(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-10
(45)【発行日】2022-08-19
(54)【発明の名称】電気誘導加熱コイル内のビレットのレールレス支持体
(51)【国際特許分類】
F27B 9/20 20060101AFI20220812BHJP
H05B 6/10 20060101ALI20220812BHJP
H05B 6/36 20060101ALI20220812BHJP
C21D 9/00 20060101ALI20220812BHJP
C21D 1/00 20060101ALI20220812BHJP
F27D 5/00 20060101ALI20220812BHJP
【FI】
F27B9/20
H05B6/10 341
H05B6/36 F
C21D9/00 101N
C21D1/00 F
F27D5/00
(21)【出願番号】P 2019555122
(86)(22)【出願日】2018-05-01
(86)【国際出願番号】 US2018030441
(87)【国際公開番号】W WO2018226326
(87)【国際公開日】2018-12-13
【審査請求日】2021-03-15
(31)【優先権主張番号】201711019983
(32)【優先日】2017-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(32)【優先日】2017-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501395742
【氏名又は名称】インダクトヒート インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】チラーグ・ジー・シットワラ
(72)【発明者】
【氏名】ゲイリー・エイ・ドイオン
(72)【発明者】
【氏名】ダグ・アール・ブラウン
【審査官】河野 一夫
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2005/072215(WO,A2)
【文献】特開昭54-135606(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0140245(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0205829(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 9/20
H05B 6/10
H05B 6/36
C21D 9/00
C21D 1/00
F27D 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電流が供給される少なくとも1つの誘導コイルを通ってビレットを移動させるための粘土黒鉛ビレットスライダーであって、前記ビレットが前記少なくとも1つの誘導コイルを通って移動する際に前記粘土黒鉛ビレットスライダーに着座しかつ前記粘土黒鉛ビレットスライダーとスライド接触して
おり、
前記粘土黒鉛ビレットスライダーが、少なくとも
炭素(C)30~40重量%、
炭化ケイ素(SiC)8~12重量%、
二酸化ケイ素(SiO
2
)15~25重量%、および
酸化アルミニウム(Al
2
O
3
)10~20重量%
のスライダー組成物を含む、粘土黒鉛ビレットスライダー。
【請求項2】
前記粘土黒鉛ビレットスライダーが、前記少なくとも1つの誘導コイル内に配置された開放端中空シリンダー、開放端部分シリンダーまたは開放端中空矩形管を備える、請求項1に記載の粘土黒鉛ビレットスライダー。
【請求項3】
前記少なくとも1つの誘導コイルがソレノイド誘導コイルを備え、前記粘土黒鉛ビレットスライダーが、前記少なくとも1つの誘導コイル内に配置された開放端中空シリンダー、開放端部分シリンダーまたは開放端中空矩形管を備える、請求項1に記載の粘土黒鉛ビレットスライダー。
【請求項4】
前記スライダー組成物が、総計で前記スライダー組成物の6重量%を超えない
、鉄、ホウ素、ナトリウムおよびカリウムの酸化物から選択される1つ以上の酸化物、総計で前記スライダー組成物の2重量%を超えない1つ以上のマグネシウム、コバルトおよびクロム化合物、および前記スライダー組成物の1重量%を超えない元素シリコンを更に含む、請求項
1に記載の粘土黒鉛ビレットスライダー。
【請求項5】
少なくとも1つの誘導コイルと、
前記少なくとも1つの誘導コイルに接続された少なくとも1つの交流電力源と、
前記少なくとも1つの誘導コイルの各々に配置された粘土黒鉛ビレットスライダー
であって、少なくとも
炭素(C)30~40重量%、
炭化ケイ素(SiC)8~12重量%、
二酸化ケイ素(SiO
2
)15~25重量%、および
酸化アルミニウム(Al
2
O
3
)10~20重量%
を含むビレットスライダー組成物から形成される粘土黒鉛ビレットスライダーと
を備えるレールレスビレット電気誘導加熱システムであって、
前記粘土黒鉛ビレットスライダーが前記少なくとも1つの誘導コイルから電気的に絶縁され、
