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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-10
(45)【発行日】2022-08-19
(54)【発明の名称】ヘッドマウントディスプレイ
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/02 20060101AFI20220812BHJP
   H04N 5/64 20060101ALI20220812BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
H04N5/64 511A
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2018239754
(22)【出願日】2018-12-21
(65)【公開番号】P2020101671
(43)【公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】501009849
【氏名又は名称】株式会社日立エルジーデータストレージ
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】中村 俊輝
(72)【発明者】
【氏名】鵜飼 竜志
(72)【発明者】
【氏名】久野 拓馬
(72)【発明者】
【氏名】毛利 考宏
(72)【発明者】
【氏名】杉田 雅孝
【審査官】磯崎 忠昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-033867(JP,A)
【文献】特開2004-151177(JP,A)
【文献】特開2012-181487(JP,A)
【文献】特開2016-090910(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0033756(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01-27/02
G02F 1/13
G02F 1/13357
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの頭部に装着され視野内に映像を表示するヘッドマウントディスプレイであって、
表示する映像を生成する表示部と、
前記表示部に照明光を照射する照明部と、
前記表示部からの映像光を投射する投射部と、
前記投射部からの映像光をユーザの瞳に伝達する導光部と、を備え、
前記照明部は、
光を出射する光源部と、
前記光源部から出射された光を照射し仮想的な2次光源となるマイクロレンズアレイと、
前記マイクロレンズアレイからの光を前記表示部に集光するコンデンス光学部材と、
前記マイクロレンズアレイからの光を拡散する拡散板と、を有し、
前記拡散板は、前記マイクロレンズアレイよりも前記コンデンス光学部材に近い位置に配置され、
前記コンデンス光学部材は2枚のコンデンスレンズから成り、
前記マイクロレンズアレイに近い側に配置される第1のコンデンスレンズはメニスカスレンズであり、
前記表示部に近い側に配置される第2のコンデンスレンズは両凸レンズであり、
前記拡散板は、前記第1のコンデンスレンズよりも第2のコンデンスレンズに近い位置に配置されることを特徴とするヘッドマウントディスプレイ。
【請求項2】
請求項1に記載のヘッドマウントディスプレイであって、
前記拡散板には所定の方向の直線偏光のみを透過する偏光フィルタが貼り合わせて一体化され、
一体化された前記拡散板と前記偏光フィルタは、前記拡散板が前記マイクロレンズアレイ側に、前記偏光フィルタが前記表示部側になるよう配置されることを特徴とするヘッドマウントディスプレイ。
【請求項3】
請求項1に記載のヘッドマウントディスプレイであって、
前記照明部は、光路を折り曲げるための折り曲げミラーと、
前記表示部で反射後の映像光を前記投射部へ導くための偏光分岐素子と、を備え、
前記折り曲げミラーおよび前記偏光分岐素子は、前記表示部の表示領域の短手方向に光を折り曲げるよう配置され、
前記折り曲げミラーと前記偏光分岐素子は略平行であることを特徴とするヘッドマウントディスプレイ。
【請求項4】
請求項1に記載のヘッドマウントディスプレイであって、
前記導光部は映像光を入射する入射面と、入射した映像光を全反射しながら伝播する略平行な第1及び第2の内部反射面を有し、
前記導光部の内部には、映像光を投射するための複数の略平行な部分反射面アレイを備えたことを特徴とするヘッドマウントディスプレイ。
【請求項5】
請求項1に記載のヘッドマウントディスプレイであって、
ユーザから見て前記照明部は前記投射部よりも上部方向に配置されたことを特徴とするヘッドマウントディスプレイ。
【請求項6】
請求項1に記載のヘッドマウントディスプレイであって、
前記表示部へ照明光を導く光路と、前記表示部からの反射光を前記投射部へ導く光路とを分岐するための偏光分岐素子を有し、
前記偏光分岐素子は透明基板上にワイヤーグリッドフィルムを貼り付けたことを特徴とするヘッドマウントディスプレイ。
【請求項7】
請求項1に記載のヘッドマウントディスプレイであって、更に、
ユーザの視界方向を撮影する撮像部と、
電力を供給する電力供給部と、
情報を記憶する記憶部と、
ユーザの位置や姿勢を検出するセンシング部と、
