(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-10
(45)【発行日】2022-08-19
(54)【発明の名称】バイオカーボン再生及び/又は肥料基質
(51)【国際特許分類】
C05F 3/00 20060101AFI20220812BHJP
C05D 9/00 20060101ALI20220812BHJP
C05F 9/00 20060101ALI20220812BHJP
C05F 11/00 20060101ALI20220812BHJP
B09B 3/40 20220101ALI20220812BHJP
B09B 101/25 20220101ALN20220812BHJP
B09B 101/85 20220101ALN20220812BHJP
【FI】
C05F3/00
C05D9/00
C05F9/00
C05F11/00
B09B3/40 ZAB
B09B101:25
B09B101:85
(21)【出願番号】P 2019555557
(86)(22)【出願日】2017-12-21
(86)【国際出願番号】 SK2017000012
(87)【国際公開番号】W WO2018117980
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-12-18
(32)【優先日】2016-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SK
(32)【優先日】2016-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SK
(73)【特許権者】
【識別番号】519226746
【氏名又は名称】ズドロイエ ゼメ アー.エス.
【氏名又は名称原語表記】ZDROJE ZEME A.S.
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】メレンチャク,ミロスラフ
(72)【発明者】
【氏名】クラリク,ペテル
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第105859477(CN,A)
【文献】特開2001-181074(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105230167(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0352378(US,A1)
【文献】特許第096310(JP,C2)
【文献】Effect of biochar on theN mineralization dynamics of an agricultural soil amended with sheep manure,RAMIRAN 15th International Conference Versailles
【文献】LOPEZ-CANO INES,BIOCHAR IMPROVES N CYCLING DURING COMPOSTING OF OLIVE MILL WASTES AND SHEEP MANURE,WASTE MANAGEMENT,2016年01月08日,VOL.49,pp.553-559,http://dx.doi.org/10.1016/j.wasman.2015.12.031
【文献】ARIF MUHAMMAD,INTEGRATION OF BIOCHAR WITH ANIMAL MANURE AND NITROGEN FOR IMPROVING MAIZE YIELDS AND 以下備考,FIELD CROPS RESEARCH,NL,ELSEVIER,2016年06月16日,VOL.195,pp.28-35,http://dx.doi.org/10.1016/j.fcr.2016.05.011,SOIL PROPERTIES IN CALCAREOUS SEMI-ARID AGROECOSYSTEMS
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C05B1/00-21/00
C05C1/00-13/00
C05D1/00-11/00
C05F1/00-17/993
C05G1/00-5/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
20質量%以上80質量%未満の羊糞;
衛生段階で処理された生分解性都市廃棄物及び炭化木材廃棄物のうちの少なくとも1つを含む、20質量%
以上80質量%
未満の炭化バイオカーボン;及び
テンサイおよびキャベツを含む農作物に関連する切断物を含む植物廃棄物を含む非炭化分離物であって、0質量%を超え最大33質量%までの非炭化分離物
を含む、組成物。
【請求項2】
前記炭化木材廃棄物が木材チップを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記非炭化分離物がさらにパルプであるか又は繊維を含まない工業廃棄物を少なくとも1つ含む、請求項1又は請求項2に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、バイオカーボン特性と併せて羊糞の優れた効果を利用するためのバイオカーボン再生及び/又は肥料基質の組成物に関する。本発明は、農業、生分解性都市廃棄物の利用及び肥料の分野に含まれる。
