(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-10
(45)【発行日】2022-08-19
(54)【発明の名称】有機誘電体層及び有機電子デバイス
(51)【国際特許分類】
H01L 29/786 20060101AFI20220812BHJP
H01L 51/05 20060101ALI20220812BHJP
H01L 51/30 20060101ALI20220812BHJP
H01L 21/312 20060101ALI20220812BHJP
【FI】
H01L29/78 618B
H01L29/78 617T
H01L29/28 100A
H01L29/28 280
H01L21/312 A
(21)【出願番号】P 2018560611
(86)(22)【出願日】2017-05-15
(86)【国際出願番号】 EP2017061562
(87)【国際公開番号】W WO2017198587
(87)【国際公開日】2017-11-23
【審査請求日】2020-05-11
(32)【優先日】2016-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】308014846
【氏名又は名称】メルク パテント ゲーエムベーハー
(73)【特許権者】
【識別番号】303043461
【氏名又は名称】プロメラス, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】アフォニナ、イリーナ
(72)【発明者】
【氏名】バックランド、トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ローズ、ラリー エフ.
(72)【発明者】
【氏名】バーグーン、ヒュー エイ.
【審査官】高柳 匡克
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-509660(JP,A)
【文献】特開2005-314597(JP,A)
【文献】特開2010-065206(JP,A)
【文献】特表2016-503580(JP,A)
【文献】特表2015-528642(JP,A)
【文献】特表2013-543650(JP,A)
【文献】特表2015-536041(JP,A)
【文献】特表2017-510073(JP,A)
【文献】国際公開第2006/129718(WO,A1)
【文献】特表2013-541191(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/786
H01L 51/05
H01L 51/30
H01L 21/312
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層を有する有機電子(OE)デバイスにおいて、前記誘電体層が、230~290nmの範囲内の吸収極大を有する1つ以上のペンダント基を有したポリシクロオレフィン系ポリマーを含んでなり、前記ポリシクロオレフィン系ポリマーは、次の化学式
【化1】
からなる群から選択される1つ以上の別個の種類の第1の繰り返し単位を有したノルボルネン型のポリマーである、有機電子デバイス。
【請求項2】
前記ポリシクロオレフィン系ポリマーの繰り返し単位は
【化2】
である、請求項1に記載の有機電子デバイス。
【請求項3】
前記ポリシクロオレフィン系ポリマーの繰り返し単位は
【化3】
である、請求項1に記載の有機電子デバイス。
【請求項4】
前記ポリシクロオレフィン系ポリマーの繰り返し単位は
【化4】
である、請求項1に記載の有機電子デバイス。
【請求項5】
前記ポリシクロオレフィン系ポリマーの繰り返し単位は
【化5】
である、請求項1に記載の有機電子デバイス。
【請求項6】
前記ポリシクロオレフィン系ポリマーがさらに、式I
【化6】
(式中、R
1~4の1つ以上は、Hとは異なり、1~20個のC原子を有するアルキル又はフッ素化アルキル基を意味する)の1つ以上の第2の別個の種類の繰り返し単位を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の有機電子デバイス。
【請求項7】
前記第1及び第2の種類の繰り返し単位の比が95:5~5:95である、請求項6に記載の有機電子デバイス。
【請求項8】
有機電子デバイス中の誘電体層において、請求項1~
7のいずれか一項において定義されるポリシクロオレフィン系ポリマーを含んでなる、誘電体層。
【請求項9】
前記有機電子デバイスは、有機薄膜トランジスタ(OTFT)、有機発光ダイオード(OLED)、又は有機光起電力(OPV)デバイス、又は有機光検出器(OPD)である、請求項1~
7のいずれか一項に記載の有機電子デバイス。
【請求項10】
前記有機電子デバイスは、トップゲート有機薄膜トランジスタ又はボトムゲート有機薄膜トランジスタである、請求項9に記載の有機電子デバイス。
【請求項11】
前記有機電子デバイスは、基板(1)と、ソース及びドレイン電極(2a、2b)と、有機半導体(OSC)層(3)と、請求項1~7のいずれか一項において定義されるポリシクロオレフィン系ポリマーを含みゲート絶縁体として機能する誘電体層(4)と、ゲート電極(5)と
を含むトップゲート有機薄膜トランジスタである、請求項10に記載の有機電子デバイス。
【請求項12】
請求項11に記載のトップゲート有機薄膜トランジスタを製造する方法において、
A)基板(1)の上にソース及びドレイン電極(2a、2b)を形成するステップと、
B)前記ソース及びドレイン電極(2a、2b)の上に有機半導体材料を堆積することによって有機半導体層(3)を形成するステップと、
C)前記有機半導体層(3)の上に請求項1~
7のいずれか一項において定義されるポリシクロオレフィン系ポリマーを堆積することによって誘電体層(4)を形成するステップと、
D)前記誘電体層(4)の上にゲート電極(5)を形成するステップとを備える、方法。
【請求項13】
前記有機電子デバイスは、基板(1)と、ゲート電極(5)と、請求項1~7のいずれか一項において定義されるポリシクロオレフィン系ポリマーを含んでなりゲート絶縁体として機能する誘電体層(4)と、ソース及びドレイン電極(2a、2b)と、有機半導体層(3)
とを含むボトムゲート有機薄膜トランジスタである、請求項10に記載の有機電子デバイス。
【請求項14】
前記ボトムゲート有機薄膜トランジスタがパッシベーション層(6)をさらに含む、請求項13に記載の有機電子デバイス。
【請求項15】
請求項13
または14に記載のボトムゲート有機薄膜トランジスタを製造する方法において、
A)基板(1)の上にゲート電極(5)を形成するステップと、
B)前記基板(1)及び前記ゲート電極(5)の上に請求項1~
7のいずれか一項において定義されるポリシクロオレフィン系ポリマーを堆積することによって誘電体層(4)を形成するステップと、
C)前記誘電体層(4)の上にソース及びドレイン電極(2a、2b)を形成するステップと、
D)前記ソース及びドレイン電極(2a、2b)ならびに前記誘電体層(4)の上に有機半導体材料を堆積することによって有機半導体層(3)を形成するステップ
とを備える、方法。
【請求項16】
E)前記有機半導体層(3)の上にパッシベーション層(6)を形成するステップをさらに備える、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記有機半導体層(3)の前記有機半導体材料及び前記誘電体層(4)の前記ポリシクロオレフィン系ポリマーが有機溶液から堆積される、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記有機半導体層(3)の前記有機半導体材料と、前記誘電体層(4)の前記ポリシクロオレフィン系ポリマーとが有機溶液から
堆積される、請求項
15または16に記載の方法。
【請求項19】
前記有機電子デバイスが、集積回路(IC)、無線周波数識別(RFID)タグ、RFIDタグを含んでなるセキュリティマーキングもしくはセキュリティデバイス、フラットパネルディスプレイ(FPD)、フラットパネルディスプレイのバックプレーン、フラットパネルディスプレイのバックライト、電子写真デバイス、電子写真記録デバイス、有機記憶デバイス、圧力センサー、光学センサー、化学センサー、バイオセンサー、又はバイオチップである、請求項1~
7、9~11、13、または14のいずれか一項に記載の有機電子デバイスを備える、製品。
【請求項20】
前記有機電子デバイスが、集積回路(IC)、無線周波数識別(RFID)タグ、RFIDタグを含んでなるセキュリティマーキングもしくはセキュリティデバイス、フラットパネルディスプレイ(FPD)、フラットパネルディスプレイのバックプレーン、フラットパネルディスプレイのバックライト、電子写真デバイス、電子写真記録デバイス、有機記憶デバイス、圧力センサー、光学センサー、化学センサー、バイオセンサー、又はバイオチップである、請求項1~
7、9~11、13、または14のいずれか一項に記載の有機電子デバイスを備える、アセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、230~290nmの波長範囲において吸収極大を有するペンダント発色団を含むポリシクロオレフィン系ポリマーを含む有機誘電体層と、それを有した有機電子デバイスとに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機電子(OE)デバイス、たとえば表示装置又は論理可能回路(logic capable circuit )のバックプレーンに使用するための有機薄膜トランジスタ(OTFT)、有機光起電力(OPV)デバイス、有機光検出器(OPD)、又は有機発光ダイオード(OLED)への関心が高まっている。
【0003】
従来のOTFTは、ゲート電極と、誘電体材料(「誘電体」又は「ゲート誘電体」とも呼ばれる)でできたゲート絶縁体層と、ソース及びドレイン電極と、有機半導体(OSC)材料でできた半導体層と、典型的には、環境の影響に対して、又は後のデバイス製造ステップによる損傷に対する保護の上記の層の上のパッシベーション層とを有する。
【0004】
OTFTの製造におけるいくつかのパターニング方法では、材料のパターニングのため、たとえば誘電体層を貫通するビアホールを形成するためにレーザーアブレーションが使用される。
【0005】
しかし、レーザー波長における誘電体材料の光吸収係数が適切に調整されないと、ビアホールのようなパターニングされた特徴を良好な品質で得ることが困難となる場合が多い。
【0006】
したがって、改善されたレーザーアブレーション性を示す、OEデバイスの誘電体層中に使用するための誘電体材料が提供されることが望ましく、有利となる。同時に誘電体材料は、好適にはさらに有利な特徴を示すべきである。したがって、誘電体材料は、好適には、低誘電率、通常使用されるOSC材料の種類に対する良好な直交性、有機溶媒、特に非ハロゲン化溶媒に対する良好な溶解性、特に溶液堆積方法の場合の良好な加工性、及び大規模での製造にも適した費用対効果が高く容易な合成方法による良好な利用可能性の1つ以上を有するべきである。好適には、誘電体材料は、光パターニング、及びたとえばS/D電極とのビア相互接続の形成によるスタック集積が可能となるために、架橋可能となるべきでもある。
【0007】
OTFT中で使用する場合、誘電体材料は、良好なトランジスタ性能が可能となるべきでもあり、OSC材料とともに、高い移動度、高いオン電流、及び低いオフ電流が得られるべきでもある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、レーザーアブレーションに典型的に使用される波長において、特にUV範囲内で高い吸収を示すペンダント基、たとえばビフェニルのような芳香族基を有する、ポリシクロオレフィン系ポリマーをOEデバイスの誘電体層中に使用することによって上記要求を満たすことを可能にする。さらに、このポリシクロオレフィン系ポリマーは、化学的に不活性であり、固有の低kを有し、たとえば、溶解性及び/又は架橋官能性を付与するペンダント基を付加させることによってさらに変性させることができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、誘電体層を含むOEデバイスであって、上記誘電体層が、230~290nmの波長範囲内、好適には250~280nmの範囲内、非常に好適には260~270nmの範囲内の吸収極大を有する1つ以上のペンダント基(以下、「ペンダント発色団」と記載する)を含むポリシクロオレフィン系ポリマーを含む、又はその使用によって得られる、OEデバイスに関する。
【0010】
本発明は、さらに、1つ以上のペンダント発色団を含むポリシクロオレフィン系ポリマーに関する。
本発明は、さらに、OEデバイス中の誘電体層であって、1つ以上のペンダント発色団を含むポリシクロオレフィン系ポリマーを含む、又はその使用によって得られる誘電体層に関する。
【0011】
本発明による別の実施形態は、1つ以上のペンダント発色団を含むポリシクロオレフィン系ポリマーを使用することによって、OEデバイス中の誘電体層を形成する方法を含む。
【0012】
上記OEデバイスは、たとえば、有機薄膜トランジスタ(OTFT)、有機発光ダイオード(OLED)、有機光検出器(OPD)、又は有機光起電力(OPV)デバイスである。OTFTに関して、このようなデバイスはトップゲートOTFT及びボトムゲートOTFTの両方を含む。
【0013】
本発明の実施形態は、前述及び後述のOEデバイスを含む製品又はアセンブリをも含む。このような製品又はアセンブリは、集積回路(IC)、無線周波数識別(RFID)タグ、RFIDタグを含むセキュリティマーキングもしくはセキュリティデバイス、フラットパネルディスプレイ(FPD)、FPDのバックプレーン、FPDのバックライト、電子写真デバイス、電子写真記録デバイス、有機記憶デバイス、圧力センサー、光学センサー、化学センサー、バイオセンサー、又はバイオチップである。