外部装置と通信を行う通信部と、
音声信号の入力または出力を行う音声処理部と、
装置全体の制御を行う制御部と、
を備えたことを特徴とするヘッドマウントディスプレイ。
【請求項8】
ユーザの頭部に装着され視野内に映像を表示するヘッドマウントディスプレイであって、
表示する映像を生成する表示部と、
前記表示部に照明光を照射する照明部と、
前記表示部からの映像光を投射する投射部と、
前記投射部からの映像光をユーザの瞳に伝達する導光部と、を備え、
前記照明部は、
光を出射する光源部と、
前記光源部から出射された光を照射し仮想的な2次光源となるマイクロレンズアレイと、
前記マイクロレンズアレイからの光を前記表示部に集光するコンデンス光学部材と、
前記マイクロレンズアレイからの光を拡散する拡散板と、を有し、
前記拡散板は、前記コンデンス光学部材の前側であり、前記マイクロレンズアレイよりも前記コンデンス光学部材に近い位置に配置されたことを特徴とするヘッドマウントディスプレイ。
【請求項9】
請求項8に記載のヘッドマウントディスプレイであって、
前記コンデンス光学部材は単一のコンデンスレンズであって、
前記マイクロレンズアレイから前記コンデンスレンズまでの第1の距離と、前記コンデンスレンズから前記表示部までの第2の距離が、略等しいことを特徴とするヘッドマウントディスプレイ。
【請求項10】
請求項8に記載のヘッドマウントディスプレイであって、
前記コンデンス光学部材は凹面ミラーであることを特徴とするヘッドマウントディスプレイ。
【請求項11】
請求項8に記載のヘッドマウントディスプレイであって、
前記コンデンス光学部材の焦点距離は8mm~14mmの範囲であることを特徴とするヘッドマウントディスプレイ。
【請求項12】
請求項8に記載のヘッドマウントディスプレイであって、
前記拡散板には所定の方向の直線偏光のみを透過する偏光フィルタが貼り合わせて一体化され、
一体化された前記拡散板と前記偏光フィルタは、前記拡散板が前記マイクロレンズアレイ側に、前記偏光フィルタが前記表示部側になるよう配置されることを特徴とするヘッドマウントディスプレイ。
【請求項13】
請求項8に記載のヘッドマウントディスプレイであって、
前記コンデンス光学部材の表面を砂摺り状の面とすることで、前記コンデンス光学部材に前記拡散板が一体化されていることを特徴とするヘッドマウントディスプレイ。
【請求項14】
請求項8に記載のヘッドマウントディスプレイであって、
前記照明部は、光路を折り曲げるための折り曲げミラーと、
前記表示部で反射後の映像光を前記投射部へ導くための偏光分岐素子と、を備え、
前記折り曲げミラーおよび前記偏光分岐素子は、前記表示部の表示領域の短手方向に光を折り曲げるよう配置され、
前記折り曲げミラーと前記偏光分岐素子は略平行であることを特徴とするヘッドマウントディスプレイ。
【請求項15】
請求項8に記載のヘッドマウントディスプレイであって、
前記導光部は映像光を入射する入射面と、入射した映像光を全反射しながら伝播する略平行な第1及び第2の内部反射面を有し、
前記導光部の内部には、映像光を投射するための複数の略平行な部分反射面アレイを備えたことを特徴とするヘッドマウントディスプレイ。
【請求項16】
請求項8に記載のヘッドマウントディスプレイであって、
ユーザから見て前記照明部は前記投射部よりも上部方向に配置されたことを特徴とするヘッドマウントディスプレイ。
【請求項17】
請求項8に記載のヘッドマウントディスプレイであって、
前記表示部へ照明光を導く光路と、前記表示部からの反射光を前記投射部へ導く光路とを分岐するための偏光分岐素子を有し、
前記偏光分岐素子は透明基板上にワイヤーグリッドフィルムを貼り付けたことを特徴とするヘッドマウントディスプレイ。
【請求項18】
請求項10に記載のヘッドマウントディスプレイであって、
前記凹面ミラーと前記表示部は偏光分岐素子を挟んで対向して配置され、
前記マイクロレンズアレイと前記表示部は略垂直となる幾何学的な関係で配置され、
前記偏光分岐素子と前記凹面ミラーの間には、前記拡散板と1/4波長板が配置されていることを特徴とするヘッドマウントディスプレイ。
【請求項19】
請求項10に記載のヘッドマウントディスプレイであって、
前記凹面ミラーは、非球面の凹面ミラー、又は凸非球面に反射コートを付けた平凸非球面レンズであることを特徴とするヘッドマウントディスプレイ。
【請求項20】
請求項8に記載のヘッドマウントディスプレイであって、更に、
ユーザの視界方向を撮影する撮像部と、
電力を供給する電力供給部と、
情報を記憶する記憶部と、
ユーザの位置や姿勢を検出するセンシング部と、
外部装置と通信を行う通信部と、
音声信号の入力または出力を行う音声処理部と、
装置全体の制御を行う制御部と、
を備えたことを特徴とするヘッドマウントディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザの頭部に装着され視野内に映像を表示するヘッドマウントディスプレイに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ヘッドマウントディスプレイ(以下、HMDとも略す)のようなウェアラブルデバイスは、良好な視界の確保や映像の視認性といった表示性能だけでなく、小型であるとともに装着性に優れる構造が要求される。これに関し特許文献1には、光学系全体を小型にするために、映像光をプリズム形の部材で導光させて中間像を生成する構成の虚像表示装置が開示されている。また特許文献2には、光を透過させる平面の基板、内部反射全体によって基板中へ光を連結するための光学手段、及び基板に所有される複数の部分反射面を含み、部分反射面が、互いに平行であると共に基板のどの縁に対しても平行ではない構成の光学デバイスが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-174429号公報
