剤と同様のものが挙げられる。
【0023】
(共重合体(A)の物性)
共重合体(A)の質量平均分子量は、10000~300000が好ましく、50000~150000がより好ましい。共重合体(A)の質量平均分子量が上記下限値以上であれば、成形品の耐衝撃性が向上する。共重合体(A)の質量平均分子量が上記上限値以下であれば、熱可塑性樹脂組成物の流動性がより向上する。
共重合体(A)の質量平均分子量は、以下の方法により測定される。
共重合体(A)をアセトン中で攪拌し、得られたアセトン可溶分をテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、その溶液を、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)装置に導入して測定する。分子量が既知の標準ポリスチレンを用いて作成した検量線を利用してアセトン可溶分の分子量を測定し、質量基準の平均分子量を求める。
【0024】
共重合体(A)のガラス転移温度は、100~160℃が好ましく、105~145℃がより好ましい。共重合体(A)のガラス転移温度が上記下限値以上であれば、成形品の耐熱性が向上する。共重合体(A)のガラス転移温度が上記上限値以下であれば、熱可塑性樹脂組成物の流動性がより向上する。
共重合体(A)のガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)により求められる値である。具体的には、窒素雰囲気下、10℃/minで、35℃から250℃まで昇温した後、35℃まで冷却し、再度250℃まで昇温した場合に観測されるガラス転移温度である。
【0025】
<グラフト共重合体(B)>
グラフト共重合体(B)は、ゴム状重合体(b1)の存在下にビニル系単量体混合物(m2)をグラフト重合して得られる共重合体である。
すなわち、グラフト共重合体(B)は、ゴム状重合体(b1)部分と、ビニル系単量体混合物(m2)が重合した重合体(b2)部分とからなる。
【0026】
なお、グラフト共重合体(B)においては、ゴム状重合体(b1)にビニル系単量体混合物(m2)がどのように重合しているか、特定することは困難である。例えば、重合体(b2)としては、ゴム状重合体(b1)に結合したものと、ゴム状重合体(b1)に結合していないものとが存在する。また、ゴム状重合体(b1)に結合した重合体(b2)の分子量、構成単位の割合等を特定することも困難である。すなわち、グラフト重合体(B)をその構造または特性により直接特定することが不可能であるか、またはおよそ実際的でないという事情(不可能・非実際的事情)が存在する。したがって、本発明においては、グラフト重合体(B)は「ゴム状重合体(b1)の存在下にビニル系単量体混合物(m2)をグラフト重合して得られるもの」と規定することがより適切とされる。
【0027】
(ゴム状重合体(b1))
ゴム状重合体(b1)としては、例えばブタジエン系ゴム状重合体(ポリブタジエン、スチレン-ブタジエン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、アクリル酸エステル-ブタジエン共重合体など)、共役ジエン系ゴム状重合体(イソプレンゴム、クロロプレンゴム、スチレン-イソプレン共重合体など)等のジエン系ゴム状重合体;ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系ゴム状重合体;エチレン-プロピレン共重合体等のオレフィン系ゴム状重合体;ポリオルガノシロキサン等のシリコーン系ゴム状重合体;天然ゴム、ブチルゴム、ウレタンゴム、塩素化ポリエチレン、エピクロルヒドリンゴム、フッ素ゴム、多硫化ゴムなどが挙げられる。これらの中でも、成形品の耐候性に優れることから、ジエン系ゴム状重合体、アクリル系ゴム状重合体、オレフィン系ゴム状重合体、シリコーン系ゴム状重合体が好ましい。特に成形品の耐候性がより向上し、しかも共重合体(A)に対するグラフト共重合体(B)の親和性が高くなる点で、アクリル系ゴム状重合体が好ましい。
これらのゴム状重合体(b1)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
ゴム状重合体(b1)の体積平均粒子径は、0.1~1.0μmが好ましく、0.1~0.5μmがより好ましい。ゴム状重合体(b1)の体積平均粒子径が、上記下限値以上であれば成形品の耐衝撃性が向上し、上記上限値以下であれば成形品の発色性が向上する。
ゴム状重合体(b1)の体積平均粒子径は、レーザー回析、散乱方式の粒度分布測定器を用いて体積基準の粒子径分布を測定し、得られた粒子径分布から算出される値である。
【0029】
ゴム状重合体(b1)の製造方法は、特に制限されない。例えば、ブタジエン、(メタ)アクリル酸エステル等のモノマーを重合することによってゴム状重合体(b1)を得ることができる。