【0014】
以下の図面を参照しながら、本発明の実施形態を以下に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明によるトップゲートOTFTデバイスの実施形態を示す概略図。
【
図2】本発明によるボトムゲートOTFTデバイスの実施形態を示す概略図。
【
図3】実施例B1、B2、B3、及びB4のポリマー、ならびに比較例BC1、BC2、BC3、及びBC4のポリマーブレンド及びポリマーの吸収プロファイルを示すグラフ。
【
図4】比較例BC1のポリマーと比較した実施例B1、B2、B3及びB4のポリマーの吸収プロファイルを示すグラフ。
【
図5】比較例BC1のポリマー及び比較例BC2のポリマーブレンドと比較した本発明によるポリマーB3及びB4の吸収プロファイルを示すグラフ。
【
図6】比較例BC1のポリマーブレンドを含むゲート誘電体層を有するTG OTFTデバイスのデバイス性能を示すグラフ。
【
図7】比較例BC2のポリマーを含むゲート誘電体層を有するTG OTFTデバイスのデバイス性能を示すグラフ。
【
図8】比較例BC3のポリマーを含むゲート誘電体層を有するTG OTFTデバイスのデバイス性能を示すグラフ。
【
図9】比較例BC4のポリマーを含むゲート誘電体層を有するTG OTFTデバイスのデバイス性能を示すグラフ。
【
図10】実施例B1のポリマーを含むゲート誘電体層を有するTG OTFTデバイスのデバイス性能を示すグラフ。
【
図11】実施例B2のポリマーを含むゲート誘電体層を有するTG OTFTデバイスのデバイス性能を示すグラフ。
【
図12】実施例B3のポリマーを含むゲート誘電体層を有するTG OTFTデバイスのデバイス性能を示すグラフ。
【
図13】実施例B4のポリマーを含むゲート誘電体層を有するTG OTFTデバイスのデバイス性能を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書において使用される場合、「発色団」という用語は、230~290nmの範囲内、好適には250~280nmの範囲内、非常に好適には260~270nmの範囲内に吸収極大を有する基を意味する。本明細書において使用される場合、「発色団」及び「クロモフォア」は、同義で使用され、230~290nmの範囲内、好適には250~280nmの範囲内、非常に好適には260~270nmの範囲内に吸収極大を有する化合物を意味する。「吸収極大」という用語は、基又は化合物の吸収スペクトルのピークを意味し、上記ピークは、唯一のピーク、又はいくつかのピークの中の1つであってよく、好適には、その基又は化合物の吸収スペクトルにおいて最高吸収値を有するピークである。
【0017】
本明細書において使用される場合、「誘電性」及び「絶縁性」という用語は同義で使用される。したがって、絶縁性材料又は層への言及には、誘電体材料又は層が含まれる。さらに、本明細書において使用される場合、「有機電子デバイス」という用語は、「有機半導体デバイス」という用語を含むものと理解され、OTFTなどのこのようなデバイスのいくつかの特定の実現については前述のように定義される。
【0018】
本明細書において使用される場合、「直交する」及び「直交性」という用語は、化学的直交性を意味するものと理解される。たとえば、直交する溶媒は、先に堆積した層の上に、溶媒中に溶解させた材料の層の堆積に使用する場合に、上記の先に堆積した層を溶解させない溶媒を意味する。
【0019】
本明細書において使用される場合、「ポリマー」という用語は、1つ以上の別個の種類の繰り返し単位(分子の最小構成単位)の主鎖を含む分子を意味するものと理解され、一般に知られている「オリゴマー」、「コポリマー」、「ホモポリマー」などの用語を含んでいる。さらに、ポリマーという用語は、ポリマー自体に加えて、開始剤、触媒、及びそのようなポリマーの合成に付随する別の要素から得られる少量の残留物を含むものと理解され、このような残留物はそれらに共有結合していないと理解される。さらに、このような残留物、及び別の要素は、重合後の精製プロセス中に一般に除去されるが、微量のこのような材料は、ポリマーと混合又は混じり合って検出されることがあり、そのためこれらは一般に、容器間、又は溶媒もしくは分散媒体間で移動されるときに、ポリマーとともに残存する。
【0020】
本明細書において使用される場合、「小分子」という用語は、典型的には、反応してポリマーを形成可能な反応性基を有さず、モノマー形態での使用が指定されるモノマー化合物を意味すると理解される。これとは対照的に、「モノマー」という用語は、他に記載がなければ、反応してオリゴマー又はポリマーを形成可能な1つ以上の反応性官能基を有するモノマー化合物を意味するものと理解される。
【0021】
本明細書において使用される場合、「ポリマー組成物」という用語は、少なくとも1つのポリマーと、ポリマー組成物及び/又はその中の少なくとも1つのポリマーの特定の性質を付与又は変性するために少なくとも1つのポリマーに加えられた1つ以上の別の材料とを意味する。ポリマー組成物は、ポリマーを基板まで運び、その上に層又は構造を形成可能にする媒体であると理解される。代表的な材料としては、溶媒、酸化防止剤、光開始剤、光増強剤、架橋部分もしくは架橋剤、反応性希釈剤、酸捕捉剤、レベリング剤、及び接着促進剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。さらに、ポリマー組成物は、上述の代表的な材料に加えて、2つ以上のポリマーのブレンドを含むこともできることを理解されよう。
【0022】
本明細書において定義される場合、「ポリシクロオレフィン」、「多環式オレフィン」、及び「ノルボルネン型」という用語は、同義で使用され、以下の構造A1又はA2のいずれかによって示されるような少なくとも1つのノルボルネン部分を含む付加重合性モノマー、又はその結果得られる繰り返し単位を意味する。最も単純なノルボルネン型又は多環式オレフィンモノマーのビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン(A1)は一般にノルボルネンと呼ばれる。
【0023】
【化1】
しかし、「ノルボルネン型繰り返し単位」又は「ノルボルネン型モノマー」という用語は、本明細書において使用される場合、ノルボルネン自体だけを意味するのではなく、あらゆる置換ノルボルネン、又は置換及び非置換のより高次のその環状誘導体、たとえば以下にそれぞれ示される構造B1又はB2をも意味するものと理解され、式中、mは0以上の整数であり、m=0の場合、式A1のノルボルネンモノマー、又は式A2のそのそれぞれの繰り返し単位となる。
【0024】
【化2】
本明細書において使用される場合、「ヒドロカルビル」という用語は、それぞれの炭素が1つ以上の水素原子で適切に置換される炭素主鎖を有するラジカル又は基を意味する。「ハロヒドロカルビル」という用語は、すべてではない1つ以上の水素原子が、ハロゲン(F、CI、Br、又はI)によって置換されているヒドロカルビル基を意味する。パーハロカルビルという用語は、それぞれの水素がハロゲンによって置換されているヒドロカルビル基を意味する。ヒドロカルビルの非限定的な例としては、C
1~C
25アルキル、C
2~C
24アルケニル、C
2~C
24アルキニル、C
5~C
25シクロアルキル、C
6~C
24アリール、又はC
7~C
24アラルキルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。代表的なアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、及びドデシルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。代表的なアルケニル基としては、エテニルもしくはビニル、プロペニル、ブテニル、及びヘキセニルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。代表的なアルキニル基としては、エチニル、1-プロピニル、2-プロピニル、1-ブチニル、及び2-ブチニルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。代表的なシクロアルキル基としては、シクロペンチル、シクロヘキシル、及びシクロオクチル置換基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。代表的なアリール基としては、フェニル、ビフェニル、インデニル、ナフチル、及びアントラセニルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。代表的なアラルキル基としては、ベンジル、フェネチル、及びフェンブチルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0025】
本明細書において使用される場合、「ハロヒドロカルビル」という用語は、前述のヒドロカルビル部分を含むが、少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換される(たとえば、フルオロメチル基)ことから、過ハロゲン化とも呼ばれるヒドロカルビル基上のすべての水素原子がハロゲン原子で置換されている場合(たとえば、トリフルオロメチル又はパーフルオロメチル)までの範囲となりうるある程度のハロゲン化が存在する場合である。たとえば、本発明の実施形態において有用となりうるハロゲン化アルキル基は、式CeX2e+1(式中、Xは独立してハロゲン又は水素であり、eは1~25の整数から選択される)の部分又は完全ハロゲン化アルキル基であってよい。いくつかの実施形態では、それぞれのXは独立して水素、塩素、フッ素、臭素、及び/又はヨウ素から選択され、好適にはフッ素である。別の実施形態では、それぞれのXは独立して水素又はフッ素のいずれかである。したがって、代表的なハロヒドロカルビル及びパーハロカルビルは、適切な数の水素原子のそれぞれがハロゲン原子で置換される前述の代表的なヒドロカルビルが例となる。
【0026】
さらに、「ヒドロカルビル」、「ハロヒドロカルビル」、及び「パーハロヒドロカルビル」という用語の定義は、1つ以上の炭素原子が、O、N、P、又はSiから独立して選択されるヘテロ原子で置換される部分を含んでいる。このようなヘテロ原子含有部分は、たとえば、「ヘテロ原子-ヒドロカルビル」又は「ヘテロヒドロカルビル」のいずれかで呼ぶことができ、そのようなものとして、特に、エーテル、エポキシ、グリシジルエーテル、アルコール、カルボン酸、エステル、マレイミド、アミン、イミン、アミド、フェノール類、アミド-フェノール類、シラン、シロキサン、ホスフィン、ホスフィンオキシド、ホスフィナイト、ホスホナイト、ホスフィット、ホスホネート、ホスフィネート、及びホスフェートが挙げられる。
【0027】
ヘテロ原子を含むさらなる代表的なヒドロカルビル、ハロヒドロカルビル、及びパーハロカルビルとしては、限定するものではないが、
-(CH2)n-Ar-(CH2)n-C(CF3)2-OH、-(CH2)n-Ar-(CH2)n-OCH2C(CF3)2-OH、-(CH2)n-C(CF3)2-OH、-((CH2)i-O-)k-(CH2)-C(CF3)2-OH、-(CH2)n-C(CF3)(CH3)-OH、-(CH2)n-C(O)NHR*、-(CH2)n-C(O)Cl、-(CH2)n-C(O)OR*、-(CH2)n-OR*、-(CH2)n-OC(O)R*、及び(CH2)n-C(O)R*が挙げられ、式中、nは独立して0~12の整数を表し、iは2、3、又は4であり、kは1、2、又は3であり、Arはアリール、たとえばフェニルであり、R*は独立して、水素、C1~C11アルキル、C1~C11ハロゲン化もしくは過ハロゲン化アルキル、C2~C10アルケニル、C2~C10アルキニル、C5~C12シクロアルキル、C6~C14アリール、C6~C14ハロゲン化もしくは過ハロゲン化アリール、C7~C14アラルキル、又はハロゲン化もしくは過ハロゲン化C7~C14アラルキルを表す。
【0028】
代表的な過ハロゲン化アルキル基としては、トリフルオロメチル、トリクロロメチル、-C2F5、-C3F7、-C4F9、C6F13、-C7F15、及び-C11F23が挙げられるが、これらに限定されるものではない。代表的なハロゲン化又は過ハロゲン化アリール及びアラルキル基としては、式-(CH2)o-C6FpH5-o、及び-(CH2)o-C6FpH4-p-pCqFrH2q+1-r(式中、o、p、r、及びqは、独立して、それぞれ0~5、0~5、0~9、及び1~4から選択される整数である)を有する基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。特に、このような代表的なハロゲン化又は過ハロゲン化アリール基としては、ペンタクロロフェニル、ペンタフルオロフェニル、ペンタフルオロベンジル、4-トリフルオロメチルベンジル、ペンタフルオロフェネチル、ペンタフルオロフェンプロピル、及びペンタフルオロフェンブチルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0029】