前記粘土黒鉛ビレットスライダーの内部表面領域が、前記少なくとも1つの誘導コイルを介して前記粘土黒鉛ビレットスライダーの内部表面領域に着座したビレットを移動させて目標温度まで前記ビレットを静的または連続的に加熱するためのビレットスライダー表面を形成する、
レールレスビレット電気誘導加熱システム。
【請求項6】
前記ビレットスライダー組成物が、総計で前記ビレットスライダー組成物の6重量%を超えない
、鉄、ホウ素、ナトリウムおよびカリウムの酸化物から選択される1つ以上の酸化物、総計で前記ビレットスライダー組成物の2重量%を超えない1つ以上のマグネシウム、コバルトおよびクロム化合物、および前記ビレットスライダー組成物の1重量%を超えない元素シリコンを更に含む、請求項
5に記載のレールレスビレット電気誘導加熱システム。
【請求項7】
前記少なくとも1つの誘導コイルのスライダーに面する表面と前記粘土黒鉛ビレットスライダーのコイルに面する表面との間に環状スペーサ容積が設けられる、請求項
5または
6に記載のレールレスビレット電気誘導加熱システム。
【請求項8】
前記少なくとも1つの誘導コイルを移動させずに前記粘土黒鉛ビレットスライダーの軸方向縦軸を中心に前記粘土黒鉛ビレットスライダーを回転させるための前記環状スペーサ容積内の滑り面材料を更に含む、請求項
7に記載のレールレスビレット電気誘導加熱システム。
【請求項9】
前記少なくとも1つの誘導コイル内に配置された前記粘土黒鉛ビレットスライダーを挿入するまたは取り外すための前記環状スペーサ容積内の滑り面材料、または前記少なくとも1つの誘導コイルを移動させずに、前記粘土黒鉛ビレットスライダーの軸方向縦軸を中心として粘土黒鉛ビレットスライダーを回転させるための前記環状スペーサ容積内の滑り面材料を更に含む、請求項
7に記載のレールレスビレット電気誘導加熱システム。
【請求項10】
前記少なくとも1つの誘導コイルが、インラインマルチコイル誘導加熱システムにおける複数の誘導コイルを備え、前記複数の誘導コイルの各々における前記粘土黒鉛ビレットスライダーが、前記粘土黒鉛ビレットスライダーをその軸方向縦軸を中心として回転させるための前記環状スペーサ容積内の滑り面材料、または前記複数の誘導コイルの各々に配置された前記粘土黒鉛ビレットスライダーを挿入するまたは取り外すための環状スペーサ容積内の滑り面材料を更に含む、請求項
7に記載のレールレスビレット電気誘導加熱システム。
【請求項11】
前記粘土黒鉛ビレットスライダーが、前記少なくとも1つの誘導コイルと前記粘土黒鉛ビレットスライダーとの間に断熱を付与する、請求項
5、6、8、9および10のいずれか一項に記載のレールレスビレット電気誘導加熱システム。
【請求項12】
前記ビレットスライダー組成物は、15W/m・Cを超えない熱伝導値を有する、請求項
11に記載のレールレスビレット電気誘導加熱システム。
【請求項13】
熱間加工プロセスシステムにおいて、
レールレスビレット電気誘導加熱システムであって、
少なくとも1つの誘導コイルと、
前記少なくとも1つの誘導コイルに接続された少なくとも1つの交流電力源と、
前記少なくとも1つの誘導コイルの各々に配置された粘土黒鉛ビレットスライダー
であって、少なくとも
炭素(C)30~40重量%、
炭化ケイ素(SiC)8~12重量%、
二酸化ケイ素(SiO
2
)15~25重量%、および
酸化アルミニウム(Al
2
O
3
)10~20重量%
を含むスライダー組成物から形成される粘土黒鉛ビレットスライダーと
を備え、前記粘土黒鉛ビレットスライダーが前記少なくとも1つの誘導コイルから電気的に絶縁され、前記粘土黒鉛ビレットスライダーの内部表面領域が、前記少なくとも1つの誘導コイルを介して前記粘土黒鉛ビレットスライダーの内部表面領域に着座したビレットを目標熱間加工温度まで静的または連続的に加熱して前記少なくとも1つの誘導コイルからの出口で加熱されたビレットを形成するために、前記ビレットを移動させるためのビレットスライダー表面を形成する、レールレスビレット電気誘導加熱システムと、
前記加熱されたビレットを受け取って熱間加工製品を形成するための、熱間加工装置と
を含む、熱間加工プロセスシステム。
【請求項14】
前記熱間加工装置が熱間鍛造装置を備える、請求項
13に記載の熱間加工プロセスシステム。
【請求項15】
ビレット電気誘導加熱システムを形成する方法であって、
少なくとも1つの交流電力源に接続された少なくとも1つの誘導コイルを提供するステップと、
少なくとも
炭素(C)30~40重量%、
炭化ケイ素(SiC)8~12重量%、
二酸化ケイ素(SiO
2
)15~25重量%、および
酸化アルミニウム(Al
2
O
3
)10~20重量%
を含むビレットスライダー組成物から少なくとも1つの粘土黒鉛ビレットスライダーを形成するステップと、
前記少なくとも1つの誘導コイルの各々の中に
前記少なくとも1つの粘土黒鉛ビレットスライダー
の各々を挿入するステップであって、前記
少なくとも1つの粘土黒鉛ビレットスライダー
の各々が、前記少なくとも1つの誘導コイルを介して内部スライダー表面に着座したビレットをスライドさせるための前記内部スライダー表面を備えた内部ビレット貫通開口部を有する、ステップと、