【0030】
(ビニル系単量体混合物(m2))
ビニル系単量体混合物(m2)に含まれる単量体としては、芳香族ビニル単量体、シアン化ビニル単量体、(メタ)アクリル酸エステル単量体、N-置換マレイミド単量体などが挙げられる。
これら芳香族ビニル単量体、シアン化ビニル単量体、(メタ)アクリル酸エステル単量体、N-置換マレイミド単量体としては、共重合体(A)の説明において先に例示した芳香族ビニル単量体、シアン化ビニル単量体、(メタ)アクリル酸エステル単量体、N-置換マレイミド単量体がそれぞれ挙げられる。
【0031】
グラフト共重合体(B)を形成する単量体としては、成形品の機械的物性および耐溶剤性が高くなる観点から、芳香族ビニル単量体とシアン化ビニル単量体とを組み合わせて用いることが好ましい。
芳香族ビニル単量体の含有量は、ビニル系単量体混合物(m2)の総質量に対して、65~82質量%が好ましく、70~80質量%がより好ましく、73~80質量%がさらに好ましい。芳香族ビニル単量体の含有量が上記範囲内であれば、成形品の発色性、耐衝撃性が高まる。
シアン化ビニル単量体の含有量は、ビニル系単量体混合物(m2)の総質量に対して、18~35質量%が好ましく、20~30質量%がより好ましく、20~27質量%がさらに好ましい。シアン化ビニル単量体の含有量が上記範囲内であれば、成形品の発色性、耐衝撃性が高まる。
【0032】
(グラフト共重合体(B)の製造方法)
グラフト共重合体(B)は、ゴム状重合体(b1)の存在下にビニル系単量体混合物(m2)をグラフト重合して得られる。
重合法としては、乳化重合法、溶液重合法、懸濁重合法、塊状重合法等の公知の重合方法が挙げられる。これらの中でも、反応が安定して進行するように制御可能である点から、乳化重合法が好ましい。具体的には、ゴム状重合体(b1)のラテックスにビニル系単量体混合物(m2)を一括して仕込んだ後に重合する方法;ゴム状重合体(b1)のラテックスにビニル系単量体混合物(m2)の一部を先に仕込み、随時重合させながら残りを重合系に滴下する方法;ゴム状重合体(b1)のラテックスにビニル系単量体混合物(m2)の全量を滴下しながら随時重合する方法等が挙げられる。ビニル系単量体混合物(m2)の重合は、1段で行ってもよく、2段以上に分けて行ってもよい。2段以上に分けて行う場合、各段におけるビニル系単量体混合物(m2)の種類や組成比を変えて行うことも可能である。
【0033】
乳化重合は、通常、ラジカル重合開始剤および乳化剤を用いて行われる。例えば、ゴム状重合体(b1)と水と乳化剤とを含むゴム状重合体(b1)のラテックスにビニル系単量体混合物(m2)を加え、ラジカル重合開始剤の存在下でビニル系単量体混合物(m2)をラジカル重合させる。
ラジカル重合を行う際には、得られるグラフト共重合体(B)の分子量やグラフト率を制御するため、各種公知の連鎖移動剤を添加してもよい。
乳化剤、ラジカル重合開始剤、連鎖移動剤としては、共重合体(A)の製造方法の説明において先に例示した乳化剤、ラジカル重合開始剤、連鎖移動剤がそれぞれ挙げられる。
ラジカル重合の条件としては、例えば、50~100℃で1~10時間の重合条件が挙げられる。
【0034】
ゴム状重合体(b1)とビニル系単量体混合物(m2)との質量比は、ゴム状重合体(b1)が20~80質量%、ビニル系単量体混合物(m2)が20~80質量%であることが好ましく、ゴム状重合体(b1)が25~75質量%、ビニル系単量体混合物(m2)が25~75質量%であることがより好ましく、ゴム状重合体(b1)が30~70質量%、ビニル系単量体混合物(m2)が30~70質量%であることがさらに好ましい(ただし、ゴム状重合体(b1)とビニル系単量体混合物(m2)との合計を100質量%とする)。ゴム状重合体(b1)とビニル系単量体混合物(m2)との質量比が上記範囲内であれば、グラフト共重合体(B)の生産性が良好であるとともに、成形品の発色性、耐衝撃性が向上する。
【0035】
乳化重合法によって得られるグラフト共重合体(B)は、通常、ラテックスの状態である。
グラフト共重合体(B)のラテックスからグラフト共重合体(B)を回収する方法としては、例えば、グラフト共重合体(B)のラテックスを、凝固剤を溶解させた熱水中に投入することによってスラリー状に凝析する湿式法;加熱雰囲気中にグラフト共重合体(B)のラテックスを噴霧することによって半直接的にグラフト共重合体(B)を回収するスプレードライ法などが挙げられる。
湿式法に用いる凝固剤としては、硫酸、塩酸、リン酸、硝酸等の無機酸;塩化カルシウム、酢酸カルシウム、硫酸アルミニウム等の金属塩等が挙げられ、重合で用いた乳化剤に応じて選定される。
【0036】
(グラフト共重合体(B)の物性)
