(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-10
(45)【発行日】2022-08-19
(54)【発明の名称】薬剤添加量測定方法、薬剤添加量測定装置、溶存カルシウム分離方法、浸出水の溶存カルシウム分離装置、カルシウム濃度測定方法及びカルシウム濃度測定装置
(51)【国際特許分類】
C02F 5/00 20060101AFI20220812BHJP
C02F 5/02 20060101ALI20220812BHJP
C02F 5/08 20060101ALI20220812BHJP
G01N 31/00 20060101ALI20220812BHJP
【FI】
C02F5/00 610G
C02F5/00 620B
C02F5/02 B
C02F5/08 E
G01N31/00 T
(21)【出願番号】P 2018243889
(22)【出願日】2018-12-27
【審査請求日】2021-06-18
(73)【特許権者】
【識別番号】595011238
【氏名又は名称】クボタ環境エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107478
【氏名又は名称】橋本 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100117972
【氏名又は名称】河崎 眞一
(74)【代理人】
【識別番号】100190713
【氏名又は名称】津村 祐子
(74)【代理人】
【識別番号】100197549
【氏名又は名称】山下 昌三
(72)【発明者】
【氏名】滝本 太郎
(72)【発明者】
【氏名】安部 剛
(72)【発明者】
【氏名】添田 祐二
【審査官】松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-129561(JP,A)
【文献】特開2017-047361(JP,A)
【文献】特開2014-210232(JP,A)
【文献】特開2015-116538(JP,A)
【文献】特開2013-103181(JP,A)
【文献】特開昭61-220793(JP,A)
【文献】特開2007-260517(JP,A)
【文献】米国特許第05152904(US,A)
【文献】特開2011-206723(JP,A)
【文献】特開2008-238033(JP,A)
【文献】特開2018-159516(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/58- 1/64
B01D 21/01
C02F 1/52- 1/56
C02F 1/00
G01N 31/00- 31/22
C02F 5/00- 5/14
B09B 1/00- 5/00
B09C 1/00- 1/10
C01F 1/00- 17/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応槽において原水の溶存カルシウムを不溶化するために必要となるカルシウム不溶化薬剤の適量添加量を求める薬剤添加量測定方法であって、
カルシウム不溶化薬剤が添加される前の原水からサンプリングされた原水にカルシウム不溶化薬剤を添加して溶存カルシウムを不溶化させる反応工程と、
前記反応工程を経た原水の白濁度合いを測定する濁度測定工程と、
前記濁度測定工程で測定された濁度に基づいてカルシウム不溶化薬剤の適量添加量を算出する適量添加量算出工程と、
を含む薬剤添加量測定方法。
【請求項2】
前記濁度測定工程で測定された濁度に基づいて前記反応工程におけるカルシウム不溶化薬剤の添加量を調整する添加量調整工程と、
前記添加量調整工程で添加量が調整された後に前記濁度測定工程で測定された濁度に基づいてカルシウム不溶化薬剤の適量添加量を算出する適量添加量算出工程と、
をさらに備えている請求項1記載の薬剤添加量測定方法。
【請求項3】
前記添加量調整工程は、前記濁度測定工程で測定された濁度
が濁度計の非飽和域で安定するまで調整される請求項2記載の薬剤添加量測定方法。
【請求項4】
前記濁度測定工程で測定された濁度に基づいてサンプリングされた原水を希釈する希釈ステップをさらに備えている請求項1から3の何れかに記載の薬剤添加量測定方法。
【請求項5】
前記反応工程の前段に、サンプリングされた原水に対してpH調整剤の添加により所定のpH値に調整するpH調整ステップを備えている請求項1から4の何れかに記載の薬剤添加量測定方法。
【請求項6】
適量添加量算出工程は、前記濁度測定工程で測定された濁度に基づいて溶存カルシウム濃度を算出し、前記溶存カルシウム濃度に基づいてカルシウム不溶化薬剤の適量添加量を算出するように構成されている請求項1から5の何れかに記載の薬剤添加量測定方法。
【請求項7】
原水が最終処分場の浸出水であり、原水槽または調整槽に貯留された浸出水の一部をサンプル反応槽またはサンプル反応管に導くとともに浸出水の残部を反応槽に導き、前記サンプル反応槽またはサンプル反応管に導かれる浸出水に請求項1から6の何れかに記載の薬剤添加量測定方法を用いて算出された適量添加量のカルシウム不溶化薬剤を前記反応槽に添加する浸出水の溶存カルシウム分離方法。
【請求項8】
原水が最終処分場の浸出水であり、原水槽または調整槽に貯留された浸出水を反応槽に導き、前記反応槽に導かれ
カルシウム不溶化薬剤が添加される前の浸出水
からサンプリングされた原水
に請求項1から6の何れかに記載の薬剤添加量測定方法を用いて算出された適量添加量のカルシウム不溶化薬剤を前記反応槽に添加する浸出水の溶存カルシウム分離方法。
【請求項9】
原水の溶存カルシウムを不溶化するために必要となるカルシウム不溶化薬剤の適量添加量を求める薬剤添加量測定装置であって、
撹拌機構が設けられ、サンプリングされた原水が導水されるサンプル反応槽またはサンプル反応管と、
前記サンプル反応槽またはサンプル反応管に導水される原水にカルシウム不溶化薬剤を添加して溶存カルシウムを不溶化させる不溶化薬剤添加装置と、
前記不溶化薬剤添加装置でカルシウム不溶化薬剤が添加された原水の白濁度合いを測定する濁度計と、
