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特許7122317フランジ締付けの管理システム、管理プログラム、管理装置、制御ユニットおよび管理方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-10
(45)【発行日】2022-08-19
(54)【発明の名称】フランジ締付けの管理システム、管理プログラム、管理装置、制御ユニットおよび管理方法
(51)【国際特許分類】
   B25B 27/16 20060101AFI20220812BHJP
   B25B 23/14 20060101ALI20220812BHJP
【FI】
B25B27/16
B25B23/14 620J
B25B23/14 620H
B25B23/14 610T
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2019545504
(86)(22)【出願日】2017-09-28
(86)【国際出願番号】 JP2017035272
(87)【国際公開番号】W WO2019064444
(87)【国際公開日】2019-04-04
【審査請求日】2020-07-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000229564
【氏名又は名称】株式会社バルカー
(74)【代理人】
【識別番号】100083725
【弁理士】
【氏名又は名称】畝本 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100140349
【弁理士】
【氏名又は名称】畝本 継立
(74)【代理人】
【識別番号】100153305
【弁理士】
【氏名又は名称】畝本 卓弥
(74)【代理人】
【識別番号】100206933
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 正樹
(72)【発明者】
【氏名】村松 晃
(72)【発明者】
【氏名】栗原 和也
【審査官】小川 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-170446(JP,A)
【文献】特開2016-093873(JP,A)
【文献】特開2017-161388(JP,A)
【文献】特開2011-056643(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 27/16
B25B 23/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シール材を挟み込んだフランジ間を複数組のボルトおよびナット(以下、「ボルト部材」と称する)で締め付けるフランジ締付け管理システムであって、
ボルト部材の識別情報を取得する情報取得部と、
ボルト部材の識別情報または位置情報を記憶する記憶部と、
前記情報取得部と有線または無線で接続され、ボルト部材の識別情報を位置情報と関係付けて前記記憶部に記憶させるとともに、ボルト部材の締付け順序情報をボルト部材の位置情報または識別情報に関係付けて前記記憶部に記憶させ、ボルト部材の識別情報とともに該識別情報に対応する位置情報を前記記憶部から読み出し、ボルト部材の位置が前記締付け順序情報の指定位置に適合するかを判定し、適合する場合に締付け工具に締付け許可の指示または情報を提示することで、前記締付け工具を駆動させるスイッチの操作によって前記締付け工具を駆動させて締付け力を出力させ、適合しない場合に前記締付け工具に締付け不可の指示または情報を提示することで、前記スイッチが操作されても前記締付け工具を駆動させない処理部と、
を備えることを特徴とするフランジ締付け管理システム。
【請求項2】
さらに、前記位置情報または前記識別情報を提示する情報提示部と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載のフランジ締付け管理システム。
【請求項3】
さらに、前記処理部は、ボルト部材の締付け情報をボルト部材の位置情報または識別情報に関係付けて前記記憶部に格納し、ボルト部材の締付け情報を出力することを特徴とする請求項1に記載のフランジ締付け管理システム。
【請求項4】
さらに、前記情報取得部がボルト部材の軸力情報を取得して前記処理部に提供し、
前記処理部が前記軸力情報を前記識別情報または前記位置情報に関係付けて前記記憶部に記憶させることを特徴とする請求項1に記載のフランジ締付け管理システム。
【請求項5】
さらに、前記処理部は、ボルト部材の軸力情報を参照して締付け情報を生成し、締付け工具に締付け力を出力させることを特徴とする請求項1に記載のフランジ締付け管理システム。
【請求項6】
コンピュータで実現させるためのフランジ締付け管理プログラムであって、
ボルト部材の識別情報を取得する機能と、
ボルト部材の識別情報または位置情報を記憶部に記憶させる機能と、
ボルト部材の識別情報を位置情報と関係付けて前記記憶部に記憶させ、ボルト部材の識別情報とともに、該識別情報に対応する位置情報を前記記憶部から読み出す機能と、
ボルト部材の締付け順序情報をボルト部材の位置情報または識別情報に関係付けて前記記憶部に格納する機能と、
ボルト部材の位置が前記締付け順序情報の指定位置に適合するかを判定する機能と、
適合する場合に締付け工具に締付け許可の指示または情報を提示することで、前記締付け工具を駆動させるスイッチの操作によって前記締付け工具を駆動させて締付け力を出力させ、適合しない場合に前記締付け工具に締付け不可の指示または情報を提示することで、前記スイッチが操作されても前記締付け工具を駆動させない機能と、
を前記コンピュータで実現させるためのフランジ締付け管理プログラム。
【請求項7】
さらに、ボルト部材の締付け情報を、ボルト部材の位置情報または識別情報に関係付けて前記記憶部に格納する機能と、
ボルト部材に対する締付け情報を読み出す機能と、
前記締付け情報を提示させる機能と、
を含むことを特徴とする、請求項6に記載のフランジ締付け管理プログラム。
【請求項8】
さらに、情報取得部がボルト部材の軸力情報を取得する機能と、
前記軸力情報を前記識別情報または前記位置情報に関係付けて前記記憶部に記憶させる機能と、
を含むことを特徴とする請求項6に記載のフランジ締付け管理プログラム。
【請求項9】
さらに、ボルト部材の軸力情報を参照して締付け情報を生成する機能と、
締付け工具に締付け力を出力させる機能と、
を含むことを特徴とする請求項6に記載のフランジ締付け管理プログラム。
【請求項10】
シール材を挟み込んだフランジ間を複数組のボルト部材で締め付けるフランジ締付け管理装置であって、
ボルト部材の識別情報を取得する情報取得部と、
ボルト部材の識別情報または位置情報を記憶する記憶部と、
前記情報取得部と有線または無線で接続され、ボルト部材の識別情報を位置情報と関係付けて前記記憶部に記憶させるとともに、ボルト部材の締付け順序情報をボルト部材の位置情報または識別情報に関係付けて前記記憶部に記憶させ、ボルト部材の識別情報とともに、該識別情報に対応する位置情報を前記記憶部から読み出し、ボルト部材の位置が前記締付け順序情報の指定位置に適合するかを判定し、適合する場合に締付け工具に締付け許可の指示または情報を提示することで、前記締付け工具を駆動させるスイッチの操作によって前記締付け工具を駆動させて締付け力を出力させ、適合しない場合に前記締付け工具に締付け不可の指示または情報を提示することで、前記スイッチが操作されても前記締付け工具を駆動させない処理部と、
を備えることを特徴とするフランジ締付け管理装置。
【請求項11】
前記位置情報または前記識別情報を提示する情報提示部と、
を備えることを特徴とする請求項10に記載のフランジ締付け管理装置。
【請求項12】
さらに、前記処理部は、ボルト部材の締付け情報をボルト部材の位置情報または識別情報に関係付けて前記記憶部に格納し、ボルト部材に対する締付け情報を出力することを特徴とする請求項10に記載のフランジ締付け管理装置。
【請求項13】
さらに、前記情報取得部がボルト部材の軸力情報を取得して前記処理部に提供し、
前記処理部が前記軸力情報を前記識別情報または前記位置情報に関係付けて前記記憶部に記憶させることを特徴とする請求項10に記載のフランジ締付け管理装置。
【請求項14】
さらに、前記処理部は、ボルト部材の軸力情報を参照して締付け情報を生成し、締付け工具に締付け力を出力させることを特徴とする請求項10に記載のフランジ締付け管理装置。
【請求項15】