グラフト共重合体(B)のグラフト率は、10~150%が好ましく、20~100%がより好ましく、30~80%がさらに好ましい。グラフト共重合体(B)のグラフト率が上記下限値以上であれば、成形品の耐衝撃性、発色性、光沢性が向上する。グラフト共重合体(B)のグラフト率が上記上限値以下であれば、熱可塑性樹脂組成物の流動性がより向上する。
グラフト重合体(B)のグラフト率は、具体的には以下のようにして測定できる。すなわち、グラフト重合体(B)をアセトンに添加し、65~70℃にて3時間加熱還流し、得られた懸濁アセトン溶液を14000rpmで遠心分離し、沈殿成分(アセトン不溶成分)とアセトン溶液(アセトン可溶分)とに分離する。次いで、アセトン不溶成分を乾燥し、乾燥後のアセトン不溶成分の質量を測定し、下記式(1)よりグラフト重合体(B)のグラフト率を求める。なお、式(1)におけるYは、乾燥後のアセトン不溶成分の質量(g)である。Xは、Yを求める際に用いたグラフト共重合体(B)の全質量(g)である。ゴム分率は、グラフト共重合体のゴム状重合体(b1)の含有比率である。
グラフト率(%)={(Y-X×ゴム分率)/(X×ゴム分率)}×100 ・・・(1)
【0037】
<ヒンダートアミン系化合物(C)>
ヒンダートアミン系化合物(C)の分子量は200~1800である。ヒンダートアミン系化合物(C)の分子量が上記下限値以上であれば、成形時のガスの発生を抑制できる。ヒンダートアミン系化合物(C)の分子量が上記上限値以下であれば、成形品の耐候性が向上する。
【0038】
ヒンダートアミン系化合物(C)としては、例えば2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルステアレート、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルステアレート、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)・ジ(トリデシル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)・ジ(トリデシル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,4,4-ペンタメチル-4-ピペリジル)-2-ブチル-2-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)マロネート、1-(2-ヒドロキシエチル)-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジノ-ル/コハク酸ジエチル重縮合物、1,6-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4-ジクロロ-6-モルホリノ-s-トリアジン重縮合物、1,6-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4-ジクロロ-6-tert-オクチルアミノ-s-トリアジン重縮合物、1,5,8,12-テトラキス〔2,4-ビス(N-ブチル-N-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)アミノ)-s-トリアジン-6-イル〕-1,5,8,12-テトラアザドデカン、1,5,8,12-テトラキス〔2,4-ビス(N-ブチル-N-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)アミノ)-s-トリアジン-6-イル〕-1,5,8-12-テトラアザドデカン、1,6,11-トリス〔2,4-ビス(N-ブチル-N-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)アミノ)-s-トリアジン-6-イル〕アミノウンデカン、1,6,11-トリス〔2,4-ビス(N-ブチル-N-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)アミノ)-s-トリアジン-6-イル〕アミノウンデカン、ビス{4-(1-オクチルオキシ-2,2,6,6-テトラメチル)ピペリジル}デカンジオナート、ビス{4-(2,2,6,6-テトラメチル-1-ウンデシルオキシ)ピペリジル}カーボナーなどが挙げられる。これらの中でも、成形品の耐候性がより向上することから、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレートが好ましい。
これらのヒンダートアミン系化合物(C)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
<紫外線吸収化合物(D)>
紫外線吸収化合物(D)は、250~300nmに最大吸収波長を有する吸収剤である。250~300nmに最大吸収波長を有することで、共重合体(A)がスチレン等の芳香族ビニル単量体単位を有していても、耐候性に優れる成形品が得られる。