前記濁度計で測定された濁度に基づいてカルシウム不溶化薬剤の適量添加量を算出する適量添加量算出装置と、
を含む薬剤添加量測定装置。
【請求項10】
前記濁度計の値に基づいて前記カルシウム不溶化薬剤添加装置によるカルシウム不溶化薬剤の添加量を調整し、前記濁度計の濁度が非飽和域で安定するとその値に基づいてカルシウム不溶化薬剤の適量添加量を算出する制御装置を備えている請求項9記載の薬剤添加量測定装置。
【請求項11】
前記サンプル反応槽またはサンプル反応管に導水される原水を希釈する希釈機構を備え、
前記制御装置は、前記濁度計の値が予め定めた飽和域に達すると、前記希釈機構により前記サンプル反応槽またはサンプル反応管に導水される原水を希釈するように構成されている請求項10記載の薬剤添加量測定装置。
【請求項12】
前記サンプル反応槽またはサンプル反応管に導水される原水にpH調整剤を添加するpH調整剤添加装置を備え、
前記サンプル反応槽に導水された原水のpH値が目標範囲に維持されるように前記pH調整剤添加装置によるpH調整剤の添加量を調整する制御装置を備えている請求項9から11の何れかに記載の薬剤添加量測定装置。
【請求項13】
原水槽または調整槽に貯留された最終処分場の浸出水を導く反応槽と、
前記反応槽に導かれ
カルシウム不溶化薬剤が添加される前の浸出水
からサンプリングされた原水
から、当該原水の溶存カルシウムを不溶化するために必要となるカルシウム不溶化薬剤の適量添加量を算出する請求項9から12の何れかに記載の薬剤添加量測定装置と、
を備え、
前記薬剤添加量測定装置により算出された適量添加量のカルシウム不溶化薬剤を前記不溶化薬剤添加装置により前記反応槽に添加して溶存カルシウムを不溶化させるように構成されている浸出水の溶存カルシウム分離装置。
【請求項14】
請求項9から12の何れかに記載の薬剤添加量測定装置と、原水槽または調整槽に貯留された最終処分場の浸出水の溶存カルシウムを分離する反応槽と、を備え、
制御装置は、浸出水の一部をサンプル反応槽またはサンプル反応管に導くとともに浸出水の残部を反応槽に導き、算出した前記サンプル反応槽またはサンプル反応管の浸出水の溶存カルシウム濃度に基づいて得られる適量のカルシウム不溶化薬剤を前記反応槽に添加して浸出水の溶存カルシウムを分離する浸出水の溶存カルシウム分離装置。
【請求項15】
原水の溶存カルシウム濃度を測定するカルシウム濃度測定方法であって、
サンプリングされた原水にカルシウム不溶化薬剤を添加して溶存カルシウムを不溶化させる反応工程と、
前記反応工程を経た原水の白濁度合いを測定する濁度測定工程と、
前記濁度測定工程で測定された濁度に基づいて溶存カルシウム濃度を算出する濃度算出工程と、
を含むカルシウム濃度測定方法。
【請求項16】
前記濁度測定工程で測定された濁度に基づいて前記反応工程におけるカルシウム不溶化薬剤の添加量を調整する添加量調整工程と、
前記添加量調整工程で添加量が調整された後に前記濁度測定工程で測定された濁度に基づいて溶存カルシウム濃度算出する濃度算出工程と、
を備えている請求項15記載のカルシウム濃度測定方法。
【請求項17】
原水の溶存カルシウム濃度を測定するカルシウム濃度測定装置であって、
サンプリングされた原水にカルシウム不溶化薬剤を添加して溶存カルシウムを不溶化させる不溶化薬剤添加装置と、
前記不溶化薬剤添加装置によりカルシウム不溶化薬剤化添加された原水の白濁度合いを測定する濁度計と、
前記濁度計で測定された濁度に基づいて溶存カルシウム濃度を算出する濃度算出装置と、
を含むカルシウム濃度測定装置。
【請求項18】
前記濁度計で測定された濁度に基づいて前記不溶化薬剤添加装置によるカルシウム不溶化薬剤の添加量を調整する制御装置を備えている請求項17記載のカルシウム濃度測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤添加量測定方法、薬剤添加量測定装置、溶存カルシウム分離方法、浸出水の溶存カルシウム分離装置、カルシウム濃度測定方法及びカルシウム濃度測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最終処分場の浸出水には高濃度のカルシウムが溶存しているため、浸出水を処理する水処理設備の配管や設備内の機器にスケールが生じ、管の詰りなどの不都合な事態が生じるという問題があった。
【0003】
そこで、浸出水の溶存カルシウムを除去するために、浸出水にカルシウム不溶化薬剤となる炭酸ソーダを添加して炭酸カルシウムとして沈殿分離する前処理が行なわれている。
【0004】
その際に、作業員が手分析で浸出水の溶存カルシウム濃度を測定し、炭酸ソーダの添加量を設定していたが、市販のイオン電極式のカルシウム濃度計は共存イオンの影響を受けて正確な値を求めることが困難で、また浸出水に浸漬する電極部にスケールが付着し易いため、正確にリアルタイムで測定することが困難であった。
【0005】
そのため、浸出水の溶存カルシウム濃度の変化に対応するべく、理論的な必要量以上の過剰な量の炭酸ソーダを添加せざるを得ず、薬品コストが嵩むという問題があった。
【0006】
特許文献1には、溶存カルシウムの濃度変化を、pHの速度変化で知ることを特徴とする溶存カルシウムの濃度変化の把握方法であって、前記pHの速度変化における速度とは、pHの所定範囲におけるpHの変化量を、前記変化量を達成するに要した時間で除したものであることを特徴とする溶存カルシウムの濃度変化の把握方法が開示されている。
【0007】
所定範囲のpH等の液性を、人為的に変化させて追跡することで、溶存カルシウムの濃度変化をモニタリングして把握する技術であり、二酸化炭素の曝気による溶存カルシウムの除去における曝気終点の判断が容易に行えるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上述した溶存カルシウムの除去技術は、一定量の浸出水に二酸化炭素を曝気して炭酸カルシウムとして除去するバッチ処理技術であり、浸出水の溶存カルシウムの除去を連続的に行なえない点、溶存カルシウムの濃度を測定できない点で、さらなる改良の余地があった。
【0010】
