(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-10
(45)【発行日】2022-08-19
(54)【発明の名称】PTPシート製造装置
(51)【国際特許分類】
B65B 9/04 20060101AFI20220812BHJP
B65B 51/10 20060101ALI20220812BHJP
B65B 51/16 20060101ALI20220812BHJP
【FI】
B65B9/04
B65B51/10 A
B65B51/16 100
(21)【出願番号】P 2019136888
(22)【出願日】2019-07-25
【審査請求日】2021-03-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000106760
【氏名又は名称】CKD株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111095
【氏名又は名称】川口 光男
(72)【発明者】
【氏名】岡部 智広
(72)【発明者】
【氏名】鴻谷 英志
【審査官】吉澤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-020774(JP,A)
【文献】特開平01-244824(JP,A)
【文献】特開2018-065581(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 9/04
B65B 51/10
B65B 51/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の容器フィルムに対し内容物を収容するためのポケット部を形成するポケット部形成手段と、
前記ポケット部に前記内容物を充填する充填手段と、
前記ポケット部に前記内容物が充填された前記容器フィルムに対し、前記ポケット部を塞ぐようにして帯状のカバーフィルムを取着するシール手段と、
前記容器フィルムに前記カバーフィルムが取着された帯状のPTPフィルムからPTPシートを切離す切離手段とを備えたPTPシート製造装置において、
前記切離手段は、
前記PTPシートのシート長手方向が前記PTPフィルムのフィルム幅方向に沿うように、かつ、前記PTPシートのシート短手方向が前記PTPフィルムのフィルム長手方向に沿うように、前記PTPフィルムから前記PTPシートを切離すよう構成され、
前記シール手段は、
前記容器フィルムのポケット部を収容可能なポケット受け凹部を有し、該ポケット受け凹部により前記ポケット部を引っ掛けつつ自身の回転により前記容器フィルムを搬送可能なフィルム受けロールと、
該フィルム受けロールに圧接可能な加熱用のシールロールとを備え、
該両ロール間に前記両フィルムを送り込み加熱押圧することにより、前記容器フィルムに対し前記カバーフィルムを取着する構成であって、
前記フィルム受けロールは、
その外周面において、その周方向に所定間隔で設けられた複数のフィルム受け面を有した略多角柱形状をなし、前記各フィルム受け面において前記ポケット受け凹部を有したものであり、
前記各フィルム受け面は、
前記フィルム受けロールの回転軸心に直交する断面において、前記フィルム受けロールの径方向外側に向け凸となる断面略円弧状に形成された湾曲面となっていることを特徴とするPTPシート製造装置。
【請求項2】
前記フィルム受け面の曲率半径が、前記フィルム受けロールの外接円の半径より大きく、かつ、前記外接円の半径の3倍より小さく設定されていることを特徴とする請求項1に記載のPTPシート製造装置。
【請求項3】
前記フィルム受けロールの周方向における前記各フィルム受け面の長さが、前記PTPフィルムの長手方向における前記PTPシートのシート形成ピッチの1ピッチ分に相当する長さに設定され、
前記各フィルム受け面には、前記PTPシートのポケット部に対応して、少なくとも前記フィルム受けロールの周方向における位置が異なる複数位置に前記ポケット受け凹部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のPTPシート製造装置。
【請求項4】
少なくとも前記シール手段よりも下流側において、
前記PTPフィルムのポケット部を収容可能なポケット受け凹部を有し、該ポケット受け凹部により前記ポケット部を引っ掛けつつ自身の回転により前記PTPフィルムを搬送可能な複数の送りロールを備え、
前記複数の送りロールのうちの少なくとも1つは、
その外周面において、その周方向に所定間隔で設けられた複数のフィルム受け面を有した略多角柱形状をなし、前記各フィルム受け面において前記ポケット受け凹部を有したものであり、
前記各フィルム受け面は、
前記送りロールの回転軸心に直交する断面において、前記送りロールの径方向外側に向け凸となる断面略円弧状に形成された湾曲面となっていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のPTPシート製造装置。
【請求項5】
前記容器フィルム及び前記カバーフィルムがアルミニウムを主材料として形成されたものであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のPTPシート製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錠剤等の内容物を収容するPTPシートを製造するためのPTPシート製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、錠剤等の内容物を収容するPTPシートは、内容物が充填されるポケット部が形成された容器フィルムと、その容器フィルムに対しポケット部の開口側を密封するように取着されるカバーフィルムとから構成されている。
【0003】
かかるPTPシートは、帯状の容器フィルムを搬送させつつ、ポケット部を形成するポケット部形成工程、該ポケット部に錠剤等を充填する充填工程、該ポケット部の開口側を密封するように容器フィルムに対しカバーフィルムを取着するシール工程、該両フィルムが取着されてなるPTPフィルムをシート単位に打抜く打抜工程等を経て製造される。
【0004】
そして、上記各種工程を経て製造されたPTPシートは、集積工程において複数積み重ねられた後、ピロー包装やバンド結束等を行う包装工程へと送られる。尚、集積工程においては、例えばポケット部を有する面が互いに向き合うように、PTPシートを2枚1組の抱き合わせ状態とした上で所定組数(例えば5組10枚)ずつ積み重ねる方式や、PTPシートを同じ向きで所定枚数(例えば5枚)ずつ積み重ねる方式で集積作業が行われる。
【0005】
さて、上記シール工程においては、容器フィルムを搬送するフィルム受けロールと、該フィルム受けロールに対し圧接するシールロールとの間を、容器フィルム及びカバーフィルムが加熱押圧された状態で通過することで、容器フィルムに対しカバーフィルムがシール(溶着)され、ポケット部が塞がれることとなる。