最大吸収波長は、具体的には以下のようにして測定できる。すなわち、紫外線吸収化合物(D)を可溶な溶媒(例えばトリクロロメタン等)に溶解し、200~450nmの波長領域における吸収スペクトルを紫外・可視分光光度計により測定し、吸光度が最大となるときの波長を最大吸収波長とする。
【0040】
紫外線吸収化合物(D)としては、例えば2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5[2-(2-エチルヘキサノイルオキシ)エトキシ]フェノール、2-[4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2イル]-5-(オクチルオキシ)-フェノール、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-(ヘキシルオキシ)フェノール、[2-ヒドロキシ-4-(オクチルオキシ)フェニル](フェニル)メタノンなどが挙げられる。これらの中でも、成形品の耐候性がより向上することから、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5[2-(2-エチルヘキサノイルオキシ)エトキシ]フェノールが好ましい。
これらの紫外線吸収化合物(D)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
<任意成分>
熱可塑性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、必要に応じて共重合体(A)およびグラフト共重合体(B)以外の樹脂(他の熱可塑性樹脂)や、各種添加剤を任意成分として含んでいてもよい。
他の熱可塑性樹脂としては、例えばアクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル-α-メチルスチレン共重合体(αSAN樹脂)、スチレン-無水マレイン酸共重合体、アクリロニトリル-スチレン-N-置換マレイミド三元共重合体、スチレン-無水マレイン酸-N-置換マレイミド三元共重合体、ポリカーボネート樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT樹脂)、ポリエチレンテレフタレート(PET樹脂)、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)、スチレン-ブタジエン(SBR)、水素添加SBS、スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)等のスチレン系エラストマー、各種のオレフィン系エラストマー、各種のポリエステル系エラストマー、ポリスチレン、ポリアセタール樹脂、変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE樹脂)、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリフェニレンサルファイド(PPS樹脂)、ポリエーテルサルフォン(PES樹脂)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK樹脂)、ポリアリレート、液晶ポリエステル樹脂、ポリアミド(例えばナイロン)などが挙げられる。
これらの他の熱可塑性樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
添加剤としては、酸化防止剤、可塑剤、離型剤、滑剤、染料、顔料、帯電防止剤、難燃剤、無機充填剤、金属粉末などが挙げられる。
これらの添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
<各成分の含有量>
熱可塑性樹脂組成物に含まれる各成分の含有量は以下の通りである。
ヒンダートアミン系化合物(C)の含有量は、共重合体(A)およびグラフト共重合体(B)の合計100質量部に対して、0.4~1.8質量部であり、0.4~1.2質量部が好ましい。ヒンダートアミン系化合物(C)の含有量が上記下限値以上であれば、成形品の耐候性が向上する。ヒンダートアミン系化合物(C)の含有量が上記上限値以下であれば、成形時のガスの発生を抑制できる。
【0044】
紫外線吸収化合物(D)の含有量は、共重合体(A)およびグラフト共重合体(B)の合計100質量部に対して、0.1~1.6質量部であり、0.2~0.8質量部が好ましい。紫外線吸収化合物(D)の含有量が上記下限値以上であれば、成形品の耐候性が向上する。紫外線吸収化合物(D)の含有量が上記上限値以下であれば、成形時のガスの発生を抑制できる。
【0045】