【文献】特表2003-536102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
HMDの光学系は、光源部が発する光を表示部へ伝える照明部と、表示部により生成された映像光(虚像)を投射する投射部を有する。HMDを明るい屋外等の周囲環境で使用するには、高輝度な光学系が必要である。また、HMDのシースルー性を重視して導光板を用いる場合には、導光板により光学効率が低下するため、より高輝度又は高効率な光学系が要求される。その結果、光学系は大型化してしまう課題がある。
【0005】
また、光学系を高効率・高輝度化するために、照明部にマイクロレンズアレイを用いることが有効である。これに関し本件発明者等の検討では、照明部にマイクロレンズアレイを採用した場合、マイクロレンズアレイの共役像が投射レンズの射出瞳にも形成される現象を見出した。つまり、ユーザは投射された映像を見る際にこの共役像も併せて視認することになり、表示された映像が妨害されて見にくくなるという課題が生じる。
【0006】
前記特許文献1、2や他の先行技術においては、光学系の高効率・高輝度化と小型化の両立を図る上で、マイクロレンズアレイ採用に伴う共役像発生の問題については何ら考慮されていない。
【0007】
本発明の目的は、光学系の高効率・高輝度化と小型化を両立させるとともに、マイクロレンズアレイ採用に伴う共役像発生を抑制するヘッドマウントディスプレイを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ユーザの頭部に装着され視野内に映像を表示するヘッドマウントディスプレイであって、表示する映像を生成する表示部と、表示部に照明光を照射する照明部と、表示部からの映像光を投射する投射部と、投射部からの映像光をユーザの瞳に伝達する導光部と、を備える。ここに照明部は、光を出射する光源部と、光源部から出射された光を照射し仮想的な2次光源となるマイクロレンズアレイと、マイクロレンズアレイからの光を表示部に集光するコンデンス光学部材と、マイクロレンズアレイからの光を拡散する拡散板と、を有し、拡散板は、マイクロレンズアレイよりもコンデンス光学部材に近い位置に配置されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、小型で高輝度画面のヘッドマウントディスプレイを実現するとともに、マイクロレンズアレイ採用に伴う共役像発生を抑制して視認性の良い虚像を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】ヘッドマウントディスプレイ(HMD)1のブロック構成例を示す図。
図2】虚像映像生成部101の構成例を示す図。
図3】HMD1の使用形態を示す図。
図4】HMD1の装着性を示す図。
図5】テレセントリック光学系の概要を示す図。
図6A】共役像発生を説明する模式図。
図6B】共役像発生を抑制する方法を説明する模式図。
図7】虚像映像生成部101の構成の一例を示す図(実施例1)。
図8】虚像映像生成部101の構成の一例を示す図。
図9図8の変形例を示す図。
図10】虚像映像生成部101の構成の一例を示す図(実施例2)。
図11図10の変形例を示す図。
図12】HMD1の使用例を示す図。
図13図1の変形例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
図1は、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)1のブロック構成例を示す図である。HMD1は、虚像映像生成部101と、制御部102と、画像信号処理部103と、電力供給部104と、記憶部105と、センシング部106と、通信部107と、音声処理部108と、撮像部109と、入出力部91~93とを有する。
【0012】
虚像映像生成部101は、表示部(マイクロディスプレイ)に表示した映像を虚像として拡大投射して、装着者(ユーザ)の視界に拡張現実(AR:Augmented Reality)や混合現実(MR:Mixed Reality)の映像を表示する。
【0013】
制御部102は、HMD1全体を統括的に制御する。制御部102は、CPU(Central Processing Unit)等の演算装置によってその機能が実現される。画像信号処理部103は、虚像映像生成部101内の表示部に対し、表示用の映像信号を供給する。電力供給部104は、HMD1の各部に対し電力を供給する。
【0014】
記憶部105は、HMD1の各部の処理に必要な情報や、HMD1の各部で生成された情報を記憶する。また、制御部102の機能がCPUによって実現される場合、CPUが実行するプログラムやデータを記憶する。記憶部105は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等の記憶デバイスで構成される。