【0006】
ここで、上記フィルム受けロールの外周面には、容器フィルムのポケット部に対応したポケット受け凹部が多数形成されており、容器フィルムは、自身のポケット部が前記ポケット受け凹部に嵌り込むようにしてフィルム受けロールに掛装されている。この状態で、フィルム受けロールが回転することで、ポケット受け凹部によりポケット部が引っ掛けられるようにして、容器フィルムが搬送される。
【0007】
しかしながら、
図7(a)に示すような従来の円柱形状のフィルム受けロール91では、例えばフィルム受けロール91の径に対し容器フィルム93のポケット部95を比較的大きく設計した場合など、構成によっては、容器フィルム93をフィルム受けロール91に掛装した際に、
図7(b)に示すように、該容器フィルム93がフィルム受けロール91の外周面の円弧形状に沿って適切に湾曲せず、フィルム一般部がフィルム受けロール91の外周面から浮き上がる、折れ曲がる等するおそれがあった。
【0008】
この状態で、シールロール98が押付けられると、ポケット部95の潰れ、ポケット部95間でのフィルム一般部の折れ曲がり、取着したカバーフィルム97にシワがよるなど、種々の不具合が発生するおそれがある。結果として、従来の円柱形状のフィルム受けロールでは、製品不良の発生が増加するおそれがあった。
【0009】
ここで、ポケット部の大型化等に合せて、円柱形状のフィルム受けロールの径を大きくすることで、上記種々の不具合の発生を抑制することも考えられるが、フィルム受けロールの径を大きくした場合には、装置が大型化するおそれがある。
【0010】
これに鑑み、近年では、フィルム受けロールとして、その径を大きくすることなく、その外周面においてその径方向と直交する複数の平坦面を有しかつ各平坦面にポケット受け凹部を設けた多角柱形状のものを採用したPTPシート製造装置なども見受けられる(例えば、特許文献1参照)。これにより、容器フィルム及びカバーフィルムを平坦な状態で取着でき、上述した種々の不具合の発生を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
通常、シール工程において容器フィルム及びカバーフィルムを加熱押圧しシール(溶着)することで、両フィルムには熱収縮率の差などに起因した歪みが内包されるため、特段の対策を施さない限りは、PTPフィルムから打抜かれた後のPTPシートにカール(反り)が発生する。
【0013】
そのため、上記特許文献1のように、容器フィルム及びカバーフィルムを平坦な状態で取着した場合には、PTPシート毎にカールする向きや方向が定まらず、形状が不規則となるおそれがある。
【0014】
例えば
図8に示すように、シート短手方向に沿ってカバーフィルム側にカールしたPTPシート101〔
図8(a)参照〕や、シート長手方向に沿って容器フィルム側にカールしたPTPシート102〔
図8(b)参照〕、対角線方向に沿って斜めにカールし捻れが生じたPTPシート103〔
図8(c)参照〕など、形状が異なる様々なPTPシートが製造されてしまうおそれがある。
【0015】
このように形状が異なるPTPシートが製造されてしまうと、不良品の発生が増加するのは勿論のこと、例えば集積工程において複数のPTPシートを適切に積み重ねることが困難になるなど、その後の工程に支障をきたし、生産性が低下するおそれもある。
【0016】
一方、安定して同一形状のPTPシートが製造される場合であっても、その形状が、上述したPTPシート101,102,103のような形状であった場合には、PTPシートを2枚1組の抱き合わせ状態とすることが困難となるおそれがある。
【0017】
例えば上記PTPシート102〔
図8(b)参照〕のように、シート長手方向にカールが発生した場合には、同程度の曲率でシート短手方向にカールが発生した場合〔
図1(a),(b)等参照〕よりも、そのカール量(シート高さ方向におけるフィルム一般部の下端部から上端部までの距離)Cyが大きくなりやすい。
【0018】
そのため、シート長手方向にカールした2枚のPTPシートを集積工程において抱き合わせ状態とする場合には、ポケット部同士が係合し難くなり、抱き合わせ状態とすることが困難となるおそれがある。
【0019】
勿論、上記PTPシート101〔
図8(a)参照〕のように、カバーフィルム側にカールが発生した場合や、上記PTPシート103〔
図8(c)参照〕のように、斜めにカールし捻れが生じた場合においても、2枚のPTPシートを抱き合わせ状態とすることは困難となる。
【0020】
また、シール工程において、例えば円柱形状のフィルム受けロールを用いると共に、シート打抜工程において、PTPフィルムのフィルム長手方向にPTPシートのシート長手方向が沿った打抜きレイアウトとし、シート長手方向にカールしたPTPシートを製造する場合には、PTPフィルムのフィルム長手方向にPTPシートのシート短手方向が沿った打抜きレイアウトとし、シート短手方向にカールしたPTPシートを製造する場合に比べて、フィルム受けロールの径が同じであれば、必然的にカール量が大きくなりやすい。
【0021】
つまり、シート長手方向にカールしたPTPシートのカール量を、シート短手方向にカールしたPTPシートのカール量と同程度にするためには、フィルム受けロールとして、より径の大きなものを用いる必要があり、装置が大型化するおそれがある。
【0022】
本発明は、上記事情等に鑑みてなされたものであり、その目的は、PTPシートを製造するにあたり、装置の大型化を抑制すると共に、生産性の低下を抑制することのできるPTPシート製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
以下、上記課題を解決するのに適した各手段につき項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0024】
手段1.帯状の容器フィルムに対し内容物を収容するためのポケット部を形成するポケット部形成手段と、
前記ポケット部に前記内容物を充填する充填手段と、
前記ポケット部に前記内容物が充填された前記容器フィルムに対し、前記ポケット部を塞ぐようにして帯状のカバーフィルムを取着するシール手段と、
前記容器フィルムに前記カバーフィルムが取着された帯状のPTPフィルムからPTPシートを切離す切離手段(シート単位に打抜く打抜手段を含む)とを備えたPTPシート製造装置において、
前記切離手段は、
前記PTPシートのシート長手方向が前記PTPフィルムのフィルム幅方向に沿うように、かつ、前記PTPシートのシート短手方向が前記PTPフィルムのフィルム長手方向に沿うように、前記PTPフィルムから前記PTPシートを切離すよう構成され、
前記シール手段は、
前記容器フィルムのポケット部を収容可能なポケット受け凹部を有し、該ポケット受け凹部により前記ポケット部を引っ掛けつつ自身の回転により前記容器フィルムを搬送可能なフィルム受けロールと、
該フィルム受けロールに圧接可能な加熱用のシールロールとを備え、
