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特許7122320パネル状又はビーム状のサンプルの曲げ試験を実施するための装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-10
(45)【発行日】2022-08-19
(54)【発明の名称】パネル状又はビーム状のサンプルの曲げ試験を実施するための装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 3/20 20060101AFI20220812BHJP
   G01N 3/04 20060101ALI20220812BHJP
【FI】
G01N3/20
G01N3/04 A
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019553513
(86)(22)【出願日】2018-03-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-23
(86)【国際出願番号】 EP2018058190
(87)【国際公開番号】W WO2018178288
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2021-02-12
(31)【優先権主張番号】102017205362.3
(32)【優先日】2017-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515230084
【氏名又は名称】フラウンホーファー-ゲゼルシャフト ツゥア フェアデルング デア アンゲヴァンドテン フォァシュング エー.ファウ.
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】サンダー クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ガル マーティン
(72)【発明者】
【氏名】マチェール フランク
(72)【発明者】
【氏名】クラウスナー アンドレ
(72)【発明者】
【氏名】ズシェッチ エーレンフリート
【審査官】福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2006/0213281(US,A1)
【文献】特表2001-509592(JP,A)
【文献】中国特許第103698202(CN,B)
【文献】米国特許第05231882(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0145859(US,A1)
【文献】米国特許第03286516(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/00~3/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つのロータリードライブが互いに間隔をあけて配置され、それぞれ1つのフランジ(3)が、互いに平行に並んだロータリードライブの駆動軸に固定され、
それぞれの前記駆動軸の回転軸に平行で、前記回転軸から間隔をあけて、互いに間隔をあけて配置された少なくとも2つの棒状曲げ要素(2)が、それぞれ前記フランジ(3)上に存在し、
1つのスラブ状又はビーム状の試験片(1)は、それぞれ2つの前記フランジ(3)の2つの前記棒状曲げ要素(2)の間に導入可能であり、ロータリードライブが反対の回転方向に回転したときに曲げ力が前記試験片(1)に加えられ、
2つの前記ロータリードライブはそれぞれ個別に作動可能で、電子式開ループ又は閉ループの制御ユニットに接続されており、
前記棒状曲げ要素(2)は、少なくとも前記試験片(1)の表面と物理的に接触する表面領域において凸状に湾曲するように構成されていることを特徴とする、
スラブ型又はビーム型の試験片(1)の曲げ試験を実行するための装置。
【請求項2】
前記ロータリードライブは、それぞれ同じ回転角度を有するように同期して回転可能であることを特徴とする、
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ロータリードライブは、それぞれ異なる回転角度を有するように同期せずに回転可能であることを特徴とする、
請求項1に記載の装置。
【請求項4】
電子開ループ又は閉ループの前記制御ユニットは、少なくとも1つの前記フランジ(3)、少なくとも1つの前記棒状曲げ要素(2)、及び/又は前記試験片(1)に作用するトルク又は力を決定するように構成された少なくとも1つのセンサーに接続され、
前記センサーの測定信号は、前記フランジ(3)の回転運動の閉ループ制御に利用可能であることを特徴とする、