【0015】
センシング部106は、コネクタである入出力部91を介して各種センサと接続され、各種センサによって検出された信号に基づいて、HMD1の姿勢(すなわちユーザの姿勢)や、動き、周囲温度等を検出する。各種センサとして、例えば、傾斜センサや加速度センサ、温度センサ、ユーザの位置情報を検出するGPS(Global Positioning System)のセンサ等が接続される。
【0016】
通信部107は、コネクタである入出力部92を介して、近距離無線通信、遠距離無線通信、または有線通信によって、外部の情報処理装置と通信を行う。具体的には、Bluetooth(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)、移動体通信ネットワーク、ユニバーサルシリアルバス(USB、登録商標)、高精細度マルチメディアインターフェース(HDMI(登録商標))等によって通信を行う。
【0017】
音声処理部108は、コネクタである入出力部93を介して、マイクやイヤホン、スピーカー等の音声入出力装置と接続され、音声信号の入力または出力を行う。撮像部109は、例えば小型カメラや小型TOFセンサであり、HMD1のユーザの視界方向を撮影する。
【0018】
図2は、虚像映像生成部101の構成例を示す図である。虚像映像生成部101は、照明部120、表示部121、投射部122、および導光部123で構成される。照明部120は、LEDやレーザなどの光源からの光を表示部121に照射する。表示部121は、映像を表示するためのマイクロディスプレイであり、液晶ディスプレイ、デジタルマイクロミラーデバイス、有機ELディスプレイ等が用いられる。投射部122は、表示部121の映像光を拡大し、虚像として投射する。導光部123は、投射部122からの映像光をユーザの瞳20へ伝達する。ユーザは、映像光が瞳20に結像されることで映像を視認できる。
【0019】
図3は、HMD1の使用形態を示す図である。ここでは、ユーザ2の頭上方向から見下ろした状態を示し、X軸は水平方向、Y軸は垂直方向、Z軸は視軸方向である。以後の図面においても、X,Y,Z軸の方向を同様に定義する。
【0020】
HMD1はユーザ2の頭部に装着され、虚像映像生成部101で生成した映像を導光部123を介してユーザの瞳20に伝播する。その際ユーザ2は、視野内の一部の領域(映像表示領域)111に、外界が視認可能な状態(シースルー型)で映像(虚像)を視認できる。ここでは両眼に映像を表示する構成を示したが、片眼の構成としても構わない。またHMD1は、図1の撮像部109にて、ユーザ2の視野範囲を撮影することも可能である。
【0021】
図4は、HMD1の装着性を示す図で、ユーザ2の前面方向(Z方向)から見た状態を示す。HMD1はメガネ型形状を成し、ユーザの眼の位置には導光部123が、フレーム部10には、照明部120と表示部121と投射部122が収納される。ここで、フレーム部10の水平方向(X方向)の寸法Aと垂直方向(Y方向)の寸法Bについて考察する。また、(a)(b)(c)では、寸法Bの異なる3通りのフレーム部10の形状を示している。
【0022】
HMD1の装着性の観点では、水平方向のA寸法が大きすぎると、ユーザ2の頭部の外側へのHMD1のはみ出しが増加し、装着性が低下する。よって、水平方向の寸法Aを短くしたいという要求がある。
【0023】
また、垂直方向のB寸法については、(a)のようにB寸法が大きい場合、ユーザ2の前方(Z方向)と横方向(X方向)の視界の遮断される範囲が大きくなり、HMD装着時の利便性・作業性が低下する。特に、HMD1を装着して現場作業等を行う際は、ユーザ2は前方から前方下方向の視界を使って作業を行う場合が多く、横及び横斜め下方向の視界確保が困難になる。
【0024】
よって、(b)に示したようにB寸法を短くするか、(c)に示したように符号10の部分を上方向にシフトさせて配置し、横及び横斜め下方向の視界を確保できることが望ましい。これらの具体的内容については後述の実施例で説明する。
【0025】
次に、虚像映像生成部101の構成、特に照明部120と表示部121と投射部122の構成を中心に説明する。虚像映像生成部101の表示部121に非発光型のマイクロディスプレイを用いる場合、照明部120には、高輝度化や輝度均一性の観点からテレセントリック性を有した照明光学系が要求される。ここで、テレセントリック性を満足させるためのA寸法の条件について説明する。
【0026】
図5は、テレセントリック光学系の概要を示す図である。ここでは照明部120の構成として、光源部からの光が照射され仮想的な2次光源部となるマイクロレンズアレイ130を採用する。そして、マイクロレンズアレイ130と表示部121の間に、コンデンス光学部材131を配置している。ここではコンデンス光学部材131として、単一のコンデンスレンズを用いている。
【0027】
テレセントリック光学系とするには、マイクロレンズアレイ130とコンデンスレンズ131の間隔、及びコンデンスレンズ131と表示部121の間隔が、夫々レンズの焦点距離fとする必要がある。加えて表示部121を反射型の液晶ディスプレイとした場合、コンデンスレンズ131と表示部121の間には、偏光ビームスプリッタやワイヤーグリッドフィルムなどの偏光分岐素子132を配置する必要がある。ここでは偏光分岐素子132として、ワイヤーグリッドフィルムを光学的に透明な基板133へ貼り付けた構成を示している。