前記少なくとも1つの粘土黒鉛ビレットスライダーの各々を、前記少なくとも1つの粘土黒鉛ビレットスライダーが挿入された前記少なくとも1つの誘導コイルから電気的に絶縁するステップと
を含む方法。
【請求項16】
総計で前記ビレットスライダー組成物の6重量%を超えない
、鉄、ホウ素、ナトリウムおよびカリウムの酸化物から選択される1つ以上の酸化物、総計で前記ビレットスライダー組成物の2重量%を超えない1つ以上のマグネシウム、コバルトおよびクロム化合物、および前記ビレットスライダー組成物の1重量%を超えない元素シリコンから前記ビレットスライダー組成物を形成するステップを更に含む、請求項
15に記載の方法。
【請求項17】
熱間加工目標温度まで加熱されたビレットを熱間加工する方法であって、
少なくとも
炭素(C)30~40重量%、
炭化ケイ素(SiC)8~12重量%、
二酸化ケイ素(SiO
2
)15~25重量%、および
酸化アルミニウム(Al
2
O
3
)10~20重量%
を含むスライダー組成物から少なくとも1つの粘土黒鉛ビレットスライダーを形成するステップと、
少なくとも1つの誘導コイルを介して前記ビレットを前記熱間加工目標温度まで静的または連続的に誘導加熱して、前記少なくとも1つの誘導コイルの出口で加熱されたビレットを形成する際、
前記粘土黒鉛ビレットスライダーの内面上で前記少なくとも1つの誘導コイルの入口から前記ビレットをスライドさせることによって、交流電流が供給される前記少なくとも1つの誘導コイル内に配置された前記粘土黒鉛ビレットスライダーを介して前記ビレットを移動するステップと、
前記少なくとも1つの誘導コイルの出口から前記加熱されたビレットを熱間加工装置に移送するステップと、
前記熱間加工装置内で前記加熱されたビレットを熱間加工して、製品を形成するステップと
を含む、方法。
【請求項18】
前記熱間加工装置が熱間鍛造装置を備える、請求項
17に記載の方法。
【請求項19】
少なくとも1つの誘導コイルと、
前記少なくとも1つの誘導コイルに接続された少なくとも1つの交流電力源と、
前記少なくとも1つの誘導コイル内の耐火物と、
内部に配置されたビレットを、前記耐火物とスライド接触させつつ前記少なくとも1つの誘導コイルを通って移動させるための粘土黒鉛ビレットキャリア
であって、
少なくとも
炭素(C)30~40重量%、
炭化ケイ素(SiC)8~12重量%、
二酸化ケイ素(SiO
2
)15~25重量%、および
酸化アルミニウム(Al
2
O
3
)10~20重量%
を含む組成物から形成される粘土黒鉛ビレットキャリアとを備える、レールレスビレット電気誘導加熱システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2017年6月7日にインド特許庁に出願されたインド特許出願第201711019983号および2017年7月25日に出願された米国仮特許出願第62/536,638号の優先権および利益を主張するものであり、その全内容を参照により本明細書に援用する。
【0002】
本発明は、ビレットを製品に鍛造することを含むさまざまな産業プロセスで更に処理するためのビレットの誘導加熱のための電気誘導コイル内のビレットのレールレス支持体に関する。
【背景技術】
【0003】
少なくとも部分的に電磁伝導性の材料で構成されたビレットは、鍛造、据込み鍛造、圧延、押出および引抜きを含むプロセスにおける後続の熱間加工のために、例えば900℃~1300℃の範囲の高温に誘導的に予熱され得る。ビレットの誘導予熱は、適切な電源から交流電流が供給される誘導コイル内にビレットを配置することで実現できる。耐火物は、誘導コイルとビレットの間に配置され、誘導熱をビレット内で保持し、誘導コイル内の高温放射と対流熱から誘導コイルを保護する。
【0004】
英国特許第GB892447A号は、誘導コイル内の耐火物にビレットを載せることに関するいくつかの問題を認識し、コイル内を通って加熱されたビレットをスライドさせるためにコイル内でレールを使用するという解決策を開示している。GB892447A号で指摘されているように、技術のさらなる改善により、内部強制流体冷却を備えたレールがもたらされ、レールが冷却されないという問題が克服された。GB892447Aの技術への貢献は、耐火物の表面にビレットを寄せ付けない耐火物内に部分的に埋め込まれたレールであったが、レールは、レール上をスライドする熱いビレットからレール上に堆積したスケールの影響を受ける。したがって、耐火物の目的は熱制御であり、レールの目的は、誘導コイル内でのビレットの効率的な移動を提供することである。
【0005】
米国特許第7,528,351B2号は、サイアロンなどのセラミック材料から形成することができる調整可能なレールで技術を更に進歩させている。
【0006】
図1(a)~
図1(d)は、従来技術に見られる典型的なビレット電気誘導加熱システムの横断面図である。
図1(a)の従来技術のビレット誘導加熱システムでは、円筒形のビレット90は、ビレット誘導加熱コイル94aを通過する際に、開放端部分円筒形ステンレス鋼条片ビレット支持体102に着座する。ビレット支持体102は、断面ギャップ104aを有するステンレス鋼ライナー104とともにビレットを耐火物106から分離する。ビレット誘導加熱コイル94aは、ガラステープ108の絶縁層によって耐火物106から分離されている。