本明細書において使用される場合、「任意選択的に置換される」という表現は、好適には、1つ以上のH原子が基Lによって任意選択的に置換されることを意味し、ここでLは、F、Cl、-OH、-CN、又は1~25個、好適には1~20個のC原子を有する直鎖、分岐、もしくは環状のアルキルから選択され、1つ以上のCH2基は、O及び/又はS原子が互いに直接結合しないように、-O-、-S-、-C(=O)-、-C(=S)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-NR0-、-SiR0R00-、-CF2-、-CR0=CR00-、-CY1=CY2-、又は-C≡C-によって任意選択的に置換され、1つ以上のH原子は、F、Cl、Br、I、又はCNによって任意選択的に置換され、Y1及びY2は、互いに独立して、H、F、Cl、又はCNを意味し、R0、R00は、互いに独立して、H、又は任意選択的にフッ素化された1~20個、好適には1~12個のC原子を有する直鎖もしくは分岐のアルキルを意味する。好適な置換基Lは、F、-CN、R0、-OR0、-SR0、-C(=O)-R0、-C(=O)-OR0、-O-C(=O)-R0、-O-C(=O)-OR0、-C(=O)-NHR0、-C(=O)-NR0R00から選択される。非常に好適な置換基Lは、F、又は1~12個のC原子を有するアルキル、アルコキシ、オキサアルキル、チアアルキル、フルオロアルキル、及びフルオロアルコキシ、又はアルキルカルボニル、2~12個のC原子(カルボニルC原子を含む)を有するアルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アルケニル、フルオロアルケニル、及びアルキニルから選択される。
【0030】
本明細書において使用される場合、「アラルキル」及び「ヘテロアラルキル」という用語は、アルキレン(すなわち二価のアルキル)基によって隣接する基と連結されるアリール基又はヘテロアリール基をそれぞれ意味する。このような基は、式
-アルキレン-(ヘテロ)アリール
によって表すことができ、式中、「アルキレン」はアルキレン基を意味し、「(ヘテロ)アリール」はアリール基又はヘテロアリール基を意味する。アラルキル基の一例はベンジルである。
【0031】
本明細書において使用される場合、「アラルキルオキシ」及び「ヘテロアラルキルオキシ」という用語は、アルキレンオキシ(すなわち二価のアルキルオキシ)基によって隣接する基と連結されるアリール基又はヘテロアリール基をそれぞれ意味する。このような基は式
-アルキレン-O-(ヘテロ)アリール
によって表すことができ、式中、「アルキレン」はアルキレン基を意味し、「(ヘテロ)アリール」はアリール基又はヘテロアリール基を意味する。アラルキルオキシ基の一例はエトキシビフェニルである。
【0032】
以下に議論されるように、本発明のポリマーを形成するために置換モノマー、特に置換ノルボルネン型モノマーを使用することによって、個別の用途の要求を満たすようにそのような実施形態の性質を調整することができる。モノマー、特にノルボルネン型モノマー、後述のような種々の官能性置換基を重合させるために開発された手順及び方法は、モノマーの種々の部分及び基に対する顕著な自由度及び許容範囲を示す。特定のペンダント基を有するモノマーの重合に加えて、種々の別個の官能基を有するモノマーをランダム重合させて、結果として得られるポリマーの全体的なバルク特性が使用されるモノマーの種類及び比率によって決定される最終材料を形成することができる。
【0033】
本発明によるいくつかの好適な実施形態は、誘電体層を含むOEデバイスを含み、上記誘電体層は、1つ以上のペンダント発色団を含むポリシクロオレフィン系ポリマー、又はそのようなポリシクロオレフィン系ポリマーを含むポリマー組成物から本質的になる。
【0034】
本発明によるさらに好適な実施形態は、OEデバイス中の誘電体層の形成に使用される、1つ以上のペンダント発色団を含むポリシクロオレフィン系ポリマーを含む。
本発明によるいくつかの好適な実施形態では、ポリシクロオレフィン系ポリマーは、非フッ素化溶媒、好適には不活性溶媒に対して可溶性であり、不活性な非フッ素化溶媒中又は溶媒組成物中の溶液から堆積される。溶媒又は溶媒組成物によって、下にあるOSC層に対して良好な直交性が得られ、ポリシクロオレフィン系ポリマーがトップゲートOTFTデバイス中の誘電体層としての使用に特に適切となる。
【0035】
本発明によるいくつかの好適なポリマーの実施形態では、ポリシクロオレフィン系ポリマーは、C6~C25アリール基、C7~C25アラルキル基、C7~C25-アラルキルオキシ基(aralkyoxy )、C2~C25ヘテロアリール基、C5~C25ヘテロアラルキル基、及びC5~C25ヘテロアラルキルオキシ基から選択される1つ以上のペンダント発色団を含み、これらすべては、好適には前述の定義の1つ以上の基Lによって任意選択的に置換される。アリール基の例としては、限定するものではないが、フェニル、4-ビフェニル、2-インデニル、1-もしくは2-ナフチル、1-、2-、もしくは3-フェナントレニル、及び1-、2-、もしくは9-アントラセニルが挙げられ、これらすべては、好適には前述の定義の1つ以上の基Lによって任意選択的に置換される。アラルキル基及びアラルキルオキシ基の例としては、限定するものではないが、メチル-4-ビフェニル、エチル-4-ビフェニル、エチル-2-インデニル、及びエチルオキシ-2-ビフェニルが挙げられ、これらすべては、好適には前述の定義の1つ以上の基Lによって任意選択的に置換される。
【0036】
本発明によるいくつかの好適なポリマーの実施形態では、ポリシクロオレフィン系ポリマーは、1つ以上のペンダント発色団を含み、1~20個、好適には1~12個のC原子を有する1つ以上のアルキル基又はフッ素化アルキル基をさらに含む。このようなアルキル基又はフッ素化アルキル基としては、限定するものではないが、式C
-CxFyH2x+1-y C
(式中、xは1~20、好適には1~12の整数であり、yは0又は1~2x+1の整数、好適には0又は1~12の整数、非常に好適には0である)
の基が挙げられる。好適にはこのようなアルキル基又はフッ素化アルキル基は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、-CF3、-C2F5、-C3F7、-C4F9、C6F13、-C7F15、-C11F23から選択され、より好適にはメチル、エチル、ブチル、ヘキシル、オクチル、及びデシルから選択される。
【0037】
本発明によるいくつかの好適なポリマーの実施形態では、ポリシクロオレフィン系ポリマーは1つ以上のペンダント発色団を含み、1つ以上の架橋可能ペンダント基をさらに含む。
【0038】
本発明によるいくつかの好適なポリマーの実施形態では、ポリシクロオレフィン系ポリマーは、ある程度の潜在性を有する1つ以上のペンダント架橋可能基又は部分を含み、これらは以下では「潜在性架橋可能基」とも記載される。「潜在性」とは、そのような基が、周囲条件又はポリマーの初期形成中には架橋しないが、たとえば特に化学線又は熱によってそのような反応が開始される場合に架橋することを意味する。そのようなペンダント架橋可能基、たとえば、置換もしくは非置換マレイミド又はマレイミド含有ペンダント基を含む1つ以上のモノマーを重合反応混合物に加え、それを重合させることによって、このような潜在性架橋可能基がポリマー主鎖中に組み込まれる。好適な架橋可能基としては、置換もしくは非置換のマレイミド部分、エポキシド部分、ビニル部分、アセチル部分、インデニル部分、シンナメート部分、又はクマリン部分を含む基が挙げられ、特に、3-モノアルキル-もしくは3,4-ジアルキルマレイミド基、エポキシ基、ビニル基、アセチレン基、シンナメート基、インデニル基、又はクマリン基から選択される基が挙げられる。
【0039】
誘電体層中に使用されるポリシクロオレフィン系ポリマーは、好適にはノルボルネン型ポリマーから選択される。
本発明によるいくつかの好適なポリマーの実施形態では、ノルボルネン型ポリマーは、2つ以上の別個の種類の繰り返し単位を含む。
【0040】
本発明による別の好適なポリマーの実施形態は、式I
【0041】
【化3】
(式中、Zは、-CH
2-、-CH
2-CH
2-、又は-O-から選択され、mは0~5の整数であり、R
1、R
2、R
3、及びR
4のそれぞれは独立して、H、C
1~C
25ヒドロカルビル基、C
1~C
25ハロヒドロカルビル基、又はC
1~C
25パーハロカルビル基を表し、少なくとも1つの繰り返し単位中、R
1~4の1つ以上、好適にはただ1つが、Hとは異なり、発色団を表す、又は発色団を含む)
の1つ以上の第1の別個の種類の繰り返し単位を含む1つ以上のノルボルネン型ポリマーを含む。
【0042】
式Iの繰り返し単位は、式Iaの対応するノルボルネン型モノマーから形成され、式中のZ、m、及びR1~4は前述の定義の通りである:
【0043】
【化4】
本発明によるいくつかの好適なポリマーの実施形態は、Zが-CH
2-であり、mが0、1、又は2である式Iの繰り返し単位及び式Iaのモノマーを含む。別の好適な実施形態の場合は、Zが-CH
2-であり、mが0又は1であり、さらに別の好適な実施形態の場合は、Zが-CH
2-であり、mが0である。
【0044】
本発明の別の好適なポリマーの実施形態は、R1~4のただ1つ、たとえばR1がHとは異なり、R1~4の他のものがHである式Iの繰り返し単位及び式Iaのモノマーを含む。
【0045】
本発明の別の好適なポリマーの実施形態は、Hとは異なるR1~4が、C6~C25アリール基、C7~C25アラルキル基、C7~C25-アラルキルオキシ基(aralkyoxy )基、C2~C25ヘテロアリール基、C5~C25ヘテロアラルキル基、及びC5~C25ヘテロアラルキルオキシ基から好適には選択される発色団であって、これらすべてが、好適には前述の定義の1つ以上の基Lによって任意選択的に置換される発色団を表す、式Iの繰り返し単位及び式Iaのモノマーを含む。この実施形態の好適な発色団R1~4は式A
-(CH2)a-(O)o-アリール A
(式中、aは0又は1~12の整数、好適には1~6の整数であり、oは0又は1であり、「アリール」は、フェニル、4-ビフェニル、2-インデニル、1-もしくは2-ナフチル、1-、2-、もしくは3-フェナントレニル、及び1-、2-、もしくは9-アントラセニルからなる下位群から好適には選択される6~20個のC原子を有するアリール基を表し、これらすべては、好適には前述の定義の1つ以上の基Lによって任意選択的に置換される)
から選択される。
【0046】
本発明による好適なポリマー組成物の実施形態は、1つのノルボルネン型ポリマー、又は2つ以上の異なるノルボルネン型ポリマーのブレンドのいずれかを含む。このようなポリマー組成物の実施形態が1つのノルボルネン型ポリマーを含む場合、そのようなポリマーは、ホモポリマー、すなわち1種類のみの繰り返し単位を含むポリマー、又はコポリマー、すなわち2つ以上の別個の種類の繰り返し単位を含むポリマーであってよい。このようなポリマー組成物の実施形態が異なるポリマーのブレンドを含む場合、「異なる」とは、ブレンドされるポリマーのそれぞれが、別のブレンドされるポリマーのいずれとも異なる、少なくとも1種類の繰り返し単位、又は繰り返し単位の組合せを含むことを意味すると理解される。
【0047】
本発明による別の好適なポリマー組成物の実施形態は、2つ以上の異なるノルボルネン型ポリマーのブレンドを含み、少なくとも1つのポリマーは式I
【0048】
【化5】
(式中、Zは、-CH
2-、-CH
2-CH
2-、又は-O-から選択され、mは0~5の整数であり、R
1、R
2、R
3、及びR
4のそれぞれは独立して、H、C
1~C
25ヒドロカルビル基、C
1~C
25ハロヒドロカルビル基、又はC
1~C
25パーハロカルビル基から選択される)
の1つ以上の第1の別個の種類の繰り返し単位を含み、少なくとも1つのポリマーは、式Iの1つ以上の別個の種類の繰り返し単位を含み、式中のR
1~4の1つ以上、好適にはただ1つが、Hとは異なり、発色団であって、C
6~C
25アリール、C
7~C
25アラルキル、C
7~C
25-アラルキルオキシ基(aralkyoxy )、C
2~C
25ヘテロアリール、C
5~C
25ヘテロアラルキル、及びC
5~C
25ヘテロアラルキルオキシから好適には選択され、これらすべては、好適には前述の定義の1つ以上の基Lによって任意選択的に置換される、発色団を表す。好適な発色団は、前述の定義の式A及びその好適な下位群から選択される。この好適な実施形態の式Iの非常に好適な繰り返し単位は、後述の式1~5から選択される。
【0049】
本発明によるポリマー及びポリマー組成物の実施形態は、多くの個別の用途のそれぞれのために異なる性質の組が得られるように有利に調整することができる。すなわち、ノルボルネン型モノマーといくつかの異なる種類のペンダント基との異なる組合せを重合させることで、特に可撓性、接着性、誘電率、及び有機溶媒に対する溶解性などの性質を制御するための性質を有するノルボルネン型ポリマーを得ることができる。たとえば、アルキルペンダント基の長さを変更することで、ポリマーのモジュラス及びガラス転移温度(Tg)を制御することができる。また、マレイミド、シンナメート、クマリン、無水物、アルコール、エステル、及びエポキシの官能基から選択されるペンダント基を使用して、架橋を促進し、溶解特性を変化させることができる。極性官能基、エポキシ基、及びトリエトキシシリル基を使用して、隣接するデバイス層中の金属、シリコン、及び酸化物への接着を促進することができる。たとえば、フッ素化基を使用することで、効率的に表面エネルギー、誘電率を変化させ、別の材料に対する溶液の直交性に影響を与えることができる。
【0050】
したがって、本発明によるさらに好適なポリマーの実施形態は、前述の定義の発色団を含む式Iの1つ以上の第1の別個の種類の繰り返し単位を含み、式I
【0051】
【化6】
(式中、Zは、-CH
2-、-CH
2-CH
2-、又は-O-から選択され、mは0~5の整数であり、R
1、R
2、R
3、及びR
4のそれぞれは独立して、H、C
1~C
25ヒドロカルビル基、C
1~C