該両ロール間に前記両フィルムを送り込み加熱押圧することにより、前記容器フィルムに対し前記カバーフィルムを取着する構成であって、
前記フィルム受けロールは、
その外周面において、その周方向に所定間隔で設けられた複数のフィルム受け面を有した略多角柱形状をなし、前記各フィルム受け面において前記ポケット受け凹部を有したものであり、
前記各フィルム受け面は、
前記フィルム受けロールの回転軸心に直交する断面において、前記フィルム受けロールの径方向外側に向け凸となる断面略円弧状に形成された湾曲面となっていることを特徴とするPTPシート製造装置。
【0025】
尚、上記「略多角柱形状」には、フィルム受けロールの外周面における複数の角部(隣接する2つのフィルム受け面の境界部)が尖った多角柱形状のみならず、角部が丸みを帯びたもの等も含まれる。
【0026】
上記手段1によれば、帯状の容器フィルムに対しポケット部形成手段によってポケット部が形成され、該ポケット部に対し充填手段によって内容物が収容された後、シール手段によって容器フィルムに対しポケット部を塞ぐように帯状のカバーフィルムが取着される。
【0027】
ここで、シール手段は、ポケット部を収容可能なポケット受け凹部を有したフィルム受けロールと、加熱用のシールロールとを具備している。そして、帯状の容器フィルム及び帯状のカバーフィルムが、シール手段(両ロール間)に対し、そのフィルム幅方向がフィルム受けロールの回転軸心方向に沿うように、かつ、そのフィルム長手方向がフィルム受けロールの周方向に沿うように導かれ、ここで加熱押圧されることにより取着され、帯状のPTPフィルムが製造される。
【0028】
特に、本手段に係るフィルム受けロールは、従来のような円柱形状ではなく、その外周面において、その周方向に所定間隔で設けられた複数のフィルム受け面を有した略多角柱形状をなし、各フィルム受け面においてポケット受け凹部を有した構成となっている。
【0029】
加えて、各フィルム受け面は、フィルム受けロールの回転軸心に直交する断面において、フィルム受けロールの径方向外側に向け凸となる断面略円弧状に形成された湾曲面となっている。
【0030】
つまり、フィルム受けロールは、その回転軸心に直交する断面形状が略多角形状をなし、その外接円の半径、すなわちフィルム受けロールの最大半径(回転軸心から外周面の各角部までの距離)よりも、各フィルム受け面の曲率半径が大きくなるように構成されている。
【0031】
従って、本手段に係るフィルム受けロールの各フィルム受け面は、前記外接円と同一径の円柱形状のフィルム受けロールの外周面(フィルム受け面)よりも緩やかな円弧状の湾曲面となる。
【0032】
これにより、本手段に係るフィルム受けロールは、上記特許文献1に係るフィルム受けロールと同様、従来の円柱形状のフィルム受けロールと比較して、容器フィルムのポケット部及びその周囲のフィルム一般部に無理な曲げ応力等がかかりにくく、容器フィルムを適正に掛装しやすくなり、容器フィルムの浮き上がり等が発生しにくくなる。
【0033】
結果として、フィルム一般部をより平坦に近い状態でシールでき、ポケット部の潰れやフィルム一般部の折れ曲がり、取着したカバーフィルムにシワがよるなどの種々の不具合の発生を抑制することができる。
【0034】
また、上記構成に加えて、本手段では、切離手段において、PTPシートが、そのシート長手方向がPTPフィルムのフィルム幅方向に沿うように、かつ、そのシート短手方向がPTPフィルムのフィルム長手方向に沿うように、PTPフィルムから切離されるように構成されている。
【0035】
その結果、シート短手方向に沿って容器フィルム側に緩やかにカールしたPTPシートを製造することできる。
【0036】
これにより、本手段によれば、上記特許文献1のように、容器フィルムに対しカバーフィルムを平坦な状態でシールする構成に比べて、PTPシート毎にカールする向きや方向にばらつきが生じ、形状が異なる様々なPTPシートが製造されてしまうといった不具合の発生を抑制することができる。
【0037】
具体的には、カバーフィルム側にカールしたPTPシートや、シート長手方向に沿って容器フィルム側にカールしたPTPシート、対角線方向に沿って斜めにカールし捻れが生じたPTPシートなどが製造されてしまうおそれを低減することができる。
【0038】
結果として、不良品の発生を抑制することができる。ひいては、集積工程における複数のPTPシートの積み重ね(例えばPTPシートを2枚1組の抱き合わせ状態とする等)など、その後の工程に支障が生じにくくなり、生産性の低下抑制を図ることができる。
【0039】
さらに、より径の大きいフィルム受けロールを用いる必要もなく、装置の大型化を抑制することができる。
【0040】
尚、上記特許文献1に係るフィルム受けロールのように、その外周面において複数の平坦面を有する多角柱形状のフィルム受けロールにおいては、容器フィルムの剛性やポケット部の配置などによって、掛装される容器フィルムをフィルム受けロールの平坦面全体に均一に密着させることができず、一部が浮き上がる等の不具合が生じやすくなることが懸念される。
【0041】
この状態で、シールロールが押付けられ、容器フィルムに対しカバーフィルムがシールされた場合には、その歪みも加わり、上記「発明が解決しようとする課題」で述べた、PTPシートに発生するカールの向きや方向が予測不能となる等の不具合がより顕著になるおそれがある。
【0042】
この点、本手段に係るフィルム受けロールによれば、フィルム受け面が緩やかな円弧状の湾曲面となっていることで、上記特許文献1に係るフィルム受けロールに比べ、容器フィルムの浮き上がり等を抑制することができ、容器フィルムがフィルム受けロールのフィルム受け面全体により均一に密着した状態でシールを行うことが可能となる。結果として、上記不具合の発生を抑制することができる。
【0043】
手段2.前記フィルム受け面の曲率半径が、前記フィルム受けロールの外接円の半径(半径の1倍)より大きく、かつ、前記外接円の半径の3倍より小さく設定されていることを特徴とする手段1に記載のPTPシート製造装置。
【0044】
フィルム受け面の曲率半径がフィルム受けロールの外接円の半径の3倍よりも大きく設定されている場合のように、フィルム受け面の曲率半径が大きくなり過ぎて、より平坦面に近い状態になってしまうと、上記特許文献1に係るフィルム受けロールと同様に、上記「発明が解決しようとする課題」等で述べた不具合が発生しやすくなるおそれがある。
【0045】
これに対し、上記手段2によれば、上記不具合の発生を抑制し、上記手段1の作用効果がより確実に奏されることとなる。
【0046】
手段3.前記フィルム受けロールの周方向における前記各フィルム受け面の長さが、前記PTPフィルムの長手方向における前記PTPシートのシート形成ピッチの1ピッチ分に相当する長さに設定され、
前記各フィルム受け面には、前記PTPシートのポケット部に対応して、少なくとも前記フィルム受けロールの周方向における位置が異なる複数位置に前記ポケット受け凹部が形成されていることを特徴とする手段1又は2に記載のPTPシート製造装置。