請求項1~3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記フランジ(3)及び/又は前記棒状曲げ要素(2)と前記試験片の表面との間に作用する力、又は、前記棒状曲げ要素(2)と前記試験片の表面との間の物理的接触の場合に前記フランジ(3)に作用するトルクを決定するように構成された少なくとも2つのセンサーが存在し、それに応じてそれぞれの前記フランジ(3)、棒状要素(2)及び/又はロータリードライブ上に配置され、電子閉ループの前記制御ユニットに接続されている、
請求項1~4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
電子閉ループの前記制御ユニットは、キャリブレーションを実行し、及び/又は、ゼロ点接触を確立するように構成されることを特徴とする、
請求項1~5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
それぞれの前記フランジ(3)上の前記棒状曲げ要素(2)の互いの間隔は可変であることを特徴とする、
請求項1~のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記棒状曲げ要素(2)は、シャフトと中空シリンダーとを有し、
前記シャフトは、それぞれの前記フランジ(3)に堅固に接続され、前記中空シリンダーが前記シャフトに回転可能に配置されるように形成されることを特徴とする、
請求項1~のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記試験片(1)が軸方向にふらつくのを防止し、変形していない前記試験片(1)の長手軸方向に平行に並んだ戻り止め(4)が装置の少なくとも片側に存在することを特徴とする、
請求項1~のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記ロータリードライブは、リラクタンス又は永久磁石ステッピングモーター、ハイブリッドステッピングモーター、又はギアモーターとして構成されることを特徴とする、
請求項1~のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
4つの前記棒状曲げ要素(2)がそれぞれ前記フランジ(3)に取り付けられ、前記試験片(1)が、それぞれ1対を形成する2つの曲げ要素(3)の間に導入可能であり、1つの前記フランジ(3)に一緒に固定される2対の曲げ要素(2)は、それぞれの前記フランジ(3)の前記回転軸の両側に、前記回転軸から間隔をあけて配置され、1対の前記曲げ要素(2)は、前記試験片(1)の両面に配置されるように、互いに配置されることを特徴とする、
請求項1~10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
2つの前記棒状曲げ要素(2)が前記フランジ(3)に取り付けられ、前記フランジ(3)の前記回転軸が前記曲げ要素(2)の接続線上に載らないように配置されることを特徴とする、
請求項1~11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
1つのロータリードライブが配置され、該ロータリードライブの駆動軸に第1フランジ(5)が固定され、
前記駆動軸の回転軸に平行に、前記回転軸上に配置された第1棒状曲げ要素(2)と、前記回転軸から間隔をあけて配置された第2棒状曲げ要素(2)とが、それぞれ前記第1フランジ(5)上に存在し、
前記ロータリードライブから間隔をあけて、移動しない第2フランジ(3)が配置され、
前記第2フランジ(3)上に第3棒状曲げ要素(2)が配置され、
1つのスラブ上又はビーム上の試験片(1)は、前記第1棒状曲げ要素(2)と前記第2棒状曲げ要素(2)との間と、前記第2棒状曲げ要素(2)と前記第3棒状曲げ要素(2)との間に導入可能であり、前記ロータリードライブが回転したときに曲げ力が前記試験片(1)に加えられ、3点曲げ試験が実施される、
スラブ型又はビーム型の試験片(1)の曲げ試験を実行するための装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラブ状又はビーム状のサンプルの曲げ試験を実施するための装置に関する。ここでは、試験片は、曲げ方向に応じて引張応力又は圧縮応力がそれぞれの試験片の表面に作用するように、均一又は不均一な曲げモーメントで2つの反対方向に曲げることができる。本発明により、とりわけ、引張試験及び層間剥離試験を試験片に対して実施することができる。
【背景技術】
【0002】