【背景技術】
【0002】
現在の技術水準
土壌再生及び施肥のための1つの薬剤が糞であることは一般的に知られている。成長した羊の糞から製造された100%有機羊バイオ肥料が知られている。羊糞は入手に困難を伴うが、その性質及び栄養素の内容により、世界でもユニークである。実験室の試験及び実際の成果は、羊の糞から作られた有機肥料が世界でもユニークであることと、まさしく“奇跡的な”属性を得たことを確認した。それは著しく土壌の肥沃度を向上させる。この肥料の内容物は土壌の質に大きく影響を与える非常に貴重な腐植質である。それは土壌を脱水し、構造と空隙率を完全に変える。羊の肥料によって栄養を与えられた土壌は、植物の成長と寿命にとって全く異なる環境になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
現在、植物栽培のための耕土の大部分は劣悪な状態にある。土壌の性質は長期にわたる化学肥料施肥によって著しく悪化させられている。肥沃度は、欧米諸国で急速に減少しており、この状態は憂慮すべきである。それは定期的な化学薬品の散布及び栄養物によって補われる。しかし、これは作物の品質を著しく損なう方法である。高品質で健康的な果物を栽培することが要求される場合、植物が住む環境、すなわち土壌を生き返らせ、そして癒すことが必要である。
【0004】
この肥料を使っただけで、素晴らしい結果が得られた。それは、部屋とバルコニーの植物、多年生植物、一年生植物、野菜、果物、ジャガイモ、ブドウの木、穀物、鑑賞樹及び鑑賞用の低木等の整地のため、植え付け前の基礎施肥のため、全生育期の施肥のために使用される。これらの肥料の実質的な欠点は、集中的な灌漑または雨季にある植物の根系の下では、それらが比較的急速に表面を洗い落とされる、または下層の土壌層に逃げることである。
【0005】
上記の欠点は、緩やかな栄養素の放出を伴う窒素-リン-カリウムベースの工業用肥料によって解消される。肥料顆粒は、植物の根を塩の蓄積から保護しながら、栄養素の放出を調節するべく、植物ベースの歴青コーティングで被覆されている。肥料顆粒は効果期間中継続的に栄養素を放出する。肥料が空になった歴青コーティングは後で分解され、土壌の有機物含有量を高める。本発明者らは、それぞれの顆粒に、植物に必要なすべてのマクロとミクロの要素を見出した。施用後、土壌水分は歴青コーティングに浸透し、継続的に土壌に放出される固形栄養素を溶解する。栄養素の放出速度は土壌の温度にのみ依存し、より高い温度では栄養素はより急速に放出され、より低い温度では放出は遅くなりそして効果期間は延長される。
【0006】
土壌再生及び施肥のための第二の知られている薬剤はバイオカーボンである。多くの科学的研究は、土壌にバイオカーボンを施用することで土壌中の炭素隔離を増加させるだけでなく、大気中へのCO2排出量を減少させるという有益な効果について示している。持続可能な土地管理の観点からは、有機物のバランスのとれた均衡が不可欠であり、新しい
資源を探し求めなければならない。考えられる革新的な解決策の1つは、安定した有機物の重要な供給源であるバイオカーボンの施用でもある(Fischer and Glaser 2012; Purakayastha et al.,2015)。
【0007】
バイオ炭(又はバイオカーボン)は、いわゆる熱分解またはガス化によって、酸素を利用することなく又はほとんど利用することなく、有機物の熱処理によって製造される製品である。各バイオ炭の相対量と特性は、ガス化温度、長さ、圧力などの製造条件によって異なる(Schimmelpfennig and Glaser、2012)。原料の性質はバイオ炭の性質に根本的な影響を及ぼす(Purakayastha et al.,2015)。例えば、トウモロコシで作られたバイオ炭は窒素とリンが豊富で、土壌肥沃度を高める可能性が比較的高い。トウモロコシはまた、炭素保持のためにかなり重要である炭素質材料のより高い安定性によっても特徴付けられる。一方、樹皮は、これらの著者によって指摘されているように、アルカリ性であり、長期的には中性からアルカリ性の範囲にまでさえpH値を上げることができる。稲わらから製造されたバイオ炭は、トウモロコシから製造されたバイオ炭と比較すると反対に、土壌中の微生物活性の増加に寄与する比較的高含量の不安定な炭素を特徴とし、それゆえに稲わらから製造されたバイオ炭は、土壌の生物学的豊かさを回復するのに有益であり得る。小麦わらから製造されたバイオ炭は、カリウムが豊富で、特にカリウムが不足している土壌や、この栄養素に対する需要が高まっている耕作に施用するのにふさわしい。
【0008】
バイオカーボンの発生源は、欧州委員会規則(EC)No 1774/2002に規定されている規則に従って、家庭やケータリング施設で発生する台所のバイオ廃棄物を含む生分解性都市廃棄物として処理される。これらは果物や野菜の洗浄からの残留物、調理された食べ物の残留物等である。定量的な観点から、キッチンとレストランのバイオ廃棄物は混ざり合った都市廃棄物の最も重要な要素である。
【0009】