【0047】
上記手段3によれば、フィルム受けロールの各フィルム受け面がPTPシートの1シート分に相当する範囲で形成されているため、PTPシートの全域を1つのフィルム受け面でシールすることができ、上記手段1等の作用効果をPTPシート単位でより確実なものとすることができる。
【0048】
加えて、1枚のPTPシート内において、少なくともシート短手方向に位置が異なる複数のポケット部間におけるフィルム一般部の折れ曲がり等の不具合が発生するおそれを低減することができる。
【0049】
手段4.少なくとも前記シール手段よりも下流側において、
前記PTPフィルムのポケット部を収容可能なポケット受け凹部を有し、該ポケット受け凹部により前記ポケット部を引っ掛けつつ自身の回転により前記PTPフィルムを搬送可能な複数の送りロールを備え、
前記複数の送りロールのうちの少なくとも1つは、
その外周面において、その周方向に所定間隔で設けられた複数のフィルム受け面を有した略多角柱形状をなし、前記各フィルム受け面において前記ポケット受け凹部を有したものであり、
前記各フィルム受け面は、
前記送りロールの回転軸心に直交する断面において、前記送りロールの径方向外側に向け凸となる断面略円弧状に形成された湾曲面となっていることを特徴とする手段1乃至3のいずれかに記載のPTPシート製造装置。
【0050】
一般に、PTPシートの製造過程においては、PTPフィルムを搬送するべく複数箇所において送りロールが設けられる。該送りロールの外周面には、上記フィルム受けロールと同様、PTPフィルムのポケット部に対応したポケット受け凹部が多数形成されており、PTPフィルムは、自身のポケット部が前記ポケット受け凹部に嵌り込むようにして送りロールに掛装されている。この状態で、送りロールが回転することで、ポケット受け凹部によりポケット部が引っ掛けられるようにして、PTPフィルムが搬送される。
【0051】
ここで、仮にシール手段よりも下流側において、上記フィルム受けロールの外接円の半径(フィルム受けロールの最大半径)と同一径の円柱形状の送りロールを用いた場合には、上記シール手段により適切なカール癖付けが行われたPTPフィルムに対し、さらに大きな曲率のカール癖付けが行われてしまい、完成されたPTPシートのカール量が適正量よりも大きくなってしまうおそれがある。ここで、円柱形状の送りロールの径を大きくした場合には、装置が大型化するおそれがある。
【0052】
一方、シール手段よりも下流側における送りロールとして、上記特許文献1に係るフィルム受けロールのように、その外周面において複数の平坦面を有する多角柱形状のフィルム受けロールを用いた場合には、上記シール手段により癖付けされたPTPフィルムのカールが平坦面において矯正されてしまい、完成されたPTPシートのカール量が適正量よりも小さくなってしまうおそれがある。
【0053】
これに対し、上記手段4によれば、シール手段においてカール癖付けされた後、送りロールを通過するPTPフィルムに対し、フィルム受けロールと同等の曲率でカール癖付けを行うことができる。結果として、適切な癖付けを維持することができ、上記不具合の発生を抑制することができる。ひいては、上記手段1等の作用効果がより確実に奏されることとなる。
【0054】
手段5.前記容器フィルム及び前記カバーフィルムがアルミニウムを主材料として形成されたものであることを特徴とする手段1乃至4のいずれかに記載のPTPシート製造装置。
【0055】
ここで、「アルミニウムを主材料として形成されている」とは、アルミニウム単体で形成されている場合は勿論のこと、樹脂フィルム層が介在されたアルミラミネートフィルム等をも含む趣旨である。
【0056】
従来、PTPシートは、容器フィルムがポリプロピレン(PP)やポリ塩化ビニル(PVC)等の樹脂材料により形成され、カバーフィルムがアルミニウム等の金属材料により形成されていたが、近年では、遮光性や防湿性等の向上を図るといった観点から、容器フィルムまでもアルミニウム等により形成したものも見受けられる。
【0057】
アルミニウム等は、樹脂材料と比較して加工性(延性)が悪く、比較的ポケット部を大きく設計する必要がある。また、アルミニウム等は、樹脂材料と比較して弾力性がなく塑性変形しやすいため、変形した場合には元の形状に復元しにくい。そのため、上述した種々の不具合が発生しやすくなるおそれがある。
【0058】
従って、本手段の構成下において、上記手段1等の作用効果がより奏効することとなる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【
図1】(a)はPTPシートを示す斜視図であり、(b)はPTPシートを示す側面図であり、(c)はポケット部を示すPTPシートの部分拡大断面図である。
【
図2】(a)はPTPフィルムを示す斜視図であり、(b)はPTPフィルムの部分拡大側面図である。
【
図5】フィルム受けロールを示す側面模式図である。
【
図6】フィルム受け面の構成を説明するための説明図である。
【
図7】(a)は円柱形状のフィルム受けロールを有した従来のシール装置の概略構成図であり、(b)は従来の円柱形状のフィルム受けロールに掛装された容器フィルムの状態を示す部分拡大断面図である。
【
図8】(a)はシート短手方向に沿ってカバーフィルム側にカールしたPTPシートを示す模式図であり、(b)はシート長手方向に沿って容器フィルム側にカールしたPTPシートを示す模式図であり、(c)は対角線方向に沿って斜めにカールし捻れが生じたPTPシートを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0060】
以下、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。まず製造対象となるPTPシート1について説明する。
【0061】
図1(a)~(c)に示すように、PTPシート1は、複数のポケット部2を備えた容器フィルム3と、ポケット部2を塞ぐようにして容器フィルム3に取着されたカバーフィルム4とを有している。
【0062】
本実施形態における容器フィルム3及びカバーフィルム4は、アルミニウムを基材(主材料)とした不透明材料により構成されている。例えば容器フィルム3は、アルミラミネートフィルム(アルミフィルムに対し合成樹脂フィルムをラミネートしたもの)により形成されている。一方、カバーフィルム4は、アルミフィルムにより形成されている。
【0063】
本実施形態に係るPTPシート1は、平面視略矩形状に形成されると共に、シート長手方向〔
図1(b)紙面奥行方向〕に見た側面視で、フィルム一般部(フランジ部)1aがシート短手方向〔
図1(b)左右方向〕に円弧状に緩やかにカール(湾曲)した形状となっている。詳しくは、容器フィルム3側〔
図1(b)上側〕が凹となり、カバーフィルム4側〔
図1(b)下側〕が凸となるようにカールしている。
【0064】