シール材を挟み込んだフランジ間を複数組のボルト部材で締め付けるフランジ締付け制御ユニットであって、
ボルト部材の締付け工具または締付け関連部材に着脱可能に設置されるユニット筐体を備え、
該ユニット筐体が、ボルト部材の識別情報または位置情報を記憶する記憶部とともに設置され、ボルト部材の情報送出部から識別情報を取得し、該識別情報を位置情報と関係付けて前記記憶部に記憶させるとともに、ボルト部材の締付け順序情報をボルト部材の位置情報または識別情報に関係付けて前記記憶部に記憶させ、ボルト部材の識別情報とともに、該識別情報に対応する位置情報を前記記憶部から読み出し、ボルト部材の位置が前記締付け順序情報の指定位置に適合するかを判定し、適合する場合に締付け工具に締付け許可の指示または情報を提示することで、前記締付け工具を駆動させるスイッチの操作によって前記締付け工具を駆動させて締付け力を出力させ、適合しない場合に前記締付け工具に締付け不可の指示または情報を提示することで、前記スイッチが操作されても前記締付け工具を駆動させない制御を行う機能部を備えることを特徴とするフランジ締付け制御ユニット。
【請求項16】
シール材を挟み込んだフランジ間を複数組のボルト部材で締め付けるフランジ締付け管理方法であって、
ボルト部材の識別情報を情報取得部で取得する工程と、
ボルト部材の識別情報または位置情報を記憶部に記憶する工程と、
前記情報取得部と有線または無線で接続され、ボルト部材の識別情報を位置情報と関係付けて前記記憶部に記憶させ、ボルト部材の識別情報とともに該識別情報に対応する位置情報を前記記憶部から読み出す工程と、
ボルト部材の締付け順序情報をボルト部材の位置情報または識別情報に関係付けて前記記憶部に格納する工程と、
ボルト部材の位置が前記締付け順序情報の指定位置に適合するかを判定し、適合する場合に締付け工具に締付け許可の指示または情報を提示することで、前記締付け工具を駆動させるスイッチの操作によって前記締付け工具を駆動させて締付け力を出力させ、適合しない場合に前記締付け工具に締付け不可の指示または情報を提示することで、前記スイッチが操作されても前記締付け工具を駆動させない工程と、
を含むことを特徴とするフランジ締付け管理方法。
【請求項17】
さらに、ボルト部材の締付け情報をボルト部材の位置情報または識別情報に関係付けて前記記憶部に格納する工程と、
ボルト部材に対する締付け情報を出力する工程と、
を含むことを特徴とする請求項16に記載のフランジ締付け管理方法。
【請求項18】
さらに、前記情報取得部がボルト部材の軸力情報を取得して処理部に提供する工程と、
前記処理部が前記軸力情報を前記識別情報または前記位置情報に関係付けて前記記憶部に記憶させる工程と、
を含むことを特徴とする請求項16に記載のフランジ締付け管理方法。
【請求項19】
さらに、ボルト部材の軸力情報を参照して締付け情報を生成し、締付け工具に締付け力を出力させる工程と、
を含むことを特徴とする請求項16に記載のフランジ締付け管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール材を挟んで締め付けるフランジに配置されるボルト部材の識別情報および位置情報を用いたフランジ締付け管理の自動化技術に関する。
【背景技術】
【0002】
シール材を挟み込んだフランジの締結にはボルトおよびナット(以下「ボルト部材」と称する)が用いられる。このボルト部材の回転にはたとえば、トルクレンチが用いられている。
複数のボルト部材が配置されたフランジでは、締付けるボルト部材の位置、締付け順序、それぞれの締付け力がフランジの締結やシール材のシール精度に影響を与えるので、そのトルクレンチを用いた締付け作業ではその作業者によるヒューマンエラー回避が重要である。
このトルクレンチに関し、締め付ける締結部材(つまりボルト部材)をICタグで検出可能にしてボルトを自動認識することが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-093873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、シール材を挟んで締め付けるフランジにおいて、円盤状のフランジ面の周囲に20組を越えるボルト部材を配置したフランジでは、ボルト部材の位置、締付け順序、周回数、締付け力の操作など、締付操作が複雑になり、作業者の負担が増大する。
既述のトルクレンチや自動認識技術(特許文献1)を利用すれば、トルクレンチで操作するボルト部材からその識別情報や状態情報が得られても、ボルト部材の位置、締付け順序、周回数、締付け力の調整は作業者に委ねられるので、複数組のボルト部材を配置したフランジのボルト部材による締付けからヒューマンエラーを除くことができないという課題がある。しかも、ボルト部材の認識作業が加わり、作業者負担が軽減されないという課題がある。
【0005】
そこで、本発明の目的は上記課題に鑑み、シール材を挟んで締め付けるフランジに配置されたボルト部材の締付けの簡易化、効率化または高精度化を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明のフランジ締付け管理システムの一側面によれば、シール材を挟み込んだフランジ間を複数組のボルトおよびナット(以下、「ボルト部材」と称する)で締め付けるフランジ締付け管理システムであって、ボルト部材の識別情報を取得する情報取得部と、ボルト部材の識別情報または位置情報を記憶する記憶部と、前記情報取得部と有線または無線で接続され、ボルト部材の識別情報を位置情報と関係付けて前記記憶部に記憶させるとともに、ボルト部材の締付け順序情報をボルト部材の位置情報または識別情報に関係付けて前記記憶部に記憶させ、ボルト部材の識別情報とともに該識別情報に対応する位置情報を前記記憶部から読み出し、ボルト部材の位置が前記締付け順序情報の指定位置に適合するかを判定し、適合する場合に締付け工具に締付け許可の指示または情報を提示することで、前記締付け工具を駆動させるスイッチの操作によって前記締付け工具を駆動させて締付け力を出力させ、適合しない場合に前記締付け工具に締付け不可の指示または情報を提示することで、前記スイッチが操作されても前記締付け工具を駆動させない処理部とを備える。
【0007】
上記フランジ締付管理システムにおいて、さらに、前記位置情報または前記識別情報を提示する情報提示部を備えてよい
記フランジ締付け管理システムにおいて、さらに、前記処理部は、ボルト部材の締付け情報をボルト部材の位置情報または識別情報に関係付けて前記記憶部に格納し、ボルト部材の締付け情報を出力してよい。
上記フランジ締付け管理システムにおいて、さらに、前記情報取得部がボルト部材の軸力情報を取得して前記処理部に提供し、前記処理部が前記軸力情報を前記識別情報または前記位置情報に関係付けて前記記憶部に記憶させてよい。
上記フランジ締付け管理システムにおいて、さらに、前記処理部は、ボルト部材の軸力情報を参照して締付け情報を生成し、締付け工具に締付け力を出力させてよい。
【0008】
上記目的を達成するため、本発明のフランジ締付け管理プログラムの一側面によれば、コンピュータで実現させるためのフランジ締付け管理プログラムであって、ボルト部材の識別情報を取得する機能と、ボルト部材の識別情報または位置情報を記憶部に記憶させる機能と、ボルト部材の識別情報を位置情報と関係付けて前記記憶部に記憶させ、ボルト部材の識別情報とともに、該識別情報に対応する位置情報を前記記憶部から読み出す機能と、ボルト部材の締付け順序情報をボルト部材の位置情報または識別情報に関係付けて前記記憶部に格納する機能と、ボルト部材の位置が前記締付け順序情報の指定位置に適合するかを判定する機能と、適合する場合に締付け工具に締付け許可の指示または情報を提示することで、前記締付け工具を駆動させるスイッチの操作によって前記締付け工具を駆動させて締付け力を出力させ、適合しない場合に前記締付け工具に締付け不可の指示または情報を提示することで、前記スイッチが操作されても前記締付け工具を駆動させない機能とを前記コンピュータで実現させる。
【0009】
記フランジ締付け管理プログラムにおいて、さらに、ボルト部材の締付け情報を、ボルト部材の位置情報または識別情報に関係付けて前記記憶部に格納する機能と、ボルト部材に対する締付け情報を読み出す機能と、前記締付け情報を提示させる機能とを含んでよい。
上記フランジ締付け管理プログラムにおいて、さらに、情報取得部がボルト部材の軸力情報を取得する機能と、前記軸力情報を前記識別情報または前記位置情報に関係付けて前記記憶部に記憶させる機能とを含んでよい。