図1(b)の従来技術のビレット誘導加熱システムでは、円筒形ビレット90は、ビレット誘導加熱コイル94bを通過する際に、ビレット支持レール96aおよび96b上に着座する。支持レール96aおよび96bは、耐火性フェルト204およびガラステープ206に囲まれた耐火性ライナー202に部分的に埋め込まれている。
図1(c)の先行技術のビレット誘導加熱システムでは、矩形のビレット92は、ビレット誘導加熱コイル94cを通過する際に、ビレット支持レール98aおよび98bに着座する。支持レール98aおよび98bは、それぞれ調節可能な支持部98a’および98b’によってビレットの外周の周りに調節可能範囲を有する。支持レールは、耐火性フェルト404に囲まれた耐火性ライナー402の内周上にある。ガラステープ406は、耐火性フェルトをコイル94cから分離する。
図1(d)の先行技術のビレット誘導加熱システムでは、円筒形のビレット90は、ビレット誘導加熱コイル94dを通過する際に、耐火物302に部分的に埋め込まれたレール96aおよび96bに着座する。
図1(d)の構成はGB892447Aに開示された1つの実施形態に類似している。これらの4つの従来技術の実施形態では、ビレットは、ビレット誘導加熱コイルを通過する際に、縦レールまたは半円形のステンレス鋼支持体のいずれかによって支持される「Conduction and induction heating」(E.J.Davies;236-241頁;Peter Peregrinus Ltd.、英国、ロンドン(1990))。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】英国特許第GB892447A号
【文献】米国特許第7,528,351B2号
【非特許文献】
【0008】
【文献】「Conduction and induction heating」(E.J.Davies;236-241頁;Peter Peregrinus Ltd.、英国、ロンドン(1990))
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来技術には見られないものは、ビレットの摩耗による交換前に内部で加熱できるビレットの数に関して十分に長い寿命を有するビレットスライダー材料と組み合わせて、生産性の向上したビレット加熱速度を提供するレールレスビレット支持ビレット電気誘導加熱システムである。
【0010】
本発明の一つの目的は、ビレットの摩耗による交換前に加熱できるビレットの数に関して十分に長い寿命を有するビレットスライダー材料と組み合わせて、生産性の向上したビレット加熱速度を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一態様において、本発明は、交流電流が供給される誘導コイル内でビレットを移動させるための粘土黒鉛ビレットスライダーであって、ビレットは粘土黒鉛ビレットスライダー上に着座している。
【0012】
別の態様において、本発明は、交流電力源によって電力供給される誘導コイルと、誘導コイル内に配置された粘土黒鉛ビレットスライダーとを有するレールレスビレット電気誘導加熱システムである。粘土黒鉛ビレットスライダーは誘導コイルから電気的に絶縁されており、粘土黒鉛ビレットスライダーの内部表面領域は、誘導コイルを介して粘土黒鉛ビレットスライダーの内部表面領域に着座したビレットを移動させて目標温度までビレットを静的または連続的に加熱するためのビレットスライダー表面を形成する。
【0013】
別の態様において、本発明は、交流電力源によって電力供給される誘導コイルと、誘導コイル内に配置された粘土黒鉛ビレットスライダーとを有する熱間加工プロセスシステムである。粘土黒鉛ビレットスライダーは誘導コイルから電気的に絶縁されており、粘土黒鉛ビレットスライダーの内部表面領域は、誘導コイルを介して粘土黒鉛ビレットスライダーの内部表面領域に着座したビレットを移動させて目標温度までビレットを静的または連続的に加熱するためのビレットスライダー表面を形成する。加熱されたビレットを受け取って熱間加工された製品を形成するための熱間加工装置が提供される。
【0014】
別の態様において、本発明は、交流電力源に接続された誘導コイルを提供し、誘導コイル内に粘土黒鉛ビレットスライダーを挿入し、誘導コイル内に挿入された粘土黒鉛スライダーを誘導コイルから電気的に絶縁することによりビレット電気誘導加熱システムを形成する方法であって、この粘土黒鉛ビレットスライダーが、誘導コイルを介して内部表面に着座したビレットをスライドさせるための内部スライダー表面を備えた内部ビレット貫通開口部を有する、方法である。
【0015】
別の態様において、本発明は、誘導コイルを介してビレットを熱間加工目標温度まで静的または連続的に誘導加熱して、誘導コイルの出口で加熱されたビレットを形成する際、粘土黒鉛ビレットスライダーの内面上で粘土黒鉛ビレットスライダーへの入口からビレットをスライドさせることによって、交流電流に接続された誘導コイル内に配置された粘土黒鉛ビレットスライダーを介してビレットを移動させ、誘導コイルの出口から加熱されたビレットを熱間加工装置に移送し、熱間加工装置内で加熱されたビレットを熱間加工して製品を形成することにより、熱間加工目標温度まで加熱されたビレットを熱間加工する方法である。