可能な実験的形状の1つは、いわゆる4点曲げ(4PB)試験である。ここでは、破壊靭性、及び複合型試験片の場合、サンドイッチ試験片の境界層に構成される層の接着力を決定することができる。このような4点曲げ試験中に、定義された構造及び定義された寸法を持つビーム状の試験片が曲げられる。それぞれのビーム状の試験片は、少なくとも2つのピンがベアリングピンとして機能する4つのピンを使用して変形される。ここで、2対のピンは、いずれの場合も試験片の下側と上側に配置され、互いに平行になるように並んでいる。試験片の上側の引張応力の場合、下側に配置されたピンの相互間隔は上側に配置されたピンのペアよりも小さくなる(試験片表面の圧縮応力の場合、ピンのペアは上側でより小さな間隔で配置される)。試験片を曲げると、(ピンレセプタクルの回転により)少なくとも1つのピンのペアが試験片表面に対して垂直に移動し、試験片を曲げる圧縮力が表面に作用する。ここで小さいピンのペア間の曲げモーメントは、試験片の長さにわたって均一である。実験中に発生する非対称性は、ピンの動きを個別に非平行に制御することで相殺することも、必要に応じて非対称性を引き起こすこともできる。
【0003】
試験片の曲げられた表面の試験も、曲げと並行して行われることがよくある。従って、それぞれの表面は、曲げ中に、例えば顕微鏡、特に走査型電子顕微鏡などの測定装置で検査され得る。顕微鏡の短い動作間隔で確実な良好な画像品質を実現するには、低い設置高さとアクセシビリティが必要である。集束イオンビームにより材料を同時に除去する場合、イオン及び電子カラムのユーセントリックポイントがここに着する。ユーセントリックポイントは装置固有であり、着するための最大許容試験片高さが必要である。しかしながら、既知の装置の場合、これは電子顕微鏡に応じて困難を伴い、複雑さが増すだけで実施可能ではあるが、提案された装置により容易に実施可能である。
【0004】
さらに、圧縮応力と引張応力の変化は、試験片を取り外したり、試験設定を変更したりすることなく、試験片の表面に対応する曲げを加えることで実現できる。既知の装置の場合、これは真空の中段の可能性を含む変換手段によってのみ可能である。走査型電子顕微鏡で使用する場合、この試験片を装置とともに真空チャンバーから排出する必要がある。従って、同時に試験を行いながら真空を中断することなく互いにストレスをかけることはできない。
【0005】
構造の観点から試験片を曲げるためのピンの並進運動に利用されるドライブは、曲げの際に非常に小さな距離又は距離の差を考慮し、低い設置高さを守る場合、非常に複雑である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、低い設置高さを維持しながら、スラブ状又はビーム状の試験片に負荷反転を伴う(任意に非対称応力によって)曲げ試験を実施する際の柔軟性を高め、特に真空チャンバーの設置スペースが制限されている条件下で、試験及び操作のための曲がった試料表面のアクセシビリティを改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、本発明によれば、請求項1の特徴を有する装置によって達成される。本発明の有利な設計実施形態及び改良は、従属請求項に記載された特徴によって実施することができる。
【0008】
本発明に係る装置は、2つのロータリードライブが互いに間隔をあけて配置されている。それぞれ1つのフランジはロータリードライブの互いに平行に並んだ駆動軸に固定されている。それぞれの駆動軸の回転軸に平行で、回転軸から間隔をあけて、互いに間隔をあけて並んだ棒状曲げ要素の形態の少なくとも2つのピンがフランジ上に存在し、1つのスラブ状又はビーム状の試験片は、それぞれ2つのフランジの2つの棒状曲げ要素の間に導入可能であり、一方又は両方のロータリードライブが反対又は同一の回転方向に回転したときに曲げ力が試験片に加えられる。2つのロータリードライブはそれぞれ個別に作動可能であり、電子式開ループ又は閉ループの制御ユニットに接続されている。
【0009】
棒状曲げ要素間への試験片の導入は、棒状曲げ要素が水平に並んでいない軸上に配置されるフランジの回転角度が設定されたときに行われることが好ましい。
【0010】
試験片表面の均一な応力状態と均一な曲げモーメントのために、ロータリードライブは、棒状曲げ要素間の試験片の均一な曲げが達成されるように、同じ絶対回転角を持つように、それぞれ反対方向に回転可能でなければならない。
【0011】
本発明に係る装置のこのような実施形態により、一時停止することなく、互いに反対側に配置された試験片の曲げられた表面に交互に引張応力と圧縮応力を発生させることが可能である。
【0012】
ただし、2つのロータリードライブの分離した動きのため、同じ時点のフランジが異なる回転角を持つことができるロータリードライブの非同期及び非対称回転が可能であり、特に有利である。
【0013】