25ハロヒドロカルビル基、又はC
1~C
25パーハロカルビル基を表し、R
1~4の1つ以上、好適にはただ1つは、Hとは異なり、1~20個、好適には1~12個のC原子を有するアルキル基又はフッ素化アルキル基を表す)
の1つ以上の第2の別個の種類の繰り返し単位をさらに含む1つ以上のノルボルネン型ポリマーを含む。このようなアルキル基又はフッ素化アルキル基としては、式C
-C
xF
yH
2x+l-y C
(式中、xは1~20、好適には1~12の整数であり、yは0又は1~2x+1の整数、好適には0又は1~12の整数、非常に好適には0である)
の基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。式Cの好適なアルキル基又はフッ素化アルキル基は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、-CF
3、-C
2F
5、-C
3F
7、-C
4F
9、C
6F
13、-C
7F
15、-C
11F
23からなる下位群から選択され、より好適にはメチル、エチル、ブチル、ヘキシル、オクチル、及びデシルからなる下位群から選択される。
【0052】
本発明によるさらに好適なポリマーの実施形態は、前述の定義の発色団を含む式Iの1つ以上の第1の別個の種類の繰り返し単位を含み、式I
【0053】
【化7】
(式中、Zは、-CH
2-、-CH
2-CH
2-又は-O-から選択され、mは0~5の整数であり、R
1、R
2、R
3、及びR
4のそれぞれは独立して、H、C
1~C
25ヒドロカルビル基、C
1~C
25ハロヒドロカルビル基、又はC
1~C
25パーハロカルビル基を表し、R
1~4の1つ以上、好適にはただ1つは、Hとは異なり、架橋可能基を表す、又は架橋可能基を含む)
の1つ以上の第2の別個の種類の繰り返し単位をさらに含む1つ以上のノルボルネン型ポリマーを含む。好適な架橋可能基は、連結部分Lp及び官能性部分Fpを含む。好適にはLpは、C
1~C
12アルキル、アラルキル、アリール、又はヘテロ原子類似体から選択される基を表す、又は含む。さらに好適にはFpは、架橋又は2+2架橋反応が可能な、マレイミド部分、3-モノアルキル-もしくは3,4-ジアルキルマレイミド部分、エポキシ部分、ビニル部分、アセチレン部分、シンナメート部分、インデニル部分、又はクマリン部分の1つ以上を表す、又は含む。
【0054】
本明細書において使用される場合、「架橋可能」という語句は、ある種のペンダント基を説明するために使用する場合に、化学線に対して反応性があり、その反応性の結果として架橋反応に加わる基、又は化学線に対して反応性はないが、架橋活性化剤の存在下で架橋反応に加わる基を意味するものと理解される。
【0055】
本発明による好適なポリマーの実施形態では、ノルボルネン型ポリマーは、以下の式からなる群から選択される発色団を含む式Iの1つ以上の別個の種類の第1の繰り返し単位を含む:
【0056】
【化8】
本発明によるさらに好適なポリマーの実施形態では、ノルボルネン型ポリマーは、以下の式からなる群から選択されるアルキル基を含む式Iの1つ以上の別個の種類の第2の繰り返し単位を含む:
【0057】
【化9】
本発明によるさらに好適なポリマーの実施形態では、ノルボルネン型ポリマーは、以下の式からなる群から選択される架橋可能基を含む式Iの1つ以上の別個の種類の第2の繰り返し単位を含む:
【0058】
【化10】
本発明によるさらに好適なポリマーの実施形態では、ノルボルネン型ポリマーは、R
1~4の1つ以上、好適にはただ1つが、Hとは異なり、発色団を表す、又は含む式Iの1つ以上の第1の別個の種類の繰り返し単位と、R
1~4の1つ以上、好適にはただ1つが、Hとは異なり、1~20個、好適には1~12個のC原子を有するアルキル基又はフルオロアルキル基を表す、又は含む式Iの1つ以上の第2の別個の種類の繰り返し単位とを含む、好適にはからなる。好適な発色団は、前述の定義の式A及びその好適な下位群から選択される。好適なアルキル基又はフルオロアルキル基は、前述の定義の式C及びその好適な下位群から選択される。この好適な実施形態の式Iの非常に好適な第1の繰り返し単位は、式1~5から選択される。この好適な実施形態式Iの非常に好適な第2の繰り返し単位は、式6~10から選択される。
【0059】
本発明によるさらに好適なポリマーの実施形態では、ノルボルネン型ポリマーは、R1~4の1つ以上、好適にはただ1つが、Hとは異なり、ヘテロ原子を含まない発色団を表す式Iの1つ以上の別個の種類の第1の繰り返し単位を含む、好適にはからなる。この実施形態の好適な繰り返し単位は、R1~4の1つ以上が、好適には前述の定義の1つ以上の基Lによって任意選択的に置換される、C6~C25アリール及びC7~C25アラルキルから選択される発色団を表す、又は含む式Iから選択される。この実施形態の好適な発色団R1~4は、式B
-(CH2)a-アリール B
(式中、aは、0又は1~12の整数、好適には1~6の整数、非常に好適には1、2、3、又は4であり、「アリール」は、フェニル、4-ビフェニル、2-インデニル、1-もしくは2-ナフチル、1-、2-、もしくは3-フェナントレニル、及び1-、2-、もしくは9-アントラセニルからなる下位群から好適には選択される6~20個のC原子を有するアリール基を表し、これらすべては、好適には前述の定義の1つ以上の基Lによって任意選択的に置換される)
のものである。この実施形態の非常に好適な繰り返し単位は、前述の式1、2、4、及び5から選択される繰り返し単位である。
【0060】
本発明によるさらに好適なポリマーの実施形態では、ノルボルネン型ポリマーは、R1~4の1つ以上、好適にはただ1つが、Hとは異なり、ヘテロ原子を含まない発色団を表す式Iの1つ以上の別個の種類の第1の繰り返し単位と、R1~4の1つ以上、好適にはただ1つが、Hとは異なり、1~20個、好適には1~12個のC原子を有するアルキル基又はフッ素化アルキル基を表し、好適には他のR1~4がHを表す式Iの1つ以上の第2の別個の種類の繰り返し単位とを含む。第1の繰り返し単位中の好適な発色団R1~4は、好適には前述の定義の1つ以上の基Lによって任意選択的に置換される、C6~C25アリール及びC7~C25アラルキルから選択され、非常に好適には前述の定義の式B及びその好適な下位群から選択される。第2の繰り返し単位中の好適なアルキル基及びフルオロアルキル基R1~4は、前述の定義の式C及びその好適な下位群から選択される。この実施形態の非常に好適な第1の繰り返し単位は、式1、2、4、及び5から選択される繰り返し単位である。この実施形態の非常に好適な第2の繰り返し単位は、式6~10から選択される繰り返し単位である。
【0061】
本発明による別の好適なポリマーの実施形態では、ノルボルネン型ポリマーは、R1~4の1つ以上、好適にはただ1つが、Hとは異なり、発色団を表す、又は含む式Iの1つ以上の第1の別個の種類の繰り返し単位と、R1~4の1つ以上、好適にはただ1つが、Hとは異なり、架橋可能基を表す、又は含む式Iの1つ以上の第2の別個の種類の繰り返し単位とを含み、好適にはこれらから構成される。好適な架橋可能基は、連結部分Lp及び官能性部分Fpを含む。好適にはLpは、C1~C12アルキル、アラルキル、アリール、又はヘテロ原子類似体から選択される基を表す、又は含む。さらに好適にはFpは、架橋又は2+2架橋反応が可能な、マレイミド部分、3-モノアルキル-もしくは3,4-ジアルキルマレイミド部分、エポキシ部分、ビニル部分、アセチレン部分、シンナメート部分、インデニル部分、又はクマリン部分の1つ以上を表す、又は含む。この好適な実施形態の式Iの非常に好適な繰り返し単位は、式11~25から選択される。
【0062】
本発明による別の好適なポリマーの実施形態では、ノルボルネン型ポリマーは、式1~5から選択される式Iの1つ以上の第1の別個の種類の繰り返し単位と、式6~10から選択される式Iの1つ以上の第2の別個の種類の繰り返し単位とを含んでなり、好適にはこれらから構成される。
【0063】
本発明による別の好適なポリマーの実施形態では、ノルボルネン型ポリマーは、式1~5から選択される式Iの1つ以上の第1の別個の種類の繰り返し単位と、式11~25から選択される式Iの1つ以上の第2の別個の種類の繰り返し単位とを含んでなり、好適にはこれらから構成される。
【0064】
本発明による別の好適なポリマーの実施形態では、ノルボルネン型ポリマーは、架橋可能基を含む繰り返し単位を含有しない。
式Iによる第1及び第2の別個の種類の繰り返し単位を有するポリマーを含むいくつかの好適なポリマーの実施形態では、このような第1及び第2の種類の繰り返し単位の比は95:5~5:95である。別の好適な実施形態では、このような第1及び第2の種類の繰り返し単位の比は80:20~20:80である。さらに別の好適な実施形態では、このような第1及び第2の種類の繰り返し単位の比は60:40~40:60である。さらに別の好適な実施形態では、このような第1及び第2の種類の繰り返し単位の比は55:45~45:55である。
【0065】
前述の式I及びIa、ならびにそれぞれの下位の式及び一般式は、立体化学を示さずに記載されているが、他に示されなければ、一般に各モノマーは、繰り返し単位に変換されるときにそれらの配置が維持されるジアステレオマー混合物として得られることに留意すべきである。このようなジアステレオマー混合物のexo異性体及びendo異性体は、わずかに異なる性質を有することがあるので、本発明の好適な実施形態では、exo異性体又はendo異性体のいずれかに富む異性体混合物であるか、本質的に純粋な有利な異性体であるかのいずれかのモノマーを使用することによって、このような差が利用されることをさらに理解すべきである。
【0066】
適切なノルボルネンモノマー、ポリマー、及びそれらの合成方法の例は、本明細書に示されているし、米国特許第6,455,650号明細書、米国特許出願公開第2011/0104614A1号明細書、米国特許出願公開第2007/0066775A1号明細書、米国特許出願公開第2008/0194740A1号明細書、米国特許出願公開第2012/0056249A1号明細書、及び米国特許出願公開第2012/0056183A1号明細書の関連部分に見出すこともでき、これらの関連部分は参照により本出願に援用される。たとえば、VIII族遷移金属触媒を使用する代表的な重合方法は、上記参考文献のいくつかにも記載されており,本明細書において以下にさらに記載する。
【0067】
本発明のポリマーの実施形態は、それらの使用に適切な重量平均分子量(Mw)を有するように形成される。一般に、いくつかの実施形態では5,000~500,000のMwが適切であることが分かっており、一方、別の実施形態では別のMw範囲が有利となりうる。たとえば、いくつかの好適な実施形態では、ポリマーは少なくとも10,000のMwを有し、一方、別の好適な実施形態では、ポリマーは少なくとも20,000のMwを有する。別の好適な実施形態ではポリマーのMwの上限は最大400,000となりうるが、一方、別の好適な実施形態ではポリマーのMwの上限は最大250,000となりうる。適切なMwは、硬化したポリマー、フィルム、層、又はそれらから得られる構造における所望の物理的性質と関係するので、設計の選択、したがって前述の範囲内の任意のMwが本発明の範囲内となることを理解されたい。本発明のポリマー中、繰り返し単位の総数dは好適には2~10,000である。繰り返し単位の総数dは、好適には≧5、非常に好適には≧10、最適には≧50、及び好適には≦500、非常に好適には≦1,000、最適には≦2,000であり、dの上記下限及び上限のあらゆる組合せが含まれる。
【0068】
本発明のいくつかの好適な実施形態では、架橋可能又は架橋後のポリシクロオレフィン系ポリマーは、バンク構造材料として、又はその構成要素として使用される。このような架橋可能又は架橋後のポリマーは、ゲート誘電体層及び電子デバイスの構造的完全性、耐久性、機械的抵抗性、及び耐溶剤性から選択される1つ以上の性質を改善する機能を果たしうることが分かっている。適切な架橋可能ポリマーは、たとえば、R1~4の1つ以上が前述の架橋可能基を表す式Iの1つ以上の繰り返し単位を有するものである。
【0069】
架橋させる場合、ポリマーは、一般に堆積した後に、電子ビーム、又はX線、UVもしくは可視光などの電磁放射線(化学線)に曝露されるか、又は熱により架橋可能な基を有する場合は加熱される。たとえば、11nm~700nm、たとえば200~700nmの波長を用いてポリマーに画像形成するために化学線を使用することができる。露光のための化学線の線量は一般に25~15000mJ/cm2である。適切な放射線源としては、水銀、水銀/キセノン、水銀/ハロゲン及びキセノンのランプ、アルゴン又はキセノンのレーザー源、X線が挙げられる。このような化学線への曝露によって、曝露した領域内で架橋が生じる。架橋する別の繰り返し単位のペンダント基を設けることもできるが、一般にこのような架橋は、マレイミドペンダント基を含む、すなわちR1~R4の1つが置換又は非置換のマレイミド部分である繰り返し単位によって行われる。マレイミド基の光吸収帯の範囲外の波長を有する光源の使用が望ましい場合は、放射線感受性光増感剤を加えることができる。ポリマーが熱架橋可能基を有する場合は、たとえば架橋反応が熱的に開始されない場合に、任意選択的に、架橋反応を開始するために開始剤を加えることができる。
【0070】
本発明による別の好適な実施形態では、架橋可能ポリマー組成物は、自発的な架橋を防止しポリマー組成物の貯蔵寿命を改善するために、安定剤材料又は部分を含む。適切な安定剤は、1つ以上の嵩高いアルキル基、たとえばt-ブチル基をフェノール性OH基に対してオルト位に任意選択的に有するカテコール又はフェノール誘導体などの酸化防止剤である。
【0071】