【0028】
従ってコンデンスレンズ131の焦点距離fは、偏光分岐素子132を配置可能な長さとする必要がある。偏光分岐素子132の光学的な有効径は、主に表示部121(マイクロディスプレイ)のサイズと投射レンズのF値によって幾何的に決定される。
【0029】
一般的な小型のマイクロディスプレイのサイズは、ディスプレイエリアの対角が0.2~0.3インチである。また投射レンズのF値は、MTF(Modulation Transfer Function)やレンズのサイズ、製造上の難易度等の総合的な観点から、F=1.7~3程度とするのが望ましい。このとき照明側、投射側共に必要な有効径は幾何学的に決定されるため、必要なコンデンスレンズ131の焦点距離fも決定することができる。ディスプレイパネル、偏光分岐素子およびコンデンスレンズの搭載間隔や、コンデンスレンズの厚み等も考慮に入れると、コンデンスレンズ131の焦点距離fは8~14mmの範囲内とするのが望ましい。
【0030】
従って、マイクロレンズアレイ130から表示部121までの距離は、前記焦点距離fの2倍以上の寸法が必要となる。これに加えて光源部の光学系も必要となるため、前記A寸法が長くなり、HMD1の装着性を悪化させる要因となる。
【0031】
これまで虚像映像生成部101の光学系サイズについて説明したが、導光部123を用いて映像(虚像)を視認する場合、照明部120内のマイクロレンズアレイ(レンズセル)と光源の共役像が発生するという課題がある。以下、共役像の課題と抑制法について説明する。
【0032】
図6Aは、虚像映像生成部101における共役像発生を説明する模式図である。まず、光学系の構成から説明する。照明部120において光源140から出射した光は、集光レンズ142,143に入射する。一般に、光源140は集光レンズ142,143の合成焦点位置付近に配置されるので、光源140から出射した光束は集光レンズで略コリメート光となる。集光レンズ142,143からの光は仮想的な2次光源部となるマイクロレンズアレイ130を照明する。マイクロレンズアレイ130を経た光は、コンデンスレンズ131を介して表示部121を照明する。表示部121によって映像信号の情報を付加された光は、投射部122および導光部123を経てユーザの瞳20に結像され、ユーザはHMDの映像を視認する。
【0033】
上記光学系で映像を視認する場合、マイクロレンズアレイ130によって複製された光源140の共役像180が、マイクロレンズアレイ130の出射面に形成される。また、マイクロレンズアレイ130の出射面と投射部122の射出瞳は略共役な位置関係にある。よって、投射部122の射出瞳位置122pには、マイクロレンズアレイ130のレンズセル出射面の共役像181と、マイクロレンズアレイ130の出射面に形成された上記光源140の共役像180の更なる共役像182が形成される。従って、ユーザが導光板123越しに映像を見ると、映像の手前に、マイクロレンズセルの共役像181と光源の共役像182が重畳されたように見えてしまい、映像の視認性が低下する。
【0034】
なお、導光板123はアイボックスを拡大するために投射部122の射出瞳を複製する機能を有するため、複製回数が多いと各共役像181,182が繰り返し重なり合って目立たなくなることもある。一方で、ビームスプリッタミラーアレイ型の導光板123を用いた場合は、他の方式に比べ原理的に複製回数が少なくなり、上記共役像181,182により映像の視認性は大きく低下する。
【0035】
図6Bは、共役像発生を抑制する方法を説明する模式図である。図6Aの光学系において、マイクロレンズセルの共役像181と光源の共役像182の視認性を抑制する構成を示す。本構成では、照明部120のコンデンスレンズ131の近傍に、マイクロレンズアレイ130からの光を拡散するための拡散板150を設けている。拡散板150を設けることで、マイクロレンズセルの共役像181と光源の共役像182をぼかして目立たなくすることができる。その際、拡散板150を表示部121よりも手前に配置することで、投射部122による表示部121の拡大像(虚像)の解像度には影響を与えないようにすることができる。
このように、HMD1では、フレーム部の小型化と共役像の発生という課題があり、以下の実施例でこれらの解決法を説明する。
【実施例1】
【0036】
実施例1では、フレーム部10のA寸法の短縮と、共役像の抑制について説明する。
図7は、虚像映像生成部101の構成の一例を示す図で、A寸法を縮小する構成である。(a)は視軸方向(Z軸)から見た図、(b)は垂直方向(Y軸)から見た図である。照明部120において、光源部として緑色(G)の光源140と、赤色(R)及び青色(B)の光源141を備える。各光源からの光は集光レンズ142,143によって略コリメート化される。各色光源からの略コリメート光は、色合成部144によって合成される。
【0037】
ここでは(b)に示すように、色合成部144に楔形のダイクロイックミラーを用いた例を示している。ダイクロイックミラーは、R光とB光とG光の略コリメート光を合成して出射する。このとき各色の光軸は必ずしも完全に一致している必要はなく、所定の面で強度分布が略一致するようにあえて光軸をわずかにずらしても構わない。
【0038】