【0016】
別の態様では、本発明は、交流電流によって電力供給される誘導コイルと、誘導コイル内に耐火物とを有するレールレスビレット電気誘導加熱システムである。粘土黒鉛ビレットキャリアは、粘土黒鉛ビレットキャリアに配置されたビレットを、耐火物とスライド接触させつつ誘導コイルを通って移動させるために設けられる。
【0017】
本発明の上記および他の態様は、本明細書および添付の特許請求の範囲に記載されている。
【0018】
本発明を例示する目的のために、現在好ましい形態が図面に示されている。しかしながら、本発明は、示された正確な構成および手段に限定されないことが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1(a)】典型的な従来技術のビレット電気誘導加熱システムの横断面図である。
【
図1(b)】典型的な従来技術のビレット電気誘導加熱システムの横断面図である。
【
図1(c)】典型的な従来技術のビレット電気誘導加熱システムの横断面図である。
【
図1(d)】典型的な従来技術のビレット電気誘導加熱システムの横断面図である。
【
図2(a)】粘土黒鉛ビレットスライダー、スライダー内の例示的なビレットおよび誘導コイルを備えた、本発明のビレット電気誘導加熱システムの一例の、
図2(b)の線A-Aを通る横断面立面図である。
【
図2(b)】
図2(a)のビレット電気誘導加熱システムの、
図2(a)の線B-Bを通る縦断面立面図である。
【
図3(a)】スライダーの縦軸を中心に回転可能な粘土黒鉛ビレットスライダーを備えた本発明のビレット電気誘導加熱システムの別の例の別の横断面立面図である。
【
図3(b)】スライダーの縦軸を中心に回転可能な粘土黒鉛ビレットスライダーを備えた本発明のビレット電気誘導加熱システムの別の例の別の横断面立面図である。
【
図4】開放端部分円筒シェルの形状である粘土黒鉛ビレットスライダーを備えた本発明のビレット電気誘導加熱システムの別の例の横断面立面図である。
【
図5(a)】誘導コイルを通って移動する各ビレット用の粘土黒鉛ビレットスライダーを備えた本発明のビレット電気誘導加熱システムの別の例の、
図5(b)の線C-Cを通る横断面立面図である。
【
図5(b)】
図5(a)のビレット電気誘導加熱システムの
図5(a)の線D-Dを通る縦断面図であって、1つのビレットが誘導コイルに挿入された粘土黒鉛ビレットスライダーに配置された状態、1つの加熱されたビレットが誘導コイルを出た後の状態;および誘導コイル内のビレットの加熱が完了した後、1つのビレットが誘導コイルに入るために段階化された状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図2(a)および
図2(b)に、粘土黒鉛ビレットスライダーを利用する本発明のビレット電気誘導加熱システム10の一例を示す。図において、ビレットスライダー12は、誘導加熱コイル14と、ビレット90が通過して目標温度に誘導加熱されるビレットスライダーの内部通路との間に配置されている。誘導コイルは、誘導コイルの内部通路を通過するビレットを誘導加熱する交流電源16に適切に接続される。
【0021】
図2(a)および
図2(b)に示される本発明の実施形態における粘土黒鉛ビレットスライダーは、同様の開放容積内部形状を有する誘導コイルに適合する開放端中空直円柱の形状であってもよい。
【0022】
本発明の代替実施形態では、誘導コイルは、1つ以上の電源から交流電力を供給され得るソレノイド誘導コイルまたはチャネル誘導コイルを含む、任意のタイプの1つ以上の別個のコイルであり得る。誘導コイルは、例えば、当技術分野で知られているように、通路を通して内部に液体または気体を流すことにより、任意選択的に流体冷却することができる。
【0023】
ビレット加熱プロセスは、連続定常状態(または可変)速度で粘土黒鉛ビレットスライダーの内面とスライド接触しながらビレットがコイルを通って移動する連続モード加熱プロセス、または連続定常状態(または可変)速度で複数のコイルの各々で粘土黒鉛ビレットスライダーの表面とスライド接触しながらビレットが複数のコイルを順次移動するプログレッシブモード加熱プロセスであってもよい。あるいは、ビレット加熱プロセスは静的モード加熱プロセスであってもよく、この場合、ビレットは、目標温度への誘導加熱のためにコイル内の静的ビレット加熱位置まで粘土黒鉛ビレットスライダーの内面とスライド接触しつつ誘導コイルの内部に移動する。目標加熱温度に達した後、加熱されたビレットは、粘土黒鉛スライダーの内面とスライド接触しつつ誘導コイルの内部から移動する。
【0024】