機能層などの個別のデバイス構成要素の加工、及び電子デバイスの完全性を改善するために、形成される構成要素の物理的性質を維持又は改善しながら、加工に必要な時間を短縮することが望ましい。後の構成要素及びこのような構成要素の形成に使用される溶媒が直交する場合、したがって互いに溶解しない場合に、これを維持することができる。このような直交性を得ることが困難な場合は、第1の構成要素を架橋、典型的にはUV架橋させて、そのような第1の構成要素を第2の構成要素のポリマー組成物に対して不溶性にすることで、別の構成要素上のいずれかの構成要素の性質への影響が防止される。
【0072】
加工に必要な時間の短縮は、たとえばコーティングプロセスを調整することによって行うことができ、一方、UV架橋に必要な時間の減少は、ポリマーの化学的調節又はプロセスの変更の両方によって実現することができる。
【0073】
しかし、UV感受性は、ポリマーのある種の性質と関連し、たとえばUV感受性の増加に向かう変化によって溶解性が低下しうるので、ポリマーの化学的改質は制限される。たとえば、より高出力のUVを使用することによるプロセスの変更によって、オゾン雰囲気が形成される可能性が増加し、それによってポリマー誘電体の表面に望ましくない変化が生じることがある。
【0074】
したがって、本発明によるいくつかの好適な実施形態は、1つ以上の架橋添加剤を含むポリマー組成物を含む。このような添加剤は、バンク構造の形成に使用されるポリシクロオレフィン系ポリマーのペンダント架橋可能基と反応可能な2つ以上の官能基を含む。このような架橋添加剤を使用することで、前述のポリマーの架橋も促進できることも理解されよう。
【0075】
本発明によるいくつかの好適な実施形態では、架橋はUV放射線への露光によって実現できる。
架橋剤を使用することで、適切な波長及び線量のUV放射線への像様露光の使用によるバンク構造のパターニング能力が向上する。
【0076】
本発明によるいくつかの好適な実施形態では、架橋剤の架橋可能基は、マレイミド基、3-モノアルキル-マレイミド基、3,4-ジアルキルマレイミド基、エポキシ基、ビニル基、アセチレン基、インデニル基、シンナメート基、もしくはクマリン基、又は置換もしくは非置換のマレイミド部分、エポキシド部分、ビニル部分、アセチレン部分、インデニル部分、シンナメート部分、もしくはクマリン部分から選択される。
【0077】
本発明によるいくつかの好適な実施形態では、架橋剤は、式III1又はIII2
P-A’’-X’-A’’-P III1
H4-cC(A’’-P)c III2
(式中、X’は、O、S、NH、又は単結合であり、A’’は、単結合、又は(CZ2)n、(CH2)n-(CH=CH)p-(CH2)n、(CH2)n-O-(CH2)n、(CH2)n-C6Q10-(CH2)n、及びC(O)から選択される連結基、スペーサー基、もしくは架橋基であり、それぞれのnは独立して0~12の整数であり、pは1~6の整数であり、Zは独立してH又はFであり、C6Q10は、Qで置換されたシクロヘキシルであり、Qは独立して、H、F、CH3、CF3、又はOCH3であり、Pは架橋可能基であり、cは2、3、又は4であり、式III1中、少なくとも1つのX’及び2つの基A’’は単結合ではない)
から選択される。
【0078】
いくつかの好適な実施形態では、Pは、マレイミド基、3-モノアルキル-マレイミド基、3,4-ジアルキルマレイミド基、エポキシ基、ビニル基、アセチレン基、インデニル基、シンナメート基、もしくはクマリン基から選択される、又は置換もしくは非置換のマレイミド部分、エポキシド部分、ビニル部分、アセチレン部分、インデニル部分、シンナメート部分、又はクマリン部分を含む。
【0079】
式III1の好適な化合物は式CI:
【0080】
【化11】
(式中、R
10及びR
11は、互いに独立して、H又はC
1~C
6アルキル基であり、A’’は式III1における定義の通りである)
から選択される。本発明の一実施形態では、架橋剤は、DMMI-ブチル-DMMI、DMMI-ペンチル-DMMI及びDMMI-ヘキシル-DMMIから選択され、「DMMI」は3,4-ジメチルマレイミドを意味する。
【0081】
いくつかの好適な実施形態では、スペーサー基A’’は、線状C1~C30アルキレン又は分岐C3~C30アルキレン又は環状C5~C30アルキレンを表し、そのそれぞれは、非置換であるか、F、Cl、Br、I、もしくはCNによって一置換もしくは多置換されるかであり、任意選択的に1つ以上の非隣接CH2基は、それぞれの場合で互いに独立して、O及び/又はS原子が互いに直接結合しないように、-O-、-S-、-NH-、-NR18-、-SiR18R19-、-C(O)-、-C(O)O-、-OC(O)-、-OC(O)-O-、-S-C(O)-、-C(O)-S-、-CH=CH-又は-C≡C-によって置換され、R18及びR19は互いに独立して、H、メチル、エチル又はC3~C12線状又は分岐アルキル基である。
【0082】
好適な基A’’は、-(CH2)r-、-(CH2CH2O)s、-CH2CH2-、-CH2CH2-S-CH2CH2-、又は-CH2CH2-NH-CH2CH2-、又は-(SiR18R19-O)r-、であり、ここでrは2~12の整数であり、sは1、2、又は3であり、R18及びR19は前述の意味を有する。
【0083】
さらに好適な基A’’は、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレン、ノニレン、デシレン、ウンデシレン、ドデシレン、オクタデシレン、エチレンオキシエチレン、メチレンオキシブチレン、エチレン-チオエチレン、エチレン-N-メチル-イミノエチレン、1-メチルアルキレン、エテニレン、プロペニレン、及びブテニレンから選択される。
【0084】
式CIのような架橋剤の合成は、たとえば米国特許第3,622,321号明細書に開示されている。
本発明によるいくつかの好適な実施形態では、ポリマー組成物は、架橋可能ポリシクロオレフィン系ポリマー及び反応性接着促進剤を含む。反応性接着促進剤は、上にバンク構造が形成される基板との相互作用、たとえば化学結合が可能な表面活性基である第1の官能基と、たとえばポリシクロオレフィン系ポリマー中のペンダント架橋可能基との架橋によって、ポリシクロオレフィン系ポリマーと化学結合を形成するか、形成しないかのいずれかで相互作用が可能な第2の官能基とを含む。特にバンク構造又はさらなる機能層を形成するときにフォトリソグラフィプロセスが使用される場合に、接着促進剤を使用することができる。
【0085】
本発明によるいくつかの好適な実施形態では、接着促進剤は式IV
G1A’’-G2 IV
(式中、G1は、表面活性基、たとえばシラン基又はシラザン基であり、A’’は、単結合、又はたとえば前述の式III1で定義されるような連結基、スペーサー基、もしくは架橋基であり、G2は、たとえば前述の式III1で定義されるような架橋可能基であるか、又はG2は、ポリシクロオレフィン系ポリマーの非反応性相溶化基である)
の化合物である。本明細書において使用される場合、「相溶化」という用語は、通常は非混和性のポリマーの均一ブレンドの形成を促進する界面剤又は界面基を意味するものと理解されたい。たとえば、ポリシクロオレフィン系ポリマーが、モノマー15~26のようなハロゲン化部分又は過ハロゲン化部分を含む場合、相溶化基G2は、ハロゲン化又は過ハロゲン化アルキル基、アリール基、又はアラルキル基から選択することができる。
【0086】
いくつかの好適な実施形態では、G1は、式-SiR12R13R14の基、又は式-NH-SiR12R13R14の基であり、式中、R12、R13、及びR14はそれぞれ独立して、ハロゲン、シラザン、C1~C12-アルコキシ、C1~C12-アルキルアミノ、任意選択的に置換されたC6~C20-アリールオキシ、及び任意選択的に置換されたC2~C20-ヘテロアリールオキシから選択され、R12、R13、及びR14の中の1つ又は2つは、C1~C12-アルキル、任意選択的に置換されたC6~C20-アリール、又は任意選択的に置換されたC2~C20-ヘテロアリールを表すこともできる。
【0087】
別の好適な実施形態では、G2は、マレイミド基、3-モノアルキル-マレイミド基、3,4-ジアルキルマレイミド基、エポキシ基、ビニル基、アセチル基、インデニル基、シンナメート基、もしくはクマリン基から選択される架橋可能基であるか、又は置換又は非置換のマレイミド部分、エポキシド部分、ビニル部分、アセチル部分、インデニル部分、シンナメート部分、もしくはクマリン部分を含む。
【0088】
別の好適な実施形態では、G2は、C1~C11ハロゲン化又は過ハロゲン化アルキル、C6~C14ハロゲン化又は過ハロゲン化アリール、又はハロゲン化又は過ハロゲン化C7~C14アラルキル、特に、それぞれフッ素化又は過フッ素化されたC1~C11アルキル、C6~C14アリール、又はC7~C14アラルキルから選択される非反応性相溶化基である。別の実施形態では、G2は、-C4F9、-(CH2)b-C6F5、-CH2C6F2、-CH2-C2F5、-CH2CH2-C4F9、-CH2-(CF2)3-CF2H、-CH2CF2CF2H、-C7F15、又はCF2CFHOC3F7から選択され、式中のbは1~6の整数である。
【0089】
別の好適な実施形態では、A’’は、(CZ2)n、(CH2)n-(CH=CH)p-(CH2)n、(CH2)n-O、(CH2)n-O-(CH2)n、(CH2)n-C6Q4-(CH2)n、(CH2)n-C6Q10-(CH2)n、及びC(O)-Oから選択され、式中、それぞれのnは独立して0~12の整数であり、pは1~6の整数であり、Zは独立してH又はFであり、C6Q4は、Qで置換されたフェニルであり、C6Q10は、Qで置換されたシクロヘキシルであり、Qは独立して、H、F、CH3、CF3、又はOCH3である。
【0090】
式IVの好適な化合物は式A1:
【0091】
【化12】
(式中、R
12、R
13R
14、及びA’’は前述の定義の通りであり、R
10及びR
11はそれぞれ独立してH又はC
1~C
6アルキル基である)
から選択される。式A1の適切な化合物は、たとえばDMMI-プロピル-Si(OEt)
3、DMMI-ブチル-Si(OEt)
3、DMMI-ブチル-Si(OMe)
3、DMMI-ヘキシル-Si(OMe)
3であり、ここで「DMMI」は3,4-ジメチルマレイミドを意味する。
【0092】
本発明による別の好適な実施形態は、ポリシクロオレフィン系ポリマーと、既に前述したもの及び後述のキャスティング用もしくは印刷用の溶媒とを含む組成物に関する。
本発明によるいくつかの好適な組成物の実施形態では、溶媒は、後述及び前述の有機溶媒から選択される。別の実施形態では、溶媒としては、シクロヘキシルベンゼン、メシチレン、インダン、キシレン、テトラリン、ジエチルベンゼン、シクロペンタノン、酢酸ベンジル、又はこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0093】
本発明による別の好適な組成物の実施形態では、組成物中のポリシクロオレフィン系ポリマーの濃度は、0.1%~20%、好適には0.5%~10%、非常に好適には1%~5%である。
【0094】
上記濃度値は、溶媒と、ポリシクロオレフィン系ポリマーなどのすべての固体成分とを含む組成物に関するものである。
本発明による好適なOEデバイスの実施形態としては、トップゲート又はボトムゲートトランジスタであってよい有機薄膜トランジスタ(OTFT)、有機発光ダイオード(OLED)、有機光検出(OPD)デバイス、又は有機光起電力(OPV)デバイスが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0095】
本発明によるいくつかの好適なOEデバイスの実施形態は、たとえば、OSCが活性チャネル材料として使用されるOTFT、OSCが電荷担体材料として使用されるOPVもしくはOPDデバイス、又はOSCがダイオードの層要素となる有機整流ダイオード(ORD)であってよい。このような実施形態のOSCは、前述の議論の堆積方法のいずれかによって堆積することができるが、これらは一般にブランケット層として堆積又は形成されるので、スプレーコーティング、ディップコーティング、ウェブコーティング、もしくはスピンコーティングなどの溶媒コーティング方法、又はインクジェット印刷、フレキソ印刷、もしくはグラビア印刷などの印刷方法が典型的には使用され、それによって周囲温度処理が可能となる。
【0096】
いくつかの好適なOEデバイスの実施形態では、OEデバイスは、前述及び後述のポリシクロオレフィン系ポリマーを含むゲート誘電体層を含むボトムゲートOTFT又はトップゲートOTFTである。
【0097】
別の好適なOEデバイスの実施形態では、OEデバイスは、前述及び後述のポリシクロオレフィン系ポリマーを含むパッシベーション層を含むボトムゲートOTFT又はトップゲートOTFTである。
【0098】
本発明による別の好適な実施形態は、前述及び後述のポリシクロオレフィン系ポリマーを含む誘電体又はパッシベーション層を含むOEデバイスの製造方法であって、上記OEデバイスがOSC材料の溶液堆積によって得られるOSC層をさらに含む、方法に関する。
【0099】
本発明の別の好適な実施形態は、OEデバイスの製造方法であって、以下のステップ:
a)OSC材料を、好適には有機溶液から堆積してOSC層を形成するステップと、
b)ソース及びドレイン電極を堆積するステップと、
c)ゲート電極を堆積するステップと、
d)前述及び後述のポリシクロオレフィン系ポリマーを、好適には有機溶液から堆積して誘電体層を形成するステップと
を適切な順序で含む、方法に関する。
【0100】
本発明の好適な一実施形態によるトップゲートOTFTを
図1中に概略的に示しており、本発明の別の実施形態によるボトムゲートOTFTを