それぞれのフランジに配置されたそれぞれの内側の棒状曲げ要素間の試験片表面の応力勾配は、非同期及び非対称の回転のために目標を定めた方法で設定することができる。そのため、試験片表面の緩やかな応力差は、例えば、好ましく定義された亀裂の形成の観点から可能な応力依存効果をもたらす可能性がある。例えば、温度や大気条件などの、試験片への修正された外部の影響は、多数の同時応力状態によって試験することができ、設定された曲げモーメント勾配により、臨界応力を特定できる(図7及び図8)。
【0014】
ロータリードライブの分離により、装置の簡単なキャリブレーションと曲げ試験の実行時の高精度が可能になる。従って、例えば、ロータリードライブとしてのステッピングモーターのステップが失われた場合、又はギアの遊びがあった場合に、目標を定めた再調整を実行できる。
【0015】
電子開ループ又は閉ループの制御ユニットは、少なくとも1つのフランジ又は少なくとも1つの棒状曲げ要素及び/又は試験片に作用するトルク又は力を決定するように構成された少なくとも1つのセンサーに接続でき、センサーの測定信号は、棒状曲げ要素を有するフランジの回転運動の閉ループ制御に使用できる。
【0016】
有利には、棒状曲げ要素としてのピンと試験片表面との間に作用する力、又は、それぞれの棒状曲げ要素と試験片表面との間の物理的接触の場合にフランジ又は棒状曲げ要素に作用するトルクを決定するように構成された少なくとも2つのセンサーが存在し、それに応じて棒状曲げ要素、フランジ、及び/又はロータリードライブ上に配置され、電子閉ループの制御ユニットに接続される。電子閉ループの制御システムは、キャリブレーションを実行し、及び/又は、ゼロ点接触を確立するように構成する必要がある。
【0017】
トルク差の測定は、棒状曲げ要素及び/又はフランジで実行でき、試験片上面の応力依存試験及びサンドイッチ試験片の4PB接着試験の曲げ試験の評価を改善する。ロータリードライブのステップ損失又はギアの遊びのためにモーメントの不均衡が発生した場合の再調整も可能である。例えば、試験片の表面上のそれぞれのフランジの表面のゼロ点/接触点は、トルクトランスデューサー、トルクを測定するのに適したセンサー、互いに独立して回転可能なフランジと組み合わせて決定できる。キャリブレーションは自動化された方法で実行できる。
【0018】
ゼロ点測定を含むキャリブレーションは、垂直に並んだ棒状曲げ要素の表面に試験片が挿入されるように実行できる(図1)。目的の応力モード(試験片の上側の圧縮応力又は引張応力)に応じて、棒状曲げ要素を持つフランジは、4つすべての曲げ要素が試験片と物理的に接触するまで回転でき、事前に設定された小さなトルクしきい値に値は、フランジ又は棒状曲げ要素とドライブとの間の力又はトルクセンサーに作用する接触力によって測定される(図2)。そして、トルクが再びゼロになるように、フランジを幾分反転させる。この位置は、それぞれゼロ位置又は接触位置として設定される。ここでの2つのフランジは、個別に回転させることができる。そのため、位置の絶対的な決定とキャリブレーションを省くことができる。
【0019】
サンドイッチ試験片を用いた4PB試験の場合、フランジの内側に配置された棒状曲げ要素の支点間の均一な曲げモーメントのため、試験片の中心に導入される亀裂は、試験片の2つの接着されたビーム間の境界層の2つの亀裂前面に、内側に配置された棒状曲げ要素の方向に同時に伝播することが想定される。この場合、エネルギー解放率を計算できる力のプラトーを測定できる。ただし、亀裂が試験片の中心から一方向にのみ伝播することがよくある。これにより、曲げモーメントが均一に分散されなくなり、力/経路曲線(force/path curve)が有効なプラトーを持たなくなる。この例では、2つのフランジで測定できるモーメント、又は棒状曲げ要素で測定できる力やモーメントは、もはや同じサイズではない。そのため、亀裂の長さは間接的に測定できる。この場合、一方又は両方のフランジの回転角度を、目標を定めた方法で再調整して、短い亀裂でより大きな力強度が発生し、この部分で亀裂成長が継続して、同期亀裂成長の仮定が再確立されるようにすることができる。又は、測定された亀裂の長さを直接評価し、エネルギー解放率を確立することができる。このためには、非対称の亀裂の長さを含む別の計算方法が必要である。
【0020】
棒状曲げ要素は、有利には、少なくとも試験片の表面と物理的に接触する表面領域において凸状に湾曲するように構成されるべきである。そのため、試験片表面と棒状曲げ要素との間に作用する摩擦力は、達成可能なより小さな直線状の軸受面によって低減することができる。この目的のために、例えば、棒状曲げ要素は、回転対称の断面を有することができる。
【0021】