当該技術分野で知られている適切なビレット移動装置を使用して、ビレットを粘土黒鉛ビレットスライダーの内面上に供給するトラクターまたはコンベヤなどの本発明の粘土黒鉛ビレットスライダーの内面とスライド接触させながら、誘導加熱コイルを通ってビレットを移動させることができる。本発明のいくつかの実施形態では、誘導コイルおよび粘土黒鉛ビレットスライダーの軸方向の長さは、複数のビレットが背中合わせの配置で誘導コイル内で粘土黒鉛ビレットスライダー上をスライドすることができるように十分に長くてもよく、外部トラクターまたはコンベヤが、誘導コイルを介して粘土黒鉛ビレットスライダー上をスライドする複数の背中合わせのビレットを押す。
【0025】
コイルの電気アーク放電またはコイルへの他の損傷を防止するために、好ましくは、誘導コイルと粘土黒鉛ビレットスライダーの軸方向長さXLに沿って環状スペーサ容積部18を設けて、誘導コイルの内向き面と粘土黒鉛ビレットスライダーの外向き面を分離する。提供される場合、環状スペーサ容積部は、充填されていない空気容積であるか、電気絶縁材料、断熱材料、または電気および断熱材料、例えばラミネートマイカ紙で満たされていてもよい。本発明の他の実施形態では、コイルとスライダーを分離するための環状スペーサ容積部がない場合がある。ただし、電気誘導ビレット加熱システムの寿命が短くなると、このような配置になる可能性がある。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態では、ビレット電気誘導加熱システムを分解することなく、摩耗した粘土黒鉛ビレットスライダーを交換させるスライダー材料取り付け装置を設けることができる。
【0027】
図2(a)および
図2(b)の粘土黒鉛ビレットスライダーは、誘導コイルの開放容積内部形状に適合する開放端中空直円柱の形状であるが、本発明の他の例では、粘土黒鉛ビレットスライダーの内面、外面、または内面と外面の両方の形状は、粘土黒鉛ビレットスライダーの中空内面とスライド接触するビレットの形状もしくは誘導コイルの開放内部容積の形状に対応する他の形状、またはビレットとコイルの形状と特性の両方の組み合わせであってもよい。例えば、ビレットが矩形の横断面形状を有する用途では、粘土黒鉛中空矩形管を設けてもよい。
【0028】
好ましくは、本発明のビレットスライダーに使用される粘土黒鉛スライダー材料の熱伝導は15W/(m・C)を超えてはならず、例えば、限定されないが好ましくは、誘導加熱される典型的なビレットの重量、電源から誘導コイルへの印加出力周波数およびビレットの目標加熱温度の関数として、10mm~30mmの範囲の壁厚を有する粘土黒鉛ビレットスライダーを必要とする。ビレットスライダーに使用される粘土黒鉛スライダー材料が15W/(m・C)を超えない場合、粘土黒鉛ビレットスライダーは、ビレット電気誘導加熱システム用の追加の耐火材料なしで効果的な熱制御も付与する。
【0029】
表1は、
図2(a)および
図2(b)における本発明の実施形態のものと同様の粘土黒鉛ビレットスライダーを利用する本発明のビレット電気誘導加熱システムの実施例1、2および3について、従来技術のレールビレット電気誘導加熱システムに対する選択された改良の一例を示す。
【表1】
【0030】
表1の加熱システムとプロセスパラメータは次のとおりである。
【0031】
直径、長さおよび重量は、例示ビレットの特性である。
【0032】
線間電圧、電流および電力は、誘導コイルに交流電力を供給する(インバータ)電源への入力の電気的パラメータである。
【0033】
出力電圧、インバータ電流および出力周波数は、誘導コイルに交流電力を供給する(インバータ)電源からの出力の電気的パラメータである。
【0034】
1250℃の目標温度への例示ビレットの加熱を伴うインバータ負荷誘導コイルマッチングトランスフォーマー(比率20:04)およびコンデンサー(71.92マイクロファラッド)と同様に、全ての例で使用される誘導コイル(Inductotherm Corp.部品番号HFAC000577)は同じである。加熱されたビレットの目標温度は、特定の用途に対して規定され、例えば、加熱されたビレットの表面温度または断面平均温度であり得る。
【0035】
時間/PCは1個あたりの時間(ビレット)であり、mm/secは全ての例において各例示ビレットが誘導コイルを通過して1250℃の目標温度に達する速度である。
【0036】
従来のレール誘導加熱システムは、レールが、
図1(d)のように部分的に埋め込まれるのではなく、耐火物の内周に配置されていることを除き、
図1(d)に示されたものと同様の耐火物の内周の周りに互いに間隔を置いて配置される、デュアルビレットレールスライダーを利用していた。レールは、循環水システムを介して内部冷却されていた。
【0037】
表1の例から、粘土黒鉛ビレットスライダーを備えた本発明のビレット電気誘導加熱システムは、次のように計算される入力エネルギーkW時(kg/kW時)あたりのビレットkgとして測定されるビレット加熱入力エネルギーの改善をもたらすことが理解されよう。本発明の実施例1および従来技術のレール加熱システムでは、直径50mmのビレットの重量は4.8kgであった。本発明の実施例1では、入力コイル電力は68.667kWであり、80秒で1250℃のビレット目標温度を達成し、下記式で計算されたエネルギー消費をもたらす。
【0038】
【0039】