上記フランジ締付け管理プログラムにおいて、さらに、ボルト部材の軸力情報を参照して締付け情報を生成する機能と、締付け工具に締付け力を出力させる機能とを含んでよい。
【0010】
上記目的を達成するため、本発明のフランジ締付け管理装置の一側面によれば、シール材を挟み込んだフランジ間を複数組のボルト部材で締め付けるフランジ締付け管理装置であって、ボルト部材の識別情報を取得する情報取得部と、ボルト部材の識別情報または位置情報を記憶する記憶部と、前記情報取得部と有線または無線で接続され、ボルト部材の識別情報を位置情報と関係付けて前記記憶部に記憶させるとともに、ボルト部材の締付け順序情報をボルト部材の位置情報または識別情報に関係付けて前記記憶部に記憶させ、ボルト部材の識別情報とともに、該識別情報に対応する位置情報を前記記憶部から読み出し、ボルト部材の位置が前記締付け順序情報の指定位置に適合するかを判定し、適合する場合に締付け工具に締付け許可の指示または情報を提示することで、前記締付け工具を駆動させるスイッチの操作によって前記締付け工具を駆動させて締付け力を出力させ、適合しない場合に前記締付け工具に締付け不可の指示または情報を提示することで、前記スイッチが操作されても前記締付け工具を駆動させない処理部とを備える。
【0011】
上記フランジ締付け管理装置において、前記位置情報または前記識別情報を提示する情
報提示部を備えてよい
記フランジ締付け管理装置において、さらに、前記処理部は、ボルト部材の締付け情
報をボルト部材の位置情報または識別情報に関係付けて前記記憶部に格納し、ボルト部材
に対する締付け情報を出力してよい。
上記フランジ締付け管理装置において、さらに、前記情報取得部がボルト部材の軸力情
報を取得して前記処理部に提供し、前記処理部が前記軸力情報を前記識別情報または前記
位置情報に関係付けて前記記憶部に記憶させてよい。
上記フランジ締付け管理装置において、さらに、前記処理部は、ボルト部材の軸力情報
を参照して締付け情報を生成し、締付け工具に締付け力を出力させてよい。
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の締付け制御ユニットの一側面によれば、シール材を挟み込んだフランジ間を複数組のボルト部材で締め付けるフランジ締付け制御ユニットであって、ボルト部材の締付け工具または締付け関連部材に着脱可能に設置されるユニット筐体を備え、該ユニット筐体が、ボルト部材の識別情報または位置情報を記憶する記憶部とともに設置され、ボルト部材の情報送出部から識別情報を取得し、該識別情報を位置情報と関係付けて前記記憶部に記憶させるとともに、ボルト部材の締付け順序情報をボルト部材の位置情報または識別情報に関係付けて前記記憶部に記憶させ、ボルト部材の識別情報とともに、該識別情報に対応する位置情報を前記記憶部から読み出し、ボルト部材の位置が前記締付け順序情報の指定位置に適合するかを判定し、適合する場合に締付け工具に締付け許可の指示または情報提示することで、前記締付け工具を駆動させるスイッチの操作によって前記締付け工具を駆動させて締付け力を出力させ、適合しない場合に前記締付け工具に締付け不可の指示または情報を提示することで、前記スイッチが操作されても前記締付け工具を駆動させない制御を行う機能部を備える。
【0013】
上記目的を達成するため、本発明のフランジ締付け管理方法の一側面によれば、シール材を挟み込んだフランジ間を複数組のボルト部材で締め付けるフランジ締付け管理方法であって、ボルト部材の識別情報を情報取得部で取得する工程と、ボルト部材の識別情報または位置情報を記憶部に記憶する工程と、前記情報取得部と有線または無線で接続され、ボルト部材の識別情報を位置情報と関係付けて前記記憶部に記憶させ、ボルト部材の識別情報とともに該識別情報に対応する位置情報を前記記憶部から読み出す工程と、ボルト部材の締付け順序情報をボルト部材の位置情報または識別情報に関係付けて前記記憶部に格納する工程と、ボルト部材の位置が前記締付け順序情報の指定位置に適合するかを判定し、適合する場合に締付け工具に締付け許可の指示または情報を提示することで、前記締付け工具を駆動させるスイッチの操作によって前記締付け工具を駆動させて締付け力を出力させ、適合しない場合に前記締付け工具に締付け不可の指示または情報を提示することで、前記スイッチが操作されても前記締付け工具を駆動させない工程とを含む。
【0014】
記フランジ締付け管理方法において、さらに、ボルト部材の締付け情報をボルト部材
の位置情報または識別情報に関係付けて前記記憶部に格納する工程と、ボルト部材に対す
る締付け情報を出力する工程とを含んでよい。
上記フランジ締付け管理方法において、さらに、前記情報取得部がボルト部材の軸力情
報を取得して処理部に提供する工程と、前記処理部が前記軸力情報を前記識別情報または
前記位置情報に関係付けて前記記憶部に記憶させる工程とを含んでよい。
上記フランジ締付け管理方法において、さらに、ボルト部材の軸力情報を参照して締付
け情報を生成し、締付け工具に締付け力を出力させる工程を含んでよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、次のいずれかの効果が得られる。
(1) フランジに配置されるボルト部材の識別情報と、フランジ上のボルト部材の配置情報とが関係付けられているので、締付け工具を任意のボルト部材に配置した際に、締付け対象としてそのボルト部材が合致しているか否かを容易に認識できる。
(2) 作業者はフランジ上の特定の位置に該当するボルト部材を認識していない場合であっても、その配置位置に適合するボルト部材を誤ることなく配置でき、作業者のヒューマンエラーや作業者に過度な負担を強いることなく、信頼性の高い施工を実現できる。
(3) シール施工の簡易化、効率化または高精度化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1の実施の形態に係るフランジ締付け管理システムを示す図である。
図2】ボルト部材の配置位置および位置情報を示す図である。
図3】締付け管理システムの処理手順を示すフローチャートである。
図4】第2の実施の形態に係る締付け管理システムの処理手順を示すフローチャートである。
図5】第3の実施の形態に係るフランジ締付け管理システムを示す図である。
図6】Aは第4の実施の形態に係るフランジ締付け管理システムを示す図、Bはその変形例に係るフランジ締付け管理システムを示す図である。
図7】実施例1に係るフランジ締付け管理システムを示す図である。
図8】ボルト部材の識別情報の取得を説明するための図である。
図9】締付け工具のハードウェアを示す図である。
図10】情報端末のハードウェアを示す図である。
図11】締付け情報データベースを示す図である。
図12】フランジ締付けの処理手順を示すフローチャートである。
図13】情報登録の処理を示すシーケンス図である。
図14】本締めの処理を示すシーケンス図である。
図15】ボルト部材の登録時の画面遷移を示す図である。
図16】ボルト部材の本締付け時(一巡)の画面遷移を示す図である。
図17】ボルト部材の本締付け時(二巡以降)の画面遷移を示す図である。
図18】情報提示部のエラー表示を示す図である。
図19】実施例2に係るフランジ締付け管理システムを示す図である。
図20】ボルト部材および軸力センサーを示す図である。
図21】締付け情報データベースを示す図である。
図22】Aは、フランジ上のボルト部材の基準軸力および締付け後の軸力分布を示す図、Bは、基準軸力および締付け調整後の軸力分布を示す図である。
図23】実施例3に係るフランジ締付け管理システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
〔第1の実施の形態〕
図1は、第1の実施の形態に係るフランジ締付け管理システムを示している。
気体や液体などの流体が通流する配管などの部材2-1、2-2の結合には各部材2-1、2-2に形成されたフランジ4-1、4-2(以下、単に「フランジ4」と称する)が用いられる。フランジ4間には、結合部6にガスケットなどのシール材8が挟み込まれ、このシール材8の周縁部に複数組のボルト部材10が設置される。ボルト部材10にはたとえば、ボルト10-1と一対のナット10-2が含まれる。したがって、ボルト部材10の締付けにより、フランジ4間でシール材8が締め付けられ、部材2-1、2-2の結合部6にシールが施される。
【0018】