図2中に概略的に示している。
これより
図1を参照すると、本発明の好適な一実施形態によるトップゲートOTFTデバイスの概略的で簡略化された図が示されている。このようなOTFTデバイスは、基板(1)と、ソース及びドレイン電極(2a、2b)と、OSC層(3)と、ゲート絶縁体として機能する前述及び後述のポリシクロオレフィン系ポリマーを含む誘電体層(4)と、ゲート電極(5)とを含む。
【0101】
本発明による別の好適な実施形態は、たとえば
図1中に示されるようなトップゲートOTFTデバイスの製造方法であって:
a)基板(1)の上にソース及びドレイン電極(2a、2b)を形成するステップと、
b)ソース及びドレイン電極(2a、2b)の上に、好適には有機溶液から、OSC材料を堆積することによってOSC層(3)を形成するステップと、
c)OSC層(3)の上に、好適には有機溶液から、前述及び後述のポリシクロオレフィン系ポリマーを堆積することによって誘電体層(4)を形成するステップと、
d)誘電体層(4)の上にゲート電極(5)を形成するステップと、
を含む方法による、製造方法に関する。
【0102】
これより
図2を参照すると、本発明の別の好適な一実施形態によるボトムゲートOTFTデバイスの概略的で簡略化された図が示されている。このようなOTFTデバイスは、基板(1)と、ゲート電極(5)と、ゲート絶縁体として機能する前述及び後述のポリシクロオレフィン系ポリマーを含む誘電体層(4)と、ソース及びドレイン電極(2a、2b)と、OSC層(3)と、任意選択的にパッシベーション層(6)とを含む。
【0103】
本発明による別の好適な実施形態は、たとえば
図2中に示されるようなボトムゲートOTFTデバイスの製造方法であって:
a)基板(1)の上にゲート電極(5)を形成するステップと、
b)基板(1)及びゲート電極(5)の上に、好適には有機溶液から、前述及び後述のポリシクロオレフィン系ポリマーを堆積することによって誘電体層(4)を形成するステップと、
c)誘電体層(4)の上にソース及びドレイン電極(2a、2b)を形成するステップと、
d)ソース及びドレイン電極(2a、2b)ならびに誘電体層(4)の上に、好適には有機溶液から、OSC材料を堆積することによってOSC層(3)を形成するステップと、
e)任意選択的に、OSC層(3)の上に誘電体材料を堆積することによってパッシベーション層(6)を形成するステップと、
を含む方法による、製造方法に関する。
【0104】
上記の方法では、電極(2a、2b、5)は、たとえば基板(1)又は誘電体層(4)の上にスパッタリングプロセスによって取り付けられ、エッチング及び/又はリソグラフィーパターニングによってパターニングすることができる。OSC層(3)及び誘電体層(4)は、前述のようなコーティング又は印刷プロセスによって取り付けることができる。
【0105】
基板、ならびにゲート、ソース、及びドレイン電極のような、OE及びOTFTデバイスの別の構成要素又は機能層は、標準的な材料から選択することができ、標準的な方法によって製造しデバイスに取り付けることができる。これらの構成要素及び層に適切な材料及び製造方法は、当業者には周知であり、文献に記載されている。代表的な堆積方法としては、前述の液体コーティング方法、ならびに化学蒸着(CVD)又は物理蒸着方法が挙げられる。
【0106】
一般に、機能層、たとえばゲート誘電体又はOSC層の厚さは、本発明によるいくつかの好適なOE及びOTFTデバイスの実施形態では、0.001(単層の場合)~10μmである。いくつかの別の好適な実施形態では、このような厚さは0.001~1μmの範囲であり、さらに別の好適な実施形態では5nm~500nmの範囲であるが、別の厚さ又は厚さ範囲が考慮され、したがって本発明の範囲内となる。
【0107】
本発明のOEデバイスの実施形態の製造には、種々の基板を使用することができる。たとえば、ガラス又はポリマー材料が最も多く使用される。適切で好適なポリマー材料としては、限定するものではないが、アルキド樹脂、アリルエステル、ベンゾシクロブテン、ブタジエン-スチレン、セルロース、酢酸セルロース、エポキシド、エポキシポリマー、エチレン-クロロトリフルオロエチレンコポリマー、エチレン-テトラフルオロエチレンコポリマー、ガラス繊維強化プラスチック、フルオロカーボンポリマー、ヘキサフルオロプロピレン-ビニリデン-フルオリドコポリマー、高密度ポリエチレン、パリレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアラミド、ポリジメチルシロキサン、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリケトン、ポリメチルメタクリレート、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン、ポリビニルクロリド、ポリシクロオレフィン、シリコーンゴム、及びシリコーンが挙げられ、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリシクロオレフィン、及びポリエチレンナフタレート材料が最も適切であることが分かっている。さらに、本発明のいくつかの好適な実施形態の場合、基板は、あらゆる適切な材料、たとえば、前述の材料の1つ以上で被覆されたプラスチック、金属、又はガラス材料であってよい。このような基板の形成において、押出成形、延伸、ラビング、又は光化学技術等の方法を使用して、デバイス製造のための均一表面を形成し、内部のキャリア移動度を向上させるための有機半導体材料のプリアライメントを行うことができることを理解されたい。
【0108】
一実施形態では、基板は、ポリエステル、ポリイミド、ポリアリーレート、ポリシクロオレフィン、ポリカーボネート、及びポリエーテルスルホンからなる群から選択されるポリマーのポリマーフィルムである。
【0109】
別の実施形態では、ポリエステル基板、最適にはポリエチレンテレフタレート(PET)又はポリエチレンナフタレート(PEN)、たとえばどちらもデュポンテイジンフィルム(DuPont Teijin Films)(商標)のメリネックス(Melinex)(登録商標)シリーズのPETフィルム、又はテオネックス(Teonex)(登録商標)シリーズのPENフィルムを使用することができる。
【0110】
本発明によるOTFTデバイスの実施形態におけるゲート、ソース及びドレイン電極は、スプレーコーティング、ディップコーティング、ウェブコーティング、もしくはスピンコーティングなどの液体コーティングによって、又は限定するものではないが物理蒸着(PVD)、化学蒸着(CVD)、もしくは熱蒸着方法などの真空蒸着方法によって堆積又は形成することができる。適切な電極材料及び堆積方法は、当業者には周知である。適切な電極材料としては、無機材料もしくは有機材料、又はこれら2つの複合材料が挙げられるが、これらに限定されるものではない。代表的な電極材料としては、ポリアニリン、ポリピロール、ポリ(3,4-エチレンジオキシ-チオフェン)(PEDOT)、又はドープされた共役ポリマー、さらには黒鉛、又はAu、Ag、Cu、Al、Ni、もしくはそれらの混合物などの金属粒子の分散体もしくはペースト、ならびにCu、Cr、Pt/Pd、Ag、Auなどのスパッターコーティング又は蒸着された金属、又はインジウムスズ酸化物(ITO)、FドープITO、又はAlドープZnOなどの金属酸化物が挙げられる。有機金属前駆体を使用することもでき、液相から堆積することができる。
【0111】
本発明によるOTFTの実施形態の有機半導体材料及び有機半導体層の取付方法は、標準的な材料、及び当業者に周知の方法から選択することができ、文献に記載されている。有機半導体は、n型又はp型のOSCであってよく、これはPVD、CVD、又は溶液堆積方法によって堆積することができる。有効なOSCは、1×10-5cm2V-1s-1を超える電界効果移動度を示す。
【0112】
本発明によるOSCの実施形態は、OSCが活性チャネル材料として使用されるOTFT、OSCが電荷担体材料として使用されるOPVデバイス、又はOSCがダイオードの層要素となる有機整流ダイオード(ORD)のいずれかであってよい。このような実施形態のOSCは、前述の議論の堆積方法のいずれかによって堆積することができるが、これらは一般にブランケット層として堆積又は形成されるので、スプレーコーティング、ディップコーティング、ウェブコーティング、もしくはスピンコーティングなどの溶媒コーティング方法、又はインクジェット印刷、フレキソ印刷、もしくはグラビア印刷などの印刷方法が典型的には使用され、それによって周囲温度処理が可能となる。しかし、OSCは、あらゆる液体コーティング技術、たとえばインクジェット堆積によって、又はPVDもしくはCVD技術によって堆積することができる。
【0113】
いくつかのOTFTの実施形態の場合、形成される半導体層は、2つ以上の同じ又は異なる種類の有機半導体の複合材料であってよい。たとえば、p型OSC材料をたとえばn型材料と混合して、層のドーピング効果を実現することができる。本発明のいくつかの実施形態は、多層有機半導体層が使用される。たとえば真性有機半導体層をゲート誘電体の界面付近に堆積することができ、このような真性層に隣接して高ドープ領域をさらにコーティングすることができる。
【0114】
本発明によるデバイスの実施形態に使用されるOSC材料は、あらゆる共役分子、たとえば、2つ以上、特に少なくとも3つの芳香環を有する芳香族分子であってよい。本発明のいくつかの好適なOSCの実施形態では、OSCは5員、6員、又は7員の芳香環から選択される芳香環を含有し、一方、別の好適な実施形態では、OSCは5員又は6員の芳香環から選択される芳香環を有する。OSC材料は、1つ以上のモノマー、オリゴマー、又はポリマーの混合物、分散体、及びブレンドを含む、モノマー、オリゴマー、又はポリマーであってよい。
【0115】
OSCのそれぞれの芳香環は、任意選択的に、Se、Te、P、Si、B、As、N、O、又はSから選択され、一般にN、O、又はSから選択される1つ以上のヘテロ原子を有する。さらに、芳香環は、フルオロ、シアノ、アルキル、アルコキシ、ポリアルコキシ、チオアルキル、シリル、エチニルシリル、任意選択的に置換された第2級もしくは第3級アルキルアミンもしくはアリールアミン、アリール、又は置換アリール基で任意選択的に置換されてよく、ここでエチニルシリル基は-C≡C-SiR’R’’R’’’で表され、置換第2級又は第3級アルキルアミン又はアリールアミンは-N(R’)(R’’)で表され、R’及びR’’はそれぞれ独立してH、任意選択的にフッ素化されたC1~12アルキル、又は任意選択的にフッ素化されたC6~10アリールである。
【0116】
前述の芳香環は、縮合環であってよいし、又は-C(T’)=C(T’’)-、-C≡C-、-N(R’’’’)-、-N=N-、-(R’’)C=N-、-N=C(R’’)-などの共役連結基と連結してもよく、ここでT’及びT’’はそれぞれ独立して、H、CI、F、-C≡N、又はC1~4アルキル基などの低級アルキル基を表し、R’’は前述の定義の通りである。
【0117】
本発明のいくつかの好適な電子デバイス実施形態では、使用可能なOSC材料としては、共役炭化水素ポリマー、たとえば、ポリアセン、ポリフェニレン、ポリ(フェニレンビニレン)、ポリフルオレン(これらの共役炭化水素ポリマーのオリゴマーも含まれる);縮合芳香族炭化水素、たとえば、テトラセン、クリセン、ペンタセン、ピレン、ペリレン、コロネン、又はこれらの可溶性置換誘導体;オリゴマーのパラ置換フェニレン、たとえばp-クアテルフェニル(p-4P)、p-キンクフェニル(p-5P)、p-セキシフェニル(p-6P)、又はこれらの可溶性置換誘導体;共役複素環式ポリマー、たとえばポリ(3-置換チオフェン)、ポリ(3,4-二置換チオフェン)、任意選択的に置換されたポリチエノ[2,3-b]チオフェン、任意選択的に置換されたポリチエノ[3,2-b]チオフェン、ポリ(3-置換セレノフェン)、ポリベンゾチオフェン、ポリイソチアナフテン、ポリ(N-置換ピロール)、ポリ(3-置換ピロール)、ポリ(3,4-二置換ピロール)、ポリフラン、ポリピリジン、ポリ-1,3,4-オキサジアゾール、ポリイソチアナフテン、ポリ(N-置換アニリン)、ポリ(2-置換アニリン)、ポリ(3-置換アニリン)、ポリ(2,3-二置換アニリン)、ポリアズレン、ポリピレン;ピラゾリン化合物;ポリセレノフェン;ポリベンゾフラン;ポリインドール;ポリピリダジン;ベンジジン化合物;スチルベン化合物;トリアジン類;置換メタロフリー又は無金属ポルフィン、フタロシアニン、フルオロフタロシアニン、ナフタロシアニン、又はフルオロナフタロシアニン;C60及びC70フラーレン;N,N’-ジアルキル、置換ジアルキル、ジアリール、又は置換ジアリール-1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド及びフルオロ誘導体;N,N’-ジアルキル、置換ジアルキル、ジアリール、又は置換ジアリール3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸ジイミド;バソフェナントロリン;ジフェノキノン類;1,3,4-オキサジアゾール類;11,11,12,12-テトラシアノナプト-2,6-キノジメタン;α,α’-ビス(ジチエノ[3,2-b2’,3’-d]チオフェン);2,8-ジアルキル、置換ジアルキル、ジアリール、又は置換ジアリールアントラジチオフェン;2,2’-ビベンゾ[l,2-b:4,5-b’]ジチオフェンからなる群から選択される化合物、オリゴマー、及び化合物の誘導体が挙げられる。OSCの液体堆積技術が望ましい場合、上記一覧の化合物及びそれらの誘導体は、適切な溶媒又は適切な溶媒混合物に対して可溶性であるものに限定される。
【0118】