ヒンダートアミン系化合物(C)および紫外線吸収化合物(D)の含有量の合計は、共重合体(A)およびグラフト共重合体(B)の合計100質量部に対して、2.0質量部以下であり、0.5~2.0質量部が好ましい。ヒンダートアミン系化合物(C)および紫外線吸収化合物(D)の含有量の合計が上記下限値以上であれば、成形品の耐候性が向上する。ヒンダートアミン系化合物(C)および紫外線吸収化合物(D)の含有量の合計が上記上限値以下であれば、成形時のガスの発生を抑制できる。
【0046】
熱可塑性樹脂組成物がグラフト共重合体(B)を含む場合、共重合体(A)とグラフト共重合体(B)の割合は、共重合体(A)が50~90質量%、グラフト共重合体(B)が10~50質量%であることが好ましく、共重合体(A)が55~80質量%、グラフト共重合体(B)が20~45質量%であることがより好ましく、共重合体(A)が55~70質量%、グラフト共重合体(B)が30~45質量%であることがさらに好ましい(ただし、共重合体(A)とグラフト共重合体(B)との合計を100質量%とする)。グラフト共重合体(C)の割合が上記範囲内であれば、本発明の効果を妨げることなく、成形品の発色性が高めることができる。
【0047】
熱可塑性樹脂組成物が任意成分を含む場合、任意成分の含有量は、熱可塑性樹脂組成物の総質量に対して、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。
【0048】
<熱可塑性樹脂組成物の製造方法>
熱可塑性樹脂組成物は、例えば共重合体(A)と、ヒンダートアミン系化合物(C)と、紫外線吸収化合物(D)と、必要に応じてグラフト共重合体(B)や任意成分とを混合し、得られた混合物を溶融混練することにより得られる。
混合には、例えばヘンシェルミキサ、V型ブレンダ、タンブラーミキサ等の混合機を使用することができる。
溶融混練には、例えば一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサ、加圧ニーダ、ミキシングロール等の溶融混練機を使用することができる。
溶融混練後は、得られた溶融混練物を冷却した後、ペレタイザー等を用いてペレット化することが好ましい。
熱可塑性樹脂組成物の製造は、回分式、連続式のいずれで行ってもよい。また、各成分の混合順序についても特に制限はなく、全ての成分が十分に均一に混合されればよい。
【0049】
<作用効果>
以上説明した本発明の熱可塑性樹脂組成物にあっては、特定量の(メタ)アクリル酸エステル単量体単位に加えて、芳香族ビニル単量体単位を特定量含む共重合体(A)を含有するので、流動性に優れる。
ところで、スチレン等の芳香族ビニル単量体は、300nm付近の波長の光を吸収しやすい。そのため、芳香族ビニル単量体単位を含む共重合体(A)は変色するなどして樹脂劣化しやすい。
【0050】
しかし、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、250~300nmに最大吸収波長を有する紫外線吸収化合物(D)を含有する。この紫外線吸収化合物(D)が300nm付近の波長の光を吸収することで、スチレンによる光の吸収が抑制されるので、樹脂劣化を防止できる。
加えて、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、分子量が200~1800であるヒンダートアミン系化合物(C)を含有するので、紫外線吸収化合物(D)との相乗効果により成形品の耐候性が向上する。
【0051】
成形品の耐候性の向上効果は、ヒンダートアミン系化合物(C)や紫外線吸収化合物(D)の含有量が増えるほど高まる傾向にある。しかし、これらの含有量が増えると成形時のガスの発生量も増える傾向にある。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ヒンダートアミン系化合物(C)および紫外線吸収化合物(D)の含有量の合計量を規定しているので、成形時のガスの発生量を抑制できる。
このように、本発明の熱可塑性樹脂組成物であれば、流動性に優れ、成形時のガス発生が少ない上に、耐候性に優れる成形品が得られる。
【0052】
「成形品」
本発明の成形品は、上述した本発明の熱可塑性樹脂組成物を用い、公知の成形方法によって成形加工して得られる。
成形方法としては、例えば射出成形法、プレス成形法、押出成形法、真空成形法、ブロー成形法等が挙げられる。
【0053】
本発明の成形品は、本発明の熱可塑性樹脂組成物を用いているため、耐候性に優れる。
本発明の成形品は、自動車の内装材および外装材、OA機器用部品、家電用部品、医療機器用部品、電子機器用部品、建材、日用品などとして好適である。
【実施例
【0054】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。なお、以下の例中の「%」および「部」は明記しない限りは質量基準である。
以下の例における各種測定・評価方法と、各成分は以下の通りである。
【0055】