このボルト部材10について、この例ではボルト10-1に情報タグ12が設置されている。この情報タグ12はボルト部材10の識別情報を無線送信する情報送出部の一例である。識別情報は、ボルト部材10を識別するための情報であって、ボルト部材10を特定するためのID(IDentification)情報のほか、材質や製造年月日などの付随的な情報を含んでよい。この情報タグ12に代え、ボルト部材10に表示ラベルを設置し、この表示ラベルに識別情報を付してもよい。
このボルト部材10の締付けには、トルクレンチなどの締付け工具14が用いられる。この締付け工具14にはフランジ締付け管理システム(以下、単に「管理システム」と称する)20が備えられる。この管理システム20には情報取得部22、処理部24、記憶部26および情報提示部28が備えられる。
【0019】
情報取得部22は処理部24の制御により、情報タグ12から識別情報を取得する。この情報取得部22が無線または有線により情報タグ12と接続されると、ボルト部材10の識別情報の取得などの情報の授受が可能である。
処理部24は有線または無線で接続される情報取得部22と情報の授受を行う。記憶部26には、ボルト部材10の識別情報、フランジ4上のボルト部材10の位置情報が格納される。ボルト部材10の位置情報は、フランジ4上のボルト部材10の配置位置を表す情報である。たとえば、フランジ4が特定されると、これを契機にボルト部材10の識別情報と位置情報が関係付けられて記憶部26に記憶される。
【0020】
この処理部24の処理には、次の情報処理が含まれる。
a)ボルト部材10の識別情報の取得。
b)識別情報をフランジ4上のボルト部材10の位置情報と関係付けて記憶部26への記憶。
c)フランジ4上のボルト部材10に締付け工具14を配置した際に、締付け工具14が設置されたボルト部材10から識別情報の取得。
d)記憶部26から識別情報に対応する位置情報の読み出し。
そして、情報提示部28は処理部24の制御により、ボルト部材10の識別情報、位置情報のほか、締付け工具14の制御情報などの情報が提示される。この情報提示部28は処理部24とともに、締付け工具14側に設置されてもよいし、独立した情報端末として構成されてもよい。
【0021】
フランジ4には図2に示すように、複数組のボルト部材10が一定の角度間隔で周回状配置される。従って、各ボルト部材10の位置情報はたとえば、フランジ4上の時計の運針方向に付した括弧付き番号の〔1〕、〔2〕、・・・・〔12〕で特定できる。
【0022】
<第1の実施の形態の処理手順>
図3は、管理システム20の処理手順を示している。この処理手順はプログラムの実行による処理または処理方法の一例である。各機能、処理または段階を工程(=S)とともにその番号で示している。これは以下の各実施の形態および実施例で共通である。
この処理手順によれば、情報取得部22を処理部24に有線または無線により接続する(S101)。この連係動作の後、情報取得部22は、フランジ4上のボルト部材10から識別情報を取得する(S102)。処理部24は、ボルト部材10の識別情報をフランジ4上の配置位置を表す位置情報と関係付けて記憶部26に記憶させる(S103)。
【0023】
処理部24は、締付け工具14の操作を監視し、任意のボルト部材10に締付け工具14を配置したかを判定する(S104)。
ボルト部材10に締付け工具14が配置された場合(S104のYES)、締付け工具14が設置されているボルト部材10から識別情報を取得し(S105)、この識別情報に対応する位置情報を記憶部26から読み出す(S106)。
ボルト部材10に締付け工具14が配置されなければ(S104のNO)、締付け工具14が配置されるまで、S104で待機状態となる。
【0024】
斯かる処理手順により、締付け工具14の配置を契機としてボルト部材10の識別情報とともに、ボルト部材10を配置すべき位置を表す位置情報を認識することができる。
【0025】
<第1の実施の形態の効果>
第1の実施の形態によれば、次の効果が得られる。
(1) フランジに配置されるボルト部材の識別を自動化でき、ボルト部材の合致ないし配置精度を高めることができる。
(2) 作業者のヒューマンエラーや作業者に過度な負担を強いることなく、信頼性の高い施工を実現できる。
(3) ボルト部材の締付けの簡易化、効率化または高精度化を図ることができる。
(4) 第1の実施の形態では、情報取得部22、処理部24、記憶部26および情報提示部28を独立したユニットを備える管理システム20に構成しているが、これらの機能部は一カ所に設置する必要はなく、複数個所に設置間隔を任意に設定して点在させ、有線または無線で連携させることができる。また、この管理システム20について、情報取得部22、処理部24および記憶部26をひとつの筐体に内蔵させるなどにより管理装置に構成することもできる。また、情報提示部28は斯かる管理装置と別個に備えてもよいし、管理装置内に内蔵させることができる。
【0026】
〔第2の実施の形態〕
第2の実施の形態に係る管理システム20では締付け工具14を制御する構成である。この実施の形態では、情報提示部28にボルト部材10の識別情報、その位置情報に加えて、締付け工具14の動作態様として、その締付け許可または締付け不可の指示情報などの情報が提示される。
この実施の形態では、処理部24の処理に次の情報処理が含まれる。
e)フランジ4上のボルト部材10の締付け順序情報をボルト部材10の位置情報または識別情報に関係付けて記憶部26に格納。
f)任意のボルト部材10に締付け工具14を配置した際に、締付け工具14が配置されたボルト部材10の位置情報が締付け順序に適合した位置情報であるかの判定。
g)情報提示部28に締付け工具14に締付け許可または締付け不可の指示または情報の提示。
h)さらに、締付け工具14の制御として、締付け工具14を締付け許可状態または締付け不可状態とする制御を含んでよい。
【0027】
<第2の実施の形態の処理手順>
図4は、管理システム20の処理手順を示している。この処理手順によれば、情報取得部22を処理部24に有線または無線により接続する(S201)。
この連係動作の後、情報取得部22は、フランジ4に対するボルト部材10の締付け順序情報をボルト部材10の位置情報または識別情報に関係付けて記憶部26に格納する(S202)。
【0028】
処理部24は、任意のボルト部材10に締付け工具14が配置されたかを判定する(S203)。締付け工具14が配置された位置が締付け順序の位置情報に適合しているかを判定する(S204)。
締付け工具14の位置が適合していれば(S204のYES)、処理部24は、締付け許可情報を情報提示部28に提示させる(S205)。締付け工具14の位置が適合していなければ(S204のNO)、処理部24は、締付け不可の指示または情報を情報提示部28に提示させる(S206)。
【0029】
<第2の実施の形態の効果>
第2の実施の形態によれば、次の効果が得られる。
(1) ボルト部材の識別とともに、締付け順序を自動化することができる。
(2) 締付け順序や、締付け対象のミスを事前に確認でき、ボルト部材の締付け位置の確定やその精度を高めることができる。
【0030】
〔第3の実施の形態〕
図5は、第3の実施の形態に係る管理システム20の一例を示している。図5図7において、図1と同一部分には同一符号を付してある。
この管理システム20では図5に示すように、フランジ4および締付け工具14に対し、情報取得ユニット30および制御ユニット32が備えられる。情報取得ユニット30には、既述の情報取得部22および通信部34が備えられる。この情報取得ユニット30は、制御ユニット32と分離された2ユニットを構成しており、フランジ4のボルト部材10に着脱自在に設置される。
【0031】
制御ユニット32には処理部24、記憶部26、情報提示部28、第1および第2の通信部36、38が備えられる。通信部36は、情報取得ユニット30側の通信部34と有線または無線による通信接続を行い、情報取得ユニット30が取得した情報の取込みが可能である。処理部24、記憶部26および情報提示部28の機能は既述した通りであるので、その説明は割愛する。
締付け工具14には制御部40および通信部42が備えられる。制御部40は締付け工具14の駆動系統の締付け制御などを司る手段である。通信部42は、制御ユニット32との有線または無線による通信接続を行い、制御ユニット32側の通信部38との間で情報の授受を行う。
【0032】
<第3の実施の形態の効果>
第3の実施の形態によれば、次の効果が得られる。
(1) 情報取得ユニット30は制御ユニット32と分離されてフランジ4側に設置され、ボルト部材10側の情報タグ12(図1)と制御ユニット32との中継ユニットとして機能させることができる。つまり、制御ユニット32と分離しているので、制御ユニット32と独立してフランジ4側に自由に設置できる。
