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特許7122313特にウラン(VI)をプルトニウム(IV)から分離するために用いられる非対称N,N-ジアルキルアミド、その合成、およびそれの使用
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  • 特許-特にウラン(VI)をプルトニウム(IV)から分離するために用いられる非対称N,N-ジアルキルアミド、その合成、およびそれの使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-10
(45)【発行日】2022-08-19
(54)【発明の名称】特にウラン(VI)をプルトニウム(IV)から分離するために用いられる非対称N,N-ジアルキルアミド、その合成、およびそれの使用
(51)【国際特許分類】
   G21C 19/46 20060101AFI20220812BHJP
   G21F 9/06 20060101ALI20220812BHJP
【FI】
G21C19/46 624
G21C19/46 620
G21C19/46 622
G21F9/06 581H
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2019539954
(86)(22)【出願日】2018-01-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-03-05
(86)【国際出願番号】 FR2018050172
(87)【国際公開番号】W WO2018138441
(87)【国際公開日】2018-08-02
【審査請求日】2021-01-08
(31)【優先権主張番号】1750657
(32)【優先日】2017-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(73)【特許権者】
【識別番号】518135618
【氏名又は名称】オラノ サイクル
(73)【特許権者】
【識別番号】507030070
【氏名又は名称】エレクトリシテ ド フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミラノル,ガエル
(72)【発明者】
【氏名】ラッセロ,エミリー
(72)【発明者】
【氏名】マリー,セシル
(72)【発明者】
【氏名】ミギルディトシャン,マニュエル
(72)【発明者】
【氏名】ソレル,クリスチャン
【審査官】早乙女 智美
(56)【参考文献】
【文献】英国特許出願公告第02183078(GB,A)
【文献】Dong, K. et al.,Rh(I)-Catalyzed Hydroamidation of Olefins via Selective Activation of N-H Bonds in Aliphatic Amines,Journal of the American Chemical Society,2015年,137(18),pp. 6053-6058
【文献】REGISTRY (STN) [online],Entered STN: 2007年12月20日,2021年09月10日,CAS登録番号959055-41-5
【文献】Mandeville, Simon J. et al.,The influence of the size and structure of a spectator alkyl group on the relative rates of alkyl radical elimination from ionized tertiary amines,European Mass Spectrometry,1999年,5(5),pp. 339-351
【文献】REGISTRY (STN) [online],Entered STN:2016月10月23日以前,2021年09月10日,CAS登録番号2017035-92-4, 2007727-33-3, 1997603-92-5
【文献】REGISTRY (STN) [online],Entered STN:2016年2月10日以前,2021年09月10日,CAS登録番号1863969-74-7, 1862936-64-8, 1861395-93-8
【文献】REGISTRY (STN) [online],Entered STN:2013年10月6日,2021年09月10日,CAS 登録番号1456102-06-9, 1455811-92-3
【文献】Sun Guoxin et al.,Extraction of U(VI) with unsymmetrical N-methyl-N-octyl alkylamides in toluene,Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry,2005年,264(3),pp. 711-713
【文献】Yu, Cui et al.,Extraction of U(VI) with unsymmetrical N-methyl-N-decylalkylamide in toluene,Radiochimica Act,2005年,93(5),pp. 287-290
【文献】第5版 実験化学講座 16 有機化合物の合成IV -カルボン酸・アミノ酸・ペプチド-,2005年,pp. 119-124
【文献】Ruikar, P. B. et al.,Extraction of uranium, plutonium and some fission products with γ-irradiated unsymmetrical and branched chain dialkylamides,Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry,1993年,176(2),pp. 103-111
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 231/02
C07C 233/05
G21C 19/46
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸水溶液から出発してプルトニウム(IV)からウラン(VI)を完全にまたは部分的に分離するための、下の式(I)のN,N-ジアルキルアミド:
【化1】

式中:
1は1つから4つまでの炭素原子を有する直鎖アルキル基であり;
2は1つから10個までの炭素原子を有する直鎖アルキル基であり;
3は6つから15個までの炭素原子を有する直鎖または分岐アルキル基であり;
ただし、R1がn-ブチルでありかつR2がエチル基であるときには、R3はn-オクチル、n-デシル、n-ドデシル、2-エチルヘキシル、および2-エチルオクチル基とは異なる
または当該N,N-ジアルキルアミドの混合物の使用であって、
この使用が以下のステップを含み:
a) 前記水溶液からのウランおよびプルトニウムの共抽出(前記共抽出は、抽出剤としての前記N,N-ジアルキルアミドまたはN,N-ジアルキルアミドの前記混合物を有機希釈剤中に溶液として含む有機溶液との前記水溶液の少なくとも1つの接触、次に前記水溶液および前記有機溶液の分離を含む);
b) ステップa)からもたらされる前記有機溶液からの、酸化数+IVのプルトニウム、およびウランの部分の逆抽出(前記逆抽出は、0.1mol/Lから0.5mol/Lまでの硝酸を含む水溶液との前記有機溶液の少なくとも1つの接触、次に前記有機溶液および前記水溶液の分離を含む);ならびに
c) ステップb)からもたらされる前記水溶液中に含有される前記ウラン部分の全てまたは一部の抽出(前記抽出は、ステップa)の前記有機溶液と同一の有機溶液との前記水溶液の少なくとも1つの接触、次に前記水溶液および前記有機溶液の分離を含む)、
これによって、ウランなしのプルトニウム、またはプルトニウムおよびウランの混合物を含む水溶液、ならびにプルトニウムなしのウランを含む有機溶液が得られる、
使用
【請求項2】
1がメチル、エチル、またはn-プロピル基である、請求項1に記載の使用
【請求項3】
2がn-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、またはn-ヘプチル基である、請求項1または2に記載の使用
【請求項4】
3がn-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、2-エチルヘキシル、n-ノニル、n-デシル、または2-エチルオクチル基である、請求項1~3のいずれか1項に記載の使用
【請求項5】
- R1がメチル基であり、R2がn-ブチル基であり、かつR3がn-ノニル基である前記N,N-ジアルキルアミド;
- R1およびR2がそれぞれn-プロピル基であり、かつR3がn-オクチル基である前記N,N-ジアルキルアミド;および
- R1がn-プロピル基であり、R2がn-ペンチル基であり、かつR3がn-ヘキシル基である前記N,N-ジアルキルアミド、
から選択される、請求項1~4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