本実施形態では、上記のようにPTPシート1(フィルム一般部1a)をシート短手方向にカールさせることにより、シート長手方向へのカールの発生など、PTPシート1毎にカールする向きや方向が定まらず、不規則となってしまうことを抑制している。
【0065】
シート長手方向へのカールの発生等を抑制するためには、シート短手方向におけるシート幅W〔
図2(b)参照〕が30mm~85mmの一般的なPTPシート1において、カール量Cx、すなわちPTPシート1の高さ方向〔
図1(b)上下方向〕におけるフィルム一般部1aの下端部から上端部までの距離Cxが0mmよりも大きく、5mmよりも小さくなるように製造することが好ましい(0mm<Cx<5mm)。
【0066】
但し、カール量Cxが小さすぎると、上述したシート長手方向へのカールの発生等を抑制する効果を得ることが難しくなるおそれがある一方、カール量Cxが大きくなり過ぎると、集積工程などおいて支障をきたすおそれがある。このため、本実施形態では、カール量Cxが1mmよりも大きく、3mmよりも小さくなるように製造する(1mm<Cx<3mm)。
【0067】
また、PTPシート1には、シート長手方向に沿って配列された5個のポケット部2からなるポケット列が、シート短手方向に2列形成されている。つまり、計10個のポケット部2が形成されている。各ポケット部2には、内容物としての錠剤5が1つずつ収容されている。
【0068】
さらに、PTPシート1には、所定数(本実施形態では2つ)のポケット部2を含むシート小片6単位に切離し可能とするための切離線としてミシン目7がシート短手方向に沿って複数形成されている。
【0069】
加えて、PTPシート1には、シート長手方向一端部において、錠剤名称やロットナンバー等の各種情報(図示略)が刻印されたタグ部8が設けられている。
【0070】
本実施形態のPTPシート1〔
図1(a)参照〕は、帯状の容器フィルム3と帯状のカバーフィルム4とが取着されてなる帯状のPTPフィルム25〔
図2(a)参照〕が矩形シート状に打抜かれる工程等を経て製造される。
【0071】
次に、上記PTPシート1を製造するためのPTPシート製造装置としてのPTP包装機8の概略構成について
図3を参照して説明する。
【0072】
PTP包装機8の最上流側では、帯状の容器フィルム3の原反がロール状に巻回されている。ロール状に巻回された容器フィルム3の引出し端側は、ガイド機構9に案内されている。容器フィルム3は、ガイド機構9の下流側において間欠送りロール11に掛装されている。間欠送りロール11は、間欠的に回転するモータ(図示略)に連結されており、容器フィルム3を間欠的に搬送する。
【0073】
ガイド機構9と間欠送りロール11との間には、容器フィルム3の搬送経路に沿って、ポケット部形成手段としてのポケット部形成装置10が配設されている。このポケット部形成装置10において、冷間加工により容器フィルム3の所定位置にポケット部2が形成される(ポケット部形成工程)。ポケット部2の形成は、間欠送りロール11による容器フィルム3の搬送動作間のインターバル中に行われる。
【0074】
間欠送りロール11から送り出された容器フィルム3は、送りロール12、ガイドロール13、テンションロール14及びガイドロール15の順に掛装されている。ガイドロール15の下流側には、容器フィルム3の搬送経路に沿って、充填手段としての錠剤投入装置16、検査手段としての検査装置17、シール手段としてのシール装置20が順に配設されている。
【0075】
錠剤投入装置16は、所定間隔毎にシャッタを開くことで錠剤5を自由落下させるものであり、このシャッタ開放動作に伴って各ポケット部2に錠剤5が投入される(充填工程)。検査装置17は、錠剤5が各ポケット部2に確実に充填されているか否か、また錠剤5の異常の有無、異物混入の有無等の検査を行うためのものである。
【0076】
シール装置20は、フィルム受けロール21と、これに対し圧接可能に設けられたシールロール(加熱ロール)22とを備えている。フィルム受けロール21は、一定回転するモータ(図示略)に連結されており、容器フィルム3を連続的かつ一定速度で搬送する。シール装置20の詳細については後述する。
【0077】
また、上記テンションロール14は、容器フィルム3を弾性力によって緊張する側へ引っ張った状態とされており、上記間欠送りロール11とフィルム受けロール21との搬送動作の相違による容器フィルム3の撓みを防止して容器フィルム3を常時緊張状態に保持する。
【0078】
一方、帯状に形成されたカバーフィルム4の原反は、最上流側においてロール状に巻回されている。ロール状に巻回されたカバーフィルム4の引出し端は、ガイドロール23を介してシール装置20(両ロール21,22間)へ案内されている。
【0079】
そして、容器フィルム3及びカバーフィルム4が、両ロール21,22間を加熱押圧された状態で通過することで、容器フィルム3の裏側にカバーフィルム4がシール(溶着)され、ポケット部2がカバーフィルム4で塞がれる(シール工程)。これにより、錠剤5が各ポケット部2に充填されたPTPフィルム25が製造される。
【0080】
シール装置20から送り出されたPTPフィルム25は、テンションロール27及び間欠送りロール28の順に掛装されている。
【0081】
間欠送りロール28は、間欠的に回転するモータ(図示略)に連結されており、PTPフィルム25を間欠的に搬送する。テンションロール27は、PTPフィルム25を弾性力によって緊張する側へ引っ張った状態とされており、上記フィルム受けロール21と間欠送りロール28との搬送動作の相違によるPTPフィルム25の撓みを防止してPTPフィルム25を常時緊張状態に保持する。
【0082】
間欠送りロール28から送り出されたPTPフィルム25は、テンション送りロール29及び間欠送りロール30の順に掛装されている。間欠送りロール30は、間欠的に回転するモータ(図示略)に連結されており、PTPフィルム25を間欠的に搬送する。テンション送りロール29は、PTPフィルム25を弾性力によって緊張する側へ引っ張った状態とされており、前記両間欠送りロール28,30間でのPTPフィルム25の撓みを防止する。
【0083】
間欠送りロール28とテンション送りロール29との間には、PTPフィルム25の搬送経路に沿って、ミシン目形成装置33及び刻印装置34が順に配設されている。ミシン目形成装置33は、PTPフィルム25の所定位置にミシン目7を形成する機能を有する。刻印装置34はPTPフィルム25の所定位置(タグ部8)にロットナンバー等の識別情報を示す刻印を付す機能を有する。
【0084】
間欠送りロール30から送り出されたPTPフィルム25は、その下流側においてテンションロール35及び連続送りロール36の順に掛装されている。間欠送りロール30とテンションロール35との間には、PTPフィルム25の搬送経路に沿って、シート打抜装置37が配設されている。
【0085】