非常に高品質のバイオソースである木のチップのような炭化木材廃棄物もバイオカーボンという用語に該当する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記に基づいて、この問題を解決するための努力がなされてきており、そしてこの努力の結果として、本発明はバイオカーボン再生及び/又は肥料基質の組成物の提案をするものである。
【発明の効果】
【0011】
発明の要旨
上記の欠点は、本発明によるバイオカーボン再生及び/又は肥料基質によって実質的に排除される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
バイオカーボン再生及び/又は肥料基質の物質は、20質量%乃至80質量%の羊糞、及び、総量で20質量%乃至80質量%の生分解性都市廃棄物からの炭化バイオカーボン及び/又は木材廃棄物からの炭化バイオカーボンを含有する二成分混合物の組成から成る。炭化バイオカーボンの具体的な事例において、木材廃棄物は、例えば、木のチップである。バイオカーボン再生及び/又は肥料基質はまた、三成分混合物であってもよく、その場合、第三成分はさらに最大33質量%の工業生産及び/又は植物生産からの非炭化分離物であり、工業生産からの非炭化分離物である場合は、パルプであるか又は繊維を含まない。任意で、植物生産からの非炭化分離物は、テンサイ、キャベツなどの農作物からの切断物である。
【0013】
本発明によるバイオカーボン再生及び/又は肥料基質の利点は、外部に現れる効果から明らかである。一般に、バイオカーボン再生及び/又は肥料基質は研究の結果であるが、その独創性は羊糞とバイオカーボンとの関連で構成されており、それによってバイオカーボンは衛生段階で生分解性都市廃棄物として処理され得るが、規則 No 1774/2002の要件に合致すると同時に、木のチップなどの炭化木材廃棄物に処理され得ると述べられている。
【0014】
バイオ炭の土壌への施用は酸性土壌のpH中和として農学的に有利である。バイオ炭は比表面積が大きいので、施用後は、土壌中の有機物や栄養分をより適切に管理できるようになる。バイオ炭には、カリウム、カルシウム、マグネシウムのような植物にとって有益な生物起源元素である灰物質が含まれている。稲籾殻から製造されたバイオ炭の施用は土壌中の窒素、リン及びカリウム含有量を有意に増加させた。多孔質バイオ炭構造は土壌微生物に生活空間を提供し、それらの活性の増加をもたらす。バイオ炭は菌根菌に良い効果をもたらす。施用の結果として、それらのコロニーは有意に増加し、これはまたリンのような栄養素の利用可能性にも積極的に反映されている。バイオ炭の施用は、軽い穀物を含む土壌中のアルミニウム毒性の悪影響を減らすための効果的な手段となり得る。それは残留殺虫剤の解毒と地下水への栄養素の流出に関与し、それは環境の質を改善する。バイオ炭はまた、例えば重金属のための土壌の衛生化にも使用することができる。それは、土壌中の病原体の除去にも影響を与える可能性がある。施用されたバイオ炭は土壌の物理的性質を改善する。それは保水容量値を増加させ、全体的な空隙率を増加させ、そして土壌の体積重量値を減少させる。バイオ炭は農作物の作物生産パラメータにも積極的に影響を与える。
【実施例】
【0015】
実施形態の例:
本発明による個々の実施形態は例示を目的としたものであり、技術的解決策を限定するものではないことが理解される。当業者は、せいぜい日常的な実験を利用して、本発明の特定の実施形態に対する多くの均等物を見出すかまたは確かめることができるであろう。また、そのような均等物は以下の特許請求の範囲内に入るであろう。当業者にとって、混合物の最適設計及びその成分の選択をすることは問題ないであろう。このため、これらの特徴は、詳細には扱われていない。
【0016】
実施例1
特定の実施形態のこの例では、本発明によるバイオカーボン再生及び/又は肥料基質の混合物の第1の組成物が記載されている。それは、80質量%の羊糞及び20質量%の生分解性都市廃棄物からの炭化バイオカーボンを含有する二成分肥料基質である。
【0017】
実施例2
特定の実施形態のこの例では、本発明によるバイオカーボン再生及び/又は肥料基質の混合物の第2の組成物が記載されている。それは、50質量%の羊糞及び50質量%の木のチップのような木材廃棄物からの炭化バイオカーボンを含有する二成分肥料及び再生基質である。
【0018】
実施例3
特定の実施形態のこの例では、本発明によるバイオカーボン再生及び/又は肥料基質の混合物の第3の組成物が記載されている。それは、実施例1又は実施例2による二成分バイオカーボン基質に、さらにパルプであるか又は繊維を含まない20質量%の工業生産からの非炭化分離物の第三成分を加えた、三成分肥料基質である。
【0019】
実施例4
特定の実施形態のこの例では、本発明によるバイオカーボン再生及び/又は肥料基質の混合物の第4の組成物が記載されている。それは、実施例1又は実施例2による二成分バイオカーボン基質に、さらにテンサイ、キャベツなどの農作物からの切断物である33質量%の植物生産からの非炭化分離物の第三成分を加えた、三成分肥料基質である。
【0020】
実施例5
特定の実施形態のこの例では、本発明によるバイオカーボン再生及び/又は肥料基質の混合物の第5の組成物が記載されている。それは、20質量%の羊糞及び80質量%の生分解性都市廃棄物からの炭化バイオカーボンを含有する二成分再生基質である。
【産業上の利用可能性】
【0021】
産業上の有用性
本発明による産業上の有用性は、特に農業の分野におけるものである。