テップa)の前記有機溶液が、1mol/Lから2mol/Lまでの前記N,N-ジアルキルアミドまたは前記N,N-ジアルキルアミドの混合物を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項7】
前記酸水溶液が、硝酸中の使用済み核燃料の溶解からもたらされる水溶液である、請求項1~6のいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
硝酸中の使用済み核燃料の溶解からもたらされる水溶液を処理するための単一サイクル方法であって、
前記水溶液は、ウラン、プルトニウム、アメリシウム、キュリウム、およびテクネチウムを包含する核分裂生成物を含み、
前記サイクルは以下のステップを含み:
a) 前記水溶液からのウランおよびプルトニウムの共抽出(前記共抽出は、抽出器における、抽出剤としての式(I)のN,N-ジアルキルアミド
【化2】

(式中:
1 は1つから4つまでの炭素原子を有する直鎖アルキル基であり;
2 は1つから10個までの炭素原子を有する直鎖アルキル基であり;
3 は6つから15個までの炭素原子を有する直鎖または分岐アルキル基であり;
ただし、R 1 がn-ブチルでありかつR 2 がエチル基であるときには、R 3 はn-オクチル、n-デシル、n-ドデシル、2-エチルヘキシル、および2-エチルオクチル基とは異なる)
または当該N,N-ジアルキルアミドの混合物を有機希釈剤中の溶液として含む有機溶液との前記水溶液の少なくとも1つの接触、次に前記水溶液および前記有機溶液の分離を含む);
b) アメリシウム、キュリウム、および核分裂生成物について、ステップa)からもたらされる前記有機溶液の除染(前記除染は、抽出器における、1mol/Lから6mol/Lまでの硝酸を含む水溶液との前記有機溶液の少なくとも1つの接触、次に前記有機溶液および前記水溶液の分離を含む);
c) ウランなしのプルトニウム、またはプルトニウムおよびウランの混合物どちらかを含む水溶液、ならびにプルトニウムなしのウランを含む有機溶液への、ステップb)からもたらされる前記有機溶液中に含有される前記ウランおよびプルトニウムの分配(前記分配は:
1) ステップb)からもたらされる前記有機溶液からの酸化数+IVのプルトニウム、およびウランの部分の逆抽出(前記逆抽出は、抽出器における、0.1mol/Lから0.5mol/Lまでの硝酸を含む水溶液との前記有機溶液の少なくとも1つの接触、次に前記有機溶液および前記水溶液の分離を含む);
2) ステップc1)からもたらされる前記水溶液中に含有される前記ウランの部分の全てまたは一部の抽出(前記抽出は、抽出器における、ステップa)の前記有機溶液と同一の有機溶液との前記水溶液との少なくとも1つの接触、次に前記水溶液および前記有機溶液の分離を含む)、
を含む);
d) テクネチウムについて、ステップc1)からもたらされる前記有機溶液の除染(前記除染は:
1) ステップc1)からもたらされる前記有機溶液からの酸化数+IVのテクネチウムの逆抽出(前記逆抽出は、抽出器における、0.1mol/Lから3mol/Lまでの硝酸とテクネチウムを酸化数+VIIから酸化数+IVまで還元可能な少なくとも1つの還元剤とを含む水溶液との前記有機溶液の少なくとも1つの接触、次に前記有機溶液および前記水溶液の分離を含む);
2) ステップd1)からもたらされる前記水溶液中に含有される前記ウラン部分の抽出(前記抽出は、抽出器における、ステップa)の前記有機溶液と同一の有機溶液との前記水溶液の少なくとも1つの接触、次に前記水溶液および前記有機溶液の分離を含む)、
を含む);
e) ステップd1)からもたらされる前記有機溶液からのウランの逆抽出(前記逆抽出は、抽出器における、0.5mol/L以下の硝酸を含む水溶液との前記有機溶液の少なくとも1つの接触、次に前記有機溶液および前記水溶液の分離を含む);ならびに
f) ステップe)からもたらされる前記有機溶液の再生、
これによって、アメリシウム、キュリウム、およびテクネチウムを包含する核分裂生成物について除染された第1および第2の水溶液が得られ、前記第1の水溶液はウランなしのプルトニウム、またはプルトニウムおよびウランの混合物を含み、前記第2の水溶液はプルトニウムなしのウランを含む、
単一サイクル方法。
【請求項9】
1 がメチル、エチル、またはn-プロピル基である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
2 がn-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、またはn-ヘプチル基である、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
3 がn-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、2-エチルヘキシル、n-ノニル、n-デシル、または2-エチルオクチル基である、請求項8~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
- R 1 がメチル基であり、R 2 がn-ブチル基であり、かつR 3 がn-ノニル基である前記N,N-ジアルキルアミド;
- R 1 およびR 2 がそれぞれn-プロピル基であり、かつR 3 がn-オクチル基である前記N,N-ジアルキルアミド;および
- R 1 がn-プロピル基であり、R 2 がn-ペンチル基であり、かつR 3 がn-ヘキシル基である前記N,N-ジアルキルアミド、
から選択される、請求項8~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
ステップa)の前記有機溶液が、1mol/Lから2mol/Lまでの前記N,N-ジアルキルアミドまたはN,N-ジアルキルアミドの混合物を含む、請求項8~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
ステップb)の前記水溶液が4mol/Lから6mol/Lまでの硝酸を含む、請求項8~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
ステップb)がさらに前記有機溶液の脱酸性化を含み、前記脱酸性化が、0.1mol/Lから1mol/Lまでの硝酸を含む水溶液との前記有機溶液の少なくとも1つの接触、次に前記有機溶液および前記水溶液の分離を含む、請求項8~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
ステップc1)の前記抽出器における前記有機溶液および前記水溶液の前記接触が、前記水溶液の流量に対する前記有機溶液の流量の比を1よりも高くしての、前記抽出器における前記有機溶液および前記水溶液の循環を含む、請求項~1のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
ステップd2)が、前記水溶液の硝酸の濃度を少なくとも2.5mol/Lの値までもっていくために、ステップd1)からもたらされる前記水溶液の酸性化を含み、前記酸性化がステップd2)の前記抽出器への硝酸の追加を含む、請求項~1のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
ステップe)の前記抽出器における前記有機溶液および前記水溶液の前記接触が、前記水溶液の流量に対する前記有機溶液の流量の比を1より高くしての、前記抽出器における前記有機溶液および前記水溶液の循環を含む、請求項~1のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規の非対称N,N-ジアルキルアミドとその合成を可能にする方法とに関する。
【0002】
それは、ウラン(VI)および/またはプルトニウム(IV)を酸水溶液から、特に硝酸中の使用済み核燃料の溶解からもたらされる水溶液から抽出するための抽出剤としての、これらのN,N-ジアルキルアミドの使用にもまた関する。
【0003】
さらに、それは、酸水溶液から、特に硝酸中の使用済み核燃料の溶解からもたらされる水溶液から出発して、ウラン(VI)をプルトニウム(IV)から完全にまたは部分的に分離するための抽出剤としての、これらのN,N-ジアルキルアミドの使用に関する。
【0004】
さらに、それは、硝酸中の使用済み核燃料の溶解からもたらされる水溶液を処理するための方法に関する。これは、この溶液中に含有されるウラン(VI)およびプルトニウム(IV)がプルトニウム(IV)のいずれかの還元操作に頼ることなしに単一サイクルによって抽出、分離、および除染されることを可能にし、これらのN,N-ジアルキルアミドの1つまたはそれらの混合物が抽出剤として用いられる。
【0005】
本発明は、ウランを含有する(特にウラン酸化物-UOX)またはウランおよびプルトニウム両方を含有する(特にウランおよびプルトニウムの混合酸化物-MOX)使用済み核燃料の処理に特に応用を見いだす。
【背景技術】
【0006】
世界中に存在する全ての使用済み核燃料処理プラント(仏国のラ・アーグ、日本国の六ケ所村、英国のセラフィールドなど)において実装されているPUREXプロセスは、リン酸トリ-n-ブチル(またはTBP)を抽出剤として用いて、ウランおよびプルトニウムを、硝酸中のこれらの燃料の溶解からもたらされる水溶液から液液抽出によって回収する。