「測定・評価」
<質量平均分子量の測定>
東ソー株式会社製のゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー装置(GPC装置)を用いて、共重合体(A)における質量平均分子量(Mw)を測定した。分子量測定においては、溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を用いて重合体試料を溶解し、その重合体試料をGPC装置に導入した。分子量が既知の標準ポリスチレンによって予め得た検量線を利用して重合体試料のポリスチレン換算の分子量を測定し、質量平均分子量を求めた。
【0056】
<ガラス転移温度の測定>
示差走査熱量測定(DSC)を用い、共重合体(A)を窒素雰囲気下、10℃/minで、35℃から250℃まで昇温した後、35℃まで冷却し、再度250℃まで昇温した場合に観測されるガラス転移温度を求めた。
【0057】
<体積平均粒子径の測定>
マイクロトラック(日機装株式会社製、「ナノトラック150」)を用い、測定溶媒としてイオン交換水を用いて、水棲分散体に分散しているゴム状重合体(b1)の体積平均粒子径を測定した。
【0058】
<グラフト率の測定>
グラフト共重合体(B)1gを80mLのアセトンに添加し、65~70℃にて3時間加熱還流し、得られた懸濁アセトン溶液を遠心分離機(工機ホールディングス株式会社製、「CR21E」)にて14000rpmで30分間遠心分離して、沈殿成分(アセトン不溶成分)とアセトン溶液(アセトン可溶分)とに分離した。次いで、アセトン不溶成分を乾燥し、乾燥後のアセトン不溶成分の質量を測定し、下記式(1)よりグラフト重合体(B)のグラフト率を求めた。なお、式(1)におけるYは、乾燥後のアセトン不溶成分の質量(g)である。Xは、Yを求める際に用いたグラフト共重合体(B)の全質量(g)である。ゴム分率は、グラフト共重合体(B)のゴム状重合体(b1)の含有比率(水性分散体における固形分濃度)である。
グラフト率(%)={(Y-X×ゴム分率)/(X×ゴム分率)}×100 ・・・(1)
【0059】
<最大吸収波長の測定>
紫外線吸収化合物(D)10mgを1Lのトリクロロメタンに溶解し、得られた溶液について200~450nmの波長領域における吸収スペクトルを紫外・可視分光光度計により測定し、吸光度が最大となるときの波長を最大吸収波長とした。
【0060】
<外観の評価>
射出成形機(株式会社日本製鋼所製、「IS55FP-1.5A」)を用い、ペレット状の熱可塑性樹脂組成物から、シリンダー設定温度260℃、金型温度30℃の条件で、長さ100mm、幅100mm、厚み3mmの試験片(成形品1)を作製した。
デジタル変角光沢計(スガ試験機株式会社製、「UGV-5D」)を使用して、JIS Z 8741で定義される、入射角60°における成形品1の表面の光沢度(Gs)を測定した。光沢度が高いほど、成形品の外観に優れる。
【0061】
<発色性の評価>
SCE方式の測色計(コニカミノルタジャパン株式会社製、「CM-508D」)を用い、前記成形品1の色調(L)を測定した。Lの値が小さいほど、成形品の黒味が濃く、黒色の発色性に優れる。
【0062】
<耐候性の評価>
前記成形品1について、スガ試験機株式会社製の「サンシャインスーパーロングライフウェザーメーターWEL-SUN-DCH型」を用い、温度63℃、サイクル条件60分(降雨:12分)の環境下に2000時間暴露して、耐候試験を行った。耐候試験前後の成形品1の変色の度合い(ΔE)を、前記測色計を用いて測定した。ΔEの値が小さいほど、耐候性に優れる。
【0063】
<流動性の評価>
ペレット状の熱可塑性樹脂組成物について、ISO 1133規格に従い、220℃の条件でメルトボリュームレート(MVR)を98N(10kg)の荷重で測定した。MVRが高いほど、流動性に優れる。
【0064】
<ガス発生の評価>
射出成形機(東芝機械株式会社製、「IS55FP-1.5A」)を用い、ペレット状の熱可塑性樹脂組成物から、シリンダー設定温度260℃、金型温度30℃の条件で、長さ100mm、幅50mm、厚み3mmの板状の試験片(成形品2)を、充填樹脂量を金型内容積の約2/3に下げてショートショットになるように50ショット成形した。金型にガス吸着プレートを設置し、成形開始前と50ショット成形した後のプレートの重量差から、金型に付着したガス量(ガス付着量)を測定した。ガス付着量が少ないほど、成形時のガス発生が少ない。
【0065】
<耐熱性の評価>
射出成形機(東芝機械株式会社製、「IS55FP-1.5A」)を用い、ペレット状の熱可塑性樹脂組成物から、シリンダー設定温度260℃、金型温度30℃の条件で、長さ80mm、幅10mm、厚さ4mmの試験片(成形品3)を作製した。