本発明による別の好適な組成物の実施形態では、OSC材料は、ペンタセン、テトラセン又はアントラセン、又はそれらの複素環式誘導体などの置換オリゴアセン、特に、たとえば米国特許第6,690,029号明細書、国際公開第2005/055248A1号パンフレット、又は米国特許第7,385,221号明細書に開示されるようなビス(トリアルキルシリルエチニル)オリゴアセン又はビス(トリアルキルシリルエチニル)ヘテロアセン、たとえば、任意選択的にフッ素化されたビス(トリアルキルシリルエチニル)アントラジチオフェンなどのアルキルシリルエチニル基で置換されたオリゴアセンである。
【0119】
たとえば国際公開第2005/055248A1号パンフレットに記載のようにレオロジー特性の調節が適切及び必要な場合、本発明のいくつかの実施形態では、1つ以上の有機バインダーを含むOSC組成物が使用される。
【0120】
典型的にはポリマーであり、絶縁性バインダー又は半導体バインダー、又はそれらの混合物のいずれかとなりうるバインダーは、本明細書において有機バインダー、ポリマーバインダー、又は単にバインダーと記載されうる。
【0121】
本発明による好適なバインダーは、低誘電率材料であり、すなわち3.3以下の誘電率εを有する材料である。有機バインダーは好適には3.0以下、より好適には2.9以下の誘電率εを有する。好適には有機バインダーは1.7以上の誘電率εを有する。バインダーの誘電率が2.0~2.9の範囲内であることが特に好適である。なんらかの理論によって束縛しようと望むものではないが、3.3を超える誘電率εを有するバインダーを使用すると、電子デバイス、たとえばOTFT中のOSC層の移動度の低下が生じうると考えられている。さらに、高誘電率バインダーによってデバイスの電流ヒステリシスが増加することもあり、これは望ましくない。
【0122】
適切な有機バインダーの例としては、ポリスチレンが挙げられ、又はスチレン及びα-メチルスチレンのポリマーもしくはコポリマー、又はスチレン、α-メチルスチレン、及びブタジエンを含むコポリマーを適宜使用することができる。適切なバインダーのさらなる例はたとえば米国特許出願公開第2007/0102696A1号明細書に開示されている。
【0123】
ある種類の実施形態では、有機バインダーは、少なくとも95%、別の一実施形態では少なくとも98%、及び別の一実施形態ではすべての原子が水素、フッ素及び炭素の原子からなるバインダーである。
【0124】
バインダーは、好適にはフィルム、より好適には可撓性フィルムを形成可能である。
バインダーは、好適には十分低い誘電率、非常に好適には3.3以下の誘電率を有する架橋可能バインダー、たとえばアクリレート、エポキシ、ビニルエーテル、及びチオレンから選択することもできる。バインダーはメソゲン又は液晶であってもよい。
【0125】
別の一実施形態では、バインダーは、共役結合、特に共役二重結合及び/又は芳香環を有する半導体バインダーである。適切で好適なバインダーは、たとえば米国特許第6,630,566号明細書に開示されるようなポリトリアリールアミンである。
【0126】
バインダーとOSCとの比は、典型的には重量基準で20:1~1:20、好適には10:1~1:10、より好適には5:1~1:5、さらにより好適には3:1~1:3、さらに好適には2:1~1:2、特に1:1である。式Iの化合物のバインダー中への希釈は、電荷移動度に対する悪影響がほとんど又は全くないことが分かっており、従来技術で予想されていたこととは対照的である。
【0127】
さらに、本発明によるいくつかの実施形態では、OSC材料は、チオフェン-2,5-ジイル、3-置換チオフェン-2,5-ジイル、任意選択的に置換されたチエノ[2,3-b]チオフェン-2,5-ジイル、任意選択的に置換されたチエノ[3,2-b]チオフェン-2,5-ジイル、セレノフェン-2,5-ジイル、又は3-置換セレノフェン-2,5-ジイルから選択される1つ以上の繰り返し単位を含むポリマー又はコポリマーである。
【0128】
さらなるp型OSCは、電子受容体単位及び電子供与体単位を含むコポリマーである。この実施形態のコポリマーは、たとえば、前述の定義の1つ以上の基Rによって4,8-二置換される1つ以上のベンゾ[1,2-b:4,5-b’]ジチオフェン-2,5-ジイル単位を含み、グループA及びグループBから選択される1つ以上のアリール又はヘテロアリール単位をさらに含み、グループAの少なくとも1つの単位及びグループBの少なくとも1つの単位を含むコポリマーであり、グループAは電子供与特性を有するアリール又はヘテロアリール基からなり、グループBは電子受容特性を有するアリール又はヘテロアリール基からなり、グループAは、セレノフェン-2,5-ジイル、チオフェン-2,5-ジイル、チエノ[3,2-b]チオフェン-2,5-ジイル、チエノ[2,3-b]チオフェン-2,5-ジイル、セレノフェノ[3,2-b]セレノフェン-2,5-ジイル、セレノフェノ[2,3-b]セレノフェン-2,5-ジイル、セレノフェノ[3,2-b]チオフェン-2,5-ジイル、セレノフェノ[2,3-b]チオフェン-2,5-ジイル、ベンゾ[1,2-b:4,5-b’]ジチオフェン-2,6-ジイル、2,2-ジチオフェン、2,2-ジセレノフェン、ジチエノ[3,2-b:2’,3’-d]シロール-5,5-ジイル、4H-シクロペンタ[2,1-b:3,4-b’]ジチオフェン-2,6-ジイル、2,7-ジ-チエン-2-イル-カルバゾール、2,7-ジ-チエン-2-イル-フルオレン、インダセノ[1,2-b:5,6-b’]ジチオフェン-2,7-ジイル、ベンゾ[1’’,2’’:4,5;4’’,5’’:4’,5’]ビス(シロロ[3,2-b:3’,2’-b’]チオフェン)-2,7-ジイル、2,7-ジ-チエン-2-イル-インダセノ[1,2-b:5,6-b’]ジチオフェン、2,7-ジ-チエン-2-イル-ベンゾ[1’’,2’’:4,5;4’’,5’’:4’,5’]ビス(シロロ[3,2-b:3’,2’-b’]チオフェン)-2,7-ジイル、及び2,7-ジ-チエン-2-イル-フェナントロ[1,10,9,8-c,d,e,f,g]カルバゾールからなり、これらすべては、前述の定義の1つ以上、1つ又は2つの基Rで任意選択的に置換され、グループBは、ベンゾ[2,1,3]チアジアゾール-4,7-ジイル、5,6-ジアルキル-ベンゾ[2,1,3]チアジアゾール-4,7-ジイル、5,6-ジアルコキシベンゾ[2,1,3]チアジアゾール-4,7-ジイル、ベンゾ[2,1,3]セレナジアゾール-4,7-ジイル、5,6-ジアルコキシ-ベンゾ[2,1,3]セレナジアゾール-4,7-ジイル、ベンゾ[1,2,5]チアジアゾール-4,7-ジイル、ベンゾ[1,2,5]セレナジアゾール-4,7-ジイル、ベンゾ[2,1,3]オキサジアゾール-4,7-ジイル、5,6-ジアルコキシベンゾ[2,1,3]オキサジアゾール-4,7-ジイル、2H-ベンゾトリアゾール-4,7-ジイル、2,3-ジシアノ-1,4-フェニレン、2,5-ジシアノ、1,4-フェニレン、2,3-ジフルオロ-1,4-フェニレン、2,5-ジフルオロ-1,4-フェニレン、2,3,5,6-テトラフルオロ-1,4-フェニレン、3,4-ジフルオロチオフェン-2,5-ジイル、チエノ[3,4-b]ピラジン-2,5-ジイル、キノキサリン-5,8-ジイル、チエノ[3,4-b]チオフェン-4,6-ジイル、チエノ[3,4-b]チオフェン-6,4-ジイル、3,6-ピロロ[3,4-c]ピロール-1,4-ジオンからなり、これらすべては、前述の定義の1つ以上、好適には1つ又は2つの基Rで任意選択的に置換される。
【0129】
文脈で他に明確に示されるのでなければ、本明細書において使用される場合、本明細書に記載の用語の複数形は単数形を含むものと解釈すべきであり、逆の場合も同様である。
依然として本発明の範囲内となる、本発明の以上の実施形態の変形形態を作成できることを理解されたい。本明細書に開示されるそれぞれの特徴は、他の記載がなければ、同一、同等、又は同様の目的を果たす別の特徴で置き換えることができる。したがって、他の記載がなければ、開示されるそれぞれの特徴は、包括的な一連の同等又は類似の特徴の単なる一例である。
【0130】
本明細書に開示されるすべての特徴は、少なくとも一部のこのような特徴及び/又はステップが相互に排他的となる組合せを除いたあらゆる組合せで組み合わせることができる。特に、本発明の特徴は、本発明のすべての態様に適用可能であり、あらゆる組合せで使用可能である。同様に、非本質的な組合せで記載される特徴は、(組合せではなく)単独で使用することができる。
【0131】
以下の実施例を参照することによって、これより本発明をより詳細に記載するが、実施例は単に説明的なものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
以上及び以下において、他に記載がなければ、パーセント値は重量基準のパーセントであり、温度は摂氏温度(℃)の単位で示される。誘電率ε(「誘電率」又は「k」)の値は、20℃及び1,000Hzにおいて得られる値を意味する。
【実施例】
【0132】
A.モノマーの実施例
実施例A1.NBEtOパラPhPhモノマーの合成:
磁気撹拌棒を取り付けた2000mLの一口丸底フラスコに、炭酸セシウム(71.75g、220.0mmol、1.5当量)、ジメチルホルムアミド(750mL)、4-ビフェノール(25.0g、147.1mmol、1当量)、及びNBEtBr(44.3g、220.4mmol、1.5当量)を投入した。得られた濃厚反応スラリーを室温で終夜撹拌した。得られた塩基を粗いガラスフリット漏斗を用いて濾過した。濾液をアセトニトリル(1L)で希釈し、有機物を水(3×500mL)で洗浄し、小さな体積まで濃縮すると、その時点で生成物は溶液から析出した。得られた固体を濾過して、22.97g(54%)の標的材料を白色固体として得た。
【0133】
1H NMR(CD2Cl2、500MHz):7.63~7.55(4H,m)、7.48~7.43(2H,m)、7.36~7.32(1H,m)、7.03~6.98(2H,m)、6.23~6.03(2H,m)、4.15~3.98(2H,m)、2.88(1H,s)、2.84(1H,s)、3.32~2.25(1H,m)、2.03~1.91(1H,m)、1.73~1.57(2H,m)、1.49~1.25(2H,m)、0.69~0.57(1H,m)。
実施例A1a.NBEtOオルトPhPhモノマーの合成:
4-ビフェノールの代わりに2-ビフェノールを使用することを除けば実施例A1の手順に従って、表題化合物を同様に調製した。
実施例A2.NBEtPhPhモノマーの合成:
以下のようにモノマーNBEtPhPhを調製した。大型撹拌棒、サーモウェル、バルブ付きガス注入アダプターを有する冷却器、及び隔膜でキャップされた2つの適切なサイズの添加漏斗が取り付けられた適切な反応容器内にマグネシウム(35.5g、1.46mol)を入れた。窒素パージ下で、この容器を193℃まで加熱した。マグネシウムを撹拌した。容器を14℃まで冷却した。カニューレ及び真空によって500mLの無水THFを1つの添加漏斗中に入れた。500mLの無水THFが入った隔膜でキャップされた1Lのフラスコ中、窒素下で、4-ブロモビフェニル(BrPhPh、336.24g、1.44mol)を溶解させた。混合物を音波処理して、約750mLの溶液を得た。これをカニューレ及び真空によって別の添加漏斗に移した。このBrPhPh/THF溶液を上記Mgに滴下した。7分後、温度は14℃から27℃まで上昇し、混合物は還流を開始した。液面はサーモウェルの先端には到達しなかった。すぐに500mLのTHFを加えた。さらに10分後、温度は59℃まで上昇した。温度が53℃まで低下してから、BrPhPh/THF溶液の添加速度を増加させた。BrPhPh溶液の添加は2.25時間後に終了し、最高64℃の温度に到達した。反応物を60℃で5時間加熱し、溶液として表題化合物を形成した。
【0134】
機械的撹拌装置、隔膜でキャップされた添加漏斗、サーモウェル、及びバルブ付きガス注入アダプターを有する冷却器を取り付けた適切な反応容器内にCuI(4.88g、0.026mol)を入れた。窒素パージ下で撹拌しながら、この容器を183℃まで加熱した。CuIは黄色に変化した。容器を約50℃まで冷却した。CuIは白色に変化した。この容器中に500mlの無水THFを移した。カニューレ及び真空によってNBEtBr(226.5g、1.325mol)をフラスコに加えた。PhPhMgBrがカニューレ及び真空によって添加漏斗に移され、次にNBEtBr/CuI/THF混合物中に移されるときに、得られた混合物を撹拌した。得られた灰緑色溶液を67℃で終夜(19.7時間)加熱還流した。
【0135】
反応物を4℃に冷却した。500mLのNH4Cl飽和水溶液を加えると、温度が26℃まで上昇した。さらに500mlのNH4Cl飽和水溶液を加えた。全ての固形分を十分に混合するために混合物を激しく撹拌した。混合物を濾過した。フラスコ及び濾過ケーキを250mLのMTBEで洗浄した。青色の水相を緑色の有機相から分離した。水相を3×500mLのMTBEで抽出した。これらのMTBE抽出物を緑色有機相と合わせた。pHが10から7にするため、ブライン洗液が青色でなくなるまで、合わせた混合物を4×500mLのブラインで洗浄した。有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、358.2g(収率99%)まで回転蒸発させた。この材料を1リットルのフラスコに移し、クーゲルロール(Kugelrohr)蒸留器中で蒸留した。160~173℃の温度範囲で0.73~0.83Torrにおいていくつかの留分を収集した。これらの留分を合わせて208.7g(収率56%)の96.9~98.9%(GC分析)の純度の材料を得た。1H NMR(CDCl3):δ7.20~7.65(芳香族共鳴)、6.00~6.21(オレフィン共鳴)、0.06~2.90(脂肪族共鳴)。オレフィン共鳴に基づくと、endo異性体及びexo異性体の比は81:19である。