【0007】
このプロセスにおいては、TBPは有機希釈剤(水素化テトラプロピレン(TPH)またはn-ドデカン)中の30%(v/v)溶液として用いられる。この有機溶液は考慮される分野において一般に「溶媒」と呼ばれる。
【0008】
PUREXプロセスによるウランおよびプルトニウムの回収は複数のサイクルによって実施される:
* ウランおよびプルトニウムの第1の精製サイクル(「1CUPu」と呼ばれる)。アメリシウム、キュリウム、および核分裂生成物についてウランおよびプルトニウムを除染することを意図される。この第1のサイクルにおいては、プルトニウムの還元逆抽出による2つの水系ストリームへのウランおよびプルトニウムの分配を有する;
* ウランの第2の精製サイクル(「2CU」と呼ばれる)。最終生成物としてのウランについて、ASTM規格によって定められている規定に到達するようにウランの除染を仕上げることを意図される;ならびに
* プルトニウムの精製の第2のサイクルおよびいくつかのプラントのケースにおいては第3のサイクル(それぞれ「2CPu」および「3CPu」と呼ばれる)。最終生成物としてのプルトニウムについて、ASTM規格によって定められている規定に到達するようにプルトニウムの除染を仕上げることと、酸化物への変換前にそれを濃縮することとを意図される。
【0009】
PUREXプロセスの性能は満足のいくものであり、このプロセスを活用するプラントの立ち上げ以来取得された経験のフィードバックは肯定的である。
【0010】
しかしながら、TBPの使用は欠点を有し、特に還元剤の使用なしに2つの水系ストリームへのウランおよびプルトニウムの分配を狙いとする使用済み核燃料の将来の処理プラントについて設定された単純さ、コンパクトさ、および改善された安全性という目標に、この抽出剤によって到達する可能性を妨げる。
【0011】
これらの欠点は次である:
* いくつかの核分裂生成物(テクネチウムおよびルテニウム)および超ウラン元素(Np)について、第1の精製サイクルの終わりに、ウランおよびプルトニウム除染係数は不十分である。ゆえに、単一サイクルによって前述の規定を満たす最終生成物に至るであろうスキームをTBPによって達成することの不可能性;
* 2つの水系ストリームへのウランおよびプルトニウムの分配は、プルトニウム(IV)からプルトニウム(III)への還元を要求し(なぜなら、TBPによると、ウラン(VI)とプルトニウム(IV)との間の分離係数は、この分配を得るために用いられる水溶液の酸性度にかかわらず不十分であるからである)、それゆえに大量の還元剤および亜硝酸スカベンジャーの使用を要求する。これらは分解によって不安定で反応性の種を発生し、これらはそれゆえに安全性の点で制約的である;
* TBPの分解生成物はプロセスの性能に影響する;特にリン酸ジ-n-ブチル(またはDBP)は金属錯体の形成に至り、これらのいくつかは不溶性であり、溶媒中のプルトニウムの保持を引き起こし得る。ゆえに、プルトニウム還元逆抽出の下流であり、かつこの逆抽出を仕上げることを意図される「Pu堰止」として公知の操作を行う必要;
* プルトニウムの存在によって誘発される第3の相の形成のリスクは、プルトニウムを濃縮するスキーム(臨界リスクのため)、または軽水炉もしくは高速中性子炉から排出されるMOX燃料などの高いプルトニウム含量を有する使用済み核燃料の処理を可能にするスキームの実装を限定する;
* 常温において実施される場合には、それが先に抽出された溶媒からのウランの逆抽出は不完全である。ゆえに、50℃の温度(溶媒の引火点によって可能にされる最大温度に対応する)においてこの逆抽出を行う必要;しかしながら、この温度においてさえも、ウランの逆抽出は非濃縮的である(有機/水の流れの比(O/A)は1に等しいかまたは下回る);
* 水相においては無視できない(水相の酸性度に依存して最高で300mg/L)TBPの可溶性は、異なる抽出サイクルからもたらされる水相の、これらの水相中の可溶化したTBPを回収するための有機希釈剤による洗浄を必要にさせる;ならびに
* TBPおよびその分解生成物の焼却は固体リン酸含有残渣を包含する二次廃棄物を発生する。
【0012】
それゆえに、現行のプラントよりも単純でコンパクトでありかつさらに改善された安全性を有する将来の核燃料処理プラントを視野に、本発明者は、一方では使用済み核燃料の溶解からもたらされる硝酸水溶液中に含有されるウランおよびプルトニウムの回収および除染の点でPUREXプロセスと丁度同じくらい良好な性能を与えながら、抽出剤としてのTBPの使用に関する全ての欠点を克服することを可能にし、かつ特に単一の処理サイクルのみを含み、かつプルトニウムの還元逆抽出のためのいずれかの操作を不含である方法を開発するという目標を自らに設定した。
【0013】
それゆえに、本発明者は第1に、前記方法の開発を可能にするために要求される特性を有する抽出剤を見いだすことに焦点を合わせた。
【0014】
偶々、N,N-ジアルキルアミドは、使用済み核燃料の処理のためのTBPの可能な代替物として主に研究されてきた抽出剤のファミリーを表す。なぜなら、特に、それらは強い酸性度においてウランおよびプルトニウムに対して一般的に良好な親和性を有し、TBPよりも水相に可溶性でなく、完全に焼却可能であり(CHONシステム)、TBPのものよりも問題がない分解生成物を有するからである。
【0015】
N,N-ジアルキルアミドの2つの型がある:
- 窒素原子が持つ2つのアルキル基が同一であるので、いわゆる「対称」N,N-ジアルキルアミド;および
- 窒素原子が持つ2つのアルキル基が異なるので、いわゆる「非対称」N,N-ジアルキルアミド。
【0016】
対称N,N-ジアルキルアミドは、研究されるべき第1のものであった。例えば、使用済み核燃料の処理のための抽出剤としての対称N,N-ジアルキルアミドの使用に関する3つの特許出願(特許文献1、2、および3。これ以降は参照[1]、[2]、および[3])が1980年代に出願された。これらの2つ、すなわち参照[1]および[3]は、プルトニウムの還元逆抽出操作を行うことなしに、これらのN,N-ジアルキルアミドによってウランおよびプルトニウムを分配する可能性を企図している。
【0017】
参照[1]および[3]において提案されている対称N,N-ジアルキルアミドのいくつかは、高度に酸性の水溶液からウラン(VI)およびプルトニウム(IV)を共抽出すること、次により低い酸性度におけるその分離を、プルトニウムを還元しなければならないことなしに有効に可能にする。
【0018】
しかしながら、これらのN,N-ジアルキルアミドは高度に酸性の水相からTBPよりも少ないプルトニウムの抽出を得ることが判明している。結果として、プルトニウムの定量的な抽出を得るためには、抽出段数は、TBPについて要求される数と比較して増大させられることを必要とする。これは狙いとするコンパクトさという目標に逆行する。
【0019】
その後、非対称N,N-ジアルキルアミドがかなりの数の研究を産んだ。これらの中では、ボンベイのバーバ原子力研究センターによって実施されたもの(例えば、非特許文献1および2による発表を見よ。これ以降は参照[4]および[5])ならびに曁南大学のスン・グオシンによって率いられるグループによって実施されたもの(例えば、非特許文献3および4による発表を見よ。これ以降は参照[6]および[7])の言及がなされ得る。
【0020】
しかしながら、これらの研究の結果が断片的であり、場合によっては矛盾しているという事実のほかに、それらのいずれもウランをプルトニウムから後者を還元することなしに分離する可能性を示唆していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【文献】仏国特許出願公開第2591213号明細書
【文献】仏国特許出願公開第2642561号明細書
【文献】仏国特許出願公開第2642562号明細書
【非特許文献】
【0022】
【文献】Ruikar et al., Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry 1993, 176(2), 103-111
【文献】Prabhu et al., Radiochimica Acta 1993, 60, 109-114
【文献】Cui et al., Radiochimica Acta 2005, 93, 287-290
【文献】Sun et al., Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry 2005, 264(3), 711-713
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0023】
それゆえに、本発明の第1の対象は下の式(I)のN,N-ジアルキルアミドであり:
【化1】

式中:
1は1つから4つまでの炭素原子を有する直鎖アルキル基であり;
2は1つから10個までの炭素原子を有する直鎖アルキル基であり;
3は6つから15個までの炭素原子を有する直鎖または分岐アルキル基であり;
ただし、R1がn-ブチル基でありかつR2がエチル基であるときには、R3はn-オクチル、n-デシル、n-ドデシル、2-エチルヘキシル、および2-エチルオクチル基とは異なる。