作用摩擦力は、棒状曲げ要素が、それぞれのフランジに堅固に接続され、中空シリンダーが回転可能に配置されたシャフトを有するように形成されることで、さらに低減することができる。中空シリンダーは、試験片の曲げで回転する可能性があり、そのため、摩擦力のより低い効果が観察され得る。
【0022】
それぞれのフランジ上の棒状曲げ要素の互いの間隔は可変でなければならない。それにより、作用する曲げ力とモーメントの変化を実現できる。この目的のために、棒状曲げ要素は、例えば細長い穴の形態で構成され、所望の位置に固定され得る対応するガイド内で移動することができる。固定は、例えば、クランプ装置によって実施することができる。それぞれのガイド内の棒状曲げ要素の移動は、適切なドライブにより、任意選択で追加のギアボックスを用いて、実行できる。それにより、曲げ手順の制御された影響も可能である。従って、作用する圧縮力、引張力、モーメント、及び曲げ半径を変えることができる。
【0023】
特に、異なる寸法の試験片を試験する場合、又は異なる試験条件を実施する場合、ロータリードライブの駆動軸の間隔を調整することも可能である。
【0024】
回転軸に平行になるように並んだその長手軸方向の棒状曲げ要素は、軸方向の試験片の範囲の少なくとも110%に相当する長さを持たなければならない。そのため、試験片の軸方向の幅全体にわたる試験片の均一な曲げを維持できることが保証される。
【0025】
試験片が軸方向にふらつくのを防ぐ戻り止めは、変形していない試験片の長手軸方向に平行になるように並んでおり、装置の少なくとも片側に存在する必要がある。試験片のふらつきは、特に好ましくは、ロータリードライブの回転軸に垂直に並んだ軸方向に回避されるべきである。この目的には、棒状曲げ要素を駆動方向にクランプすることが適している。一方、挿入時の試験片は、板金プレートによってピン上で、又は、固定角度によるハウジング上で、ふらつきを防ぐことができる。
【0026】
リラクタンス又は永久磁石のステッピングモーター、ハイブリッドステッピングモーター、又はギアモーターをロータリードライブとして使用できる。
【0027】
4つの棒状曲げ要素は、有利には、それぞれフランジに取り付けられ、互いに1対を形成する2つの棒状曲げ要素の間に試験片が導入できるように、互いに配置することができる。ここで1つのフランジに一緒に固定される2対の棒状曲げ要素は、それぞれのフランジの回転軸の両側に、回転軸から間隔を空けて配置する必要がある。一対の棒状曲げ要素は、試験片の両面に配置する必要がある。
【0028】
4つの棒状曲げ要素は、正方形ではなく、互いに長方形に配置されている場合、異なる間隔は、図10、11、12のさらなるバリエーションの可能性につながります。
【0029】
さまざまな曲げモード、緩やかな応力状態に対して可変に設定可能な曲げモーメント、比較的低い設置高さ、及び試験片の曲げられた表面で試験を実施する測定装置へのアクセシビリティは、従来技術と比較して有利である。そのため、例えば、発生した緩和効果を決定できるように、試験片をイオンビームで同時に加工し、電子ビームで監視することもできる。
【0030】
圧縮及び引張応力が試験片の表面で達成される曲げ方向の反転は、変換手段なしで、ロータリードライブの回転方向の単純な反転で本発明により可能にされ得る。従って、機械的応力を試験片材料に組み込むことができ、機械的応力の効果は、例えば顕微鏡(走査型電子顕微鏡)によって検査することができる。
【0031】
異なる試験片を試験することができ、これは、試験片の厚さにも適用され、装置の変換や、少なくともわずかな調整も必要でない。
【0032】
構造は容易に拡大縮小することができ、巨視的な試験片だけでなく、顕微鏡や分析測定装置での現場試験にも適している。
【0033】
何よりも設置高さは、走査型電子顕微鏡の真空チャンバー内で最小限に抑える必要がある。さらに、潤滑剤及び磁化可能な金属は避けるべきであり、これは本発明により達成可能である。
【0034】
必要な設置高さが低いため、REM/FIBシステムのイオン及び電子カラムのユーセントリックポイントを実現できる。
【0035】
適切な試験片レセプタクルを取り付けられている場合、試験片を垂直に並んだフランジ、それぞれ上部の棒状曲げ要素又は2つのフランジ上で最も離れた棒状曲げ要素に固定して、図13に示すように、フランジを反対方向にねじりながら試験片に張力を加えて、引張試験を実施することができる。ここでの試験片の固定は、装置で引張試験を実行できるように、2本のピン上の曲げられた端部側、クランプ接続、又は実質的に一体の接続(接着接合、はんだ付け/ろう付け、溶接)により、形状適合方式で実現できる。
【0036】