色合成された光は、仮想的な2次光源となるマイクロレンズアレイ130へ入射する。マイクロレンズアレイ130は、色合成部144から出射した略コリメート光束で照明される。マイクロレンズアレイ130を用いることで、表示部121のマイクロディスプレイの所定の範囲のみに光を集めることができる。また、表示部121上での照明光の輝度分布を均一化できる。
【0039】
表示部121にLCOS(Liquid Crystal On Silicon、登録商標)等を用いる場合は、所定の偏光を照明するために、偏光フィルタ145を配置して事前に必要な偏光成分のみを取り出すようにする。偏光フィルタ145は、迷光対策やコントラストの点でも有利に作用する。
【0040】
折り曲げミラー146は、マイクロレンズアレイ130から表示部121への光路を折り曲げる作用(X方向→Y方向)がある。すなわち、折り曲げミラー146を挿入することで、光学系のX軸方向の長さ(図4のA寸法)を短くすることができる。コンデンス光学部材131としてのコンデンスレンズは、マイクロレンズアレイ130のセル像を表示部121へ結像させる。
【0041】
偏光分岐素子132は、照明部120と投射部122への光路を切り分ける。投射部122は、表示部121の映像を無限遠または虚像として投射する。投射部122からの映像光は導光部123へ入射され、ユーザはシースルー性を確保した状態で映像を視認できる。偏光フィルタ147と1/4波長板148は、投射部122や導光部123からの戻り光による迷光を抑制する。
【0042】
以下、各部の構成を詳細に説明する。照明部120において、光源140は緑色の光を出射し、光源141は赤色と青色の光を出射する。光源141は、赤色と青色の光源が同一パッケージに実装されている。ここでは2色が同一のパッケージに実装されている光源141を示しているが、3個の光源は各々が独立したパッケージ内に実装されていても良いし、2個以上の光源が1つのパッケージ内に集積して実装されていても良い。
【0043】
光源140,141から出射した光は、集光レンズ142,143に入射する。集光レンズ142,143は、その略合成焦点位置に各光源が位置するように配置されており、光源140,141から出射した光束は、集光レンズにより略コリメート光となる。各光源からの略コリメート光は、色合成部144に向かって出射する。
【0044】
投射部122は、複数枚からのレンズからなる投射光学系で、表示部121からの映像光を画角に応じて角度を変えて投射する。
【0045】
導光部123は、回折格子、体積ホログラム、ビームスプリッタアレイ(BSA)等を用いた導光板構成とすることで、シースルー性を備えたHMD1とすることができる。例えば、回折格子を用いた導光部123は平行平板の構造であって、光を導光部123内に取り込むための入力回折格子部と、取り込んだ光を全反射で平行平板内を伝播させる伝播部と、全反射によって伝播した光を導光部123外へ出射するための出力回折格子部を有する。また、ビームスプリッタアレイを用いた導光部123も平行平板の構造であって、光は平行平板の端面部から入射し、全反射で平行平板内を伝播し、全反射によって伝播した光を導光部外へ出射するための複数のアレイ状に並んだ反射面を有する。アレイ状の反射面は、全反射によって伝播した光の一部を反射し一部を透過する構成とする。
【0046】
このように図7の構成によれば、折り曲げミラー146をマイクロレンズアレイ130とコンデンスレンズ131に間に配置して光学系を折り曲げることで、A部の寸法を縮小できる。この時の折り曲げミラー146の有効光束系は、偏光分岐素子132と略同等のサイズとなる。
【0047】
一般的にHMD1の表示映像領域111(図3に示す)は、水平方向と垂直方向の範囲が異なり、水平方向の表示範囲が広い。従って、表示部121のマイクロディスプレイ有効領域も水平方向と垂直方向で長さが異なり、垂直方向が短い。そこで、折り曲げミラー146と偏光分岐素子132は、垂直相当の方向(短手方向)に折り曲げる構成とすることで、折り曲げミラー146と偏光分岐素子132のサイズを小型化できる。
【0048】
一般的なテレセントリック性を有するプロジェクタの照明光学系では、複数枚レンズのコンデンスレンズを用いることで、マイクロレンズアレイ130から表示部121までの距離の縮小を図っている。しかしながらHMD1に用いる虚像映像生成部101の光学系では、前記した理由で光路中に折り曲げミラー146や偏光分岐素子132を配置する必要があり、これらのサイズを考慮すると、単一のコンデンスレンズを用いても大型化させずに光学系を構成することが可能である。
【0049】
図7に示す虚像映像生成部101では、投射部122を導光部123の上部に配置し、折り曲げた照明部120をさらに投射部122の上部へ配置することで、横及び横斜め下方向の視界を確保できる。すなわち、図4(c)のようなフレーム部10の形状が可能となる。また、単一のコンデンスレンズ131と折り曲げミラー146を配置した構成とすることで、HMD1のA寸法が小型化し、利便性が増すとともに視野を確保できる。加えて、単レンズ使用により低コスト化や軽量化を図ることができる。
【0050】
図8は、虚像映像生成部101の構成の一例を示す図で、小型化とともに共役像を抑制する構成である。図7に示した虚像映像生成部101と同じ要素には同じ符号を付し、視軸方向(Z軸)から見た図のみを示している。本例では、導光部123で複製された周期的なマイクロレンズアレイ(レンズセル)と光源の共役像を抑制するために、図6Bで説明したように、マイクロレンズアレイ130と表示部121の間に拡散板150を追加している。これにより、表示部121の拡大像である映像(虚像)の解像度には影響を与えることなく、マイクロレンズセルと光源の共役像のみをぼかして目立たなくすることができる。また、図7と同様に折り曲げミラー146を配置した構成とすることで、HMD1のA寸法を小型化している。