【0024】
先述および本明細書の残りにおいて、表現「…から…まで」、「…から…までの範囲」、および「…と…との間」は同等であり、限度が包含されるということを指示することを意味されている。
【0025】
それゆえに、「1つから4つまでの炭素原子を有する直鎖アルキル基」によって、メチル、エチル、n-プロピル、およびn-ブチル基から選択されるアルキル基が意味される。
【0026】
「1つから10個までの炭素原子を有する直鎖アルキル基」によって、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、およびn-デシル基から選択されるいずれかのアルキル基が意味される。一方では、「6つから15個までの炭素原子を有する直鎖または分岐アルキル基」によって、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15個までの炭素原子を有しかつゼロ個の、1つの、または複数の同じまたは異なる分枝を有するいずれかのアルキル基が意味される。例えば、メチル基によって置換されたn-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデシル、n-ドデシル、n-トリデシル、またはn-テトラデシル基(例えば、2-もしくは4-メチルペンチル基、2-もしくは4-メチルヘキシル基、2-もしくは4-メチルヘプチル基など);エチル基によって置換されたn-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデシル、n-ドデシル、またはn-トリデシル基(例えば、2-エチルブチル、2-エチルペンチル基、2-もしくは4-エチルヘキシル基、2-もしくは4-エチルオクチル基、2-もしくは4-エチルデシル基など);n-プロピルまたはイソプロピル基によって置換されたn-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデシル、またはn-ドデシル基;n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、またはtert-ブチル基によって置換されたn-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル、またはn-ウンデシル基;2つのメチル基によって置換されたn-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデシル、n-デシル、またはn-トリデシル基;メチル基およびエチル基によって置換されたn-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデシル、またはn-ドデシル基(例えば、3-エチル-4-メチルヘキシル基、3-メチル-4-エチルヘキシル基、3-エチル-4-メチルオクチル基、3-メチル-4-エチルオクチル基);など。
【0027】
表現「水溶液」および「水相」もまた同等かつ交換可能であり、表現「有機溶液」および「有機相」も同様である。
【0028】
本発明に従うと:
- R1はメチル、エチル、もしくはn-プロピル基であり、および/または
- R2はn-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、もしくはn-ヘプチル基であり、および/または
- R3はn-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、2-エチルヘキシル、n-ノニル、n-デシル、もしくは2-エチルオクチル基であり;
再び、ただし、R1がn-ブチル基でありかつR2がエチル基であるときには、R3はn-オクチル、n-デシル、n-ドデシル、2-エチルヘキシル、または2-エチルオクチル基とは異なる、
ということが好ましい。
【0029】
加えて、N,N-ジアルキルアミドの炭素原子の総数は17、18、または19であるということが好ましい。
【0030】
有利には、N,N-ジアルキルアミドは:
- R1がメチル基であり、R2がn-ブチル基であり、かつR3がn-ノニル基であるN,N-ジアルキルアミド;
- R1およびR2がそれぞれn-プロピル基であり、かつR3がn-オクチル基であるN,N-ジアルキルアミド;および
- R1がn-プロピル基であり、R2がn-ペンチル基であり、かつR3がn-ヘキシル基であるN,N-ジアルキルアミド、
から選択される。
【0031】
有利には、上で定められているN,N-ジアルキルアミドは、下の式(II)のカルボン酸:
【化2】

(式中:
1は1つから4つまでの炭素原子を有する直鎖アルキル基であり;
2は1つから10個までの炭素原子を有する直鎖アルキル基である)を;
式HN(CH3)R3のアミン(式中、R3は6つから15個までの炭素原子を有する直鎖アルキル基である)と、有機溶媒中においてかつカップリング剤の存在下において反応させることによって得られ;
ただし、R1がn-ブチル基でありかつR2がエチル基であるときには、R3はn-オクチル、n-デシル、n-ドデシル、2-エチルヘキシル、および2-エチルオクチル基とは異なる。
【0032】
それゆえに、本発明のさらなる対象は、この反応を含むN,N-ジアルキルアミドを合成するための方法である。
【0033】
カップリング剤は、液媒体中においてペプチド合成に用いられる能力があるいずれかのカップリング剤、特に、1,3-ジシクロヘキシルカルボジイミド(もしくはDDC)または1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(もしくはEDC)などのカルボジイミドであり得る。
【0034】
有利には、このカップリング剤は、トリアゾールなどの活性化剤、例えば1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(もしくはHOBt)または1-ヒドロキシアザベンゾトリアゾール(もしくはHOAt)と一緒に用いられる。
【0035】
上で定められているN,N-ジアルキルアミドは、硝酸水溶液などの酸水溶液からウラン(VI)およびプルトニウム(IV)を非常に効率的に抽出することができることが判明している。
【0036】
それゆえに、本発明のさらなる対象は、ウラン(VI)および/またはプルトニウム(IV)を酸水溶液から抽出するための、先に定められているようなN,N-ジアルキルアミドまたはN,N-ジアルキルアミドの混合物の使用である。
【0037】
本発明に従うと、ウランおよび/またはプルトニウムが酸水溶液から抽出され、好ましくは液液抽出による。すなわち、N,N-ジアルキルアミドまたはN,N-ジアルキルアミドの混合物を有機希釈剤中に含む有機溶液とこの水溶液を接触させること、それから水溶液および有機溶液を分離することによる。
【0038】
このケースにおいて、有機溶液は、好ましくは1mol/Lから2mol/Lまでの、より好ましくは1.1mol/Lから1.4mol/Lまでの、例えば1.2mol/LのN,N-ジアルキルアミドまたはN,N-ジアルキルアミドの混合物を含む。
【0039】
好ましくは、酸水溶液は、硝酸中の使用済み核燃料の溶解からもたらされる水溶液、すなわち、典型的には3mol/Lから6mol/Lまでの硝酸を含む水溶液である。
【0040】
ウラン(VI)およびプルトニウム(IV)を酸水溶液から定量的に抽出可能なことに加えて、上で定められているN,N-ジアルキルアミドは、プルトニウムを還元することなしに、このようにして抽出されるプルトニウムからのウランの爾後の分離を可能にすることが判明しており、この分離は:
- プルトニウムからのウランの完全な分離(すなわちこれによって2つの水溶液が得られ、1つはウランなしのプルトニウムを含有し、他方はプルトニウムなしのウランを含有する);
- または、プルトニウムからのウランの部分的な分離(すなわちこれによって2つの水溶液が得られ、1つはプルトニウムおよびウランの混合物を含有し、他方はプルトニウムなしのウランを含有する)、
どちらかであり得る。
【0041】
それゆえに、本発明のさらなる対象は、酸水溶液から出発してプルトニウム(IV)からウラン(VI)を完全にまたは部分的に分離するための、先に定められているようなN,N-ジアルキルアミドまたはN,N-ジアルキルアミドの混合物の使用であり、この使用は:
a) 水溶液からのウランおよびプルトニウムの共抽出(この共抽出は、抽出剤としてのN,N-ジアルキルアミドまたはN,N-ジアルキルアミドの混合物を有機希釈剤中に溶液として含む有機溶液との水溶液の少なくとも1つの接触、次に水溶液および有機溶液の分離を含む);
b) ステップa)からもたらされる有機溶液からの酸化数+IVのプルトニウムの逆抽出(この逆抽出は、0.1mol/Lから0.5mol/Lまでの硝酸を含む水溶液との有機溶液の少なくとも1つの接触、次に有機溶液および水溶液の分離を含む);ならびに
c) ステップb)からもたらされる水溶液中に含有されるウラン部分の全てまたは一部の抽出(この抽出は、ステップa)において用いられる有機溶液と同じ組成を有する有機溶液との水溶液の少なくとも1つの接触、次に水溶液および有機溶液の分離を含む)、