本発明の目的は、上述した問題点に鑑み、浸出水の溶存カルシウムの濃度または濃度相当値を測定でき、適量の薬剤添加量で浸出水の溶存カルシウムの除去処理を適切に行なえる薬剤添加量測定方法、薬剤添加量測定装置、溶存カルシウム分離方法、浸出水の溶存カルシウム分離装置、カルシウム濃度測定方法及びカルシウム濃度測定装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の目的を達成するため、本発明による薬剤添加量測定方法の第一の特徴構成は、反応槽において原水の溶存カルシウムを不溶化するために必要となるカルシウム不溶化薬剤の適量添加量を求める薬剤添加量測定方法であって、カルシウム不溶化薬剤が添加される前の原水からサンプリングされた原水にカルシウム不溶化薬剤を添加して溶存カルシウムを不溶化させる反応工程と、前記反応工程を経た原水の白濁度合いを測定する濁度測定工程と、前記濁度測定工程で測定された濁度に基づいてカルシウム不溶化薬剤の適量添加量を算出する適量添加量算出工程と、を含む点にある。
【0012】
サンプリングされた原水に過剰のカルシウム不溶化薬剤を添加することにより、当該カルシウム不溶化薬剤で不溶化可能な溶存カルシウムの全てが不溶化されて原水が白濁する。原水の白濁度を測定することにより、予め求められた白濁度とカルシウム不溶化薬剤の適量添加量との相関関係に基づいてカルシウム不溶化薬剤の適量添加量が算出できる。原水の全量に過剰のカルシウム不溶化薬剤を添加するのではなく、サンプリングされた原水に過剰のカルシウム不溶化薬剤を添加し、それにより得られた適量添加量のカルシウム不溶化薬剤を反応槽において原水に添加することになるので、カルシウム不溶化薬剤を過剰に使用しなくとも、原水に含まれる溶存カルシウムの分離処理が効率的に行なえるようになる。
【0013】
同第二の特徴構成は、前記濁度測定工程で測定された濁度に基づいて前記反応工程におけるカルシウム不溶化薬剤の添加量を調整する添加量調整工程と、
前記添加量調整工程で添加量が調整された後に前記濁度測定工程で測定された濁度に基づいてカルシウム不溶化薬剤の適量添加量を算出する適量添加量算出工程と、をさらに備えている点にある。
【0014】
濁度計で測定された濁度に基づいて添加量調整工程が実行され、濁度が安定すると濁度に基づいてカルシウム不溶化薬剤の適量添加量が算出される。濁度とカルシウム不溶化薬剤の適量添加量の間に一定の相関関係があり、例えば予め求められた検量線に基づいて各濁度に対するカルシウム不溶化薬剤の適量添加量が求められる。その結果、多量の原水であっても、求められたカルシウム不溶化薬剤の適量添加量に応じて適量のカルシウム不溶化薬剤を添加することにより溶存カルシウムの分離処理が効率的に行なえるようになる。
【0015】
同第三の特徴構成は、上述の第二の特徴構成に加えて、前記添加量調整工程は、前記濁度測定工程で測定された濁度が濁度計の非飽和域で安定するまで調整される点にある。
【0016】
添加量調整工程を実行することにより濁度計の出力が飽和、つまりダイナミックレンジの上限で安定するような場合には、原水に溶存カルシウムが残存する場合でも、それ以上の白濁度は測定することができなくなるが、濁度計の非飽和域、つまりダイナミックレンジの範囲内であればカルシウム不溶化薬剤の添加量に応じて濁度を適切に測定でき、添加量調整工程を実行することにより非飽和域で濁度計の出力が安定すれば、不溶化可能な溶存カルシウムの全てが不溶化された状態に到ったと判断できる。
【0017】
同第四の特徴構成は、上述の第一から第三の何れかの特徴構成に加えて、前記濁度測定工程で測定された濁度に基づいてサンプリングされた原水を希釈する希釈ステップをさらに備えている点にある。
【0018】
サンプリングされた原水の濁度が濁度計の適正測定範囲を超えると、正確なカルシウム不溶化薬剤の適量添加量を求めることが困難になる。そこで、濁度測定工程で測定された濁度に基づいて濁度計の適正測定範囲を超える場合には、希釈ステップが実行される。その結果、濁度計の適正測定範囲内で濁度が検出できるようになり、その際に求まるカルシウム不溶化薬剤の適量添加量と希釈度から原水に対するカルシウム不溶化薬剤の適量添加量が適切に求められるようになる。
【0019】
同第五の特徴構成は、上述の第一から第四の何れかの特徴構成に加えて、前記反応工程の前段に、サンプリングされた原水に対してpH調整剤の添加により所定のpH値に調整するpH調整ステップを備えている点にある。
【0020】
pH調整剤を添加して所定のpHに調整することにより、原水の溶存カルシウムとカルシウム不溶化薬剤との反応効率が良好な値に維持される。
【0021】
同第六の特徴構成は、上述の第一から第五の何れかの特徴構成に加えて、適量添加量算出工程は、前記濁度測定工程で測定された濁度に基づいて溶存カルシウム濃度を算出し、前記溶存カルシウム濃度に基づいてカルシウム不溶化薬剤の適量添加量を算出するように構成されている点にある。
【0022】
濁度と溶存カルシウム濃度の間に一定の相関関係があり、例えば予め求められた検量線に基づいて各濁度に対する溶存カルシウム濃度が求められる。その結果、多量の原水であっても、求められた溶存カルシウム濃度に応じて適量のカルシウム不溶化薬剤を添加することにより溶存カルシウムの分離処理が効率的に行なえるようになる。
【0023】
本発明による浸出水の溶存カルシウム分離方法の第一の特徴構成は、原水が最終処分場の浸出水であり、原水槽または調整槽に貯留された浸出水の一部をサンプル反応槽またはサンプル反応管に導くとともに浸出水の残部を反応槽に導き、前記サンプル反応槽またはサンプル反応管に導かれる浸出水に上述した第一から第六の何れかの特徴構成を備えた薬剤添加量測定方法を用いて算出された適量添加量のカルシウム不溶化薬剤を前記反応槽に添加する点にある。
【0024】
サンプル反応槽またはサンプル反応管に導かれた原水に第一から第六の何れかに記載の薬剤添加量測定方法を用いてカルシウム不溶化薬剤の適量添加量を算出し、算出された適量添加量のカルシウム不溶化薬剤を反応槽に添加することにより、効率的に溶存カルシウムを分離除去することができる。
【0025】