実施例A3
たとえば米国特許出願公開第2012/0056183A1号明細書、又はこれと類似のものの文献に記載されるようにして、モノマーのヘキシルNB及びNBEtPhDMMIを調製した。
B.ポリマーの実施例
B-I.比較例
比較例BC1.ホモポリマーpヘキシルNB:
実施例BC3と同様にヘキシルNBのホモポリマーを調製した。
比較例BC2.ポリマーブレンドpヘキシルNB:PVTMS 70:30:
ドデカン中pヘキシルNB:PVTMS(ポリ(ビニルトルエン-コ-α-メチルスチレン))が70:30の組成を有するポリマーブレンドを、12重量%の濃度で重量基準で上記比のポリマーを配合することによって調製した(たとえば配合物10g中、両方のポリマーの全重量は1.2gである)。
【0136】
【化13】
比較例BC3.コポリマーのpヘキシルNB/NBEtPhDMMI 90/10:
250mLのクリンプキャップバイアルにヘキシルNB(12.52g、70.2mmol)及びNBEtPhDMMI(2.52g、7.8mmol)を加え、続いてトルエン(32.8g)及び酢酸エチル(9.01g)で希釈した。バイアルを隔膜で封止し、次にN
2を30分間スパージし、60℃まで加熱した。温度に到達してから、触媒溶液(グローブボックス中で調製:トルエン(3.26g)中の(η
6-トルエン)Ni(C
6F
5)
2(0.378g、0.78mmol))を加えた。反応混合物は終夜撹拌することができる。
【0137】
触媒残留物を除去した後、撹拌される2Lのメタノールに加えることによってポリマーを沈殿させることで、ポリマーを沈殿させた。沈殿した固体を濾過し、真空下50℃で終夜乾燥させると、11.3g(収率75%)の標的ポリマーが白色粉末固体(Mw:69,700、Mw/Mn:2.7)として得られ、90/10のヘキシルNB/NBEtPhDMMIの組成(NMR分析によって決定)を有した。
比較例BC4.コポリマーのpヘキシルNB/NBEtPhDMMI 78/22:
100mLのクリンプキャップバイアルにヘキシルNB(4.95g、27.7mmol)及びNBEtPhDMMI(2.97g、9.3mmol)を加え、続いてトルエン(17.5g)及び酢酸エチル(4.75g)で希釈した。バイアルを隔膜で封止し、次にN2を30分間スパージし、60℃まで加熱した。温度に到達してから、触媒溶液(グローブボックス中で調製:トルエン(1.55g)中の(η6-トルエン)Ni(C6F5)2(0.179g、0.37mmol))を加えた。反応物は終夜撹拌することができる。
【0138】
触媒残留物を除去した後、撹拌される2Lのメタノールに加えることによってポリマーを沈殿させることで、ポリマーを沈殿させた。沈殿した固体を濾過し、真空下50℃で終夜乾燥させると、6.7g(収率85%)の標的ポリマーが白色粉末固体(Mw:88,100、Mw/Mn:3.1)として得られ、78/22のヘキシルNB/NBEtPhDMMIの組成(NMR分析によって決定)を有した。
B-II.実施例
実施例B1.コポリマーのpヘキシルNB/exo-NBPhPh 91/9:
250mLのクリンプキャップバイアルにヘキシルNB(13.01g、72.9mmol)及びexo-NBPhPh(2.00g、8.1mmol)を加え、続いてトルエン(104.7g)及び酢酸エチル(27.02g)で希釈した。反応器を隔膜で封止し、次にN2を30分間スパージし、70℃に加熱した。温度に到達してから、触媒溶液(グローブボックス中で調製:トルエン(3.39g)中の(η6-トルエン)Ni(C6F5)2(0.393g、0.81mmol))を加えた。反応物は終夜撹拌することができる。
【0139】
触媒残留物を除去した後、撹拌される2Lのメタノールに加えることによってポリマーを沈殿させることで、ポリマーを沈殿させた。沈殿した固体を濾過し、真空下50℃で終夜乾燥させると、11.9g(収率79%)の標的ポリマーが白色粉末固体(Mw:74,100、Mw/Mn:2.9)として得られ、91/9のヘキシルNB/exo-NBPhPhの組成(NMR分析によって決定)を有した。
実施例B2.コポリマーのpヘキシルNB/NBEtOパラPhPh 90/10:
250mLのクリンプキャップバイアルにヘキシルNB(25.68g、144.0mmol)及びNBEtOパラPhPh(4.65g、16.0mmol)を加え、続いてトルエン(66.09g)及び酢酸エチル(18.19g)で希釈した。反応器を隔膜で封止し、次にN2を30分間スパージした。触媒溶液(グローブボックス中で調製:トルエン(6.68g)中の(η6-トルエン)Ni(C6F5)2(0.776g、1.6mmol))を1回で注入した。反応物は終夜撹拌することができる。
【0140】
触媒残留物を除去した後、撹拌される2Lのメタノールに加えることによってポリマーを沈殿させることで、ポリマーを沈殿させた。沈殿した固体を濾過し、真空下50℃で終夜乾燥させると、27.1g(収率89%)の標的ポリマーが白色粉末固体(Mw:159,000、Mw/Mn:3.7)として得られ、90/10のヘキシルNB/NBEtOパラPhPhの組成(NMR分析によって決定)を有した。
実施例B2a.コポリマーのpヘキシルNB/NBEtOオルトPhPh 90/10:
60mLのクリンプキャップバイアルにヘキシルNB(2.57g、14.4mmol)及びNBEtOオルトPhPh(0.46g、1.6mmol)を加え、続いてトルエン(6.6g)及び酢酸エチル(1.8g)で希釈した。反応器を隔膜で封止し、次にN2を30分間スパージした。触媒溶液(グローブボックス中で調製:トルエン(1g)中の(η6-トルエン)Ni(C6F5)2(0.078g、0.16mmol))を1回で注入した。反応物を終夜撹拌した。
【0141】
触媒残留物を除去した後、撹拌される0.5Lのメタノールに加えることによってポリマーを沈殿させることで、ポリマーを沈殿させた。沈殿した固体を濾過し、真空下50℃で終夜乾燥させると、2.78g(収率92%)の標的ポリマーが白色粉末固体(Mw:203,000 Mw/Mn:3.8)として得られ、90/10のヘキシルNB/NBEtOオルトPhPhの組成(NMR分析によって決定)を有した。
実施例B3.コポリマーのpヘキシルNB/NBEtPhPh 90/10:
90/10のヘキシルNB/NBEtPhPhの組成を有する標的ポリマーを実施例B5と同様に調製した。
実施例B4.コポリマーのpヘキシルNB/NBEtPhPh 70/30:
70/30のヘキシルNB/NBEtPhPhの組成を有する標的ポリマーを実施例B5と同様に調製した。
実施例B5.コポリマーのpヘキシルNB/NBEtPhPh 89/11:
250mLのクリンプキャップバイアルにヘキシルNB(12.81g、71.8mmol)及びNBEtPhPh(2.19g、7.9mmol)を加え、続いてトルエン(32.65g)及び酢酸エチル(9.00g)で希釈した。反応器を隔膜で封止し、次にN2を30分間スパージした。触媒溶液(グローブボックス中で調製:トルエン(3.33g)中の(η6-トルエン)Ni(C6F5)2(0.387g、0.79mmol))を加えた。反応物は終夜撹拌することができる。
【0142】
触媒残留物を除去した後、撹拌される2Lのメタノールに加えることによってポリマーを沈殿させることで、ポリマーを沈殿させた。沈殿した固体を濾過し、真空下50℃で終夜乾燥させると、14.0g(収率93%)の標的ポリマーが白色粉末固体(Mw:155,000、Mw/Mn:3.5)として得られ、89/11のヘキシルNB/NBEtPhPhの組成(NMR分析によって決定)を有した。
C.デバイスの実施例
実施例C1.OD測定
適切な溶媒中で対象のポリマー溶液を調製し、スピンコーティングによって石英ガラス上に薄膜をコーティングして、600nm~1200nmの間の厚さの膜を得た。次にUV-vis分光計上で吸光度スペクトルを記録し、対象の波長(266nm)におけるOD値を計算した。以下の表1に結果を示している。
【0143】
【表1】
図3は、表1のすべてのポリマーの吸収プロファイルを示している。
図4は、比較例BC1の基準のポリマーpヘキシルNBと比較される実施例B1、B2、B3、及びB4のポリマーの吸収プロファイルを示している。
図5は、基準のポリマーBC1及びポリマーブレンドBC2と比較される本発明によるポリマーB3及びB4の吸収プロファイルを示している。
【0144】
表1及び
図3~5から分かるように、基準のポリマー及びポリマーブレンドBC1~BC4は、吸光度を示さないか、又は不十分な吸光度を示すのみであり、したがってレーザーアブレーションプロセスの促進には適していない。これは、混入されたクロモフォアのすべてで対象の波長において同等の吸収の改善が得られるとは限らないことを示している、これはちょうど個別のクロモフォアの性質によって説明することができる。たとえば、DMMI部分ははるかに短い波長でそのピーク吸収を有し、したがって266nmにおける全体的な寄与は非常に少ないと予想され、これとは対照的に、ビフェニル(PhPh)基は255nm付近にそのピーク吸収を示し、したがって意図する用途に適切な置換基として機能することができる。
実施例C2.OTFTデバイス
ポリマーのOTFT性能を評価するために、OSCポリマーのリシコン(lisicon)(登録商標)SP400(メルクGmbH(Merck GmbH)より入手)を用いて、
図1に代表的に示されるような標準的なトップゲートボトムコンタクトOFETデバイス中のゲート誘電体材料としてこれらを使用した。他に記載がなければ、デバイスの製造は、たとえば米国特許出願公開第2012/0056183A1号明細書に記載のように行った。
【0145】
これらのTFT中の電荷移動度を計算できるようにするため、OTFTデバイスの製造前に誘電率(k値)を測定した。形成されたキャパシタデバイス中の個別の誘電体の測定キャパシタンスから誘電率を求めた。キャパシタデバイスは、ITOが被覆されたガラス上に誘電体をスピンコーティングし、次に第2の電極、この場合は銀を堆積することによって作製した。次にキャパシタ性能を測定した。結果を以下の表2に示している。
【0146】
【表2】
表2より、ヘテロ原子を有する部分のポリマー中への混入(DMMI中のN原子又はNBEtOPhPh中のO原子など)は、C-H系クロモフォア(Phなど)によるより広範な置換よりも誘電率に対して強い影響を有することが分かる。したがって、NBEtPhPhのようなヘテロ原子を有さない部分は、低誘電率値が好適な場合のシステムに特に適切であり、誘電率が高いと電荷担体移動性能の望ましくない低下が生じることがある。
【0147】
上記材料を誘電体層として用いて、トップゲート(TG)デバイスを製造するために、表3にまとめたような一連の溶液を配合し、次に特定のスピン速度でOSC層の上にスピンコーティングし、次にすべてのデバイスを100℃で2分間アニールした。誘電体としてpヘキシルNBを用いて基準のOTFTを製造した。
【0148】
【表3】
アジレント(Agilent)プローブステーションを用いてデバイス性能を記録した。
図6~13は、それぞれ実施例BC1~BC4及びB1~B4のポリマーブレンド又はポリマーをゲート誘電体として使用し、ポリマーSP400を半導体(50μmのチャネル長さ)として使用したOTTデバイスのTG OTFTデバイス性能を示している。
【0149】
図6は、266nmにおいて実質的に吸光度を有さない実施例BC1のpヘキシルNBを誘電体として含むデバイスを示している。したがってこれは基準として使用され、UV吸収性クロモフォアをペンダント鎖として有するモノマーとの共重合によって生じる性能の変化を示すために使用される。
【0150】
図7~9は、それぞれ比較例BC2のポリマーブレンド、ならびに比較例BC3及びBC4のポリマーを用いて得られたTG性能を示している。
図10~13は、それぞれ実施例B1、B2、B3、及びB4のポリマーを用いて得られたTG性能を示している。
図6の基準デバイスと比較すると、コポリマー中のDMMI成分の比が増加すると顕著な電荷担体移動度の低下が確認され(
図7及び
図8)、これはバルク誘電率値の関連する増加によるものである。ペンダント鎖の置換によってエーテル部分が導入される場合に同様の誘電率増加の傾向が確認された(
図11)。しかし、電荷担体移動度及び他のデバイス性能特性は、誘電率値に単独では依存せず、一方、コモノマーの化学的性質の全体的寄与はより大きくなる。
【0151】
上記データは、本発明によるポリマーを使用すると、UV吸光度が増加し、それによってレーザーアブレーションプロセスにより好適となるが、OTFTデバイス性能に対する悪影響はないことを示している。
【0152】
比較例BC2は、別のUV吸収性ポリマー(PVTMSなど)とのブレンドは、ODの顕著な増加を示さないが、誘電率値が増加する傾向があることを示している。
比較例BC3及びBC4は、ポリマー中にヘテロ原子部分を導入することで(DMMI単位又はエーテル官能性など)、ODの十分な増加が得られない場合があるが、誘電率値の望ましくない増加が生じることがあり、したがって、OTFT中の電荷担体移動度が低下しうることを示している(
図8及び9参照)。さらに、これらは、より多くのヘテロ原子クロモフォアによって、一般に使用される溶媒に対する溶解性に悪影響が生じうることを示している。たとえばポリマーのpヘキシルNB/NBEtPhDMMI 78/22は、許容できる溶解性を実現するために溶媒混合物が必要となる。
【0153】
実施例B1~B4は、UV吸収の顕著な増加を、低誘電率の維持、対象の溶媒に対する優れた溶解性、及び良好なデバイス性能特性とともに実現できることを示している。