を含み;
これによって、ウランなしのプルトニウム、またはプルトニウムおよびウランの混合物を含む水溶液、ならびにプルトニウムなしのウランを含む有機溶液が得られる。
【0042】
ステップa)において用いられる有機溶液、およびそれゆえにステップc)において用いられるものは、好ましくは1mol/Lから2mol/Lまでの、より好ましくは1.1mol/Lから1.4mol/Lまでの、例えば1.2mol/LのN,N-ジアルキルアミドまたはN,N-ジアルキルアミドの混合物を含む。
【0043】
ウランおよびプルトニウムが共抽出される酸水溶液を考えると、これは好ましくは硝酸中の使用済み核燃料の溶解からもたらされる水溶液、すなわち典型的には3mol/Lから6mol/Lまでの硝酸を含む水溶液である。
【0044】
それから、ステップc)からもたらされる有機溶液中に含有されるウランは、0.5mol/L以下の、より好ましくは0.05mol/L以下の硝酸を含む水溶液と有機溶液を接触させること、次に有機溶液および水溶液の分離によって、この相から逆抽出され得る。
【0045】
前述の特性を発揮することに加えて、上で定められているN,N-ジアルキルアミドは、硝酸中の使用済み核燃料の溶解からもたらされる水溶液からのウラン(VI)およびプルトニウム(IV)の抽出を、この溶液中に含有される主な核分裂生成物について非常に高い分離係数によって可能にすることが判明している。
【0046】
特性のこの蓄積を考えると、これらのN,N-ジアルキルアミドは、使用済み核燃料の溶解からもたらされる硝酸水溶液を処理するための方法の開発を可能にした。これは、一方では前記溶液中に含有されるウランおよびプルトニウムの回収および除染の点でPUREXプロセスと丁度同じくらい良好な性能を与えながら、プルトニウムのいずれかの還元逆抽出を不含であり、かつ単一の処理サイクルのみを含む。
【0047】
それゆえに、本発明のさらなる対象は、硝酸中の使用済み核燃料の溶解からもたらされる水溶液を処理するための単一サイクル方法であり、水溶液は、ウラン、プルトニウム、アメリシウム、キュリウム、およびテクネチウムを包含する核分裂生成物を含み、サイクルは:
a) 水溶液からのウランおよびプルトニウムの共抽出(共抽出は、抽出器における、抽出剤としての上で定められているN,N-ジアルキルアミドまたはN,N-ジアルキルアミドの混合物を有機希釈剤中に溶液として含む有機溶液との水溶液の少なくとも1つの接触、次に水溶液および有機溶液の分離を含む);
b) アメリシウム、キュリウム、および核分裂生成物について、ステップa)からもたらされる有機溶液の除染(この除染は、抽出器における、1mol/Lから6mol/Lまでの硝酸を含む水溶液との有機溶液の少なくとも1つの接触、次に有機溶液および水溶液の分離を含む);
c) ウランなしのプルトニウムまたはプルトニウムおよびウランの混合物どちらかを含む水溶液、ならびにプルトニウムなしのウランを含む有機溶液への、ステップb)からもたらされる有機溶液中に含有されるウランおよびプルトニウムの分配(この分配は:
1) ステップb)からもたらされる有機溶液からの酸化数+IVのプルトニウムおよびウランの部分の逆抽出(この逆抽出は、抽出器における、0.1mol/Lから0.5mol/Lまでの硝酸を含む水溶液との有機溶液の少なくとも1つの接触、次に有機溶液および水溶液の分離を含む);
2) c1)からもたらされる水溶液中に含有されるウラン部分の全てまたは一部の抽出(この抽出は、抽出器における、ステップa)において用いられる有機溶液と同一の有機溶液との水溶液の少なくとも1つの接触、次に水溶液および有機溶液の分離を含む)、
を含む);
d) テクネチウムについて、ステップc1)からもたらされる有機溶液の除染(除染は:
1) ステップc1)からもたらされる有機溶液からの酸化数+IVのテクネチウムの逆抽出(この逆抽出は、抽出器における、0.1mol/Lから3mol/Lまでの硝酸とテクネチウムを酸化数+VIIから酸化数+IVまで還元可能な少なくとも1つの還元剤とを含む水溶液との有機溶液の少なくとも1つの接触、次に有機溶液および水溶液の分離を含む);
2) ステップd1)からもたらされる水溶液中に含有されるウラン部分の抽出(この抽出は、抽出器における、ステップa)において用いられる有機溶液と同一の有機溶液との水溶液の少なくとも1つの接触、次に水溶液および有機溶液の分離を含む)、
を含む);
e) ステップd1)からもたらされる有機溶液からのウランの逆抽出(この逆抽出は、抽出器における、0.5mol/L以下の硝酸を含む水溶液との有機溶液の少なくとも1つの接触、次に有機溶液および水溶液の分離を含む);ならびに
f) ステップe)からもたらされる有機相の再生、
を含み;
これによって、アメリシウム、キュリウム、およびテクネチウムを包含する核分裂生成物について除染された第1および第2の水溶液が得られ、第1の水溶液はウランなしのプルトニウム、またはプルトニウムおよびウランの混合物を含み、第2の水溶液はプルトニウムなしのウランを含む。
【0048】
本発明に従うと、ステップa)、c2)、およびd2)において用いられる有機溶液は同じ組成を有するので、ステップa)において用いられる有機溶液、ならびにゆえにステップc2)およびd2)において用いられるものは、好ましくは1mol/Lから2mol/Lまでの、より好ましくは1.1mol/Lから1,4mol/Lまでの、例えば1.2mol/LのN,N-ジアルキルアミドまたはN,N-ジアルキルアミドの混合物を含む。
【0049】
先に指示されているように、ステップb)において用いられる水溶液は1mol/Lから6mol/Lまでの硝酸を含み得る。
【0050】
しかしながら、ステップa)からもたらされる有機溶液からのルテニウムおよびテクネチウムの逆抽出を容易化するために、この水溶液は4mol/Lから6mol/Lまでの硝酸を含有するということが好ましい。このケースにおいて、有利には、ステップb)は有機溶液の脱酸性化をもまた含み、この脱酸性化は、0.1mol/Lから1mol/Lまでの、より好ましくは0.5mol/Lの硝酸を含む水溶液との有機溶液の少なくとも1つの接触、次に有機溶液および水溶液の分離を含む。
【0051】
本発明に従うと、プルトニウムの濃縮的逆抽出、すなわち、それが逆抽出される有機溶液中のこの元素の濃度よりもプルトニウムの濃度が高い水溶液に至るプルトニウム逆抽出を得るように、ステップc1)が展開する抽出器における有機および水溶液の接触は、有利には1よりも高い、好ましくは3に等しいかより高い、より好ましくは5に等しいかより高いO/A流量比による抽出器におけるこれらの溶液の循環を含む。
【0052】
ステップd1)において用いられる水溶液中に含有される還元剤(単数または複数)は、好ましくは、硝酸ウラナス(「U(IV)」ともまた呼ばれる)、硝酸ヒドラジニウム(「硝酸ヒドラジン」ともまた呼ばれる)、硝酸ヒドロキシルアンモニウム(「硝酸ヒドロキシルアミン」ともまた呼ばれる)、アセトアルドキシム、ならびにその混合物、例えば硝酸ウラナスおよび硝酸ヒドラジニウムの混合物、硝酸ウラナスおよび硝酸ヒドロキシルアンモニウムの混合物、または硝酸ウラナスおよびアセトアルドキシムの混合物から選択される。硝酸ウラナスおよび硝酸ヒドラジニウムの混合物または硝酸ウラナスおよび硝酸ヒドロキシルアンモニウムの混合物が好ましく、これは好ましくは0.1mol/Lから0.3mol/Lまでの範囲の、典型的には0.2mol/Lの濃度で用いられる。
【0053】
加えて、テクネチウム逆抽出の動力学を促進しながら一方では水相中のこの元素の再酸化の現象を最も良好に限定するように、常温において行われ得るステップd1)は、それでも尚好ましくは30から40℃までの範囲の温度で、より好ましくは32℃で行われる。それゆえに、ステップd1)が展開する抽出器は好ましくは30℃と40℃との間の温度まで加熱される。
【0054】
本発明に従うと、好ましくは、ステップd2)はさらにステップd1)からもたらされる水溶液の酸性化を含み、この酸性化は、水溶液中の硝酸の濃度を少なくとも2.5mol/Lという値まで持って行くために、ステップd2)が展開する抽出器への硝酸の追加を含む。
【0055】
ステップe)は常温において実施され得る。しかしながら、ここで再びウランの逆抽出を促進するために、それは好ましくは40℃から50℃までの範囲の温度で実施される。それゆえに、ステップe)が展開する抽出器は好ましくは40℃と50℃との間の温度まで加熱される。
【0056】
ステップe)が実施される温度にかかわらず、ウランの濃縮的逆抽出、すなわちそれが逆抽出される有機溶液中のこの元素の濃度よりもウランの濃度が高い水溶液に至るウラン逆抽出を得るように、このステップが展開する抽出器における有機および水溶液の接触は、1よりも高いO/A流量比によるこの抽出器におけるこれらの溶液の循環を含む。
【0057】
先に指示されているように、本発明の方法は、さらに、ステップe)からもたらされる有機溶液を再生するためのステップf)を含む。好ましくは、この再生は、塩基性水溶液による有機溶液の少なくとも1つの洗浄、次に硝酸の水溶液による有機溶液の少なくとも1つの洗浄を含む。
【0058】
すでに言及されたものに加えて、本発明の方法は次の利点をもまた有する:
- ウランの逆抽出はPUREXプロセスよりも実装することが容易である。なぜなら、それは、常温においておよび熱して両方で、1よりも高いO/A流量比を用いて実施され得るからである。これはウランの濃縮的逆抽出を可能にし、これはPUREXプロセスでは可能でない;
- それがプルトニウムのいずれかの還元反応を適用せず、それによってプルトニウム再酸化のいずれかのリスクを排除するという事実によって、プルトニウムの逆抽出もまたPUREXプロセスよりも実装することが容易であり、後者のプロセスよりも濃縮的な様式で行われ得る;使用済み核燃料の将来の処理プラントは、現行で再処理されているものよりも高いプルトニウム含量を有する燃料(例えば、軽水または高速中性子炉からのMOX燃料)を処理しなければならないであろうから、これらの利点はそれだけますます重要である;
- N,N-ジアルキルアミドの分解生成物(加水分解および放射線分解による)はTBPのものよりも問題がない。なぜなら、それらは水溶性であり、プルトニウムを保持することが蓋然的な錯体を形成しないからである;
- N,N-ジアルキルアミドは、典型的には、TBPのものよりも100から200倍低い水相への可溶性を有する。これは、PUREXプロセスによって提供されるものと比較して、本発明の方法からもたらされる有機希釈剤による水溶液の洗浄を廃止または少なくとも削減することを企図することを可能にする;
- N,N-ジアルキルアミドおよびそれらの分解生成物は炭素、水素、酸素、および窒素の原子のみを含むので、それらは完全に焼却可能であり、それゆえにTBPおよびその分解生成物とは違って不利益な二次廃棄物を生じない。
【0059】
本発明の他の特徴および利点は下で与えられている追加の記載から明らかになるであろう。
【0060】
しかしながら、明白に、この追加の記載は専ら本発明の対象を例示するために与えられており、いずれかの状況においてこの対象を限定すると解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0061】
図1図1は、使用済み核燃料の溶解からもたらされる硝酸水溶液を処理するための本発明の方法のフローダイアグラムを与えている;この図において、長方形1から7は、多段抽出器、例えば、使用済み核燃料を処理するために従来用いられるもの(ミキサーセトラー、パルスカラム、または遠心抽出器)を表す;有機相は実線によって象徴され、一方では、水相は点線によって象徴されている。
【発明を実施するための形態】
【0062】
I - 本発明のN,N-ジアルキルアミドの合成:
先に言及されたように、本発明のN,N-ジアルキルアミドは次の反応スキームによって得られ得る:
【化3】

1=C1-C4直鎖アルキル基;R2=C1-C10直鎖アルキル基;かつR3=C6-C15直鎖または分岐アルキル基である。
【0063】
この反応のためには、セプタムおよび磁石撹拌子を備えた丸底フラスコにおいて、窒素雰囲気下で、DCC(1.2eq.)およびHOBt(1.2eq.)を2-メチルテトラヒドロフラン(MeTHF)中に0.1mol/Lで溶解する。それから、式(II)のカルボン酸(1eq.)を追加し、反応媒体を常温において10分間に渡って撹拌する。次に、式(III)のアミン(1eq.)を滴下し、反応媒体を常温で一晩撹拌する。
【0064】
その後、反応媒体をセライト(商標)によって濾過する。濾液を炭酸ナトリウム飽和水溶液(Na2CO3)によって3回、塩化ナトリウム飽和水溶液(NaCl)によって1回洗浄する。有機相を収集し、無水硫酸マグネシウム(MgSO4)によって乾燥し、濾過し、ロータリーエバポレーターによって濃縮する。
【0065】
反応生成物をシリカカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘプタン/AcOEt:100:0から75:25,v/v)によって精製し、式(I)のN,N-ジアルキルアミドを2つの回転異性体の形態で得る(無色または淡黄色液、収率:60%から定量的まで)。
【0066】
I.1 - N-メチル-n-ノニル-2-メチルヘキサンアミドまたはMNMHAの合成:
上に記載されているように、MNMHAを2-メチルヘキサン酸およびN-メチル-n-ノニルアミンから合成した。これは上の式(I)を満たし、R1はメチル基であり、R2はn-ブチル基であり、一方では、R3はn-ノニル基である。そのキャラクタリゼーションは次であった:
TLC (シリカゲル): Rf = 0.33 (ヘプタン/AcOEt 8:2, v/v)
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ (ppm): 3.33 (m, 1H, NCH2); 3.20 (m, 1H, NCH2); 2.92および2.83 (2s, 3H, NCH3, 2つの回転異性体); 2.56 (m, 1H, CH); 1.63-1.26 (m, 4H, 2 CH2); 1.25-1.11 (m, 16H, 8 CH2); 1.00 (m, 3H, CH3); 0.79 (m, 6H, 2 CH3)
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ (ppm): 176.7; 176.3; 49.8; 47.8; 35.7; 35.4; 35.2; 34.2; 33.9; 33.6; 31.8; 31.8; 29.8; 29.7; 29.5; 29.5; 29.4; 29.3; 29.2; 29.2; 28.9; 27.2; 26.8; 26.7; 22.8; 22.7; 22.6; 22.6; 18.0; 17.4; 14.0; 14.0; 13.9; 13.9
IR: ν = 2956, 2924, 2855, 1641 (C=O), 1465 cm-1
MS (ESIポジティブモード): m/z 270 [M+H]+, 333 [M+ACN+Na]+, 562 [2M+Na]+
HRMS (EIポジティブモード): C17H35NO計算値: 269.2719; 実測値: 269.2723.
【0067】
I.2 - N-メチル-n-オクチル-2-プロピルペンタンアミドまたはMOPPAの合成:
MOPPAを2-プロピルペンタン酸およびN-メチル-n-オクチルアミンから合成した。これは上の式(I)を満たし、R1およびR2は両方ともn-プロピル基であり、一方では、R3はn-オクチル基である。そのキャラクタリゼーションは次であった:
TLC (シリカゲル): Rf = 0.37 (ヘプタン/AcOEt 8:2, v/v)
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ (ppm): 3.25 (t, J = 7.5 Hz, 1H, NCH2); 3.17 (t, J = 7.6 Hz, 1H, NCH2); 2.89および2.80 (2s, 3H, NCH3, 2つの回転異性体); 2.50 (m, 1H, CH); 1.55-1.34 (m, 4H, 2 CH2); 1.31-1.09 (m, 16H, 8 CH2); 0.77-0.72 (m, 9H, 3 CH3)
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ (ppm): 176.1; 175.8; 49.8; 47.8; 40.9; 40.7; 35.3; 35.3; 35.3; 33.5; 31.7; 31.6; 29.2; 29.2; 29.2; 29.1; 28.9; 27.2; 26.8; 26.7; 22.5; 22.5; 20.8; 20.7; 14.2; 14.1; 14.1; 13.9; 13.9.
IR: ν = 2955, 2925, 2856, 1639 (C=O), 1464 cm-1
MS (ESIポジティブモード) : m/z 270 [M+H]+, 333 [M+ACN+Na]+, 562 [2M+Na]+
HRMS (EIポジティブモード): C17H35NO計算値: 269.2719; 実測値: 269.2727.
【0068】
I.3 - N-メチル-N-ヘキシル-2-プロピルヘプタンアミドまたはMHPHepAの合成:
MHPHepAを2-プロピルヘプタン酸およびN-メチル-n-ヘキシルアミンから合成した。これは上の式(I)を満たし、R1はn-プロピル基であり、R2はn-ペンチル基であり、一方では、R3はn-ヘキシル基である。そのキャラクタリゼーションは次であった:
TLC (シリカゲル): Rf = 0.31 (ヘプタン/AcOEt 8:2, v/v)
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ (ppm): 3.30 (dt, J = 1.8 Hz, J = 7.1 Hz, 1H, NCH2); 3.21 (dt, J = 2.2 Hz, J = 6.9 Hz, 1H, NCH2); 2.94および2.85 (2s, 3H, NCH3, 2つの回転異性体); 2.53 (m, 1H, CH); 1.59-1.39 (m, 4H, 2 CH2); 1.36-1.14 (m, 16H, 8 CH2); 0.83-0.76 (m, 9H, 3 CH3).