(2) 情報タグ12が出力する識別情報は、情報取得ユニット30を媒介として制御ユニット32に伝達され、制御ユニット32は取得した識別情報を用いて制御情報や提示情報の生成を行うことができる。
(3) 制御ユニット32は情報取得ユニット30の配置などの影響を受けることなく、締付け工具14に提供する情報を高精度に生成できる。
【0033】
〔第4の実施の形態〕
図6のAは、第4の実施の形態に係る締付け管理システムの一例を示している。図6のAにおいて、図5と同一部分には同一符号を付してある。
この管理システム20では図6のAに示すように、情報取得ユニット30に既述の制御ユニット32の機能部を一体に備えた構成である。この情報取得ユニット30は、既述の情報取得部22、処理部24、記憶部26、情報提示部28および通信部38が備えられて1ユニット構成である。つまり、この情報取得ユニット30は、制御ユニット32の機能を内蔵してフランジ4のボルト部材10に着脱自在に設置可能である。
斯かる構成では、情報取得部22が取得した識別情報などの情報は情報取得部22に直結された処理部24に取り込まれる。通信部38は、締付け工具14(図5)の通信部42との有線または無線による通信接続を行い、情報の授受を行う。
その他、処理部24、記憶部26および情報提示部28の機能は既述した通りであるので、その説明は割愛する。
【0034】
図6のBは、第4の実施の形態に係る管理システム20の変形例を示している。図6のBにおいて、図5と同一部分には同一符号を付してある。この変形例では、図6のAに示す構成が情報取得ユニット30であるのに対し、同一機能で制御ユニット32が構成されている。つまり、情報取得部22を内蔵した制御ユニット32がフランジ4のボルト部材10に着脱自在に設置可能である。その他、同一部分には同一符号を付し、その説明を割愛する。
【0035】
<第4の実施の形態の効果>
第4の実施の形態によれば、次の効果が得られる。
(1) 情報取得ユニット30および制御ユニット32の一体化により、システムを構成する部品ないし装置の単一化を図ることができる。
(2) 締付け工具14の操作を行う作業者から見れば、装置の簡略化により、労力の軽減を図ることができる。
(3) 装置の単一化または単純化によるコスト低減を図ることができる。
【実施例1】
【0036】
<フランジ締付けシステム>
図7は、実施例1に係るフランジ締付け管理システムおよびフランジ締付け制御ユニットを示している。図7に示す構成は一例であり、斯かる構成に本発明が限定されるものではない。図7において、図1と同一または対応する部材に同一符号を付してある。
この実施例1に係る管理システム20には、情報取得ユニット30および情報端末50が備えられる。情報取得ユニット30は、締付け工具14側のギヤユニット52に着脱可能に設置される。ギヤユニット52にはボルト部材10に結合するソケット54が備えられる。
情報端末50は既述の制御ユニット32(図5)の一例である。この情報端末50は、情報取得ユニット30と無線通信により情報の授受が可能であるとともに、締付け工具14と無線通信により情報の授受が可能である。
この情報端末50には筐体56の前面に表示部58および入力操作部60が備えられる。表示部58は情報提示部28の一例であり、タッチパネル62が備えられる。入力操作部60は複数のキーを備え、フランジ4のボルト部材10の位置情報の入力などに用いられる。
【0037】
<ボルト部材10の情報取得>
図8のAは、ボルト部材10および情報取得ユニット30の一例を示している。ボルト部材10には既述したように、ボルト10-1およびナット10-2が備えられる。ボルト10-1にはたとえば、図8のBに示すように、ボルト10-1の頂部に情報タグ12が設置されている。この情報タグ12は既述したように、ボルト部材10を特定するためのID情報のほか、材質や製造年月日などの付随的な情報を無線信号で送信する。情報タグ12はたとえば、IC(Integrated Circuit)チップであり、チップ本体64の面部に送信アンテナ66を備えている。情報タグ12のチップ本体64で生成される無線信号が送信アンテナ66から送出される。
【0038】
情報取得ユニット30には締付け工具14側のギヤユニット52に着脱可能な筐体68が備えられる。この筐体68には情報取得ユニット30の機能部としてたとえば、受信アンテナ70、受信部72、信号変換部74、送信部76および送信アンテナ78が設置される。筐体68にはギヤユニット52に固定するための磁石を備えてよい。ギヤユニット52が鉄などの強磁性体であれば、着磁により、筐体68をギヤユニット52(図7)に固定させて定位置に維持することができるし、必要に応じて移動させることもできる。
受信アンテナ70はたとえば、導体材料からなるコイルスプリングなどの弾性部材で構成され、その先端部をボルト10-1の頂部に配置すれば、情報タグ12側の送信アンテナ66と電磁的に結合させることができる。
情報タグ12からの無線信号を受信アンテナ70で受信すると、受信部72は受信信号からIDなどの情報信号を取得し、信号変換部74に引き渡す。信号変換部74は信号のレベル変換や、その情報信号の形式をたとえば、情報端末50側の仕様に適合する形式に変換する処理を行う。この信号変換部74から情報信号が送信部76に提供され、この送信部76は情報信号を送出するための送信信号を生成し、送信アンテナ78から送信する。この信号は近距離無線信号形式のたとえば、Bluetooth (登録商標)形式である。
【0039】
<締付け工具14>
図9は、締付け工具14のハードウェアの一例を示している。この締付け工具14にはモーター80、トルクセンサー82、制御部40(図5)、通信部42(図5)および情報提示部84が含まれる。
モーター80は制御部40側にあるモーター駆動部によって駆動する。このモーター80の回転軸86にはギヤユニット52が連結され、このギヤユニット52を介してボルト部材10のナット10-2に締付けトルクτが付与される。ギヤユニット52は、回転軸86の回転を変換するギア機構を備え、所望のギア比で締付けトルクτをソケット54に伝達させる。この締付けトルクτがトルクセンサー82に検出され、制御部40に取り込まれる。このトルクセンサー82は、ボルト部材10側に作用する締付けトルクτを検出すればよく、締付け工具14の外部に備えてよい。
【0040】
制御部40には既述のモーター駆動部とともに、コンピュータが備えられる。この制御部40には、情報端末50からトルク値などの制御情報が提供される。トリガースイッチ88の導通時、制御部40からモーター80に駆動電流が流れる。
通信部42は、制御部40に情報端末50(図7)を接続するための手段であり、情報端末50との情報の授受を行う。通信部42による接続は無線接続のほか、有線接続であってもよい。
情報提示部84は、制御部40によって制御され、情報端末50からの取得情報、情報端末50への送出情報、検出情報などの制御情報を提示する。
【0041】
<情報端末50のハードウェア>
図10は、情報端末50のハードウェアを示している。この情報端末50は、既述の制御ユニット32(図5)の一例である。
この情報端末50は、締付け工具14の制御手段であるとともに、フランジ締付けのシール施工管理手段の一例でもある。
この情報端末50にはたとえば、コンピュータが用いられ、プロセッサ90、記憶部26、入出力部(I/O)92、入力操作部60、タッチパネル62、通信部36、38および情報提示部28が備えられる。
【0042】
プロセッサ90は処理手段の一例であって、記憶部26にあるOSやフランジ締付け管理プログラムなどの情報処理を行う。この情報処理には図示しないサーバーから締付け条件情報の取得、締付け工具14へのトルク値を含む締付け条件の入力、締付け工具14から出力トルクTの取得、締付け状態の監視および評価、評価結果の表示、締付け結果情報の出力などの制御を含んでよい。
記憶部26はOS、フランジ締付け管理プログラム、締付け条件情報、検出情報などの記憶に用いられ、ROMおよびRAMが備えられる。この記憶部26には記憶内容を保持可能な記憶素子を用いればよい。この記憶部26には、締付け情報データベース(DB)94が格納される。
【0043】
I/O92はプロセッサ90により制御されて制御情報の入出力に用いられる。このI/O92には外部機器としてたとえば、バーコードリーダーや着脱可能な外部メモリが用いられる。バーコードリーダーは情報取得部の一例である。外部メモリにはログ情報の取出しメモリとしてたとえば、USB(Universal Serial Bus)メモリを用いてよい。