同第二の特徴構成は、原水が最終処分場の浸出水であり、原水槽または調整槽に貯留された浸出水を反応槽に導き、前記反応槽に導かれカルシウム不溶化薬剤が添加される前の浸出水からサンプリングされた原水に第一から第六の何れかの特徴構成を備えた薬剤添加量測定方法を用いて算出された適量添加量のカルシウム不溶化薬剤を前記反応槽に添加する
【0026】
反応槽または反応管に導かれた浸出水をサンプリングされた原水に見立てて、上述した第一から第七の何れかに記載の薬剤添加量測定方法を適用し、算出された適量添加量のカルシウム不溶化薬剤をその後に反応槽に導かれた浸出水に添加することにより、効率的に溶存カルシウムを分離除去することができる。
【0027】
本発明による薬剤添加量測定装置の第一の特徴構成は、原水の溶存カルシウムを不溶化するために必要となるカルシウム不溶化薬剤の適量添加量を求める薬剤添加量測定装置であって、撹拌機構が設けられ、サンプリングされた原水が導水されるサンプル反応槽またはサンプル反応管と、前記サンプル反応槽またはサンプル反応管に導水される原水にカルシウム不溶化薬剤を添加して溶存カルシウムを不溶化させる不溶化薬剤添加装置と、前記不溶化薬剤添加装置でカルシウム不溶化薬剤が添加された原水の白濁度合いを測定する濁度計と、前記濁度計で測定された濁度に基づいてカルシウム不溶化薬剤の適量添加量を算出する適量添加量算出装置と、を含む点にある。
【0028】
同第二の特徴構成は、前記濁度計の値に基づいて前記カルシウム不溶化薬剤添加装置によるカルシウム不溶化薬剤の添加量を調整し、前記濁度計の濁度が非飽和域で安定するとその値に基づいてカルシウム不溶化薬剤の適量添加量を算出する制御装置を備えている点にある。
【0029】
同第三の特徴構成は、上述の第二の特徴構成に加えて、前記サンプル反応槽またはサンプル反応管に導水される原水を希釈する希釈機構を備え、前記制御装置は、前記濁度計の値が予め定めた飽和域に達すると、前記希釈機構により前記サンプル反応槽またはサンプル反応管に導水される原水を希釈するように構成されている点にある。
【0030】
同第四の特徴構成は、上述の第一から第三の何れかの特徴構成に加えて、前記サンプル反応槽またはサンプル反応管に導水される原水にpH調整剤を添加するpH調整剤添加装置を備え、前記サンプル反応槽に導水された原水のpH値が目標範囲に維持されるように前記pH調整剤添加装置によるpH調整剤の添加量を調整する制御装置を備えている点にある。
【0031】
本発明による溶存カルシウム分離装置の第一の特徴構成は、原水槽または調整槽に貯留された最終処分場の浸出水を導く反応槽と、前記反応槽に導かれカルシウム不溶化薬剤が添加される前の浸出水からサンプリングされた原水から、当該原水の溶存カルシウムを不溶化するために必要となるカルシウム不溶化薬剤の適量添加量を算出する上述した第一から第四の何れかの特徴構成を備えた薬剤添加量測定装置と、を備え、前記薬剤添加量測定装置により算出された適量添加量のカルシウム不溶化薬剤を前記不溶化薬剤添加装置により前記反応槽に添加して溶存カルシウムを不溶化させるように構成されている点にある。
【0032】
本発明による溶存カルシウム分離装置の第二の特徴構成は、上述した第一から第四の何れかの特徴構成を備えた薬剤添加量測定装置と、原水槽または調整槽に貯留された最終処分場の浸出水の溶存カルシウムを分離する反応槽と、を備え、制御装置は、浸出水の一部をサンプル反応槽またはサンプル反応管に導くとともに浸出水の残部を反応槽に導き、算出した前記サンプル反応槽またはサンプル反応管の浸出水の溶存カルシウム濃度に基づいて得られる適量のカルシウム不溶化薬剤を前記反応槽に添加して浸出水の溶存カルシウムを分離する点にある。
【0033】
本発明によるカルシウム濃度測定方法の第一の特徴構成は、原水の溶存カルシウム濃度を測定するカルシウム濃度測定方法であって、サンプリングされた原水にカルシウム不溶化薬剤を添加して溶存カルシウムを不溶化させる反応工程と、前記反応工程を経た原水の白濁度合いを測定する濁度測定工程と、前記濁度測定工程で測定された濁度に基づいて溶存カルシウム濃度を算出する濃度算出工程と、を含む点にある。
【0034】
同第二の特徴構成は、上述の第一の特徴構成に加えて、前記濁度測定工程で測定された濁度に基づいて前記反応工程におけるカルシウム不溶化薬剤の添加量を調整する添加量調整工程と、前記添加量調整工程で添加量が調整された後に前記濁度測定工程で測定された濁度に基づいて溶存カルシウム濃度算出する濃度算出工程と、を備えている点にある。
【0035】
本発明によるカルシウム濃度測定装置の第一の特徴構成は、原水の溶存カルシウム濃度を測定するカルシウム濃度測定装置であって、サンプリングされた原水にカルシウム不溶化薬剤を添加して溶存カルシウムを不溶化させる不溶化薬剤添加装置と、前記不溶化薬剤添加装置によりカルシウム不溶化薬剤化添加された原水の白濁度合いを測定する濁度計と、前記濁度計で測定された濁度に基づいて溶存カルシウム濃度を算出する濃度算出装置と、を含む点にある。
【0036】
同第二の特徴構成は、上述の第一の特徴構成に加えて、前記濁度計で測定された濁度に基づいて前記不溶化薬剤添加装置によるカルシウム不溶化薬剤の添加量を調整する制御装置を備えている点にある。
【発明の効果】
【0037】
以上説明した通り、本発明によれば、浸出水の溶存カルシウムの濃度または濃度相当値を測定でき、適量の薬剤添加量で浸出水の溶存カルシウムの除去処理を適切に行なえる薬剤添加量測定方法、薬剤添加量測定装置、溶存カルシウム分離方法、浸出水の溶存カルシウム分離装置、カルシウム濃度測定方法及びカルシウム濃度測定装置を提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図2】本発明による溶存カルシウム分離装置の説明図
【
図3】別実施形態を示す溶存カルシウム分離装置の説明図
【
図4】別実施形態を示す溶存カルシウム分離装置の説明図
【
図5】別実施形態を示す薬剤添加量測定装置の説明図
【
図6】別実施形態を示す溶存カルシウム分離装置の説明図
【