ISO 75に準拠し、HDT試験機(株式会社東洋精機製作所製、「6A-2」)を用い、荷重1.83MPa、フラットワイズ(4mm厚み)の条件で成形品3の荷重たわみ温度(HDT)を測定した。HDTの値が高いほど、耐熱性に優れる。
【0066】
「共重合体(A)」
<共重合体(A-1)の製造>
メタクリル酸メチル76部とスチレン24部とからなるビニル系単量体混合物(m1)100部に、t-ブチルパーオキシピバレート(日油株式会社製、「パーブチルPV」、10時間半減期温度:54.6℃)0.1部、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(日油株式会社製、「パーブチルO」、10時間半減期温度:72.1℃)0.05部、1,1-ジ(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン(日油株式会社製、「パーヘキサHC」、10時間半減期温度:87.1℃)0.05部、t-ドデシルメルカプタン(アルケマ株式会社製)0.6部、α-メチルスチレンダイマー(三井化学株式会社製)0.2部を予め混合し、純水200部に第三リン酸カルシウム(宇部マテリアルズ株式会社社製)0.5部、アルケニルコハク酸カリウム(花王株式会社製、「ラテムルDSK」)0.003部を添加し、撹拌機付の20L耐圧反応槽に仕込み、40℃から重合を開始させた。重合反応における昇温速度は5~10℃/hrで9時間反応を行い、120℃にて重合を終了後、冷却、洗浄、濾過、乾燥工程を経てビーズ状の重合体である共重合体(A-1)を得た。
得られた共重合体(A-1)の質量平均分子量およびガラス転移温度を測定した。結果を表1に示す。
【0067】
<共重合体(A-2)~(A-5)の製造>
ビニル系単量体混合物(m1)の組成を表1に示すように変更した以外は、共重合体(A-1)と同様にして共重合体(A-2)~(A-5)を得た。
得られた共重合体(A-2)~(A-5)の質量平均分子量およびガラス転移温度を測定した。結果を表1に示す。
【0068】
【表1】
【0069】
「グラフト共重合体(B)」
<グラフト共重合体(B-1)の製造>
アルケニルコハク酸ジカリウム0.27部、イオン交換水175部、アクリル酸n-ブチル50部、メタクリル酸アリル0.16部、1,3-ブチレングリコールジメタクリレート0.08部、およびt-ブチルヒドロペルオキシド0.1部の混合物を反応器に投入した。反応器に窒素気流を通じることによって、反応器内を窒素置換し、60℃まで昇温した。内温が50℃となった時点で、硫酸第一鉄0.00015部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.00045部、ロンガリット0.24部、およびイオン交換水5部からなる水溶液を添加して重合を開始させ、内温を75℃に上昇させた。さらにこの状態を1時間維持し、体積平均粒子径0.20μmのゴム状重合体(b1-1)を得た。
【0070】
反応器の内温を75℃に保ったまま、ゴム状重合体(b1-1)50部(固形分として)に対して、ロンガリット0.15部、アルケニルコハク酸ジカリウム0.65部、およびイオン交換水10部からなる水溶液を添加し、次いで、アクリロニトリル6.3部、スチレン18.7部、およびt-ブチルヒドロペルオキシド0.11部からなる混合液を1時間にわたって滴下し、グラフト重合させた。滴下終了から5分後に、硫酸第一鉄0.001部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.003部、ロンガリット0.15部、およびイオン交換水5部からなる水溶液を添加し、次いで、アクリロニトリル6.3部、スチレン18.7部、t-ブチルヒドロペルオキシド0.19部、およびn-オクチルメルカプタン0.014部からなる混合液を1時間にわたって滴下しグラフト重合させた。滴下終了後、内温を75℃に10分間保持した後、冷却し、内温が60℃となった時点で、酸化防止剤(吉富製薬工業社製、「アンテージW500」)0.2部およびアルケニルコハク酸ジカリウム0.2部をイオン交換水5部に溶解した水溶液を添加した。次いで、反応生成物の水性分散体を硫酸水溶液で凝固、水洗した後、乾燥してグラフト共重合体(B-1)を得た。グラフト共重合体(B-1)のグラフト率は40%であった。
【0071】
「ヒンダートアミン系化合物(C)」
ヒンダートアミン系化合物(C)として、以下の化合物を用いた。
・C-1:ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート(株式会社ADEKA製、「アデカスタブ LA-77Y」、分子量:481)。
・C-2:テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、(株式会社ADEKA製、「アデカスタブ LA-57」、分子量:791)。