【0051】
ここで拡散板150の位置は、マイクロレンズアレイ130から離しコンデンスレンズ131に近い位置に配置する。この例ではコンデンスレンズ131の前側(図面上側)に配置したが、コンデンスレンズ131の後側(図面下側)でもよい。コンデンスレンズ131に近い位置に配置することで、拡散板150の拡散角を小さくでき、拡散板150挿入による効率低下を抑えつつ、マイクロレンズセルと光源の共役像のみをぼかすことができる。
【0052】
拡散板150挿入の効果は、マイクロレンズアレイ130を用いず単純に色合成部144からの光を表示部121に照射する構成でも認められる。しかし、マイクロレンズアレイ130を用いた構成に適用することで、高効率で輝度均一性の高い照明系であって、かつ、導光板123越しに映像を見た際に発生する共役像を抑制する効果がある。
【0053】
また、拡散板150による偏光への影響を考慮し、偏光フィルタ145の位置を拡散板150の直後に配置する構成としている。その際、拡散板150と偏光フィルタ145を貼り合わせて、一体化した構成としても構わない。
【0054】
一方、拡散板150とコンデンスレンズ131を一体化することも可能である。その場合、拡散板150の代わりにコンデンスレンズ131の表面を砂摺り状の面として、拡散機能を付加した構成としても良い。
【0055】
コンデンスレンズ131の焦点距離fを前記した範囲8~14mmのうち長めの値とすると、光学系のサイズは大きくなるが共役像の抑制効果は大きくなる。これは、マイクロレンズセル上の光源像が大きくなって各光源像間の間隔が短くなり、共役像での明暗の変化が小さくなることで共役像が視認しにくくなるからである。次に、焦点距離が長い場合に有効な構成について説明する。
【0056】
図9は、図8の変形例を示す図で、コンデンス光学部材に2枚のコンデンスレンズを用いた構成である。焦点距離が長い場合はレンズを2枚程度用いて、前側主平面と後側主平面の位置をなるべく近接するように配置することで、光学系のサイズを小型化できる。
【0057】
マイクロレンズアレイ130の後に第1のコンデンスレンズ151を配置し、折り曲げミラー146の後に第2のコンデンスレンズ152を配置し、その後偏光分岐素子132及び表示部121へと続く。拡散板150と偏光フィルタ145は、第2のコンデンスレンズ152の近傍(ここでは前側)に配置する。
【0058】
2枚のコンデンスレンズ151,152を配置する場合、マイクロレンズアレイ130から第1のコンデンスレンズ151までの距離と、第2のコンデンスレンズ152から表示部121までの光路長がアンバランスになる。よって、2枚のコンデンスレンズ151,152の合成主平面位置をなるべく第2のコンデンスレンズ152側に寄せるため、第1のコンデンスレンズ151はメニスカスレンズとし、第2のコンデンスレンズ152は両凸レンズとすることで、光学系を小型化できる。
【実施例2】
【0059】
実施例2では、図4で示したフレーム部10のB寸法(垂直方向)の短縮と、共役像の抑制について説明する。
図10は、虚像映像生成部101の構成の一例を示す図で、B寸法を短縮しつつ共役像を抑制する構成である。実施例1と同様の機能を有する要素には同じ符号を付している。以下、実施例1と異なる部分について説明する。
【0060】
本例では、照明部120から投射部122までが水平方向(X方向)に並んで配置させることで、光学系の垂直方向の幅(B寸法)を短縮している。光源140,141から出射し、マイクロレンズアレイ130を通過した光は、偏光フィルタ145へ入射し所定の方向の直線偏光のみが透過する。その後偏光分岐素子132によって図面下方へ反射され、拡散板150と1/4波長板160を通過する。拡散板150ではマイクロレンズアレイ130と光源140,141の共役像が抑制され、1/4波長板160では円偏光へと変換されて、凹面ミラー161に入射する。
【0061】
凹面ミラー161によって反射された光は、再び1/4波長板160を通過することで先程とは直交する方向の直線偏光となり、拡散板150及び偏光分岐素子132を透過して表示部121を照明する。表示部121で生成された映像光は、偏光分岐素子132で反射して図面右方向に進み、偏光フィルタ147と1/4波長板148を介して、投射部122へ入射する。
【0062】
この構成では、凹面ミラー161が実施例1で述べたコンデンス光学部材131に相当し、凹面ミラー161で集束された反射光が表示部121に入射する。凹面ミラー161は、非球面の凹面ミラーであることが望ましい、また、共役像をぼかすための拡散板150は、コンデンス光学部材である凹面ミラー161の近くに配置されている。
【0063】
すなわち、凹面ミラー161と表示部121は偏光分岐素子132を挟んで対向し、マイクロレンズアレイ130と表示部121は略垂直となる幾何学的な関係で配置され、偏光分岐素子132と凹面ミラー161の間には、拡散板150と1/4波長板160が配置されている。
【0064】