図7】溶存カルシウム濃度と濁度の相関を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の薬剤添加量測定方法、薬剤添加量測定装置、溶存カルシウム分離方法、浸出水の溶存カルシウム分離装置、カルシウム濃度測定方法及びカルシウム濃度測定装置を説明する。
【0040】
図1には、原水の溶存カルシウムを不溶化するカルシウム不溶化薬剤の薬剤添加量測定装置の構成が示されている。
薬剤添加量測定装置は、サンプル反応槽と、pH調整剤添加装置と、カルシウム不溶化薬剤添加装置と、濁度計と、制御装置とを備えている。
【0041】
サンプル反応槽は、撹拌機構とpH計が設けられ、サンプリングされた原水が連続的に導水される。
【0042】
pH調整剤添加装置は、サンプル反応槽に導水された原水のpH値を10以上のアルカリ性に調整するための装置であり、pH調整用の薬液タンクと、当該薬液タンクからサンプル反応槽に薬液を供給する薬液供給路と、当該薬液供給路を介して供給される薬液量を調整するpH調整用の薬液供給ポンプを備えている。pH調整用の薬液として苛性ソーダが好適に用いられる。
【0043】
カルシウム不溶化薬剤添加装置は、原水の溶存カルシウムをカルシウム塩として沈殿分離するための装置であり、カルシウム沈澱用の薬液タンクと、当該薬液タンクからサンプル反応槽に薬液を供給する薬液供給路と、当該薬液供給路を介して供給される薬液量を調整する薬液供給ポンプを備えている。カルシウム沈澱用の薬剤として炭酸ソーダが好適に用いられる。溶存カルシウムのカルシウム塩への反応効率を良好にするために原水のpH値がアルカリ域に調整される。
【0044】
濁度計として、測定対象液に測定光を照射して表面で散乱される散乱光の光量から濁度を求める表面散乱形濁度計が好適に用いられる。サンプル反応槽からオーバーフローした被処理液が測定対象液として濁度計の測定部に連続的に導かれて濁度が測定される。測定対象液による測定部の汚れを洗浄するための洗浄水供給部が設けられ、適宜洗浄可能に構成されている。なお、測定対象液に測定光を照射して測定対象液を透過した透過光の光量から濁度を求める透過形濁度計などを用いることも可能である。
【0045】
制御装置は、CPUボード及びメモリカードを備えた小型のコンピュータで構成され、入出力回路を介してpH計、濁度計、各薬液供給ポンプが接続されている。なお、pH計及び濁度計の出力は変換器を介してコンピュータに適した信号に変換されている。
【0046】
制御装置は、サンプル反応槽に導水された原水のpH値が目標範囲に維持されるようにpH調整剤添加装置に備えた薬液供給ポンプを制御してpH調整剤の添加量を調整するとともに、濁度計の値に基づいてカルシウム不溶化薬剤添加装置に備えた薬液供給ポンプを制御してカルシウム不溶化薬剤の添加量を調整する。
【0047】
少なくとも、サンプル反応槽に導水された原水の溶存カルシウムが十分にカルシウム塩として沈殿するために必要な量のカルシウム不溶化薬剤が添加されるように、濁度計の値がダイナミックレンジの範囲内で安定するまでの量のカルシウム不溶化薬剤が添加される。
【0048】
例えば、濁度計の値の変化率が予め設定された閾値より小さくなるまで、カルシウム不溶化薬剤を段階的に或いは次第に増加することで、必要な量のカルシウム不溶化薬剤を添加することができる。例えば、想定される原水の溶存カルシウム濃度の最大値の半分程度の溶存カルシウム濃度に対する理論的な当量比に相当する量のカルシウム不溶化薬剤を初期値としてサンプリングされた原水に投入するとともに、その後の各段階で同量またはそれより小量のカルシウム不溶化薬剤を投入することができる。予め予想される原水の溶存カルシウム濃度の最大値に対応して不溶化可能な溶存カルシウムを全て不溶化する量のカルシウム不溶化薬剤を添加してもよい。
【0049】
また、カルシウム不溶化薬剤を段階的に或いは次第に増加して、濁度計の値の変化率が予め設定された上昇閾値より小さくなったときに溶存カルシウム濃度を算出し、その溶存カルシウム濃度のカルシウムを全量沈澱させるのに必要なカルシウム不溶化薬剤の理論的な当量比より多い量のカルシウム不溶化薬剤を添加するように調整することができる。理論的な当量比より多い量は特に制限されるものではないが、理論的な当量の1.5倍程度が好ましい。このようにして、原水の溶存カルシウム濃度が次第に高くなるような場合に適切なカルシウム不溶化薬剤の添加量に設定できるようになる。
【0050】
例えば、原水の溶存カルシウム濃度が400mg/Lから1000mg/Lに上昇する場合を説明する。カルシウム不溶化薬剤である炭酸ソーダの注入量は、溶存カルシウム濃度の1.5倍当量とする。
先ず、初回に原水の溶存カルシウム濃度が400mg/Lの1.5倍当量(600mg/L)の炭酸ソーダ注入量とすることで、原水の溶存カルシウム濃度が600mg/Lまで測定することができる。原水の溶存カルシウム濃度が400mg/Lであれば、炭酸ソーダ注入量は充分な値になる。
【0051】
原水の溶存カルシウム濃度が上昇して炭酸ソーダ注入量が不足すると、2回目に、同様の方法で原水の溶存カルシウム濃度が900mg/Lまで測定可能な量の炭酸ソーダ注入量とすることができる。原水の溶存カルシウム濃度が1000mg/Lに変動していると、これでも十分な量とならないため、3回目に、原水の溶存カルシウム濃度が1350mg/Lに相当する量の炭酸ソーダ注入量に調整する。その結果、原水の溶存カルシウムの全量と炭酸ソーダとを反応させることができるようになり、正確に溶存カルシウム濃度1000mg/Lを測定することができる。
【0052】
原水の溶存カルシウム濃度が次第に低くなるような場合でも同様の調整で対応できる。なお、この場合には、濁度計の値の変化率が負の値になるので、その場合にはカルシウム不溶化薬剤を段階的に或いは次第に減少させて、濁度計の値の変化率が予め設定された下降閾値より大きくなったときに溶存カルシウム濃度を算出し、その溶存カルシウム濃度のカルシウムを全量沈澱させるのに必要なカルシウム不溶化薬剤の理論的な当量比より多い量のカルシウム不溶化薬剤を添加するように調整することができる。
【0053】