・C-3:1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸、テトラメチルエステル、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノールおよびβ,β,β’,β’-テトラメチル-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン-3,9-ジエタノールの反応生成物(株式会社ADEKA製、「アデカスタブ LA-63P」、分子量:2000)。
【0072】
「紫外線吸収化合物(D)」
紫外線吸収化合物(D)として、以下の化合物を用いた。
・D-1:2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5[2-(2-エチルヘキサノイルオキシ)エトキシ]フェノール(株式会社ADEKA製、「アデカスタブ LA-46」、最大吸収波長:280nm)。
・D-2:2-[4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2イル]-5-(オクチルオキシ)-フェノール(EUTEC CHEMICAL社製、「Eusorb UV-164」、最大吸収波長:290nm)。
・D-3:2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-(ヘキシルオキシ)フェノール(BASF社製、「Tinuvin 1577」、最大吸収波長:270nm)。
・D-4:2-[4,6-ビス(1,1’-ビフェニル-4-イル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-5-[2-(2-エチルヘキシル)オキシ)]フェノール(BASF社製、「Tinuvin 1600」、最大吸収波長:320nm)。
・D-5:[2-ヒドロキシ-4-(オクチルオキシ)フェニル](フェニル)メタノン(株式会社ADEKA製、「アデカスタブ 1413」、最大吸収波長:290nm)。
【0073】
「実施例1~10、比較例1~8」
表2、3に示す種類と量(部)の共重合体(A)、グラフト共重合体(B)、ヒンダートアミン系化合物(C)および紫外線吸収化合物(D)と、顔料としてカーボンブラック(三菱化学株式会社製、「#2900B」)1.0部と、滑剤としてエチレンビスステアリルアミド(花王株式会社製)0.4部とを、ヘンシェルミキサを用いて混合した。得られた混合物を、スクリュー式押出機(株式会社日本製鋼所製、「TEX-30α型二軸押出機」)を用い、250℃の条件で溶融混練した。これにより得た溶融混練物を冷却後、ペレタイザを用いてペレット化して、ペレット状の熱可塑性樹脂組成物を得た。
得られた熱可塑性樹脂組成物の流動性を評価した。また、得られた熱可塑性樹脂組成物を用いて成形品を作製し、外観、発色性、耐候性、ガス発生および耐熱性を評価した。これらの結果を表2、3に示す。
【0074】
【表2】
【0075】
【表3】
【0076】
表2に示すように、各実施例の熱可塑性樹脂組成物は流動性に優れていた。また、各実施例の熱可塑性樹脂組成物の成形時にはガス発生が少ない上、外観、発色性、耐候性に優れた成形品を得ることができた。特に、N-置換マレイミド単量体単位を含む共重合体(A-2)を用いた実施例2の熱可塑性樹脂組成物からは、耐熱性にも優れた成形品を得ることができた。
【0077】
一方、表3に示すように、各比較例で得られた熱可塑性樹脂組成物およびその成形品は、流動性、耐候性、ガス発生のいずれかの特性が劣っていた。
具体的には、芳香族ビニル単量体の含有量が6質量%以下であるビニル系単量体混合物(m1)を重合した共重合体(A-3)、(A-4)を用いた比較例1、2では、熱可塑性樹脂組成物の流動性が劣っていた。
(メタ)アクリル酸エステル単量体を含まないビニル系単量体混合物(m1)を重合した共重合体(A-5)を用いた比較例3では、成形品の耐候性が劣っていた。
ヒンダートアミン系化合物(C)および紫外線吸収化合物(D)のいずれかを含まない比較例4、5の熱可塑性樹脂組成物では、得られる成形品の耐候性が劣っていた。また、成形時にガスが発生しやすかった。
ヒンダートアミン系化合物(C)および紫外線吸収化合物(D)の合計量が多い比較例6の熱可塑性樹脂組成物は、成形時にガスが発生しやすかった。
分子量が2000であるヒンダートアミン系化合物(C-3)を用いた比較例7では、成形品の耐候性が劣っていた。
320nmに最大吸収波長を有する紫外線吸収化合物(D-4)を用いた比較例8では、成形品の耐候性が劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の熱可塑性樹脂組成物を成形した成形品は、耐候性に優れる。本発明の成形品は、内装材および外装材、OA機器用部品、家電用部品、医療機器用部品、電子機器用部品、建材、日用品などとしての利用価値は極めて高い。