シート打抜装置37は、PTPフィルム25をPTPシート1単位にその外縁を打抜くシート打抜手段(切離手段)としての機能を有する。本実施形態では、PTPフィルム25のフィルム幅方向にPTPシート1のシート打抜範囲Eが1つだけ設定されている〔
図2(a)参照〕。シート打抜範囲Eは、ここから打抜かれるPTPシート1のシート長手方向がPTPフィルム25のフィルム幅方向に沿うように、かつ、PTPシート1のシート短手方向がPTPフィルム25のフィルム長手方向に沿うように設定されている。
【0086】
シート打抜装置37によって打抜かれたPTPシート1は、コンベア39によって搬送され、完成品用ホッパ40に一旦貯留される(切離工程)。但し、上記検査装置17によって不良品と判定された場合、その不良品と判定されたPTPシート1は、完成品用ホッパ40へ送られることなく、図示しない排出手段としての不良シート排出機構によって別途排出され、図示しない不良品ホッパに搬送される。
【0087】
その後、完成品用ホッパ40に収容されたPTPシート1は、集積工程において複数積み重ねられた後、包装工程へと送られる。本実施形態の集積工程においては、例えばポケット部2を有する面が互いに向き合うように、PTPシート1を2枚1組の抱き合わせ状態とした上で所定組数(例えば5組10枚)ずつ積み重ねる方式や、PTPシート1を同じ向きで所定枚数(例えば5枚)ずつ積み重ねる方式で集積作業が行われる。また、包装工程においては、ピロー包装やバンド結束等された後、箱詰め等が行われる。
【0088】
連続送りロール36の下流側には裁断装置41が配設されている。そして、シート打抜装置37による打抜き後に帯状に残ったスクラップ部42は、前記テンションロール35及び連続送りロール36に案内された後、裁断装置41に導かれる。ここで、連続送りロール36は従動ロール38が圧接されており、スクラップ部42を挟持しながら搬送動作を行う。
【0089】
裁断装置41は、スクラップ部42を所定寸法に裁断する機能を有する。裁断されたスクラップ部42はスクラップ用ホッパ43に貯留された後、別途廃棄処理される。
【0090】
PTP包装機8の概略は以上のとおりであるが、以下においてシール装置20の構成について、
図4~
図6を参照してより詳しく説明する。
【0091】
上述したように、シール装置20は、主としてフィルム受けロール21及びシールロール22により構成されている。
【0092】
本実施形態のフィルム受けロール21は、その回転軸心21aに直交する断面形状が略正八角形状をなし、かつ、回転軸心21aに沿って延びる略八角柱形状をなす。
【0093】
図5に示すように、フィルム受けロール21には、その外周面において、その周方向に45°の等角度間隔で8つのフィルム受け面51が形成されると共に、隣接する2つのフィルム受け面51,51間の境界部において角部52が形成されている。
【0094】
各フィルム受け面51は、回転軸心21aに直交する断面において、フィルム受けロール21の径方向外側に向け凸となる断面略円弧状に形成された湾曲面となっている。
【0095】
つまり、フィルム受けロール21は、その回転軸心21aに直交する断面形状が、その外接円Gの半径R1(
図6参照)、すなわちフィルム受けロール21の最大半径(回転軸心21aから外周面の各角部52までの距離)よりも、各フィルム受け面51の曲率半径R2が大きくなるように構成されている。
【0096】
本実施形態では、各フィルム受け面51の曲率半径R2が、フィルム受けロール21の最大半径(外接円Gの半径)R1の2倍に設定されている。勿論、各フィルム受け面51の曲率半径R2は、これに限定されるものではなく、少なくともフィルム受けロール21の最大半径R1(半径R1の1倍)より大きく設定されていればよい。
【0097】
但し、フィルム受け面51の曲率半径R2が大きくなり過ぎて、より平坦面F(
図6参照)に近い状態になってしまうと、上記「発明が解決しようとする課題」等で述べた不具合が発生しやすくなるおそれがある。このため、各フィルム受け面51の曲率半径R2は、フィルム受けロール21の最大半径R1の3倍よりも小さく設定されていることがより好ましい。
【0098】
具体的に、シート短手方向におけるシート幅Wが30mm~85mmとなる一般的なPTPシート1を製造する場合において、カール量Cxを1mmよりも大きく、3mmよりも小さくするためには、以下のようなサイズのフィルム受けロール21を用いるとよい。
【0099】
例えばシート幅Wが「30mm」のPTPシート1を製造する場合において、シート短手方向のカール量Cxを「1mm」にしたい場合には、フィルム受け面51の曲率半径R2が「113mm」となるフィルム受けロール21を用い、カール量Cxを「3mm」にしたい場合には、フィルム受け面51の曲率半径R2が「39mm」となるフィルム受けロール21を用いるとよい。
【0100】
つまり、シート幅Wが「30mm」のPTPシート1において、シート短手方向のカール量Cxを「1mm~3mm」にしたい場合には、フィルム受け面51の曲率半径R2が「113mm~39mm」となるフィルム受けロール21を用いるとよい。
【0101】
また、シート幅Wが「85mm」のPTPシート1を製造する場合において、シート短手方向のカール量Cxを「1mm」にしたい場合には、フィルム受け面51の曲率半径R2が「904mm」となるフィルム受けロール21を用い、カール量Cxを「3mm」にしたい場合には、フィルム受け面51の曲率半径R2が「303mm」となるフィルム受けロール21となるフィルム受けロール21を用いるとよい。
【0102】
つまり、シート幅Wが「85mm」のPTPシート1において、シート短手方向のカール量Cxを「1mm~3mm」にしたい場合には、フィルム受け面51の曲率半径R2が「904mm~303mmmm」となるフィルム受けロール21を用いるとよい。
【0103】
また、
図5に示すように、各フィルム受け面51は、フィルム受けロール21の周方向におけるその円弧の長さSが、PTPシート1のシート形成ピッチP〔
図2(b)参照〕に相当する長さとなっている。従って、各フィルム受け面51には、容器フィルム3のポケット部2を収容可能なポケット受け凹部53が、1つのPTPシート1に対応して2列(計10個)ずつ形成されている。
【0104】
各ポケット受け凹部53は、その中心軸線53aがフィルム受け面51の接線と直交するよう形成されている。つまり、フィルム受け面51の半径方向に沿って形成されている。
【0105】
そして、フィルム受けロール21は、図示しないモータによって回転駆動され、ポケット受け凹部53により容器フィルム3のポケット部2を引っ掛けつつ自身の回転により該容器フィルム3を連続的に搬送する。
【0106】
一方、シールロール22は、その回転軸心22aに直交する断面形状が円形状となった円柱形状をなす。シールロール22は、図示しない所定の加熱手段により所定温度に加熱される構成となっている。また、強固なシールを実現するために、シールロール22の外周面には、微細な凸条が網目状に形成されている(図示略)。