例えば、原水の溶存カルシウム濃度が1000mg/Lから500mg/Lに低下する場合を説明する。カルシウム不溶化薬剤である炭酸ソーダの注入量は、溶存カルシウム濃度の1.5倍当量とする。
先ず、初回に原水の溶存カルシウム濃度1000mg/Lの1.5倍当量(溶存カルシウム濃度1500mg/Lに相当する値)の炭酸ソーダを添加する。その結果、原水の溶存カルシウムの全量が不溶化され、その値に見合った濁度が測定される。
【0054】
測定された濁度から原水の溶存カルシウム濃度が把握できるので、その後は把握された溶存カルシウム濃度の1.5倍当量の炭酸ソーダを添加すれば、炭酸ソーダの不要な過剰投入を回避できる。
【0055】
つまり、炭酸ソーダを添加して溶存カルシウムを不溶化させ、濁度計で濁度を測定する、という一連の処理を濁度計の測定値が安定するまで繰返し、その結果安定した測定値を採用することで、実質的に連続的に測定できるようになる。毎回1.5倍当量の炭酸ソーダを添加すれば濁度計の測定値が安定するまでの操作回数が少なくて済む。なお、1.5倍当量の炭酸ソーダの添加に替えて炭酸ソーダの添加の度に測定された濁度に応じて求まる理論当量(理論上、溶存カルシウムの全量を不溶化させることができる量)の炭酸ソーダを添加してもよい。
【0056】
つまり、各回の濁度の測定値に応じて把握される原水の溶存カルシウムを不溶化するのに必要な理論当量以上の量の濃度炭酸ソーダを添加することにより、適切な炭酸ソーダの添加量に調整できるようになる。上述の例では、各回の濁度の測定値に応じて炭酸ソーダの添加量が溶存カルシウム濃度に対して当量の1,5倍程度になるように調整することにより、自動的に適切な炭酸ソーダの添加量に調整できるようになる。
このようにして、濁度計の値が安定すると、制御装置はそのときの濁度に基づいて予め求めた検量線に従って原水の溶存カルシウム濃度を算出する。
【0057】
原水の溶存カルシウム濃度が非常に高くなり、濁度計の出力が濁度を適正に検出できる範囲を超えるような場合には、適切に溶存カルシウム濃度を算出することが困難となる。そのような場合に、サンプル反応槽に導水された原水に上水を加えて希釈する注水機構である希釈機構を備えている。
【0058】
そして、制御装置は、濁度計の値が予め定めた飽和域に達すると、希釈機構によりサンプル反応槽に導水される原水を希釈するように構成されている。希釈率は特に制限されるものではなく、濁度計の値が非飽和域の範囲(例えば、最大値がダイナミックレンジの85%を超えない範囲)になる適正な範囲で出力が安定するように設定すればよい。例えば、濁度計のダイナミックレンジの最大値の85%を超えるか否かで希釈の要否を決定することができる。濁度計の値がダイナミックレンジの最大値の85%を超えると希釈機構を作動させ、希釈時に濁度計の出力がダイナミックレンジの最大値の15%を下回ると希釈機構の作動を停止することができる。
【0059】
上述した薬剤添加量測定装置を用いて薬剤添加量測定方法が実行される。つまり、サンプリングされた原水をサンプル反応槽に導き、pH調整剤の添加により所定のpH値に調整するpH調整ステップと、pH調整された被処理水に所定量のカルシウム不溶化薬剤を添加して溶存カルシウムを沈殿させる反応工程と、反応工程を経た被処理水を濁度計に導き、被処理水の白濁度合いを測定する濁度測定工程と、濁度測定工程で測定された濁度に基づいて反応工程におけるカルシウム不溶化薬剤の添加量を調整する添加量調整工程と、添加量調整工程で添加量が調整された後に濁度測定工程で測定された濁度に基づいてカルシウム不溶化薬剤の適量添加量を算出する適量添加量算出工程と、を含む。
【0060】
濁度とカルシウム不溶化薬剤の適量添加量の間に一定の相関関係があり、例えば予め求められた検量線に基づいて各濁度に対するカルシウム不溶化薬剤の適量添加量が求められる。その結果、多量の原水であっても、求められたカルシウム不溶化薬剤の適量添加量に応じて適量のカルシウム不溶化薬剤を添加することにより溶存カルシウムの分離処理が効率的に行なえるようになる。
【0061】
適量添加量算出工程は、濁度測定工程で測定された濁度に基づいて溶存カルシウム濃度を算出し、溶存カルシウム濃度に基づいてカルシウム不溶化薬剤の適量添加量を算出するように構成されていてもよい。
【0062】
濁度と溶存カルシウム濃度の間に正の相関関係があり、例えば予め求められた検量線に基づいて各濁度に対する溶存カルシウム濃度が求められる。その結果、多量の原水であっても、求められた溶存カルシウム濃度に応じて適量のカルシウム不溶化薬剤を添加することにより溶存カルシウムの分離処理が効率的に行なえるようになる。
【0063】
また、濁度測定工程で測定された濁度に基づいてpH調整ステップに供される原水を希釈する希釈ステップをさらに備えている。そして、添加量調整工程で調整されるカルシウム不溶化薬剤の添加量は、溶存カルシウム濃度の理論当量より多い値に設定される。
【0064】
反応工程で被処理水に添加されるカルシウム不溶化薬剤の添加量は、溶存カルシウムの全てがカルシウム塩として析出するように、理論的な必要量以上の適切な量に調整される必要がある。理論的な必要量に満たないカルシウム不溶化薬剤の添加量であれば、測定された濁度に基づいて正確な溶存カルシウム濃度を求めることができないからである。なお、サンプル反応槽に導かれた僅かな量の原水であるため、カルシウム不溶化薬剤を過剰に添加してもコスト的に問題となることはない。
【0065】
上述したpH調整ステップは選択的ステップであり、必ず実行すべきものではない。例えば原水のpH値が例えば10以上であれば不要となる。
【0066】
図2から
図4には、浸出水の溶存カルシウム分離装置が示されている。
浸出水の溶存カルシウム分離装置は、上述した薬剤添加量測定装置と、原水槽または調整槽に貯留された最終処分場の浸出水の溶存カルシウムを分離する反応槽と、pH調整剤添加装置から反応槽にpH調整剤を添加するpH調整剤供給路と、カルシウム不溶化薬剤添加装置から反応槽にカルシウム不溶化薬剤を添加するカルシウム不溶化薬剤供給経路と、を備え、制御装置は、浸出水の一部をサンプル反応槽に導くとともに浸出水の残部を反応槽に導き、反応槽に導水された浸出水のpH値が目標範囲に維持されるようにpH調整剤供給路を介してpH調整剤を添加するとともに、算出したサンプル反応槽の浸出水の溶存カルシウム濃度に基づいて得られる適量のカルシウム不溶化薬剤をカルシウム不溶化薬剤供給経路を介して反応槽に添加して浸出水の溶存カルシウムを沈殿分離するように構成されている。