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ (ppm): 176.2; 176.0; 49.9; 47.9; 41.2; 41.0; 35.5; 35.4; 35.4; 33.7; 33.2; 33.1; 32.1; 32.0; 31.6; 31.5; 29.0; 27.5; 27.3; 27.2; 26.5; 26.5; 22.6; 22.5; 20.9; 20.8; 14.3; 14.2; 14.0; 14.0; 13.9.
IR: ν = 2956, 2926, 2857, 1638 (C=O), 1459 cm-1
MS (ESIポジティブモード): m/z 270 [M+H]+, 333 [M+ACN+Na]+
HRMS (EIポジティブモード): C17H35NO計算値: 269.2719; 実測値: 269.2732.
【0069】
II - 本発明のN,N-ジアルキルアミドの抽出特性:
II.1 - ウラン分配比の取得:
抽出試験を:
- 有機相として:TPH中に0.4mol/LのMNMHAまたはMOPPAまたはMHPHepAを含む溶液;および
- 水相として:12g/Lのウラン(VI)および4mol/LのHNO3または0.5mol/LのHNO3どちらかを含む水溶液(プルトニウムをU/Pu分配ステップにおいて2つの水系ストリームへと逆抽出するために典型的に用いられる弱酸性度の水相を模擬するため)、
を用いて実施した。
【0070】
これらの試験のそれぞれは、チューブにおいて撹拌しながら、有機相の1つを水相の1つと30分間に渡って25℃で接触させることによって行った。用いたO/A体積比は1であった。これらの相は遠心分離後に互いから分離された。
【0071】
分離した有機および水相のウランの濃度を誘導結合プラズマ発光分析(ICP-AES)によって測定した。
【0072】
II.2 - プルトニウム分配比の取得:
上の項目II.1に記載されているものに類似の抽出試験を実施したが、水相としては、12g/Lのウラン(VI)、4mol/LのHNO3または0.5mol/LのHNO3、およびプルトニウム(IV)を含む水溶液を用いた(≒0.4MBq/mL)。
【0073】
相を分離した後に、有機および水相のウランの濃度をICP-AESによって測定し、一方では、有機および水相のプルトニウム239+240の活性をαスペクトロメトリーによって測定した。
【0074】
II.3 - 結果:
下の表1は、試験した各N,N-ジアルキルアミドについて、4mol/LのHNO3および0.5mol/LのHNO3の水相によって得られるようなDUと記されているウランおよびDPUと記されているプルトニウムの分配比、ならびに0.5mol/LのHNO3の水相によって得られるようなFSU/PUと記されているU/Pu分離係数を与えている。
【0075】
この表は、同じ操作条件においてだが、有機相として、従来技術のN,N-ジアルキルアミドを含む溶液を用いて得られた実験結果をもまた与えている。すなわち:
- 1つの溶液は、0.32mol/LのN,N-ジ(2-エチルヘキシル)-イソブタンアミド(またはDEHiBA)および0.18mol/LのN,N-ジ(2-エチルヘキシル)-n-ブタンアミド(またはDEHBA)をTPH中に含む。これらの2つのN,N-ジアルキルアミドは参照[3]においては名称DOiBAおよびDOBAで提案されている;
- 1つの溶液は、0.5mol/LのN,N-ジ(2-エチルヘキシル)-3,3-ジメチルブタンアミド(またはDEHDMBA)をTPH中に含む。このN,N-ジアルキルアミドは参照[1]においては名称DOTAで提案されている。
【表1】
【0076】
この表は、有機相において0.4mol/Lの濃度で用いられるときに、本発明のN,N-ジアルキルアミドがウラン(VI)およびプルトニウム(IV)を硝酸水相から十分に良好に抽出して(DU>1;DPU>0.1)、硝酸中の使用済み核燃料の溶解からもたらされる水溶液を処理するための方法においてウラン(VI)およびプルトニウム(IV)の定量的な共抽出を可能にするということを示している。これには、それらは1mol/Lから2mol/Lまでの範囲の濃度で用いられるであろう。
【0077】
優良なU(VI)/Pu(IV)選択性が、0.5mol/Lの硝酸濃度によって、プルトニウム(IV)の非常に低い分配比(DPU<0.0030)で到達される。特に、MHPHepAは27というFSU/PU分離係数が得られることを可能にする(FSU/PU>12)。
【0078】
それゆえに、本発明のN,N-ジアルキルアミドが1mol/Lから2mol/Lまでの範囲の濃度で用いられるであろう硝酸中の使用済み核燃料の溶解からもたらされる水溶液を処理するための方法では、0.5mol/Lの硝酸を含む水相を用いて、U(VI)/Pu(IV)共抽出からもたらされる有機相からプルトニウム(IV)を選択的に逆抽出することが可能であろう。
【0079】
また、表1に示されているように、本発明のN,N-アルキルアミドは、0.5mol/Lの硝酸濃度において、参照[3]のDEHiBA/DEHBA混合物によって得られるものよりも高いU(VI)/Pu(IV)選択性を発揮し、一方では、混合物としてよりもむしろ単独で用いられる能力があるという利点を有する。
【0080】
本発明のN,N-アルキルアミドの性能は参照[1]のDEHDMBAのものに近い。しかしながら、それらは後者よりも粘性でないという利点を有する(これは、硝酸中の使用済み核燃料の溶解からもたらされる水溶液を処理するためのDEHDMBAによる方法の開発の制限パラメータの1つである)。なぜなら、1.2mol/LのMNMHAまたはMOPPAをTPH中に含む有機相の25℃における粘度はそれぞれ2.25mPa/sおよび2.16mPa/sであり、一方では、それは、1.27mol/LのDEHDMBAをTPH中に含む有機相では3.6mPa/sであるからである。
【0081】
III - 溶解した使用済み核燃料の水溶液を処理するための本発明の方法のフローチャート
硝酸中に溶解した使用済み核燃料の水溶液を処理するための本発明の方法のフローチャートを与える図1の参照をする。
【0082】
この図に示されているように、方法は8つのステップを含む。
【0083】
図1において「U/Pu共抽出」と記されているこれらのステップの第1は、ウランおよびプルトニウムを、第1のものは酸化数+VIで第2のものは酸化数+IVで、溶解した使用済み核燃料の硝酸水溶液から一緒に抽出することを意図されている。
【0084】
典型的には、前記溶液は、3から6mol/LまでのHNO3、ウラン、プルトニウム、マイナーアクチニド(アメリシウム、キュリウム、およびネプツニウム)、核分裂生成物(La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Mo、Zr、Ru、Tc、Rh、Pd、Y、Cs、Ba、…)、および鉄などのいくつかの腐食生成物を含む。
【0085】
「U/Pu共抽出」ステップは、溶解溶液を抽出器1において有機相(図1において「OP」と記されている)に対して向流で循環させることによって行われ、これは、1mol/Lから2mol/Lまでの、より好ましくは1.1mol/Lから1.4mol/Lまでの、例えば1.2mol/Lの本発明のN,N-ジアルキルアミドまたは本発明のN,N-ジアルキルアミドの混合物を有機希釈剤中の溶液として含む。
【0086】
この有機希釈剤は、脂肪族の直鎖または分岐炭化水素、例えばn-ドデカン、TPH、またはTOTALによって商標名Isane-IP185Tで市販されているイソパラフィン系希釈剤であり、TPHが好ましい。
【0087】
図1において「FP洗浄」と記されている方法の第2のステップは、溶解溶液からウランおよびプルトニウムと一緒に抽出された分裂生成物の部分を、「U/Pu共抽出」からもたらされる有機相から逆抽出することを意図されている。
【0088】
この「FP洗浄」ステップは「U/Pu共抽出」からもたらされる有機相の1つ以上の洗浄操作を含む。各洗浄操作は、1mol/Lから6mol/LまでのHNO3、しかし好ましくは4mol/Lから6mol/LまでのHNO3、より好ましくは4から5mol/LまでのHNO3の濃度であり得る硝酸水溶液に対して向流で、抽出器2においてこの有機相を循環させることによって実施されて、ルテニウムおよびテクネチウムの逆抽出を容易化する。