この構成によれば、光学系の垂直方向(Y方向)の幅が短縮され、図4(b)のようなフレーム部10の形状が可能となる。もちろん、拡散板150を組み込んでいるので、共役像を抑制する効果も得られる。
【0065】
図11は、図10の変形例を示す図で、凹面ミラー161に代えて内面反射型レンズ162を配置した構成である。内面反射型レンズ162は、凸レンズ面にミラーコートをして内面反射を利用するものであり、凹面ミラー161と同等の効果が得られる。内面反射型レンズ162は、凸非球面に反射コートを付けた平凸非球面レンズであることが望ましい。すなわち、平凸レンズをベースとすることで入射面側に1/4波長板160や拡散板150を貼り付けて一体化することができ、小型化にも寄与する。
図10での凹面ミラー161や図11での内面反射型レンズ162の焦点距離は、実施例1で述べたコンデンス光学部材131と同等の焦点距離とすればよい。
【0066】
一方、拡散板150と凹面ミラー161又は内面反射型レンズ162を一体化することも可能である。その場合、拡散板150の代わりに凹面ミラー161又は内面反射型レンズ162の曲面を砂摺り状の面として、拡散機能を付加した構成としても良い。
【0067】
実施例2の構成によれば、少ないスペースで照明光学系の光路長を確保し、実施例1で用いた折り曲げミラー146が不要となることで照明部120がストレート状の光学系となる。よってフレーム部10のB寸法を縮小でき、小型化や良好な視界の確保ができる。
【0068】
最後に、各実施例で述べたHMDの応用例について記載する。
図12は、HMD1の使用例を示す図である。ユーザ(作業者)2の視界には、HMD1からの映像(虚像)200が表示され、例えば産業機器の点検や組立て等における作業手順が表示される。ユーザ2は、作業対象物(機器や工具など)と作業指示を同時に視認しながら作業を実行することができるので、より確実な作業が可能となりミスを低減することができる。
【0069】
図13は、図1の変形例で、特に両眼の映像を精度良く表示するための構成を示す。HMD1’の画像信号処理部103’には、左目画像生成部103Lと右目画像生成部103Rを夫々設けている。両眼表示の場合は、左右夫々に映像を表示する必要があるが、これらの映像の相対的な位置が、虚像映像生成部101の組立て誤差や周囲の温度変化等でずれてしまう場合がある。そこで、画像信号処理部103’に左目画像生成部103Lと右目画像生成部103Rを夫々設けることで、左右で独立した映像表示を可能としている。これにより、例えば左右の映像の表示位置にズレが生じた際には、左目画像生成部103Lと右目画像生成部103Rで左右の映像の表示位置を信号処理で補正することで、位置ズレを解消することができる。
【0070】
また、両眼のHMD1’の場合、導光部123への映像光の入射方向が左右で異なる。導光部123を構成する反射膜、回折格子、体積ホログラムなどの入射角特性により輝度分布や色分布に変化が生じる際、左右の映像における輝度・色の変化の様子も左右対称となる。従って、前記の左目画像生成部103Lと右目画像生成部103Rを用いれば、左右の幾何学的な対称性に起因した輝度や色分布のムラを信号処理で補正することが可能である。
【0071】
また、HMD1’は屋内外で使用する。従って、周囲環境の明るさに応じて表示映像の輝度も調節する必要がある。一例として、センシング部106に入出力部91を介して照度センサを接続し、照度センサの出力に応じて画像信号処理部103’が表示する映像の輝度を調節すればよい。
【0072】
以上、本発明に係る実施の形態の説明を行ってきたが、本発明は、上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は、本発明を分かり易くするために詳細に説明したものであり、本発明は、ここで説明した全ての構成を備えるものに限定されない。また、ある実施例の構成の一部を実施例の構成に置き換えることが可能である。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることもできる。
【0073】
また、上記のHMDおよび虚像映像生成部の機能構成は、理解を容易にするために、主な処理内容に応じて分類したものである。構成要素の分類の仕方や名称によって、本願発明が制限されることはない。HMDおよび虚像映像生成部の構成は、処理内容に応じて、さらに多くの構成要素に分類することもできる。また、1つの構成要素がさらに多くの処理を実行するように分類することもできる。
【0074】
また、本発明はヘッドマウントディスプレイ(HMD)だけでなく、実施例で説明した虚像映像生成部の構成を有する他の映像(虚像)表示装置にも同様に適用できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0075】
1…ヘッドマウントディスプレイ(HMD)、10…フレーム部、101…虚像映像生成部、103…画像信号処理部、120…照明部、121…表示部、122…投射部、123…導光部、130…マイクロレンズアレイ、131,151,152…コンデンスレンズ(コンデンス光学部材)、132…偏光分岐素子、140,141…光源、144…色合成部、145…偏光フィルタ、146…折り曲げミラー、150…拡散板、161…凹面ミラー、162…内面反射型レンズ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13