【0067】
なお、pH調整剤添加装置から反応槽にpH調整剤を添加するpH調整剤供給路とは、専用の配管などを用いて構成した経路を意味するのではなく、pH調整剤添加装置から反応槽にpH調整剤を直接滴下するような態様も含む概念である。また、カルシウム不溶化薬剤添加装置から反応槽にカルシウム不溶化薬剤を添加するカルシウム不溶化薬剤供給経路も、専用の配管などを用いて構成した経路を意味するのではなく、カルシウム不溶化薬剤添加装置から反応槽にカルシウム不溶化薬剤を直接滴下するような態様も含む概念である。つまり、薬剤が滴下される空間がpH調整剤供給路となり、カルシウム不溶化薬剤供給経路となる。
【0068】
図2は、原水である浸出水が直接反応槽に送水されるとともに原水の一部がサンプル反応槽に送水される構成であり、濁度計を通過した被処理水は反応槽に導かれる。
【0069】
図3は、原水である浸出水が原水槽または調整槽に貯留され、原水槽または調整槽からポンプにより分配槽に送水され、分配槽から余剰量が原水槽または調整槽に返送されることにより、安定的に一定量の浸出水が処理可能とされた装置であり、分配槽から浸出水の一部がサンプル反応槽にポンプアップされ、残量が一定流量で反応槽に流下するように構成されている。
【0070】
図4は、原水である浸出水が原水槽または調整槽に貯留され、当該原水槽または調整槽からサンプル反応槽に直接ポンプアップされる点が
図3と異なる。原水槽または調整槽には、最終処分場で生じる様々な排水を処理した排水が流入するため水質が変動する虞がある。そのため、
図3のように水質が安定している分配槽からサンプル反応槽にポンプアップされることが好ましい。
【0071】
また、本発明による浸出水の溶存カルシウム分離方法は、上述した浸出水の溶存カルシウム分離装置により実行され、原水が最終処分場の浸出水であり、原水槽または調整槽に貯留された浸出水の一部をサンプル反応槽に導くとともに浸出水の残部を反応槽に導き、上述した薬剤添加量測定方法を用いて測定されたサンプル反応槽の浸出水の溶存カルシウム濃度に基づいて得られる適量のカルシウム不溶化薬剤を反応槽に添加するように構成されている。
【0072】
原水槽または調整槽に貯留された浸出水の一部をサンプル反応槽に導いて浸出水の溶存カルシウム濃度を連続的に検出し、溶存カルシウム濃度に基づいて求まる適量のカルシウム不溶化薬剤を、同時に反応槽に導いた浸出水の残部に添加することにより、カルシウム不溶化薬剤を過剰投入することなく溶存カルシウムを分離除去することができる。
【0073】
図5は、
図1に示すサンプル反応槽に代えて、サンプル反応管に原水を導水するとともに炭酸ソーダ及びpH調整剤を添加して、反応管の内部で原水と炭酸ソーダ及びpH調整剤を撹拌混合するように構成された例である。制御装置は、反応管から導出された原水のpH値及び濁度を検出し、pH調整剤の添加量をフィードバック制御するように構成されている。サンプル反応管として例えばラインミキサーが好適に用いられる。
【0074】
ラインミキサーはスタティックミキサー或いは静的混合器とも称され、流体の流れに応じて撹拌する撹拌羽根機構が内部に収容され、駆動部を持たない管型の混合器である。
【0075】
図6は、サンプル反応槽及びサンプル反応管を用いずに、反応槽に原水を導水するとともに炭酸ソーダ及びpH調整剤を添加して、反応槽の内部で原水と炭酸ソーダ及びpH調整剤を撹拌混合するように構成された例である。制御装置は、反応槽内の原水のpH値及び濁度を検出し、炭酸ソーダ及びpH調整剤の添加量をフィードバック制御するように構成されている。
図5と同様、制御装置によって添加量が適正に調整された後にはフィードバック制御が機能して炭酸ソーダの添加量及びpH調整剤が適量に維持される。
【0076】
図6の例では、サンプリングされた原水に溶存カルシウムを不溶化する理論当量より多いカルシウム不溶化薬剤を添加して溶存カルシウムを不溶化させる反応工程と、反応工程を経た原水の白濁度合いを測定する濁度測定工程と、濁度測定工程で測定された濁度に基づいてカルシウム不溶化薬剤の適量添加量を算出する適量添加量算出工程と、を含む薬剤添加量測定方法が所期に実施される。なお、サンプリングされた原水とは処理対象として導水された原水全量を指す。
【0077】
図7には、カルシウム溶液に炭酸ソーダを注入して不溶化可能な溶存カルシウム全量を不溶化させ、その濁度を測定することにより得られた溶存カルシウム濃度と濁度の相関性が示されている。
精製水に塩化カルシウム試薬を添加して所定の濃度に調整した500mLの試料に対して、炭酸ソーダの注入率を試料の溶存カルシウム濃度に対して1.2倍当量とした。炭酸ソーダ注入後、pH11に調整した。試料の溶存カルシウム濃度50,100,250,500,750,1000,2000,3000,4000[mg/L]に対して、炭酸ソーダを注入して白濁させた後の試料の濁度を測定したところ、それぞれ6.7,13.3,25.8,35.1,61.1,89.1,206.3,433.3,698.7[mg/L]となり、
図7に示すような相関が示されることが判明した。なお、濁度計は、日立ハイテクサイエンス社製のダブルビーム吸光度計 型式U2800:透過光測定方式を用いた。
【0078】
即ち、本発明の薬剤添加量測定方法は、サンプリングされた原水にカルシウム不溶化薬剤を添加して溶存カルシウムを不溶化させる反応工程と、反応工程を経た原水の白濁度合いを測定する濁度測定工程と、濁度測定工程で測定された濁度に基づいてカルシウム不溶化薬剤の適量添加量を算出する適量添加量算出工程とを備えている。
【0079】
さらに、濁度測定工程で測定された濁度に基づいて反応工程におけるカルシウム不溶化薬剤の添加量を調整する添加量調整工程と、添加量調整工程で添加量が調整された後に濁度測定工程で測定された濁度に基づいてカルシウム不溶化薬剤の適量添加量を算出する適量添加量算出工程とを備えている。