従来技術のレール加熱システムでは、入力コイル電力は63.198kWであり、95秒で1250°Cのビレット目標温度を達成し、下記式で計算されたエネルギー消費をもたらす。
【0040】
【0041】
したがって、表1の発明例1のエネルギー効率を、例示ビレットが同じ特性を持つ表1の従来例と比較すると、従来例の生産性率が2.88であったのに対して、3.15の有意な(端数切り捨て)生産性率が発明例1で達成された。これは、1.094(3.15/2.88)の数値に変換され、従来のレール加熱システムよりも生産性率が増加し、本発明の電気誘導ビレット加熱システムのエネルギー効率が約10%増加した。
【0042】
ビレットの加熱に使用される1kW時(平均)のエネルギーは、本発明のビレット電気誘導加熱システムを使用すると鋼ビレットなどの加熱ビレット材料を約3.15kg生産でき、これに対して、従来技術のレールビレット加熱システムを使用すると約2.88kgの加熱鋼を生産する。これは、同じエネルギー消費量を使用した加熱鋼の生産が約10%増加することを意味する。加えて、本発明のビレット電気誘導加熱システムは鋼1kgを加熱するために約0.317kW時(kgあたり1/3.15kW時)を必要とし、これに対して、同一の誘導コイルを使用する従来技術のレールビレット加熱システムの場合、鋼1kgあたり約0.347kW時(1/2.88=0.347kW時/kg)を必要とする。これは、実質的なエネルギーの節約と、ビレットの誘導加熱のエネルギー効率の改善を意味する。
【0043】
更に、本発明の粘土黒鉛ビレットスライダー材料は、ビレット誘導加熱システムの交換または修理要件を低減するビレット電気誘導加熱システムを通ってビレットを移動させるための既知の従来技術の装置より改善された摩耗特性を示す。
【0044】
図3(a)および
図3(b)には、粘土黒鉛ビレットスライダーを利用する本発明のビレット電気誘導加熱システム20の別の実施形態が示されている。この実施形態では、粘土黒鉛ビレットスライダー12eの長手方向軸(X
L)回転は、内部表面領域とスライド接触しつつ移動するビレットから特定量のビレット摩耗が粘土黒鉛ビレットスライダーの内部表面領域22上に生じた後に達成できる。ビレットスライダーの軸回転は、摩耗したスライダー表面領域22を粘土黒鉛ビレットスライダー内面上のビレットの通常のスライド表面経路から移動させ、ビレットスライダーの摩耗していない内部表面領域23が摩耗した内部表面領域に取って代わる。
図3(a)では、半径方向位置P
1の摩耗した内部表面領域22は、粘土黒鉛ビレットスライダー12eの時計回りの90度の回転により
図3(b)の半径方向位置P
2に移動し、本発明のビレット電気誘導加熱装置における誘導コイルを通るビレットの通常のスライド表面経路に摩耗していない内部表面領域を提供する。
【0045】
誘導コイルを乱すことなく粘土黒鉛ビレットスライダーの回転を達成するのに必要な加えられる力とトルクを最小限に抑えるために、誘導コイル14の内部導電性表面14’とコイルに面する粘土黒鉛ビレットスライダー12の外側表面12’の間の環状スペーサ容積部18には、本発明のいくつかの実施形態では、マイカ紙または低摩擦表面粗さおよび滑り面特性を示す他の電気絶縁材料を充填して、導電性コイル巻線および誘導コイルを乱すことなく粘土黒鉛ビレットスライダーの軸回転を促進できる回転滑り面に対する高温誘電体保護を付与することができる。
【0046】
ビレット電気誘導加熱システムを分解することなく粘土黒鉛ビレットスライダーを交換可能である本発明の他の例では、誘導コイル14の内部導電性表面14’とコイルに面する粘土黒鉛ビレットスライダー12の外側表面12’との間の環状スペーサ容積部18には、マイカ紙または低摩擦表面粗さおよび滑り面特性を示す他の電気絶縁材料を充填して、導電性コイル巻線およびビレットスライダーと誘導コイルの軸方向の長さに沿って粘土黒鉛ビレットスライダーの移動を促進できる回転滑り面に対する高温誘電保護を提供でき、それにより、交換可能な粘土黒鉛ビレットスライダーを誘導コイルに挿入したり、誘導コイル内から取り外したりできる。
【0047】
粘土黒鉛ビレットスライダーが一般に中空の内部シリンダー以外の形状で使用される本発明のいくつかの実施形態では、例えば、直方体のワークピース(ビレット)または中空管、並びに非円筒形の一般的な形状のワークピース(ビレット)の移動に使用される場合、ビレットが誘導コイルを通って移動する際にスライド接触する表面としてビレットスライダーの摩耗していない領域が選択されるように、ビレットスライダーの形状に適した既存の粘土黒鉛ビレットスライダーの長手方向、軸方向またはその他の回転を達成することができる。
【0048】
図4は、粘土黒鉛ビレットスライダー12aが開放端半円筒形粘土黒鉛ビレットスライダーとして形成されている本発明の別の実施形態を示している。本発明の他の例では、特定の用途に必要とされるような形状の半(semi)(半(half))円筒よりも大きいまたは小さい形状の、開放端部分円筒形粘土黒鉛ビレットスライダーを使用することができる。
【0049】
図5(a)および