図9の特別なホルダーを用いて3点曲げを実現できる。ここでのフランジは、移動する必要のないフランジが1つの棒状曲げ要素のみを持つように具現化される。他のフランジは、棒状曲げ要素が回転軸に配置されるように具体化される。この実施形態の場合の第2の棒状曲げ要素は、第1の棒状曲げ要素から間隔をあけて配置され、該間隔は回転軸の距離の半分に対応する。
【0037】
以下、本発明を例示的に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1図1は、棒状曲げ要素間に試験片を導入できる図及び位置での、本発明に係る装置の一例を概略的に示す。
図2図2は、曲げられた試験片の上向きの表面に引張応力が作用するように棒状曲げ要素が配置される位置での、図1の例を示す。
図3図3は、曲げられた試験片の上向きの表面に圧縮応力が作用するように棒状曲げ要素が配置される位置での、図1の例を示す。
図4図4は、4つの棒状曲げ要素がそれぞれ1つのフランジに配置されている例を示している。
図5図5は、フランジの2つの位置において、それぞれのフランジの回転軸に対して非対称となるように、棒状曲げ要素がフランジに配置される例を示す。
図6図6は、フランジの2つの位置において、それぞれのフランジの回転軸に対して非対称となるように、棒状曲げ要素がフランジに配置される例を示す。
図7図7は、図3のように2つのフランジが互いに反対方向にねじれているが、異なる回転角を有する例を示している。
図8図8は、ロータリードライブが同じ回転方向に回転した例を示している。
図9図9は、個々のフランジが固定されるように保持され、ロータリードライブと互いに間隔を空けて配置された2つの棒状曲げ要素によって試験片の曲げが達成される例を示しており、固定された個々のフランジは、試験片のカウンターホルダーを形成する。
図10図10は、試験片が、それぞれの場合において、4つの棒状曲げ要素のうち2つの間で案内され、試験片の曲げがロータリードライブを反対方向に回転させることによって達成される、図4の例を示している。
図11図11は、試験片が1つのロータリードライブによってそれぞれ回転可能な2つのフランジの間の異なる位置に配置され、回転がロータリードライブによってそれぞれ反対方向に達成された、曲げ要素の間隔を変更した図4の例を示している。
図12図12は、フランジ及びロータリードライブが反対の回転方向である、図4及び図11の例を示している。
図13図13は、外端部側で曲げられ、反対方向の回転でフランジが回転すると引張試験が実行できるように、曲げられた端部側がそれぞれ1つのフランジに配置された1つの棒状要素の周りに形状嵌合方式(form-fitting manner)でそれぞれ曲げられた試験片を示している。
図14図14は、本発明及び対応する方法で作用する力及びモーメント、対称及び非対称な亀裂で試験片を曲げることによって生じる力によって、それぞれ、亀裂の伝播に影響を与えることができる、又は、非対称の亀裂開口部を打ち消すことができる、サンドイッチ試験片の接着特性を測定するための4点曲げ試験を実施するための試験片を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1に示される例の場合、それぞれロータリードライブ(図示せず)の1つの駆動軸に接続される2つのフランジ3は、フランジ3に固定された2つの曲げ要素2が垂直に並んだ軸において互いに間隔をあけて配置されるように、フランジ3がねじられた位置に示される。このため、フランジがこの位置まで回転するように、ロータリードライブが作動した。
【0040】
回転軸は、プロットされた点線が交差するフランジ3の領域の重心に配置される。曲げ要素の軸は、必ずしも回転軸を通る必要はない。
【0041】
フランジ3のこの位置で、スラブ状又はビーム状の試験片1は、フランジ3の垂直下方に配置され、回転軸に平行になるように並んだ曲げ要素2上に非常に簡単に配置できる。
【0042】
試験片1のそれぞれの端面を支持し、その長手軸に沿った試験片1のふらつきを防止することができる1つの戻り止め4は、いずれの場合も、ここに示される左右の周囲に存在する。
【0043】
試験片1の曲げを実現する方法を図2に示す。引張応力は試験片の上向きの表面に作用し、試験片1は、試験片1の表面に作用し、棒状要素2を介して導入される圧縮力により、この方向に凸状に曲げられている。このため、フランジ3は、矢印で示されるように回転している。試験片1の曲げは、互いに反対の回転方向を有するフランジ3の回転のために、4つの曲げ要素2によって行われる。
【0044】
図3に示す曲げ位置の場合、フランジ3はそれぞれの曲げ要素2とともに反対の回転方向に回転しているため、試験片1は上から見たときに凹状に変形し、試験片材料の上向きの表面に圧縮応力が作用する。これは、回転する曲げ要素2によって試験片1に加えられる圧縮力によって達成できる。
【0045】