【0080】
添加量調整工程は、濁度測定工程で測定された濁度が濁度計の非飽和域で安定するまで調整され、濁度計のダイナミックレンジの最大値の85%を超える場合にはサンプリングされた原水を希釈する希釈ステップをさらに備えている。反応工程の前段に、サンプリングされた原水に対してpH調整剤の添加により所定のpH値に調整するpH調整ステップを備えていることが好ましい。
【0081】
適量添加量算出工程は、濁度測定工程で測定された濁度に基づいて溶存カルシウム濃度を算出し、溶存カルシウム濃度に基づいてカルシウム不溶化薬剤の適量添加量を算出するように構成されている。
【0082】
原水が最終処分場の浸出水であり、原水槽または調整槽に貯留された浸出水を反応槽に導き、反応槽に導かれた浸出水をサンプリングされた原水として上述の薬剤添加量測定方法を用いて算出された適量添加量のカルシウム不溶化薬剤を反応槽に添加することにより浸出水の溶存カルシウムが効率的に分離される。
【0083】
本発明の薬剤添加量測定装置は、撹拌機構が設けられ、サンプリングされた原水が導水されるサンプル反応槽またはサンプル反応管と、サンプル反応槽またはサンプル反応管に導水される原水にカルシウム不溶化薬剤を添加して溶存カルシウムを不溶化させる不溶化薬剤添加装置と、不溶化薬剤添加装置でカルシウム不溶化薬剤が添加された原水の白濁度合いを測定する濁度計と、濁度計で測定された濁度に基づいてカルシウム不溶化薬剤の適量添加量を算出する適量添加量算出装置と、を備えている。
【0084】
また、前記濁度計の値に基づいてカルシウム不溶化薬剤添加装置によるカルシウム不溶化薬剤の添加量を調整し、濁度計の濁度が非飽和域で安定するとその値に基づいてカルシウム不溶化薬剤の適量添加量を算出する制御装置を備えている。
【0085】
さらに、サンプル反応槽またはサンプル反応管に導水される原水を希釈する希釈機構を備え、制御装置は、濁度計の値が予め定めた飽和域に達すると、希釈機構によりサンプル反応槽またはサンプル反応管に導水される原水を希釈するように構成されていることが好ましい。
【0086】
サンプル反応槽またはサンプル反応管に導水される原水にpH調整剤を添加するpH調整剤添加装置を備え、サンプル反応槽に導水された原水のpH値が目標範囲に維持されるようにpH調整剤添加装置によるpH調整剤の添加量を調整する制御装置を備えていることが好ましい。
【0087】
本発明の浸出水の溶存カルシウム分離装置は、原水槽または調整槽に貯留された最終処分場の浸出水を導く反応槽と、反応槽に導かれた浸出水をサンプリングされた原水として、当該原水の溶存カルシウムを不溶化するために必要となるカルシウム不溶化薬剤の適量添加量を算出する上述した薬剤添加量測定装置と、を備え、薬剤添加量測定装置により算出された適量添加量のカルシウム不溶化薬剤を不溶化薬剤添加装置により反応槽に添加して溶存カルシウムを不溶化させるように構成されている。
【0088】
本発明の他の浸出水の溶存カルシウム分離装置は、上述した薬剤添加量測定装置と、原水槽または調整槽に貯留された最終処分場の浸出水の溶存カルシウムを分離する反応槽と、カルシウム不溶化薬剤添加装置から反応槽にカルシウム不溶化薬剤を添加するカルシウム不溶化薬剤供給経路と、を備え、制御装置は、浸出水の一部をサンプル反応槽またはサンプル反応管に導くとともに浸出水の残部を反応槽に導き、算出したサンプル反応槽またはサンプル反応管の浸出水の溶存カルシウム濃度に基づいて得られる適量のカルシウム不溶化薬剤をカルシウム不溶化薬剤供給経路を介して反応槽に添加して浸出水の溶存カルシウムを分離するように構成されている。
【0089】
本発明のカルシウム濃度測定方法は、サンプリングされた原水にカルシウム不溶化薬剤を添加して溶存カルシウムを不溶化させる反応工程と、反応工程を経た原水の白濁度合いを測定する濁度測定工程と、濁度測定工程で測定された濁度に基づいて溶存カルシウム濃度を算出する濃度算出工程とを備えている。予め濁度と溶存カルシウム濃度の相関に基づいて作成された検量線に基づいて溶存カルシウム濃度が求まる。
【0090】
測定精度を確保するため、濁度測定工程で測定された濁度に基づいて反応工程におけるカルシウム不溶化薬剤の添加量を調整する添加量調整工程と、添加量調整工程で添加量が調整された後に濁度測定工程で測定された濁度に基づいて溶存カルシウム濃度算出する濃度算出工程と、を備えていることが好ましい。
【0091】
本発明のカルシウム濃度測定装置は、サンプリングされた原水にカルシウム不溶化薬剤を添加して溶存カルシウムを不溶化させる不溶化薬剤添加装置と、不溶化薬剤添加装置によりカルシウム不溶化薬剤化添加された原水の白濁度合いを測定する濁度計と、濁度計で測定された濁度に基づいて溶存カルシウム濃度を算出する濃度算出装置と、を備えている。また、濁度計で測定された濁度に基づいて不溶化薬剤添加装置によるカルシウム不溶化薬剤の添加量を調整する制御装置を備えていることが好ましい。
【0092】
図8には、最終処分場の浸出水の処理手順が示されている。
原水である浸出水が調整槽に貯留され、調整槽から一定量の浸出水がライムソーダ法を採用する第1凝集沈殿処理工程で凝集処理される。第1凝集沈殿処理工程で上述した溶存カルシウム分離装置が用いられる。溶存カルシウムが分離除去された浸出水は生物処理工程で脱窒処理や脱リン処理が行なわれた後に、第2凝集沈殿処理工程でCODが除去される。さらに砂ろ過処理工程で固形異物が除去され、活性炭吸着処理工程で色素成分が除去され、キレート吸着処理工程で重金属類が除去された後に、消毒処理工程で消毒された後に最終処分場の処理水として再利用され、或いは河川に放流される。
【0093】
上述した実施形態は本発明の一態様の説明に過ぎず、該記載により本発明の技術的範囲が限定されるものではなく、各プロセスに用いられる装置の構造や添加される試薬の種類や量は本発明の作用効果が奏される範囲で適宜変更設計可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0094】
1:薬剤添加量測定装置