【0107】
シールロール22は、所定のアーム61の一端部にて回転自在に支持されている。アーム61は、その回動軸62を支点として傾動可能に設けられている。アーム61の他端側には、シリンダやバネなどで構成される付勢手段63が設けられている。これにより、常時、シールロール22はフィルム受けロール21側へ押圧される。そして、シールロール22は、フィルム受けロール21(カバーフィルム4)の動きに従動して回転する。
【0108】
かかる構成の下、上述したように、両ロール21,22間に容器フィルム3及びカバーフィルム4が送り込まれ、両フィルム3,4が両ロール21,22間を加熱押圧された状態で通過することで、容器フィルム3の裏側にカバーフィルム4がシールされる。
【0109】
尚、
図2(b)に示すように、PTPフィルム25のうち、フィルム受けロール21の角部52に対応する箇所には、若干の折れ曲がり部分25aが発生するが、該折れ曲がり部分25aはPTPシート1同士の境界部となるため、該折れ曲がり部分25aがスクラップ部42となるように、シート打抜き時において該折れ曲がり部分25aを除く範囲(シート幅W)でPTPシート1を打抜くようにすれば、シート短手方向全体に緩やかにカールしたPTPシート1〔
図1(a)参照〕を得ることが可能となる。
【0110】
さらに、本実施形態では、
図3に示すようにシール装置20よりも下流側に位置し、PTPフィルム25のポケット部2と対向する位置関係となっている間欠送りロール28、テンション送りロール29及び間欠送りロール30が、上記フィルム受けロール21と同様の構成を有している。
【0111】
つまり、各送りロール28,29,30は、その外周面に8つのフィルム受け面が形成された略八角柱形状をなし、該各フィルム受け面が径方向外側に向け凸となる断面略円弧状に形成された湾曲面となっている。ここで、各送りロール28,29,30の各フィルム受け面の曲率半径は、フィルム受けロール21の各フィルム受け面の曲率半径と同一に設定されている。
【0112】
そして、各送りロール28,29,30は、各フィルム受け面において、PTPフィルム25のポケット部2を収容可能なポケット受け凹部を有し、該ポケット受け凹部によりPTPフィルム25のポケット部2を引っ掛けつつ自身の回転によりPTPフィルム25を搬送する。
【0113】
これにより、シール装置20においてカール癖付けされた後、各送りロール28,29,30を通過するPTPフィルム25に対し、フィルム受けロール21と同等の曲率でカール癖付けを行うことができる。
【0114】
以上詳述したように、本実施形態に係るフィルム受けロール21は、従来のような円柱形状ではなく、その外周面において、その周方向に所定間隔で設けられた8つのフィルム受け面51を有した略正八角柱形状をなし、各フィルム受け面51においてポケット受け凹部53を有した構成となっている。
【0115】
加えて、各フィルム受け面51は、フィルム受けロール21の回転軸心21aに直交する断面において、フィルム受けロール21の径方向外側に向け凸となる断面略円弧状に形成された湾曲面となっている。
【0116】
つまり、フィルム受けロール21は、その回転軸心21aに直交する断面形状が、その最大半径(その外接円Gの半径)R1よりも、各フィルム受け面51の曲率半径R2が大きくなるように構成されている。本実施形態では、各フィルム受け面51の曲率半径R2が、フィルム受けロール21の最大半径R1の2倍に設定されている。
【0117】
従って、本実施形態に係るフィルム受けロール21の各フィルム受け面51は、外接円Gと同一径の円柱形状のフィルム受けロールの外周面(フィルム受け面)よりも緩やかな円弧状の湾曲面となる。
【0118】
これにより、本実施形態に係るフィルム受けロール21は、従来の円柱形状のフィルム受けロールと比較して、容器フィルム3のポケット部2及びその周囲のフィルム一般部1aに無理な曲げ応力等がかかりにくく、容器フィルム3を適正に掛装しやすくなり、容器フィルム3の浮き上がり等が発生しにくくなる。
【0119】
結果として、フィルム一般部1aをより平坦に近い状態でシールでき、ポケット部2の潰れやフィルム一般部1aの折れ曲がり、取着したカバーフィルム4にシワがよるなどの種々の不具合の発生を抑制することができる。
【0120】
加えて、本実施形態では、シート打抜装置37において、PTPシート1が、そのシート長手方向がPTPフィルム25のフィルム幅方向に沿うように、かつ、そのシート短手方向がPTPフィルム25のフィルム長手方向に沿うように、PTPフィルム25から切離されるようにシート打抜範囲Eが設定されている。
【0121】
その結果、シート短手方向に沿って容器フィルム3側に緩やかにカールしたPTPシート1を製造することできる。
【0122】
これにより、本実施形態によれば、上記特許文献1のように、容器フィルム3に対しカバーフィルム4を平坦な状態でシールする構成に比べて、PTPシート1毎にカールする向きや方向にばらつきが生じ、形状が異なる様々なPTPシート1が製造されてしまうといった不具合の発生を抑制することができる。
【0123】
例えば、カバーフィルム側にカールしたPTPシート〔
図8(a)参照〕や、シート長手方向に沿って容器フィルム側にカールしたPTPシート〔
図8(b)参照〕、対角線方向に沿って斜めにカールし捻れが生じたPTPシート〔
図8(c)参照〕などが製造されてしまうおそれを低減することができる。
【0124】
結果として、不良品の発生を抑制することができる。ひいては、集積工程における複数のPTPシート1の積み重ね(例えばPTPシート1を2枚1組の抱き合わせ状態とする等)など、その後の工程に支障が生じにくくなり、生産性の低下抑制を図ることができる。さらに、より径の大きいフィルム受けロールを用いる必要もなく、装置の大型化を抑制することができる。
【0125】
また、本実施形態に係るフィルム受けロール21によれば、フィルム受け面51が緩やかな円弧状の湾曲面となっていることで、上記特許文献1に係るフィルム受けロール(その外周面において複数の平坦面を有する多角柱形状のフィルム受けロール)に比べ、例えば容器フィルム3の剛性やポケット部2の配置などによって、掛装される容器フィルム3をフィルム受けロールの平坦面(フィルム受け面)全体に均一に密着させることができず、一部が浮き上がる等の不具合の発生を抑制することができる。結果として、容器フィルム3がフィルム受けロール21のフィルム受け面51全体により均一に密着した状態でシールロール22を押付け、シールを行うことが可能となる。
【0126】
加えて、本実施形態では、シール装置20よりも下流側に位置する間欠送りロール28、テンション送りロール29及び間欠送りロール30が、フィルム受けロール21と同様に、その外周面に8つのフィルム受け面が形成された略八角柱形状をなし、該各フィルム受け面が径方向外側に向け凸となる断面略円弧状に形成された湾曲面となった構成を有している。
【0127】