図5(b)は、粘土黒鉛ビレットスライダーが、各ビレット90a(加熱すべき次のビレット)、90b(加熱中のビレット)および90c(加熱前のビレット)に対する部分的に(または全体的に)包囲された粘土黒鉛材料ビレットキャリアの形態である本発明の別の実施形態を示し、このキャリアは、個々のビレットを誘導コイル14の内部に送り、加熱後に誘導コイルの内部からそれを除去するものである。この非限定的な例では、各ビレットキャリアは、U字型の長手方向に長い粘土黒鉛材料12bから形成され、各ビレットコンテナの前端と後端は、U字型の長手方向長さの対向する縦端に取り付けられた半円形のディスク12cから形成され、ここで、粘土黒鉛ビレットキャリアは、より一般的には、閉端部分中空円筒と呼ばれる。
本発明のこの実施形態において、粘土黒鉛ビレットキャリアは、本発明のビレット電気誘導加熱システムの誘導コイル内に配置された耐火物上で粘土黒鉛ビレットキャリアをスライドさせることにより、誘導コイルを通って移動できる。
【0050】
本発明のいくつかの実施形態では、粘土黒鉛ビレットスライダーを備えたインライン(または他の方法で配置された)マルチコイル電気誘導加熱システムを使用して、ラインの出口端で目標温度に加熱されるビレットを生成する。ラインの出口端またはその近くに配置されたマルチコイルシステムのコイルにおける粘土黒鉛ビレットスライダーは、ラインの入口端から出口端までコイルを通って移動するにつれてビレットが次第により高温に加熱され、かつ、ビレットの表面温度が高くなると、ビレットが本発明の粘土黒鉛ビレットスライダー上をスライドする際の摩耗量が大きくなるため、ラインの入口端またはその近くのコイルの粘土黒鉛ビレットスライダーよりも速いビレット摩耗を受ける。
【0051】
少なくともラインの出口端またはその近くの誘導コイルに、
図3(a)および
図3(b)に示すように軸方向に回転する粘土黒鉛ビレットスライダーを提供することに加えて、交換可能な粘土黒鉛ビレットスライダーを少なくとも一部の誘導コイルに設けることができ、それにより、ラインの入口端または近くのコイルの粘土黒鉛ビレットスライダーよりも摩耗が大きいラインの出口端または近くのコイルの粘土黒鉛ビレットスライダーを定期的に交換して、本発明のマルチコイル電気誘導加熱システムにおける全てのビレットスライダーの寿命サイクルのバランスをとることができる。
【0052】
任意に、本発明のいくつかの実施形態において、粘土黒鉛ビレットスライダーは、ビレットがビレット形状に一致するかまたは特定の用途におけるビレット加熱特性を改善するようにスライド接触するビレットスライダーの内部表面領域上に1つ以上の突起またはプロファイル可変隆起で形成されてもよい。
【0053】
本発明のいくつかの実施形態では、粘土黒鉛ビレットスライダーを備えたビレット電気誘導加熱システムは、ビレット電気誘導加熱システムで加熱されたビレットを熱間加工するための熱間加工装置と組み合わせて、製品または更に加工されて製品を形成する中間品を形成することができる。熱間加工装置は、本発明のビレット電気誘導加熱システムで加熱されたビレットを熱間加工するための当技術分野で知られている鍛造、圧延、押出および引抜き装置を含むが、これらに限定されない。
【0054】
本明細書で使用される「粘土黒鉛」スライダー材料という用語は、好ましくは、以下を含むビレットスライダー材料組成物を指す。炭素(C)30~40重量%;炭化ケイ素(SiC)8~12重量%;二酸化ケイ素(SiO2)15~25重量%;および酸化アルミニウム(Al2O3)10~20重量%。指定された範囲の炭素は、優れたビレット摩耗を提供することがわかった。
【0055】
加えて、ビレットスライダー材料組成物は、以下を含むこともできる:鉄、ホウ素、ナトリウムおよびカリウムの酸化物から典型的に形成される、好ましくは総計で6重量%を超えない微量酸化物;総計で2重量%を越えないマグネシウム、コバルトおよびクロムの化合物;1重量%を越えない元素シリコン(遊離)シリコン。
【0056】
特定の電気誘導ビレット加熱システム用途に適した形状の粘土黒鉛ビレットスライダー材料は、例えば押出または射出成形プロセスでビレットスライダー材料組成物から製造することができる。
【0057】
上記の説明では、説明の目的で、例および実施形態の完全な理解を提供するために、多数の特定の要件およびいくつかの特定の詳細が述べられている。しかしながら、これらの特定の詳細の一部がなくても1つまたは複数の他の例または実施形態を実施できることは、当業者には明らかであろう。説明される特定の実施形態は、本発明を限定するためではなく、例示するために提供される。
【0058】
本明細書全体を通して、「1つの例または実施形態」、「例または実施形態」、「1つまたは複数の例または実施形態」、または「異なる例または実施形態」についての言及は、特定の特徴が本発明の実施に含まれることを意味する。説明では、開示を簡素化し、さまざまな発明の態様の理解を支援する目的で、さまざまな特徴が単一の例、実施形態、図、またはその説明にまとめられることがある。
【0059】
本発明を、好ましい例および実施形態に関して説明してきた。明示的に述べられたものとは別に、同等物、代替物および修正物が可能であり、本発明の範囲内である。