従って、圧縮応力と引張応力、又はその逆が試験片1の表面に交互に作用するためには、単純な方向の反転で十分である。この目的のための装置の変換は必要ない。
【0046】
図4は、それぞれ1つのフランジ3に配置された4つの曲げ要素2を有する例を示している。ここでの2つの曲げ要素2は、それぞれの場合、試験片1の上下で、それぞれのフランジ3の回転軸から互いに間隔を空けて配置されている。間隔は、それぞれの場合で、上側と下側で同じにすることができる。
【0047】
フランジ3が反対方向に回転するため、このように構成された例により、垂直下向きの試験片表面の対応する凸状の曲げと関連する垂直上向きの表面上の試験片1の凹状の曲げは、それぞれの場合に一方向で達成できる。これにより、試験片1の垂直上面の領域に圧縮応力が生じ、試験片1の垂直下面に引張応力が生じる。
【0048】
フランジがそれぞれ反対方向に回転すると、曲げと力の効果がまったく逆の方法で発生する。
【0049】
試験片1の上下に垂直に曲げ要素2を配置する場合、上下に垂直に配置された曲げ要素2の間に試験片1をわずかな遊びで配置することができ、フランジ3の回転方向が2つのフランジ3で対応する迅速かつ同期的な方法で変更されるとき、試験片1の表面に対する応力効果の変更は、非常に簡単かつ迅速な方法で達成することができる。
【0050】
図5及び図6は、対応する力と曲げ効果を試験片1に加えるために、この場合、各フランジ3の領域の重心、従って、図中の点線の交点に配置される回転軸に関して、フランジ3上に曲げ要素2を非対称に対応して配置できることを示すことを意図している。
【0051】
図7及び8により、フランジ3の異なる回転により、フランジ3の回転において棒状曲げ要素2により試験片1を曲げることができる方法に関する可能性を示すことを意図している。
【0052】
図9は、3点曲げ試験を実施する例を示しており、それぞれの他のフランジ3が回転するときにカウンターベアリング(counter bearing)を形成することができる、1つの棒状曲げ要素2のみがフランジ3上に配置されている。この場合、少なくとも2つの棒状曲げ要素2が前記他のフランジ上に互いに間隔をおいて配置され、試験片1は少なくとも2つの棒状曲げ要素2の間に案内され、後者によって試験片1の曲げが達成される。1つの曲げ要素2はフランジ3の回転軸に位置している。
【0053】
図10~12は、それぞれ4つの棒状要素2がフランジ3上に存在し、様々な形態でフランジ3の回転における試験片1の曲げに使用できる例を示している。
【0054】
図13に、引張試験を実施する例を示す。ここでの試験片1の端部側は、該端部側が2つのフランジ3で棒状曲げ要素2の背後に係合するように曲げられ、従って、形状嵌合接続が達成可能である。フランジ3を反対の回転方向で回転させると、引張試験を実行できる。この目的のために、フランジ3及び/又は棒状要素2上に配置され、対応して構成されるセンサによって測定される力及び/又はモーメントを利用することができる。
【0055】
接着フィルム10を介して接続された2つのシリコンプレート1.1及び1.2を有するサンドイッチ試験片として構成される試験片1が図14に示され、試験片1は4点曲げ試験4PBを受ける。予備亀裂11は、上部シリコンプレート1.1に構成される。亀裂伝播12は、試験片1を曲げるときに接着フィルム10を介して接続されるシリコンプレート1.1と1.2との間の接続面に沿って構成することができる。
【0056】
試験片1の回転と曲げにおける内側の棒状曲げ要素2間の均一な曲げモーメントのために、試験片1の中央に導入される亀裂12は、2つの接着されたシリコンプレート1.1、1.2の間の境界層の2つの亀裂前面に、試験片1のさらに内側に配置された棒状曲げ要素2の方向に同時に伝播する。この場合、フォースプラトーそのうちのエネルギー放出率を計算できる。この場合、エネルギー解放率を計算できる力のプラトーを測定できる。ただし、一方の亀裂のみが入り、曲げモーメントが均一に分散されなくなり、力/経路曲線(force/path curve)が有効なプラトーを持たなくなることがしばしば起こる。この場合、棒状曲げ要素2又は関連するフランジ3で測定できるモーメントは、もはや同じサイズではない。そのため、亀裂の長さは間接的に測定できる。この場合、フランジ3の一方又は両方を、目標を定めた方法で再調整して、短い亀裂の亀裂先端でより高い力強度が確立され、この部分で亀裂成長が継続することが好ましく、同期亀裂成長の仮定を再確立できる。又は、測定された亀裂の長さを直接評価できる。この場合の対称性の前提条件はもはや与えられていないため、異なる亀裂長さを考慮しながら、エネルギー解放率の異なる計算が必要である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14