入力操作部60はキースイッチやタッチセンサーなどを備え、入力情報の入力契機、出力情報の取出し契機、モード切替えなどに用いられる。
【0044】
通信部36はプロセッサ90により制御され、情報取得ユニット30との無線接続、既述のBluetooth 通信接続に用いられる。通信部38はプロセッサ90により制御され、締付け工具14との無線接続やインターネット接続に用いられる。
情報提示部28はプロセッサ90により制御され、入力情報や出力情報の提示手段の一例である。この情報提示部28には既述の制御情報や入力情報が表示される。タッチパネル62のタッチにより、プロセッサ90に所望の情報入力を行うことができる。
【0045】
<締付け情報DB94>
図11は、締付け情報DB94の一例を示している。この締付け情報DB94には、ボルト数情報96、日時情報98、正否情報100、ボルト番号情報102、タグ情報104が格納される。ボルト数情報96は、フランジ4を単位とするボルト部材10の設置数が格納される。日時情報98には作業時点を表す日時として、西暦、月、日、時および秒が格納される。正否情報100には、基準である締付け順に対し、締付け工具14が当てられたボルト部材10が正しいか否かを表す情報が格納される。この場合、正=○、否=×が表示されているが、記号であってもよい。
【0046】
ボルト番号情報102はフランジ4上のボルト部材10の位置情報として、ボルト部材10の位置を特定するボルト番号(たとえば、図2の〔1〕、〔2〕・・・〔12〕)が格納される。
タグ情報104には、ボルト部材10の情報タグ12から情報取得ユニット30が取得したIDなどの情報が格納される。
この締付け情報DB94によれば、ボルト番号情報102とタグ情報104が関係付けられ、特定のボルト部材10がフランジ4上の何れの位置にあるかを特定でき、換言すれば、フランジ4上の特定位置からボルト部材10を特定することができる。
【0047】
<登録から本締めまでの処理手順>
図12は、フランジ締付け作業の処理手順を示している。この処理手順は、フランジ締付け管理プログラムまたは締付け工程の一例である。
この処理手順では電源投入、初期設定の後、情報取得ユニット30と情報端末50の無線接続を確立させる(S301)。この無線接続の後、締付け管理プログラムの終了かを判断する(S302)。締付け管理プログラムの終了であれば(S302のYES)、この処理手順を終了する。
【0048】
このアプリケーションを継続する場合には(S302のNO)、情報提示部28の画面を表示させる(S303)。この画面表示にはアプリケーション起動、登録、締付けなどの情報表示(図15図16)、エラー情報表示(図17)などが表示される。
この画面表示を経て登録処理(S304)に移行する。この登録処理にはボルト部材10の登録など、締付け前の準備情報の登録が含まれ、登録情報は締付け情報DB94に格納される。
この登録処理において、表示画面中のリセットボタンの操作により、リセットが行われたかを判断する(S305)。リセットであれば(S305のYES)、登録処理を中断して画面表示(S303)に戻る。
【0049】
リセットでなければ(S305のNO)、登録処理(S304)を継続し、登録処理が完了すれば、ボルト部材10の本締め処理に移行する(S306)。
この本締めにおいて、表示画面中のリセットボタンの操作により、処理のリセットが行われたかを判断する(S307)。リセットであれば(S307のYES)、登録処理を中断して画面表示(S303)に戻る。
リセットでなければ(S307のNO)、本締め(S306)を継続し、本締めが完了とともに、この処理を終了する。
【0050】
<ボルト部材10の情報登録>
図13は、ボルト部材10の情報登録の処理シーケンスを示している。この登録処理に先立ち、情報端末50を情報取得ユニット30に無線接続させる(S401)。この無線接続の確立の後、これを契機にして情報端末50は、情報取得ユニット30に情報取得の指示を行う(S402)。この指示を受けた情報取得ユニット30は、ボルト部材10の情報タグ12(図1)から情報取得を行い、情報端末50に通知する(S403)。
情報端末50は、情報タグ12から取得した情報を登録する(S404)。この登録中、フランジ4上の登録対象であるボルト部材10の全てについて、情報の登録が完了したかを判断する(S405)。
フランジ4上のボルト部材10の全てについて、情報の登録が完了していなければ(S405のNO)、S402に戻り、情報取得および通知(S403)、その情報の登録(S404)を継続する。
この処理の後、フランジ4上の登録対象であるボルト部材10の全てについて、情報の登録が完了していれば(S405のYES)、登録処理の完了(S406)となる。
【0051】
<ボルト部材10の本締め>
図14は、ボルト部材10の情報登録(図13)後の本締めの処理シーケンスを示している。この本締め処理に先立ち、情報端末50を情報取得ユニット30に無線接続させる(S501)。この無線接続の確立の後、これを契機にして情報端末50は、情報取得ユニット30に情報取得の指示を行う(S502)。この指示を受けた情報取得ユニット30は、情報タグ12から情報取得を行い、情報端末50に通知する(S503)。
情報端末50は、情報タグ12からの取得情報が適正かの判断をする(S504)。つまり、このS504では、本締めの対象であると作業者が情報取得ユニット30をボルト部材10に設置した際、そのボルト部材10から得られた情報が、締付け対象のボルト部材10の情報と合致しているかを判断する。
【0052】
情報取得ユニット30からの取得情報が適正であれば(S504のYES)、適正表示を行い(S505)、取得した情報が不適正であれば(S504のNO)、不適正表示を行う(S506)。これにより、作業者はその表示内容から適正位置に情報取得ユニット30および締付け工具14を移動することが促される。
この不適正表示が発せられるとS502に戻り、情報端末50から情報取得の指示が発せられ(S502)、情報取得ユニット30は再度の情報取得およびその通知を行う(S503)。
【0053】
そして、適正表示が得られれば(S505)、情報端末50から締付け工具14に対して本締め許可を指示する(S507)。この本締め許可を受け、締付け工具14のトリガースイッチ88の押下が可能となる。これにより、締付け工具14では本締めが実施され(S508)、締付け工具14から本締め通知が発せられる(S509)。
情報端末50は、締付け工具14から本締め通知を受け、フランジ4上の登録対象であるボルト部材10の全てについて、本締めが完了したかを判断する(S510)。
フランジ4上のボルト部材10の全てについて、本締めが完了していなければ(S510のNO)、S502に戻り、S502~S510の本締め処理を継続する。
この処理の後、フランジ4上の登録対象であるボルト部材10の全てについて、本締めが完了していれば(S510のYES)、本締めの完了(S511)となる。
【0054】
<登録時の画面表示>
図15のA、B・・・Eは、登録時の画面表示の遷移を示している。この画面表示は一例であり、斯かる表示内容に本発明が限定されるものではない。
(1) 締付け管理プログラムの起動
締付け管理プログラムを起動し、情報取得ユニット30と情報端末50を接続すると、図15のAに示すように、情報端末50の表示部58には起動画面106が表示される。この起動画面106には、プログラム名表示部108、プログラム名表示部108上側に終了ボタン110および接続形態表示部112が表示され、プログラム名表示部108の下側に登録ボタン114および本締めボタン116が表示される。終了ボタン110、登録ボタン114および本締めボタン116は処理の移行を指示するアイコンであり、操作によって処理の選択が可能である。つまり、終了ボタン110を操作すれば、この処理を終了させることができる。登録ボタン114を操作すれば、登録モードに移行し、本締めボタン116を操作すれば、本締めモードに移行する。
【0055】
(2) 登録開始
起動画面106(図15のA)の登録ボタン114を押下すると、図15のBに示す登録画面118-0に遷移する。登録画面118-0には、番号表示部120、終了ボタン110、登録ボタン114、本締めボタン116、ボルト番号表示部122が備えられる。番号表示部120には入力中の番号が表示される。ボルト番号表示部122には情報登録の対象として、ボルト部材10の番号が表示される。「0」はボルト部材10が選択されていない状態を表示している。