【0089】
「FP洗浄」ステップが、1つ以上の強酸性の、すなわち典型的には3mol/LのHNOに等しいかまたは上回る水溶液によって実施される場合には、このステップは有機相の脱酸性化をもまた含む。これは、低い酸性度の、すなわち0.1mol/Lから1mol/LまでのHNOを含む硝酸水溶液、例えば0.5mol/LのHNO3を含む水溶液に対して向流でこの有機相を循環させることによって行われて、あまりに多量の酸が図1において「Pu逆抽出」と記されている第3のステップに割り当てられた抽出器に持ち込まれ、この第3のステップの性能を乱すことを回避する。
【0090】
U/Pu分配の第1のステップを表す「Pu逆抽出」ステップは、「FP洗浄」からもたらされる有機相からプルトニウムを酸化数+IVで、ゆえにこのプルトニウムを還元することなしに逆抽出することを意図されている。
【0091】
このステップは、0.1mol/Lから0.5mol/LまでのHNO3を含む水溶液に対して向流で、好ましくは、1よりも高い、好ましくは3またはより高い、より好ましくは5というO/A流量比を用いて、この有機相を抽出器3において循環させることによって行われて、プルトニウム(IV)の濃縮的逆抽出を得る。
【0092】
「Pu逆抽出」ステップにおいて行われるプルトニウム(IV)の逆抽出は、「FP洗浄」からもたらされる有機相中にもまた含有されているウラン(VI)の部分の逆抽出を伴う。
【0093】
それゆえに、図1において「第1のU洗浄」と記されておりU/Pu分配の第2のステップを表す方法の第4のステップは、「Pu逆抽出」からもたらされる水相から:
- この水相中に含有されるウランの全部(U/Pu分配が、ウランなしのプルトニウムを含む水溶液ならびにプルトニウムなしのウランを含む有機溶液に至ることが望まれる場合);
- または、「第1のU洗浄」の終わりにウランおよびプルトニウムを先に選ばれた比で含む水溶液を得ることが可能であるウランの量(U/Pu分配が、プルトニウムおよびウランの混合物をこの比で含む水溶液、ならびにプルトニウムなしのウランを含む有機溶液に至ることが望まれる場合)、
どちらかを抽出することを意図されている。
【0094】
両方のケースにおいて、「第1のU洗浄」は、「U/Pu共抽出」に用いられる有機相と同じ組成を有する有機相に対して向流で、「Pu逆抽出」からもたらされる水相を抽出器4において循環させることによって行われる。抽出されるウランの量は、O/A流量の比および水相の酸性度両方に作用することによって調整される。有機相/水相流量比および水相の酸性度が上がると、それだけウランはより良好に抽出される。それゆえに、この水相に付与されることを望まれる酸性度に応じて、抽出器4を循環する水相へのより多大なまたは少ない濃度のHNO3の追加が提供され得る。
【0095】
図1において「α-Tc堰止」と記されている第5のステップは、「Pu逆抽出」からもたらされる有機相から、この有機相をテクネチウムについて除染する目的で、「U/Pu共抽出」において抽出されかつ「FP洗浄」において逆抽出されなかったテクネチウム部分を逆抽出することを意図されている。
【0096】
それは、「Pu逆抽出」からもたらされる有機相から、「U/Pu共抽出」において抽出されかつ「α-Tc堰止」までテクネチウムに付いて来たネプツニウム部分と、この有機相が尚含有し得るわずかなプルトニウムとを逆抽出することをもまた可能にする。
【0097】
それは、低い酸性度の、すなわち0.1mol/Lから3mol/LまでのHNO、より好ましくは1mol/LのHNO3を含みかつ1つ以上の還元剤を含む硝酸水溶液に対して向流で、「Pu逆抽出」からもたらされる有機相を抽出器5において循環させることによって行われて、一方ではウラン(VI)を還元することなしに、テクネチウム-これは酸化数+VIIで有機相中に含有される-をN,N-ジアルキルアミドによって抽出不可能なテクネチウム(IV)に、ネプツニウム(VI)を弱い酸性度においてN,N-ジアルキルアミドによって抽出不可能なネプツニウム(IV)またはネプツニウム(V)に、プルトニウム(IV)を弱い酸性度においてN,N-ジアルキルアミドによってプルトニウム(IV)よりも抽出可能でないプルトニウム(III)に還元する。
【0098】
還元剤として、硝酸ウラナス(またはU(IV))、硝酸ヒドラジニウム(またはNH)、硝酸ヒドロキシルアンモニウム(またはNHA)、アセトアルドキシム、またはその混合物、例えばU(IV)/NH、U(IV)/NHA、もしくはU(IV)/アセトアルドキシム混合物が用いられ得、U(IV)/NHまたはU(VI)/NHA混合物が好ましい。水相中のテクネチウム再酸化の現象を縮減し、それによって還元剤(単数または複数)の消費を限定するために、グルコン酸が水溶液に追加され得る。
【0099】
このステップは常温(すなわち20~25℃)において実施され得るが、それは、好ましくは30℃から40℃までの範囲の温度で、より好ましくは32℃で実施されて、一方では水相中のテクネチウム再酸化の現象を限定しながらテクネチウムの逆抽出動力学を促進し、ゆえに、ひとたび逆抽出されたテクネチウムが有機相中に再抽出されるリスクを限定する。
【0100】
図1において「第2のU洗浄」と記されている第6のステップは、「α-Tc堰止」からもたらされる水相から、先行ステップにおいてテクネチウムと一緒に逆抽出されたウランを抽出することを意図されており、その結果、「α-Tc堰止」ステップは水相中のウランの大きい損失に至らない。
【0101】
それは、「α-Tc堰止」からもたらされる水相を、ウランの抽出を促進するための濃硝酸、例えば10Mの追加によるこの水相の酸性化の後に、「U/Pu共抽出」および「第1のU洗浄」において用いられる有機相と同じ組成を有する有機相に対して向流で、抽出器6において循環させることによって行われる。
【0102】
図1において「U逆抽出」と記されている第7のステップは、「α-Tc堰止」からもたらされる有機相からウラン(VI)を逆抽出することを意図されている。
【0103】
それは、非常に低い酸性度の、すなわち0.5mol/L以下の、より好ましくは0.05mol/L以下のHNO3を含む硝酸水溶液、例えば0.01mol/LのHNO3を含む水溶液に対して向流で、「α-Tc堰止」からもたらされる有機相を抽出器7において循環させることによって行われる。このステップは常温で(すなわち20~25℃で)実施され得るが、好ましくは熱して(すなわち、典型的には40~50℃の温度で)1よりも高いO/A流量比を用いて実施されて、ウラン(VI)の濃縮的逆抽出を得る。
【0104】
これらの7つのステップ後に、次が得られる:
- それぞれ抽出器1および6を出る水相に対応する2つのラフィネート(第1のものはアメリシウムおよびキュリウムと一緒に分裂生成物を含み(図1の「一次ラフィネート」)、第2のものはテクネチウム、ネプツニウム、および任意にわずかなプルトニウムを含む(図1の「二次ラフィネート」));
- 抽出器4を出る水相(これは、除染されたプルトニウムまたは除染されたプルトニウムおよびウランの混合物どちらかを含み、従って「Puストリーム」または「Pu+Uストリーム」と呼ばれる);
- 抽出器7を出る水相(これは除染されたウランを含み、「Uストリーム」と呼ばれる);ならびに
- 抽出器7を出る有機相(これはもはやプルトニウムまたはウランをどちらも含まないが、先行ステップの間に蓄積し得るかなりの数の不純物および抽出剤の分解生成物(加水分解および放射線分解によって形成される)を含有し得る)。
【0105】
それゆえに、図1において「OP洗浄」と記されている第8のステップはこの有機相を再生することを意図されており、それを、塩基性水溶液による1つ以上の洗浄、例えば炭酸ナトリウムの0.3mol/L水溶液による第1の洗浄、次に水酸化ナトリウムの0.1mol/L水溶液による第2の洗浄、それから、再酸性化のための硝酸水溶液、例えば2mol/LのHNOを含む水溶液による1つ以上の洗浄に付すことによる。各洗浄は、前記有機相を抽出器において洗浄水溶液に対して向流で循環させることによって行われる。
【0106】
図1において見られ得るように、このようにして再生された有機相は抽出器1および4に戻されて、処理サイクルへと再導入され得る。
図1