ここで、仮にシール装置20よりも下流側において、フィルム受けロール21の最大半径(外接円Gの半径)R1と同一径の円柱形状の送りロールを用いた場合には、シール装置20により適切なカール癖付けが行われたPTPフィルム25に対し、さらに大きな曲率のカール癖付けが行われてしまい、完成されたPTPシート1のカール量が適正量よりも大きくなってしまうおそれがある。ここで、円柱形状の送りロールの径を大きくした場合には、装置が大型化するおそれがある。
【0128】
一方、シール装置20よりも下流側における送りロールとして、上記特許文献1に係るフィルム受けロールのように、その外周面において複数の平坦面を有する多角柱形状のフィルム受けロールを用いた場合には、シール装置20により癖付けされたPTPフィルム25のカールが平坦面において矯正されてしまい、完成されたPTPシート1のカール量が適正量よりも小さくなってしまうおそれがある。
【0129】
これに対し、本実施形態によれば、シール装置20においてカール癖付けされた後、各送りロール28,29,30を通過するPTPフィルム25に対し、フィルム受けロール21と同等の曲率でカール癖付けを行うことができ、上記不具合の発生を抑制することができる。
【0130】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0131】
(a)上記実施形態では、内容物が錠剤5である場合について具体化しているが、内容物の種別、形状等については特に限定されるものではなく、例えば食品や電子部品等が内容物として充填される構成であってもよい。勿論、これらの内容物に対応して形成されるポケット部2の形状や大きさ等に関しても上記実施形態に限定されるものではない。
【0132】
(b)製造されるPTPシートの構成は上記実施形態に限定されるものではない。例えばPTPシート1単位のポケット部2の配列や個数は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、3列12個のポケット部2を有するタイプをはじめ、様々な配列、個数からなるPTPシートを採用することができる。
【0133】
また、例えばシート長手方向に沿って配列された5個のポケット部2からなるポケット列がシート短手方向に左右2列形成された計10個のポケット部2を有したPTPシート1であって、該左右2列のポケット列のうち、左列のポケット部2が、右列のポケット部2に対してシート長手方向に半ピッチずれ、2列のポケット列を構成するポケット部2が左右互い違いに配置された構成としてもよい。
【0134】
また、上記実施形態に係るPTPシート1には、切離線としてミシン目7が形成されているが、切離線は、これに限定されるものではなく、容器フィルム3及びカバーフィルム4の材質等に応じて異なる構成を採用してもよい。また、ミシン目7等の切離線が形成されない構成としてもよい。
【0135】
(c)各フィルム3,4の材料は、アルミニウムを主材料とした金属材料に限定されるものではなく、樹脂材料など他の材質のものを採用してもよい。容器フィルム3がPPやPVC等の樹脂素材により形成されている場合であっても、ポケット部2の形状が比較的大きい場合など、構成によっては、ポケット部2の潰れなど上述した種々の不具合が発生し得る。
【0136】
(d)上記実施形態では、フィルム受けロール21が略八角柱形状となっている。これに限らず、上記フィルム受け面51のような湾曲面を備えた多角柱形状のものであれば、他の構成を採用してもよい。
【0137】
また、フィルム受けロール21の角部52が尖った構成ではなく、角部52が丸みを帯びた構成を採用してもよい。このようにすれば、PTPフィルム25における上記折れ曲がり部分25aの発生を低減することができる。
【0138】
(e)上記実施形態では、フィルム受けロール21(送りロール28,29,30についても同様。)の周方向における各フィルム受け面51の長さSが、PTPフィルム25の長手方向におけるPTPシート1のシート形成ピッチPの1ピッチ分に相当する長さに設定されているが、フィルム受け面51の形成範囲はこれに限定されるものではない。例えば、各フィルム受け面51の長さSが、PTPシート1のシート形成ピッチPのnピッチ分(nは2以上の自然数)に相当する長さとなるようにしてもよい。
【0139】
(f)上記実施形態では、各フィルム受け面51において、1枚のPTPシート1のポケット部2の配置構成に対応して、ポケット受け凹部53が2列(計10個)ずつ形成された構成となっている。ポケット受け凹部53の配置構成は、これに限定されるものではない。
【0140】
例えば上述したような左右2列のポケット列のうち、左列のポケット部2が、右列のポケット部2に対してシート長手方向に半ピッチずれ、ポケット部2が左右互い違いに配置されたPTPシートに対応して、フィルム受けロール21の周方向に2列のポケット受け凹部53列が形成されると共に、周方向一方側の列のポケット受け凹部53が、周方向他方側の列のポケット受け凹部53に対して回転軸心21a方向に半ピッチずれた配置構成としてもよい。
【0141】
また、フィルム受けロール21の周方向に1箇所だけ(1列)だけポケット受け凹部53が形成された構成としてもよい。
【0142】
(g)上記実施形態では、PTPフィルム25の幅方向(フィルム受けロール21の回転軸心21a方向)に対し、PTPシート1が1枚分だけ形成される構成となっているが、これに限らず、PTPフィルム25の幅方向にPTPシート1が複数形成される構成としてもよい。
【0143】
(h)上記実施形態では、シール装置20よりも下流側に位置する送りロール28,29,30として、フィルム受けロール21と同様の構成を有した送りロールを採用しているが、これに限らず、例えば従来の円柱形状の送りロールなど、他の構成を採用してもよい。
【0144】
また、送りロール28,29,30すべての送りロールではなく、このうちの少なくとも1つを多角柱形状の送りロールとした構成としてもよい。
【0145】
また、送りロール28,29,30に当接(押圧)可能なタッチロールを備えた構成としてもよい。これにより、送りロール28,29,30に掛装されたPTPフィルム25の脱落を防止すると共に、上述したカール癖付けをより確実に行うことができる。
【符号の説明】
【0146】
1…PTPシート、1a…フィルム一般部、2…ポケット部、3…容器フィルム、4…カバーフィルム、5…錠剤、8…PTP包装機、10…ポケット部形成装置、16…錠剤投入装置、20…シール装置、21…フィルム受けロール、21a…回転軸心、22…シールロール、25…PTPフィルム、28…間欠送りロール、29…テンション送りロール、30…間欠送りロール、37…シート打抜装置、51…フィルム受け面、52…角部、53…ポケット受け凹部、Cx…カール量、E…シート打抜範囲、G…外接円、P…シート形成ピッチ、R1…フィルム受けロールの最大半径(外接円の半径)、R2…フィルム受け面の曲率半径、S…フィルム受け面の円弧の長さ、W…シート幅。