【0056】
(3) 登録表示
登録画面118-0(図15のB)の登録ボタン114を押下すると、図15のCに示す登録画面118-1に遷移する。登録画面118-1には、番号表示部120、リセットボタン126、登録ボタン114、本締めボタン116、ボルト番号表示部122および完了ボタン128が備えられる。
番号表示部120には既述の番号「0」から遷移した入力中の番号「1」が表示される。リセットボタン126は登録処理をリセットするためのアイコンであり、このリセットボタン126の押下で、登録の初期画面である登録画面118-0(図15のB)に遷移させることができる。
【0057】
ボルト番号表示部122には情報登録の対象として、既述の番号「0」から遷移したボルト部材10の番号〔1〕が表示される。この場合、完了ボタン128を押下すると、登録処理の完了となる。
そして、図15のDは、ボルト部材10の番号〔2〕を登録するために図15のCから遷移した登録画面118-2である。同様に、ボルト部材10の番号〔3〕・・・〔7〕を経て、図15のEは、ボルト部材10の番号〔8〕を登録するために遷移した登録画面118-8である。
【0058】
<本締めの画面表示>
図16のA、B・・・Dは、本締め時の画面遷移を示している。この画面表示は一例であり、斯かる表示内容に本発明が限定されるものではない。
(1) 本締め(一巡目)の開始
起動画面106(図15のA)の本締めボタン116を押下すると、図16のAに示す本締め画面130-0に遷移する。本締め画面130-0には、番号表示部120、リセットボタン126、登録ボタン114、本締めボタン116、ボルト番号表示部122が備えられる。番号表示部120には全画面数がたとえば、「8」であれば、その画面数に対する入力中の番号「0/8」が表示される。この場合、リセットボタン126を押下すると、登録画面118-0(図15のB)に戻る。ボルト番号表示部122には情報登録の対象として、ボルト部材10の番号が表示される。「0」はボルト部材10が選択されていない状態を表示している。
【0059】
(3) 本締め(一巡目)表示
本締め画面130-0(図16のA)の本締めボタン116を押下すると、図16のBに示す本締め画面130-11に遷移する。本締め画面130-11には、番号表示部120、リセットボタン126、登録ボタン114、本締めボタン116、ボルト番号表示部122および戻るボタン132が備えられる。
番号表示部120には既述の番号「0」から遷移した入力中の番号「1」が表示される。リセットボタン126は登録処理をリセットするためのアイコンであり、このリセットボタン126の押下で、本締めの初期画面である本締め画面130-0(図16のA)に遷移させることができる。
【0060】
ボルト番号表示部122には情報登録の対象として、既述の番号「0」から遷移したボルト部材10の番号〔1〕が表示される。この状態で、番号〔1〕に係るボルト部材10の本締め(一巡目)を実施できる。この場合、戻るボタン132を押下すると、前画面(図16のA)に戻る。
そして、図16のCは、ボルト部材10の番号〔2〕を本締めするために図16のBから遷移した本締め画面130-12である。同様に、ボルト部材10の番号〔3〕・・・〔7〕を経て、図16のDは、ボルト部材10の番号〔8〕を本締めするために遷移した登録画面130-18である。
【0061】
(4) 本締め(二巡目以降)表示
図17のA、B、Cは、本締め(二巡目以降)の画面遷移を示している。周知のように、フランジ締付けでは、複数のボルト部材10を巡回して段階的に締付けを行う。一巡目の締付けを完了した後、ボルト部材10を巡回する二巡目の締付けに移行し、複数の巡回を以て本締めを完了する。
一巡目が完了すると、二巡目では図17のAに示す本締め画面130-21が表示される。この本締め画面130-21には、本締め画面130-0と同様に、番号表示部120、リセットボタン126、登録ボタン114、本締めボタン116、ボルト番号表示部122および戻るボタン132が備えられる。
【0062】
この場合、番号表示部120には、本締めが二巡目であることを表す番号表示として、「1/8-2」が表示される。つまり、「1/8-2」のうち、「1/8」はボルト部材10の数が「8」であり、その「1」の画面を表し、「-2」は二巡目の画面を表している。巡回数nに応じて「-n」が表示されることになる。図17のBおよびCの表示は、番号表示部120に相異があるものの、図16のCおよびDと同様である。
そして、本締めの終了時、完了ボタン128を押下すれば、本締めモードを完了し、本締め画面130-0(図16のA)に戻る。
【0063】
<エラー検出およびエラー表示>
図18のAは登録エラーの画面表示を示している。この管理システムのエラー処理には登録エラーと本締めエラーの双方がある。登録エラーではたとえば、ボルト部材10の〔1〕~〔4〕までが正常に登録された後、作業者が既登録のボルト部材10に情報取得ユニット30を設置し、再登録を試みた場合などがある。
登録を試みたボルト部材10の情報登録は既に登録済であれば、図18のAに示すように、エラー画面134-4が表示される。
【0064】
このエラー画面134-4には、番号表示部120、リセットボタン126、登録ボタン114、本締めボタン116、エラー表示部136、ガイド表示138および完了ボタン128が備えられる。番号表示部120には、作業者が登録を試みたボルト部材10の番号として、この場合「4」が表示されている。このボルト部材10について、情報登録が既に行われているので、エラー表示部136にはそのエラー状態の表示として「登録済」が表示されている。
このエラー表示について、ガイド表示138にはそのエラー状態の告知情報とともに、作業者に対するガイド情報として、「4番目のボルトは登録済です。」が表示される。
【0065】
図18のBは本締めエラーの画面表示を示している。本締めを試みたボルト部材10には既に本締めが実施されていれば、図18のBに示すように、エラー画面134-7が表示される。
このエラー画面134-7には、番号表示部120、リセットボタン126、登録ボタン114、本締めボタン116、エラー表示部136、戻るボタン132、ガイド表示140が備えられる。番号表示部120には、作業者が本締めを完了したボルト部材10の番号として、この場合「7/8」が表示されている。
【0066】
作業者が既に実施した本締めの番号〔7〕に本締めを実施しようとすると、そのボルト部材10について、本締めが既に行われているので、エラー表示部136にそのエラー状態の表示として「7」が表示される。
このエラー表示について、ガイド表示140にはそのエラー状態の告知情報とともに、作業者に対するガイド情報として、本締めすべき順番のボルト部材10に誘導するメッセージ情報として、「6番目のボルトを締めて下さい。」と表示される。
【0067】
<実施例1の効果>
実施例1によれば、次の効果が得られる。
(1) 第1~第4の実施の形態と同様の効果が得られるとともに、フランジ4上のボルト部材10の締付け作業の容易化、効率化および高精度化を図ることができる。
(2) 締付け位置の特定が容易化でき、ミスが生じた場合には、ガイド情報によって作業者を誘導できるので、誤操作を未然に防止できる。
(3) シール施工の信頼性を高めることができる。
【実施例2】
【0068】
<フランジ締付けシステム>
図19は、実施例2に係る管理システム20を示している。図19において、図7と同一部分には同一符号を付してある。
この実施例2に係る管理システム20では、フランジ4に設置されたボルト部材10の各ボルト10-1に対応し、軸力センサー142-1、142-2・・・142-nが備えられる。各軸力センサー142-1、142-2・・・142-nは、各ボルト部材10に加わる軸力を検出する。検出軸力は、データロガー144に集められた後、ボルト部材10の識別情報とともに通信部146から情報端末50に伝えられる。検出軸力は無線または有線によりデータロガー144に伝達される。
【0069】
<ボルト部材10の軸力検出>
図20は、軸力センサー142を備えたボルト部材10の一例を示している。各ボルト部材10のボルト10-1には一方の端部に情報タグ12が配置されるとともに、他方の端部からボルト内部に空洞部141が形成されている。この空洞部141には軸力センサー142が設置されている。この軸力センサー142は、各ボルト10-1に加えられる軸力を検出する手段の一例であり、たとえば、歪みセンサーを用いればよい。この軸力センサー142には出力取出部148が備えられ、この出力取出部148により既述のデータロガー144が接続される。この出力取出部148には同軸ケーブルなどの導体線を用いればよい。
【0070】
<データベース>
図21は、軸力情報を格納した締付け情報DB94を示している。この締付け情報DB94では、図11に示す締付け情報DB94をベースに、ボルト部材10の識別情報とともに軸力情報が格納されている。
この締付け情報DB94では、基準軸力部150および検出軸力部152が設定されている。基準軸力部150にはボルト部材10の識別情報に関係付けられた基準軸力Yref1、Yref2・・・が格納される。軸力情報の一例として、基準軸力Yref1、Yref2・・・は、設定軸力Yの基準値である。
検出軸力部152には、ボルト部材10の締付け情報の一例として、軸力センサー142-1、142-2・・・から得られる検出軸力Y1、Y2・・・やトルクなどの締付けに関する情報が格納される。
図示しないが、基準軸力部150および検出軸力部152にはボルト部材10の締付けの巡回に応じた軸力値が格納される。
【0071】
<基準軸力Yrefおよび検出軸力Yの分布>
図22のAは、軸力調整前の画面表示を示している。軸力調整前、表示部58の表示画面には、基準軸力Yrefおよび検出軸力Yの分布図形が表示される。
表示部58の表示画面には、フランジ4の中心を座標中心とし、たとえば、12個のボルト部材10の配置に対応する座標軸y1、y2・・・y12が表示される。各座標軸y1、y2・・・y12の隣り合った座標軸yの成す角度は、ボルト部材10の配置角度に対応しており、この例では、30度である。各座標軸y1、y2・・・y12の放射方向に軸力レベルが設定され、0~120が軸力レベルの大きさを示している。
【0072】
このフランジ4におけるボルト部材10の基準軸力Yrefは各座標軸y1、y2・・・y12の位置を頂角とする正12角形である。これに対し、各軸力センサー142-1、142-2・・・がボルト部材10の検出軸力を示している。つまり、〔4〕、〔7〕での検出軸力Yが基準軸力Yrefと一致しているのに対し、〔5〕、〔6〕での検出軸力Yは基準軸力Yrefを超え、〔1〕~〔3〕、〔8〕~〔12〕での検出軸力Yは基準軸力Yrefに到達していない。これらの値から、検出軸力Yは頂角の位置が異なる12角形を呈している。
このような検出軸力Yと基準軸力Yrefの相異を視認しつつ、検出軸力Yを基準軸力Yrefに到達する軸力調整が行われる。
【0073】
図22のBは、軸力調整後の画面表示を示している。軸力調整後、表示部58の表示画面には、基準軸力Yrefとともに、軸力調整後の検出軸力Yの分布図形が表示される。図22のBにおいて、図22のAと同一部分には同一符号を付してある。
軸力調整の結果、検出軸力Yの分布図形は概ね基準軸力Yrefの分布図形に一致し、理想的な軸力分布が得られる。このような軸力分布の調整を画面表示の視認に基づいて行えるので、作業者は作業の簡略化とともに、調整感覚のスキルを容易に高めることができる。
【0074】
<実施例2の効果>
実施例2によれば、次の効果が得られる。
(1) ボルト部材10の検出軸力を識別情報とともに取得でき、軸力や締付けトルクの管理を容易化できるとともに、高精度化を図ることができる。
(2) 検出軸力と基準軸力を視認して対比しながら、軸力調整を行うことができ、基準軸力に合致した軸力設定を行うことができる。
【実施例3】
【0075】
<フランジ締付け管理システム>
図23は、実施例3に係る管理システム20を示している。図23において、図19と同一部分には同一符号を付してある。
この実施例3に係る管理システム20は実習システムとして構成されている。この管理システム20では、床154に立設された実習基台156の頂部にフランジ4が設置され、このフランジ4に既述のボルト部材10が設置されている。このボルト部材10を締め付ける手段として締付け工具14が用いられる。この締付け工具14には既述の情報取得ユニット30が着脱可能に備えられている。つまり、締付け工具14がフランジ4のボルト部材10に配置されると、ボルト部材10の情報タグ12からの識別情報を出力することができる。
【0076】
この例では、ボルト部材10に備えられた各軸力センサー142の検出軸力Yがケーブル158を介して実習テーブル160側のデータロガー144に取り込まれる。データロガー144は処理部24(図1)の一例であるPC162により制御され、検出軸力YがPC162に取り込まれる。
PC162には情報提示部28が備えられ、その表示部164に既述の検出軸力Yや基準軸力Yrefが表示される。
実習テーブル160はキャスター166により所望の実習基台156などに移動させることが可能である。
【0077】
<実施例3の効果>
実施例3によれば、シール施工を実機と同様の感覚で行うことができ、シール施工のスキルを高めることができる。
【0078】
〔他の実施の形態〕
(1) 上記実施の形態および実施例では、締付け管理システムとして説明したが、本発明は実施例3に例示したように、締付け管理の実習システムとして構成し、利用することが可能であり、上記実施の形態に限定されるものではない。
(2) 上記実施例では、エラー表示やガイド情報を文字情報として明示しているが、このような文字情報とともに図形情報や、音声情報で出力してもよい。また、危険状態に陥った場合には、装置の動作を停止させることは言うまでもない。
【0079】
(3) 検出軸力のレベル値を明示しているが、本発明はこのような数値に限定されるものではない。
(4) ボルト部材の設置数を8~12で説明しているが、これらは一例であり、本発明はこれ以上のボルト部材の設置数に対応でき、また、8~12以下の設置数に対応させてもよい。
(5) 実施例では、制御ユニット32の一例として情報端末50を例示しているが、この情報端末50にはタブレット端末やスマートフォンなどの通信機器を利用してもよい。
【0080】
以上説明したように、本発明の最も好ましい実施の形態等について説明した。本発明は、上記記載に限定されるものではない。特許請求の範囲に記載され、または発明を実施するための形態に開示された発明の要旨に基づき、当業者において様々な変形や変更が可能である。斯かる変形や変更が、本発明の範囲に含まれることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明によれば、情報取得部を締付け対象である任意のボルト部材に移動させて配置することができ、ボルト部材の識別情報や付随する軸力レベルなどの制御情報を取得し、その取得情報に応じた締付け管理を行うことができ、有益である。
【符号の説明】
【0082】
2-1、2-2 部材
4、4-1、4-2 フランジ
6 結合部
8 シール材
10 ボルト部材
10-1 ボルト
10-2 ナット
12 情報タグ
14 締付け工具
20 フランジ締付け管理システム
22 情報取得部
24 処理部
26 記憶部
28 情報提示部
30 情報取得ユニット
32 制御ユニット
34 通信部
36 通信部
38 通信部
40 制御部
42 通信部
50 情報端末
52 ギヤユニット
54 ソケット
56 筐体
58 表示部
60 入力操作部
62 タッチパネル
64 チップ本体
66 送信アンテナ
68 筐体
70 受信アンテナ
72 受信部
74 信号変換部
76 送信部
78 送信アンテナ
80 モーター
82 トルクセンサー
84 情報提示部
86 回転軸
88 トリガースイッチ
90 プロセッサ
92 入出力部(I/O)
94 締付け情報データベース(DB)
96 ボルト数情報
98 日時情報
100 正否情報
102 ボルト番号情報
104 タグ情報
106 起動画面
108 プログラム名表示部
110 終了ボタン
112 接続形態表示部
114 登録ボタン
116 本締めボタン
118-0、118-1、118-2・・・ 登録画面
120 番号表示部
122 ボルト番号表示部
126 リセットボタン
128 完了ボタン
130-0、130-1、130-2・・・ 本締め画面
132 戻るボタン
134-4、134-7 エラー画面
136 エラー表示部
138 ガイド表示
140 ガイド表示
142、142-1、142-2・・・142-n 軸力センサー
144 データロガー
146 通信部
148 出力取出部
150 基準軸力部
152 検出軸力部
154 床
156 実習基台
158 ケーブル
160 実習テーブル
162 PC
164 表示部
166 キャスター
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23